JP3820725B2 - 光走査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光走査装置に係り、より詳しくは、記録媒体上における光ビームの走査方向の光量分布が略均一となるように補正する機能を備えた光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、外周面に複数の反射面を備えた回転多面鏡を用いて光ビームを走査する光走査装置では、回転多面鏡より上流側(光ビームを出射する光源側)の光学系として、回転多面鏡に向けて出射された光ビームを回転多面鏡の一つの反射面の一部分のみに照射するアンダーフィル型多面鏡設計(以下、アンダーフィル設計と称する)が一般的に取り入れられている。
【0003】
図13は、アンダーフィル設計に基づいて構成された光走査装置の一例を、光ビームとしてのレーザビームの光軸を直線として表わした場合の状態で示したものであり、図13(A)は平面図で、図13(B)は側面図である。同図において12は半導体レーザを、14はコリメータレンズを、16は開口板を、20はシリンドリカルレンズを、26は回転多面鏡を、24はfθレンズを、30はシリンドリカルミラーを、32はドラム状の記録媒体としての感光体を各々示している。なお、開口板16は、略中央部に矩形状の開口が設けられた板状部材により構成されており、図14に示すように、開口板16の開口17の中心が半導体レーザ12から出射されたレーザビーム13の中心(光軸)と略一致するように配設されている。
【0004】
図13に示すように、アンダーフィル設計では半導体レーザ12から出射されコリメータレンズ14によって平行ビームとされたレーザビーム13は開口板16及びシリンドリカルレンズ20を介して回転多面鏡26の一つの反射面の一部に入射される。
【0005】
このようなアンダーフィル設計に対し、光ビームを回転多面鏡の各反射面の走査方向の全面及び隣接する反射面の一部に照射するオーバフィル型多面鏡設計(以下、オーバフィル設計と称する)は、あまり一般的には取り入れられていなかった。
【0006】
これらの2つの設計を比較すると、オーバフィル設計では、アンダーフィル設計に比較して、記録媒体上に一定サイズのビームスポットを生じさせるのに必要な反射面の大きさを非常に小さくできるので、同一直径の回転多面鏡に、より多くの反射面を設けることが可能である。このことは、回転多面鏡を比較的低い回転速度で動作させることが可能であり、よりパワーの小さいモータと駆動装置とを回転多面鏡を回転させる駆動系として利用することができることを意味している。
【0007】
しかしながら、このような効果を有するオーバフィル設計では、光学系の透過効率が低いことと、記録媒体上の光量分布が均一でないことの2つのマイナス要因があるため、あまり一般的には取り入れられていない。光学系の透過効率の低さを補うためには、高出力のレーザダイオード等が必要となる。また、光量分布不均一の問題をより具体的に説明すると次のようになる。
【0008】
半導体レーザ等の光源から出射されたレーザビームはガウスビーム形状を有しており、オーバフィル設計では回転多面鏡の1つ以上の反射面を照射するようにビームエキスパンダ等によって拡大される。この状態で、記録媒体表面をレーザビームのビームスポットが走査するように回転多面鏡を回転させると、この回転が進むに従って、記録媒体に向けて反射されるレーザビームの光量が変化して光量分布が不均一となるのである。このことは、回転多面鏡の反射面がガウスビームプロファイルの異なる部分を切り出すことと、回転多面鏡が回転するに従って反射面の有効反射幅が変化することに起因する。
【0009】
上述したオーバフィル設計の持つ2つのマイナス要因のうちの光学系の透過効率が低いことについては、近年、高出力のレーザダイオードが一般に用いられるようになっており、大きな問題ではなくなってきた。一方、光量分布の不均一については、画像濃度の不均一や細線の幅の不均一等の問題を発生させるため、大きな問題となっている。従って、この光量分布の不均一の問題が改善されれば、オーバフィル設計は、回転多面鏡を回転させるモータの負荷が軽減されると共に、省電力、低騒音でありながら高速かつ高解像度の光走査装置を構成することができるものとして広く活用することができる。
【0010】
従来、オーバフィル設計における光量分布の不均一の問題を解決するための技術として、電気的に補正を行う技術(特開平4−255874号公報)、光学系によって補正を行う技術(特開平3−80214号公報)、フィルタを用いて補正を行う技術が提案されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のオーバフィル設計における光量分布の不均一の問題を解決するための技術では、部品構成が複雑であるため光走査装置のコストが高くなると共に光走査装置の信頼性が低くなる、という問題点があった。
【0012】
また、特に上述した光学系による補正及びフィルタによる補正では、レーザビームの位相波面に影響を及ぼし、ビームスポットの結像特性を悪化させ、画質の劣化を引き起こす恐れがある、という問題点があった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解消するために成されたものであり、記録媒体上の光量分布の不均一を改善することができる安価でかつ信頼性の高い光走査装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の光走査装置は、光ビームを出射するビーム出射手段と、複数の反射面を備え前記ビーム出射手段から出射されかつ反射面で反射された光ビームが記録媒体上を走査するように回転される回転多面鏡と、前記回転多面鏡の1つの反射面の走査方向の幅より広い範囲にわたって前記回転多面鏡に光ビームが照射されるように前記ビーム出射手段から出射された光ビームを拡大するビーム拡大手段と、前記ビーム出射手段と前記回転多面鏡との間の前記光ビームの光路内に配置されると共に走査方向に交差する方向の幅が前記記録媒体上の走査方向の光量分布が略均一となるように変化された開口を有した開口部材と、を備えた光走査装置であって、前記回転多面鏡の有効反射幅が前記回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるように前記ビーム出射手段、前記ビーム拡大手段、及び前記回転多面鏡を配置すると共に、前記開口の走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように前記開口を形成し、かつ前記有効反射幅が小さいときに前記開口の幅が広い部分を通過した光ビームが前記回転多面鏡の反射面で反射されるように前記開口部材を配置したものである。
【0015】
請求項1記載の光走査装置によれば、複数の反射面を備えた回転多面鏡の1つの反射面の走査方向の幅より広い範囲にわたって回転多面鏡に光ビームが照射されるようにビーム出射手段から出射された光ビームがビーム拡大手段によって拡大される。従って、請求項1記載の光走査装置はオーバフィル設計に基づいて構成されている。
【0016】
また、ビーム出射手段と回転多面鏡との間の光ビームの光路内に配置され、かつ走査方向に交差する方向の幅が変化された開口を有した開口部材によって記録媒体上の走査方向の光量分布が略均一とされる。
【0017】
オーバフィル設計に基づいて構成された光走査装置では、上述したように記録媒体上の走査方向の光量分布が、光ビームの走査位置に応じて回転多面鏡の反射面がガウスビームプロファイルの異なる部分を切り出すことと、回転多面鏡の回転に従って回転多面鏡の有効反射幅が変化することにより、ガウス分布波形と余弦波形の積として表わされる値で変化する。従って、記録媒体上の走査方向の光量分布を略均一とするためには、開口部材における開口の形状をガウス分布波形と余弦波形との積に反比例するような形状とするように走査方向に交差する方向の幅を変化させればよい。
【0018】
このように請求項1記載の光走査装置によれば、開口部材の開口の形状を走査方向に交差する方向の幅が変化するように構成したので、記録媒体上のビームスポットの光量分布を略均一とすることができる。
【0019】
また、このような開口部材は、従来から光走査装置に備えられている開口部材を利用して構成することができるので、新規部品を追加する必要がなく、光走査装置を安価でかつ信頼性を低下させることなく構成することができる。
【0020】
なお、アンダーフィル設計に基づいて構成された光走査装置においては、特開昭59−69730号公報に記載されている技術のように、回転多面鏡で走査された扇状の光路に走査位置に応じて幅を変化させた開口を設け、ビームスポットの歪みを補正する技術が見られるが、これは光量分布補正の機能を持たせたものではない。
【0021】
また、アンダーフィル設計における上記開口は、回転多面鏡より記録媒体側に配設する必要があるが、走査ビームは回転多面鏡の面倒れによって通過位置にふらつきが生じるため、開口を通過するレーザビームの光量にもふらつきが生じて画像にバンディングと呼ばれる周期的縞模様が生じる。
【0022】
回転多面鏡の面倒れは、通常、回転多面鏡の反射面と記録媒体表面とを光学的な共役関係位置に置くことにより補正するが、光路途中におけるレーザビームのふらつきまでは完全に補正することはできない。従って、アンダーフィル設計に基づいて構成された光走査装置における上記開口は、ビームスポットの歪み補正機能に限っても、実用上大きな問題を持つと言える。
【0028】
特に、請求項1記載の光走査装置は、前記回転多面鏡の有効反射幅が前記回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるように前記ビーム出射手段、前記ビーム拡大手段、及び前記回転多面鏡を配置すると共に、前記開口の走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように前記開口を形成し、かつ前記有効反射幅が小さいときに前記開口の幅が広い部分を通過した光ビームが前記回転多面鏡の反射面で反射されるように前記開口部材を配置したものである。
【0029】
請求項1記載の光走査装置によれば、回転多面鏡の有効反射幅が回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるようにビーム出射手段、ビーム拡大手段、及び回転多面鏡が配置されると共に、開口の走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように開口が形成され、かつ有効反射幅が小さいときに開口の幅が広い部分を通過した光ビームが回転多面鏡の反射面で反射されるように開口部材が配置される。
【0030】
回転多面鏡の有効反射幅が回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるようにビーム出射手段、ビーム拡大手段、及び回転多面鏡が配置された場合においては、回転多面鏡の有効反射幅は、回転多面鏡の回転に伴って徐々に減少するか、又は増加するように変化する。
【0031】
従って、開口の走査方向に交差する方向の幅を走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように開口を形成し、かつ有効反射幅が小さいときに開口の幅が広い部分を通過した光ビームが回転多面鏡の反射面で反射されるように開口部材を配置することによって、回転多面鏡によって反射された光ビームの走査方向の光量分布を略均一にすることができる。
【0032】
このように請求項1記載の光走査装置によれば、回転多面鏡の有効反射幅が回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるようにビーム出射手段、ビーム拡大手段、及び回転多面鏡を配置すると共に開口の走査方向に交差する方向の幅を走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように開口を形成し、かつ有効反射幅が小さいときに開口の幅が広い部分を通過した光ビームが回転多面鏡の反射面で反射されるように開口部材を配置したので、確実に記録媒体上のビームスポットの光量分布を略均一とすることができる。
【0034】
なお、開口の走査方向に交差する方向の幅を段階的に変化させる場合には開口部材を容易に設計、製造でき、連続的に変化させる場合には正確に記録媒体上の光量分布を均一とすることができる。
【0035】
また、請求項2記載の光走査装置は、請求項1記載の光走査装置における前記開口部材を走査方向に微動調整可能にしたものである。
【0036】
記録媒体上における光ビームの光量分布は、回転多面鏡に入射する光ビームのアライメントにより、偏りをもつ場合がある。この場合、開口部材を走査方向に微動調整可能なものとし、開口部材を上記偏りに応じて調整することによって、上記偏りを補正することができる。
このように請求項2記載の光走査装置によれば、開口部材を走査方向に微動調整可能にしたので、回転多面鏡に入射する光ビームのアライメントによる光ビームの偏りを容易に補正することができる
また、上記目的を達成するために請求項3記載の光走査装置は、光ビームを出射するビーム出射手段と、複数の反射面を備え前記ビーム出射手段から出射されかつ反射面で反射された光ビームが記録媒体上を走査するように回転される回転多面鏡と、前記回転多面鏡の1つの反射面の走査方向の幅より広い範囲にわたって前記回転多面鏡に光ビームが照射されるように前記ビーム出射手段から出射された光ビームを拡大するビーム拡大手段と、前記ビーム出射手段と前記回転多面鏡との間の前記光ビームの光路内に配置されると共に走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように形成した開口を有した開口部材と、を備え、前記回転多面鏡の有効反射幅が前記回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるように前記ビーム出射手段、前記ビーム拡大手段、及び前記回転多面鏡を配置し、かつ前記有効反射幅が小さいときに前記開口の幅が広い部分を通過した光ビームが前記回転多面鏡の反射面で反射されるように前記開口部材を配置したものである。
更に、請求項4記載の光走査装置は、請求項3記載の光走査装置において、前記開口部材を走査方向に微動調整可能にしたものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0038】
基本構成
まず、図1を参照して、本基本構成に係る光走査装置10の構成について説明する。
【0039】
同図に示すように、本基本構成に係る光走査装置10は、レーザビームを発生する半導体レーザ12を備えており、半導体レーザ12からのレーザビームの出射方向には、入射されたレーザビームを平行ビームに変換するコリメータレンズ14、略中央部に開口17が設けられた板状部材により構成された開口板16、後述するfθレンズ24との組み合わせにより、入射されたレーザビームを走査方向に拡大する凹レンズ18、シリンドリカルレンズ20、及び折り曲げミラー22が順に配設されている。
【0040】
なお、開口板16に設けられた開口17は、開口17の左右方向(走査方向)両端部の上下方向(走査方向に垂直な方向)の開口幅が左右方向中央部に比較して大きくされた形状とされており、例えば図2(A)、(B)、(C)の何れかの形状とすることができる。また、開口板16は、図2(A)乃至(C)に示すように、開口17の中心が半導体レーザ12から出射された後述するレーザビーム13の中心(光軸)と略一致するように配設されている。
【0041】
一方、折り曲げミラー22のレーザビームの反射方向には、fθレンズ24、及び複数(本基本構成では12)の反射面28を外周面に備えた回転多面鏡26が順に配設されており、回転多面鏡26の反射面28によるレーザビームの反射方向には、上記fθレンズ24、回転多面鏡26の面倒れ補正を行うシリンドリカルミラー30が順に配設されており、シリンドリカルミラー30のレーザビームの反射方向には、ドラム型の感光体32が配設されている。
【0042】
このように、本基本構成に係る光走査装置10では、折り曲げミラー22により反射されたレーザビームと回転多面鏡26の反射面28により反射されたレーザビームとの双方のレーザビームが同一のfθレンズ24を通過するように、fθレンズ24を通過したレーザビームが回転多面鏡26の反射面28に斜め上方から入射され、該入射されたレーザビームが回転多面鏡26の反射面28によって斜め下方に反射されて再度fθレンズ24に入射されるように各部が配設されている。
【0044】
次に図3を参照して、以上のように構成された光走査装置10の作用を説明する。なお、図3は、レーザビーム13の光軸を直線で表わした場合の図1に示した光走査装置10の作用を示す図であって、図3(A)は平面図、図3(B)は側面図である。
【0045】
図3(A)及び図3(B)に示すように、半導体レーザ12から出射されたレーザビーム13はコリメータレンズ14により平行ビームに変換された後、開口板16の開口17を通過する。開口17を通過したレーザビーム13は凹レンズ18及びfθレンズ24によって走査方向に拡大された後、拡大されたレーザビーム13の一部が回転多面鏡26の1つの反射面28により反射され、再度fθレンズ24を通過することによって感光体32上にビームスポット34を結ぶ。なお、fθレンズ24は、上述した役割の他に、回転多面鏡26の等角速度運動を感光体32上におけるビームスポット34の等線速度運動に変換する役割も担っている。
【0046】
ここで、回転多面鏡26に入射するレーザビームの強度分布について考えてみる。半導体レーザ12のビーム拡がり角(半値全角)が走査方向に30°、走査方向と垂直の方向に9°であるとし、コリメータレンズ14の焦点距離が12.5mmであるとすると、レーザビームの強度がビーム中心の強度の1/e2 (eは自然対数の底)となる点におけるコリメート光(コリメータレンズ14から出射されたレーザビーム)の走査方向及び走査方向と垂直の方向の各々のビーム半径ωx 及びωy は次のようになる。
【0047】
ωx =sin(30°/2)×12.5×1.69=5.47mm
ωy =sin(9°/2)×12.5×1.69=1.66mm
但し、コリメータレンズ14の開口によるケラレは考慮しない。また上記各式における定数1.69は、半値幅と、レーザビームの強度がビーム中心の強度の1/e2 となる2点間の幅との間の補正値である。
【0048】
この場合のコリメート光の強度分布U(x,y) は、
(x,y) =[exp(−x2 /ωx 2 )×exp(−y2 /ωy 2 )]2
となり、開口板16の走査方向に垂直な方向の開口幅が無限大のときの走査方向の光量分布I(x) は、
(x) =IO [exp(−x2 /ωx 2 )]2
ここで、
【0049】
【数1】
Figure 0003820725
【0050】
また、開口板16の走査方向に垂直な方向の開口幅が2aのときの走査方向の光量分布I(x) は、
(x) =Q・IO [exp(−x2 /ωx 2 )]2
ここで、
【0051】
【数2】
Figure 0003820725
【0052】
上記のIO 及びQは定数であるので、上記開口幅が異なる時の走査方向の光量分布は、ピークの異なるガウス分布で表わされる。
【0053】
従って、開口板16の開口17を図2(A)に示す形状とした場合の走査方向の光量分布は、図4の上側のグラフの実線で示すように、ピークの異なるガウス分布を組み合わせた状態となる。
【0054】
回転多面鏡26の反射面28上での光量分布は、凹レンズ18及びfθレンズ24によるビーム拡大率により決定される。このビーム拡大率を大きく取ればガウスビームの中心部のみを使うことになり、光量分布の均一性は良くなるが、光学系の透過率が低下する。
【0055】
ここで、本基本構成では、レーザビーム13は回転多面鏡26に正面から入射するため、図5(A)乃至図5(C)に順に示すように、回転多面鏡26が図5矢印A方向に回転する場合、回転多面鏡26の有効反射幅率(最大有効反射幅に対する有効反射幅の割合)はcos−15°からcos15°の間で変化する。
【0056】
感光体32上に結像するレーザビーム13の光量は、図4の上側のグラフにおいて実線で示した回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布から、回転多面鏡26の有効反射面が切り出す部分の積分値となる。従って、感光体32上の光量分布は、回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布に対し、走査方向両端ではcos15°=cos−15°≒0.97の光量低下を発生すると共に、平滑化されて回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布の不連続部分は無くなって滑らかな変化に変わる。
【0057】
基本構成では、コリメート光を走査方向両端部の開口幅を中央部より段階的に大きくした開口を通過させた後、凹レンズ18及びfθレンズ24によって走査方向に3倍に拡大し、反射面28の走査方向の幅を7mmとした回転多面鏡26に入射する場合において、上記開口の幅の変化位置を適切に設定することによって、図6に示すように、無補正状態では5%以上あった光量むらを1%以下に抑えることができた。なお、図6では、走査方向中心の光量を100%として表わしている。
【0058】
なお、開口形状を図2(A)に示したものとした場合は、回転多面鏡26に入射されるレーザビームの光量分布は急な変化点を持つが、開口形状を図2(B)に示したように開口幅が変化する部位を斜めにカットすることで、回転多面鏡26に入射されるレーザビームの光量分布を滑らかな曲線で変化させることができる。
【0059】
以上詳細に説明したように、本基本構成に係る光走査装置10では、オーバフィル設計に基づいて構成された光走査装置10の開口板16における開口17の走査方向に垂直な方向の幅を走査方向に沿って変化させたので、感光体32上におけるレーザビームの光量分布を略均一にすることができる。
【0060】
また、この際に用いられる開口板16は、オーバフィル設計に基づいて構成された光走査装置に従来より備えられているものを利用することができるので、新規部品を追加する必要がなく、光走査装置を安価に構成することができると共に、光走査装置の信頼性を低下させることもない。
【0061】
〔実施形態〕
次に、本発明の実施形態について説明する。まず、図7を参照して、本実施形態に係る光走査装置10Bの構成について説明する。なお、図7における図1と同一の符号を付した部分は同一の機能を備えている。
【0062】
同図に示すように、本実施形態に係る光走査装置10Bは、レーザビームを発生する半導体レーザ12を備えており、半導体レーザ12からのレーザビームの出射方向には、入射されたレーザビームを平行ビームに変換するコリメータレンズ14、略中央部に開口17が設けられた板状部材により構成された開口板16、入射されたレーザビームを拡大するビームエキスパンダレンズ19、及び折り曲げミラー22が順に配設されている。
【0063】
一方、折り曲げミラー22のレーザビームの反射方向には、シリンドリカルレンズ20、及び複数(本実施形態では12)の反射面28を外周面に備えた回転多面鏡26が順に配設されており、回転多面鏡26の反射面28によるレーザビームの反射方向には、感光体32上にビームスポット34を結像するfθレンズ24、回転多面鏡26の面倒れ補正を行うシリンドリカルミラー30が順に配設されており、シリンドリカルミラー30のレーザビームの反射方向には、ドラム型の感光体32が配設されている。
【0064】
なお、上記半導体レーザ12が本発明のビーム出射手段に、上記ビームエキスパンダレンズ19が本発明のビーム拡大手段に、上記開口板16が本発明の開口部材に、上記感光体32が本発明の記録媒体に、各々相当する。
【0065】
次に図8を参照して、以上のように構成された光走査装置10Bの作用を説明する。なお、図8は、レーザビーム13の光軸を直線で表わした場合の図7に示した光走査装置10Bの作用を示す図であって、図8(A)は平面図、図8(B)は側面図である。
【0066】
図8(A)及び図8(B)に示すように、半導体レーザ12から出射されたレーザビーム13はコリメータレンズ14により平行ビームに変換された後、開口板16の開口17を通過する。開口17を通過したレーザビーム13はビームエキスパンダレンズ19によって拡大された後、拡大されたレーザビーム13の一部が回転多面鏡26の1つの反射面28により反射され、fθレンズ24を通過することによって感光体32上にビームスポット34を結ぶ。なお、fθレンズ24は、上述した役割の他に、回転多面鏡26の等角速度運動を感光体32上におけるビームスポット34の等線速度運動に変換する役割も担っている。
【0067】
なお、本実施形態に係る光走査装置10Bでは、図9(A)乃至図9(C)に順に示すように、レーザビーム13を回転多面鏡26に対して斜め60°の方向から入射させており、このため回転多面鏡26が図9矢印A方向に回転する場合の回転多面鏡26の有効反射幅率はcos15°からcos45°の間で変化する。
【0068】
また、開口板16の開口17は、図10に示すように、図10右半分の走査方向に垂直な方向の開口幅が図10左半分より段階的に2段階に大きくされた形状としている。この場合、回転多面鏡26に入射されるレーザビームの光量分布は、図10の上側のグラフの実線で示すように、ピークの異なる3つのガウス分布を組み合わせた状態となる。
【0069】
感光体32上に結像するレーザビーム13の光量は、図10の上側のグラフにおいて実線で示した回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布から、回転多面鏡26の有効反射面が切り出す部分の積分値となる。従って、感光体32上の光量分布は、回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布に対し、走査方向両端では各々cos15°≒0.97、cos45°≒0.71の光量低下が発生すると共に、平滑化されて回転多面鏡26に入射するレーザビームの光量分布の不連続部分は無くなって滑らかな変化に変わる。
【0070】
本実施形態では、コリメート光を一方の端部の開口幅を他方の端部の開口幅より段階的に徐々に広くした開口を通させた後、ビームエキスパンダレンズ19によって3倍に拡大し、反射面28の走査方向の幅を7mmとした回転多面鏡26に入射する場合において、上記開口幅の変化位置と変化段数を適切に設定することによって、図11に示すように、無補正状態では30%以上あった光量むらを2%以下に抑えることができた。なお、図11では、走査方向中心の光量を100%として表わしている。
【0071】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る光走査装置10Bでは、オーバフィル設計に基づいて構成された光走査装置10Bの開口板16における開口17の走査方向に垂直な方向の幅を走査方向に沿って変化させたので、感光体32上におけるレーザビームの光量分布を略均一にすることができる。
【0072】
また、この際に用いられる開口板16は、オーバフィル設計に基づいて構成された光走査装置に従来より備えられているものを利用することができるので、新規部品を追加する必要がなく、光走査装置を安価に構成することができると共に、光走査装置の信頼性を低下させることもない。
【0073】
なお、感光体32上におけるレーザビームの光量分布の完全な補正を行うためには、開口板16にガウス分布と余弦波形の積に反比例する形状(上記実施形態に係る光走査装置10の開口板16では、図2(C)に示した形状)の開口を設ければよいが、この場合、製造上、特に検査を行う際に困難を生じる。
【0074】
一方、開口の幅を段階的に変化させた場合でも、上記基本構成び実施形態で説明したように、十分な光量補正効果が得られる。このように、開口の幅を段階的に変化する形状とすることによって、開口板の設計及び製造を容易化することができる。
【0075】
また、開口の幅を段階的に変化させた場合、連続的に変化させた場合に比較して、同じ光量補正効果が得られる最大開口幅を小さくすることができ、従って開口幅の走査方向に対する変化量(最大開口幅と最小開口幅との差)を小さくすることができるので、ビームスポットサイズへの影響を最小限に抑えることができる。
【0076】
即ち、集束するビームスポットサイズは、光の回折により有限の寸法を持ち、光の波長に比例すると共に、集束の際の絞り込み角度(≒開口幅/焦点距離)に反比例する性質を持っており、開口幅に応じて変化するので、開口幅の走査方向に対する変化量が小さくなるとビームスポットサイズへの影響を小さくできるのである。
【0077】
感光体32上の走査方向に垂直な方向のビームスポットサイズは、開口板16の走査方向に垂直な方向の開口幅により決定される。即ち、上述したように集束するビームスポットサイズは絞り込み角度(≒開口幅/焦点距離)に反比例する性質を持っているので、開口幅が大きくなると走査方向に垂直な方向のビームスポットサイズは小さくなる。ビームスポットサイズは設計値より大きいと解像度不良等の画質不良の原因となる場合があるが、小さくなる場合の許容度は大きい。上記基本構成では、走査両端における走査方向に垂直な方向のビームスポットサイズは走査中央に比較して、1割程度小さくなるが、画質上の問題は発生しない。上記実施形態では、この差が上記基本構成に比較して大きくなるが、ビームスポットサイズが小さくなることにより焦点深度が浅くなることに留意すれば実用上の問題はない。
【0078】
また、光学系の特性としては、走査両端におけるビームスポットサイズが太くなる特性を持つことがあり、この場合は、本発明を適用することによりビームスポットサイズの均一化を図ることもできる。
【0079】
なお、感光体32上におけるレーザビームの光量分布は、回転多面鏡26に入射するレーザビームのアライメントにより、偏りをもつ場合がある。この場合、開口板16を走査方向に微動調整可能なものとすることによって、この偏りを補正することができる。図12は、開口板16を走査方向に微動調整可能とした場合の構成を示しており、図12(A)は平面図、図12(B)はレーザビームが入射される方向から見た側面図である。
【0080】
同図に示すように、開口板16は開口板16をレーザビームの光軸に対して略垂直に保持する保持部材40ごとエキセントリックシャフト42等による調整工具を使用して走査方向に微動させることによって光量バランスを調整した後、固定ねじ44により固定する。
【0081】
なお、上記基本構成及び実施形態では、開口板16をコリメータレンズ14に隣接する位置に配設した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、開口板16は半導体レーザ12と回転多面鏡26との間のレーザビームの光路上の如何なる位置に配設してもよい。但し、この場合、開口板16の開口のサイズを配設位置に応じて適宜変更する必要がある。
【0082】
【発明の効果】
請求項1記載の光走査装置によれば、回転多面鏡の有効反射幅が回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるようにビーム出射手段、ビーム拡大手段、及び回転多面鏡を配置すると共に開の走査方向に交差する方向の幅を走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように開口を形成し、かつ有効反射幅が小さいときに開口の幅が広い部分を通過した光ビームが回転多面鏡の反射面で反射されるように開口部材を配置したので、確実に記録媒体上のビームスポットの光量分布を略均一とすることができると共に、開口部材を、従来から光走査装置に備えられている開口部材を利用して構成することができるので、新規部品を追加する必要がなく、光走査装置を安価でかつ信頼性を低下させることなく構成することができる、という効果が得られる。
【0085】
た、開口の走査方向に交差する方向の幅を段階的に変化させる場合には開口部材を容易に設計、製造でき、連続的に変化させる場合には正確に記録媒体上の光量分布を均一とすることができる、という効果が得られる。
【0086】
さらに、請求項2記載の光走査装置によれば、開口部材を走査方向に微動調整可能にしたので、回転多面鏡に入射する光ビームのアライメントによる光ビームの偏りを容易に補正することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基本構成に係る光走査装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】 基本構成に係る光走査装置における開口板の開口形状の3種類の例を示す概略図である。
【図3】 基本構成に係る光走査装置におけるレーザビームの光軸を直線で示した場合の光走査装置の作用を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】 基本構成に係る光走査装置の回転多面鏡に入射するレーザビームの走査方向及び走査方向に垂直な方向の光量分布を示すグラフである。
【図5】 基本構成に係る光走査装置における回転多面鏡の有効反射幅率の説明に用いる図であり、(A)乃至(C)は各々、回転多面鏡が回転した際の時間経過に伴う回転多面鏡の有効反射幅の変化を示す平面図である。
【図6】 基本構成に係る光走査装置による光量分布の補正の効果を示すグラフである。
【図7】施形態に係る光走査装置の概略構成を示す構成図である。
【図8】施形態に係る光走査装置におけるレーザビームの光軸を直線で示した場合の光走査装置の作用を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】施形態に係る光走査装置における回転多面鏡の有効反射幅率の説明に用いる図であり、(A)乃至(C)は各々、回転多面鏡が回転した際の時間経過に伴う回転多面鏡の有効反射幅の変化を示す平面図である。
【図10】施形態に係る光走査装置の回転多面鏡に入射するレーザビームの走査方向及び走査方向に垂直な方向の光量分布を示すグラフである。
【図11】施形態に係る光走査装置による光量分布の補正の効果を示すグラフである。
【図12】 基本構成及び実施形態に係る光走査装置における開口板の走査方向の微動調整を可能とする概略構成を示す構成図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図13】 従来のアンダーフィル型多面鏡設計による光走査装置の概略構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図14】 従来の開口の形状、及び開口とレーザビームとの位置関係を示す概略図である。
【符号の説明】
10、10B
光走査装置
12 半導体レーザ(ビーム出射手段)
14 コリメータレンズ
16 開口板(開口部材)
18 凹レン
19 ビームエキスパンダレンズ(ビーム拡大手段)
20 シリンドリカルレンズ
22 折り曲げミラー
24 fθレン
26 回転多面鏡
28 反射面
30 シリンドリカルミラー
32 感光体(記録媒体)
34 ビームスポット
40 保持部材
42 エキセントリックシャフト
44 固定ねじ

Claims (4)

  1. 光ビームを出射するビーム出射手段と、
    複数の反射面を備え前記ビーム出射手段から出射されかつ反射面で反射された光ビームが記録媒体上を走査するように回転される回転多面鏡と、
    前記回転多面鏡の1つの反射面の走査方向の幅より広い範囲にわたって前記回転多面鏡に光ビームが照射されるように前記ビーム出射手段から出射された光ビームを拡大するビーム拡大手段と、
    前記ビーム出射手段と前記回転多面鏡との間の前記光ビームの光路内に配置されると共に走査方向に交差する方向の幅が前記記録媒体上の走査方向の光量分布が略均一となるように変化された開口を有した開口部材と、
    を備えた光走査装置であって、
    前記回転多面鏡の有効反射幅が前記回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるように前記ビーム出射手段、前記ビーム拡大手段、及び前記回転多面鏡を配置すると共に、前記開口の走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように前記開口を形成し、かつ前記有効反射幅が小さいときに前記開口の幅が広い部分を通過した光ビームが前記回転多面鏡の反射面で反射されるように前記開口部材を配置した
    光走査装置。
  2. 前記開口部材を走査方向に微動調整可能にした請求項1記載の光走査装置。
  3. 光ビームを出射するビーム出射手段と、
    複数の反射面を備え前記ビーム出射手段から出射されかつ反射面で反射された光ビームが記録媒体上を走査するように回転される回転多面鏡と、
    前記回転多面鏡の1つの反射面の走査方向の幅より広い範囲にわたって前記回転多面鏡に光ビームが照射されるように前記ビーム出射手段から出射された光ビームを拡大するビーム拡大手段と、
    前記ビーム出射手段と前記回転多面鏡との間の前記光ビームの光路内に配置されると共に走査方向に交差する方向の幅が走査方向一端から他端に向って段階的に徐々に大きくなるように形成した開口を有した開口部材と、
    を備え、
    前記回転多面鏡の有効反射幅が前記回転多面鏡の回転に伴って徐々に小さくなるか、又は大きくなるように前記ビーム出射手段、前記ビーム拡大手段、及び前記回転多面鏡を配置し、かつ前記有効反射幅が小さいときに前記開口の幅が広い部分を通過した光ビームが前記回転多面鏡の反射面で反射されるように前記開口部材を配置した
    光走査装置。
  4. 前記開口部材を走査方向に微動調整可能にした請求項3記載の光走査装置。
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