JP3821049B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射量制御装置に係り、特に、スロットル弁を駆動するアクチュエータが同スロットル弁を駆動していないときにスロットル弁開度をオープナ開度に保持するためのオープナ機構を備えた燃料噴射量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子制御燃料噴射式の内燃機関においては、吸気行程直前又は吸気行程中にあって燃料噴射による燃料の供給が必要な気筒(以下、「燃料噴射気筒」と称呼する。)の同吸気行程における吸入空気量を求め、この求めた吸入空気量に応じた量の燃料を、最も遅くとも同吸気行程に対する吸気弁閉弁時(吸気弁の状態が開状態から閉状態に変化する時点)までに、場合によっては同吸気行程開始前までに、噴射する必要がある。
【0003】
このため、例えば、特開平10−169469号公報に開示された内燃機関の制御装置は、アクセルペダルの位置等の内燃機関の運転状態に応じて設定される(暫定)目標スロットル弁開度を、図17のタイムチャートに示したように、所定の遅延時間TDだけ遅延し、この遅延した暫定目標スロットル弁開度を目標スロットル弁開度TAtとして設定して、スロットル弁を駆動するアクチュエータに出力するようになっている。これにより、現時点から遅延時間TDだけ先の目標スロットル弁開度TAtの変化を現時点にて知ることが可能となる。
【0004】
そして、この制御装置は、目標スロットル弁開度TAtに基づいて、スロットル弁の制御遅れ等を考慮しながら実際のスロットル弁開度(実スロットル弁開度)を燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時まで前もって予測・推定し、少なくとも同推定した推定スロットル弁開度TAestに基づいて燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時における吸入空気量を同吸気弁閉弁時よりも前の時点で予測・推定するとともに、その予測した吸入空気量に対して所定の目標空燃比を得るために必要な燃料噴射量の燃料を同気筒に対して噴射するようになっている。従って、この種の制御装置においては、燃料噴射量の計算に用いられる推定スロットル弁開度TAestを精度よく演算する必要がある。
【0005】
ところで、上記したようにスロットル弁をアクチュエータにより駆動する装置(電子制御スロットル弁装置)を備えた内燃機関の制御装置においては、同アクチュエータの故障時等において、路肩への退避走行等の車両の必要最小限度の走行を可能にするため、同電子制御スロットル装置に所謂オープナ機構を搭載する技術が知られている。
【0006】
オープナ機構は、例えば、特開2001−132515号公報に開示されているように、スロットル弁が全閉状態となる開度より若干大きい開度に設定されたオープナ開度より実スロットル弁開度が大きいときにスロットル弁を閉方向に付勢するとともに、実スロットル弁開度がオープナ開度より小さいときにスロットル弁を開方向に付勢する付勢手段を有している。これにより、アクチュエータがスロットル弁を駆動していないときに実スロットル弁開度がオープナ開度に保持され、オープナ開度により確保される吸入空気量により、内燃機関の運転を必要最小限だけ継続させることができる。
【0007】
しかし、上記内燃機関の制御装置(電子制御スロットル弁装置)にオープナ機構が搭載されると、図17に示したように、目標スロットル弁開度TAt(一点鎖線にて表示)がオープナ開度TAOPNを通過するように変化した場合、目標スロットル弁開度TAtに追従する実スロットル弁開度TA(実線にて表示)が、オープナ開度TAOPNを通過する過程にてオープナ開度TAOPNに到達した後、所定時間Tに渡り同オープナ開度TAOPNに保持され、その後目標スロットル弁開度TAtに収束していくという現象が発生する。以下、実スロットル弁開度が、オープナ開度を通過する過程にてオープナ開度に到達した後一時的に同オープナ開度に保持される現象を「特異現象」と称呼する。
【0008】
この特異現象は、実スロットル弁開度TAがオープナ開度TAOPNを通過する前の状態と後の状態とで、オープナ機構によりアクチュエータの負荷トルクの向きが逆になることに起因して発生する。即ち、通常、スロットル弁と同スロットル弁を駆動するアクチュエータとの間には歯車列で構成された減速機が介挿されているところ、アクチュエータの負荷トルクの向きが逆になるときには、同歯車間にて不可避的に存在するバックラッシュに対応する角度だけアクチュエータが回転している間(上記所定時間Tに対応する)、スロットル弁はアクチュエータからの駆動力を受けない。よって、実スロットル弁開度TAは、所定時間Tに渡りオープナ機構の付勢手段の付勢力によりオープナ開度TAOPNに保持される。
【0009】
従って、オープナ機構が搭載された内燃機関の制御装置において、推定スロットル弁開度TAestを精度よく演算し所定の目標空燃比を安定して得るためには、同制御装置は、上記特異現象を考慮して同推定スロットル弁開度TAestを演算する必要がある。即ち、推定スロットル弁開度TAestがオープナ開度TAOPNを通過するように変化するとき、図17に実線で示したように、制御装置は、推定スロットル弁開度TAestがオープナ開度TAOPNに到達した時点で特異現象が開始したと判定し、その後、所定時間Tに渡り推定スロットル弁開度TAestが同オープナ開度TAOPNに保持されるとともにその後目標スロットル弁開度TAtに収束していくように、同推定スロットル弁開度TAestを演算する必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実スロットル弁開度TAが同オープナ開度TAOPNに保持される時間(以下、「実保持時間」と称呼する。)は、上記したように減速機内に存在するバックラッシュに対応する角度だけアクチュエータが回転している時間に対応しているので、特異現象が開始した時点での同アクチュエータの回転速度によって変化する。また、図17(a)に破線で示したように、実保持時間が経過した後目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの実スロットル弁開度TAは、同実保持時間が変化することに伴い変化する。
【0011】
従って、推定スロットル弁開度TAestがオープナ開度TAOPNに保持される所定時間が常に一定時間Tであるものとして同推定スロットル弁開度TAestが演算されると、特異現象が開始した後から実スロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtに収束するまでの間、実スロットル弁開度TAと推定スロットル弁開度TAestとの間に偏差が発生し、所定の目標空燃比が得られなくなる場合が発生する。
【0012】
具体的に述べると、実保持時間が上記一定時間Tよりも短くなっている場合、同実保持時間が経過した後目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの実スロットル弁開度TAは、図17(a)に示す実開度TA1のように推移する。この場合、実保持時間が経過した後に推定スロットル弁開度TAestが目標スロットル弁開度TAtに収束するまでの間、同推定スロットル弁開度TAestが実スロットル弁開度TA1よりも大きくなる。従って、予測・推定される吸入空気量が、実際の吸入空気量よりも大きく演算され、燃料噴射量が、目標空燃比を得るために本来必要な量よりも大きく演算される。よって、機関の空燃比は目標空燃比よりもリッチな空燃比となる。
【0013】
他方、実保持時間が上記一定時間Tよりも長くなっている場合、同実保持時間が経過した後目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの実スロットル弁開度TAは、図17(a)に示す実開度TA2のように推移する。この場合、上記一定時間Tが経過した後に推定スロットル弁開度TAestが目標スロットル弁開度TAtに収束するまでの間、同推定スロットル弁開度TAestが実スロットル弁開度TA2よりも小さくなり、機関の空燃比は目標空燃比よりもリーンな空燃比となる。
【0014】
また、実保持時間が上記一定時間Tと同一になっていても、図17(b)に破線で示したように、同実保持時間(一定時間)T経過後目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの実スロットル弁開度TAの収束特性(例えば収束時間TC)は、実スロットル弁開度TA(オープナ開度TAOPN)と同所定時間T経過時点における目標スロットル弁開度TAtとの偏差ΔTAに依存して変化する。
【0015】
この現象は、上記偏差ΔTAに応じてスロットル弁を駆動するアクチュエータの駆動トルクが変化することに基づく。即ち、通常、アクチュエータを制御する制御手段(CPU)は、実スロットル弁開度TAと目標スロットル弁開度TAtとの偏差に応じて演算される制御量に基づいて同アクチュエータを例えば比例・積分制御(フィードバック制御)するので、同制御により発生するアクチュエータの駆動トルクは、前記制御量に応じて変化する。
【0016】
従って、上記偏差ΔTAが大きいとアクチュエータの駆動トルクが大きくなり、スロットル弁を駆動するトルク(アクチュエータの駆動トルクからオープナ機構の付勢手段の付勢力による負荷トルクを減じたトルク)も大きくなる。よって、スロットル弁の回動速度(特に回動開始直後の回動速度)が速くなり、その結果実スロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの収束時間が短くなる(図17(b)の実開度TA3を参照)。
【0017】
他方、上記偏差ΔTAが小さいとアクチュエータの駆動トルクが小さくなり、スロットル弁を駆動するトルクも小さくなるので、実スロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの収束時間が長くなる(図17(b)の実開度TA4を参照)。
【0018】
従って、所定時間が経過した後目標スロットル弁開度TAtに収束していくときの推定スロットル弁開度TAestの収束特性が上記偏差ΔTAにかかわらず常に一様になるように同推定スロットル弁開度TAestが演算されると、実保持時間が上記一定時間Tと同一になっていても、同一定時間Tが経過した後実スロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtに収束するまでの間、実スロットル弁開度TAと推定スロットル弁開度TAestとの間に偏差が発生し、所定の目標空燃比が得られなくなる場合が発生する。
【0019】
即ち、実スロットル弁開度TAが図17(b)に示す実開度TA3のように推移する場合、推定スロットル弁開度TAestが実スロットル弁開度TA3よりも大きくなるので、機関の空燃比は目標空燃比よりもリッチな空燃比となる。他方、実スロットル弁開度TAが図17(b)に示す実開度TA4のように推移する場合、推定スロットル弁開度TAestが実スロットル弁開度TA4よりも小さくなるので、機関の空燃比は目標空燃比よりもリーンな空燃比となる。
【0020】
従って、本発明の目的は、オープナ機構を備えるとともに、推定スロットル弁開度に少なくとも基づいて燃料噴射量を演算する内燃機関の燃料噴射量制御装置において、スロットル弁開度がオープナ開度を通過するとき、機関の空燃比が目標空燃比に極力近づくように同空燃比を制御可能なものを提供することにある。
【0021】
【発明の概要】
本発明の特徴は、内燃機関の吸気通路に配設されたスロットル弁と、前記内燃機関の運転状態に基づいて目標スロットル弁開度を演算する目標スロットル弁開度演算手段と、前記スロットル弁の実開度である実スロットル弁開度を検出する実スロットル弁開度検出手段と、前記スロットル弁を開閉駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータと前記スロットル弁との間に介挿されるとともに同アクチュエータの駆動力を同スロットル弁に伝達する歯車列を含んだ歯車機構と、前記実スロットル弁開度が前記目標スロットル弁開度に近づくように前記アクチュエータを制御する制御手段と、前記アクチュエータの回転速度に関連する速度を検出する速度検出手段と、前記スロットル弁が全閉状態となる開度より若干大きい開度に設定されたオープナ開度より前記実スロットル弁開度が大きいときに同スロットル弁を閉方向に付勢するとともに、同実スロットル弁開度が同オープナ開度より小さいときに同スロットル弁を開方向に付勢する付勢手段を有し、前記アクチュエータが同スロットル弁を駆動していないときに同実スロットル弁開度を同オープナ開度に保持するためのオープナ機構と、前記目標スロットル弁開度に基づいて、前記実スロットル弁開度の推定値である推定スロットル弁開度を演算する第1推定スロットル弁開度演算手段と、前記第1推定スロットル弁開度演算手段により演算された前記推定スロットル弁開度が前記オープナ開度を通過しているときに、前記実スロットル弁開度が同オープナ開度を通過する過程において同オープナ開度に到達したと判定する判定手段と、前記判定手段により前記実スロットル弁開度が前記オープナ開度に到達したと判定された時点から同時点における前記速度検出手段により検出された速度に応じた所定時間に渡り、前記推定スロットル弁開度が前記オープナ開度近傍に保持されるように、前記第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算する第2推定スロットル弁開度演算手段と、前記推定スロットル弁開度に応じた吸入空気量に対して所定の目標空燃比を得るために必要な燃料噴射量を演算する燃料噴射量演算手段と、前記燃料噴射量の燃料を噴射する燃料噴射手段と、を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置としたことにある。
【0022】
これによれば、判定手段は、第1推定スロットル弁開度演算手段により演算された推定スロットル弁開度がオープナ開度を通過しているときに、実スロットル弁開度がオープナ開度を通過する過程において同オープナ開度に到達したと判定する。換言すれば、判定手段は、かかる条件が成立したとき、特異現象が開始したと判定する。
【0023】
また、第2推定スロットル弁開度演算手段は、判定手段により特異現象が開始したと判定された場合、同判定された時点から同時点におけるアクチュエータの回転速度に関連する速度(例えば、アクチュエータの回転速度、スロットル弁の回転速度、歯車機構内の歯車の回転速度)に応じた所定時間に渡り、推定スロットル弁開度がオープナ開度近傍に保持されるように、第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算する。換言すれば、第2推定スロットル弁開度演算手段は、判定手段により特異現象が開始したと判定された時点におけるアクチュエータの回転速度に応じて上記所定時間を変更し得る。
【0024】
ここで、従来技術の欄で述べたように、特異現象はアクチュエータの駆動力をスロットル弁に伝達する歯車列を含んだ歯車機構内のバックラッシュの存在に起因して発生するものであり、実保持時間は、特異現象が開始した時点での同アクチュエータの回転速度に応じて変化する。
【0025】
従って、本発明の特徴を採用した内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、特異現象が開始した時点でのアクチュエータの回転速度にかかわらず、上記所定時間を実保持時間に近づけることができる。よって、実スロットル弁開度がオープナ開度を通過するとき、少なくとも特異現象が開始した後から所定時間が経過する時点までにおいて推定スロットル弁開度は実スロットル弁開度に極力近い値になるように演算され得るので、機関の空燃比は目標空燃比に極力近い値になるように制御され得る。
【0026】
この場合、前記制御手段は、少なくとも前記目標スロットル弁開度と前記実スロットル弁開度との偏差に応じて演算される制御量に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御するとともに、前記第2推定スロットル弁開度演算手段は、前記所定時間経過後さらに所定時間が経過するまでの間、前記推定スロットル弁開度と前記目標スロットル弁開度との偏差に応じた特性をもって同推定スロットル弁開度が同目標スロットル弁開度に収束していくように、前記第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算するように構成されることが好適である。
【0027】
アクチュエータが少なくとも目標スロットル弁開度と実スロットル弁開度との偏差に応じて演算される制御量に基づいてフィードバック制御される場合、従来技術の欄で述べたように、実保持時間が経過した後目標スロットル弁開度に収束していくときの実スロットル弁開度の収束特性(例えば収束時間)は、実スロットル弁開度と目標スロットル弁開度との偏差に応じて変化するところ、これによれば、第2推定スロットル弁開度演算手段は、所定時間経過後さらに所定時間が経過するまでの間、推定スロットル弁開度と目標スロットル弁開度との偏差に応じた特性をもって推定スロットル弁開度が目標スロットル弁開度に収束していくように、第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算する。
【0028】
従って、上記偏差にかかわらず、所定時間経過後目標スロットル弁開度に収束していく過程においても、推定スロットル弁開度の値は実スロットル弁開度に極力近い値になるように演算され得る。よって、実スロットル弁開度がオープナ開度を通過するとき、機関の空燃比はより一層目標空燃比に近い値になるように制御され得る。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による内燃機関の燃料噴射量制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
【0030】
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
【0031】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
【0032】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
【0033】
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、スロットル弁アクチュエータ44、及びオープナ機構45を備えている。
【0034】
スロットル弁43は、同スロットル弁43近傍の概略構成を示す図2に示すように、スロットル軸43aを有し、同スロットル軸43aがスロットルハウジングHgに回動可能に軸支されることにより、吸気管41内で開閉作動可能に構成されている。なお、図2において、図1における各構成と同一の構成については、図1における符号と同一の符号を付している。
【0035】
DCモータからなるスロットル弁アクチュエータ44は、複数の歯車列で構成された減速機(歯車機構)46を介して、スロットル軸43aの一端に連結されている。そして、スロットル弁アクチュエータ44は、後述する電子制御装置70により目標スロットル弁開度TAtが与えられると、比例・積分制御(PI制御)により、実際のスロットル弁開度(実スロットル弁開度)TAが目標スロットル弁開度TAtとなるように(に近づくように)、減速機46を介してスロットル弁43を駆動するようになっている。
【0036】
オープナ機構45は、スロットル弁アクチュエータ44がスロットル弁43を駆動していないときに、実スロットル弁開度TAを所定のオープナ開度に保持する機能を有するものであり、同オープナ開度は、スロットル弁43が吸気管41を閉塞する状態(全閉状態)となる開度より若干大きい開度に設定されている。このオープナ機構45により、スロットル弁アクチュエータ44の故障時等において、車両は、路肩への退避走行等のような必要最小限度の走行を行うことができる。
【0037】
具体的には、オープナ機構45は、図2に示すように、スロットル弁43(スロットル軸43aの他端部)と係合しながら回動するオープナレバー45aと、スロットル弁43を閉方向(スロットル弁開度が減少する方向)に付勢するリターンスプリング45bと、スロットル弁43を開方向(スロットル弁開度が増加する方向)に付勢するオープナスプリング45cと、オープナレバー45aの開方向回動限界位置及び閉方向回動限界位置をそれぞれ決定するためにスロットルハウジングHgに設けられた全開ストッパ45d及びオープナ開度ストッパ45eと、スロットル弁43の全閉位置を決定するためにスロットルハウジングHgに設けられた全閉ストッパ45fを備えている。
【0038】
なお、説明の便宜上、図2においては、スロットル弁43(オープナレバー45a)の回動作動が上下方向の平行移動により示されており、図2においてスロットル弁43(オープナレバー45a)が上方へ移動することは、スロットル弁43(オープナレバー45a)が開方向へ回動することに対応しているとともに、スロットル弁43(オープナレバー45a)が下方へ移動することは、スロットル弁43(オープナレバー45a)が閉方向へ回動することに対応している。
【0039】
スロットル弁43は、図2に示す位置(オープナ開度ストッパ45eに当接している状態にあるオープナレバー45aにスロットル軸43aの他端部が係合している位置)から閉方向へ回動するとき、オープナレバー45aとの係合が解除され、オープナレバー45aと独立して回動するようになっているとともに、図2に示す位置から開方向へ回動するとき、オープナレバー45aと係合して、オープナレバー45aと一体的に回動するようになっている。
【0040】
オープナレバー45aは、一端がスロットルハウジングHgに固定されるとともに他端がオープナレバー45aに固定されたリターンスプリング45bにより、常時閉方向へ付勢されるようになっている。また、オープナレバー45aとスロットル弁43(スロットル軸43aの他端部)との間には、両者を互いに係合させる方向に付勢するオープナスプリング45cが配設されている。
【0041】
従って、スロットル弁43は、図2に示す位置から開方向へ回動するとき、オープナレバー45aを介してリターンスプリング45bから閉方向へ付勢力Fcを受ける一方で、オープナスプリング45cからの開方向への付勢力Foを受けないように構成されている。なお、スロットル弁43の全開位置は、オープナレバー45aが全開ストッパ45dに当接する位置に対応している。
【0042】
一方、スロットル弁43は、図2に示す位置から閉方向へ回動するとき、リターンスプリング45bからの付勢力Fcを受けない一方で、オープナスプリング45cから開方向へ付勢力Foを受けるように構成されている。なお、スロットル弁43の全閉位置は、スロットル軸43aの他端部が全閉ストッパ45fに当接する位置に対応している。
【0043】
従って、オープナ機構45は、スロットル弁アクチュエータ44がスロットル弁43を駆動していないときに、スロットル弁43が図2に示す位置にあるときの開度になるように実スロットル弁開度TAを保持する機能を有するものであり、同オープナ機構45において、スロットル弁43が図2に示す位置にあるときの開度は上記オープナ開度に対応している。
【0044】
以上の構成により、スロットル弁アクチュエータ44に働く負荷トルクは、閉方向のトルクを正の値として表し開方向のトルクを負の値として表すとともに実スロットル弁開度TAと同負荷トルクとの関係を表した図3に示すように、実スロットル弁開度TAがオープナ開度より大きいとき、リターンスプリング45bの付勢力Fcによる閉方向のトルクとなる。この閉方向のトルクは、実スロットル弁開度TAがオープナ開度にあるときに、リターンスプリング45bのセット荷重(オープナレバー45aがオープナ開度ストッパ45eに当接している状態にあるときの荷重)に対応するトルク「a」となり、この状態から、実スロットル弁開度TAが増加するにつれて、リターンスプリング45bの弾性定数に基づいて増加する。
【0045】
一方、スロットル弁アクチュエータ44に働く負荷トルクは、実スロットル弁開度TAがオープナ開度より小さいとき、オープナスプリング45cの付勢力Foによる開方向のトルクとなる。この開方向のトルクは、実スロットル弁開度TAがオープナ開度にあるときに、オープナスプリング45cのセット荷重(オープナレバー45aとスロットル軸43aの他端部とが互いに係合している状態にあるときの荷重)に対応するトルク「-b」となり、この状態から、実スロットル弁開度TAが減少するにつれて、オープナスプリング45cの弾性定数に基づいて減少する(開方向のトルクの絶対値は増加する)。
【0046】
減速機46は、その概略構成を表した図4に示すように、スロットル弁アクチュエータ44の出力軸に連結されたギヤG1と、同ギヤG1に歯合するギヤG2と、同ギヤG2と同軸的に一体回転するギヤG3と、同ギヤG3に歯合するとともにスロットル軸43aの上記一端に固定されたギヤG4とから構成されている。
【0047】
ギヤG1の歯数に対するギヤG2の歯数の比はR1となっており、ギヤG1に対するギアG2の減速比(ギヤG2の回転に対するギヤG1の回転の割合)はR1となっている。また、ギヤG3の歯数に対するギヤG4の歯数の比はR2となっており、ギヤG3に対するギアG4の減速比(ギヤG4の回転に対するギヤG3の回転の割合)はR2となっている。また、後述するように、ギヤG1とギヤG2との歯合部及びギヤG3とギヤG4との歯合部には、それぞれ所定のバックラッシュが存在している。
【0048】
再び図1を参照すると、排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ52、及びエキゾーストパイプ52に介装された触媒コンバータ(三元触媒装置)53を備えている。
【0049】
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ(実スロットル弁開度検出手段)62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、空燃比センサ66、及びアクセル操作量検出手段(の一部)を構成するアクセル開度センサ67を備えている。
【0050】
エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気流量を計測し、吸入空気流量mTAFMを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度(実スロットル弁開度)を検出し、実スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。空燃比センサ66は、触媒コンバータ53に流入する排ガス中の酸素濃度を検出することで空燃比を表す信号を出力するようになっている。アクセル開度センサ67は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、同アクセルペダルの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0051】
さらに、このシステムは電気制御装置70を備えている。電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、及びADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜67と接続され、CPU71にセンサ61〜67からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、及びスロットル弁アクチュエータ44に駆動信号を送出するようになっている。
【0052】
次に、上記のように構成されたシステムにおいて本発明に係る燃料噴射量制御装置が燃料噴射量を決定する原理について説明する。以下に述べる処理は、CPU71がプログラムを実行することにより行われる。
【0053】
(燃料噴射量fiの決定方法の概要)
このような燃料噴射量制御装置は、吸気行程にある気筒、又は吸気行程の直前の状態にある気筒(即ち、燃料噴射気筒)の吸気弁32が、その吸気行程において開弁した状態から閉弁する状態に移行する時点(吸気弁閉弁時)より前の時点にて、同気筒に対して所定量の燃料を噴射する必要がある。そのため、本燃料噴射量制御装置は、吸気弁32が閉弁状態に移行する時点において同気筒内に吸入されているであろう吸入空気量を前もって予測し、同予測した吸入空気量に応じた燃料量の燃料を同吸気弁32の閉弁時より前の時点で同気筒に対して噴射する。本例においては、噴射終了時期を、燃料噴射気筒の吸気上死点前75°クランクアングル(以下、「BTDC75°CA」と表す。他のクランクアングルについても同様に表す。)と定めている。従って、本制御装置は、噴射に要する時間(インジェクタ39の開弁時間)、CPU71の計算時間を考慮して、BTDC75°CAの時点よりも前の時点にて、燃料噴射気筒の吸入空気量を予測する。
【0054】
一方、吸気弁閉弁時の吸気管圧力(即ち、吸気管内空気圧力)は、吸入空気量と密接な関係にある。また、吸気弁閉弁時の吸気管圧力は、吸気弁閉弁時のスロットル弁開度に依存する。そこで、本制御装置は、吸気弁閉弁時のスロットル弁開度を予測・推定し、その推定スロットル弁開度に基づいて燃料噴射気筒の吸入空気量Qを事前に予測し、予測した吸入空気量Qをエンジンの運転状態に応じて別途定められる目標空燃比AbyFrefで除することで、機関の空燃比を目標空燃比AbyFrefに維持するための燃料噴射量fiを求める。以上が、燃料噴射量fiを求める方法の概要である。
【0055】
(燃料噴射量fiの具体的決定方法)
より具体的に述べると、この燃料噴射量制御装置は、先ず、演算周期ΔTt(例えば、8msec)の経過毎にアクセル開度センサ67の出力値に基づいてアクセル操作量Accpを読込み、読み込んだアクセル操作量Accpと、同アクセル操作量Accpと暫定目標スロットル弁開度TAtnewとの関係を規定した所定のテーブルとに基づいて、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewを求め、この暫定目標スロットル弁開度TAtnewを図5のタイムチャートに示したように、所定の遅延時間TDだけ遅延し、この遅延した暫定目標スロットル弁開度TAtnewを目標スロットル弁開度TAtとして設定してスロットル弁アクチュエータ44に出力する。
【0056】
そして、本装置は目標スロットル弁開度TAtとスロットルポジションセンサ62により検出される実スロットル弁開度TAとの偏差に応じて演算される制御量VOに基づいて、スロットル弁アクチュエータ44を比例・積分制御(フィードバック制御)する。なお、遅延時間TDは、本例においては一定の時間であるが、内燃機関10が所定のクランク角度(例えば、クランク角270°CA)だけ回転するのに要する時間T270とする等、エンジン回転速度NEに応じた可変の時間とすることもできる。
【0057】
ところで、本装置から目標スロットル弁開度TAtがスロットル弁アクチュエータ44に出力された場合であっても、同スロットル弁アクチュエータ44の遅れや、スロットル弁43の慣性などにより、実際のスロットル弁開度TAは、ある遅れをもって目標スロットル弁開度TAtに追従する。そこで、本装置においては、下記数1に基づいて遅延時間TD後におけるスロットル弁開度を予測・推定する(図5を参照)。
【0058】
【数1】
TAest(ntdly)=TAt(ntdly)+((Smth1-1)/Smth1)・(TAest(ntdly-1)-TAt(ntdly))
【0059】
数1において、TAest(ntdly)は今回の演算タイミングにおいて新たに予測・推定される推定スロットル弁開度TAestであり、TAt(ntdly)は今回の演算タイミングにて新たに得られた目標スロットル弁開度TAt(即ち、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnew)であり、TAest(ntdly-1)は今回の演算タイミングにおいて既に予測・推定されていた前回の推定スロットル弁開度TAest(即ち、前回の演算タイミングにおいて予測・推定された推定スロットル弁開度TAest)である。ここで、ntdlyは遅延処理回数であり、遅延時間TDを演算周期ΔTtで除した値である。また、Smth1は遅延係数であり、「1」より大きい一定値である。
【0060】
このように、この燃料噴射量制御装置(CPU71)は、今回の演算タイミングにて遅延時間TD後の目標スロットル弁開度TAt(ntdly)を新たに決定するとともに、遅延時間TD後の推定スロットル弁開度TAest(ntdly)を新たに予測・推定する。そして、本装置は、新たに推定スロットル弁開度TAest(ntdly)を演算する度に、同推定スロットル弁開度TAest(ntdly)の値とその時点でのエンジン回転速度NEとから燃料噴射気筒の吸入空気量Q(ntdly)を演算するとともに、現時点から遅延時間TD経過後までの目標スロットル弁開度TAt(0)〜TAt(ntdly)、推定スロットル弁開度TAest(0)〜TAest(ntdly)及び吸入空気量Q(0)〜Q(ntdly)を、現時点からの時間経過に対応させた形でRAM73に記憶・格納する。
【0061】
そして、本装置は、燃料噴射気筒のクランクアングルがBTDC90°CAとなる毎に、同燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時をエンジン回転速度NEから予測し、RAM73に格納されているその時点から遅延時間TD経過後までの吸入空気量Qの中から同吸気弁閉弁時に対応する吸入空気量Qを選択し、同選択した(予測した)吸入空気量Qを目標空燃比AbyFrefで除することで、機関の空燃比を目標空燃比AbyFrefに維持するための燃料噴射量fiを求める。以上が、燃料噴射量fiを求める具体的方法である。
【0062】
(オープナ開度通過時における推定スロットル弁開度TAestの演算方法の概要)本装置は、基本的には、上記数1に基づいて演算された、実スロットル弁開度TAに追従する推定スロットル弁開度の値(以下、この値を「仮の推定スロットル弁開度TAest1」と称呼する。)をそのまま推定スロットル弁開度TAestとして設定する。しかし、仮の推定スロットル弁開度TAest1(即ち実スロットル弁開度TA)がオープナ開度TAOPNを通過する際には、スロットル弁43とスロットル弁アクチュエータ44との間に介挿された減速機46の歯車列G1〜G4の存在により発生するバックラッシュに基づく特異現象が発生する。従って、この場合、本装置は、特異現象が考慮された推定スロットル弁開度の値(以下、この値を「仮の推定スロットル弁開度TAest2」と称呼する。)を、上記仮の推定スロットル弁開度TAest1の値に優先して、推定スロットル弁開度TAestとして設定する。
【0063】
具体的に述べると、本装置は、図6に示すように、仮の推定スロットル弁開度TAest1がオープナ開度TAOPNを減少しながら通過する場合、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*(前回値)がオープナ開度TAOPN以上であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1(今回値)がオープナ開度TAOPNよりも小さいとき(図6において時刻t1)に、仮の推定スロットル弁開度TAest1がオープナ開度を減少しながら通過する過程において特異現象が開始したと判定する。
【0064】
また、本装置は、図7に示すように、仮の推定スロットル弁開度TAest1がオープナ開度TAOPNを増加しながら通過する場合は、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*(前回値)がオープナ開度TAOPN以下であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1(今回値)がオープナ開度TAOPNよりも大きいとき(図7において時刻t1)に、仮の推定スロットル弁開度TAest1がオープナ開度を増加しながら通過する過程において特異現象が開始したと判定する。
【0065】
そして、本装置は、特異現象が開始したと判定した時点以降後述するように決定される保持時間(所定時間)Tに渡り仮の推定スロットル弁開度TAest2がオープナ開度TAOPNに保持されるとともに(時刻t1〜時刻t2)、その後後述するように決定される収束係数Smth2に基づいて目標スロットル弁開度TAtに収束するように(時刻t2〜時刻t3)仮の推定スロットル弁開度TAest2を演算し、上記仮の推定スロットル弁開度TAest1の値に優先して、仮の推定スロットル弁開度TAest2の値を推定スロットル弁開度TAestとして設定する。
【0066】
<保持時間Tの演算>
本装置は、特異現象が開始したと判定された時点におけるスロットル弁アクチュエータ43aの回転速度ωMに関連するスロットル弁43の回転速度ωT、及び減速機46内のギヤ間のバックラッシュ等を考慮することにより導かれる下記数2に基づいて、保持時間Tを演算する。
【0067】
下記数2において、θbMは、ギヤG1及びギヤG2の噛合いにおいて、ギヤG2を固定したときにギヤG1及びギヤG2間に存在するバックラッシュによりギヤG1が回転し得る角度(バックラッシュ角)であり、θbTは、ギヤG3及びギヤG4の噛合いにおいて、ギヤG3を固定したときにギヤG3及びギヤG4間に存在するバックラッシュによりギヤG4が回転し得る角度(バックラッシュ角)である。また、Rは、減速機46全体としての減速比であって、具体的にはギヤG1に対するギアG2の減速比R1とギヤG3に対するギアG4の減速比R2とを乗算した値である。
【0068】
【数2】
T=(θbM+R・θbT)/(R・ωT)
【0069】
ここで、上記数2の導出過程について説明する。特異現象は、減速機46内に存在するバックラッシュに対応する角度だけスロットル弁アクチュエータ44が回転している間(実保持時間の間)、スロットル弁43がスロットル弁アクチュエータ44から駆動力を受けないことにより実スロットル弁開度TAがオープナ機構45によりオープナ開度TAOPNになるように保持される現象である。
【0070】
この実保持時間は、停止しているギヤG2に対して減速機46内のギヤG1とギヤG2との噛合いにおけるバックラッシュに対応する角度だけギヤG1(即ちスロットル弁アクチュエータ44)が回転している時間(保持時間T1)と、その後ギヤG2(即ちギヤG3)が回転を開始して、停止しているギヤG4に対して減速機46内のギヤG3とギヤG4との噛合いにおけるバックラッシュに対応する角度だけギヤG3が回転している時間(保持時間T2)とを加算した時間となる。
【0071】
ここで、上記保持時間T1は、T1=θbM/ωMと表され、上記保持時間T2は、T2=θbG3/ωG3と表される。ここにおいて、θbG3は、ギヤG3及びギヤG4の噛合いにおいて、ギヤG4を固定したときにギヤG3及びギヤG4間に存在するバックラッシュによりギヤG3が回転し得る角度(バックラッシュ角)であり、ωG3は特異現象継続中におけるギヤG3の回転速度である。従って、実保持時間に保持時間Tを近づけるため、保持時間Tは、下記数3で示したように保持時間T1と保持時間T2の和として求められる。
【0072】
【数3】
T=T1+T2=θbM/ωM+θbG3/ωG3
【0073】
また、減速機46全体としての減速比はRであるので、特異現象が開始したと判定された時点におけるスロットル弁アクチュエータ44の回転速度ωMは、特異現象が開始したと判定された時点におけるスロットル弁43の回転速度ωTと同減速比Rとを用いて下記数4のように表される。
【0074】
【数4】
ωM=R・ωT
【0075】
また、上記数4で表されるスロットル弁アクチュエータ44の回転速度ωMが特異現象継続中において一定であると仮定すると、特異現象継続中におけるギヤG3の回転速度ωG3は、特異現象が開始したと判定された時点におけるスロットル弁43の回転速度ωTと減速比R2とを用いて下記数5のように表される。
【0076】
【数5】
ωG3=R2・ωT
【0077】
また、ギヤG3に対するギアG4の減速比がR2であることを考慮すると、ギヤG4を固定したときにギヤG3が回転し得る角度θbG3は、ギヤG3を固定したときにギヤG4が回転し得る角度θbTと減速比R2とを用いて下記数6のように表される。
【0078】
【数6】
θbG3=R2・θbT
【0079】
ここで、上記数3に上記数4、上記数5、及び数6を代入して整理すると、上記数2が得られる。
【0080】
一方、特異現象が開始したと判定された時点におけるスロットル弁43の回転速度ωTは、同時点における前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*(前回値)と今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1(今回値)と演算周期ΔTtとを用いて下記数7のように表される。
【0081】
【数7】
ωT=|TAest1-TAest1*|/ΔTt
【0082】
従って、本装置は、上記数7により特異現象が開始したと判断した時点におけるスロットル弁43の回転速度ωTを検出し、同回転速度ωTの値と、既知となっている減速比Rと、ギヤG2を固定したときにギヤG1が回転し得る角度θbMと、ギヤG3を固定したときにギヤG4が回転し得る角度θbTとを用いて上記数2に基づいて保持時間Tを演算する。このようにして、保持時間Tは、スロットル弁アクチュエータ44の回転速度ωMに関連するスロットル弁43の回転速度ωTに応じた時間になるように演算される。
【0083】
<保持時間T経過後の推定スロットル弁開度TAest2の演算>
また、本装置は上記保持時間T経過後、仮の推定スロットル弁開度TAest2が今回の暫定目標スロットル弁開度(目標スロットル弁開度)TAtnewに収束していくように下記数8に基づいて同仮の推定スロットル弁開度TAest2を演算する。
【0084】
【数8】
TAest2=TAtnew+((Smth2-1)/Smth2)・(TAest2*-TAtnew)
【0085】
数8において、TAest2は今回の演算タイミングにおいて新たに演算される仮の推定スロットル弁開度TAest2であり、TAest2*は前回の仮の推定スロットル弁開度TAest2である。
【0086】
また、収束係数Smth2は、仮の推定スロットル弁開度TAest2が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewに収束していく際の収束特性(例えば、保持時間T経過後収束するまでの時間(収束時間))を決定するための「1」より大きい値であるパラメータであって、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値は、収束係数Smth2が小さいほど早く収束するように(収束時間が短くなるように)演算され、収束係数Smth2が大きいほど遅く収束するように(収束時間が長くなるように)演算される。
【0087】
そして、本装置は、現時点における今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewと前回の仮の推定スロットル弁開度TAest2*との偏差(の絶対値)ΔTAを演算周期ΔTt毎に演算し、後述する所定のテーブルに基づいて同偏差ΔTAの値が小さいほど大きく同偏差ΔTAの値が大きいほど小さい値になるように収束係数Smth2を演算していく。このようにして、収束係数Smth2は偏差ΔTAの値に応じて演算され、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値は、偏差ΔTAの値が大きいほど早く収束するように演算され、同偏差ΔTAの値が小さいほど遅く収束するように演算される。
【0088】
次に、電気制御装置70の実際の作動について、図8〜図16に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0089】
(目標スロットル弁開度の演算)
CPU71は、図8にフローチャートにより示した目標スロットル弁開度演算手段に対応するルーチンを演算周期ΔTt(ここでは、8msec)の経過毎に実行することにより、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnew(即ち今回の目標スロットル弁開度TAt(ntdly))の演算を行う。
【0090】
具体的に述べると、CPU71は所定のタイミングにてステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで、アクセル開度センサ67の出力値に基づいてアクセル操作量Accpを読込み、読み込んだアクセル操作量Accpと、同アクセル操作量Accpと暫定目標スロットル弁開度TAtnewとの関係を規定するステップ805内に記載したテーブルとに基づいて、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewを求める。そして、CPU71は、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
(推定スロットル弁開度の演算)
CPU71は、図9にフローチャートにより示したルーチンを演算周期ΔTt(ここでは、8msec)の経過毎に実行することにより、今回の推定スロットル弁開度TAestnew(即ちTAest(ntdly))の演算を行う。
【0092】
<通常モード>
まず、ドライバーのアクセル操作量Accpにより変動する目標スロットル弁開度TAtの値に追従する推定スロットル弁開度TAest(仮の推定スロットル弁開度TAest1)の値が、オープナ開度TAOPNを通過しない範囲で推移する場合について説明する。以下、この場合を「通常モード」と称呼する。
【0093】
CPU71は所定のタイミングにてステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで、上記数1に基づいて前回の演算周期にて演算された(具体的には続くステップ910にて前回演算された)仮の推定スロットル弁開度TAest1の値を、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*に格納する。この処理は、今回の演算周期におけるステップ910にて仮の推定スロットル弁開度TAest1の値を更新する準備として実行される。
【0094】
次に、CPU71はステップ910に進み、図8のステップ805にて演算した今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値と、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値と、上記数1(の右辺)に基づくステップ910内に記載した式とにより、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1を演算する。なお、このステップ910は第1推定スロットル弁開度演算手段に対応する。これにより、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に追従するように演算される。
【0095】
次に、CPU71はステップ915に進んで、図10にフローチャートにより示した特異現象開始判定ルーチンを実行する。具体的には、CPU71はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、フラグFDHOLDが「1」となっているか否かを判定する。
【0096】
ここで、フラグFDHOLDは、仮の推定スロットル弁開度TAest1が減少する過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中であると判定しているか否かを示すフラグであり、その値が「1」のときは、同減少過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中であると判定している場合を示し、その値が「0」のときは、同減少過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中でないと判定している場合を示している。
【0097】
この時点では、フラグFDHOLDは「0」となっているので、CPU71は、ステップ1005にて「No」と判定してステップ1010に進み、フラグFUHOLDが「1」となっているか否かを判定する。ここで、フラグFUHOLDは、仮の推定スロットル弁開度TAest1が増加する過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中であると判定しているか否かを示すフラグであり、その値が「1」のときは、同増加過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中であると判定している場合を示し、その値が「0」のときは、同増加過程においてCPU71が特異現象が開始・継続中でないと判定している場合を示している。
【0098】
この時点では、フラグFUHOLDも「0」となっているので、CPU71はステップ1010にて「No」と判定してステップ1015に進み、仮の推定スロットル弁開度TAest1が増加する過程において特異現象が開始したか否かを判定する(以下、この判定を「増加過程特異現象開始判定」と称呼する。)。具体的には、CPU71は、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*の値がオープナ開度TAOPN以下であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が同オープナ開度TAOPNよりも大きいか否かを判定する。なお、このステップ1015は、判定手段に対応する。
【0099】
この時点では、この条件は満足されないので、CPU71はステップ1015にて「No」と判定してステップ1020に進み、仮の推定スロットル弁開度TAest1が減少する過程において特異現象が開始したか否かを判定する(以下、この判定を「減少過程特異現象開始判定」と称呼する。)。具体的には、CPU71は、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*の値がオープナ開度TAOPN以上であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が同オープナ開度TAOPNよりも小さいか否かを判定する。なお、このステップ1020も、判定手段に対応する。
【0100】
この時点では、この条件も満足されないので、CPU71はステップ1020にて「No」と判定してステップ1095へ進み、この特異現象開始判定ルーチンを一旦終了するとともに、図9のステップ920に進む。そして、CPU71はステップ920において、フラグFDHOLDとフラグFUHOLDのどちらか一方が「1」になっているか否かを判定する。
【0101】
上述のとおりこの時点ではフラグFDHOLDもフラグFUHOLDも「0」となっているので、CPU71は、ステップ920において「No」と判定してステップ925に進み、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値を今回の推定スロットル弁開度TAestnewに格納する。これにより、今回の推定スロットル弁開度TAestnewが決定される。そして、CPU71はステップ995へ進み、この推定スロットル弁開度演算ルーチンを一旦終了する。
【0102】
以上、通常モードにある限りにおいて、図9のルーチンにおいて上記した処理が繰り返し実行される。これにより、通常モードにおいては、ドライバーのアクセル操作量Accpにより変動する目標スロットル弁開度TAtの値に追従する仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が、そのまま今回の推定スロットル弁開度TAestnewとして設定されていく。
【0103】
<減少モード>
次に、通常モードの状態から、例えばドライバーがアクセル操作量Accpを減少することにより、同アクセル操作量Accpにより変動する目標スロットル弁開度TAtの値に追従する仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が、オープナ開度TAOPNを減少しながら通過する場合(以下、この場合を「減少モード」と称呼する。)について説明する。以下、この場合の代表例として上述した図6を参照しつつ説明する。
【0104】
CPU71は、上記した通常モードの処理を繰り返し実行している過程において、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が図6に示すように推移してオープナ開度TAOPNより初めて小さくなったとき、図10のステップ1020の減少過程特異現象開始判定において「Yes」と判定する。従って、CPU71はステップ1025に進み、仮の推定スロットル弁開度TAest1が減少する過程において特異現象が開始・継続中であると判定していることを示すため、フラグFDHOLDに「1」を設定する。
【0105】
次いで、CPU71は、以後図9のルーチンにて使用する変数iを初期化するため、ステップ1030にて変数iに「0」を設定した後、ステップ1035に進んで、図11にフローチャートにより示した保持時間T演算ルーチンを実行する。具体的には、CPU71はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進み、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*の値と、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値と、上記数7(の右辺)に基づくステップ1105内に記載した式とにより、特異現象が開始したと判断した時点におけるスロットル弁43の回転速度ωTを演算する。このステップ1105は速度検出手段に対応している。
【0106】
次に、CPU71は、ステップ1110に進んで上記回転速度ωTの値と、上記数2(の右辺)に基づくステップ1110内に記載した式とにより、保持時間Tを演算する。そして、CPU71はステップ1115に進み、演算された保持時間Tに所定の正の定数aを乗算した値(実数値)を四捨五入した整数値を以後図9のルーチンにて使用する変数ntnoldに格納した後、ステップ1195に進んで保持時間T演算ルーチンを一旦終了するとともに、図10のステップ1095に進み特異現象開始判定ルーチンを一旦終了し、図9のステップ920に進む。この時点は、図6における時刻t1に対応している。
【0107】
この時点では、フラグFDHOLDが「1」に設定されているので、CPU71は、ステップ920において「Yes」と判定してステップ930に進み、変数iが変数ntholdになっているか否かを判定する。ここで、変数iは、特異現象継続中において、仮の推定スロットル弁開度TAest2(推定スロットル弁開度TAestnew)の値をオープナ開度TAOPNに保持すべき時間(保持時間T)が経過したか否かを判定するためのカウンタであって、CPU71は、変数iが変数ntholdとなった時点で、上記保持時間Tが経過したと判定する。
【0108】
この時点では、変数iは「0」であり、上記保持時間Tが経過していないので、CPU71はステップ930にて「No」と判定し、ステップ935に進んで仮の推定スロットル弁開度TAest2にオープナ開度TAOPNの値を格納し、続くステップ940にて変数iの値を「1」だけ増大させるとともに、続くステップ945にて、今回の推定スロットル弁開度TAestnewに仮の推定スロットル弁開度TAest2の値を格納する。なお、このステップ935は第2推定スロットル弁開度演算手段に対応する。これにより、今回の推定スロットル弁開度TAestnewがオープナ開度TAOPNに設定される。そして、CPU71はステップ995へ進み、図9のルーチンを一旦終了する。
【0109】
これ以降、CPU71は、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、フラグFDHOLDの値が「1」となっている限りにおいて、変数iの値が定数ntholdになるまで、ステップ900〜ステップ910,ステップ915(図10のルーチン),ステップ920,ステップ930,ステップ935,ステップ940,ステップ945,ステップ995の処理を繰り返し実行する。
【0110】
これにより、今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値が上記保持時間Tの間、オープナ開度TAOPNの値に保持される。なお、この段階でフラグFDHOLDの値が「0」となる場合は、図10のステップ1040にてCPU71が「Yes」と判定し、ステップ1045の処理を実行する場合のみであるところ、この場合については後述する。
【0111】
いま、フラグFDHOLDの値が「1」に保持されつづけており、かつ変数iの値が定数ntholdになったものとして説明を続けると、CPU71は、ステップ930において「Yes」と判定してステップ950に進み、図12にフローチャートにより示した収束係数演算ルーチンを実行する。具体的には、CPU71はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んで、前回の推定スロットル弁開度TAest2の値と図8のステップ805にて演算された今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値との偏差の絶対値を偏差ΔTAに格納する。
【0112】
次に、CPU71はステップ1210に進んで、偏差ΔTAの値と、同偏差ΔTAと収束係数Smth2との関係を規定するステップ1210内に記載したテーブルとに基づいて、以後図9のルーチンにて使用する収束係数Smth2を求める。これにより、収束係数Smth2は、「1」以上の値であって、偏差ΔTAの値が小さいほど大きく偏差ΔTAの値が大きいほど小さい値になるように演算される。
【0113】
そして、CPU71はステップ1295に進んで収束係数演算ルーチンを一旦終了するとともに、図9のステップ955に進んで、仮の推定スロットル弁開度TAest2(今回の推定スロットル弁開度TAestnew)の値を図8のステップ805にて演算した今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に収束させるための処理を開始する。なお、このステップ955は第2推定スロットル弁開度演算手段に対応する。この時点は、図6における時刻t2に対応している。
【0114】
具体的には、CPU71は、ステップ955において、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値と、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値(この時点ではオープナ開度TAOPN)と、図12のステップ1210にて演算された収束係数Smth2と、上記数8(の右辺)に基づくステップ955内に記載した式とにより、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2を演算する。
【0115】
これにより、ステップ955が実行される度に、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値は、収束係数Smth2に応じて今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に徐々に収束していく。このとき、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値は、収束係数Smth2が小さいほど(即ち偏差ΔTAの値が大きいほど)早く収束するように(収束時間が短くなるように)演算され、収束係数Smth2が大きいほど(即ち偏差ΔTAの値が小さいほど)遅く収束するように(収束時間が長くなるように)演算される。
【0116】
次いで、CPU71は、ステップ960に進んで、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に収束したか否かを判定する。具体的には、CPU71は、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値と今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値との差の絶対値が収束判定定数KTA(正の定数)未満となっているか否かを判定する。
【0117】
この時点(図6において時刻t2)では、まだ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値と今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値(即ち今回の目標スロットル弁開度TAest(ntdly))との差は大きいのでこの条件は満足されず、CPU71はステップ960にて「No」と判定し、ステップ965に進んで変数jに「0」を設定するとともに、ステップ945に進んで仮の推定スロットル弁開度TAest2の値を推定スロットル弁開度TAestnewに格納する。ここで、変数jは、ステップ960における条件が連続して成立した回数をカウントするためのカウンタである。
【0118】
これ以降、CPU71は、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、フラグFDHOLDの値が「1」となっている限りにおいて、ステップ960の条件が成立するまで、ステップ900〜ステップ910,ステップ915(図10のルーチン),ステップ920,ステップ930,ステップ950〜ステップ965,ステップ945,ステップ995の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップ960の条件が成立するまでの間、今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に収束係数Smth2に応じて徐々に収束していく。なお、この段階でフラグFDHOLDの値が「0」となる場合も、図10のステップ1040にてCPU71が「Yes」と判定し、ステップ1045の処理を実行する場合のみであるところ、この場合については後述する。
【0119】
いま、フラグFDHOLDの値が「1」に保持されつづけており、ステップ960の条件が成立したものとして説明を続けると、CPU71は、ステップ960において「Yes」と判定してステップ970に進み、変数jの値を「1」だけ増大させて変数jの値を「1」とした後、ステップ975に進んで、変数jの値が収束判定回数ntconv(1より大きい正の整数)になっているか否かを判定する。
【0120】
ここで、変数jの値が収束判定回数ntconvとなっていれば、ステップ960における条件が収束判定回数ntconv回だけ連続して成立したことになり、CPU71は、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest2の値が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値に収束完了したと判定する。しかし、この時点では、変数jの値は「1」であって収束判定回数ntconvとなっていないので、この条件は満足されず、CPU71はステップ975にて「No」と判定し、ステップ945に進んで仮の推定スロットル弁開度TAest2の値を今回の推定スロットル弁開度TAestnewに格納する。
【0121】
これ以降、CPU71は、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、フラグFDHOLDの値が「1」となっている限りにおいて、ステップ975の条件が成立するまで、ステップ900〜ステップ910,ステップ915(図10のルーチン),ステップ920,ステップ930,ステップ950〜ステップ975,ステップ945,ステップ995の処理を繰り返し実行する。なお、この段階でフラグFDHOLDの値が「0」となる場合も、図110のステップ1040にてCPU71が「Yes」と判定し、ステップ1045の処理を実行する場合のみであるところ、この場合については後述する。
【0122】
いま、フラグFDHOLDの値が「1」に保持されつづけており、ステップ975の条件が成立したものとして説明を続けると、CPU71は、ステップ975において「Yes」と判定してステップ980に進んで、特異現象が終了したと判定したことを示すため、フラグFDHOLD及びフラグFUHOLDに「0」を設定する。そして、CPU71は、ステップ945に進んで仮の推定スロットル弁開度TAest2の値を推定スロットル弁開度TAestnewに格納するとともにステップ995に進んで図9のルーチンを一旦終了する。この時点は、図6における時刻t3に対応している。
【0123】
そしてこれ以降、フラグFDHOLD及びフラグFUHOLDは共に「0」となっているため、CPU71は、図9のルーチンにおいて上記した通常モードにおける処理を開始し、仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が、そのまま今回の推定スロットル弁開度TAestnewとして設定されていくようになる。
【0124】
一方、上記したフラグFDHOLDの値が「1」になっている間(図6において時刻t1〜時刻t3までの間)、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、CPU71は、フラグFDHOLDの値が「1」になっているか否かを判定する図10のステップ1005に進んだ段階で、「Yes」と判定してステップ1040に進むようになる。そして、CPU71は、ステップ1040にて仮の推定スロットル弁開度TAest1の値がオープナ開度TAOPNより大きいか否かを判定する。
【0125】
この条件は、仮の推定スロットル弁開度TAest2の値とは別個に、図9のステップ910にて常時繰り返し演算されている仮の推定スロットル弁開度TAest1が、オープナ開度TAOPNより小さい領域において図6に示すように減少している過程において、目標スロットル弁開度TAt(ドライバーのアクセル操作量Accp)が増加を開始しオープナ開度TAOPNを超えることにより、同目標スロットル弁開度TAtに追従する仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が増加を開始し、オープナ開度TAOPNを超えた場合に成立する。
【0126】
この条件が成立する場合、CPU71はステップ1040にて「Yes」と判定し、続くステップ1045に進んでフラグFDHOLDを「0」に設定した後、ステップ1015に進む。そして、このときステップ1015における増加過程特異現象開始判定において「Yes」と判定される条件が成立している。即ち、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*の値がオープナ開度TAOPN以下であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値がオープナ開度TAOPNよりも大きくなっている。
【0127】
従って、CPU71はステップ1015にて「Yes」と判定するとともにステップ1050に進んでフラグFUHOLDを「1」に設定する。これにより、これ以降CPU71は、図9のルーチンにおいて後述する増加モードにおける処理を開始し、仮の推定スロットル弁開度TAest2の値が、今回の推定スロットル弁開度TAestnewとして設定されていくようになる。
【0128】
このように、ステップ1040における条件が成立する場合、この時点まで継続中であると判定されていた特異現象が終了するとともに、仮の推定スロットル弁開度TAest1が増加する過程において(後述する増加モードにおいて)特異現象が新たに開始したと判定する方がよい。即ち、その時点から新たに実際の特異現象が開始されている可能性があるので、その時点から新たに上記保持時間Tが経過するまでの間推定スロットル弁開度TAestnewの値がオープナ開度TAOPNに保持されるように同推定スロットル弁開度TAestnewを演算すれば、推定スロットル弁開度TAestnewと実スロットル弁開度TAとの差が小さくなる可能性が高くなるからである。
【0129】
<増加モード>
次に、通常モードの状態から、例えばドライバーがアクセル操作量Accpを増加することにより、同アクセル操作量Accpにより変動する目標スロットル弁開度TAtの値に追従する仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が、オープナ開度TAOPNを増加しながら通過する場合(以下、この場合を「増加モード」と称呼する。)について説明する。以下、この場合の代表例として上述した図7を参照しつつ説明する。
【0130】
CPU71は、上記した通常モードの処理を繰り返し実行している過程において、今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が図7に示すように推移してオープナ開度TAOPNより初めて大きくなったとき、図10のステップ1015の増加過程特異現象開始判定において「Yes」と判定する。従って、CPU71はステップ1050に進み、仮の推定スロットル弁開度TAest1が増加する過程において特異現象が開始・継続中であると判定していることを示すため、フラグFUHOLDに「1」を設定する。
【0131】
次いで、CPU71は、以後図9のルーチンにて使用する変数iを初期化するため、ステップ1055にて変数iに「0」を設定した後、ステップ1060にて上述した図11の保持時間演算ルーチンを実行して保持時間Tを演算するとともに、ステップ1095に進んで特異現象開始判定ルーチンを一旦終了し、図9のステップ920に進む。この時点は、図7における時刻t1に対応している。
【0132】
この時点では、フラグFUHOLDが「1」に設定されているので、CPU71は、ステップ920において「Yes」と判定してステップ930に進む。これ以降CPU71は、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、フラグFUHOLDの値が「1」となっている限りにおいて、上記した減少モードにおける処理と同一の処理を実行する。
【0133】
従って、これ以降今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値は、上記保持時間Tの間(図7における時刻t1〜時刻t2)、オープナ開度TAOPNの値に保持される。また、保持時間T経過後は、今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値は、収束係数Smth2に応じて今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewに収束していくように演算されていく(図7における時刻t2〜時刻t3)。
【0134】
そして、今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値が今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewに収束完了した後は、ステップ980にてフラグFDHOLDの値及びフラグFUHOLDの値は共に「0」に設定されるため、図9のルーチンにおいて上記した通常モードにおける処理が開始され、仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が、そのまま今回の推定スロットル弁開度TAestnewとして設定されていくようになる。
【0135】
一方、上記したフラグFUHOLDの値が「1」になっている間(図7においてt1〜t3までの間)、図9のルーチンを繰り返し実行するにあたり、CPU71は、フラグFUHOLDの値が「1」になっているか否かを判定する図10のステップ1010に進んだ段階で、「Yes」と判定してステップ1065に進むようになる。そして、CPU71は、ステップ1065にて仮の推定スロットル弁開度TAest1の値がオープナ開度TAOPNより小さいか否かを判定する。
【0136】
この条件は、仮の推定スロットル弁開度TAest2の値とは別個に、図9のステップ910にて常時繰り返し演算されている仮の推定スロットル弁開度TAest1が、オープナ開度TAOPNより大きい領域において図7に示すように増加している過程において、目標スロットル弁開度TAt(ドライバーのアクセル操作量Accp)が減少を開始しオープナ開度TAOPNより小さくなることにより、同目標スロットル弁開度TAtに追従する仮の推定スロットル弁開度TAest1の値が減少を開始し、オープナ開度TAOPNより小さくなる場合に成立する。
【0137】
この条件が成立する場合、CPU71はステップ1065にて「Yes」と判定し、続くステップ1070に進んでフラグFUHOLDを「0」に設定した後、ステップ1020に進む。そして、このときステップ1020における減少過程特異現象開始判定において「Yes」と判定される条件が成立している。即ち、前回の仮の推定スロットル弁開度TAest1*の値がオープナ開度TAOPN以上であって、かつ今回の仮の推定スロットル弁開度TAest1の値がオープナ開度TAOPNよりも小さくなっている。
【0138】
従って、CPU71はステップ1020にて「Yes」と判定するとともにステップ1025に進んでフラグFDHOLDを「1」に設定する。これにより、これ以降CPU71は、図9のルーチンにおいて上記した減少モードにおける処理を開始し、仮の推定スロットル弁開度TAest2の値が、今回の推定スロットル弁開度TAestnewとして設定されていくようになる。
【0139】
このように、ステップ1065における条件が成立する場合、この時点まで継続中であると判定されていた特異現象が終了するとともに、仮の推定スロットル弁開度TAest1が減少する過程において(減少モードにおいて)特異現象が新たに開始したと判定する方がよい。即ち、その時点から新たに実際の特異現象が開始されている可能性があるので、その時点から新たに上記保持時間Tが経過するまでの間推定スロットル弁開度TAestnewの値がオープナ開度TAOPNに保持されるように同推定スロットル弁開度TAestnewを演算すれば、推定スロットル弁開度TAestnewと実スロットル弁開度TAとの差が小さくなる可能性が高くなるからである。以上説明したように、今回の推定スロットル弁開度TAestnewは図9のルーチンが実行される毎に演算されていく。
【0140】
(吸入空気量の演算)
CPU71は、図13にフローチャートにより示したルーチンを演算周期ΔTt(ここでは、8msec)の経過毎に実行することにより、図9のルーチンにて演算された今回の推定スロットル弁開度TAestnewに基づく吸入空気量Qnew(Q(ntdly))の演算を行う。
【0141】
具体的には、CPU71はステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んで、クランクポジションセンサ64の出力値に基づいてその時点でのエンジン回転速度NEを取得し、取得したエンジン回転速度NEの値と、今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値と、ステップ1305内に記載したテーブルとに基づいて、吸入空気量Qnewを演算する。これにより、今回の推定スロットル弁開度TAestnewに基づく吸入空気量Qnewが決定される。そして、CPU71はステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
(遅延処理)
CPU71は、図14にフローチャートにより示したルーチンを演算周期ΔTt(ここでは、8msec)の経過毎に実行することにより、図8のルーチンにて演算された今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnew、図9のルーチンにて演算された今回の推定スロットル弁開度TAestnew及び図13のルーチンにて演算された吸入空気量Qnewについて、遅延処理を行う。具体的には、CPU71はステップ1400から処理を開始し、ステップ1405に進んで変数hに「0」を設定し、ステップ1410に進んで変数hが遅延処理回数ntdlyと等しいか否かを判定する。
【0143】
この時点で変数hは「0」であるから、CPU71はステップ1410にて「No」と判定し、ステップ1415に進んで目標スロットル弁開度TAt(h)に目標スロットル弁開度TAt(h+1)の値を格納し、続くステップ1420にて推定スロットル弁開度TAest(h)に推定スロットル弁開度TAest(h+1)の値を格納するとともに、続くステップ1425にて吸入空気量Q(h)に吸入空気量Q(h+1)の値を格納する。以上の処理により、目標スロットル弁開度TAt(0)に目標スロットル弁開度TAt(1)の値が格納され、推定スロットル弁開度TAest(0)に推定スロットル弁開度TAest(1)の値が格納され、吸入空気量Q(0)に吸入空気量Q(1)の値が格納される。
【0144】
次いで、CPU71は、ステップ1430にて変数hの値を「1」だけ増大させてステップ1410に復帰する。そして変数hの値が遅延処理回数ntdlyより小さければ、再びステップ1415〜ステップ1430の処理を実行する。即ち、ステップ1415〜ステップ1430は、変数hの値が遅延回数ntdlyと等しくなるまで繰り返し実行される。これにより、目標スロットル弁開度TAt(h+1)の値が目標スロットル弁開度TAt(h)に順次シフトされ、推定スロットル弁開度TAest(h+1)の値が推定スロットル弁開度TAest(h)に順次シフトされるとともに、吸入空気量Q(h+1)の値が吸入空気量Q(h)に順次シフトされて行く。
【0145】
前述のステップ1430が繰り返されることにより変数hの値が遅延処理回数ntdlyと等しくなると、CPU71はステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1435に進み、今回の暫定目標スロットル弁開度TAtnewの値を目標スロットル弁開度TAt(ntdly)に格納し、続くステップ1440にて今回の推定スロットル弁開度TAestnewの値を推定スロットル弁開度TAest(ntdly)に格納するとともに、続くステップ1445にて今回の推定スロットル弁開度TAestnewに基づく吸入空気量Qnewの値を吸入空気量Q(ntdly)に格納する。
【0146】
そして、CPU71は、ステップ1450にて目標スロットル弁開度TAtに目標スロットル弁開度TAt(0)の値を設定するとともに、ステップ1495に進んで本遅延処理ルーチンを一旦終了する。
【0147】
以上のように、目標スロットル弁開度TAtに関するメモリ(RAM73)においては、本遅延処理ルーチンが実行される毎にメモリの内容が一つずつシフトされて行き、目標スロットル弁開度TAt(0)に格納された値が、CPU71よってスロットル弁アクチュエータ44に出力される目標スロットル弁開度TAtとして設定される。即ち、今回の本ルーチンの実行により目標スロットル弁開度TAt(ntdly)に格納された値TAtnewは、今後において本ルーチンが遅延処理回数ntdlyだけ繰り返されたときにTAt(0)に格納され、目標スロットル弁開度TAtとなる。
【0148】
また、推定スロットル弁開度TAestに関するメモリにおいては、同メモリ内のTAest(m)に、現時点から所定時間(m・ΔTt)経過後の推定スロットル弁開度TAestが格納されて行く。同様に、吸入空気量Qに関するメモリにおいても、同メモリ内のQ(m)に、現時点から所定時間(m・ΔTt)経過後の推定スロットル弁開度TAest(m)に基づく吸入空気量Qが格納されて行く。この場合の値mは、1〜ntdlyの整数である。
【0149】
(アクチュエータ制御量の演算)
CPU71は、図15にフローチャートにより示したルーチンを演算周期ΔTt(ここでは、8msec)の経過毎に実行することにより、スロットル弁アクチュエータ44をフィードバック制御(比例・積分制御(PI制御))するための制御量VOを演算する。
【0150】
具体的には、CPU71はステップ1500から処理を開始し、ステップ1505に進んで、スロットルポジションセンサ62の出力値に基づいてその時点での実スロットル弁開度TAを読込み、図14のステップ1450にて演算された目標スロットル弁TAtの値から同実スロットル弁開度TAの値を減じた値を偏差DTAに格納する。次いで、CPU71はステップ1510に進んで下記数9に基づいて上記制御量VOを演算する。
【0151】
【数9】
VO=Kp・DTA+Ki・SDTA
【0152】
上記数9において、Kpは予め設定された比例ゲイン、Kiは予め設定された積分ゲインである。また、SDTAは、偏差DTAの積分値であって、次のステップ1515にて更新される値である。即ち、CPU71は、ステップ1515に進むと、その時点における偏差DTAの積分値SDTAに上記ステップ1505にて求めた偏差DTAを加えて、新たな偏差DTAの積分値SDTAを求め、その後、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0153】
そして、本ルーチンが一旦終了される度に、CPU71は、ステップ1510にて演算した制御量VOの値に応じた制御信号(デューティ信号)をPWM方式の駆動回路(図示せず)を介して駆動信号としてスロットル弁アクチュエータ44に出力し、同スロットル弁アクチュエータ44をフィードバック制御する。これにより、同スロットル弁アクチュエータ44は、制御量VOに応じた駆動トルクを発生するとともに、実スロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtに近づくように、スロットル弁43を駆動する。
【0154】
(噴射実行ルーチン)
次に、電気制御装置70が、実際に燃料噴射を行うために実行するルーチンについて、同ルーチンをフローチャートにより示した図16を参照して説明すると、CPU71は各気筒のクランクアングルがBTDC90°CAになる毎に、各気筒(燃料噴射気筒)毎に同図16に示したルーチンを実行するようになっている。
【0155】
従って、特定の(任意の)気筒のクランク角度がBTDC90°CAになると、CPU71はステップ1600から処理を開始し、続くステップ1605にて、クランクポジションセンサ64の出力値に基づいてその時点でのエンジン回転速度NEを取得し、取得したエンジン回転速度NEの値により燃料噴射気筒の吸気弁32の閉弁時を予測するとともに、RAM73に格納されているその時点から遅延時間TD経過後までの吸入空気量Q(0)〜Q(ntdly)の中から同吸気弁閉弁時に対応する吸入空気量Qを選択する。
【0156】
次に、CPU71は、ステップ1610に進んで、選択した(予測した)吸入空気量Qを目標空燃比AbyFrefで除することにより燃料噴射量fiを求め(燃料噴射量演算手段に対応する)、続くステップ1615にて燃料噴射気筒のインジェクタ39に対して燃料噴射量fiの燃料の噴射を指示する。これにより、燃料噴射量fiに応じた量の燃料が燃料噴射気筒のインジェクタ39から噴射される。その後、CPU71はステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0157】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、推定スロットル弁開度がオープナ開度を通過するとき、保持時間Tに渡り推定スロットル弁開度がオープナ開度に保持されるとともにその後目標スロットル弁開度に所定の収束係数Smth2をもって収束するように同推定スロットル弁開度が演算される。このとき、保持時間Tは、特異現象が開始したと判断された時点でのスロットル弁アクチュエータの回転速度に関連するスロットル弁の回転速度に応じて設定されるとともに、収束係数Smth2は、オープナ開度と目標スロットル弁開度との偏差に応じて設定されるので、推定スロットル弁開度の値は実スロットル弁開度の値に極力近い値になるように演算され得る。よって、実スロットル弁開度がオープナ開度を通過するとき、機関の空燃比は極力目標空燃比に近い値になるように制御され得る。
【0158】
また、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、図11のステップ1105にてスロットル弁43の回転速度ωTを推定スロットル弁開度TAest1の変化に基づいて演算しているが、実スロットル弁開度TAの変化に基づいて同スロットル弁43の回転速度ωTを演算してもよい。
【0159】
また、上記実施形態においては、図11のステップ1110にてスロットル弁43の回転速度ωTを利用して保持時間Tを演算しているが、スロットル弁アクチュエータ44の回転速度ωMを直接検出して同回転速度ωMを利用して保持時間Tを演算してもよい。この場合、ステップ1110は、上記数4を考慮すると、T←(θbM+R・θbT)/ωMと書き換えられる。
【0160】
また、上記実施形態においては、推定スロットル弁開度TAestnewの値を目標スロットル弁開度TAtnewの値に収束させる段階において、図9のステップ950にて収束係数Smth2を逐次更新していくが、同収束させる段階に入った直後(保持時間T経過直後)に図12のルーチンにより収束係数Smth2が1回のみ演算されその後は一定となるように同収束係数Smth2を演算してもよい。
【0161】
この場合、図12のステップ1205にて仮の推定スロットル弁開度TAest2と目標スロットル弁開度TAtnewとの差を利用して偏差ΔTAを演算するのではなく、オープナ開度TAOPNと目標スロットル弁開度TAtnewとの差を利用して偏差ΔTAを演算してもよい。
【0162】
また、上記実施形態においては、図9のステップ910にて仮の推定スロットル弁開度TAest1を更新していく際に使用する遅延係数Smth1を一定値としているが、仮の推定スロットル弁開度TAest1と目標スロットル弁開度TAtnewとの差に応じて遅延係数Smth1を逐次更新していくようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒内燃機関に適用したシステムの概略構成図である。
【図2】 図1に示したスロットル弁近傍の概略構成図である。
【図3】 図2に示したオープナ機構により発生するスロットル弁アクチュエータに働く負荷トルクと実スロットル弁開度との関係を示したグラフである。
【図4】 図2に示した減速機構の概略構成図である。
【図5】 図1に示したCPUが演算する暫定目標スロットル弁開度、目標スロットル弁開度、及び推定スロットル弁開度の時間的変化を示したタイムチャートである。
【図6】 推定スロットル弁開度がオープナ開度を減少しながら通過する過程において、図1に示したCPUが演算する暫定目標スロットル弁開度、目標スロットル弁開度、及び推定スロットル弁開度の時間的変化を示したタイムチャートである。
【図7】 推定スロットル弁開度がオープナ開度を増加しながら通過する過程において、図1に示したCPUが演算する暫定目標スロットル弁開度、目標スロットル弁開度、及び推定スロットル弁開度の時間的変化を示したタイムチャートである。
【図8】 図1に示したCPUが実行する目標スロットル弁開度を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図9】 図1に示したCPUが実行する推定スロットル弁開度を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図10】 図1に示したCPUが実行する特異現象が開始したか否かを判定するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図11】 図1に示したCPUが実行する保持時間を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図12】 図1に示したCPUが実行する収束係数を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図13】 図1に示したCPUが実行する吸入空気量を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図14】 図1に示したCPUが実行する、同CPUが演算した目標スロットル弁開度、推定スロットル弁開度及び吸入空気量の値をそれぞれ遅延させるためのプログラムを示したフローチャートである。
【図15】 図1に示したCPUが実行するスロットル弁アクチュエータ制御量を演算するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図16】 図1に示したCPUが実行する燃料噴射を実行するためのプログラムを示したフローチャートである。
【図17】 推定スロットル弁開度がオープナ開度を通過する過程において、従来技術における燃料噴射量制御装置(CPU)が演算する暫定目標スロットル弁開度、目標スロットル弁開度、実スロットル弁開度及び推定スロットル弁開度の時間的変化を示したタイムチャートであって、図17(a)は、実スロットル弁開度がオープナ開度に保持される実保持時間が変化した場合を、図17(b)は、オープナ開度と目標スロットル弁開度との偏差が変化した場合を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
10…火花点火式多気筒内燃機関、20…シリンダブロック部(エンジン本体部)、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、39…インジェクタ、41…吸気管、43…スロットル弁、44…スロットル弁アクチュエータ、45…オープナ機構、46…減速機、70…電気制御装置、71…CPU。
Claims (2)
- 内燃機関の吸気通路に配設されたスロットル弁と、
前記内燃機関の運転状態に基づいて目標スロットル弁開度を演算する目標スロットル弁開度演算手段と、
前記スロットル弁の実開度である実スロットル弁開度を検出する実スロットル弁開度検出手段と、
前記スロットル弁を開閉駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記スロットル弁との間に介挿されるとともに同アクチュエータの駆動力を同スロットル弁に伝達する歯車列を含んだ歯車機構と、
前記実スロットル弁開度が前記目標スロットル弁開度に近づくように前記アクチュエータを制御する制御手段と、
前記アクチュエータの回転速度に関連する速度を検出する速度検出手段と、
前記スロットル弁が全閉状態となる開度より若干大きい開度に設定されたオープナ開度より前記実スロットル弁開度が大きいときに同スロットル弁を閉方向に付勢するとともに、同実スロットル弁開度が同オープナ開度より小さいときに同スロットル弁を開方向に付勢する付勢手段を有し、前記アクチュエータが同スロットル弁を駆動していないときに同実スロットル弁開度を同オープナ開度に保持するためのオープナ機構と、
前記目標スロットル弁開度に基づいて、前記実スロットル弁開度の推定値である推定スロットル弁開度を演算する第1推定スロットル弁開度演算手段と、
前記第1推定スロットル弁開度演算手段により演算された前記推定スロットル弁開度が前記オープナ開度を通過しているときに、前記実スロットル弁開度が同オープナ開度を通過する過程において同オープナ開度に到達したと判定する判定手段と、
前記判定手段により前記実スロットル弁開度が前記オープナ開度に到達したと判定された時点から同時点における前記速度検出手段により検出された速度に応じた所定時間に渡り、前記推定スロットル弁開度が前記オープナ開度近傍に保持されるように、前記第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算する第2推定スロットル弁開度演算手段と、
前記推定スロットル弁開度に応じた吸入空気量に対して所定の目標空燃比を得るために必要な燃料噴射量を演算する燃料噴射量演算手段と、
前記燃料噴射量の燃料を噴射する燃料噴射手段と、
を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置。 - 請求項1に記載された内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
前記制御手段は、少なくとも前記目標スロットル弁開度と前記実スロットル弁開度との偏差に応じて演算される制御量に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御するとともに、
前記第2推定スロットル弁開度演算手段は、前記所定時間経過後さらに所定時間が経過するまでの間、前記推定スロットル弁開度と前記目標スロットル弁開度との偏差に応じた特性をもって同推定スロットル弁開度が同目標スロットル弁開度に収束していくように、前記第1推定スロットル弁開度演算手段に優先して同推定スロットル弁開度を演算することを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
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