JP3822116B2 - 半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造用の縮小投影型露光装置(ステッパ)の光源として使用される半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置に関する。
【従来の技術及び発明が解決する課題】
1)半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置では、露光装置内のレンズ光学系の収差による露光不具合を防止するために、露光光源であるエキシマレーザ光を狭帯域化した上で、発振中心波長を目標波長に長期安定的に発振させるとともに、発振スペクトル幅Δλを所定の範囲内に収める必要がある(発振波長および発振スペクトル幅の制御)。
2)また半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置では、均一な露光を実現するために、半導体ウエハ上に照射する出力レーザ光のエネルギーを一定に制御する必要がある(出力レーザ光のエネルギーの制御)。
【0002】
まず上記1)の「発振波長および発振スペクトル幅の制御」の従来技術について説明する。
【0003】
従来の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置では、一般的に、出力レーザ光の一部を波長モニタヘ入射させ、この波長モニタで検出した出力レーザ光の実際の発振中心波長λcrと、目標発振波長λctとの差が小さくなるように波長選択素子を駆動する制御が行われている。
【0004】
図6は、従来技術の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置の構成を示している。同図6は特願平1−128100号として既に出願され公知となっている本件出願人と同一出願人による特許出願の内容を示している。
【0005】
同図6に示すように、レーザチャンバ10内にはレーザガスが封入され主放電電極14、15が設けられている。主放電電極14、15間で放電が行われレーザガスが励起されるとレーザチャンバ10内で光が発生し、この光は、ウィンドウ11、12を透過し、フロントミラー20と狭帯域化部30との間で共振、増幅される。光は狭帯域化部30内のプリズム、グレーティング等の波長選択素子によって狭帯域化されてフロントミラー20からレーザ光21として出力される。
【0006】
出力レーザ光21の一部はビームスプリッタ41で反射されて波長モニタとしてのモニターエタロン43、回折格子型分光器44へ入射される。波長モニタ43、44では出力レーザ光21の発振中心波長λcrや発振スペクトル幅Δλが計測される。計測値は波長コントローラ45へ送信される。
【0007】
波長コントローラ45は受信した前記計測値を目標発振波長λctと比較して、その差が許容範囲外であればドライバ46を駆動して狭帯域化部30のプリズム又はグレーティングを駆動して発振中心波長λcrを目標値λctへ近づけるよう制御する。
【0008】
以上が従来の「発振波長の制御」の内容である。つぎに「発振スペクトル幅の制御」について説明する。
【0009】
発振スペクトル幅Δλが拡がると波長収差の問題が顕在化して露光装置で製造される半導体の品質が悪化する。発振スペクトル幅Δλが拡がる要因としては、レーザガス全圧の変化、レーザガス中のハロゲンガス濃度の変化、放電幅の拡大などが挙げられる。
【0010】
そこで従来より、これらの要因を考慮して発振スペクトルΔλの拡がりを防止する発明が特許出願され既に公知となっている。たとえば特願平4−312202号(出願公開済)には、レーザガス全圧やレーザガス中のハロゲンガスを調整してスペクトル幅の拡がりを防止する技術が開示されている。また特願平2−219602号、特願平2−219603号、特願平2−219604号には、電極を放電幅が変化し難いように構成して発振スペクトル幅の拡がりを防止する技術が開示されている。
【0011】
以上が従来の「発振スペクトル幅の制御」の内容である。
【0012】
つぎに2)の「出力レーザ光のエネルギーの制御」について説明する。
【0013】
出力レーザ光のエネルギーの長期的制御は、一般的にレーザガスの組成(特にハロゲンガス濃度)やレーザガス全圧を調整することにより行われる。
【0014】
この制御の内容を具体的に説明する。パルス発振するエキシマレーザの各パルス出力エネルギーEを、ほぼ一定に維持する短期的制御は図6の主放電電極14、15間に印加する電圧値HVの増減により行う。
【0015】
例えば、i番目のパルス出力エネルギーEiが目標値より大きい場合には、i+1番目のパルス発振のための前記電極間の印加電圧値HVi+1を、i番目のパルス発振時の印加電圧値HViよりも低い電圧値に設定して制御を行う。
【0016】
また、長期的にパルス発振を繰り返すと、主放電電極14、15の材料である金属(例えばCu)とレーザガス中のハロゲンガスとが反応してハロゲンガスのみが減少してゆく。
【0017】
レーザガス中のハロゲンガスが減少した場合は、前記電極間の印加電圧値HVの調整ではレーザ出力特性変動を補正しきれない場合があるため、レーザガス内へハロゲンガスを補給する或いはレーザガス全圧を上げる等のガス制御が必要になる。この制御に関しては図4を用いて説明する。
【0018】
図4は、レーザガス中に含まれるフッ素ガス(F2)の濃度Rと出力レーザ光のエネルギーEとの関係を示している。同図4に示すように、フッ素ガス濃度Rを大きくしていくと出力レーザ光のエネルギーEは大きくなるが、フッ素ガス濃度Rがある濃度に達すると逆にエネルギーEが減少に転ずるという特性がある。同図4に実線矢印Dで示す範囲がフッ素ガス濃度Rを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御する範囲である。
【0019】
図5は、レーザガス全圧PTと出力レーザ光のエネルギーEとの関係を示している。同図5に示すように、レーザガス全圧PTと出力レーザ光のエネルギーEとは正の相関を有することがわかる。ただしウインドウ11、12の耐圧限界があるのでレーザガス全圧も装置としての限界がある。同図5に実線矢印Gで示す範囲がレーザガス全圧PTを調整して出力レーザ光のエネルギーEを制御する範囲である。
【0020】
以上が従来の「出力レーザ光のエネルギーの制御」の内容である。
【0021】
以上のように従来技術では、レーザガスの組成(たとえばレーザガス濃度)などを調整して出力レーザ光のエネルギーや発振スペクトル幅Δλを所定範囲内に収めるとともに、発振中心波長λcrをモニタして、前記発振中心波長λcrと目標発振波長λctとの差が小さくなるようにプリズム又はグレーティングなどの波長選択素子を駆動制御して発振波長を目標値に安定させるようにしていた。
【0022】
しかし近年、発振中心波長λcrが目標発振波長λctから外れる原因として「波長チャープ」と称される現象が発見されるに至り、発振波長安定化のために波長チャープを抑制することが狭帯域エキシマレーザに求められるようになっている。以下図2を用いて波長チャープについて説明する。図2の横軸は経過時間tを示し縦軸はパルスレーザ光の発振中心波長λcrを示している。
【0023】
同図2にMで示すように、波長チャープとは、パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すいわゆるバーストモードでの発振動作を行うときに、連続パルス発振初期における数〜数十パルスの発振中心波長λcrが目標波長λctからδλだけ外れるという現象である。
【0024】
このδλ(=λcr−λct)の値が正の場合は、発振中心波長λcrは目標波長λctに比べて長波長側(+側)に外れており、δλの値が負の場合には、発振中心波長λcrは目標波長λctに比べて短波長側(−側)に外れていることを意味する。δλは、長波長側(+側)、短波長側(−側)のいずれかに現れ、かつその大きさも様々である。δλが+側なのか−側なのか、及びその大きさがどの程度であるかは、過去のレーザ動作履歴、例えばデューティー比や連続パルス発振の繰り返し数等の発振動作条件によって定まる。発振動作条件が一定であれば、δλの値も予測でき連続パルス発振初期に、目標波長λctからδλを差し引いた波長となるように波長選択素子を制御し、連続パルス発振初期よりも後は目標波長λctとなるように波長選択素子を制御すれば、δλの抑制は可能であると考えられる。
【0025】
しかしながら、現実には露光用レーザの発振動作は、デューティー比もパルス発振繰り返し数も必要に応じて変化させているため、波長チャープによる波長の外れδλの大きさ等を事前に予測することは極めて困難である。
【0026】
したがって従来技術のレベルでは、波長チャープを要因とする波長誤差を除去することは困難であった。
波長チャープを発生させる原因は明確には解明されていないが、パルスレーザ光の発振休止から連続パルス発振への過渡期におけるレーザガスの急激な温度変化や放電による音響波の影響が疑われている。このことは特開2001−308419号公報に記載されている。この公報には、音響波を減衰させる部材をレーザチャンバの内壁に設けることにより波長チャープを低減させるという発明が記載されている。
【0027】
図2に示すように波長チャープが発生する連続パルス発振の初期の数〜数十パルスを過ぎた後は、レーザガス温度等が安定し、目標波長λctで発振する状態に戻る。これはプリズムやグレーティングなどの狭帯域素子の配置は目標波長λctで発振できるように設定されているからである。
【0028】
上述したように特開2001−308419号公報には、波長チャープを発生させる原因は、パルスレーザ光の発振休止から連続パルス発振への過渡期におけるレーザガスの急激な温度変化や放電による音響波の影響と考えられているが、これらの温度変化や音響波の影響を小さくできれば波長チャープ自体は理論的に減少させることができる。そしてレーザガスの急激な温度変化や音響波レベルを低下させるには、レーザチャンバ10内の主放電電極14、15に印加する電圧HVを低下させて出力レーザ光21のエネルギーEのレベルを下げればよいことがわかっている。
【0029】
しかし主放電電極14、15の印加電圧HVを下げることにすると、出力レーザ光のエネルギーEのばらつきσEが大きくなる。これについて図3を参照して説明する。
【0030】
図3は、横軸に電極印加電圧HVをとり縦軸に出力レーザ光エネルギーのばらつきσEをとったグラフを示している。同図3のBに示すように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなってしまう。このような傾向はエキシマレーザに特有の特性である。
【0031】
このため電極印加電圧HVを低下させた場合には、半導体ウエハ上に照射する出力レーザ光のエネルギーが一定ではなくなり露光が均一に行われなくなるという問題が発生する。
【0032】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、波長チャープを減少させるとともに出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEを少なくして、バーストモード運転時における発振波長を安定化させるとともに均一な露光を実現できるようにすることを主要な解決課題(第1の解決課題)とするものである。
【0033】
ところで図3で説明したように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、それに伴い出力レーザ光のエネルギーEのレベルも低下する。
【0034】
そこで本発明は、上記第1の解決課題を達成するとともに、電極印加電圧HVの低下に伴う出力レーザ光のエネルギーEのレベルの低下を補償できるようにすることを、第2の解決課題とするものである。
【0039】
【課題を解決するための手段、作用および効果】
そこで第1発明は、第1の解決課題を達成するために、
パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で運転が行われる半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置において、
主放電電極に印加する電圧を、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、 両主放電電極の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されていること
を特徴とする。
【0040】
主放電電極14、15を、セラミックス材でコーティング又は、セラミックス材を含むコーティング材でコーティング処理が施されているコーティング電極は、以下のような特性を有することを本発明者らは発見するに至った。
【0041】
なお、セラミックス材としては耐ハロゲンガスという観点で高純度アルミナセラミックスが望ましい。また、セラミックス材を含むコーティング材としてはセラミックス剤と金属との混合物が望ましい。混合する金属は導電性等の観点からCu(銅)が望ましい。
【0042】
(1)電極印加電圧HVを下げたとしてもノーコート電極(コーティング処理が施されていない主放電電極14、15)に比べてエネルギーのばらつきσEの悪化が少ない。
【0043】
(2)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ない。
【0044】
(3)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ないのでフッ素ガス消費量も少ない。
【0045】
(4)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ないのでレーザガス中に発生するダストも少ない。
【0046】
(5)ノーコード電極に比べて出力(パワー)は出難い。
【0047】
(6)電極印加電圧HVを、ある電圧値以下に下げるとノーコート電極に比べ
てレーザ光エネルギーEが大きくなる逆転現象を生ずる。
【0048】
第1発明によれば、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されているので上記特性(5)に示すデメリットはあるものの、上記特性(1)〜(6)に相当する有用な効果が得られる。
【0049】
上記特性(1)について図3を参照して説明する。
【0050】
前述したように、ノーコート電極の場合、図3のBに示すように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなってしまう。これに対してコーティング電極の場合、図3のAに示すように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなる点ではノーコード電極の場合と同様の傾向を示すが、同じ電極印加電圧であればノーコート電極の場合よりもエネルギーのばらつきσEの悪化は少ない。
【0051】
電極印加電圧HVが下がれば、パルスレーザ発振休止状態から連続パルス発振動作へ移った直後のレーザガスの急激な温度変化や放電による音響波のレベルが下がり波長チャープが減少する。
【0052】
電極印加電圧HVを下げるに伴い出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなるものの、そのばらつきσEの悪化は、ノーコート電極と比較して抑制される。このため半導体ウエハ上に照射する出力レーザ光のエネルギーを一定に維持でき露光を均一に行うことができる。
【0053】
以上のように第1発明によれば、主放電電極14、15に印加する電圧HVを、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されているので、波長チャープを減少させるとともに出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEを少なくして、バーストモード運転時における発振波長を安定化させるとともに均一な露光を実現することができる。
【0054】
第2発明は、第2の解決課題を達成するために、
パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で運転が行われる半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置において、
主放電電極に印加する電圧を、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、
両主放電電極の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理を施し、更に、
電極印加電圧を低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーが低下した分を補償する補償手段を備えたこと
を特徴とする。
【0055】
ところで第1発明において電極印加電圧HVを下げれば、各パルス光のエネルギーレベルも比例して低下してしまい露光に必要なレーザ光のエネルギーレベルを確保することができなくなる。このためエネルギーレベルが低下した分を補償する必要がある。
【0056】
そこで第2発明では第1発明の構成に加えて、電極印加電圧HVを低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を補償する補償手段を備えるようにしている。この補償手段は、レーザガスの組成を調整する手段、たとえばフッ素ガス濃度を調整する手段あるいはレーザガス全圧を調整する手段で具現化することができる。
【0057】
上記特性(6)で説明したように、コーティング電極は電極印加電圧HVを、ある電圧値以下に下げるとノーコート電極に比べてレーザ光エネルギーEが大きくなる逆転現象を生ずる特性を備えている。したがって、前記印加電圧HVが前記逆転現象を生じさせる電圧値以下であればノーコート電極を用いるよりもレーザ光エネルギーEの前記補償は容易となる。
【0058】
第3発明は、第2発明において、
前記補償手段は、レーザガスの組成を調整することによりレーザ光のエネルギーを制御するものであること
を特徴とする。
【0059】
第3発明では、レーザガスの組成、たとえばフッ素ガス濃度を調整することで、電極印加電圧HVを低下させることに伴い、露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を、補償するようにしている。
【0060】
第4発明は、第2発明において、
前記補償手段は、レーザガスの全圧を調整することによりレーザ光のエネルギーを制御するものであること
を特徴とする。
【0061】
第4発明では、レーザガスの全圧を調整することで、電極印加電圧HVを低下させることに伴い、露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を、補償するようにしている。
【0063】
ところで、ノーコート電極を用いて「出力レーザ光のエネルギーの制御」を行う場合、図4に説明したように実線矢印Dで示す制御範囲でフッ素ガス濃度Rを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御していた。また図5で説明したように、実線矢印Gで示す制御範囲でレーザガス全圧PTを調整して出力レーザ光のエネルギーEを制御していた。
【0064】
これに対してノーコート電極の代わりにコーティング電極を採用すると、電極印加電圧HVが上記特性(6)で説明した前記逆転現象を生じさせる電圧値よりも大きい場合においては、ノーコート電極に比べて電極印加電圧HVが同じ場合でも出力レーザ光21のエネルギーEのレベルは低下する。また波長チャープ抑制のために電極印加電圧HVを低下させているので出力レーザ光21のエネルギーEは一層低下することになる。この問題の解決について説明する。
コーティング電極を採用して電極印加電圧値HVを下げた場合には、図4の破線矢印Cに示すようにノーコート電極の場合の制御範囲Dのうちフッ素ガス濃度Rが高い領域内でフッ素ガス濃度Rを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御する。またコーティング電極を採用して電極印加電圧値HVを下げた場合には、図5の破線矢印Fに示すようにノーコート電極の場合の制御範囲Gのうちレーザガス全圧PTが高い領域内でレーザガス全圧PTを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御する。図4、図5ではフッ素ガス濃度R、レーザガス全圧PTの上限を変更していないが、コーティング電極採用に伴い上限値を上昇させてもよい。
【0065】
ここで上記特性(3)で説明したようにコーティング電極はフッ素ガス消費量が少ないという特性を有するので、ノーコート電極に比べてフッ素ガス濃度Rの可変範囲またはガス全圧PTの可変範囲を更に狭めることができる。
【0066】
このように本発明によれば、出力レーザ光のエネルギーEを一定にするためのレーザガス組成(フッ素ガス濃度R)、レーザガス全圧PTの調整範囲を、より狭めることができるようになり、出力レーザ光のエネルギーEの制御を、より安定して、より精度よく行えることができるようになる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0068】
図1は実施形態の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置の構成を示している。
【0069】
図1の構成は、図6で説明した従来の装置構成の構成要素と一部一致しており同様の機能のものには同一符号を付している。
【0070】
すなわちレーザチャンバ10内にはレーザガスが封入されている。レーザチャンバ10は金属製であり、KrFエキシマレーザであればフッ素ガスF2,希ガスとしてのクリプトンKr,バッファガスとしてのネオンNeを混合したレーザガスが封入されている。またArFエキシマレーザであればフッ素ガスF2,希ガスとしてのアルゴンAr,バッファガスとしてのNeを混合したレーザガスが封入されている。
【0071】
レーザチャンバ10には、レーザチャンバ10内で発生する光を外部へ取り出すためのウィンドウ11、12が設けられている。これらウィンドウ11、12は紫外線を透過させることができ、レーザガス組成にフッ素ガスF2を含むことから、フッ素ガスF2に耐性のある材質、たとえばフッ化カルシウムで構成されている。
【0072】
レーザチャンバ10内には、放電によってレーザガスを励起させるべく一対の主放電電極14、15が設けられている。これら主放電電極14、15には電源装置23から高圧の電圧HVが印加され主放電電極14、15間で放電が行われる。
【0073】
図中、主放電電極14、15は、紙面と平行に設けられている。主放電電極14、15はそれぞれ紙面手前と紙面奥側に設置されているので、紙面奥側の電極は紙面手前側の電極の陰に隠れて図示されていない。
【0074】
狭帯域化モジュール130は、図6の狭帯域化部30とドライバ46に相当するものであり、筐体131の内部に複数のビームエキスパンダプリズム132と波長選択グレーティング133とドライバとしてステッパモータ140、PZT(ピエゾ)素子141、回転ステージ13が設けられている。複数のビームエキスパンダプリズム132のうち所定のビームエキスパンダプリズム132は回転ステージ13上に固定されている。回転ステージ13は、図中紙面に直行する軸を中心に回転が可能な状態に配置されているものとする。回転ステージ13の回転駆動力は、ステッパモータ140の駆動と、このステッパモータ140の駆動シャフト先端に取り付けられたPZT素子141の伸縮駆動によって与えられる。
【0075】
主放電電極14、15間で放電が行われレーザガスが励起されるとレーザチャンバ10内で光が発生する。この光は狭帯域化モジュール130内のビームエキスパンダプリズム132、グレーティング133という波長選択素子によって狭帯域化される。
【0076】
すなわちレーザチャンバ10内で発生しウインドウ12を透過した光ビーム120は、筐体131の内部へ入射する。そして、光ビーム120はビームエキスパンダプリズム132で光ビーム幅が拡大されて、グレーティング133の溝形成面へ入射する。
【0077】
なお本実施例の主放電電極14、15とビームエキスパンダプリズム132及びグレーティング133の配置関係について説明すると、主放電電極14から主放電電極15へ向かう放電方向とビームエキスパンダプリズム132による光ビーム幅拡大方向とは直行し、かつ放電方向とグレーティング133の溝形成方向とは平行になるように、各部品が配置されているものとする。
【0078】
筐体131には筐体131の内部ヘパージガスを導入する孔135が設けられている。孔135からは、清浄な窒素ガス等の不活性ガス145がパージガスとして筐体31の内部へ連続的に導入される。導入された不活性ガス145によって筐体31内部の不純物が外部ヘ排出される。
【0079】
レーザチャンバ10内で発生した光は、ウィンドウ11、12を透過し、半透過型のフロントミラー20と狭帯域化モジュール130との間で共振、増幅される。レーザチャンバ10内で発生した光はフロントミラー20とグレーティング133との間を往復しながら主放電電極14、15間のゲイン領域で増幅されつつ狭帯域化されて、フロントミラー20から出力レーザ光21として出射される。
【0080】
出力レーザ光21の一部はビームスプリッタ41で反射される。反射したレーザ光21は、波長モニタ37およびエネルギーモニタ38へ入射される。
【0081】
エネルギーモニタ38では、各パルス毎に出力レーザ光21の出力レーザ光エネルギーEが計測される。計測された出力レーザ光エネルギーEはレーザコントローラ29に送信される。レーザコントローラ29では、計測した実際の出力レーザ光21のエネルギーEと目標出力レーザ光エネルギーEPTとを比較する処理が実行される。この比較の結果、出力レーザ光21の実際のエネルギーEが目標値EPTに対して過剰又は過少であれば、レーザコントローラ29は、過剰又は過小分を補正するための電圧指令を電源装置23に送信する。これにより電源装置23は、出力レーザ光21のエネルギーEを目標値EPTにするために電極印加電圧HVを主放電電極14、15に印加する。これにより出力レーザ光21のエネルギーEが補正されて目標値EPTに近づけることができる。
【0082】
同様に、波長モニタ37では、各パルス毎に出力レーザ光21の発振中心波長λcrおよびスペクトル幅Δλが計測される。計測された発振中心波長λcrおよびスペクトル幅Δλはレーザコントローラ29に送信される。レーザコントローラ29では、計測した実際の発振中心波長λcrと目標波長λctとを比較するともに、実際のスペクトル幅Δλと目標スペクトル幅Δλtとを比較する処理が実行される。
【0083】
この比較の結果、実際の発振中心波長λcrと目標波長λctとの差が許容範囲外である場合、または実際のスペクトル幅Δλと目標スペクトル幅Δλtとの差が許容範囲外である場合には、目標値λct、Δλtに一致させるために駆動指令をドライバとしてのステッパモータ140、PZT素子141に出力する。これにより回転ステージ13が回転し、この回転に応じてビームエキスパンダプリズム132の姿勢が変化し、実際の発振中心波長λcrが目標値λctに一致する。
【0084】
ステッパモータ140に駆動指令が与えられると、この駆動指令に応じた回転位置にステッパモータ140が回転し、このステッパモータ140の回転位置に応じた回転角まで回転ステージ13が回転する。そして回転ステージ13の回転位置に応じた姿勢にビームエキスパンダプリズム132が位置決めされる。同様にPZT素子141に駆動指令が与えられると、この駆動指令に応じてPZT素子141が伸縮し、このPZT素子141の伸縮位置に応じた回転角まで回転ステージ13が回転する。そして回転ステージ13の回転位置に応じた姿勢にビームエキスパンダプリズム132が位置決めされる。
【0085】
ビームエキスパンダプリズム132が回転しその姿勢が変化すると、グレーティング133への光ビーム120の入射角度Φが変化する。これにより光ビーム120の選択波長を変えることができ、出力レーザ光21の実際の波長λcrを目標波長λctに一致させる。
【0086】
本実施形態では、主放電電極14、15のうちアノード側の電極の放電面に、セラミックス材を含むコーティング材によってコーティング処理が施されている。
【0087】
ここでコーティング電極をアノード側の電極としているのは、アノード側電極は摩耗が激しい電極であるという理由による。しかし本発明としてはアノード側電極に限ることなく、アノード側電極およびカソード側電極の双方をコーティング電極として構成してもよい。また実施形態では放電面のみコーティング処理が施されているが、電極全体に渡りコーティング処理が施されていてもよい。また実施形態では、コーティング材としてセラミックス材を含むようにしてが、前述した特性(1)〜(6)のうち少なくともいずれか1つの有用な効果が得られるコーティング材であればよい。
【0088】
つぎに以上の構成において、主放電電極14、15のうち少なくとも一方の電極の少なくともその放電面にコーティング処理が施されていることによる作用、効果について説明する。
【0089】
・第1の実施形態
まず図1に示す半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置の主放電電極14、15のうち少なくとも一方の電極の少なくともその放電面にコーティング処理が施されている場合について説明する。コーティング電極それ自体は、つぎのような特性を備えている。
【0090】
(1)電極印加電圧HVを下げたとしてもノーコート電極(コーティング処理が施されていない主放電電極14、15)に比べてエネルギーのばらつきσEの悪化が少ない。
【0091】
(2)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ない。
【0092】
(3)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ないのでフッ素ガス消費量も少ない。
【0093】
(4)ノーコート電極に比べて電極削れ量が少ないのでレーザガス中に発生するダストも少ない。
【0094】
(5)ノーコード電極に比べて出力(パワー)は出難い。
【0095】
(6)電極印加電圧HVを、ある電圧値以下に下げるとノーコート電極に比べ
てレーザ光エネルギーEが大きくなる逆転現象を生ずる。
【0096】
第1の実施形態によれば、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されているので、上記特性(5)に示すデメリットはあるものの上記特性(1)〜(6)に相当する有用な効果が得られる。
【0097】
なお本第1の実施形態において、レーザ装置の運転は任意であり、波長チャープが問題となるバーストモード運転(パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で行われる運転)で運転される場合に限定されるわけではない。
【0098】
・第2の実施形態
つぎに、図1に示す半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置を、バーストモードつまりパルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で運転する場合について説明する。
【0099】
バーストモードで運転する場合には図2で前述したように波長チャープが発生して発振波長が安定しなくなるという問題が発生する。
【0100】
ここで主放電電極14、15をコーティング電極にすると、上記特性(1)が得られこれにより波長チャープを抑制することができる。これについて図3を参照して説明する。
【0101】
前述したように、ノーコート電極の場合、図3のBに示すように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなってしまう。これに対してコーティング電極の場合、図3のAに示すように、波長チャープを減少させるべく電極印加電圧HVを低下させると、出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなる点ではノーコード電極の場合と同様の傾向を示すが、同じ電極印加電圧であればノーコート電極の場合よりもエネルギーのばらつきσEの悪化は少ない。
【0102】
電極印加電圧HVが下がれば、パルスレーザ発振休止状態から連続パルス発振動作へ移った直後のレーザガスの急激な温度変化や放電による音響波のレベルが下がり波長チャープが減少する。
【0103】
電極印加電圧HVを下げるに伴い出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが大きくなるものの、そのばらつきσEの悪化は、ノーコート電極と比較して抑制される。このため半導体ウエハ上に照射する出力レーザ光のエネルギーを一定に維持でき均一な露光を維持することができる。
【0104】
そこで本第2の実施形態では、バーストモードで運転が行われ波長チャープの発生が問題となる半導体露光光源用狭帯域発エキシマレーザ装置において、主放電電極14、15に印加する電圧HVを、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されているようにする。これにより波長チャープが減少するとともに出力レーザ光のエネルギーのばらつきσEが少なくなり、バーストモード運転時における発振波長が安定化するとともに露光を均一に行うことができるようになる。
【0105】
・第3の実施形態
ところで上記第2の実施形態において、電極印加電圧HVを下げれば、各パルス光のエネルギーEのレベルも比例して低下してしまい露光に必要なレーザ光のエネルギーレベルを確保することができなくなる。このためエネルギーEのレベルが低下した分を補償する必要がある。
【0106】
この補償の方法としては、照射するパルス数を増やすことが考えられるが、露光時間が長くなりスループットが低下するという問題がある。また、このスループットの低下を防ぐためには、パルス発振繰返し数を増やすことが考えられるが、電源の大型化等の設計上の問題がある。
【0107】
そこで本第3の実施形態では、第2の実施形態の構成に加えて、電極印加電圧HVを低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を補償する補償手段を備えるようにしている。この補償手段は、レーザチャンバ10のレーザガスの組成を調整する手段、たとえばフッ素ガスF2の濃度を調整する手段あるいはレーザガス全圧PTを調整する手段で具現化することができる。
【0108】
たとえばフッ素ガスF2の濃度を図4に示す制御範囲Cで調整することで、電極印加電圧HVを低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を補償する。
【0109】
またレーザガスの全圧PTを図5に示す制御範囲Fで調整することで、電極印加電圧HVを低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーEが低下した分を補償する。
【0110】
・第4の実施形態
つぎにレーザガス中にフッ素ガスF2を含む半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置において、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されている実施形態について説明する。
【0111】
ノーコート電極を用いて「出力レーザ光のエネルギーの制御」を行う場合、図4に説明したように実線矢印Dで示す制御範囲でフッ素ガス濃度Rを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御していた。また図5で説明したように、実線矢印Gで示す制御範囲でレーザガス全圧PTを調整して出力レーザ光のエネルギーEを制御していた。
【0112】
これに対してノーコート電極の代わりにコーティング電極を採用すると、電極印加電圧HVが上記特性(6)で説明した前記逆転現象を生じさせる電圧値よりも大きい場合においては、ノーコート電極に比べて電極印加電圧HVが同じ場合でも出力レーザ光21のエネルギーEのレベルは低下する。また波長チャープ抑制のために電極印加電圧HVを低下させているので出力レーザ光21のエネルギーEは一層低下することになる。この問題の解決について説明する。
コーティング電極を採用して電極印加電圧値HVを下げた場合には、図4の破線矢印Cに示すようにノーコート電極の場合の制御範囲Dのうちフッ素ガス濃度Rが高い領域内でフッ素ガス濃度Rを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御する。またコーティング電極を採用して電極印加電圧値HVを下げた場合には、図5の破線矢印Fに示すようにノーコート電極の場合の制御範囲Gのうちレーザガス全圧PTが高い領域内でレーザガス全圧PTを調整して出力レーザ光エネルギーEを制御する。図4、図5ではフッ素ガス濃度R、レーザガス全圧PTの上限を変更していないが、コーティング電極採用に伴い上限値を上昇させてもよい。
【0113】
レーザガス中のフッ素ガスの減少は、主に電極材とフッ素ガスとの化学反応により生ずる。フッ素ガスの減少によるレーザ光エネルギーEの低下分を補償するためには、フッ素ガスを補給したり、レーザガス全圧を上昇させたりする制御が必要になる。
【0114】
ここで上記特性(3)で説明したようにコーティング電極はフッ素ガス消費量が少ないという特性を有するので、ノーコート電極に比べてフッ素ガス濃度Rの可変範囲またはガス全圧PTの可変範囲を更に狭めることができる。
【0115】
このように本第4の実施形態によれば、出力レーザ光のエネルギーEを一定にするためのレーザガス組成(フッ素ガス濃度R)、レーザガス全圧PTの調整範囲を、より狭めることができるようになり、出力レーザ光のエネルギーEの制御を、より安定して、より精度よく行えることができるようになる。
【0116】
なお本第4の実施形態において、レーザ装置の運転は任意であり、波長チャープが問題となるバーストモード運転(パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で行われる運転)で運転される場合に限定されるわけではない。
【0117】
・第5の実施形態
PZT素子141は、ステッパモータ140などのパルスモータに比べて高速で高精度な制御が可能である。このためPZT素子141を用いてビームエキスパンダプリズム132などの波長選択素子を駆動制御すると発振波長の安定性が格段に向上する。しかしPZT素子141はステッパモータ140などのパルスモータと比較して制御可能なダイナミックレンジが狭いという欠点を有している。
【0118】
そこで本第5の実施形態では、基本的にはPZT素子141によってビームエキスパンダプリズム132を駆動制御することにし、PZT素子141に与えられる駆動電圧Vが初期値V0から限界値V1(下限値)に達した場合には、PZT素子141がそれまでに駆動した量だけステッパモータ140を駆動して、PZT素子駆動量をステッパモータ140で保持するとともに、ステッパモータ140を駆動している間にPZT素子141の駆動電圧Vを初期の電圧値V0に戻すという置き換え制御を行い、PZT素子141の高速高精度な制御性をいかしつつダイナミックレンジが狭いという欠点を、ステッパモータ140の駆動によってPZT素子駆動量を保持するという制御で補完するようにしている。
【0119】
以上の説明ではPZT素子の駆動電圧を低下させて制御を行う例を示したが、発振波長が長波長側又は短波長側のいずれかの変化する方向に応じてビームエキスパンダプリズム132の回転方向を変える必要がある。したがって、前記ビームエキスパンダプリズム132の回転方向に応じてPZT素子の駆動電圧を低下又は上昇させて制御を行う。前記駆動電圧を上昇させて制御を行う場合は、前記駆動電圧Vが上限値に達した場合にステッパモータ140によってPZT素子駆動量を保持し、PZT素子駆動電圧を初期の電圧値V0へ戻す。
【0120】
この制御内容について図7を参照して説明する。
【0121】
図7(a)は、レーザコントローラ29による波長制御を行わずに発振中心波長の変化を放置した場合に、初期値の発振中心波長をλ0として実際の発振中心波長λcrが変化する様子を特性Iで示している。また図7(b)はレーザ発振のオン(ON)、オフ(OFF)の状態変化Hを示している。
【0122】
図7(c)、(d)、(e)は本実施形態による置き換え制御を実行した場合を示している。
【0123】
図7(c)は上記初期値λ0を目標値としたとき目標値λ0と実際の発振中心波長λcrとの差δλcoが変化する様子Jを示している。
【0124】
図7(d)はPZT素子141に与えられる駆動電圧Vの変化Kを示している。PZT素子141にはV0を初期値(電圧値0)として下限値をV1とする駆動電圧Vが与えられて駆動する。つまりPZT素子141の駆動量つまり伸縮範囲は、電圧値Vが変化する範囲V0〜V1によって規定される。
【0125】
図7(e)はステッパモータ140に与えられる指令パルス数Pの変化Lを示している。ステッパモータ140にはP0を初期値(指令パルス数0)として下限を無限大とする指令パルス数Pが与えられて駆動する。
【0126】
図7(a)〜(e)の横軸は時間軸tで共通である。
【0127】
いまレーザコントローラ29で波長制御を行わなかった場合を想定する。この場合にはレーザ発振が時刻t10でONされてから(図7(b)参照)、レーザ発振中心波長λcrが初期の目標値λ0から徐々に増大していく(図7(a)参照)。こうした波長変化の要因は、レーザガスや他の部分の温度変化、フッ素ガス濃度Rの変動、レーザガス全圧PTの変動などが考えられる。レーザガスやレーザ装置の温度変化は、共振器長や波長選択素子の光学特性を変化させる可能性がある。またレーザガスの屈折率はレーザガスの種類や密度によって変化するので、フッ素ガス濃度Rの変化やレーザガス全圧PTの変化により共振器の光学路長が変化して発振波長がずれてくる可能性がある。
【0128】
これに対してレーザコントローラ29で波長制御を行ったものとする。この場合には、レーザ発振が時刻t10でONされてから(図7(b)参照)、PZT素子141に駆動電圧Vが与えられるとともに(図7(d)参照)、ステッパモータ140にパルス数指令Pが与えられ(図7(e)参照)、目標波長λ0と実際の発振中心波長λcrとの差である波長誤差δλcoがほぼ零になる(図7(c)参照)。
【0129】
すなわち図7(d)に示すように、図7(a)に示される時刻t10〜時刻t11における波長変動分を補償すべくPZT素子141に与えられる駆動電圧Vは同時刻t10〜t11の間において初期値V0から下限値V1まで変化する。この電圧変化に応じた駆動量だけPZT素子141は駆動する。しかしながらPZT素子141自体は、これ以上駆動することができないので、つぎの時刻t11〜t12の間に駆動電圧Vは初期値V0まで戻されて、PZT素子141は初期の駆動位置に復帰する。一方PZT素子141の駆動電圧Vを初期値V0に戻している間(時刻t11〜t12の間:以下「置き換え時間」という)に、PZT素子141がそれまでに駆動した量(V1−V0相当分)だけステッパモータ140を駆動すべくパルス数指令P1が与えられる。これによりステッパモータ140は、PZT素子141が時刻t10〜t11の間で駆動した駆動量だけ駆動され、PZT素子141の駆動量を保持する。
【0130】
以下同様に、図7(a)に示される時刻t11〜時刻t13における波長変動分を補償すべく、時刻t12〜時刻t13間でPZT素子141が駆動して、PZT素子141に与えられる駆動電圧Vが限界値V1(下限値)に達すると、つぎの置き換え時間(時刻t13〜時刻t14)内に、PZT素子141がそれまでに駆動した量(2(V1−V0分))に相当するパルス数指令(P2)をステッパモータ140を与えてステッパモータ140を駆動して、PZT素子141がこれまでに駆動した量を保持する(図7(e)の時刻t14参照)。これとともに同置き換え時間(時刻t13〜時刻t14)内にステッパモータ140が駆動されている間に、PZT素子141の駆動電圧Vを初期の電圧値V0に戻す制御が行われる(図7(d)の時刻t13〜時刻t14参照)。
【0131】
ここで本実施形態では、両主放電電極14、15の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されている。
【0132】
コーティング電極は上記特性(3)で説明したように、フッ素ガスF2の消費量が少ないためフッ素ガス濃度Rの制御やレーザガス全圧PTの制御を行う機会が減る。また図4、図5で説明したようにフッ素ガス濃度Rの可変範囲やレーザガス全圧PTの可変範囲を狭くすることができる。このため図7(a)に示す発振中心波長λcrの変化特性Iの傾きは、特性I′に示すように緩やかになる。
【0133】
これに伴いPZT素子141に与える駆動電圧Vの変化特性Kの傾きは、図7(d)に特性K′に示すように緩やかになる。これにより上記置き換え制御を行う機会が少なくなるとともに全体として置き換え時間も短くなる。
【0134】
置き換え制御を行う機会が少なくなり置き換え時間の合計が短くなるということは、PZT素子141を用いて高速で高精度な発振波長の制御が実行されている時間が長くなることを意味する。
【0135】
たとえば発振波長が突然大きく変化した場合を想定する。
【0136】
置き換え制御が頻繁に行われ全体の置き換え時間が長い場合には、発振波長が突然大きく変化したときに置き換え制御実行中と重なってしまう可能性が増し、PZT素子141による高速高精度な波長制御(置き換え制御実行中以外の時間に行われる制御)によって発振波長を目標波長に戻すことができなくなるおそれがある。
【0137】
しかし本実施形態によれば置き換え制御が行われる機会が少なくなり全体の置き換え時間が短くなるので、発振波長が突然大きく変化したときに置き換え制御と重なることが少なくなり、PZT素子141による高速高精度な波長制御によって発振波長を目標波長に迅速に戻すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本実施形態の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置の構成を示す図である。
【図2】図2は波長チャープを説明する図である。
【図3】図3は電極印加電圧と出力レーザ光エネルギーのばらつきとの関係を示す図である。
【図4】図4はフッ素ガス濃度と出力レーザ光エネルギーとの関係を示す図である。
【図5】図5はレーザガス全圧と出力レーザ光エネルギーとの関係を示す図である。
【図6】図6は狭帯域発振エキシマレーザ装置を例示する図である。
【図7】図7は本実施形態における波長制御を説明する図である。
【符号の説明】
14、15 主放電電極
Claims (4)
- パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で運転が行われる半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置において、
主放電電極に印加する電圧を、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、
両主放電電極の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されていること
を特徴とする半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置。 - パルスレーザ光の発振休止とパルスレーザ光の連続発振を交互に繰返すバースト発振動作で運転が行われる半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置において、
主放電電極に印加する電圧を、波長チャープが減少する程度まで低下させるとともに、
両主放電電極の少なくとも一方の主放電電極の少なくともその放電面に、コーティング処理が施されていること、更に、
電極印加電圧を低下させることに伴い露光に必要なレーザ光のエネルギーが低下した分を補償する補償手段を備えたこと
を特徴とする半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置。 - 前記補償手段は、レーザガスの組成を調整することによりレーザ光のエネルギーを制御するものであること
を特徴とする請求項2記載の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置。 - 前記補償手段は、レーザガスの全圧を調整することによりレーザ光のエネルギーを制御するものであること
を特徴とする請求項2記載の半導体露光光源用狭帯域エキシマレーザ装置。
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