JP2003048404A - 鉄道車両用車輪およびその製造方法 - Google Patents

鉄道車両用車輪およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 シャッタードリムの発生を実用上問題ない程
度に防止することができる鉄道車両用車輪およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 ヘルツ応力の算出値を用いて求めた鉄道
車両用車輪にシャッタードリムが発生する位置における
剪断応力範囲と、内部に存在する欠陥と等価な面積のペ
ニーシェープ型内部亀裂のモードII下限界応力拡大係数
とが同じ値となる許容欠陥寸法以下となるように、鉄道
車両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法を制御する。こ
れにより、設計時における輪重の想定最大値が147kN で
あって車輪の直径が840mm である場合における欠陥の寸
法が0.7mm 以下である鉄道車両用車輪を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両用車輪お
よびその製造方法に関し、具体的にはシャッタードリム
の発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄
道車両用車輪およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、鉄道による貨物輸送の効率化を図
るため、貨車1両当たりの貨物積載量は、年々増加する
傾向にあり、今後もこの傾向は強まることが予想され
る。このため、各貨車の車輪に負荷される重量 (以下、
「輪重」という) も増加する傾向にある。
【0003】このような輪重の増加に伴って、「シャッ
タードリム」といわれる鉄道車両用車輪のリム部の損傷
が発生し易くなる。このシャッタードリムは、転動疲労
によって、鉄道車両用車輪の踏面下内部(リム部)に存
在する介在物が起点となって、剪断型 (モードII) の亀
裂が伸展することによって鉄道車両用車輪の踏面の剥離
や損傷に至る損傷であり、最悪の場合には鉄道車両用車
輪の脱線に至ることもある。このため、今後、輪重の増
加を図るには、シャッタードリムの発生を防止すること
が不可欠になるが、現状では、シャッタードリムの発生
を防止することを目的とした技術は、開示されていな
い。
【0004】しかしながら、シャッタードリムは、前述
したように、介在物や鋳造欠陥を起点とした疲労破壊現
象として捉えることができるため、介在物や鋳造欠陥の
発生を抑制することが有効であると推定される。したが
って、シャッタードリムの発生を防止するには、鉄道車
両用車輪の母材となる溶鋼の清浄度を向上させることが
有効であることは容易に想像できる。なお、以降の説明
では、シャッタードリムの起点となる介在物および鋳造
欠陥を合わせて、単に「欠陥」と総称することとする。
【0005】一方、シャッタードリムとは損傷形態が異
なるものであるが、介在物を起点としたモードI型の疲
労破壊による損傷を抑制して疲労強度を向上するには、
最大介在物寸法を小さくすることが有効であることが知
られている。
【0006】また、B.CATOT et al.は、車輪の清浄度向
上に関して、ladle refining (転炉精製) 後にR-H 真空
脱ガス炉を用いて、Si−Ca処理とdeep真空脱ガス処理と
を行う方法が有効であるとともに、溶鋼の成分としては
S量を低減することが有効であると、報告している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、鉄道車両
用車輪の内部の欠陥の周辺における発生応力が一定であ
ると仮定すれば、欠陥の品質があるレベル以下、具体的
にはある許容欠陥寸法以下に抑制されれば、シャッター
ドリムの発生を防止できることが推定される。しかし、
この許容欠陥寸法が如何なる値であるかは、現状では不
明である。
【0008】また、鉄道車両用車輪の内部の欠陥寸法が
一定であると仮定すれば、輪重と車輪径とに基づいて決
定される、欠陥の周辺における発生応力があるレベル以
下、具体的には損傷が生じない許容応力 (各車輪径に対
する許容荷重) 以下に抑制されれば、シャッタードリム
の発生を防止できることが推定される。しかし、現状で
は、この許容応力も如何なる値であるか不明である。
【0009】このため、現状では、鉄道車両用車輪を設
計および製造するに際して、シャッタードリムの発生を
確実に防止することはできず、使用時における定期的な
点検によってシャッタードリムの発生を未然に防止する
しかなかった。
【0010】本発明は、このような従来の技術が有する
課題に鑑みてなされたものであり、シャッタードリムの
発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄道
車両用車輪およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】破壊力学的な考え方に基
づけば、鉄道車両用車輪の亀裂の進展は、応力拡大係数
範囲 (ΔK) >下限界応力拡大係数範囲 (ΔKth) の関
係が満足された時に発生することが知られている。
【0012】ここで、介在物を起点としたモードI型の
疲労破壊では、介在物と同寸法の亀裂が存在するとの前
提にたって、応力拡大係数範囲ΔKを算出し、上記の関
係式を用いて介在物からの亀裂の進展を評価することが
できる。これにより、鉄道車両用車輪においてシャッタ
ードリムの発生を防止できる許容欠陥寸法を求めること
ができる。
【0013】そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた
結果、以上の関係をシャッタードリム、すなわちモード
II型の疲労損傷にも適用すること、具体的には、数種の
車輪鋼についてモードIIの下限界応力拡大係数範囲(Δ
KIIth)を求め、車輪径と使用輪重の任意の組合せに対
して、内部に存在する許容欠陥寸法を定めることによ
り、シャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防
止することができる鉄道車両用車輪を提供できることを
知見し、本発明を完成した。
【0014】本発明は、設計時における輪重の想定最大
値が81kNであって車輪の直径が813〜864mm である場合
における欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特徴とす
る鉄道車両用車輪である。
【0015】また、本発明は、設計時における輪重の想
定最大値が86kNであって車輪の直径が864 〜914mm であ
る場合における欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特
徴とする鉄道車両用車輪である。
【0016】また、本発明は、設計時における輪重の想
定最大値が77kNであって車輪の直径が762 〜813mm であ
る場合における欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特
徴とする鉄道車両用車輪である。
【0017】また、本発明は、設計時における輪重の想
定最大値が120kN であって車輪の直径が762 〜864mm で
ある場合における欠陥の寸法が1.2mm 以下であることを
特徴とする鉄道車両用車輪である。
【0018】また、本発明は、設計時における輪重の想
定最大値が104kN であって車輪の直径が1067〜1120mmで
ある場合における欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを
特徴とする鉄道車両用車輪である。
【0019】これらの本発明にかかる鉄道車両用車輪の
欠陥寸法は、いずれも、本発明により初めて得られたも
のである。別の観点からは、本発明は、鉄道車両用車輪
を製造するに際して、ヘルツ応力の算出値を用いて求め
た鉄道車両用車輪にシャッタードリムが発生する位置に
おける剪断応力範囲と、この鉄道車両用車輪の内部に存
在する欠陥と等価な面積のペニーシェープ型内部亀裂の
モードII下限界応力拡大係数とが同じ値となる許容欠陥
寸法以下となるように、この鉄道車両用車輪の内部に存
在する欠陥の寸法を制御することを特徴とする鉄道車両
用車輪の製造方法である。
【0020】また、本発明は、鉄道車両用車輪を製造す
るに際して、この鉄道車両用車輪に作用する輪重とこの
鉄道車両用車輪の形状およびレールの形状とからヘルツ
応力を求め、求めたヘルツ応力を用いて鉄道車両用車輪
にシャッタードリムが発生する位置における剪断応力範
囲を求め、求めた剪断応力範囲と、鉄道車両用車輪の内
部に存在する欠陥と等価な面積のペニーシェープ型内部
亀裂のモードII下限界応力拡大係数とが同じ値となる許
容欠陥寸法以下となるように、鉄道車両用車輪の内部に
存在する欠陥の寸法を制御することを特徴とする鉄道車
両用車輪の製造方法である。
【0021】これらの本発明にかかる鉄道車両用車輪の
製造方法においては、acrを許容欠陥の直径(mm)とし、
STを設計時に想定される静的輪重の最大値(kN)とし、
wは新製時の車輪の直径(inch)とし、、さらにΔKII
thをモードII下限界応力拡大係数範囲(MPa√m ) とした
場合に、許容欠陥寸法が、下記(1) 式におけるモードII
下限界応力拡大係数範囲 (ΔKIIth) に、18MPa √m ま
たは20MPa √m を代入することによって、求められるこ
とが望ましい。 acr ={84.22 ΔKIIth/(1.2 PST(0.002166Dw 2-0.2422D w +9.128)+1000) }2 ・・・・・・・・・(1) さらに、これらの本発明にかかる鉄道車両用車輪の製造
方法においては、最終熱処理を行った後における鉄道車
両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法が許容欠陥寸法を
上回る場合には、この鉄道車両用車輪を不良品と認定す
ることが例示される。
【0022】本発明にかかる鉄道車両用車輪の製造方法
をより具体的に説明すれば、以下の通りである。 工程:車輪リム中の最大内部欠陥寸法を測定する。 工程:測定された最大欠陥寸法と、予め決定された本
車輪における欠陥寸法と許容荷重との関係を比較し、最
大許容荷重を決定する。 工程:さらにこれらの工程およびにおいて、車輪
リム部の下限界モードII応力拡大係数範囲を見積もり、
複数の欠陥寸法に対する輪重を決定することにより欠陥
寸法と許容荷重との関係を求めるステップを含む。この
時、上記輪重は本車輪リム部の下限界応力拡大係数範囲
より大きくないモードII応力拡大係数に対応する。 工程:工程〜工程において、車輪の最大負荷荷重
を提供し、最大許容荷重が最大負荷荷重より小さい状態
で使用された車輪は廃却されることを含む。 工程:工程〜工程において、車輪に負荷される荷
重として最大許容荷重より大きくない荷重を承認するス
テップを含む。 工程:工程〜工程において、最大負荷荷重の発生
が想定される鉄道用車輪におけるシャッタードリム破壊
を防止する方法として、以下のステップを含む。
【0023】(i) リム、ハブおよびリムとハブとを接続
する板部を有する鉄道用車輪を用意する。 (ii)車輪リム中の最大内部欠陥寸法を測定する。 (iii) この車輪が最大荷重を受けた時、最大欠陥に発生
するモードII応力拡大係数を見積もる。 (iv)モードII応力拡大係数範囲と下限界応力拡大係数範
囲とを比較することによって欠陥から亀裂が進展するか
否かを判断する。 (v) 最大荷重を受けた時、欠陥から亀裂が進展すると判
断される場合、車輪を廃却する。
【0024】このように、本発明によれば、本発明で規
定される許容欠陥寸法と許容応力 (各車輪径に対する許
容輪重) との関係を満足することにより、確実にシャッ
タードリムの発生を防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる鉄道車両用
車輪およびその製造方法の実施の形態を、添付図面を参
照しながら詳細に説明する。
【0026】図1は、本実施の形態の鉄道車両用車輪の
製造方法を用いて、耐シャッタードリム車輪の許容欠陥
寸法を求める手順の一例を示すためのフロー図である。
このフロー図は、シャッタードリム損傷を欠陥と同寸法
の亀裂進展として捉え、破壊力学的に亀裂の進展性を評
価することによって、許容欠陥寸法を得るものである。
【0027】以下、図1に示すフロー図を参照しなが
ら、許容欠陥寸法を得る過程を詳細に説明する。図1に
おけるステップ (以下、単に「S」と略記する) 1にお
いて、輪重と車輪直径との関係を求める。
【0028】図2は、使用輪重(設計時に想定される最
大値)と車輪直径との関係の一例を示すグラフである。
図2における各プロットは、現在の実績値であり、実線
はプロット点の上限、中間もしくは下限を示す近似線で
あり、それぞれ(2) 式により表される。
【0029】 PST=2.232 Dw +A ・・・・・・・・・(2) ここで、PSTは静的輪重(kN)を示し、Dw は車輪径(inc
h)を示し、Aは103.8(上限値) 、45.9 (下限値) 、74.8
5(中間値) である。
【0030】S1においては、この図2にグラフで示す
関係により、輪重と車輪直径との関係が求められる。そ
して、S2に移行する。S2において、まず、輪重、ヘ
ルツ応力および車輪径との関係を近似する。図3は、動
的輪重PDYとヘルツ応力Pmax (MPa) との関係の一例を
示すグラフである。図3のグラフにおけるヘルツ応力P
max は、動的輪重PDYと車輪形状とレール形状からヘル
ツの弾性接触理論を用いて算出した。ここで、動的輪重
DYは(3) 式により表される。
【0031】 PDY=1.2 PST ・・・・・・・・・(3) ここで、PDYは動的輪重(kN)を示す。なお、動的荷重係
数は1.2 である。図3のグラフにおいて、25インチ車輪
および50インチ車輪それぞれの上限と下限とをそれぞれ
結ぶ線分を、(4) 式および(5) 式によりそれぞれ近似し
た。
【0032】 25インチ車輪:Pmax = 4.143PDY+1040.4 ・・・・・・・(4) 50インチ車輪:Pmax = 2.630PDY+ 958.1 ・・・・・・・(5) (4) 式および(5) 式より、25インチ車輪と50インチ車輪
では両式のY切片がほぼ同じ約1000であり、式の傾きの
みが異なることがわかる。そこで、(4) 式および(5) 式
の切片を1000として新たに求め直した傾き (Pmax −10
00)/PDYと車輪径との関係を図4にグラフで示す。本式
は、動的荷重PDYが0KNの場合、ヘルツ応力Pmax が10
00MPa となることを示しており、物理的には不具合な点
があるが、上限と下限との間の近似としては問題ないこ
とを確認している。
【0033】図4に示すグラフから、上限値、中間値お
よび下限値に対する傾きのプロットが、各車輪径毎に一
致しており、図3のグラフにおける25インチ車輪および
50インチ車輪それぞれの上限と下限とをそれぞれ結ぶ線
分の傾きの車輪径依存性を、一本の曲線で近似すること
が可能であることがわかる。この曲線は、(6) 式により
表される。
【0034】 Pmax =PDY(0.002166 Dw 2 −0.2422Dw +9.128)+1000 ・・・・(6) このようにして、S2において、車輪とレールとの間の
接触応力状態が算出され、S3に移行する。
【0035】S3において、欠陥と同寸法のペニーシェ
ープ型内部亀裂のモードII応力拡大係数範囲 (ΔKII)
が算出される。すなわち、シャッタードリムの起点位置
は、文献によると踏面下深さ10〜20mmの領域、一説によ
ると深さ10〜40mmの領域で発生する。この起点位置にお
けるヘルツ応力Pmax と剪断応力τxyとの関係は、(7)
式により表される。
【0036】 τxy=0.2 Pmax ・・・・・・・(7) ヘルツの弾性接触理論で求めた剪断応力τxyは、深さ10
〜40mmの範囲内では、深さ10mmが最も大きいため、深さ
10mmでの関係を(7) 式に用いた。上式は、円筒−円筒接
触状態に対応したものであり、車輪−レール間の球−円
筒接触状態 (接触面が楕円形状となる状態) では、τxy
<0.2 Pmax となるが、安全側 (τxyを大きく見積もる
側) として(7) 式を採用した。
【0037】さらに、シャッタードリムを含む疲労損傷
には、接触前後における剪断応力の変動範囲Δτが重要
な影響因子となる。これは(8) 式により表される。 Δτ=2τxy ・・・・・・・(8) そして、本実施の形態では、この剪断応力の変動範囲Δ
τより欠陥と同寸法のペニーシェープ型内部亀裂のモー
ドII応力拡大係数範囲 (ΔKII) を(9) 式を用いて算出
する。
【0038】 ΔKII=0.9387Δτ√a ・・・・・・・(9) この(9) 式において、aは欠陥直径を示す。このように
して、S3において、欠陥と同寸法のペニーシェープ型
内部亀裂のモードII応力拡大係数範囲 (ΔKII) を算出
し、S4に移行する。
【0039】S4において、数種の車輪鋼につき、Y.Mu
rakami et al. の提案する方法に従い、モードII亀裂進
展試験を行う。図5はモードII亀裂進展試験の状況を模
式的に示す説明図である。図5に示すように、モードII
亀裂進展試験は、シェブロン型切欠きを付与した試験片
を用い、図5に示すように試験片全体に曲げ (剪断)荷
重を負荷することにより、切欠き底に剪断応力を生じさ
せて、モードII型の亀裂を進展させる試験である。
【0040】S4では、このモードII亀裂進展試験によ
り、複数の試験片を用いて途中止め試験を行い、破面観
察によって疲労亀裂進展量を測定する。そして、S5へ
移行する。
【0041】S5では、S4でのモードII亀裂進展試験
により得た亀裂長さと繰返し数との関係を、亀裂進展速
度とモードII応力拡大係数範囲ΔKIIとの関係に変換
し、図6のグラフを作成する。
【0042】図6に示すグラフから、HV :294 〜360
の車輪鋼のモードIIの下限界応力拡大係数範囲 (ΔKII
th) は15〜20MPa √a であることがわかる。本実施の形
態では、許容欠陥寸法を求めるために、18MPa √m(ラン
クI) および20MPa √m(ランクII) の2水準の下限界応
力拡大係数範囲ΔKIIthを用いた。
【0043】すなわち、ランクIはシャッタードリム損
傷防止効果が極めて高いレベルを示し、ランクIIはシャ
ッタードリム損傷防止効果を有するレベルを示す。
【0044】S5において、このようにしてモードIIの
下限界応力拡大係数範囲 (ΔKIIth) の評価を行い、S
6へ移行する。
【0045】S6において、得られたモードII応力拡大
係数範囲ΔKIIと、下限界応力拡大係数範囲ΔKIIth
を比較することにより、欠陥からのモードII亀裂進展挙
動は、以下のように示される。すなわち、 (a)ΔKII>ΔKIIthの場合には、欠陥から亀裂が進展する。 (b)ΔKII<ΔKIIthの場合には、欠陥から亀裂が進展しない。 (c)ΔKII=ΔKIIthの場合には、欠陥寸法と許容寸法とが等しくなる。 ・・・・・・・(10)
【0046】このため、ΔKII=ΔKIIthとして得られ
る、車輪径と使用輪重の任意の組合せに対する車輪リム
中に存在する許容欠陥寸法は、(3) 式、(6) 〜(10)式を
組み合わせて、(11)式として表される。 acr={84.22 ΔKIIth/(1.2 PST(0.002166Dw 2-0.2422D w +9.128)+1000)}2 ・・・・・・・(11)
【0047】ここで、acrは許容欠陥の直径(mm)を示
し、PSTは設計時に想定される静的輪重の最大値(kN)を
示し、Dw は新製時の車輪直径(inch)を示し、ΔKIIth
はモードII下限界応力拡大係数範囲(MPa√m ) を示す。
【0048】このようにして、S6において許容欠陥の
直径acr(mm)が求められる。ここで、(11)式における下
限界応力拡大係数範囲ΔKIIthに、18MPa √m(ランク
I) 、20MPa √m(ランクII) を代入して得られた許容欠
陥寸法の具体的数値を表1に、またその静的輪重および
車輪直径 (新製時) との関係を図7にグラフで示す。
【0049】また、得られた許容欠陥寸法acrの妥当性
を評価するため、この許容欠陥寸法とシャッタードリム
損傷の起点となった介在物寸法とを比較した。なお、J.
J.Maraisによって、シャッタードリム損傷の実例とし
て、以下のデータが報告されている。
【0050】輪重:130kN 車輪直径 (最小) :34.25 インチ(870mm) 起点介在物直径:1mm
【0051】
【表1】
【0052】表1によれば、上記条件 (輪重と車輪直
径) に対応する許容欠陥寸法は直径で0.969mm(ランク
I) と1.196mm ( ランクII) となり、実際の起点欠陥寸
法と符合する。すなわち、ランクIの許容欠陥寸法であ
る0.969mm 以下となるように、介在物の大きさを管理す
れば、シャッタードリムの発生を確実に防止できると考
えられる。したがって、S6において求めた許容欠陥寸
法acrは、シャッタードリムの発生を確実に防止するた
めに妥当なレベルにあると考えられる。
【0053】次に、鉄道車両用車輪中に存在する介在物
の寸法が、S6において求めた許容欠陥寸法acrを満足
するための製造方法について説明する。本実施の形態の
鉄道車両用車輪は、周知慣用の手段によって製造され
る。例えば、 AARクラスCに相当する成分系となるよう
に転炉にて精製した溶鋼を、R-H真空脱ガス炉により真
空脱ガス処理し、連続鋳造によって直径450mm のビレッ
トを製造する。このビレットを切断し、鍛造、圧延さら
に熱処理 (踏面焼入れ) し、車輪の最終形状を得た。
【0054】そして、図8に示す、この車輪リム内部に
ついて超音波探傷を行った。この時、超音波検査のスペ
ックを、表1に示す許容欠陥寸法 (ランクIまたはラン
クII) 以下に設定する。ランクIまたはランクIIのいず
れを適用するかは、使用される車両の安全に対する重要
度 (例えば客車か貨車か) を考慮して適宜決定する。
【0055】これ以外は、鉄道車両用車輪についての周
知慣用の手法によればよいが、以下に列記する事項、す
なわち高炉による銑鉄の使用、転炉精製、真空脱
ガス処理 (Ruhrstahl-Heraus炉) 、連続鋳造(360〜45
0mm 径ブルーム、ArまたはNガスによるタンディッシュ
シールド) 、鍛造、圧延等の適当な手段によって、
介在物の低減を図ることがより望ましい。
【0056】本実施の形態では、超音波探傷の探傷波の
周波数を5MHz とするとともに、輪重:147kN 、車輪直
径:840mm(33インチ) 、欠陥寸法:0.7mm 以下となるよ
うに、超音波探傷を行った。なお、欠陥寸法0.7mm と
は、(11)式および表1から得られる許容欠陥寸法以下の
値である。
【0057】得られた鉄道車両用車輪を実際に数年間使
用したところ、シャッタードリムの損傷は全く発生しな
かった。
【0058】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、シャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防
止することができる鉄道車両用車輪およびその製造方法
を提供することができた。
【0059】かかる効果を有する本発明の意義は、極め
て著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の鉄道車両用車輪の製造方法を用い
て、耐シャッタードリム車輪の許容欠陥寸法を求める手
順の一例を示すためのフロー図である。
【図2】使用輪重(設計時に想定される最大値)と車輪
直径との関係の一例を示すグラフである。
【図3】動的輪重とヘルツ応力との関係の一例を示すグ
ラフである。
【図4】(4) 式および(5) 式の切片を1000として新たに
求め直した傾き (Pmax −1000)/PDYと車輪径との関係
を示すグラフである。
【図5】モードII亀裂進展試験の状況を模式的に示す説
明図である。
【図6】モードII亀裂進展試験により得た亀裂長さと繰
返し数との関係を、亀裂進展速度とモードII応力拡大係
数範囲ΔKIIとの関係に変換した結果を示すグラフであ
る。
【図7】静的輪重および車輪直径 (新製時) との関係を
示すグラフである。
【図8】車輪リム内部を模式的に示す説明図である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 設計時における輪重の想定最大値が81kN
    であって車輪の直径が813 〜864mm である場合における
    欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特徴とする鉄道車
    両用車輪。
  2. 【請求項2】 設計時における輪重の想定最大値が86kN
    であって車輪の直径が864 〜914mm である場合における
    欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特徴とする鉄道車
    両用車輪。
  3. 【請求項3】 設計時における輪重の想定最大値が77kN
    であって車輪の直径が762 〜813mm である場合における
    欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特徴とする鉄道車
    両用車輪。
  4. 【請求項4】 設計時における輪重の想定最大値が120k
    N であって車輪の直径が762 〜864mm である場合におけ
    る欠陥の寸法が1.2mm 以下であることを特徴とする鉄道
    車両用車輪。
  5. 【請求項5】 設計時における輪重の想定最大値が104k
    N であって車輪の直径が1067〜1120mmである場合におけ
    る欠陥の寸法が1.6mm 以下であることを特徴とする鉄道
    車両用車輪。
  6. 【請求項6】 鉄道車両用車輪を製造するに際して、ヘ
    ルツ応力の算出値を用いて求めた鉄道車両用車輪にシャ
    ッタードリムが発生する位置における剪断応力範囲と、
    前記鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥と等価な面積
    のペニーシェープ型内部亀裂のモードII下限界応力拡大
    係数とが同じ値となる許容欠陥寸法以下となるように、
    前記鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法を制御
    することを特徴とする鉄道車両用車輪の製造方法。
  7. 【請求項7】 鉄道車両用車輪を製造するに際して、該
    鉄道車両用車輪に作用する輪重と該鉄道車両用車輪の形
    状およびレールの形状とからヘルツ応力を求め、求めた
    該ヘルツ応力を用いて前記鉄道車両用車輪にシャッター
    ドリムが発生する位置における剪断応力範囲を求め、求
    めた該剪断応力範囲と、前記鉄道車両用車輪の内部に存
    在する欠陥と等価な面積のペニーシェープ型内部亀裂の
    モードII下限界応力拡大係数とが同じ値となる許容欠陥
    寸法以下となるように、前記鉄道車両用車輪の内部に存
    在する欠陥の寸法を制御することを特徴とする鉄道車両
    用車輪の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記許容欠陥寸法は、下記(1) 式におけ
    るモードII下限界応力拡大係数範囲 (ΔKIIth) に、18
    MPa √m または20MPa √m を代入することによって、求
    められる請求項6または請求項7に記載された鉄道車両
    用車輪の製造方法。 acr ={84.22 ΔKIIth/(1.2 PST(0.002166Dw 2-0.2422D w +9.128)+1000) }2 ・・・・・・・・・(1) ただし、acrは許容欠陥の直径(mm)を示し、PSTは設計
    時に想定される静的輪重の最大値(kN)を示し、Dw は新
    製時の車輪の直径(inch)を示し、ΔKIIthはモードII下
    限界応力拡大係数範囲(MPa√m ) を示す。
  9. 【請求項9】 最終熱処理を行った後における前記鉄道
    車両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法が前記許容欠陥
    寸法を上回る場合には、当該鉄道車両用車輪を不良品と
    認定する請求項6から請求項8までのいずれか1項に記
    載された鉄道車両用車輪の製造方法。
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