JP3819649B2 - 洗濯機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は洗濯機に関し、更に詳しくは、洗濯物の量つまり負荷量を自動的に検知する負荷量検知機能を備えた全自動洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
全自動洗濯機では、一連の洗濯行程を開始する前に、洗濯脱水槽に投入された洗濯物の重量(負荷量)を自動的に検知し、その負荷量に適した洗濯水位や洗濯時間等を設定することにより、水や時間を節約しつつ十分な洗濯性能が発揮できるようにしている。
【0003】
負荷量検知方法としては従来より種々の方法が知られている。例えば特開昭63−206283号公報に記載の負荷量検知方法では、洗濯脱水槽内に給水を行う前に、パルセータを回転駆動するモータを所定時間ONした後にOFFさせ、そのOFF直後からモータの回転に同期したパルス信号を計数し、モータが惰性による回転を停止するまでのパルス信号の計数値に基づいて負荷量を判定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。一般的な洗濯機では、モータ軸に取り付けられたモータプーリと、洗濯脱水槽及びパルセータの主軸に取り付けられた主プーリと、両プーリの間に掛け渡されたVベルトと、から成る巻き掛け伝達機構によりモータの回転駆動力が洗濯脱水槽及びパルセータに伝達されるようになっている。Vベルトは両プーリとの密着面での滑りが生じないように適度な張りをもって巻き掛けられる必要があるが、張りが強すぎるとモータ軸及び主軸が互いに近接する方向に傾き、軸受との摩擦が増加して回転負荷となる。このような負荷が増加するほどモータは回転しにくくなる。このようなことから、複数の洗濯機においてVベルトの張りの強さがばらつくと、負荷量が同一であったとしても前述のパルス信号の計数値が相違し、負荷量の検知結果にばらつきが生じてしまう。また、たとえ初期的なVベルトの張りの強さが所定値近傍に調整されていたとしても、経時劣化によって張りは次第に低下してゆくから、それに伴い負荷量検知の精度が悪化してくるということも起こり得る。なお、負荷量検知のばらつきはVベルトの張りの強さのみならず、モータの特性のばらつき、洗濯機本体の構造上のばらつきなどにも起因しているが、主たる要因はVベルトの張りの強さであるため、以下、特にこれに着目して説明することとする。
【0005】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、Vベルトの張りの強さのばらつき等に起因する洗濯機の初期的な負荷量検知のばらつきを洗濯機毎に個別に調整し、正確な負荷量検知を行うようにすることができる洗濯機に関する。また、本発明の他の目的は、長期間の使用に伴ってVベルトの弛みなどの要因により負荷量検知の精度が悪化した場合でも、簡単で且つミスの生じにくい操作でもってこれを修正することができる洗濯機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態、及び効果】
上記課題を解決するために成された本発明に係る第1の洗濯機は、パルセータを回転駆動させるモータと、該モータの回転に同期したパルス信号を発生するパルス発生手段と、モータを短時間駆動する際及び/又は駆動したあとのパルセータの回転に応じた前記パルス信号を計数する計数手段と、複数の負荷量に対してそれぞれ定められた基準値を用いて前記計数手段による計数値から負荷量を判定する判定手段と、を含んで構成された負荷量検知手段を備えた洗濯機において、
a)前記複数の基準値を書換え可能に保持する記憶手段と、
b)所定のキー操作が為されたときに開始される基準値校正処理において、前記負荷量検知手段を作動させてパルス信号の計数値を求める無負荷計測手段と、
c)前記基準値校正処理において、洗濯脱水槽の底部近傍に定められた所定水位以下の水位であるか否かを検知する水位検知手段と、
d)前記水位検知手段により所定水位を越える水位であることが検知されない場合には、該無負荷計測手段で得られた無負荷計数値から新規の基準値を算出し、前記記憶手段に格納されている基準値をその新規の基準値に書き換え、一方、前記水位検知手段により所定水位を越える水位であることが検知された場合には、基準値を書き換えない基準値更新手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
ここで、負荷量に応じて給水水位や運転時間等、他のパラメータを決定する場合には、負荷量を判定するということは該パラメータを決定するということと同じ意味を持つから、上記基準値は該パラメータを決定するための基準データであるとして読み替えることができる。具体的には、負荷量検知の目的は負荷量に応じた給水水位の設定であることが多いから、この場合には、上記基準値は給水水位を決定するための基準データであるとして読み替えることができる。
【0017】
所定のキー操作が行われると、無負荷計測手段は通常の負荷量検知動作時と同様にモータを短時間作動させ、そのときのパルセータの回転に応じたパルス信号の計数値を計数手段により取得する。基準値変更手段は、無負荷計数値から各負荷量に対する基準値を算出し、記憶手段に格納されている基準値を新たに算出された基準値に書き換える。
準値の更新動作は無負荷状態を想定したものであるから、洗濯脱水槽に洗濯物や水が入った状態で基準値の更新動作が実行されると、誤った基準値を記憶手段に書き込んでしまう恐れがある。そこで、本発明に係る第1の洗濯機では、水位検知手段により所定水位を越える水位が検知された場合には、基準値の書換え動作を行わないので、洗濯脱水槽内に水が貯留された状態で基準値の更新動作が実行されてしまうことを防止できる。
【0018】
また、本発明に係る第2の洗濯機では、パルセータを回転駆動させるモータと、該モータの回転に同期したパルス信号を発生するパルス発生手段と、モータを短時間駆動する際及び/又は駆動したあとのパルセータの回転に応じた前記パルス信号を計数する計数手段と、複数の負荷量に対してそれぞれ定められた基準値を用いて前記計数手段による計数値から負荷量を判定する判定手段と、を含んで構成された負荷量検知手段を備えた洗濯機において、
a) 前記複数の基準値を書換え可能に保持する記憶手段と、
b) 所定のキー操作が為されたときに前記負荷量検知手段を作動させてパルス信号の計数値を求める無負荷計測手段と、
c) 該無負荷計測手段で得られた無負荷計数値が異常に大きい所定値以上又は異常に小さい所定値以下であると判断されなければ、この無負荷計数値から新規の基準値を算出し、前記記憶手段に格納されている基準値を該新規の基準値に書き換え、一方、前記無負荷計数値が異常に大きい所定値以上又は異常に小さい所定値以下であると判断されれば、基準値を書き換えない基準値更新手段と、
を備えることを特徴としている。
これによれば、洗濯脱水槽内に或る程度の量の洗濯物が収容された状態や、Vベルトの張りが異常に強過ぎる又は弱過ぎる等の洗濯機として不具合な状態にあるときに、基準値の更新動作が実行されてしまうことを防止できる。
【0029】
【実施例】
[第1実施例]
以下、本発明に係る洗濯機の第1実施例を図面を参照して説明する。図1は本実施例の洗濯機の構成を示す縦断面図である。
【0030】
洗濯機の筐体1の内部には有底円筒形状の外槽2が図示しない4本の吊棒により懸垂支持されており、外槽2の内部には周壁に多数の脱水孔を有する洗濯脱水槽3が主軸4を中心に回転自在に軸支されている。洗濯脱水槽3の上縁端には環状のバランスリング5が取り付けられ、これにより洗濯脱水槽3の首振り振動が抑制されるようになっている。洗濯脱水槽3の底部には洗濯物を撹拌するためのパルセータ6が配置されており、外槽2の下面に取り付けられたモータ7の回転動力は、モータプーリ8、Vベルト9、主プーリ10などから成る伝達機構と動力切換機構11とを介して洗濯脱水槽3とパルセータ6とに伝達される。動力切換機構11はブレーキやクラッチを含み、主として洗い運転や濯ぎ運転時にはパルセータ6のみを一方向又は両方向に回転させ、脱水時には洗濯脱水槽3とパルセータ6とを一体に一方向に回転させるべく機械的な切換えを行う。
【0031】
外槽2の上部後方には、外部の給水栓に一端が接続され、他端が洗剤容器14に接続された給水管12が設けられている。給水管12の途中に設けられた給水バルブ13が開かれると、給水管12を通して洗剤容器14に水が流入し、洗剤容器14内に予め洗剤が収容されている場合にはその洗剤と共に洗濯脱水槽3内に水が供給される。外槽2の底部には排水口15が設けられ、排水口15には途中に排水バルブ16を備えた排水管17が接続されている。更に、外槽2の底部にはエアートラップ18が形成されており、圧力ホース19を介して水位センサ20に接続されている。外槽2内に貯留された水の水位が上下するとそれに応じて圧力ホース19内の空気圧が変化するから、水位センサ20はこの圧力を検知することにより水位を検知する。筐体1の上面前部には、複数の操作キーと表示器とを備えた操作パネル21が設けられている。
【0032】
図2はこの洗濯機の要部の電気系構成図である。制御部30は周知のマイクロコンピュータを中心にしてROM31、RAM32、EEPROM33などのメモリやパルスカウンタ34などを含んで構成されており、ROM31に予め格納されている運転プログラムを実行することにより洗濯に関する各動作処理を進める。EEPROM33は、記憶内容を電気的に消去、書込み可能な不揮発性のメモリであれば他のものでもよい。制御部30にはモータ駆動部35、バルブ駆動部36、操作部38、表示部39、水位センサ20などが接続されており、インバータ回路等を含むモータ駆動部35を介してモータ7の動作を、トルクモータ等を含むバルブ駆動部36を介して給水バルブ13及び排水バルブ16の開閉動作を制御している。モータ7にはその回転に伴ってパルス信号を発生するパルス発生器37が付設されている。
【0033】
図4は操作パネル21の外観図であり、(a)及び(b)はそれぞれ正面略右半面図及び正面略左半面図を示している。操作キーとしては、電源のON/OFFのための電源投入キー210及び電源切断キー211、洗濯の開始の指示及び洗濯途中での一時停止を指示するためのスタートキー212、予めプログラムが定められた各種運転コースを選択するための、念入りコース指定キー215を含むコース選択キー、手動で洗い時間を設定するための洗い設定キー213、手動で水量を設定するための水量設定キー214等が設けられており、それ以外に、時間表示や水量表示を数値(それぞれ二桁の16進表示)で行うための表示器216が設けられている。
【0034】
本実施例の洗濯機では、洗濯動作を遂行するために必要な各種パラメータ(運転時間、水流の強さなど)はEEPROM33に格納されている。そのパラメータの中には、主として洗濯物の量(負荷量)に応じて決定される給水水位の判定に利用される複数の基準値を含んでいる。つまり、この基準値は、負荷量を判定する基準値であると共に給水水位を判定する基準値である。図3はこの洗濯機における給水水位と基準値との関係を示す模式図である。この洗濯機では、負荷量に応じて無段階で給水水位の調節が行えるようになっているが、基準値は、図3に示す10段階、つまり14L(リットル)、23L、29L、33L、36L、39L、43L、47L、51L、53Lという水量に対応する給水水位(以下、例えば14Lという水量に対応する給水水位を「14Lの水位」と略す)に対してそれぞれ決められている。この基準値をそれぞれA1〜A10と呼ぶ。但し、後述の理由により、23Lの水位に対応した基準値はA2、A2’の二つが存在する。なお、上記給水水位は7kgが定格容量の機種におけるものであって、7.5kg及び8kgの定格容量の機種では、上記10段階の給水水位のうちの53Lが、それぞれ57L及び59Lに変更になる。
【0035】
本洗濯機における負荷量検知方法について概略的に説明する。負荷量検知処理が開始されると、制御部30は、まずモータ駆動部35を介してモータ7を所定のパターンで駆動し、これによりパルセータ6を回転させる。図10(a)はこのときのモータ7の駆動パターン(以下「第1の駆動パターン」という)を示す模式図である。即ち、第1の駆動パターンでは、[0.5秒右方向ON−0.5秒OFF−0.5秒左方向ON−0.5秒OFF]の2秒を一周期とし、これを三周期繰り返す。また、このときのモータON時の回転速度の目標値は9.5rpsとする。このようなモータ7の回転に応じてパルセータ6は左右に反転回転する。モータOFF時にはモータ7は惰性で回転したあと停止するから、こうした惰性回転期間にパルス発生器37で発生するパルス信号をパルスカウンタ34により積算し、パルス計数値w1を得る。負荷量が大きいほどパルセータ6の回転に対する摩擦が大きくなるため、パルス計数値w1は小さな値となる。
【0036】
図5は上述のようにしてパルス計数値を求めた場合における負荷量とパルス計数値との対応関係を示す一例である。L1が負荷量と計数値との対応関係を示す曲線であり、基準値A1、A2’はこの曲線L1上で所定負荷量(つまり給水水位)に対応する計数値である。ここでは、パルス計数値w1を基準値A1及びA2’と比較し、w1≧A1である場合には給水水位を14Lに決定する。A1>w1>A2’である場合には、給水水位は14Lと23Lとの間で、後述のようにパルス計数値w1の比例配分によって決められる。
【0037】
上記第1の駆動パターンでは回転速度が比較的低めに設定されているため、モータON時の騒音は小さく静音化には有利である。しかしながら、起動トルクが小さいため、負荷量が大きくなると0.5秒間のモータON時に回転速度が実際には9.5rpsまで達しなかったり、甚だしくはパルセータ6が回転しないという場合もある。そのため、負荷量とパルス計数値との関係が図5中に曲線L1’で示したようになることもあり、多量負荷を正確に判定することが極めて困難になる。そこで本実施例の洗濯機では、負荷量が大きいと推定される場合には、モータ7の駆動パターンを変更している。
【0038】
即ち、w1≦A2’である場合にはパルス計数値w1を用いず、制御部30はモータ駆動部35を介してモータ7を図10(b)に示す駆動パターン(以下「第2の駆動パターン」という)で駆動し、これによりパルセータ6を回転させる。このとき、回転速度は17rpsであって、[1秒右方向ON−0.5秒OFF−1秒左方向ON−0.5秒OFF]の3秒の一周期のみである。このように駆動したときの惰性回転期間のパルス信号をパルスカウンタ34により積算し、パルス計数値w2を得る。図6はこのようにしてパルス計数値を求めた場合における負荷量とパルス計数値との対応関係を示す一例である。L2が負荷量と計数値との対応関係を示す曲線であり、基準値A2〜A10はこの曲線L2上で所定負荷量(つまり給水水位)に対応する計数値である。
【0039】
これにより、上記計数値w2を用いて23L以上の水位を判定する。即ち、基準値A2〜A10を参照して、該計数値w2に対する水位が何れの範囲に相当するかを調べる。例えばA5<w2<A6であるとすると、図3及び図6に示すように、水位は36Lと39Lとの間であると決められる。更に、その間ではパルス計数値w2の比例配分によって水位が決められる。即ち、水位Qは次式で求まる。
Q=[(w2−A6)/(A5−A6)]×(39−36)+36
このようにしてパルス計数値w2に対応して無段階(例えば1L単位)で給水水位が決定される。なお、上述の14L〜23Lの間の水位も同様の方法で決められる。
【0040】
このように上記基準値は負荷量、更には給水水位を決定する際の参照データであり、この基準値が不正確であると、洗濯物の量に応じた適切な水位までの給水が行えない。基準値の不正確さは、大別して、工場での製造段階におけるばらつき、例えばVベルト9の張りの強さのばらつき等の初期要因によるものと、ユーザが長期間使用したことにより生じるVベルト9の弛みなどの経時劣化によるものとがある。前者は、工場出荷前の調整・検査の段階で校正することが可能であり、一方、後者は、例えばサービス担当者(或いは場合によってはユーザ自身)が通常の洗濯時とは異なる特殊な操作により校正することができる。何れにしても、この洗濯機では、基準値を書換え可能なEEPROM33に格納しておき、後述するような基準値校正処理を実行することにより、その基準値を自動的に書き換えるようにしている。
【0041】
以下の説明では特に工場での調整・検査の段階での校正作業に関して述べるが、基本的な処理は一般家庭での校正作業でも同一である。
後述のような基準値校正処理が行われる以前の初期段階には、EEPROM33には実験的に妥当であると考えられる初期基準値(同一機種の全ての洗濯機に対して同一の値)が格納されている。この初期基準値はVベルト9の張りの強さ等に関して最も標準的な状態を想定して決められている。従って、各洗濯機がそのような標準状態であれば、基準値を書き換える必要はない。しかしながら、製造段階におけるばらつきを考えてみると、例えばVベルト9の張りの強さは全ての洗濯機に対して同一にすることは実質上不可能であるから、初期的にも或る程度のばらつきを見込む必要がある。Vベルト9の張りが強い場合にはモータ7の負荷は大きいから、惰性回転期間は短くパルス計数値は小さくなる。逆にVベルト9の張りが弱い場合にはモータ7の負荷は小さいから、惰性回転期間は長くパルス計数値は大きくなる。このようにVベルト9の張りの強弱に応じて同一負荷量に対する基準値を変更しておく必要がある。
【0042】
図7は本実施例の洗濯機における基準値校正処理の手順を示すフローチャートである。
制御部30は操作部38で所定のキー操作がなされたか否かを判定し(ステップS1)、所定キー操作がなされていない場合には、他のキー操作がなされたか否かを判定する(ステップS2)。他のキー操作が行われた場合にはそれに応じた他の処理動作を実行する。ユーザが通常の洗濯時に誤って上記所定のキー操作を行ってしまうと好ましくないから、この所定のキー操作は、ユーザが操作を間違ったとしても殆ど起こり得ないような操作であって、且つ片手での操作が不可能なものとしておくとよい。具体的にはこの例では、電源遮断状態から電源投入キー210が押されたあと、引き続いて洗い設定キー213を押したままスタートキー212を三回押す操作としている。
【0043】
ステップS1で上記所定のキー操作がなされたと判定されると、制御部30は基準値校正処理を開始する。即ち、まず水位センサ20から得られる水位検知信号に基づいて、洗濯脱水槽3内の水位が所定以上あるか否かを判定する(ステップS3)。この校正処理は、無負荷状態、つまり洗濯脱水槽3内に洗濯物も水も入っていない状態を想定して行われるので、洗濯脱水槽3内に水が入っていると基準値を正確に算出することができない。そこで、検知可能な最も低い位置に設定された水位以上に水が入っている場合には基準値校正処理が行えないと判断し、エラーコード[EC04]をEEPROM33の所定領域に格納して(ステップS10)処理を終了する。
【0044】
ステップS3で水位が所定以上でないと判定されると、次にモータ駆動部35を介して図10(a)に示したようなパターンでモータ7を駆動し、パルセータ6を左右に反転回転させる。モータON時の回転速度は9.5rpsである。そして、パルスカウンタ34はパルス発生器37で得られるパルス信号を積算し無負荷状態のパルス計数値(以下「無負荷計数値」と称す)W0を求める(ステップS4)。
【0045】
次いでこの無負荷計数値W0が妥当な値であるか否かを検証する。即ち、無負荷計数値W0が異常に小さい場合には、Vベルト9の張りが異常に強過ぎる、或いは、洗濯脱水槽3に洗濯物等が収容された状態で上記動作が実行された等の可能性が高いと判断できる。そこで、無負荷計数値W0が79以下であるか否かを判定し(ステップS5)、W0≦79である場合にはこの無負荷計数値W0を用いて基準値を算出するのは適当でないと判断し、エラーコード[EC02]をEEPROM33の所定領域に格納して(ステップS11)処理を終了する。
【0046】
一方、無負荷計数値W0が異常に大きい場合には、Vベルト9の張りが異常に弱過ぎる、或いはVベルト9が外れている等の可能性が高いと判断できる。そこで、無負荷計数値W0が79よりも大きかった場合には次にW0が196以上であるか否かを判定し(ステップS6)、W0≧196である場合にはこの無負荷計数値W0を用いて基準値を算出するのは適当でないと判断し、エラーコード[EC03]をEEPROM33の所定領域に格納して(ステップS12)処理を終了する。
【0047】
無負荷計数値W0が196よりも小さい場合には、この無負荷計数値W0を基に所定の計算式により複数の基準値を算出する(ステップS7)。この算出方法については後に詳述する。基準値が算出されると、演算エラーがあるか否か、具体的には各基準値があり得ない値(例えば極性がマイナスである等)でないかどうかを調べ(ステップS8)、演算エラーが有ると判断できる場合にはエラーコード[EC04]をEEPROM33の所定領域に格納して(ステップS13)処理を終了する。ステップS8にて演算エラーが無いと判断されると、EEPROM33の所定領域にそれまでに格納されていた基準値を新たに算出された基準値に書き換えて(ステップS9)処理を終了する。
【0048】
なお、上記のようなデータの書換えが実行された場合でも、初期基準値はEEPROM33の他の領域に消去不可に保持されている。これは、特殊な操作により、何時でも基準値を初期状態に戻せるようにするためである。具体的には、念入りコース指定キー215を押しながら電源投入キー210を押し、引き続いて念入りコース指定キー215を押しながらスタートキー212を三回押す。このような操作が行われると、制御部30は初期基準値を読み出してきて、既に書き換えられている基準値をこれに書き換える。これにより、何らかの理由で誤って不適切な基準値をEEPROM33に書き込んでしまっても、一旦初期基準値に戻すことができる。
【0049】
EEPROM33に上述したようなエラーコードが格納されている場合、一旦電源切断キー211が操作されて電源が遮断されたあと、電源投入キー210が操作されて電源が投入された時点で、制御部30はこのエラーコードを読み出して表示器216に表示させる。従って、この表示を見れば、どのような不具合にのために基準値の更新が行われなかったのかを確認することができる。
【0050】
また、この洗濯機では、EEPROM33に格納されている全てのデータの総和がサムデータとしてEEPROM33の所定領域に格納されている。洗濯機の機種が相違すれば何らかのデータが相違するため、基準値が初期基準値である場合、結果としてサムデータは機種毎に異なる値となっている。一例としては、7kg、7.5kg及び8kgの定格容量を有する各機種のサムデータはそれぞれ[1A5B]、[1A74]及び[1A75]となっている。従って、このサムデータをチェックすることにより機種を識別可能である。
【0051】
上述したように基準値校正処理を実行した場合には、制御部30は基準値を除いた他のデータの合計値をサムデータとしてサムデータの書換えを行う。これにより、例えば上記7kg、7.5kg及び8kgの定格容量を有する各機種の洗濯機のサムデータは、それぞれ[170C]、[1725]及び[1726]に書き換えられる。電源遮断状態から電源投入キー210が押され、引き続いて水量設定キー214を押しながらスタートキー212が三回押されると、制御部30はEEPROM33からサムデータを読み出して表示器216に表示させる。このようにして作業者(又はサービス担当者等)がサムデータの値を見ることにより、基準値校正処理が実行されたか否かを確認することができる。勿論、このサムデータから機種を判別することもできる。
【0052】
以上のように本実施例の洗濯機では、特殊なキー操作が行われると自動的に無負荷計数値W0が測定され、その無負荷計数値W0に基づいて基準値が適当に書き換えられる。従って、Vベルト9の張りの強さやそのほかの様々なばらつき要因に対する影響を軽減して、正確な負荷量検知ひいては給水水位の設定が行える。
【0053】
次に、この第1実施例の洗濯機における、無負荷計数値W0を基に基準値を算出する方法について説明する。この方法では、Vベルト9の張りの強さ等がばらついた多数の洗濯機に関して実際に負荷量とパルス計数値との関係を予め調べ、その結果に基づいて、無負荷計数値W0から各基準値が最も適切に算出されるような計算式を導出し、この計算式を用いて無負荷計数値W0から各基準値を求めるようにしている。
【0054】
図8及び図9は負荷量とパルス計数値との関係を実測した結果を示すグラフである。図8は第1の駆動パターンによるモータ制御を行った場合、図9は第2の駆動パターンによるモータ制御を行った場合であり、何れも、Vベルト9の張りの強さを7.5mm/2kg(2kgの荷重を加えたときの伸びが7.5mm)と9mm/2kgとした、それぞれ10台の洗濯機について、負荷量を0.5kg、1kg、2kg、3kg、4kg、5kg、6kg、7kgとしたときのパルス計数値の平均値と最大値とをプロットし、そのプロット点から多項式で求めた曲線を描出している。図8及び図9から特にわかることは、負荷量が小さい場合にはVベルト9の張りの強さの相違によるパルス計数値の相違が顕著であるが、負荷量が大きくなるとVベルト9の張りの強さの影響は殆ど現れなくなる、ということである。無負荷計数値W0は図8でいうと負荷量=0kgの縦線上に存在し、Vベルト9の張りの強さの相違によるパルス計数値の相違が最も顕著に現れる部分である。
【0055】
このようなことから、無負荷計数値W0に基づいて各負荷量(ひいては各給水水位)に対する基準値を決める場合、無負荷計数値W0が大きいほど図8及び図9に示したような曲線の傾きが全体的に急峻になるように計算式を作る必要があることがわかる。換言すれば、無負荷計数値W0が大きいほど、無負荷時(又は少量負荷時)のパルス計数値と多量負荷時のパルス計数値との差が大きくなるようにする必要がある。ここでは、上記実験結果を考慮して次のようにして計算式を導出している。
【0056】
洗いや濯ぎのための給水水位を決定する場合、或る負荷量に対して水が多過ぎる方向にずれがある場合には若干の水を無駄に使用する程度の問題が生じるだけであるが、水が少な過ぎる方向にずれがあると、洗いや濯ぎが十分に行えなくなるのみならず、洗濯物の布傷みの一因ともなり得る。そこで、ばらつきがあっても或る負荷量に対して水が少な過ぎることがないように基準値を決めるものとする。そこで、まず、14Lの水位に対する基準値A1を無負荷計数値W0とする。
A1=W0 …(1)
【0057】
無負荷計数値W0と、14Lの水位及び23Lの水位に対するパルス計数値の差(以下、C1(L)の水位及びC2(L)の水位に対するパルス計数値の差をP(C1-C2)と記す)との関係を調べてみると図11に示すようになり、比例関係として近似できることがわかる。そこで、図11中に示す直線より、次の関係式が求まる。
P(14-23)=0.24×W0−18 …(2)
【0058】
また、無負荷計数値W0と、第2の駆動パターンでモータ7を駆動させてパルス計数値を測定したときの23Lの水位に対するパルス計数値との関係を調べてみると図12に示すようになり、これも比例関係として近似できることがわかる。そこで、図12中に示す直線より、次の関係式が求まる。
A2=0.37×W0+52 …(3)
【0059】
更に、無負荷計数値W0と、第2の駆動パターンでモータ7を駆動させてパルス計数値を測定したときの23Lの水位及び53Lの水位に対するパルス計数値の差P(23-53)との関係を調べてみると、図13に示すようになり、これも比例関係として近似できることがわかる。そこで、図13中に示す直線より、次の関係式が求まる。
P(23-53)=0.3×W0+24 …(4)
【0060】
図6に示すように、23L〜53Lの各水位に対し、隣接する二つの水位に対するパルス計数値の差は負荷量が大きくなるほど縮小するから、上記(4)式で算出されたP(23-53)にそれぞれ所定定数を乗じて隣接水位間のパルス計数値の差を求めるものとする。この定数は実験的に、具体的には、Vベルト9の張りの強さを7.5mm/2kgと9mm/2kgとした、それぞれ5台の洗濯機について実際に算出された結果を平均して算出した。その結果、次の(5)〜(12)式が得られる。
P(23-29)= P(23-53)×0.17 …(5)
P(29-33)= P(23-53)×0.16 …(6)
P(33-36)= P(23-53)×0.14 …(7)
P(36-39)= P(23-53)×0.17 …(8)
P(39-43)= P(23-53)×0.20 …(9)
P(43-47)= P(23-53)×0.11 …(10)
P(47-51)= P(23-53)×0.11 …(11)
P(51-53)= P(23-53)×0.07 …(12)
ここで、P(23-53)に乗じられる定数の総和は本来「1」になる筈であるが、ここでは、計算上、P(23-53)に乗じたあとの結果において小数点以下を切り捨てるという演算処理を行うため、その端数の切り捨てによる影響を予め考慮して上記総和は1よりも大きくなっている。
【0061】
上記(1)式及び(2)より、23Lの水位に対する基準値(第1の駆動パターンに対する値)A2'は次のように得られる。
A2'=A1−P(14-23)=W0−(0.24×W0−18)
また、(3)〜(12)式より、基準値A3〜A10が求まる。例えばA3は、
Figure 0003819649
である。このようにして、無負荷計数値W0より全ての基準値A1、A2、A2’、A3〜A10を算出することができる。この方法によれば、負荷量が大きくなるほどパルス計数値の変化量が小さくなる、つまり接線の傾きが緩やかになる曲線を描くことができるような各基準値を求めることができる。
【0062】
既に述べたように、工場での調整・検査工程においては上記の基準値校正処理が実行されるが、具体的には例えば図14に示すような手順で行われる。ここで調整対象となる洗濯機はベルトコンベア等の搬送手段により自動的に搬送され、搬送手段に沿って適宜の位置に配置されたロボットによりキー操作等の外部からの動作が実行される。
【0063】
調整対象の洗濯機がキー操作用のロボットの位置に到達すると、該ロボットが上述した所定の操作、つまり電源投入キー210を押した(ステップS21)あとに洗い設定キー213を押しながらスタートキー212を三回押す(ステップS22)。すると、上述したように自動的に基準値校正モードに移行し、EEPROM33の内容が書き換えられる(ステップS23)。既に説明したようにモータ7を駆動させてパルス信号を計数するために6秒を要するから、基準値校正モードが終了するまでには7秒程度の時間が必要である。このような処理を行う間、搬送手段は当該洗濯機を移送しており、処理が終了する直前又は直後に洗濯機は次のロボットの設置位置に到達する。この次のロボットは上蓋を開閉させるロボットであり、上蓋角度検査モードを実行する(ステップS24)。具体的には、上蓋を開いて所定角度になったときに安全スイッチが作動するか否かをチェックする。
【0064】
上蓋角度検査は、この検査モードに移行するためにキー操作を行うという動作と、上蓋を開閉するという二段階の動作が必要であるため、二台のロボットを使用する必要がある。二台のロボットは或る程度の間隔を離して設置する必要があるため、従来、その二台のロボットの間を洗濯機が移送される時間はいわばデッドタイムであった。しかしながら、上述のような調整・検査方法とすれば、従来無為に経過していた時間に基準値校正処理を行うことができるので、基準値校正処理という新規の作業が調整・検査工程に追加されたとしても製造ラインの効率を落とさずに済む。
【0065】
勿論、上述したような基準値校正処理は、一般家庭においてもユーザ自身又はサービス担当者の操作に応じて適宜行わせることができる。例えば、少量の洗濯物を収容したにも拘わらず給水水位が高く設定されてしまう場合、逆に多量の洗濯物を収容したにも拘わらず給水水位が異常に低い場合には、負荷量判定の基準値が洗濯機の実状(つまり実際のVベルト9の張りの状態等)に適合しなくなっている可能性があるから、洗濯物や水を入れない無負荷状態で上述のような操作を行えば、基準値が実状に合った値に書き換えられ、その後は正確な負荷量検知(給水水位の設定)が行えるようになる。
【0066】
[第2実施例]
次いで、本発明の第2実施例による洗濯機を説明する。この洗濯機でも、適宜の時点で所定の操作を行うことにより、EEPROM33に格納されている負荷量判定のための基準値がその時点での洗濯機の状態に合わせて書き換えられるようになっている。この洗濯機の基本的な構成は第1実施例と同様であるので、以下の説明では図1、図2、図4に示した符号をそのまま利用する。但し、この洗濯機では、特にユーザ自身の操作により基準値の更新作業が容易であるように、操作パネル21の一部に基準値校正処理を指示するための校正動作指示キーが設けられている。
【0067】
図15はこの実施例の洗濯機における基準値校正処理の手順を示すフローチャート、図16は基準値校正処理方法を説明するためのグラフである。
電源投入キー210が操作された(ステップS31)あとに校正動作指示キーが操作されると(ステップS32)、制御部30はモータ駆動部35を介してモータ7を短時間駆動してパルセータ6を回転させ、その惰性回転期間中のパルス信号をパルスカウンタ34により計数する(ステップS33)。この校正処理は洗濯脱水槽3内に洗濯物も水も入っていない無負荷状態を想定している。このようにして得られた無負荷計数値W0を基に、次のように基準値の算出を行う。
【0068】
EEPROM33には、負荷量とパルス計数値との関係を表す三種類のデータが予め格納されている。即ち、図16に示すように、Vベルト9の張りが標準状態である場合の負荷量とパルス計数値との関係を示す曲線L1を構成する複数のデータ、具体的には1kg毎の負荷量に対するパルス計数値を示すデータN10〜N18と、Vベルト9の張りの個体間のばらつき及びVベルト9の弛む限界状態を想定した場合の負荷量とパルス計数値との関係を示す曲線L2を構成する複数のデータN20〜N28と、Vベルト9の張りの個体間のばらつき及びVベルト9の締まっている限界状態を想定した場合の負荷量とパルス計数値との関係を示す曲線L3を構成する複数のデータN30〜N38とである。つまり、曲線L2と曲線3とで挟まれた領域が正常な負荷量判定が可能な範囲であって、これを逸脱する状態はいわば洗濯機が故障した状態であると看做す。従って、洗濯機が正常状態であれば、無負荷計数値W0は図16中のN20とN30との間に収まっている筈である。
【0069】
いま、図16に示すようにW0がN10とN20との間であった場合、負荷量1kg〜8kgに対応して求めるべき基準値W1〜W8は、N11〜N18とN21〜N28との間でN20−N10に対するΔN1(又はΔN2)の比率に応じてそれぞれ決まるようにする。例えば、負荷量1kgに対する基準値W1は次の式で求まる。
Figure 0003819649
これをn=1〜8(整数)に拡張し、負荷量n(kg)に対する基準値Wnを求めると、
Figure 0003819649
となる。
一方、W0がN30とN10との間であった場合も同様に、負荷量n(kg)に対する基準値Wnは、
Figure 0003819649
となる。
【0070】
図15に戻って説明すると、ステップS33で無負荷計数値W0が得られたあと、このW0がN10以上N20以下の範囲であるか否かを判定する(ステップS34)。この範囲に入っている場合には、上記(13)式に基づいて基準値W1〜W8を算出し(ステップS35)、その値をEEPROM33の所定領域に格納する(ステップS38)。ステップS34でW0がN10以上N20以下の範囲外であると判定されると、次にW0がN30以上N10未満の範囲であるか否かを判定する(ステップS36)。この範囲に入っている場合には、上記(14)式に基づいて基準値W1〜W8を算出し(ステップS37)、その値をEEPROM33の所定領域に格納する(ステップS38)。ステップS36でW0がN30以上N20未満の範囲外である場合には、この洗濯機には何らかの不具合があるか、或いは無負荷計数値W0の測定自体が異常である(例えば洗濯脱水槽3内に洗濯物や水が入っている等)と判断し、表示器216にエラー表示を行い(ステップS39)処理を終了する。
【0071】
而して、この第2実施例の洗濯機においても、ユーザやサービス担当者などが所定のキー操作を行うことにより、自動的に無負荷計数値が測定され、その無負荷計数値に基づいて各負荷量に対する基準値が計算され、EEPROM33に格納されている基準値が更新される。従って、この処理以降、負荷量検知が正確に行えるようになる。
【0072】
なお、上記説明では、第1実施例とは異なり負荷量検知時のモータ7の回転速度を負荷量に応じて変えるようになっていないが、モータ7の回転速度を負荷量に応じて変える構成とした場合でも同様の手法が利用できることは容易に想到し得る。
【0073】
[第3実施例]
上記第1及び第2実施例は、両者共に何らかのキー操作に応答して自動的に無負荷状態のパルス計数値を測定し、それを基に基準値を書き換えるものである。これに対し第3実施例による洗濯機は、特別なキー操作を要さず、必要と推定される場合に負荷量検知のための基準値を自動的に変更するものである。
【0074】
図1に示したようなベルト駆動式の洗濯機の場合、長い期間でみれば上述したように経時劣化によってVベルト9は次第に弛んでゆくが、もっと短い期間でみた場合、初期的には動作や状態が安定せず、例えばVベルトの張りの強さも洗濯毎に上下したりするが、或る程度の期間を経過するといわゆる馴染みが生じ、Vベルト9の張りも安定した状態となる。そこで、この第3実施例の洗濯機では、予め工場出荷時の状態に合わせた負荷量判定のための基準値aと、或る程度の期間使用してVベルト9の張りなどの機械的要因が安定した状態を想定した場合の基準値bとの両方を予めEEPROM33に格納しておき、工場出荷時点では基準値aを利用して負荷量判定を行うようにプログラムしておく。
【0075】
図17はこのような二種類の基準値a,bを示すグラフである。初期の基準値aは、図17中にL3で示される曲線上において、例えば1kg毎の各負荷量に対する値であり、基準値bは同じく図17中にL4で示される曲線上において、例えば1kg毎の各負荷量に対する値である。従って、基準値aを用いて負荷量の判定が行われる場合には、ほぼ曲線L3に応じてパルス計数値から負荷量(又はそれに対応した給水水位)が決定され、基準値bを用いて負荷量の判定が行われる場合には、ほぼ曲線L4に応じてパルス計数値から負荷量(又はそれに対応した給水水位)が決定されることになる。
【0076】
図18は第3実施例の洗濯機における洗濯開始直後の制御フローチャートであり、特徴的な基準値変更処理を含む。電源投入キー210が操作されて、例えば適宜の運転コースが選択されたあとスタートキー212が押されると、制御部30は上述したように、通常の洗濯行程の一環として負荷量検知動作を実行する(ステップS41)。即ち、所定の駆動パターンに従いモータ駆動部35を介してモータ7を短時間駆動してパルセータ6を回転させ、それによる惰性回転期間中のパルス信号をパルスカウンタ34により計数する。
【0077】
このような動作と同時に、EEPROM33の所定領域に格納してある負荷検知実行回数データBを読み出して「1」を加算して新たなBとする(ステップS42)。そして、その値を再度EEPROM33の同領域に書き込む(上書きする)と共に(ステップS43)、その負荷検知実行回数データBが予め定めた値Z以上であるか否かを判定し(ステップS44)、もしB≧Zである場合には負荷量判定のための基準値を上記基準値aから基準値bに変更する(ステップS45)。ここで、ZはVベルト9の張り等が安定するまでの使用回数を想定して決められており、例えば300〜400とするとよい。
【0078】
而して、負荷検知実行回数データBがZを越えるまでは初期の基準値aを用い、負荷検知実行回数データBがZを越えた以降は基準値bを用いて負荷量の判定(又は給水水位の決定)が行われる(ステップS46)。従って、この第3実施例の洗濯機によれば、Vベルト9等が十分に馴染んで動作が安定した頃に、自動的に負荷量判定のための基準値が変更されて、より精度の高い安定した負荷量検知が行えるようになる。なお、負荷量検知の実行回数を積算するほかに、当然のことながら、洗濯の運転実行回数を積算してもよく、更に好ましくは運転時間を積算すれば、動作が安定する時期をより正確に知ることができる。
【0079】
上記第1〜第3実施例は単に一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行なえることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例による洗濯機の構成を示す縦断面図。
【図2】 第1実施例の洗濯機の要部の電気系構成図。
【図3】 この洗濯機における給水水位とそれに対する判定基準値の関係を示す模式図。
【図4】 この洗濯機の操作パネルの外観図。
【図5】 負荷量検知処理時における負荷量とパルス計数値との関係の一例を示すグラフ。
【図6】 負荷量検知処理時における負荷量とパルス計数値との関係の一例を示すグラフ。
【図7】 第1実施例の洗濯機における基準値校正処理を示すフローチャート。
【図8】 Vベルトの張りの強さのばらつきがある場合の負荷量とパルス計数値との関係を示すグラフ。
【図9】 Vベルトの張りの強さのばらつきがある場合の負荷量とパルス計数値との関係を示すグラフ。
【図10】 負荷量検知処理時のモータの駆動パターンを示す図。
【図11】 無負荷計数値W0と、14L及び23Lの各水位に対するパルス計数値の差との関係を示すグラフ。
【図12】 無負荷計数値W0と23Lの水位に対するパルス計数値との関係を示すグラフ。
【図13】 無負荷計数値W0と、23L及び53Lの各水位に対するパルス計数値の差との関係を示すグラフ。
【図14】 工場の調整・検査時における基準値校正処理の手順を示すフローチャート。
【図15】 本発明の第2実施例による洗濯機の基準値校正処理を示すフローチャート。
【図16】 第2実施例の洗濯機における基準値校正処理方法を説明するためのグラフ。
【図17】 本発明の第3実施例による洗濯機における基準値変更処理を説明するためのグラフ。
【図18】 第3実施例の洗濯機の洗濯開始直後の制御フローチャート。
【符号の説明】
2…外槽
3…洗濯脱水槽
6…パルセータ
7…モータ
8…モータプーリ
9…Vベルト
10…主プーリ
11…動力切換機構
20…水位センサ
21…操作パネル
210…電源投入キー
211…電源切断キー
212…スタートキー
213…洗い設定キー
214…水量設定キー
215…念入りコース指定キー
216…表示器
30…制御部
33…EEPROM
34…パルスカウンタ
35…モータ駆動部
37…パルス発生器

Claims (3)

  1. パルセータを回転駆動させるモータと、該モータの回転に同期したパルス信号を発生するパルス発生手段と、モータを短時間駆動する際及び/又は駆動したあとのパルセータの回転に応じた前記パルス信号を計数する計数手段と、複数の負荷量に対してそれぞれ定められた基準値を用いて前記計数手段による計数値から負荷量を判定する判定手段と、を含んで構成された負荷量検知手段を備えた洗濯機において、
    a)前記複数の基準値を書換え可能に保持する記憶手段と、
    b)所定のキー操作が為されたときに開始される基準値校正処理において、前記負荷量検知手段を作動させてパルス信号の計数値を求める無負荷計測手段と、
    c)前記基準値校正処理において、洗濯脱水槽の底部近傍に定められた所定水位以下の水位であるか否かを検知する水位検知手段と、
    d)前記水位検知手段により所定水位を越える水位であることが検知されない場合には、該無負荷計測手段で得られた無負荷計数値から新規の基準値を算出し、前記記憶手段に格納されている基準値をその新規の基準値に書き換え、一方、前記水位検知手段により所定水位を越える水位であることが検知された場合には、基準値を書き換えない基準値更新手段と、
    を備えることを特徴とする洗濯機。
  2. パルセータを回転駆動させるモータと、該モータの回転に同期したパルス信号を発生するパルス発生手段と、モータを短時間駆動する際及び/又は駆動したあとのパルセータの回転に応じた前記パルス信号を計数する計数手段と、複数の負荷量に対してそれぞれ定められた基準値を用いて前記計数手段による計数値から負荷量を判定する判定手段と、を含んで構成された負荷量検知手段を備えた洗濯機において、
    a)前記複数の基準値を書換え可能に保持する記憶手段と、
    b)所定のキー操作が為されたときに前記負荷量検知手段を作動させてパルス信号の計数値を求める無負荷計測手段と、
    c)該無負荷計測手段で得られた無負荷計数値が異常に大きい所定値以上又は異常に小さい所定値以下であると判断されなければ、この無負荷計数値から新規の基準値を算出し、前記記憶手段に格納されている基準値を該新規の基準値に書き換え、一方、前記無負荷計数値が異常に大きい所定値以上又は異常に小さい所定値以下であると判断されれば、基準値を書き換えない基準値更新手段と、
    を備えることを特徴とする洗濯機。
  3. 所定のキー操作が為されたにも拘わらず基準値の書換え動作を行わなかった場合には、所定時点でその旨を報知することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
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