JP3819323B2 - ホール素子及び電気量測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホール素子の出力電圧が入力電流あるいは磁界に比例することを利用した電流計、磁束計、角変位計および出力電圧が入力電流と磁界の積に比例することを利用した乗算器、電力計、位相計などの電気量測定装置に使用するホール素子の特性改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホール素子に電流を流し、これと直交する方向に磁界を作用させると電流と磁界の方向を含む面に直交する方向にホール起電力が発生することが知られている。このような半導体のホール効果を利用した各種の電気量測定装置が広く用いられている。以下、このようなホール素子について図7を用いて説明する。同図(a)はホール素子の平面図であって、磁界が加えられていないときは電流入力電極PI1 ,PI2 間をキャリアが直進するが、磁界が加えられるとローレンツ力により進路が曲げられてキャリアは斜行するようなる。この結果、両側面での電荷が不平衡になって生じたホール電界が線積分された結果がホール起電力として電圧出力電極PV1 ,PV2 間に発生する。このとき生じたホール電界が外部から加えられている磁界とは反対方向のローレンツ力をキャリアに及ぼすので、キャリアは定常状態としては直進するようになる。しかし、キャリアはすべて同じ速度で移動せずにある速度分布をもっているので、平均速度以外のキャリアはローレンツ力がつり合わず、電流通路が曲げられて長くなるために電気抵抗が増加する。この電気抵抗の変化は磁界強度や電流値に依存するほか、製造過程に基づく残留歪み、温度変化、経年変化などによって発生し、オフセット電圧として現れる。例えば、特開平6−174765号のように、ゲート電極PG1 ,PG2 に外部から所定の電圧を印加することによりキャリアの通路を修正してオフセット電圧を消去することができる。4はオフセット補償回路であって、例えば、特開平6−174765号のように、被測定系の電圧極性を検出して減算回路3から得られるホール素子出力電圧を、その極性が常に被測定電圧の極性と一致するように切り換えて積分することによりオフセット電圧を取り出し、オフセット電圧が零になるようにゲート電極PG1 ,PG2 に電圧を印加することによりオフセット電圧を消去する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のホール素子では、オフセット電圧を補償すべくオフセット補償回路からゲート電極PG1 ,PG2 に所定の電圧が印加されても、電流入力電極PI1 ,PI2 の電位が被測定電源電圧の変動に伴って変動するので、ホール素子基板とゲート電極PG1 ,PG2 との相対的電位差が被測定電源電圧の変動に同期して変動する。表1は、例えば、ゲート電極PG1 の電位vg が−2Vのとき、電流入力電極PI2 の電位v2 を0Vに固定し、電流入力電極PI1 の電位v1 が+1Vから−1Vに変わったときのホール素子基板とゲート電極PG1 の電位差が−2.2Vから−1.8Vに変化することを示したものである。
【0004】
【表1】
Figure 0003819323
いま、電流入力電極PI1 ,PI2 間の距離を1とするとき、ゲート電極PG1 と電流入力電極PI2 間の距離をa(0<a<1)で表すと、ゲート電極PG1 直下のホール素子基板電位v0 およびホール素子基板とゲート電極PG1 との電位差vG は、それぞれ(1),(2)式で表すことができる。
【0005】
0 =av1 +(1−a)v2 (1)
G =vg −v0 (2)
表1の例はa=0.2の場合である。このように電流入力電極PI1 ,PI2 に印加される電圧によってホール素子基板とゲート電極PG1 との電位差vG が変動するので、オフセット電圧を補償することができないという問題があった。
【0006】
また、半導体製造時のマスクパターンのずれに伴うホール素子の特性のばらつき、および製造後の機械的なひずみによるピエゾ効果のためにオフセットが発生し、電気抵抗のばらつきが生じるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題を解決するためになされたもので、電流入力電極に印加される電圧によってホール素子基板とゲート電極との電位差が変動しないホール素子と特性のばらつきが少ないホール素子を用いた電気量測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、半導体基板上に形成された一対の電流入力電極と、一対の電圧出力電極を有するホール素子において、前記一対の電流入力電極間に形成された少なくとも1個以上のゲート電極と、このゲート電極に接近して設けられ、前記半導体基板電位を検出するための少なくとも1個以上の電位検出電極とを備えたことを要旨とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のホール素子を同一の半導体基板上に、点対称の位置に複数個形成したことを要旨とする。
【0010】
請求項1記載の発明はこのような手段を講じたことにより、ゲート電極近傍のホール素子基板電位を検出することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明はこのような手段を講じたことにより、半導体製造時のホール素子の幾何学的配置に伴う誤差を減少させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は第1の発明のホール素子の一実施の形態における構造を示す平面図である。同図において、1aはホール素子、PI1 ,PI2 は半導体基板上に形成された一対の電流入力電極、PV1 ,PV2 は電流の流れ方向に直交する位置に同じ半導体基板上に形成された一対の電圧出力電極、PG1 ,PG2 は電流入力電極PI1 ,PI2 間に形成されたゲート電極、PS1 はゲート電極PG1 ,PG2 に接近して設けられた半導体基板上に形成した電位検出電極である。
【0013】
したがって、以上のように構成されたホール素子では、電位検出電極PS1 の電位からゲート電極PG1 ,PG2 近傍の半導体基板電位を知ることができる。
【0014】
図2は第2の発明のホール素子の一実施の形態における構造を示す平面図である。同図において、1bはホール素子、PI1 ,PI2 は半導体基板上に形成された一対の電流入力電極、PV1 ,PV2 は電流の流れ方向に直交する位置に同じ半導体基板上に形成された一対の電圧出力電極、PG1 ,PG2 は電流入力電極PI1 ,PI2 間に形成されたゲート電極である。一対の電流入力電極のうちゲート電極PG1 ,PG2 の近傍に設けられている方の電流入力電極PI2 はゲート電極PG1 ,PG2 に接近し、かつ、ゲート電極PG1 ,PG2 を囲むように凹形形状に形成されている。
【0015】
したがって、以上のように構成されたホール素子では、ゲート電極PG1 ,PG2 の電位と電流入力電極PI2 の電位をほぼ同電位に保持することができる。
【0016】
図3は第1の発明のホール素子を用いた電気量測定装置の一実施の形態の構成を示すブロック構成図であって、電力計として使用する場合の一例である。同図において、1aは第1の発明のホール素子であって、被測定系の電流は磁界強度に変換されて同図の紙面と直交する方向に磁界Ba として加えられる。2は被測定系の電源電圧を電流入力端子PI1 へ印加するために電圧変換とインピーダンス変換をする入力回路、3は電圧出力電極PV1 ,PV2 から出力されるホール起電力の同相分を除去して差分出力を得る減算回路である。4は被測定系の電圧極性を検出して減算回路3から得られるホール起電力を、その極性が常に被測定系の電源電圧の極性と一致するように切り換えて積分することによりオフセット電圧を取り出し、オフセット電圧が零になるようにゲート電極PG1 に電圧を印加するオフセット補償回路である。5は電位検出電極PS1 の電位を接地電位に保持するように電流入力電極PI2 の電位を制御する電極電位制御手段として使われている演算増幅回路である。
【0017】
次に、以上のように構成された電力計の動作について説明する。被測定系の電流は磁界強度に変換されて同図の紙面と直交する方向に磁界Ba として加えられる。被測定系の電源電圧は入力回路2によって電圧変換とインピーダンス変換が行われ、電流入力端子PI1 へ印加される。被測定系の電流と電圧の積に比例するホール起電力が電圧出力電極PV1 ,PV2 から出力され、減算回路3によりホール起電力の同相分が除去されて出力端子TOUT およびオフセット補償回路4へ出力される。オフセット補償回路4は被測定系の電圧極性を検出して減算回路3から得られるホール起電力の極性が常に被測定系の電源電圧の極性と一致するように切り換えて積分することにより、オフセット電圧に比例する直流電圧を取り出す。そして、このオフセット電圧に比例する電圧が零になるようにゲート電極PG1 へ印加する電圧を制御する。しかし、ゲート電極PG1 直下のホール素子基板部の電位は電流入力電極PI1 の電位とPI2 の電位を比例配分した(1)式で与えられるv0 であるから、電流入力電極PI1 の電位v1 とPI2 の電位v2 の変動に伴って変化する。したがって、ホール素子基板とゲート電極PG1 との電位差vG を所定の値に設定するためにはゲート電極PG1 直下のホール素子基板部の電位を一定値に保持する必要がある。そこで、演算増幅回路5によりゲート電極PG1 に近接する電位検出電極PS1 の電位を一定値(本実施の形態では接地電位)に保持するように電流入力電極PI2 の電位を制御することにより、被測定電圧の影響を受けないようにホール素子基板とゲート電極PG1 との電位差vG を所定の値に保持することができるので、オフセット電圧を効果的に消去した電力計を構成することができる。
【0018】
したがって、以上のような実施の形態の構成によれば、被測定系の電源電圧値の如何に関わらず電力値に正しく比例する電圧出力を得ることができる。
【0019】
図4は第2の発明のホール素子を用いた電気量測定装置の実施の形態の構成を示すブロック構成図である。同図において、1bは第2の発明のホール素子、以下、入力回路2、減算回路3、オフセット補償回路4はいずれも図3の同一符号を付した構成要素と同一であり、その動作も図3における上述の説明と同一であるから説明を省略する。本実施の形態ではゲート電極PG1 ,PG2 に接近してゲート電極PG1 ,PG2 を囲むように電流入力電極PI2 を凹形形状に形成しているホール素子1bを用いているので、ゲート電極PG1 ,PG2 の電位と電流入力電極PI2 の電位をほぼ同電位に保持することができる。
【0020】
したがって、このような実施の形態の構成では電流入力電極PI2 の電位を一定値(例えば接地電位)に保持することにより、ゲート電極PG1 ,PG2 直下の電位もほぼ一定値に保持されるので、オフセット電圧の補正を効果的に行った電力計を構成することができる。
【0021】
図5は同一の半導体基板6上に第1の発明の4個のホール素子1a−1,1a−2,1a−3および1a−4を点対称の位置に形成した一実施の形態における構造を示す平面図である。ホール素子1a−i(i=1,2,3,4)の電流入力電極をPI1i,PI2i、電圧出力電極をPV1i,PV2i、ゲート電極をPG1 ,PG2 、電位検出電極をPS1iとするとき、電圧出力端子V1 には4個の電圧出力電極PV1i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続され、同様に、電圧出力端子V2 には4個の電圧出力電極PV2i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。また、電流入力端子I1 とI2 にはそれぞれ4個の電流入力電極PI1i(i=1,2,3,4)および4個の電流入力電極PI2i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。また、電位検出端子S1 には4個の電位検出電極PS1i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。
【0022】
したがって、このような実施の形態の構成では、半導体製造時のマスクパターンのずれに伴うホール素子の特性のばらつき、および製造後の機械的なひずみによる起電力や電気抵抗が相殺されるのでオフセットを減少させることができる。
【0023】
図6は同一の半導体基板7上に第2の発明の4個のホール素子1b−1,1b−2,1b−3および1b−4を点対称の位置に形成した一実施の形態における構造を示す平面図である。ホール素子1b−i(i=1,2,3,4)の電流入力電極をPI1i,PI2i、電圧出力電極をPV1i,PV2i、ゲート電極をPG1i,PG2iとするとき、電圧出力端子V1 には4個の電圧出力電極PV1i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続され、同様に、電圧出力端子V2 には4個の電圧出力電極PV2i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。また、電流入力端子I1 とI2 にはそれぞれ4個の電流入力電極PI1i(i=1,2,3,4)および4個の電流入力電極PI2i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。また、ゲート端子G1 とG2 にはそれぞれ4個のゲート電極PG1i(i=1,2,3,4)および4個のゲート電極PG2i(i=1,2,3,4)がすべて並列に接続されている。
【0024】
したがって、このような実施の形態の構成では、半導体製造時のマスクパターンのずれに伴うホール素子の特性のばらつき、および製造後の機械的なひずみによる起電力や電気抵抗が相殺されるのでオフセットを減少させることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、ゲート電極近傍のホール素子基板電位を検出することができる。
【0026】
また、請求項2記載の発明によれば、ホール素子の特性のばらつき、および機械的なひずみによる起電力や電気抵抗を相殺し、オフセットが少ないホール素子を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明のホール素子の一実施の形態における平面図である。
【図2】第2の発明のホール素子の一実施の形態における平面図である。
【図3】第1の発明のホール素子を用いた電気量測定装置の一実施の形態における構成を示すブロック構成図である。
【図4】第2の発明のホール素子を用いた電気量測定装置の一実施の形態における構成を示すブロック構成図である。
【図5】同一の半導体基板上に第1の発明の4個のホール素子を点対称の位置に形成した一実施の形態における構造を示す平面図である。
【図6】同一の半導体基板上に第2の発明の4個のホール素子を点対称の位置に形成した一実施の形態における構造を示す平面図である。
【図7】従来のホール素子の構造を示す平面図および電気量測定装置のブロック構成図である。
【符号の説明】
1 ホール素子
2 入力回路
3 減算回路
4 オフセット補償回路
5 演算増幅回路
1 ,I2 電流入力端子
1 ,V2 電圧出力端子
1 ,G2 ゲート端子
1 電位検出端子
PI1 ,PI2 電流入力電極
PV1 ,PV2 電圧出力電極
PG1 ,PG2 ゲート電極
PS1 電位検出電極

Claims (2)

  1. 半導体基板上に形成された一対の電流入力電極と、一対の電圧出力電極を有するホール素子において、前記一対の電流入力電極間に形成された少なくとも1個以上のゲート電極と、このゲート電極に接近して設けられ、前記半導体基板電位を検出するための少なくとも1個以上の電位検出電極とを備えたことを特徴とするホール素子。
  2. 請求項1記載のホール素子を同一の半導体基板上に点対称の位置に複数個形成したことを特徴とする電気量測定装置
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