JP3821995B2 - コークス炉の燃焼室とその操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室内の高さ方向の燃焼温度を均一化して、燃焼に伴って発生するNOx(窒素酸化物)を減らすことを可能としたコークス炉の燃焼室およびその燃焼室を備える室炉式コークス炉の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉に要求される性能は、良質のコークスを生産できること、燃料消費量を低減できること、煙道排ガス中のNOx が少ないこと、およびこれらを低コストで達成することである。従来、これらを達成するため種々の手段が考えられ、燃焼に関して言えば、燃焼を高さ方向について均一化させること、排ガス希釈による長炎化、排ガス希釈による燃料ガスの低カロリー化などにより達成することができる。
【0003】
すなわち、燃焼排ガス中のNOxは、燃焼ガスの温度に最も影響されるため、燃焼室内の温度を高さ方向に均一化することは、生成NOxを低減させることになる。コークス炉の煙道排ガス中のNOxの生成を低減させる対策としては、▲1▼燃焼室に燃料ガスのほかに燃焼排ガスを再循環させることによって火炎温度を低下させる方法があり、コッパースサーキュレーション方式のコークス炉において実施されている。また、▲2▼燃焼用空気および燃料ガス、または燃焼用空気のみを燃焼室の複数の高さ位置に吐出口を設けて分割して供給し、高さ方向に対して部分的に燃焼させる方法(特開昭61-133286号公報、特開平1-306494号公報、特表平4-501876号公報など、参照)が提案されている。この方法は、特に、富ガス燃焼では燃焼用空気のみを多段にした構造が採用され、カールスチル型コークス炉、オットー型コークス炉、および新日鉄式コークス炉において「多段燃焼法」として採用されている。
【0004】
前記の対策▲1▼は、燃焼排ガスの再循環による火炎温度の低下と、高さ方向の部分的燃焼による酸素および窒素濃度の減少との組合せであるため、NOx発生量の抑制には効果がある。しかし、コッパースサーキュレーション方式での燃焼排ガスの再循環方式では、排ガス循環を任意に変更することができない。さらに燃焼排ガスが増大するような操業では、循環口の断面積の制約により、排ガス循環率を20%以上にすることができないという問題がある。
【0005】
前記の対策▲2▼の部分燃焼によるNOxの低減方法は、富ガス量が大幅に増大した場合には、高さ方向の富ガスまたは燃焼用空気の分配比の調整が必要となる。しかし、実際のコークス炉では、その調整箇所が数多くあり、その調整には多大の時間を要するだけでなく、調整箇所も最上段の供給口や底部の供給口に限られ、充分なNOxの低減を得られないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
環境汚染防止に対する要求は年々厳しさを増してきており、法規制の上でも新設コークス炉のNOx排出規制値は既設炉のそれより相当厳しく、従来技術ではコークス炉の建設ができなくなる可能性さえあるといわれる。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、コークス炉の燃焼室の高さ方向の局部的な高温燃焼を無くし、炉高の高い大型コークス炉でも高さ方向の温度を均一にし、煙道排ガス中のNOxを低減させることのできる燃焼室を提供することを第1の目的とする。また、第2の目的は、その燃焼室を備えるコークス炉または既存のコークス炉を用い、貧ガス供給口から燃焼用空気を供給して操業する場合に、その開口部の開度を調整して燃焼用空気の吐出方向を変え、富ガスと空気の界合位置を調整する方法を提供することにある。ここで「富ガスと空気の界合位置」とは、吐出された燃料ガスと空気との流束が最初に衝突する燃焼室底部からの高さ方向の位置である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、炉高の高い大型コークス炉の炉高方向の温度を均一にし、煙道排ガス中のNOxを低減させる方法についてモデル燃焼炉を用いて燃焼実験を行った。その結果、貧ガス供給口から貧ガスを供給せず、燃焼用空気のみを供給する場合には、燃焼室底部における燃料ガスおよび燃焼用空気の供給口の配置を最適化することにより、高さ方向の燃焼温度が均一化されて排ガス中のNOxを低減できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
本発明の要旨は、図1および図2に示す下記▲1▼および▲2▼のコークス炉の燃焼室とその燃焼室を備えるコークス炉の下記▲3▼の操業方法にある。
【0010】
▲1▼富ガス供給口2が燃焼室底部5の炭化室との境をなす炉壁6寄りの位置に設置されるとともに、底部5の燃焼用空気供給口3の中心P、または2つの燃焼用空気供給口の中心Pを結ぶ中点P1が燃焼室の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側の位置にあるコークス炉の燃焼室1(図1、参照)。
【0011】
▲2▼燃料として富ガスgおよび貧ガスを底部5から供給する構造の複式コークス炉の燃焼室であって、富ガス供給口2が燃焼室底部の炭化室との境をなす炉壁6寄りの位置に設置されるとともに、貧ガス供給口7の中心点P2と底部の燃焼用空気供給口3の中心点Pを結ぶ中点P3が燃焼室の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側の位置にあるコークス炉の燃焼室(図2、参照)。
【0012】
▲3▼上記▲1▼または▲2▼の燃焼室を備えるコークス炉を使用し、燃焼室底部の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2側にある貧ガス供給口または燃焼用空気供給口の開口部に開度調整部材を載置して燃焼用空気の吐出方向を富ガス供給口と反対方向に変え、富ガスと空気の界合位置を調整するコークス炉の操業方法。
【0013】
上記の燃焼室を備えるコークス炉が多段燃焼型であるとき、底部から供給する燃焼用空気量を全空気量の50容積%以上として操業するのが望ましい。
【0014】
本発明の底部構造を備える燃焼室は、燃料ガスおよび燃焼用空気の一部または全部を燃焼室底部から供給する構造の室炉式コークス炉に用いられる。即ち、本発明の対象となるコークス炉では、燃料ガスは全て燃焼室の底部から燃焼室内に供給されるが、燃焼用空気(以下、これを単に「空気」と記載する)は、その全部が燃焼室底部から供給される場合(単段型燃焼)と、一部が底部から、残りが高さ方向の1カ所または複数カ所から供給される場合(多段型燃焼)とがある。また、燃料ガスとして富ガスのみを供給する場合(単式燃焼)と、富ガスと貧ガスとを供給する場合(複式燃焼)とがある。
【0015】
コークス炉の燃料ガスとしては、コークス炉ガス(富ガス)のほかに、複式燃焼では貧ガスと呼ばれるガスが使用される。富ガスとは、発熱量がおよそ4000〜4800 kcal/Nm3の燃料ガスであり、貧ガスとは、高炉ガスや高炉ガスとコークス炉ガスの混合ガスなどの発熱量がおよそ800〜1300 kcal/Nm3の燃料ガスである。
【0016】
コークス炉の燃焼室の底部構造としては、たとえば特表平4-501876号公報や Cokemaking International Vol 4-2 P71-83(1992)には図5に示すように、富ガス供給口をコークス炉の炉壁側に配置し、貧ガス供給口および空気供給口を中央に並べて配置した図が、あるいは特公平5-29678号公報には燃焼室のほぼ中央に貧ガス供給口と空気供給口を炉長方向に並べて配置した図が記載されている。しかし、炉高方向の燃焼温度を均一にし、煙道排ガスのNOxを低減させるような供給口の配置、構造などについては検討されていない。
【0017】
ここで、炉団方向というのは、燃焼室(具体的には仕切壁で分割された複数の燃焼室、いわゆるフリューの列)と炭化室とが交互に多数並列している方向である。また、炉長方向というのは、炉団方向に直角な方向で、室炉式コークス炉においてコークスの押出側と排出側とを結ぶ方向である。
【0018】
図1は、単段燃焼式の燃焼室の一例を示す概念図である。図1の(a)は、炉長方向に並ぶ燃焼室の一部を炉団方向からみた立面断面図であり、同図(b)のB-B矢視断面図である。図1の(b)は、炉長方向に並ぶ燃焼室の一部を示す平面図であり、本発明の燃焼室底部の富ガス供給口および空気供給口の配置を示し、同図(a)のA-A矢視断面図である。図1の(c)は、燃焼室底部の一部を炉長方向からみた立面断面図である。図1に示す燃焼室は、底部に富ガス供給口と2つの空気供給口を備える単式単段燃焼式であるが、貧ガス供給口をともに備える複式単段燃焼式であってもよい。
【0019】
図1に示す構造の燃焼室では、富ガスgは、燃焼室底部5に設けられた富ガス供給口2から燃焼室1-1および1-3に供給され、空気供給口3から供給された空気aと混合されて燃焼し、上昇して炉壁6を加熱する。燃焼排ガスeは、仕切壁4-1を矢印で示すように迂回して燃焼室1-2および1-4を降下して空気供給口3から蓄熱室(図示せず)に排出される。図において、矢印はガスの流れを示す方向であり、燃焼方向が切り替えられると逆方向になる。空気aは、燃焼室底部5に設けられたダクト3-1を介して空気供給口3から燃焼室に供給される。図では、燃焼室底部5に設けられる空気供給口は2つであるが、1つであってもよい。
【0020】
本発明の燃焼室底部では、図1(b)に示すように富ガス供給口2が炭化室(図示せず)との境をなす炉壁6寄りの位置に設置され、2つの空気供給口3の中心点P,Pを結ぶ中点P1が燃焼室の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側の位置にある。これにより、吐出された富ガスgおよび空気aは、その界合位置が上方に移動し、燃焼室の下部で空気の一部が混合されて燃焼し、大部分は高さ方向に徐々に混合されながら燃焼し、高さ方向の燃焼温度を均一化してNOxの発生を低減させることができる。
【0021】
図2は、複式多段燃焼型コークス炉の燃焼室の一例を示す概念図である。図2の(a)は、炉長方向に並ぶ燃焼室の一部を炉団方向からみた立面断面図であり、同図(b)のD-D矢視立面断面図である。図2の(b)は、炉長方向に並ぶ燃焼室の一部を示す平面図であり、同図(a)のC-C矢視平面図である。図2(b)に示す燃焼室群は、炉壁6を介して石炭の反応炉(図示せず)に挟まれている。図2の(c)は、燃焼室の底部の一部を炉長方向からみた立面断面図である。図示する燃焼室は、富ガスおよび貧ガス、またはいずれかの一方を燃料とする複式多段燃焼型コークス炉の燃焼室である。
【0022】
図2に示す本発明の燃焼室では、富ガスgは、富ガス供給口2から燃焼室1-1および1-3に供給され、貧ガス供給口7および空気供給口3から供給された空気aと混合されて燃焼し、上昇して炉壁6を加熱する。燃焼排ガスeは、仕切壁4-1を矢印で示すように迂回して燃焼室1-2および1-4を降下して仕切壁4に設けられた空気供給口8および燃焼室底部5に設けられた空気供給口3および貧ガス供給口7から蓄熱室(図示せず)に排出される。仕切壁4の内部にはダクト8-1が設けられ、空気供給口8と蓄熱室とを連結している。また、燃焼室底部5には、ダクト3-1が設けられ、空気供給口3と蓄熱室とを連結している。図において、空気供給口3と貧ガス供給口7は、炉団方向にずらせて千鳥に配設されているが、炉長方向に並べて配設してもよい。
【0023】
空気aは、本発明の場合では、燃焼室底部5に設けられた空気供給口3、同貧ガス供給口7および仕切壁4に設けられた空気供給口8から燃焼室1に供給される。ガスの流れは、図1の場合と同様である。
【0024】
図2に示す燃焼室底部では、図2(b)に示すように富ガス供給口2が炭化室(図示せず)との境をなす炉壁6寄りの位置に設置され、貧ガス供給口7の中心点P2と空気供給口の中心点Pとを結ぶ中点P3が燃焼室の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側の位置にある。空気は空気供給口3と貧ガス供給口7から供給されると、空気aの吐出方向は富ガスgの吐出方向と反対方向となるので、富ガスと空気の界合位置が上方に移動する。このため、燃焼室の下部では、空気の一部分が混合されて燃焼し、大部分は高さ方向に徐々に混合されながら燃焼し、高さ方向の燃焼温度を均一化してNOxの発生を低減させる。
【0025】
図2(b)に示すように供給口を千鳥に配置した場合、空気供給口3および貧ガス供給口7の両方またはどちらか一方の一部が炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口側にあるとき、本発明では、図3に示すように、その供給口の一部に開度調整部材9を載置し、空気の吐出方向を富ガスの吐出方向と反対側に離れるように変え、富ガスと空気の界合位置を上方部に移動させるのが望ましい。
【0026】
図3は、空気供給口の一部が燃焼室の炉団方向中心線Lから富ガス供給口側にある開口部を開度調整部材で閉塞した例を示す図であり、図3(a)は一部平面図、図3(b)は一部立面断面図である。図3(a)では、空気供給口3と貧ガス供給口7とが並行配置され、それぞれの中心点P、P2およびそれらの中心点を結ぶ中点P3が燃焼室底部の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側にある。しかし、それぞれの開口部の一部が燃焼室底部の炉団方向中心線よりも富ガス供給口側にある。このような場合、開口部の一部に開度調整部材9を載置し、それぞれの開度を調整する。これにより、空気の吐出方向は図3(b)の矢印で示すように富ガス供給口と反対側方向に吐出されて燃焼室の下部での富ガスと空気との界面位置が上方に移動し、高さ方向の燃焼温度が均一化されてNOxの発生を低減させる。
【0027】
多段燃焼型コークス炉の場合、燃焼室底部から供給される空気量が全供給空気量の50容積%以下では、燃焼室下部での燃焼が不十分となり、炭化室の下部では温度低下を招き易く、燃焼室の底部から供給される空気量は全空気量の50容積%以上とするのが望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
室炉式コークス炉の燃焼室は、細長い構造の中で燃料ガスと空気が接触するため高さ方向の燃焼温度が不均一になる。この対策として、前述したように多段燃焼法、または燃焼排ガス再循環法が用いられている。本発明者らは、このような燃焼室内での燃焼状況を調査するため、モデル燃焼炉による燃焼実験を行った。
【0029】
燃焼室内では、底部から供給される燃料ガスと空気は、拡散燃焼しながら上昇する。その最高燃焼温度を示す位置は、富ガス燃焼では燃焼速度が高いため、通常、燃焼室底部で燃焼が促進される。そして、そこに高温域が生成して、NOxの生成率が高まるだけでなく、その他の領域(燃焼室の上部)には逆に低温域が生じて、炉内温度の均一性が失われる。
【0030】
本発明者らは、上記のような燃焼室内での局部的高温域の発生を抑えるためには、燃焼室底部では富ガスと空気の混合割合を小さくすること、言い換えれば部分的に混合することが重要であると考えた。そして、その部分混合を達成する具体的な手段について種々検討した結果、図1および図2に示すように、▲1▼富ガス供給口2が炭化室との境をなす炉壁6寄りの位置に設置されていること、▲2▼底部の空気供給口3の中心点P、2つの空気供給口の中心点P,Pを結ぶ中点P1、または貧ガス供給口7の中心点P2と空気供給口の中心点Pとを結ぶ中点P3が燃焼室の炉団方向中心線Lよりも富ガス供給口2と反対側の位置にあること、で達成できることを見いだした。
【0031】
本発明は、図2に示す複式コークス炉において貧ガス供給口から空気を供給した場合、空気の吐出中心は、貧ガス供給口7の中心点P2と空気供給口3の中心点Pとを結ぶ中点P3にある。
【0032】
本発明のコークス炉の操業方法では、この空気の吐出方向を燃焼室の炉団方向中心線よりも富ガス供給口と反対の方向に変えることである。なお、図2では、空気供給口3は、燃焼室の炉団方向中心線よりも富ガス供給口の反対側にあるが、空気供給口の一部が燃焼室の炉団方向中心線よりも富ガス供給口側にあってもよい。
【0033】
多段燃焼式コークス炉の場合には、「燃焼室底部から供給する空気量は、燃焼室内に供給する全空気量の50容積%以上とし、残りは燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から供給する操業方法」を実施する。
【0034】
全空気量に対して燃焼室底部から供給される空気量比率が50容積%以下では、燃焼室下部での燃焼が不十分となり、温度低下を招く。しかし、燃焼室底部から供給される空気量比率が100容積%(単段燃焼)の場合でも、空気の吐出中心を富ガス供給口と反対側とするため、空気の吐出方向が富ガス供給口と反対方向に向けられ、炉下部での過剰燃焼が抑制されて高さ方向の燃焼温度が均一化され、低NOx化が達成できる。
【0035】
燃焼室底部の空気供給口開口部の形状は、上記の説明では長方形であるが、楕円形などでもよい。
【0036】
【実施例】
図1および図2に示すような燃焼室を備えるコークス炉を用いて燃焼試験を行った。
【0037】
燃焼室の内法寸法は、底部の炉長方向の長さが0.35m、炉団方向の長さが0.91m、高さが6.6mであり、仕切壁の高さ方向の2カ所に空気供給口を備えている。なお、仕切壁に設けた空気供給口は、単段燃焼を行う場合には閉塞した。燃焼室底部には、富ガス供給口が炭化室との境をなす炉壁寄りに設けられ、貧ガス供給口および空気供給口は、表1に示すように位置を変えて設けた。
【0038】
【表1】
【0039】
富ガスは、4600kcal/Nm3のガスを使用し、1燃焼室あたり28Nm3/hrを供給した。
【0040】
空気は、単段燃焼の場合には燃焼室底部から100容積%、多段燃焼の場合には燃焼室底部から主に70容積%、仕切壁の2段目の空気供給口から10容積%、3段目空気供給口から20容積%を供給した。燃焼室底部から70容積%を供給する場合においては、貧ガス供給口から50容積%、空気供給口から20容積%をそれぞれ供給した。また、多段燃焼で燃焼室底部からの空気量を変更させた場合には、2段目・3段目の空気供給口から供給される空気量比率は1:2とした。空気量としては、いずれも1燃焼室あたり160Nm3/hrを供給した。
【0041】
燃焼試験の評価は、燃焼室の炉壁(図2の符号6を参照)の温度と、煙道排ガス中のNOx濃度の測定を実施した。それらの結果を表1に示す。
【0042】
試験番号1、2、6および7は、図4(a)に示すように貧ガス供給口および空気供給口を並行配置し、それぞれの中心点P2とPとの中点P3を燃焼室の炉団方向中心線Lから離間させた発明例の燃焼室である。また、試験番号3〜5、8〜13は、図4(c)に示すように貧ガス供給口および空気供給口を千鳥配置し、それぞれの中心点P2とPとの中点P3を燃焼室の炉団方向中心線Lから離間させた発明例の燃焼室である。
【0043】
試験番号1〜5は、空気の供給を燃焼室底部から行う単段燃焼であり、試験番号6〜13は、空気の供給を燃焼室底部および仕切壁から行う多段燃焼である。
【0044】
表1から明らかなように、試験番号1〜13の発明例の場合は、炉壁部の高さ方向の温度差が40〜83℃、NOx発生量が72〜125ppmと良好である。
【0045】
試験番号3と4、8と10および9と11とを比較すると、燃焼室の炉団方向中心線Lから富ガス供給口側にある開口部に開度調整部材を載置した試験番号4、10および11は、炉壁部の高さ方向の温度差が小さく、NOxの発生量が少ない。また、試験番号1と2、4と5、6と7、8と9および10と11とを比較すると、排ガスを再循環させた試験番号2、5、7、9および11は、炉壁部の高さ方向の温度差が小さく、特にNOxの発生量が少ない。
【0046】
また、試験番号12、13は、燃焼室底部からの空気量を変えた例で、底部からの空気量が50容積%以上であれば高さ方向の温度差が小さく、NOxの発生量が少ない。
【0047】
これに対して比較例の試験番号14は、図4(b)に示すように貧ガス供給口の中心点P2および空気供給口の中心点Pを燃焼室の炉団方向中心線Lの線上に並行配置した従来の燃焼室であるので、炉壁部の高さ方向の温度差が150℃と高く、NOxの発生量が225ppmと多い。試験番号15は、排ガスを再循環させるほかは試験番号14と同様であるので、炉壁部の高さ方向の温度差が135℃と高く、NOxの発生量が190ppmと多い。
【0048】
試験番号16は、図5(b)に示すように貧ガス供給口および空気供給口を並行配置し、それぞれの中心点P2とPとの中点P3を燃焼室の炉団方向中心線Lから富ガス供給口側に離間させ、開口部に開度調整部材を載置したが、炉壁部の高さ方向の温度差は130℃と高く、NOxの発生量が186ppmと多い。
【0049】
試験番号17は、図5(c)に示すように貧ガス供給口および空気供給口を千鳥配置し、それぞれの中心点P2とPとの中点P3を燃焼室の炉団方向中心線Lから富ガス供給口と反対側に離間させ、開口部に開度調整部材を載置したが、燃焼室底部からの空気供給量が全供給量の40容積%のため、炉壁部の高さ方向の温度差は95℃と高く、NOxの発生量が162ppmと多い。また、試験番号18は、排ガスを再循環させるほかは試験番号17と同様であるので、炉壁部の高さ方向の温度差は81℃と高く、NOxの発生量が137ppmと多い。
【0050】
試験番号19は、図5(d)に示すように貧ガス供給口および空気供給口を千鳥配置し、それぞれの中心点P2とPとの中点P3が燃焼室の炉団方向中心線Lから富ガス供給口側にあるので、炉壁部の高さ方向の温度差は142℃と高く、NOxの発生量が205ppmと多い。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係るコークス炉の燃焼室では底部の空気供給口の配置を最適にしたので、炉高方向に均一な燃焼が可能となる。その結果、局部的な高温燃焼が防止され、NOxの発生量が減少する。また、炭化室内の加熱温度も均一になるので良質のコークスが得られる。本発明は、新設のコークス炉への適用は勿論のこと、貧ガス供給口または/および空気供給口に開度調整部材を設置するという簡単な方法で既設炉にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単段燃焼式の燃焼室の一例を示す概念図である。
【図2】複式多段燃焼型コークス炉の燃焼室の一例を示す概念図である。
【図3】空気供給口の一部を開度調整した例を示す図である。
【図4】燃焼室底部の貧ガス供給口と空気供給口との配置を示す平面図である。
【図5】燃焼室底部の貧ガス供給口と空気供給口との配置を示す平面図である。
【符号の説明】
1(1-1、1-2、1-3、1-4).燃焼室 2.富ガス供給口
3.空気供給口 4.仕切壁 5.燃焼室底部
6.炉壁 7.貧ガス供給口 8.空気供給口
9.開度調整部材
Claims (4)
- コークス炉の燃焼室であって、富ガス供給口が燃焼室底部の炭化室との境をなす炉壁寄りに設置されるとともに、底部の燃焼用空気供給口の中心、または2つの燃焼用空気供給口の中心を結ぶ中点が燃焼室の炉団方向中心線よりも富ガス供給口と反対側の位置にあることを特徴とするコークス炉の燃焼室。
- 燃料として富ガスおよび貧ガスを底部から供給する構造の複式コークス炉の燃焼室であって、富ガス供給口が燃焼室底部の炭化室との境をなす炉壁寄りに設置されるとともに、貧ガス供給口の中心点と底部の燃焼用空気供給口の中心点を結ぶ中点が燃焼室の炉団方向中心線よりも富ガス供給口と反対側の位置にあることを特徴とするコークス炉の燃焼室。
- 請求項1または2に記載の燃焼室を備えるコークス炉の富ガス燃焼において、燃焼室底部の炉団方向中心線よりも富ガス供給口側にある貧ガス供給口または燃焼用空気供給口の開口部に開度調整部材を載置して燃焼用空気の吐出方向を富ガス供給口と反対の方向に変え、富ガスと空気の界合位置を調整することを特徴とするコークス炉の操業方法。
- 請求項1または2に記載の燃焼用空気の一部を底部から供給する構造の燃焼室を備える多段燃焼型コークス炉の富ガス燃焼において、底部から供給する燃焼用空気量を全空気量の50容積%以上とすることを特徴とする請求項3に記載のコークス炉の操業方法。
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