JP3822079B2 - レーダ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、妨害波の抑圧機能を付加したレーダ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、相手レーダによる探知を回避するために種々の電波妨害(ECM:Electric Counter Measures)が考えられており、これに対するレーダ側でもまた、その電波妨害に対する対抗手段として、種々の電波妨害除去動作(ECCM:Electric Counter Counter Measures)が考案されている。
【0003】
ECCMにおいて、アンテナビームのサイドローブを介してレーダ側に侵入する継続的な妨害波に対しては、サイドローブからの妨害電波を除去するSLC(Sidelobe Canceller)が一つの有効な手段として知られている。
【0004】
図9は、従来のSLCを搭載したレーダ装置の要部構成図である。
【0005】
すなわち、従来のSLCを搭載したレーダ装置は、パラボラアンテナ等によりアンテナビームを形成して回転走査する主アンテナ1と、その主アンテナ1に接続され、レーダ波を送受信する送受信部2と、無指向性のアンテナパターンを形成するSLCアンテナ(補助アンテナ)3及びそのSLC受信部4と、送受信部2及びSLC受信部4に接続され、サイドローブからの妨害波を抑圧して受信信号を出力するSLC処理部5と、妨害波が抑圧除去された受信信号を表示する表示器6と、周期rのクロック信号Rを生成して、送受信部2及びSLC受信部4に供給する基準信号発生器7等から構成されている。
【0006】
主アンテナ1に接続された送受信部2は、図9(b)に示すように、送受切替器2aと、その送受切替器2aを介して供給された受信信号を増幅する低雑音高周波増幅器2bと、局部発信器8からの局発信号と混合して中間周波数(IF)信号を生成する混合器2cと、IF信号を増幅する中間周波増幅器2dと、基準信号発生器7からのクロック信号Rに同期して検波し、その検波出力信号をSLC処理部5に供給する検波器2eとから構成されている。なお、送受切替器2aには送信機9が接続される。
【0007】
一方、SLCアンテナ3に接続されたSLC受信部4も、同じく基準信号発生器7から供給される周期rのクロック信号Rに同期した検波を行い、その検波出力はSLC処理部5に供給される。
【0008】
図10は、SLC処理部5における妨害波抑圧作用を説明した図で、図10(a)に示したように、実線で示した主アンテナ1の指向性アンテナパターン1aに対し、SLCアンテナ3は、一点鎖線で示したように、指向性アンテナパターン1aにおけるサイドローブレベルを包含した無指向性アンテナパターン3aを形成する。
【0009】
主アンテナ1の主ビームがアンテナ開口面の法線方向に、ある角度方位Pを指向し、妨害波Jがその角度方位Pを基準としたなす角度、すなわち入射角θで到来し、それぞれ主アンテナ1及びSLCアンテナ3で受信されたとき、各主アンテナ1及びSLCアンテナ3で受信された妨害波Jm ,Js は、それぞれ送受信部2及びSLC受信部4を介してSLC処理部5に供給される。
【0010】
SLC処理部5の機能は、入射角θにおけるアンテナパターン3aのレベルを制御し、入射角θにおいて、SLCアンテナ3で受信された妨害波Js を、主アンテナ1のサイドローブを介して受信された妨害波Jm と比較し、その振幅が等しく、かつ同位相となるように制御して両受信信号間の減算を行うものである。
【0011】
従って、SLC処理部5は演算処理により、図10(b)に破線で示すように、丁度入射角θにヌル点(PN )を有する受信アンテナパターンで到来電波を受信した状態とするので、同振幅及び同位相の両妨害波Jm ,Js の減算により妨害波J(Jm ,Js )は抑圧除去され、残りの角度方位Pより到来した目標検出信号は的確に残留して表示器6に供給表示される。
【0012】
SLC処理部5は、図9(a)に示したように構成され、送受信部2に接続された減算器5AとSLC受信部4に接続されたSLC処理器5Bとからなり、基準信号発生器7から供給された周期rからなるクロック信号Rの動作タイミングで、主アンテナ1を介して受信された妨害波Jm を含む受信出力信号は減算器5Aに、またSLCアンテナ3で受信された妨害波Js を含む同じく受信出力信号はSLC処理器5Bに供給される。
【0013】
SLC処理器5Bは、SLC受信部4からの受信信号が分岐して供給される第1及び第2乗算器5B1,5B2と、その第1及び第2乗算器5B1,5B2間に接続された狭帯域フィルタ5B3とで構成される。
【0014】
SLC処理部5の動作原理は、あるタイミングでSLC処理器5Bの第1乗算器5B1に供給された妨害波Js(n-1)は、狭帯域フィルタ5B3で生成された複素数で表わされるウェイトW(n) (以下、複素ウェイトと称する)と乗算された後、減算器5Aにおいて、主アンテナ1からの妨害波Jm(n-1)と減算される。
【0015】
従って、減算器5Aから出力される目標信号等の残留成分Jo(n)は次の(1)式で表わされる。なお、本明細書の記載では、妨害波J(Jm ,Js )、ウェイトW(n) 、及び残留成分Jo 等の信号はいずれもベクトルで表示されているものとする。
【0016】
Jo(n)=Jm(n-1)−W(n) ・Js(n-1) (1)
残留成分Jo(n)は表示器6に表示されると同時に、第2乗算器5B2に供給され、SLCアンテナ3で受信された妨害波Js(n-1)と乗算(相関処理)が行われた後、狭帯域フィルタ5B3に供給されて複素ウェイトW(n) が生成される。
【0017】
狭帯域フィルタ5B3は、図9(a)に示したように、第2乗算器5B2の乗算出力に対し、増幅器5B3aで一定の係数値A1 を乗算した後、加算器5B3bに供給するように構成され、加算器5B3bから出力される複素ウェイトW(n) は、第1乗算器5B1に供給されるとともに、周期rの遅延回路5B3cを介した後、増幅器5B3dによる一定の係数値A2 の乗算を経て、加算器5B3bにフィードバック供給され狭帯域のフィルタが形成される。従って、複素ウェイトW(n) は次の(2)式で表われる。
【0018】
W(n) =A1 ・Js(n-1)・Jo(n-1)+A2 ・W(n-1) (2)
図9(a)に示したレーダ装置では、主アンテナ1は方位方向等に機械的に回転走査するが、SLCの妨害波除去機能は電子走査アンテナからなるレーダ装置にも採用される。
【0019】
図11(a)は、SLCによる妨害波除去機能を搭載し、主アンテナを多数のアンテナ素子をアレイ状に配置した電子走査アンテナからなるレーダ装置の構成図である。
【0020】
すなわち、図11(a)に示したレーダ装置では、主アンテナ1と同一のアンテナ開口面上にSLCアンテナ3を配置して、サイドローブで受信された妨害波を抑圧する。
【0021】
主アンテナ1は、複数(N)個のアレイアンテナ素子1A1〜1ANで構成され、これら複数(N)個のアレイアンテナ素子1A1〜1ANは、送受信部2の同じく複数(N)個の送受信回路2A1〜2ANに対応接続され、各送受信回路2A1〜2ANの出力は送受信部2の合成回路2Bに供給されて合成される。
【0022】
各送受信回路2A(2A1〜2AN)は、図11(b)に示すように構成され、各アンテナ素子1A(1A1〜1AN)に接続されたRFの送受信モジュール2Aaは、送受切替器2Abを介して混合器2Acに接続される。
【0023】
混合器2Acでは、受信信号が局部発信器8の局発信号と混合されて中間周波(IF)信号となり、IF信号は帯域フィルタ2Adで不要周波数成分が除去された後、A/D変換器2Aeを介してデジタルI/Q検波器2Afに供給される。デジタルI/Q検波回路2Afは、局部発振器8からの0度及び90度の局発信号の供給を受け、受信デジタルIF信号を直交したI/Q信号に変換し、合成回路2Bに供給する。
【0024】
図11(a)に示したように、主アンテナ1における受信信号の位相の中心位置を点Aとし、その位相中心位置AとSLCアンテナ3との間の距離をD、妨害波J(Jm ,Js )の入射角をθ、電波伝搬速度をCとし、入射角θにおいて受信された妨害波J(Jm ,Js )を考えたとき、主アンテナ1の位相中心位置Aにおける受信妨害波Jm と、SLCアンテナ3で受信された妨害波Js との間には、次の(3)式で表わされる遅延時間Δtが生じる。
【0025】
Δt=Dsinθ/C (3)
また、主アンテナ1で受信される妨害波Jm は下記(4)式で表わされるので、SLCアンテナ3で受信された妨害波Js は次の(5)式で表わすことができる。
【0026】
Jm =Am ・exp (j2πf・t) (4)
Js =As ・exp (j2πf(t+Δt)) (5)
ただし、Am 及びAs はそれぞれ妨害波Jm ,Js の振幅を、またfは妨害波J(Jm ,Js )の周波数を示している。
【0027】
従って、SLCアンテナ3で受信された妨害波Js は、上記各式により変換され次の(6)のように表わされる。
【0028】
Js =As ・exp (j2πf・t)・exp (jKD・sinθ) (6)
ただし、Kは波数(=2π/λ)であるから、妨害波J(Jm ,Js )の波長λに依存することを示している。
【0029】
また、主アンテナ1とSLCアンテナ3との間の位相差は、KD・sinθであるから、その位相差(KD・sinθ)もまた妨害波J(Jm ,Js )の波長λに依存して変化する。
【0030】
主アンテナ1とSLCアンテナ3で受信された各妨害波J(Jm ,Js )は、SLC処理部5に供給され、ここで前述のように、振幅及び位相が揃えられて減算されるので妨害波は抑圧除去され、目的とする目標信号等の残留成分Jo が出力されて表示器6に表示される。
【0031】
上記のように、主アンテナ1をアレイアンテナで構成した場合、主アンテナ1の位相中心位置AとSLCアンテナ3との間の位相差(KD・sinθ)は妨害波Jの波長λ、すなわち周波数fに応じて変化する。
【0032】
SLC処理部5における妨害波Jの抑圧は、主アンテナ1とSLCアンテナ3でそれぞれ受信された各妨害波Jm ,Js の振幅及び位相を揃えて減算を行うので、主アンテナ1とSLCアンテナ3でそれぞれ受信された各妨害波Jm ,Js 間の位相差が一定である場合は、SLC処理部5における位相合わせが行われ、妨害波Jは抑圧されて、目的とする目標信号等は残留成分Jo(n)として表示器6に表示される。
【0033】
これは、図9に示したレーダ装置においても同様である。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】
上記説明のように、SLCを搭載したレーダ装置は、図11(a)に示したように、入射角θで入射する妨害波Jには、主アンテナ1とSLCアンテナ3との間で位相差(KD・sinθ)が生じる。
【0035】
従って、主アンテナ1とSLCアンテナ3でそれぞれ受信された各妨害波Jm ,Js 間で、位相差が一定である妨害波Jは抑圧されるが、広帯域な妨害波、あるいは周波数が時間軸上で変化する妨害波は、受信された各妨害波Jm ,Js 間の位相差が定まらないので、その差の変動分が表示器6に供給されてしまい、妨害波の環境下において目標信号のみを的確に表示することができないという問題があった。
【0036】
そこで本発明は、周波数が変化したり、あるいは広帯域な妨害波に対しても、十分な抑圧効果が得られるレーダ装置を提供することを目的とする。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るレーダ装置は、主アンテナとSLCアンテナからの各受信信号をそれぞれ導入し、周期Tのタイミング信号に同期した順次つらなる各受信データを出力する手段と、この手段で出力された前記各受信データを導入し、前記周期Tの複数(M)分の1の周期(T/M)からなるクロック信号により繰返し妨害波抑圧演算を行い残留波データを出力する妨害波抑圧手段と、この妨害波抑圧手段から出力された残留波データを導入し、前記周期T内で最後に行われた妨害波抑圧演算による残留波データを選択して出力するリサンプリング手段とを具備することを特徴とする。
【0038】
このように、本発明のレーダ装置は、妨害波抑圧手段において、受信データの周期Tの複数(M)分の1の周期(T/M)で複数(M)回、妨害波抑圧演算を実行するので、広帯域妨害波に対し高い抑圧効果を得ることができるとともに、妨害波そのものの残留出力を大幅に減少させることができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるレーダ装置の一実施の形態を図1ないし図8を参照して詳細に説明する。なお、図9ないし図11に示した従来の構成と同一構成には同一符号を付して示し詳細な説明は省略する。
【0040】
図1及び図2は本発明によるレーダ装置の第1の実施の形態を示す要部構成図である。また図3は、図1及び図2に示した装置における各部の動作出力信号等を示したタイミングチャート、図4は、図1及び図2に示した装置の動作説明図である。
【0041】
すなわち、図1及び図2に示すように、第1の実施の形態のレーダ装置は、アレイアンテナで構成された主アンテナ1と、主アンテナ1との間に距離Dを隔てて配置されたSLCアンテナ3と、主アンテナ1及びSLCアンテナ3にそれぞれ接続された送受信部2及びSLC受信部4と、これら送受信部2及びSLC受信部4の出力端に接続されたSLC処理部5と、SLC処理部5に接続されたリサンプリング回路51と、このリサンプリング回路51に接続された表示器6と、周期rのクロック信号Rを生成して、SLC処理部5、分周回路71、及びカウンタ回路8に供給する基準信号発生器7等から構成されている。なお、送受信部2には送信機9が接続されている。
【0042】
基準信号発生器7で生成された、図3(a)に示す周期rのクロック信号Rはまず分周回路71に供給され、分周回路71は図3(b)に示すように周期rの複数(M)倍の周期T(=M×r)のタイミング(分周)信号Drを生成し、送受信部2及びSLC受信部4に供給して駆動する。
【0043】
そこで、図2に要部を拡大して示したように、入射角θの角度で、主アンテナ1の各アンテナ素子1A(1A1〜1AN)で受信された妨害波Jm を含む信号は、送受信部2の送受信回路2A(2A1〜2AN)における周期Tのタイミング信号Drに基づく検波並びにA/D変換により、図3(c)に示すように、周期Tの受信データJm が形成され、合成回路2Bを介して、SLC処理部5に供給される。
【0044】
また、主アンテナ1とは距離Dを隔てて配置されたSLCアンテナ3においても、同じく入射角θの角度で受信された妨害波Js を含む信号が、SLC受信部4における周期Tのタイミング信号Drに基づく検波並びにA/D変換を受け、図3(d)に示すように、周期Tの受信データJs がそれぞれ生成され、SLC処理部5に供給される。
【0045】
SLC処理部5は、図1に示したように、送受信部2の出力端子に接続された減算器5Aと、この減算器5AとSLC受信部4との間に接続されたSLC処理器5Bとで構成されている。
【0046】
送受信部2からの受信データJm はSLC処理部5の減算器5Aに、またSLC受信部4からの受信データJs はSLC処理器5Bにそれぞれ供給される。
【0047】
SLC処理部5の減算器5A、及びSLC処理器5Bは、基準信号発生器7から供給されたクロック信号Rに駆動され、周期Tの期間内で複数(M)回にわたる妨害波抑圧演算を実行し、都度、図3(e)に示すように、妨害波が抑圧された後の残留波データJo1を出力し、リサンプリング回路51に供給する。
【0048】
SLC処理部5における妨害波抑圧操作を図4を参照して説明すると、上記のように、SLC処理部5では、周期Tの受信データJm ,Js の間に、複数(M)回の妨害波抑圧演算を実行するので、妨害波抑圧度は順次向上し、残留波データの絶対値|Jo1|の値、すなわち妨害波残留電力は、周期Tの間、図4(a)に破線で示すように低下する。
【0049】
すなわち、SLC処理部5内のSLC処理器5Bでは、入力される受信データJm ,Js は周期T毎に更新されるが、その更新の都度、受信データJm ,Js の位相項が変化して残留電力は一旦増加する。しかし、周期T内における複数(M)回の妨害波抑圧演算により、SLC処理器5Bの複素ウェイトWは妨害波Jm をより多く抑圧除去する方向に更新されるので、残留波データ|Jo1|は、周期Tのサイクルで鋸歯状に変化する。
【0050】
リサンプリング回路51は、カウンタ回路8から供給される、図3(f)に示した周期Tのタイミング信号により、最も小さな値を示したときの残留波データ|Jo1|、すなわち図3(g)及び図4(b)に示すように、周期T内における最後の周期rの残留波データ(0M,1M,2M,・・・)を選択し、これを表示用出力データ|Jo2|として表示器6に供給表示する。
【0051】
このように、第1の実施の形態によれば、SLC処理部5において、SLCアンテナ3に対応する妨害波抑圧演算が、周期Tの受信データ内において、複数(M)回実行され出力されるので、残留波データ|Jo1|の値が最も小さく、妨害波が最も抑圧されたときの残留波データ|Jo1|を表示用出力データ|Jo2|として表示器6に表示することができる。
【0052】
従って、広帯域な妨害環境下においても、妨害波に対する十分な抑圧性能が得られ、目標を的確に検出することができる。
【0053】
なお、上記第1の実施の形態では、SLC処理部5における妨害波抑圧の演算数を増加させることで、周期T内での残留波データ|Jo1|の値をさらに小さくすることができるが、残留成分が十分小さくなると、本来の目的とする目標信号成分をも必要以上に抑圧してしまうことも考えられる。
【0054】
そこで、目標信号成分を過度に抑圧することなく、妨害波のみを効果的に抑圧できるように構成した本発明の第2の実施の形態のレーダ装置を図5ないし図8を参照して説明する。
【0055】
なお、以下の説明では、上記第1の実施の形態で示した構成及び作用と共通する点の説明は省略し、特に、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
図5は、第2の実施の形態のレーダ装置の構成を示したもので、第1の実施の形態との主な相違点は、第1の実施の形態におけるカウンタ回路8に代えて、タイミング制御回路10、及び振幅に対するスレッショルドレベル、すなわちしきい値(閾値)レベルTh(基準値)を設定してタイミング制御回路10を制御するしきい値(閾値)レベル設定回路11を新たに設けたことである。
【0057】
タイミング制御回路10は、図6にその構成を示したように、SLC処理部5からの残留波データJo1を導入するいわゆるトランスバーサルフィルタ(transversal filter)101と、このトランスバーサルフィルタ101のフィルタ出力を導入し、その出力レベルとしきい値レベル設定回路11で予め設定されたしきい値レベルThとを比較する比較回路102と、この比較回路102の出力信号を受け、リサンプリング回路51を駆動制御するタイミング選択回路103とで構成されている。
【0058】
なお、タイミング選択回路103には、基準信号発生器7から供給の周期rのクロック信号Rと分周回路71から供給の周期Tのタイミング信号Drを導入し、比較回路102からの出力に基づく、周期Tの選択タイミング信号を出力してリサンプリング回路51を制御する。
【0059】
図5及び図6に示したレーダ装置の動作を、図7に示したタイミングチャート及び図8に示した動作特性図を参照して説明する。
【0060】
第1の実施の形態と同様に、基準信号発生器7及び分周回路71は、それぞれ図7(a)に示したクロック信号R、及び図7(b)に示したタイミング信号Drを生成して導出し、送受信部2及びSLC受信部4を制御するので、送受信部2及びSLC受信部4は図7(c)及び(d)に示す受信データJm ,Js を形成してSLC処理部5に供給する。
【0061】
SLC処理部5は、基準信号発生器7からの周期rのクロック信号Rに基づき、受信データJm ,Js に対する妨害波抑圧演算を順次実行し、図7(e)に示す残留波データJo1を生成し、リサンプリング回路51及びタイミング制御回路10のトランスバーサルフィルタ101に供給する。
【0062】
トランスバーサルフィルタ101は、良く知られているように、入力データを順次蓄えるn個の遅延回路(a1〜an)と、遅延回路(a1〜an)の前後のタップ位置で、(n+1)個の指定されたゲイン(W0 〜Wn )がそれぞれ乗算される(n+1)個の乗算回路(b1〜b(b+1))と、n個の加算回路(c1〜cn)との組合わせによりデジタルフィルタが構成され、重み付けされた過去n回分のデータの重み付け加算によりその平均値を算出して、比較回路102に供給する。
【0063】
トランスバーサルフィルタ101から出力される残留波成分Jo は、図8(a)に実線で示したように、周期T内での複数(M)回にわたる妨害波抑圧演算の実行により級数的に減少する。
【0064】
そこで、前述のように過度の妨害波抑圧は、目標信号をも抑圧してしまうので、比較回路102は、トランスバーサルフィルタ101から出力される残留波成分Jo の振幅レベルを、しきい値レベル設定回路11で予め設定されたしきい値レベルTh(基準値)と比較し、残留波成分Jo がしきい値レベルTh以下となったとき、妨害波は十分抑圧されているものとし、比較回路102はタイミング選択回路103を駆動する。
【0065】
比較回路102からの信号を受けたタイミング選択回路103はリサンプリング回路51を制御するので、残留波成分Jo が減少してしきい値レベルThに到達したときには、図8(a)に一点鎖線で示したように、周期T内の最初の1回目の妨害波抑圧演算(M=1)の残留波データJo1を表示用出力データJo2として選択し、表示器6に供給する。
【0066】
つまり、タイミング制御回路10は、残留波データJo1の振幅が減少し、基準値であるしきい値Th以下となるまでの間は、妨害波が十分抑圧されていないものとして、図8(c)に示すようにM回目の演算結果(0M,1M,2M,・・・)を選択するようにリサンプリング回路51を制御し、しきい値レベルThに到達した以後は、以後図8(d)に示すように1回目(M=1)の演算結果(11,21,31,・・・)の残留波データJo1を表示用出力データJo2として選択し、表示器6に供給表示するので、目標信号が過度に抑圧されて表示されるのを回避することができる。なお、図8において、破線Qで示した特性曲線は、図9ないし図11を参照して説明した従来のレーダ装置において、表示器6に供給される広帯域妨害波の残留波成分Jo を示したもので、妨害波はほとんど抑圧されることなくそのまま表示されることを示している。
【0067】
上記説明の中で、トランスバーサルフィルタ101の比較回路102からは、残留波成分Jo の振幅レベルとしきい値Thとの比較結果がタイミング選択回路103に供給されるが、その比較結果に基づき、タイミング選択回路103からは図7(f)または図7(g)に示す選択タイミング信号がリサンプリング回路51に供給される。従って、リサンプリング回路51は、図7(h)または図7(i)(すなわち、図8(c)または図8(d))に示した表示用出力データJo2が表示器6に供給表示される。
【0068】
以上説明のように、この第2の実施の形態によれば、予め妨害波が十分抑圧されているか否かを、予め設定された基準値すなわちしきい値レベルThとの比較により自動的に判定され、妨害波が十分抑圧された状態では、それ以降、M=1回目の演算結果が選択表示されるので、目標信号が必要以上に抑圧されるのを回避することができる。
【0069】
以上説明のように、本発明のレーダ装置によれば、SLC処理部における複数回にわたる妨害波抑圧演算の繰返しにより、広帯域妨害波ないしは周波数特性が変化する妨害波を的確に抑圧除去されるとともに、妨害波残留電力を効果的に低減して、真の目標信号を適切に表示することができる。
【0070】
また、上記第1及び第2の実施の形態において、広帯域妨害波や時間軸上で周波数特性が変化する妨害波を抑圧する旨説明したが、本発明のレーダ装置によれば、主アンテナ1及びSLCアンテナ3の各受信系の構成回路間の周波数特性の相違によって妨害波抑圧性能が劣化する場合でも同様の効果が得られる。
【0071】
以上要するに、本発明のレーダ装置によれば、妨害波抑圧演算の繰返しにより、妨害波を効果的に抑圧し、広帯域な妨害波環境下でも目標検出が可能である。
【0072】
【発明の効果】
本発明のレーダ装置によれば、繰返し実行される妨害波抑圧演算により、広帯域にわたる妨害環境下でも、適切かつ十分な妨害波の抑圧が可能であり、実用に際し得られる効果大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーダ装置の第1の実施の形態を示した要部構成図である。
【図2】図1に示した主アンテナ及びSLCアンテナの詳細構成図である。
【図3】図1に示した装置における妨害波除去動作のタイミングチャートである。
【図4】図1に示した装置における作用の説明図である。
【図5】本発明のレーダ装置の第2の実施の形態を示した要部構成図である。
【図6】図5に示したタイミング制御回路の構成図である。
【図7】図5に示した装置における妨害波除去動作のタイミングチャートである。
【図8】図5に示した装置における妨害波除去動作の説明図である。
【図9】SLCを採用した従来のレーダ装置の構成図である。
【図10】図8に示した装置の動作説明図である。
【図11】SLCを採用した他の従来のレーダ装置の構成図である。
【符号の説明】
1 主アンテナ
2 送受信部(受信データ出力手段)
3 SLCアンテナ
4 SLC受信部(受信データ出力手段)
5 SLC処理部(妨害波抑圧手段)
51 リサンプリング回路(リサンプリング手段)
6 表示器
7 基準信号発生器
71 分周回路
8 カウンタ回路
9 送信機
10 タイミング制御回路
11 しきい値設定回路
Claims (2)
- 主アンテナとSLCアンテナからの各受信信号をそれぞれ導入し、周期Tのタイミング信号に同期した順次つらなる各受信データを出力する手段と、
この手段で出力された前記各受信データを導入し、前記周期Tの複数(M)分の1の周期(T/M)からなるクロック信号により繰返し妨害波抑圧演算を行い残留波データを出力する妨害波抑圧手段と、
この妨害波抑圧手段から出力された残留波データを導入し、前記周期T内で最後に行われた妨害波抑圧演算による残留波データを選択して出力するリサンプリング手段と
を具備することを特徴とするレーダ装置。 - 前記リサンプリング手段は、前記妨害波抑圧手段からの残留波データを導入し、残留波成分を導出するトランスバーサルフィルタと、このトランスバーサルフィルタから出力される残留波成分の振幅レベルと予め設定された基準値とを比較し、前記残留波成分の振幅レベルが前記予め設定された基準値を超えたとき比較出力信号を導出する比較手段と、この比較手段の比較出力信号と、前記クロック信号と、前記タイミング信号とを導入し、前記比較手段からの比較出力信号に対応した周期Tの選択タイミング信号を出力するタイミング選択手段とを具備し、
前記リサンプリング手段は、前記タイミング選択手段からの選択タイミング信号を導入し、前記残留波成分の振幅レベルが前記基準値に到達するまでの間は、前記周期T内で最後に行われた前記妨害波抑圧演算による残留波データを選択して出力し、前記振幅レベルが前記基準値以下となったときは、前記周期T内で最初に行われた前記妨害波抑圧演算による残留波データを選択して出力することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
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