JP3821421B2 - ユニバーサルジョイント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は動力を伝達する小径軸継手に係わり、特に同一線から僅かに角度偏向した動力伝達軸線を連結する耐久性に優れた撓み継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、小径軸の動力伝達に適した、軽合金の機械加工による一体成形品の撓み軸継手700の図示で、(a)は軸線に沿った側面図、(b)は軸と直角な側面図である。円筒体側面701から軸線Sに直角な筒切り方向に、中心角約90°を臨む弦Cから外側を残して軸線を横断する第一スリット702が形成され、引続き軸方向Sに沿って第一スリット702から僅かに離間する距離dの位置に反対方向から第一スリット702と平行に同様な第二スリット703が形成されて対をなす。
【0003】
さらに、第二スリット703から同じ離間距離dより第一、第二スリット702,703の対と直交する方向で第三、第四スリット704,705の対が第一、第二スリット702,703の対と同様に形成されている。そしてさらに、第四スリット705から同じ離間距離dを隔てて、第一スリット702〜第四スリット705のパターンが繰り返されている。このようなスリット702〜705を直列に形成したことにより、駆動軸710に対する従動軸712の組立軸線Seが偏向しても、スリット702〜705の幅δの変化で吸収して、軸線の変更した回転の伝達に柔軟に対応することができる。
【0004】
また、図9の従来例では、円筒体側面701の円周で90°離間する二箇所から軸線Sと直交する方向にタップをたてて二方向から螺入した押しネジ(図示しない)によって駆動軸710を押圧することで、駆動軸710に対する軸継手700の固定を行っている。しかしながら、この固定手段は、円筒体側面701の軸孔内面701aに駆動軸710を片寄せするので、円筒体側面701と駆動軸710の軸心の整合がとれず、振動発生の要因となり、特に軸と軸孔との嵌合公差が大きな場合には円滑な動力伝達は期し難い。
【0005】
このため、図10に示した継手800では、ボス胴部801の端面から軸方向に適当な幅を残して、ボス胴部801直径のほぼ半分に達する深さの第一のスリット802を入れる。次に、このスリット底面802aとボス胴部801の中心軸を含む面に沿ってボス胴部801の円環部分804を第二のスリット805で開端する。この加工により、ボス胴部801はフランジ803に繋がる部分801aとフランジ803から独立して僅かに弾性変形が可能な不連続円環部分801bとに別れる。不連続円環部分801bのスリット開端805a近傍で第二スリット805の相対する壁面の一方にボルト貫通孔807とボルト頭を沈めるざぐり(埋頭孔)808を設け、他方に雌ネジ809を螺刻する。
【0006】
ボルト(図示しない)をボルト貫通孔807に螺入して第二スリット805の幅を狭める方向に締め付けると、ボス胴部801の不連続円環部分801bの内周面804aが微小な遊隙で嵌合する動力伝達軸810にほぼ均等に圧着される。不連続円環部分801bを駆動軸810に締付けたとき、フランジ803を貫通する軸孔803aが変形することはないので、不連続円環部分801bの変形がフランジ803に影響して撓みプレート811の取付け距離Kを縮小させ、撓みプレートを変形することはない。また、継手800と動力伝達軸810とは互いに軸心を整合させた状態で結合させることができる。
【0007】
しかしながら、フランジ803と繋がっているボス胴部801aと不連続円環部分801bとの繋がり面は僅かしかないので強度に問題がある。しかも、二本のスリット802,805を加工することが必要な上、特に円環部分804を分断する第二スリット805の加工は、不連続円環部分801bがフランジ803に繋がる部分801bと繋がる部分801cを残す必要があるので、作業台に数個の部材を直列に固定してカッターの一度の送りで一挙に加工することができず、加工は個別に行わねばならないので生産性の向上を図ることができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図9に示した撓み軸継手700は、スリットを螺旋状に形成した撓み軸継手に比べると、柔軟性に乏しく、接続軸間角度偏倚の対応範囲は狭くなるが、正逆いずれの回転方向にも対応でき、機械強度が大きく、動力伝達トルクの増大と共に回転伝達精度が向上するので、安全性、信頼度、耐久性に優れている。しかしながら、第一スリット702〜第四スリット705の形成は、工数が多く加工精度は期待できない。例え自動化されても機械切削加工によらざるを得ないため、設備費や生産コストが低減できない。また一体成形であるため、異径の動力伝達軸間を連結する場合の即応性に乏しい。
【0009】
さらに、各スリット702〜705が撓み軸継手700の軸線Sを横断しているので、繋がり部分706の捩じれ変形による芯ずれに伝達トルクが吸収され、計測によれば回転角度とトルクとの関係は滑らかな曲線とならず波状に変動する。これは、特にエンコーダ等の正確な角度伝達の必要な機構への適用に際しては注意を要する問題である。しかも、駆動軸と従動軸との軸線の位置や角度のずれを吸収することのために適用するユニバーサルジョイントが、それ自体の取付けで偏心を助長したり、振動を発したり、強度に不安を残すものであってはならない。上記したように、図9および図10に示した従来例のユニバーサルジョイント700,800は、駆動軸710,810に対する固定方法に問題がある。
【0010】
また、実公平7−52428号に開示されたユニバーサルジョイントは、上記問題点を解消し、量産が可能で安価な供給に寄与しているが、外形が幾分複雑な上、組立ての際のネジ結合は人手に頼らざるを得ない。しかも、動力伝達軸孔に近接してネジを挿通するのに必要な貫通孔が穿設されるため、伝達負荷のかかるネジ部の肉厚が減少して機械強度の低下を招き、回転中の撓み変位が貫通孔に繰返し与える応力変動で耐久性は減少する。たとえ機械強度を犠牲にしても、貫通孔を画定する肉厚が必要であるから、省スペースを目的とする小型化には限度があり、外径20mm以下の小径ユニバーサルジョイントには不適当である。
【0011】
そこで本発明の目的は、強度を犠牲にすることなく、大きな伝達トルクに対応可能で、回転角伝達誤差がなく、精度および耐久性に優れた小径軸継手として好適なユニバーサルジョイントを低コストで提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係わるユニバーサルジョイントは、円環を基本形状とする一対の薄板撓みプレートと、この薄板撓みプレートそれぞれを片面の直径線両端近傍の二箇所において変形可能に支持する一対の連結ボス部と、前記薄板撓みプレートそれぞれを前記直径線と直交する直径線上で同様に両端近傍の二箇所を両面でそれぞれ変形可能に支持する中間ディスクとからなる撓み軸継手構造において、
前記各連結ボス部および中間ディスク部が、靭性を備えた展伸用高力アルミニウム合金または同等材質のダイカスト成形品で、
前記各連結ボス部と前記中間ディスク部との対向面の各々に、かしめ用突出軸を有する支柱が形成されていて、
前記前記撓みプレートは、前記各かしめ用突出軸とかしめられる、かしめ孔が形成されていて、
前記各連結ボス部と前記撓みプレートとが、前記各かしめ用突出軸と前記かしめ孔とを通じて相互に直接接合され、
前記中間ディスク部と前記撓みプレートとが、前記各かしめ用突出軸と前記かしめ孔とを通じて相互に直接接合され、
各連結ボス部は、前記かしめ孔の対応位置に、かしめに先立って前記中間ディスク部のかしめ用突出軸を受け、かつ、かしめ時にかしめ工具が挿通されるアクセスホールを備えるている。
【0013】
そして、このような各連結ボス部および中間ディスク部を、優れた靭性を備えた展伸用高力アルミニウム合金または同等材質でダイカスト成形し、前記薄板撓みプレートを支持する各支柱の中心部より前記撓みプレートを直接固定する丸むくのかしめ用突出軸を一体成形した。
【0014】
前記高力アルミニウム合金はAl-Mg-Cr系合金(ヒドロナリウムまたはヒドロ)で、前記撓みプレートは板厚0.6mm以下のガラス繊維強化ポリイミドまたは同等の合成樹脂薄板である。また前記撓みプレートは、板厚0.8mm以下のエポキシ系カーボン繊維強化薄板または同等の合成樹脂薄板であってもよい。
【0015】
さらには、前記合成樹脂薄板に板厚0.4mm以下の同形のステンレス薄板を重ねて前記撓みプレートを構成すると好適である。また前記丸むくのかしめ用突出軸は、適当な別部材をインサート成形で一体成形してもよい。
【0016】
一方、前記連結ボス部の中心には、動力伝達軸に密に嵌合する軸孔とともに、軸線を含み前記撓みプレートの支持位置から僅かに離間する直径線沿いに外周から前記軸孔に達する狭幅のスリットを設けて前記連結ボス部を全長にわたって開端し、このスリットによって分断された前記連結ボス部の片方にボルト貫通孔とボルトの埋頭孔とを穿設し、他方に前記ボルトを螺入するネジ孔を螺刻した。さらに前記スリットは、前記軸孔を横断して反対側の内壁から所要の深さまで延在させると好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係わるユニバーサルジョイントの実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係わるユニバーサルジョイント10の一実施例を示す分解斜視図で、図2は組立図で(a)は軸線に沿った断面図、(b)は軸線と直角な側面図である。説明の都合上図面右側を駆動側、左側を従動側とする。
【0018】
図1および図2において、11は駆動軸12に嵌合する内径13を形成した連結ボス部、14は従動軸15に嵌合する内径16を形成した連結ボス部でいずれも適用する軸径以外は同様の形状寸法で構成される。17は環状の中間ディスクで、中心貫通孔18の内径d1は、駆動軸12および従動軸15の軸径d2と同等かまたはより大きく形成される。
【0019】
駆動軸連結ボス部11、従動軸連結ボス部14および中間ディスク17はAl-Mg-Cr系展伸用高力アルミニウム合金のヒドロナリウムダイカスト(HD−3)成型品(ヒドロまたはヒドラ)または同等品で、両連結ボス部11,14の片面11a,14aおよび中間ディスク17の両面17a,17bにおけるそれぞれの直径線上で、両端近傍に軸方向に支柱19,20が突設され、さらに丸むくのかしめ用突出軸21,22が所要の長さだけ支柱19,20の支持面30,33から延在させてある。
【0020】
23は撓みプレートで円環を基本形状とし、中央開口24の内径d3は、残りの環状外周部分が撓みに柔軟に対応する一方、所要のトルク伝達が可能な強度を備えかつ繰返し変形に耐えるように寸法設定される。本実施例では中央開口24の両側で相対する円弧部分を削除した弦25が正方形の部分を画定している。この正方形の二本の対角線に相当する直径線26,27上の両端近傍で、各かしめ用突出軸21,22の対応位置に各かしめ用突出軸21,22に嵌合するかしめ孔28,29が穿設されている。
【0021】
撓みプレート23は、ポリイミド薄板、ガラス繊維強化ポリイミド薄板、ポリイミド薄板、エポキシ系カーボン繊維強化薄板または同等の合成樹脂薄板で、板厚0.2〜0.6mmのものが、伝達トルクや使用環境に応じて選択され、あるいは過酷な条件に対応するため同形のステンレス薄板(図示しない)と重ねて使用される。
【0022】
以下に本実施例に係わるユニバーサルジョイント10の組立てについて説明する。駆動軸連結ボス部11および従動軸連結ボス部14それぞれのかしめ用突出軸21に撓みプレート23の対応するかしめ孔28を挿通して座金31を添装し、かしめ用突出軸21の先端を圧縮変形させかしめ頭21aを形成する。撓みプレート23は支柱19の支持面30に圧着固定され、各連結ボス部11,14において、それぞれの片面11a,14aと各支柱19の支持面30との段差が形成する空間により、撓みプレート23は支持面30を支点として変形可能に支持される。
【0023】
次に、駆動軸連結ボス部11および従動軸連結ボス部14にそれぞれ支持された撓みプレート23を対向配置して中間ディスク17を挟装する。すなわち、各撓みプレート23について、両連結ボス部11,14に固定したかしめ孔28が載る直径線26と直交する直径線27上の残りのかしめ孔29に、中間ディスク17の対応するかしめ用突出軸22を挿通して座金31を添装し、突出軸22の先端を圧縮変形させてかしめ頭22aを形成する。
【0024】
両連結ボス部11,14で撓みプレート23のかしめ孔29と対応位置にあるアクセスホール32は、かしめ工具(図示しない)を挿通してかしめ作業だけに供される捨て孔であるが、強度に関係なくユニバーサルジョイント10自体を軽量化し、回転に対する慣性力を低減させる効果がある。撓みプレート23は支柱20の支持面33に圧着固定される。中間ディスク17の両面17a,17bと各支柱20の支持面33との段差が形成する空間により、撓みプレート23は支持面33との当接面を支点として変形可能に支持される。
【0025】
このように中間ディスク17の両側で対向する連結ボス部11,14の間に変形自在に支持された二枚の薄い撓みプレート23の円環が撓むことによって、駆動軸と従動軸との軸線の偏向に応ずることができる。従って、例えば精密機器内で、駆動軸からその軸線が近似的に一致する従動軸に同一回転速度(角度)で運動を正確に伝えることができる。また、撓みプレート23を形成するポリイミド樹脂は耐熱性を有し、高速回転中の繰返し変形による自己発熱を含めて、高温環境(約400°C)にも十分対応することができる。
【0026】
【実施例】
本発明の実施の形態を説明する上記実施例では、両連結ボス部11,14および中間ディスク17にかしめ加工が可能な展伸性があり靭性に富む素材を使用したので、かしめ用突出軸21,22を両連結ボス部11,14および中間ディスク17から同一素材を延在させて形成したが、第二実施例として図3(a),(b)に例示する中間ディスク171,172のようにインサート成形で、別部材221,222を撓みプレート23の締結材として埋入してもよい。以下の実施例では上記実施例と同様の部材に対しては同じ符号を使用する。
【0027】
図3(a)の中間ディスク171では適当なリベット材221がインサート成形され、上記実施例同様にかしめられる。図3(b)の中間ディスク172では頭なしボルト222がインサート成形され、ナット124で撓みプレート23を締結し、緩み止めに接着材125を使用する。第二実施例では、中間ディスク17について説明したが、連結ボス部11,14についても、撓みプレート23の締結材を同様にインサート成形することができる。
【0028】
また上記実施例では、中間ディスク17の両側から延在するかしめ用突出軸22の軸線は同一線上に整合しているが、第三の実施例として図4に斜視図で例示するユニバーサルジョイント101の中間ディスク173は、撓みプレート23との両連結面173a,173bにおいて、互いに直交する直径線上に丸むくのかしめ用突出軸22を支柱20と共に突設し、両側の撓みプレート23を90°異なる位相で支持する。
【0029】
さらに上記実施例では、両連結ボス部11,14と駆動軸12および従動軸15との結合手段としてネジ孔34を螺刻して押しネジ(図示しない)を使用する構成であるが、本発明に係わるユニバーサルジョイント10では、両連結ボス部11,14の成形に靭性に優れた材料を使用することにより、以下に示す結合手段が可能である。結合手段は駆動軸12も従動軸15も共通とし、一括して示す動力伝達軸120に対する連結ボス部311(第四実施例:図5参照)、411(第五実施例:図6参照)、511(第六実施例:図7参照)および611(第七実施例:図8参照)を説明する。その他共通する部材には、同じ符号を使用して説明する。
【0030】
図5(a)は第四実施例の連結ボス部311の軸断面図、図5(b)は軸と直角な一部を断面で示した側面図である。連結ボス部311には軸線L1と角度をなす底面312のスリット313が、ボス部周壁314の撓みプレート23取付側の片面311aから僅かな距離s1をおいて反対面311bに向けて開口し、直径に沿って軸孔315を横断して、底面312の端末は反対側のボス部周壁316の近傍に達する。
【0031】
開口側のボス部周壁314に、スリット313の面に直交するボルト孔317を設ける。すなわち、スリット313の相対する壁面の一方はボルト貫通孔318で、ボルトの頭を沈めるざぐり(埋頭孔)321を設け、他方に雌ネジ322を螺刻する。図示しないボルトを螺入してスリット313の幅を狭める方向に締め付け、軸孔315の内周面324を微小な遊隙で嵌合する動力伝達軸面323に圧着固定し、連結ボス部311と動力伝達軸120との結合を達成する。
【0032】
図6(a)は第五実施例の連結ボス部411の側面図、図6(b)は図6(a)のB−B線に沿った断面図である。連結ボス部411には軸線L2と直交する底面412のスリット413が、連結ボス部411の撓みプレート23取付側の片面411aから僅かな距離s2をおいて反対面411bに向けて開口し、直径に沿って連結ボス部411を横断する。
【0033】
軸孔415を挟んで連結ボス部411の両側それぞれに、スリット413と直交させてボルト孔417を設ける。すなわち、スリット413の相対する壁面の一方をボルト貫通孔418として、ボルト頭を沈めるざぐり(埋頭孔)421を設け、他方に雌ネジ422を螺刻する。
【0034】
ボルト(図示しない)をそれぞれのボルト孔417に螺入してスリット413の幅を狭める方向に締め付けることにより、軸孔415の内周面424は微小な遊隙で嵌合する動力伝達軸面423に圧着固定され、連結ボス部411と動力伝達軸120との結合が達成される。
【0035】
図7は第六実施例の連結ボス部511で、図7(a)は図7(b)のA−A線に沿った断面図、図7(b)は平面図である。上記実施例と異なり、連結ボス部511の円環形状は周壁514から軸孔515の内周面524に達するスリット513によって完全に切断され、軸方向が全長にわたって開端される。スリットの開端513a近傍において、スリット513と直交させてボルト孔517を設ける。すなわち、スリット513の相対する壁面の一方をボルト貫通孔518として、ボルト頭を沈めるざぐり(埋頭孔)521を設け、他方に雌ネジ522を螺刻する。
【0036】
ボルト(図示しない)をそれぞれのボルト孔517に螺入してスリット513の幅を狭める方向に締め付けることにより、軸孔515の内周面524は微小な遊隙で嵌合する動力伝達軸面523に圧着固定され、連結ボス部511と動力伝達軸120とが結合される。
【0037】
この構成は、開端513aに変位を与えるボルトが作用力を及ぼす埋頭孔底面521aと変位の支点P5となる軸孔515の内周面524との距離が上記第四実施例および第五実施例の場合より離れているので、締付力に対する変位割合は大きく、僅かな操作力で強い圧着力が得られ、比較的大きな公差の嵌合にも対応できる。
【0038】
しかしながら、スリット513の形成位置によっては、締め付けによってスリット513の幅が狭められると、それに対応して直径線526a上における外周の二点で撓みプレート23を固定しているかしめ頭21aの二点間の距離D5が短縮される。そのため撓みプレート23の中央部分が軸方向に湾曲する変形を受け、動力伝達が正常に行われなくなる。そこで、本発明に係わるユニバーサルジョイントでは、スリット513が撓みプレート23の支柱19の近傍で周方向に離間した位置を通る直径線526bに沿って設けられる。
【0039】
このようにすることによって、撓みプレート23を固定する二点を結ぶ直径線526aに対してほぼ直交する方向に締め付けが行われるため、撓みプレート23を固定する二点間の距離を殆ど変化させることなく、軸方向と回転方向の両方向に対して確実に連結ボス部511と動力伝達軸120との安定した結合が達成できる。
【0040】
図8は第七実施例の連結ボス部611で、図8(a)は図8(b)のA−A線に沿った断面図、図8(b)は平面図である。第七実施例は第六実施例同様に、連結ボス部611の円環形状は外周壁614から軸孔615の内周面624までスリット613によって完全に切断され、軸方向が全長にわたって開端613aとなる。
【0041】
スリット613は、第六実施例と同様に、撓みプレート23を固定している支柱19の近傍で周方向に離間した位置を通る直径線626bに沿って設け、スリットの開端613a近傍でスリット613の面に直交する方向にボルト孔617を設ける。
【0042】
ボルト貫通孔618にボルト(図示しない)を挿通してボルトを雌ネジ622に螺入し、埋頭孔621に沈めたボルト頭底部で埋頭孔底面621aをネジの推力で強制的に押動することによって、動力伝達軸面623に軸孔内周面624が圧着され伝達軸120に連結ボス部611が軸方向と回転方向の両方向に対して確実に固定される。
【0043】
ボルト頭底部が埋頭孔底面621aを押動してスリット613の幅を狭める方向は、撓みプレート23を固定する二点間を結ぶ直径線626aに対し、ほぼ直交する関係となるので、撓みプレート23を固定するかしめ頭21aの二点間の距離D6がボルト(図示しない)の締付けによって殆ど変位しないことも第六実施例と同様である。
【0044】
第六実施例と異なり、第七実施例のスリット613では、開端613aと反対側の軸孔内周面624を越えて、その底部613bがさらに連結ボス部611の胴部内に所要の深さまで延在させてある。このため第七実施例の開端613aに変位を与えるボルトが作用力を及ぼす埋頭孔底面621aと変位の支点P6となるスリット底部613bとの距離が第六実施例に比べてさらに大きくなるので、締付効果はさらに強化され、さらに緩い嵌合公差にも対応できる。
【0045】
図2の実施例ではネジ孔34を異なる方向から螺設して押しネジで動力伝達軸である駆動軸12または従動軸15を強圧し、安定したクランプが達成できる。しかしながら、この手段は駆動軸12または従動軸15を嵌合する内径13,16の中で片方に押動するため、軸の表面にネジの先端による圧痕で傷付くうえ、動力伝達軸12,15と内径13,16との嵌合公差により、連結ボス部11,14の中心と動力伝達軸12,15との中心は必ずしも一致しないから、高速回転する動力伝達の場合には振動を発生し、伝達トルクの繰返し変動による疲労で耐用寿命が短くなる。
【0046】
第四実施例から第七実施例までは、ボルトでスリット313,413,513,613の間隙を狭くする方向に締付けることによって、軸孔の内周面324,424,524,624で動力伝達軸面323,423,523,623を周囲全面からほぼ均等に圧着するので連結ボス部311,411,511,611の中心と動力伝達軸120の中心とをほぼ同心に維持することができる。
【0047】
また、上記スリットは撓みプレート23を固定している支柱19の近傍を通る直径線に沿って設けたので、スリットに直交する方向の締付けによるスリット間隙の変化が撓みプレート23の固定位置に影響して撓みプレート23を変形させることはない。
【0048】
本発明の望ましい実施例を図示に基づいて説明したが、上記実施例は本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲内で多種多様の構成や実施例相互における種々の組合わせが可能であることは当然である。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係わるユニバーサルジョイントによれば、ダイキャスト成形による各連結ボス部および中間ディスク部自体にかしめ用軸を突設したので、撓みプレートの固定に必要な寸法が強度を損なうことなく限界まで縮減でき、外径20mm以下の小形化にも耐久性と十分な精度を保って対応することができる。しかもダイキャストによる量産とかしめ作業の機械化で、コスト低減は極めて容易である。
【0050】
また、スリットを撓みプレートの支柱近傍を通る直径線に沿って設けたので、締付けによるスリット間隙の変化で撓みプレートが回転中に動的変形を受けることはなく、本発明に係わるユニバーサルジョイントが取付けによって耐久性を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるユニバーサルジョイントの一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す実施例の組立図で、(a)は軸線に沿い一部を断面で示した側面図、(b)は軸に直角な側面図である。
【図3】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第二実施例における中間ディスク部分を一部断面で示した側面図で、(a),(b)に異なる締結材を示す。
【図4】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第三実施例における中間ディスク部分を説明する図1と同様な分解斜視図である。
【図5】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第四実施例における連結ボス部分の固定手段を示す(a)は軸断面図、(b)は軸と直角で一部を断面で示した側面図である。
【図6】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第五実施例における連結ボス部分の固定手段を示す(a)は軸断面図、(b)は(a)のB−B線に沿った軸と直角な断面図である。
【図7】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第六実施例における連結ボス部分の固定手段を示す(a)は(b)のA−A線に沿った軸断面図、(b)は軸と直角な側面図である。
【図8】本発明に係わるユニバーサルジョイントの第七実施例における連結ボス部分の固定手段を示す(a)は(b)のA−A線に沿った軸断面図、(b)は軸と直角な側面図である。
【図9】従来のユニバーサルジョイントの一実施例を示す(a)は軸に沿った側面図、(b)は軸と直角な側面図である。
【図10】従来のユニバーサルジョイントの駆動軸固定手段の一実施例を示すもので、(a)は一部を断面で示した側面図、(b)は(a)のB−B線に沿って示した軸と直角な断面図である。
【符号の説明】
10 ユニバーサルジョイント
11,14 連結ボス部
17 中間ディスク
21,22 かしめ用突出軸
21a,22a かしめ頭
23 撓みプレート
28,29 かしめ孔
32 アクセスホール
Claims (7)
- 円環を基本形状とする一対の薄板撓みプレートと、この薄板撓みプレートそれぞれを片面の直径線両端近傍の二箇所において変形可能に支持する一対の連結ボス部と、前記薄板撓みプレートそれぞれを前記直径線と直交する直径線上で同様に両端近傍の二箇所を両面でそれぞれ変形可能に支持する中間ディスクとからなるユニバーサルジョイントにおいて、
前記各連結ボス部および中間ディスク部が、靭性を備えた展伸用高力アルミニウム合金のダイカスト成形品で、
前記各連結ボス部と前記中間ディスク部との対向面の各々に、当該各連結ボス部の厚さ以下の長さのかしめ用突出軸を有する支柱が形成されていて、
前記前記撓みプレートは、前記各かしめ用突出軸と嵌合する、かしめ孔が形成されていて、
前記各連結ボス部と前記撓みプレートとが、前記各かしめ用突出軸と前記かしめ孔とを通じて相互に直接接合され、
前記中間ディスク部と前記撓みプレートとが、前記各かしめ用突出軸と前記かしめ孔とを通じて相互に直接接合され、
各連結ボス部は、前記かしめ孔の対応位置に、かしめに先立って前記中間ディスク部のかしめ用突出軸を受け、かつ、かしめ時にかしめ工具が挿通されるアクセスホールを備える、ユニバーサルジョイント。 - 前記展伸用高力アルミニウム合金がAl-Mg-Cr系合金(ヒドロナリウムまたはヒドロ)であることを特徴とする請求項1記載のユニバーサルジョイント。
- 前記撓みプレートが板厚0.6mm以下のガラス繊維強化ポリイミドまたは合成樹脂薄板であることを特徴とする請求項1記載のユニバーサルジョイント。
- 前記撓みプレートが板厚0.8mm以下のエポキシ系カーボン繊維強化板または合成樹脂薄板であることを特徴とする請求項1記載のユニバーサルジョイント。
- 前記合成樹脂薄板に板厚0.4mm以下の同形のステンレス薄板を重ねて前記撓みプレートを構成したことを特徴とする請求項3または4に記載のユニバーサルジョイント。
- 前記連結ボス部の中心に、動力伝達軸に密に嵌合する軸孔とともに、軸線を含み前記撓みプレートの支持位置から僅かに離間する直径線沿いに外周から前記軸孔に達する狭幅のスリットを設けて前記連結ボス部を全長にわたって開端し、このスリットによって分断された前記連結ボス部の片方にボルト貫通孔とボルトの埋頭孔とを穿設し、他方に前記ボルトを螺入するネジ孔を螺刻したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のユニバーサルジョイント。
- 前記スリットは、前記軸孔を横断して反対側の内壁からさらに所要の深さまで延在させたことを特徴とする請求項6記載のユニバーサルジョイント。
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