JP3819953B2 - 嘔吐誘発剤及び嘔吐誘発方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、薬理作用機序の解明に、或いは薬物のスクリーニングに有用なドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬を有効成分とする嘔吐誘発剤、及びドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬を、該薬物に感受性のヒト以外の哺乳動物に投与することを特徴とする嘔吐誘発方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の分子生物学の革命的な発展に伴い、神経伝達物質受容体のサブタイプが相次いで発見されている。ドパミン受容体に関しては現在D1 ,D2 ,D3 ,D4 及びD5 の5つのサブタイプが知られている。これらのサブタイプのうち、D3 受容体は大脳辺縁系に分布していることから、D3 受容体が認知,情動機能のドパミンによる調節を媒介している新しい部位であることが示唆されている。更に、D3 受容体を発現させたCHO細胞を用いた結合実験の結果は、D3 受容体が抗精神病薬の治療効果に重要な関与を示す受容体である可能性を示唆している。しかしながら、D3 受容体が嘔吐発現に関与するか否かについては知られていない〔例えば、神経精神薬理,16, 25 (1994); Trends Pharmacol. Sci., 15, 264 (1994)参照〕。
【0003】
最近、RS(±)−7−ヒドロキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)テトラリン(以下「RS(±)−7−OH−DPAT」と略することもある)が transfectedセルラインで発現させたドパミンD3 受容体に対して選択的で高い親和性を示す作動薬であると報告され、特にR(+)エナンチオマーがD3 受容体に対する選択性の高い異性体であると示唆されている〔例えば、Eur. J. Pharmacol., 239, 269 (1993);同誌, 249, R9 (1993) 参照〕。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ドパミン受容体拮抗作用を有する制吐剤の研究過程で、D3 受容体に対する選択的作動薬であるR(+)−及びRS(±)−7−OH−DPATの嘔吐誘発作用を見いだし、更に研究を続けた結果、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、(1) ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬を有効成分とする嘔吐誘発剤、(2) ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬を、該薬物に感受性のヒト以外の哺乳動物に投与することを特徴とする嘔吐誘発方法、及び(3) ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬を、該薬物に感受性のヒト以外の哺乳動物に投与することを特徴とするドパミンD3 受容体に対する拮抗薬のスクリーニング方法が提供される。
【0006】
「ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬」(以下「D3 受容体の選択的作動薬」と略することもある)とは、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 8155 (1992) に記載の方法又はこれと同等の方法でドパミン受容体のサブタイプに対する親和性を測定した場合、D3 受容体に対して、他のドパミン受容体(D1 ,D2 ,D4 及びD5 受容体)に比べて50倍以上高い親和性を示す作動薬を意味し、例えばR(+)−及びRS(±)−7−OH−DPATが挙げられる。
【0007】
「ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬に感受性を示すヒト以外の哺乳動物」とは、ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬の投与により嘔吐が誘発されるヒト以外の哺乳動物を意味し、例えばイヌ,ネコ,フェレットが挙げられるが、イヌ,フェレットが好ましく、殊にフェレットが好ましい。
【0008】
D3 受容体の選択的作動薬の投与方法は、非経口投与が好ましく、例えば静脈内投与,腹腔内投与,皮下投与,脳室内投与が挙げられるが、皮下投与,脳室内投与が好ましく、殊に皮下投与が好ましい。
【0009】
D3 受容体の選択的作動薬は、生理食塩液又は水に溶解して投与するのが好ましく、必要に応じて酸付加塩の形で適用するか、或いは乳酸等の溶解補助剤を用いて溶解度を調整して投与される。
【0010】
D3 受容体の選択的作動薬の投与量は、該薬物又は対象哺乳動物の種類,投与方法等により異なり、最適投与量は常法、例えば後記試験例1〜3におけるR(+)−及びRS(±)−7−OH−DPAT(化合物A及びF)の場合のように段階的に増量した各投与量での嘔吐誘発状態を観察・記録することにより求めることができる。
【0011】
例えば、R(+)−7−OH−DPAT0.1 〜1.0mg/kgの皮下投与は、フェレット及びイヌにおいて30分以内に再現性よく嘔吐を誘発する。第4脳室内投与の場合は、フェレットにおいて0.3 〜1.0 μg の投与量で15分以内に再現性よく嘔吐を誘発する。
【0012】
ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬であるR(+)−7−OH−DPATにより誘発される嘔吐は、後記試験例4及び5の結果から、延髄の最後野に局在するドパミンD3 受容体を介して現れると考えられるので、この嘔吐を予防する薬物は、D3 受容体拮抗作用を有すると考えられる。したがって、ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬により誘発される嘔吐を対象化合物が予防するか否かを試験することにより、該化合物がD3 受容体拮抗作用を有するか否かを知ることができる。
【0013】
この目的でのR(+)−7−OH−DPATの投与量及び投与方法としては、イヌ,フェレットとも約0.1 〜約0.5mg/kgの皮下投与が好ましく、特に約0.3mg/kgの皮下投与が好ましい。定量的評価のための項目としてはフェレットの場合、嘔吐発現までの潜時,空嘔吐(胃内容物の吐出を伴わない嘔吐様の動作)回数及び嘔吐回数のいずれもが適当であり、イヌの場合、嘔吐発現までの潜時及び嘔吐回数が適当である。
【0014】
【実施例】
以下に試験例及び実施例を挙げて本発明を更に具体例に説明するが、本発明はこれら試験例及び実施例に限定されるものではない。なお、試験例1〜5はドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬の嘔吐誘発作用について説明するものである。
【0015】
試験例及び実施例で使用したフェレットは全て、体重1.0 〜1.6 kgの雄性フェレット(Marshall Res. Animal Inc. から購入)で、実験前に一夜絶食させたのち使用した。試験例及び実施例で使用した薬物は以下の通りで、化合物A,B及びFは臭化水素酸塩の形で、化合物C,D,E及びJは塩酸塩の形で用いた。また、化合物A,B,D,E,F,G及びJは生理食塩液に、化合物Cは精製水に、化合物H及びIは0.1 %乳酸/生理食塩液に溶解して用いた。
【0016】
化合物A:R(+)−7−OH−DPAT(選択的なD3 受容体作動薬)、
化合物B:S(−)−7−OH−DPAT(化合物Aの鏡像体)、
化合物C:アポモルヒネ(D2 及びD3 受容体作動薬)、
化合物D:(−)−キンピロール(quinpirole)(D2 及びD3 受容体作動薬)、
化合物E:SKF38393(選択的なD1 受容体作動薬)、
化合物F:RS(±)−7−OH−DPAT(化合物Aのラセミ体)、
化合物G:S(−)−エチクロプリド(D2 及びD3 受容体拮抗薬)、
化合物H:ドンペリドン(D2 及びD3 受容体拮抗薬)、
化合物I:クロザピン(選択的なD4 受容体拮抗薬)、及び
化合物J:SCH23390(選択的なD1 受容体拮抗薬)。
【0017】
また、試験に使用した薬物の投与量は全て遊離塩基としての重量で示した。試験例及び実施例における嘔吐発現までの潜時,空嘔吐回数及び嘔吐回数は、平均値±標準誤差で示し、これら群間の比較はMann-WhitneyのU検定を用いて行った。
【0018】
試験例1――
フェレットにおけるドパミン作動薬皮下投与の嘔吐誘発効果:−
【0019】
種々のドパミン作動薬をフェレットに2ml/kgの割合で皮下投与したのち30分間観察し、嘔吐発現までの潜時,空嘔吐及び嘔吐の回数を記録した。結果を表1に示す。
【0020】
また、1群9匹のフェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT(化合物A)の0.3 mg/kg 皮下投与により誘発される空嘔吐及び嘔吐の頻度の時間的分布を図1に示す。図中の垂線は標準誤差を表す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から明らかなように、R(+)−7−OH−DPAT(化合物A)は、0.03〜1.0 mg/kg の皮下投与で用量依存的に嘔吐を誘発した。また、図1から明らかなように、化合物Aの皮下投与後5〜10分の間に嘔吐が最高頻度で誘発されたが、25分後には空嘔吐も嘔吐も認められなかった。
【0023】
化合物Aの場合と異なり、S(−)−7−OH−DPAT(化合物B)の場合は、1.0 mg/kg の高用量でも空嘔吐も嘔吐も誘発されなかった。
【0024】
アポモルヒネ(化合物C)は、0.1 〜1.0 mg/kg で空嘔吐及び嘔吐を誘発したが、その効果は用量依存的ではなかった。即ち、0.3 mg/kg では全例で空嘔吐及び嘔吐が認められたが、高用量の1.0 mg/kg では5匹中3匹に嘔吐が認められたにすぎなかった。
【0025】
(−)−キンピロール(化合物D)は、化合物Aよりも弱いものの、0.03〜1.0 mg/kg で用量依存的に嘔吐を誘発した。
【0026】
他方、ドパミンD1 受容体作動薬であるSKF38393(化合物E)は、1.0 mg/kg の高用量でも全例で空嘔吐も嘔吐も誘発しなかった。
【0027】
以上総合すると、選択的なD3 受容体作動薬であるR(+)−7−OH−DPATは、フェレットにおいて、D2 受容体に対しても作用するアポモルヒネや(−)−キンピロールよりも鋭敏な嘔吐誘発作用を示すことが分かる。
【0028】
試験例2――
イヌにおけるドパミン作動薬皮下投与の嘔吐誘発効果:−
【0029】
体重8〜15kgの雄性ビーグル犬を実験前に一夜絶食させたのち使用した。
【0030】
種々のドパミン作動薬をビーグル犬に0.3ml/kgの割合で皮下投与したのち60分間観察し、嘔吐発現までの潜時及び嘔吐回数を記録した。結果を表2及び3に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表2及び3から明らかなように、試験に使用した各ドパミン作動薬のイヌにおける嘔吐誘発効果はフェレットの場合に類似している。R(+)−7−OH−DPAT(化合物A)は、(−)−キンピロール(化合物D)よりも幾分弱いものの、アポモルヒネ(化合物C)よりも幾分強い嘔吐誘発効果を有する一方、RS(±)−7−OH−DPAT(化合物F)は化合物Cよりも幾分弱い嘔吐誘発効果を有することが分かる。
【0034】
試験例3――
フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT脳室内投与の嘔吐誘発効果:−
【0035】
(第4脳室内薬物投与用カニューレの装着)――
フェレットをペントバルビタールナトリウム(35〜40 mg/kg,腹腔内投与)で麻酔し、脳定位固定装置(stereotaxic apparatus) に置いた。頭蓋骨を露出させ、第4脳室(最後野の1mm上部)内にガイドカニューレ(23ゲージのステンレス管,長さ22mm)を右側脳の定位に固定できるように小さな孔を開けた。この領域の座標は、前頂(bregma)より17.00 mm後,正中線より4.00mm右,頭蓋骨表面の垂直軸から20°の傾きで深さ13.00 mmであった。カニューレは、ステンレスのネジと歯科用セメントにより頭蓋骨に固定した。
【0036】
(第4脳室内投与による嘔吐の誘発)――
実験は手術後少なくとも3日あけて行った。注射用カニューレ(27ゲージ,長さ23mm)を用い、試験化合物の生理食塩液10μl を1分間にわたってゆっくりと投与した。投与後、15分間観察し、嘔吐発現までの潜時並びに空嘔吐及び嘔吐の回数を記録した。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4から明らかなように、生理食塩液のみを投与した対照群では全例で空嘔吐も嘔吐も誘発されなかった。R(+)−7−OH−DPAT(化合物A)は、0.1 〜1.0μg の第4脳室内投与で、投与後1〜2分以内に空嘔吐及び嘔吐を誘発し、その効果は10〜12分間持続した。
【0039】
これに対して、S(−)−7−OH−DPAT(化合物B)は10μg の高用量で、5匹中1匹のみにわずかな空嘔吐を誘発し、嘔吐症状は認められなかった。
【0040】
(−)−キンピロール(化合物D)は、1.0 〜10μg の用量で空嘔吐及び嘔吐を誘発したが、その効力は化合物Aよりも弱いものであった。
【0041】
試験例4――
フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐に対する迷走神経切除の効果:−
【0042】
迷走神経切除はHawthow らの方法〔Quart. J. Exp. Physiol., 73, 7 (1988)参照〕に準じて行った。フェレットをペントバルビタールナトリウム(35〜45mg/kg,腹腔内投与)で麻酔し、横隔膜上の食道に沿って走る背側迷走神経枝を切除した。手術の影響を除くために7〜14日経過後に実験に使用した。
【0043】
1群4匹の迷走神経切除フェレット又は偽手術実施フェレットにR(+)−7−OH−DPAT(化合物A)0.3 mg/kg を皮下投与後、30分間観察し、嘔吐発現までの潜時,空嘔吐回数及び嘔吐回数を記録した。
【0044】
結果を図2に示す。図中の垂線は標準誤差を表す。
【0045】
図2から明らかなように、迷走神経切除フェレットにおいて、化合物Aは0.3mg/kgの皮下投与で嘔吐を誘発し、嘔吐発現までの潜時は3.1±1.3 分であり、空嘔吐及び嘔吐回数はそれぞれ17.1±3.6 回及び4.14±1.18回であった。これらの値は、偽手術実施フェレットについての値に対して有意差を示さなかった。
【0046】
試験例5――
フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐に対する最後野破壊の効果:−
【0047】
最後野の破壊は、Jovanovic-Micic らの方法〔Eur. J. Pharmacol., 272, 21 (1995) 参照〕等に従って電気的に行った。フェレットをペントバルビタールナトリウム(35〜45mg/kg,腹腔内投与)で麻酔後、病巣形成装置(Lesion Producing Device; Stoelting Co., シカゴ)を用いて最後野に1分間4.5 mAの電流を通じた。手術の影響を除くために10日経過後に実験に使用した。
【0048】
最後野破壊フェレット(5匹)又は偽手術実施フェレット(7匹)にR(+)−7−OH−DPAT(化合物A)0.3mg/kgを皮下投与後、30分間観察し、嘔吐発現までの潜時,空嘔吐回数及び嘔吐回数を記録した。
【0049】
結果を図3に示す。図中の垂線は標準誤差を表し、* 及び**は、それぞれp<0.05及びp<0.01で偽手術フェレット群に比べて有意差のあることを示す。
【0050】
図3から明らかなように、最後野を破壊したフェレットでは、化合物A(0.3mg/kg,皮下投与)により誘発される空嘔吐及び嘔吐は著しく減少し、嘔吐発現までの潜時並びに空嘔吐及び嘔吐回数はそれぞれ21.7±5.4 分,1.6±1.0 回,0.20±0.20回であった。これらの値は偽手術実施フェレットについての値に比べて有意に異なった。
【0051】
上記試験例1〜5の結果から、R(+)−又はRS(±)−7−OH−DPATにより誘発される嘔吐は延髄の最後野に局在するドパミンD3 受容体を介するものであると考えられる。
【0052】
実施例1――
フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐に対するドパミン拮抗薬の効果:−
【0053】
ドパミン拮抗薬であるS(−)−エチクロプリド(化合物G)又はドンペリドン(化合物H)の所定用量をフェレットに皮下投与し、30分後にR(+)−7−OH−DPAT0.3 mg/kg を皮下投与した。その後フェレットを30分間観察し、嘔吐発現までの潜時並びに空嘔吐及び嘔吐の回数を記録した。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5から明らかなように、S(−)−エチクロプリド(化合物G)は、0.3 〜10μg/kgの皮下投与で用量依存的にR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐を予防した。即ち、嘔吐発現までの潜時を延長させ、空嘔吐及び嘔吐回数を減少させ、嘔吐回数を50%抑制する用量(ID50値)は1.4 μg/kgであった。
【0056】
ドンペリドン(化合物H)もまた3〜100μg/kg で用量依存的にR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐を抑制し、ID50値は2.6 μg/kgであった。
【0057】
ここに得られた化合物G及びHのID50値はこれらの化合物のドパミンD3 受容体拮抗作用を反映していると考えられる。
【0058】
実施例2――
イヌにおけるR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐に対するドパミン拮抗薬の効果:−
【0059】
体重8〜15kgの雄性ビーグル犬を実験前に一夜絶食させたのち使用した。
【0060】
ドパミン拮抗薬であるS(−)−エチクロプリド(化合物G),クロザピン(化合物I)又はSCH23390(化合物J)の所定用量をビーグル犬に皮下投与し、30分後にR(+)−7−OH−DPAT0.3 mg/kg を皮下投与した。その後60分にわたってビーグル犬を観察し、嘔吐発現までの潜時及び嘔吐回数を記録した。結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6から明らかなように、S(−)−エチクロプリド(化合物G)は、0.01〜1.0mg/kgの皮下投与で用量依存的にR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐を予防した。即ち、嘔吐発現までの潜時を延長させ、嘔吐回数を減少させ、そのID50値は0.019 mg/kg であった。
【0063】
一方、ドパミンD4 受容体拮抗薬であるクロザピン(化合物I)及びD1 受容体拮抗薬であるSCH23390(化合物J)はR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐を有意には抑制しなかった。
【0064】
実施例3――
フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT誘発嘔吐に対するS(−)−エチクロプリド(脳室内投与)の拮抗効果:−
【0065】
試験例3と同様の操作によりS(−)−エチクロプリド(化合物G)の所定用量をフェレットの第4脳室内に投与し、その3分後にR(+)−7−OH−DPAT(化合物A)0.3mg/kgを皮下投与した。その後フェレットを30分間観察し、嘔吐発現までの潜時並びに空嘔吐及び嘔吐の回数を記録した。
【0066】
結果を図4に示す。図中の垂線は標準誤差を表し、**はp<0.01で対照群に比べて有意差のあることを示す。
【0067】
図4から明らかなように、化合物Gは0.01〜1.0 μg の用量で用量依存的にR(+)−7−OH−DPATにより誘発される空嘔吐及び嘔吐を予防し、そのID50値は8.9 ngであった。
【0068】
【発明の効果】
ドパミンD3 受容体に対する選択的作動薬は、該薬物に感受性のヒト以外の哺乳動物(例えば、イヌ,フェレット)において用量依存的に嘔吐を誘発し、この嘔吐は延髄の最後野に局在するD3 受容体を介して現れることから、この性質を利用してD3 受容体に対する拮抗薬を簡単にスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT0.3mg/kg皮下投与により誘発される空嘔吐及び嘔吐の時間的分布を示したグラフである。
【図2】迷走神経切除フェレットにR(+)−7−OH−DPAT0.3mg/kg皮下投与後の嘔吐発現までの潜時,空嘔吐回数及び嘔吐回数を示したグラフである。
【図3】最後野破壊フェレットにR(+)−7−OH−DPAT0.3mg/kg皮下投与後の嘔吐発現までの潜時,空嘔吐回数及び嘔吐回数を示したグラフである。
【図4】フェレットにおけるR(+)−7−OH−DPAT0.3mg/kg皮下投与により誘発される嘔吐に対するS(−)−エチクロプリド第4脳室内投与の効果を示したグラフである。
Claims (2)
- R(+)−またはRS(±)−7−ヒドロキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)テトラリンを有効成分とする嘔吐誘発剤。
- R(+)−またはRS(±)−7−ヒドロキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)テトラリンを、該薬物に感受性のヒト以外の哺乳動物に投与することを特徴とする嘔吐誘発方法。
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