JP3823584B2 - 熱交換器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱交換器に関し、外力による流体の漏れを防止したものである。
【0002】
【従来の技術】
熱交換器の一例として車両空調用のコンデンサがある。コンデンサは、例えば図7に示すように左右のヘッダパイプ1に連結される複数のチューブ2と、各チューブ2間に配置されるフィン3とを備え、車両のエンジンルーム前部に横置きに配置されるのが一般的である。コンデンサには、不図示のコンプレッサから吐出された冷媒が流入され、チューブ2を流通する冷媒がフィン3を通過する空気と熱交換を行って冷却される。
【0003】
図8は上記コンデンサに用いられるチューブ2の一従来例を示す断面図(図7のA方向断面図)である。このチューブ2はアルミの押出し成形により製造されるもので、車両前後方向に区画された複数の冷媒流路2aを有し、各流路2aを冷媒が流通する。このようにチューブ2内を複数の流路2aに分割するのは、冷媒とチューブ壁面との接触面積、すなわち放熱面積を増加させて熱交換効率を高めるためである。
【0004】
上記押出しタイプのチューブ2に対して、図9に示すチューブ2’はインナーフィンタイプと呼ばれるのもので、これは金属板を折り曲げて構成されるチューブ本体21にフィン(インナーフィン)22を挿入して構成される。インナーフィン22によりチューブ内が押出しタイプと同様に複数の流路2a’に分割され、各流路2a’内を冷媒が流通する。インナーフィンタイプの特徴は、押出しタイプに比べてチューブ本体および内部の仕切(フィン22)を薄くでき、ほぼ同等の放熱面積,機密性,耐圧性を確保しつつも軽量化できる点にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インナーフィンタイプは、その薄さ故に局所的な力に弱いという欠点がある。特にコンデンサはエンジンルームの前部に配置されるため、路面から飛んできた小石等がチューブ本体21の前側部分に衝突し易く、衝突箇所に亀裂CR等が生じて冷媒の漏れが発生するおそれがある。そこで、比較的剛性の高い合わせ部21aを石等が衝突し易い前側にすることも考えられるが、この場合も合わせ部21aの付け根付近の低剛性部に衝突すると、その部分が挫屈破壊して同様に冷媒漏れが発生するおそれがある。また、チューブ本体21の板厚を厚くして損傷を防ぐことも考えられるが、この場合は工法上、石等の衝突のおそれのない車両後側の部位、つまり厚くする必要のない部分まで厚くしなければならず、軽量化を阻害するばかりでなく放熱性能の低下も余儀なくされる。
【0006】
本発明の目的は、チューブの厚さを厚くすることなく衝突物による流体漏れを確実に防止し得る熱交換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態を示す図1に対応づけて説明すると、本発明は、チューブ30内を流通する内部流体と外部の流体との間で熱交換を行うとともに、チューブ30の一部分が外部から損傷を受け易い位置に位置するよう配置される熱交換器に適用される。
そして、チューブ30内には、内部流体が流通する流通空間42と流通しない非流通空間41とを仕切る仕切部材33が内部流体の流通方向に延設され、非流通空間41が形成される部位が損傷CRを受け易い位置となるようチューブ30を配置し、これにより上記問題点を解決する。
請求項2の発明は、仕切部材33が内部流体の流通方向に延在する丸棒状の部材で構成され、チューブ30の内壁にろう付けにより固定されるものである。
請求項3の発明は、チューブ30の両端がそれぞれ連結され、流通空間42と連通する空間1bを有する一対のヘッダパイプ1を有し、仕切部材33は、その両端部がチューブ本体31の両端部からそれぞれ突出するよう配置され、この両端突出部分が、一対のヘッダパイプ1の内壁にそれぞれ当接してチューブ30をヘッダパイプ1に対して位置決めするためのチューブ位置決め部を構成するものである。
請求項4の発明は、チューブ30に放熱効果を高めるためのフィン32を挿入し、このフィン32の一部を仕切部材33を位置決めするための仕切部材位置決め部として用いたものである。
請求項5の発明は、チューブ30の非流通空間41を車両外方に向けて配置したものである。
【0008】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、熱交換器のチューブ内に、内部流体が流通する流通空間と流通しない非流通空間とを仕切る仕切部材を設け、非流通空間が形成される部位が損傷を受け易い位置となるようチューブを配置したので、非流通空間形成部が破損しても冷媒が外部に漏れることがない。またチューブの板厚を厚くする必要がないので、軽量化および放熱性能を阻害することはない。
仕切部材を丸棒状の部材で構成し、これをチューブの内壁にろう付けにより固定するようにすれば、仕切部材の姿勢に拘わらずろう付け面積を十分に確保でき、気密性の向上が図れる。仕切部材の両端部がチューブ本体の両端部からそれぞれ突出するようにし、この両端突出部分を一対のヘッダパイプの内壁にそれぞれ当接して位置決めするようにすれば、従来用いていたチューブ位置決め用のサイドプレートが不要となり、部品点数の低減が図れる。チューブ本体に放熱効果を高めるためのフィンを挿入し、このフィンの一部を仕切部材位置決め部として用いれば、専用の位置決め部材を設けることなく仕切部材の位置決めが行え、これによっても部品点数の低減が図れる。チューブの非流通空間を車両外方に向けて配置すれば、車両外方より飛来する障害物が非流通空間形成部に衝突してその部分が破損しても、冷媒が外部に漏れることがない。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図4により、上記図7の空調用コンデンサに本発明を適用した場合の一実施の形態を説明する。
図1は本実施の形態におけるコンデンサのチューブ30を示す断面図である。チューブ本体31は、図9の従来例と同様にアルミ製の板を折り曲げて構成されるが、その奥行き(車両前後方向の長さ)が従来の長さLよりもΔだけ長くされる。チューブ本体31内には、図2に示すようにインナーフィン32がチューブ幅方向(冷媒の流通方向)に挿入されるとともに、丸棒状のアルミ製の仕切棒33(仕切部材に相当)が同方向に挿入される。仕切棒33は、チューブ本体31内の空間を車両前側空間41(非流通空間に相当)と後側空間42(流通空間に相当)とに仕切るもので、その直径はチューブ本体31の厚さよりも十分大きくされる。インナーフィン32は後側空間42に挿入され、これにより後側空間42が更に複数の冷媒流路42aに分割されることになる。
【0011】
仕切棒33の長さはチューブ本体31の幅よりも長くされ、図3に示すようにその両端がチューブ本体31の両端からチューブ位置決め部33aの分だけ突出するように挿入される。仕切棒33の表面には、インナーフィン32と同様に予めろう材を含むクラッド材が施されており、チューブ30を炉中に挿入してろう付け作業を行うと、インナーフィン32の上下凸部分がチューブ本体31の内壁にろう付けされると同時に、仕切棒33の上下部分がチューブ本体31の内壁にろう付けされる。したがって、仕切棒33を追加してもろう付け工程が増えることはない。
【0012】
次に、チューブ30をコンデンサに組み込む手順を説明する。
図4に示すように、コンデンサの左右ヘッダパイプ1(図7にも示す)には予めチューブ連結用の切欠き1aが複数形成されており、ここにチューブ30の一端側を係合し、チューブ位置決め部33aをヘッダパイプ1の内壁に当てて位置決めする。左右のヘッダパイプ1に対して同様の作業を行い、次いで炉中ろう付け作業を行うと、図4に符号51,52で示す部分、および切欠き1aの上下面とチューブ本体31の外面とがろう付けされ、チューブ30がヘッダパイプ1に固定される。このとき、図から分かるようにチューブ本体31の後側空間42はヘッダパイプ1内の空間1bと連通するが、前側空間41はパイプ内空間1bとは連通されない。ここで、仕切棒33の寸法公差によってチューブ端部と切欠き壁面との間に隙間Sが生ずる可能性があるが、51で示す部分のろう付けにより、空間1b内の冷媒が隙間Sから外部に漏れるおそれはない。
【0013】
以上のように構成されたコンデンサにおいて、不図示のコンプレッサによって圧送される冷媒は、ヘッダパイプ1の空間1bからチューブ30の後側室42に流入し、ここを流通する冷媒がフィン3(図7)を通過する空気との熱交換を行って冷却される。前側空間41は上述したように空間1bと連通していないので、ここに冷媒が流入することはない。このようにチューブ本体31は冷媒が流通しない空間を有しているが、後側室42は図9に示す従来例と同程度の奥行きLを有しているので、熱交換効率が従来と比べて劣ることはない。
【0014】
車両走行時、小石などの物体が飛んできてチューブ本体31の前側部分に衝突するおそれがあるが、チューブ30の前側空間41は冷媒が流通していないので、仮にチューブ本体31の前側部分に亀裂CR(図1)が生じたり、あるいは孔があいても冷媒が外部に漏れるおそれはない。場合によっては石等がチューブ本体31を突き抜けて仕切棒33に衝突することがあるかも知れないが、先のチューブ本体31への衝突によってその勢いは衰えており、しかも仕切棒33はチューブ本体31と比べて径が十分大きいので、仕切棒33に衝突してもこれに亀裂などが生じることはなく、冷媒の漏れにはつながらない。
【0015】
このように本実施の形態では、チューブ30の前側部分に冷媒が流通しない空間41を設けたので、チューブ本体31の板厚を厚くすることなく、すなわち軽量化および放熱性能を阻害することなく冷媒の漏れを確実に防止できる。特に仕切棒33を丸棒で構成したので、これがチューブ本体31に対して車両前後方向に位置ずれを起こしても、常に十分なろう付け面積を確保でき、気密性が低下することがない。因みに角棒を用いてもよいが、この場合は角部分がチューブ本体31の内壁に当接するよう配置されると、内壁とのろう付け面積が小さくなり、気密性が悪化するおそれがある。また、図4に示すように仕切棒33の両端突出部分をヘッダパイプ1への位置決めに用いたので、従来チューブ位置決め用として用いていた左右ヘッダパイプの上下端同士を連結するサイドプレートが不要となり、部品点数の低減が図れる。
【0016】
図5は他の実施の形態を示し、これは仕切棒33をインナーフィン32’の一部に係合させて位置決めしたものである。これによれば、専用の位置決め部材を設けることなく仕切棒33を正確に位置決めできる。
【0017】
以上では、仕切棒33の両端を突出させてヘッダパイプ1の内壁に当接させるようにしたが、例えば図6に示すように、仕切棒33の長さをチューブ本体31と略同一とし、その両端面を両ヘッダパイプ1の切欠き端面にそれぞれ当接させるようにしてもよい。
【0018】
なお、チューブ内を車両前後に仕切る例を示したが、例えばチューブの下側部分に損傷が生じ易い(石等が衝突し易い)場合には、チューブ内を上下に仕切り、下側部分に冷媒を流さないようにしてもよい。また複数あるチューブのうち、損傷のおそれのあるチューブのみ本実施の形態のような構成とし、損傷のおそれのない位置に配置されるチューブは従来と同様の構成でもよい。さらに空調用のコンデンサにて説明したが、ラジエータやオイルクーラーなど他の熱交換器にも本願発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコンデンサのチューブを示す断面図。
【図2】上記チューブの組立工程を示す斜視図。
【図3】上記チューブの平面図。
【図4】チューブとヘッダパイプとの接続状態を示す平面断面図。
【図5】チューブの他の実施の形態を示す断面図。
【図6】チューブとヘッダパイプとの接続方法の変形例を示す平面断面図。
【図7】コンデンサを車両前方から見た図。
【図8】従来のチューブを示す断面図(図7のA方向から見た図)。
【図9】他の従来チューブの断面図。
【符号の説明】
1 ヘッダパイプ
1a 切欠き
30 チューブ
31 チューブ本体
32,32’ インナーフィン
33,33’ 仕切棒
41 前側空間
42 後側空間
42a 冷媒流路
51,52 ろう付け部分
CR 亀裂

Claims (5)

  1. チューブ内を流通する内部流体と外部の流体との間で熱交換を行うとともに、チューブの一部分が外部から損傷を受け易い位置に位置するよう配置される熱交換器において、
    前記チューブ内には、前記内部流体が流通する流通空間と流通しない非流通空間とを仕切る仕切部材が内部流体の流通方向に延設され、前記非流通空間が形成される部位が前記損傷を受け易い位置となるよう前記チューブを配置したことを特徴とする熱交換器。
  2. 前記仕切部材は、内部流体の流通方向に延在する丸棒状の部材で構成され、チューブの内壁にろう付けにより固定されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
  3. 前記チューブの両端がそれぞれ連結され、前記流通空間と連通する空間を有する一対のヘッダパイプを有し、
    前記仕切部材は、その両端部がチューブ本体の両端部からそれぞれ突出するよう配置され、この両端突出部分は、前記一対のヘッダパイプの内壁にそれぞれ当接して前記チューブを前記ヘッダパイプに対して位置決めするためのチューブ位置決め部を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
  4. 前記チューブ本体には放熱効果を高めるためのフィンが挿入され、該フィンの一部が前記仕切部材を位置決めするための仕切部材位置決め部を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器。
  5. 前記熱交換器は車両に設けられ、チューブの前記非流通空間は、車両外方に向けて配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器。
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