JP3819274B2 - 衝突形態判定装置および判定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する衝突形態判定装置および判定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばエアバッグのような車両の乗員保護装置の起動を制御する起動制御装置は、車両に加わる衝撃を加速度センサにより減速度として検出し、その検出された減速度に基づいて乗員保護装置の起動を制御する。衝突の形態としては、車両の正面全面が衝突する対称衝突(フルラップ衝突)や、車両の正面の片側が衝突する非対称衝突(オフセット衝突)、車両が所定の角度をもって衝突する斜突などが挙げられるが、様々な衝突形態においても適切な乗員保護装置をより的確なタイミングで起動するために衝突の形態を判別する衝突形態判定装置を用いることが考えられている。
【0003】
特開2000−255373公報は、車両の前方左右に配置された加速度センサ(サテライトセンサ)を利用して衝突の形態を判別する衝突形態判定装置を開示する。ここに開示された衝突形態判定装置の一つは、検出される減速度から算出した車両の左右各々の速度が閾値を越える時間の差に基づいて衝突形態を判別する。また、ここに開示された別の衝突形態判定装置は、車両の左右各々の速度の差に基づいて衝突形態を判別する。さらに、ここに開示された別の衝突形態判定装置は、車両の左右各々の速度のピークの時期の相違に基づいて衝突形態を判別する。これらの装置は、非対称衝突時には、左右加速度センサのうち一方の出力が大きいという原理を利用する。
【0004】
図16は、特開2000−255373公報に開示された一つの衝突形態判定装置を簡略化して示すブロック図である。図において、520は衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、530は演算部、540は比較部を示す。センサ22,24は、車両の前方の左右にそれぞれ配置されており、配置された各々の位置の加速度(減速度)を検出する。演算部530は、センサ22,24の出力を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、これらの演算結果の差を求める。例えば、演算部530は、センサ22,24の出力Gl、Grを積分して、車両の左右についての速度f(Gl)、f(Gr)を得て、速度差|f(Gl)−f(Gr)|を算出する。比較部540は、速度差|f(Gl)−f(Gr)|を閾値Thr0と比較して、この結果に基づいて衝突形態を判別する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の衝突形態判定装置は以上のように構成されているので、車両の前方左右の加速度センサ22,24はエンジンルームの近傍に配置されている。従って、エンジンルーム内の温度、その他の外乱が加速度センサ22,24に影響し、衝突の形態を適切に判別できないことがあるなどの課題があった。例えば、車両の対称衝突時に、左右の加速度センサ22,24の一方の出力が他方の出力よりも温度に影響されていれば、衝突形態判定装置が誤って非対称衝突であると判定することがありうる。
【0006】
図17を参照しながら、この問題を詳しく説明する。図17(A)は対称衝突での結果を示し、図17(B)は非対称衝突の結果を示す。図において、破線はセンサに外乱が与えられない場合の結果、実線はセンサに外乱が与えられた場合の結果を示す。図17(A)の破線から理解されるように、対称衝突では、速度差|f(Gl)−f(Gr)|は常に閾値Thr0より低く、図17(B)の破線から理解されるように、非対称衝突では、速度差|f(Gl)−f(Gr)|は少なくともある期間は閾値Thr0より高くなる。
【0007】
しかし、ある種の外乱が与えられると、図17(A)の実線から理解されるように、対称衝突であっても、速度差|f(Gl)−f(Gr)|が外乱のない場合でのそれよりも増大し、ある期間で閾値Thr0より高くなる。同じ外乱により、図17(B)の実線から理解されるように、非対称衝突であっても、速度差|f(Gl)−f(Gr)|が外乱のない場合でのそれよりも低下し、常に閾値Thr0より低いこともある。これでは、適切な判定が困難であり、衝突形態判定装置の製造者が閾値Thr0を設定することさえ難しい。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、外乱による計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる衝突形態判定装置および判定方法を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、前記演算結果の平均値を算出する平均算出部と、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えたものである。
【0010】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度の平均値を算出する平均算出部と、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えたものである。
【0011】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、前記演算結果のうち、小さい方を選択する選択部と、前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えたものである。
【0012】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度のうち、小さい方を選択する選択部と、前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えたものである。
【0013】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度、あるいは前記中央減速度検出部と少なくともいずれかの左右減速度検出部により検出される減速度に基づいて、車両の衝突開始時期を検出する衝突開始時期検出部とをさらに備えており、判別部は、前記衝突開始時期から所定時間のみ車両の衝突の形態の判定結果を出力するものである。
【0014】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないものである。
【0015】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないものである。
【0016】
この発明に係る衝突形態判定装置は、判別部は、車両の中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力することを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないものである。
【0018】
この発明に係る衝突形態判定装置は、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないものである。
【0019】
この発明に係る衝突形態判定装置は、判別部は、車両の中央部近傍の減速度が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力するものである。
【0020】
この発明に係る衝突形態判定方法は、車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、前記演算結果の平均値を算出して、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するものである。
【0021】
この発明に係る衝突形態判定方法は、車両の左右の各々の位置の減速度の平均値を算出して、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するものである。
【0022】
この発明に係る衝突形態判定方法は、車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、前記演算結果のうち、小さい方を選択し、選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するものである。
【0023】
この発明に係る衝突形態判定方法は、車両の左右の各々の減速度のうち、小さい方を選択し、選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、20は衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、32は演算部、34は平均算出部、40は判別部、41はメモリを示す。図1に示すように、衝突形態判定装置20は、左フロントセンサ(減速度検出部)22、右フロントセンサ(減速度検出部)24、演算部32、平均算出部34、判別部40およびメモリ41を備える。
【0025】
図2は実施の形態1による衝突形態判定装置20が搭載された車両を示す平面図である。図において、10は車両、30はエアバッグECU(electric control unit)を示す。
【0026】
次に動作について説明する。
図2に示すように、センサ22,24は、車両10の前方の左右にそれぞれ配置された加速度センサであり、配置された各々の位置の加速度(減速度)を検出する。
【0027】
図1に示される演算部32は、センサ22,24の出力Gl、Grを演算して、車両の左右についての演算結果f(Gl)、f(Gr)を得る。好ましくは、演算部32は、センサ22,24の出力Gl、Grを一定時間にわたって時間について積分して得られる移動平均を演算結果f(Gl)、f(Gr)として得る。但し、演算部32が演算する関数f(x)としては、加速度を時間について1回積分して得られる速度、ジャーク(加速度を時間について1回微分して得られる加加速度)や、加速度を一定時間にわたって時間について積分して得られる移動平均や、加速度の特定周波数の強度や、車両の前後方向または左右方向の加速度等を表すベクトルの合成成分であってもよい。
【0028】
平均算出部34は、演算部32により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を算出し、この平均値を判別部40に供給する。演算部32により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)は時間の経過に従って変化するので、平均算出部34も各時刻ごとに平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を算出し、時間の経過に従って変化する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を判別部40に供給する。
【0029】
判別部40は、平均算出部34の出力、すなわち演算結果の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2と形態判定用敷居値Thr1とを比較する。メモリ41には、この形態判定用敷居値Thr1が格納されており、判別部40はメモリ41から形態判定用敷居値Thr1を読み出す。判別部40は、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0030】
具体的には、平均算出部34の出力が形態判定用敷居値Thr1よりも大きくなると、判別部40は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。他の場合には、判別部40は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。この判定の後、直ちに判別部40は、判定結果を示す信号を出力する。
【0031】
判別部40からの判定結果を示す信号は、エアバッグECU30(図2参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。つまり、対称衝突と非対称衝突では、エアバッグを起動すべき最小の減速度または速度が異なるので、エアバッグECU30は、判別部40の判定結果に基づいて、エアバッグの動作のための閾値(対称衝突と非対称衝突とでは異なる)を設定する。例えば、このエアバッグ起動用閾値は図示しないメモリに格納されている。
【0032】
そして、エアバッグECU30は、このエアバッグ起動用閾値と車両の減速度または速度を比較し、減速度または速度がこのエアバッグ起動用閾値を越えていたときに、エアバッグを起動して展開させる。エアバッグの起動の制御のために、エアバッグECU30は、車両10の車室内に設けられた図示しない加速度センサに接続されており、この加速度センサで計測された加速度がエアバッグECU30に通知されるとよい。あるいは、エアバッグの起動の制御のために、センサ22,24の検出結果をエアバッグECU30が利用してもよい。
【0033】
上述した衝突形態判定装置20の構成要素のうち、演算部32、平均算出部34および判別部40は、それぞれ別個の電気回路であってもよい。あるいは、これらは、プログラムに従って動作するコンピュータの各機能を、容易に理解できるように便宜的に構成要素として区分したものでもよい。
【0034】
また、演算部32、平均算出部34、判別部40およびメモリ41は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。また、この明細書では、衝突形態判定装置はエアバッグの起動に関連づけて説明されるが、この発明をエアバッグの起動の用途に限定する意図ではなく、他の乗員保護装置の起動のために衝突形態を判定する装置および方法もこの発明の区域内にあるものであると出願人は意図している。
【0035】
図3は、実施の形態1の衝突形態判定装置20の演算部32および平均算出部34の出力を示すグラフである。図3(A)は対称衝突での結果を示し、図3(B)は非対称衝突の結果を示す。図3の実験における演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)は移動平均である。図3(A)に示すように、対称衝突では、演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)は同程度であり、平均算出部34が出力する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2もこれらと同程度である。
【0036】
注目すべきこととして、図3(A)と図3(B)を比較すると明らかなように、非対称衝突で平均算出部34が出力する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2は、対称衝突でのそれよりも顕著に小さい。平均算出部34が出力する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を形態判定用敷居値Thr1と比較することによって衝突形態の識別が可能である。つまり、平均算出部34が出力する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2が一時的でも形態判定用敷居値Thr1を越えれば、車両10は対称衝突を起こしたとみなしうる。
【0037】
形態判定用敷居値Thr1は、実験によってあらかじめ得られた対称衝突と非対称衝突の両方の平均値曲線すなわち演算結果の平均値の経時的推移から定められる。つまり、形態判定用敷居値Thr1は、エアバッグを起動すべき最低条件での対称衝突での平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2のピークよりも低く、かつ非対称衝突での平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2のピークよりも高く選択される。ここで、非対称衝突での平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2としては、外乱のためにセンサ22,24の検出結果に誤差が含まれて、両方のセンサに関する演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)がともに増大してしまった場合の平均値が選択される。従って、形態判定用敷居値Thr1の設定は容易である。
【0038】
以上のように、この実施の形態1によれば、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる。また、形態判定用敷居値Thr1の設定が容易であるなどの効果が得られる。
【0039】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、20Aは衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、34は平均算出部、40は判別部、41はメモリを示す。図4において、図1と共通する構成要素を示すために同じ符号が使用されており、これらを詳細には説明しない。
【0040】
実施の形態2による衝突形態判定装置20Aが搭載された車両を示す平面図は、図2と同様である。平均算出部34、判別部40およびメモリ41は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。
【0041】
次に動作について説明する。この実施の形態2では、センサ22,24の出力Gl、Grには演算処理が施されず、これらはそのまま平均算出部34に供給される。平均算出部34はセンサ22,24により検出される各々の減速度の平均値(Gl+Gr)/2を算出し、この平均値を判別部40に供給する。好ましくは、平均算出部34は、各時刻ごとに平均値(Gl+Gr)/2を算出し、時間の経過に従って変化する平均値(Gl+Gr)/2を判別部40に供給する。
【0042】
判別部40は、平均算出部34の出力、すなわち減速度の平均値(Gl+Gr)/2と形態判定用敷居値Thr1とを比較する。メモリ41には、この形態判定用敷居値Thr1が格納されており、判別部40はメモリ41から形態判定用敷居値Thr1を読み出す。判別部40は、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0043】
具体的には、実施の形態1と同様に、平均算出部34の出力が形態判定用敷居値Thr1よりも大きくなると、判別部40は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。他の場合には、判別部40は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。この判定の後、直ちに判別部40は、判定結果を示す信号を出力する。判別部40からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図2参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。
【0044】
この実施の形態2での衝突形態の識別の原理は、実施の形態1と同様であり、判断材料が減速度からの演算値の平均値でなく減速度の平均値であっても、非対称衝突で平均算出部34が出力する減速度の平均値(Gl+Gr)/2が、対称衝突でのそれよりも顕著に小さいことを利用する。従って、実施の形態1と同様に、形態判定用敷居値Thr1を容易に適切に設定することが可能であり、この形態判定用敷居値Thr1を利用して適切に衝突の形態を判定することができる。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる。また、形態判定用敷居値Thr1の設定が容易であるなどの効果が得られる。
【0046】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、120は衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、32は演算部、36は比較部、40は判別部、41はメモリを示す。図5に示すように、衝突形態判定装置120は、左フロントセンサ(減速度検出部)22、右フロントセンサ(減速度検出部)24、演算部32、比較部36、判別部40およびメモリ41を備える。実施の形態3による衝突形態判定装置120が搭載された車両を示す平面図は、図2と同様である。
【0047】
次に動作について説明する。
図2に示すように、センサ22,24は、車両10の前方の左右にそれぞれ配置された加速度センサであり、配置された各々の位置の加速度(減速度)を検出する。
【0048】
図5に示される演算部32は、センサ22,24の出力Gl、Grを演算して、車両の左右についての演算結果f(Gl)、f(Gr)を得る。好ましくは、演算結果f(Gl)、f(Gr)は、出力Gl、Grの移動平均である。実施の形態1と同様に、演算結果f(Gl)、f(Gr)は、車両の左右についての速度、ジャーク、移動距離、加速度の特定周波数の強度、車両の前後方向または左右方向の加速度等を表すベクトルの合成成分であってよい。
【0049】
比較部36は、演算部32により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)を互いに比較し、小さい方を選択し、この選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]を判別部40に供給する。演算部32により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)は時間の経過に従って変化するので、比較部36も各時刻ごとに最小値を選択し、時間の経過に従って変化する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]を判別部40に供給する。
【0050】
判別部40は、比較部36の出力、すなわち選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]と形態判定用敷居値Thr2とを比較する。メモリ41には、この形態判定用敷居値Thr2が格納されており、判別部40はメモリ41から形態判定用敷居値Thr2を読み出す。判別部40は、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0051】
具体的には、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が形態判定用敷居値Thr2よりも大きくなると、判別部40は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。他の場合には、判別部40は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。この判定の後、直ちに判別部40は、判定結果を示す信号を出力する。判別部40からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図2参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。
【0052】
上述した衝突形態判定装置120の構成要素のうち、演算部32、比較部36および判別部40は、それぞれ別個の電気回路であってもよい。あるいは、これらは、プログラムに従って動作するコンピュータの各機能を、容易に理解できるように便宜的に構成要素として区分したものでもよい。また、演算部32、比較部36、判別部40およびメモリ41は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。
【0053】
図6は、実施の形態3の衝突形態判定装置20の演算部32および比較部36の出力を示すグラフである。図6(A)は対称衝突での結果を示し、図6(B)は非対称衝突の結果を示す。図6の実験における演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)は移動平均である。図6(A)に示すように、対称衝突では、演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)は同程度であり、比較部36が出力する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]もこれらと同程度である。
【0054】
注目すべきこととして、図6(A)と図6(B)を比較すると明らかなように、非対称衝突で比較部36が出力する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]は、対称衝突でのそれよりも顕著に小さい。比較部36が出力する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]を形態判定用敷居値Thr2と比較することによって衝突形態の識別が可能である。つまり、比較部36が出力する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が一時的でも形態判定用敷居値Thr2を越えれば、車両10は対称衝突を起こしたとみなしうる。
【0055】
形態判定用敷居値Thr2は、実験によってあらかじめ得られた対称衝突と非対称衝突の両方の最小値曲線すなわち演算結果の最小値の経時的推移から定められる。つまり、形態判定用敷居値Thr2は、エアバッグを起動すべき最低条件での対称衝突での選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]のピークよりも低く、かつ非対称衝突での選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]のピークよりも高く選択される。ここで、非対称衝突での選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]としては、外乱のためにセンサ22,24の検出結果に誤差が含まれて、両方のセンサに関する演算部32の演算結果f(Gl)、f(Gr)がともに増大してしまった場合の最小値が選択される。従って、形態判定用敷居値Thr2の設定は容易である。
【0056】
特に、この実施の形態3では、演算部32の演算結果の平均値ではなく最小値を判別部40が利用するので、対称衝突での判断材料(選択結果)と非対称衝突でのそれとの相違が実施の形態1よりも大きい。従って、実施の形態1に比べて、より適切に衝突の形態を判定することができ、形態判定用敷居値Thr2の設定もより容易である。
【0057】
以上のように、この実施の形態3によれば、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる。また、形態判定用敷居値Thr2の設定が容易であるなどの効果が得られる。
【0058】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、120Aは衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、36は比較部、40は判別部、41はメモリを示す。図7において、図1と共通する構成要素を示すために同じ符号が使用されており、これらを詳細には説明しない。
【0059】
実施の形態4による衝突形態判定装置120Aが搭載された車両を示す平面図は、図2と同様である。比較部36、判別部40およびメモリ41は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。
【0060】
次に動作について説明する。この実施の形態4では、センサ22,24の出力Gl、Grには演算処理が施されず、これらはそのまま比較部36に供給される。比較部36はセンサ22,24により検出される各々の減速度を互いに比較し、小さい方を選択し、この選択結果MIN[Gl,Gr]を判別部40に供給する。好ましくは、比較部36は、各時刻ごとに最小値を選択し、時間の経過に従って変化する選択結果MIN[Gl,Gr]を判別部40に供給する。
【0061】
判別部40は、比較部36の出力、すなわち減速度の選択結果MIN[Gl,Gr]と形態判定用敷居値Thr2とを比較する。メモリ41には、この形態判定用敷居値Thr2が格納されており、判別部40はメモリ41から形態判定用敷居値Thr2を読み出す。判別部40は、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0062】
具体的には、実施の形態3と同様に、比較部36の出力が形態判定用敷居値Thr2よりも大きくなると、判別部40は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。他の場合には、判別部40は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。この判定の後、直ちに判別部40は、判定結果を示す信号を出力する。判別部40からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図2参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。
【0063】
この実施の形態4での衝突形態の識別の原理は、実施の形態3と同様であり、判断材料が減速度からの演算値の最小値でなく減速度の最小値であっても、非対称衝突で比較部36が出力する減速度の最小値MIN[Gl,Gr]が、対称衝突でのそれよりも顕著に小さいことを利用する。従って、実施の形態3と同様に、形態判定用敷居値Thr2を容易に適切に設定することが可能であり、この形態判定用敷居値Thr2を利用して適切に衝突の形態を判定することができる。
【0064】
以上のように、この実施の形態4によれば、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる。また、形態判定用敷居値Thr2の設定が容易であるなどの効果が得られる。
【0065】
実施の形態5.
図8はこの発明の実施の形態5による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、220は衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、26はフロアセンサ(中央減速度検出部)、38は演算部、34は平均算出部、42は判別部、44は衝突開始時期検出部、45はメモリ、50は比較部、51はメモリ、52は論理積ゲートを示す。図8に示すように、衝突形態判定装置220は、左フロントセンサ(減速度検出部)22、右フロントセンサ(減速度検出部)24、フロアセンサ(中央減速度検出部)26、演算部38、平均算出部34および判別部42を備える。判別部42は、比較部50、メモリ51、衝突開始時期検出部44、メモリ45および論理積ゲート52を備える。
図9は実施の形態5による衝突形態判定装置220が搭載された車両を示す平面図である。図において、10は車両、30はエアバッグECUを示す。
【0066】
次に動作について説明する。
図9に示すように、センサ22,24は、車両10の前方の左右にそれぞれ配置された加速度センサであり、配置された各々の位置の加速度(減速度)を検出する。フロアセンサ26は、車両10の中央コンソール近傍に取り付けられた加速度センサであり、車両10の中央部の加速度(減速度)を検出する。
【0067】
図8に示される演算部38は、センサ22,24の出力Gl、Grを演算して、車両の左右についての演算結果f(Gl)、f(Gr)を得る。また、演算部38は、フロアセンサ26の出力Gmを演算して、車両の中央についての演算結果f(Gm)を得る。好ましくは、演算結果f(Gl)、f(Gr)、f(Gm)は出力Gl、Gr、Gmの移動平均である。但し、実施の形態1と同様に、演算結果f(Gl)、f(Gr)、f(Gm)は、車両の左右および中央についての速度、ジャーク、移動距離、加速度の特定周波数の強度、車両の前後方向または左右方向の加速度等を表すベクトルの合成成分であってよい。
【0068】
平均算出部34は、演算部38により得られた車両10の左右位置についての演算結果f(Gl)、f(Gr)の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を算出し、この平均値を判別部42の比較部50に供給する。演算部38により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)は時間の経過に従って変化するので、平均算出部34も各時刻ごとに平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を算出し、時間の経過に従って変化する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を比較部50に供給する。
【0069】
比較部50は、平均算出部34の出力、すなわち演算結果の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2と形態判定用敷居値Thr3とを比較する。メモリ51には、この形態判定用敷居値Thr3が格納されており、比較部50はメモリ51から形態判定用敷居値Thr3を読み出す。比較部50は、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0070】
具体的には、平均算出部34の出力が形態判定用敷居値Thr3よりも大きくなると、比較部50は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。他の場合には、比較部50は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。この判定の後、直ちに比較部50は、判定結果を示す信号を出力する。但し、比較部50の出力端子は論理積ゲート52の一方の入力端子に接続されており、判定結果を示す信号が必ず衝突形態判定装置220の判定結果として利用されるのではない。
【0071】
衝突開始時期検出部44は、演算部38により得られた車両10の中央位置についての演算結果f(Gm)を常に監視し、衝突開始時期を検出する。具体的には、衝突開始時期検出部44は、周期的に、中央位置についての演算結果f(Gm)を衝突開始判定用敷居値Ef1と比較し、演算結果f(Gm)が衝突開始判定用敷居値Ef1を越えると、衝突開始を示すハイレベルの信号をその時点から所定時間だけ出力する。
【0072】
衝突開始時期検出部44の出力端子は、論理積ゲート52の一方の入力端子に接続されており、衝突開始時期から所定時間だけハイレベルの信号がここに入力される。論理積ゲート52の他方の入力端子は、比較部50に接続されており、比較部50の判定結果を示す信号がここに入力される。論理積ゲート52は、衝突開始時期検出部44からハイレベルの信号が供給されている間だけ、比較部50の判定結果を示す(衝突形態が対称衝突か非対称衝突かを表す)信号をそのまま出力する。従って、判別部42ひいては衝突形態判定装置220は、衝突開始から所定時間だけ、衝突形態が対称衝突か非対称衝突かを表す信号を出力し、その後は、比較部50の判定結果に関わりなく、比較部50の判定結果を出力しない。
判別部42からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図9参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。
【0073】
上述した衝突形態判定装置220の構成要素のうち、演算部38、平均算出部34および判別部42は、それぞれ別個の電気回路であってもよい。あるいは、これらは、プログラムに従って動作するコンピュータの各機能を、容易に理解できるように便宜的に構成要素として区分したものでもよい。また、演算部38、平均算出部34および判別部42は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。
【0074】
図10および図11は、実施の形態5の衝突形態判定装置220の演算部38、衝突開始時期検出部44、平均算出部34および比較部50ならびに衝突形態判定装置220の出力を示すグラフである。図10および図11の実験における演算部38の演算結果f(Gl)、f(Gr)、f(Gm)は移動平均である。図10は対称衝突での結果を示し、図11は非対称衝突の結果を示す。
【0075】
図10および図11に示されるように、演算部38の演算結果f(Gl)、f(Gr)を平均算出部34は平均して平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2を出力する。対称衝突での平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2は、非対称衝突でのそれよりも初期段階で明らかに大きい。但し、非対称衝突での平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2は、後の段階で初期の段階よりも高いピークを持つ。
【0076】
平均算出部34の出力する平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2が形態判定用敷居値Thr3よりも大きい期間中、比較部50は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別し、ハイレベルの信号を出力する。他の場合には、比較部50は、車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別し、ローレベルの信号を出力する。この実施の形態では、形態判定用敷居値Thr3は、実施の形態1の形態判定用敷居値Thr1(図3参照)よりも低く決定されており、図11に示されるように非対称衝突でも、対称衝突を表すハイレベルの信号が比較部50から出力されることがある。しかし、事実と異なるこのような信号が比較部50から出力されるのは、衝突開始時期から所定時間Tが過ぎた後である。
【0077】
演算部38の演算結果f(Gm)を衝突開始時期検出部44は監視し、演算結果f(Gm)が衝突開始判定用敷居値Ef1を越えると、ハイレベルの信号をその時点から所定時間Tだけ出力する。上述した論理積ゲート52の機能により、ハイレベルの信号が出力される所定時間Tだけ、比較部50の判定結果を示す信号が衝突形態判定装置220から出力される。図11に示されるように、非対称衝突では、平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2は、後の段階で初期の段階よりも高いピークを持ち、このピークが形態判定用敷居値Thr3を越えて、対称衝突を表すハイレベルの信号を比較部50が出力することがありうる。しかし、後の段階では、衝突開始時期からすでに所定時間Tが経過しているために、衝突形態判定装置220からの出力が制限されるので、事実と異なるこのような信号は最終的に出力されない。
【0078】
むしろ、この実施の形態には次のような利点がある。すなわち、非対称衝突での後の段階の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2のピークを無視するので、対称衝突と非対称衝突とを区別する形態判定用敷居値Thr3を低く設定することができる。そして、非対称衝突での後の段階の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2のピークを無視するので、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易かつ確実に識別することができる。さらに形態判定用敷居値Thr3をより低く設定することができるため、より迅速に衝突形態判定を行うことが可能となる。
また、衝突開始判定用敷居値Ef1として、事故の発生がなくラフロードを走行する時のf(Gm)以上の値を設定することで、不必要に衝突形態判定を行うことを防止できる。
【0079】
以上のように、この実施の形態5によれば、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができる。特に、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができる。また、形態判定用敷居値Thr3の設定が容易であるなどの効果が得られる。
【0080】
上述した実施の形態5は、実施の形態1(図1参照)の修正された形態であって、車両10の左右の減速度を演算部38が演算した演算結果f(Gl)、f(Gr)の平均値[f(Gl)+f(Gr)]/2に基づいた衝突形態の判定結果を判別部42が出力する期間が衝突開始時期検出部44と論理積ゲート52により制限される。但し、実施の形態2ないし実施の形態4を同様に修正して、衝突形態の判定結果を出力する期間を衝突開始から所定時間のみに制限することも可能である。
【0081】
また、上述した実施の形態5では、フロアセンサ26により検出される減速度である出力Gmの演算結果f(Gm)のみに基づいて、衝突開始時期検出部44が衝突開始の時期を検出する。但し、演算結果f(Gm)に加えて、左右のセンサ22,24により検出される減速度である出力Gl、Grの演算結果f(Gl)、f(Gr)の少なくともいずれかに基づいて、衝突開始の時期を検出するようにしてもよい。また、演算を行わないフロアセンサ26の出力Gm、または出力Gmとセンサ22,24の少なくともいずれかの出力Gl、Grに基づいて、衝突開始の時期を検出してもよい。これらの修正された形態もこの発明の範囲内にあるものと出願人は意図している。
【0082】
実施の形態6.
図12はこの発明の実施の形態6による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。図において、320は衝突形態判定装置、22は左フロントセンサ、24は右フロントセンサ、38は演算部、36は比較部、46は判別部、47はメモリを示す。図12に示すように、衝突形態判定装置320は、左フロントセンサ(減速度検出部)22、右フロントセンサ(減速度検出部)24、演算部38、比較部36、判別部46およびメモリ47を備える。実施の形態6による衝突形態判定装置320が搭載された車両を示す平面図は、図9と同様である。
【0083】
図9に示すように、センサ22,24は、車両10の前方の左右にそれぞれ配置された加速度センサであり、配置された各々の位置の加速度(減速度)を検出する。フロアセンサ26は、車両10の中央コンソール近傍に取り付けられた加速度センサであり、車両10の中央部の加速度(減速度)を検出する。
【0084】
図12に示される演算部38は、センサ22,24の出力Gl、Grを演算して、車両の左右についての演算結果f(Gl)、f(Gr)を得る。また、演算部38は、フロアセンサ26の出力Gmを演算して、車両の中央についての演算結果f(Gm)を得る。好ましくは、演算結果f(Gl)、f(Gr)、f(Gm)は出力Gl、Gr、Gmの移動平均である。但し、実施の形態1と同様に、演算結果f(Gl)、f(Gr)、f(Gm)は、車両の左右および中央についての速度、ジャーク、移動距離、加速度の特定周波数の強度、車両の前後方向または左右方向の加速度等を表すベクトルの合成成分であってよい。
【0085】
比較部36は、演算部38により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)を互いに比較し、小さい方を選択し、この選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]を判別部46に供給する。演算部38により得られた演算結果f(Gl)、f(Gr)は時間の経過に従って変化するので、比較部36も各時刻ごとに最小値を選択し、時間の経過に従って変化する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]を判別部46に供給する。
【0086】
判別部46は、比較部36の出力、すなわち選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]と形態判定用敷居値Thr4とを比較する。この形態判定用敷居値Thr4は、図13に示すように、演算部38による車両の中央についての演算結果f(Gm)により変動する値である。演算結果f(Gm)が所定値Ef2未満では、演算結果f(Gm)が大きくなるに従って、形態判定用敷居値Thr4は大きくなるが、演算結果f(Gm)が所定値Ef2以上では形態判定用敷居値Thr4は無限大または十分に大きい値である。
【0087】
メモリ47には、このように変動する形態判定用敷居値Thr4を表すマップが格納されており、演算部38により得られた演算結果f(Gm)に対応する形態判定用敷居値Thr4を判別部46はメモリ47から読み出す。演算部38により得られた演算結果f(Gm)は時間の経過に従って変化するので、判別部46も各時刻ごとに形態判定用敷居値Thr4をメモリ47から読み出す。判別部46は、時間の経過により変動する選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]と、時間の経過により変動する形態判定用敷居値Thr4の比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。
【0088】
具体的には、図14(A)に示すように、演算結果f(Gm)が所定値Ef2未満の段階で、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が一時的にでも形態判定用敷居値Thr4よりも大きくなると、判別部46は車両10の衝突形態が対称衝突であると判別する。一方、図14(B)に示すように、演算結果f(Gm)が所定値Ef2未満の段階で、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が形態判定用敷居値Thr4を越えることが全くなければ、判別部46は車両10の衝突形態が非対称衝突であると判別する。
【0089】
演算結果f(Gm)が所定値Ef2以上の段階では、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が、十分に大きい形態判定用敷居値Thr4を越えることはありえないので、判別部46は必ず衝突形態が非対称衝突であると判別する。つまり、この判別部46は、車両10の中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前の期間における、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の変化と形態判定用敷居値Thr4とを比較し、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するが、中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後は車両10の衝突の形態を実質的に判定しない。
【0090】
この判定の後、直ちに判別部46は、判定結果を示す信号を出力する。判別部46からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図9参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。
【0091】
上述した衝突形態判定装置320の構成要素のうち、演算部38、比較部36および判別部46は、それぞれ別個の電気回路であってもよい。あるいは、これらは、プログラムに従って動作するコンピュータの各機能を、容易に理解できるように便宜的に構成要素として区分したものでもよい。また、演算部38、比較部36、判別部46およびメモリ47は、エアバッグECU30の部分であってもよいし、エアバッグECU30とは独立して設けられていてもよい。
【0092】
以上のように、この実施の形態6によれば、中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後は車両10の衝突の形態を実質的に判定しないので、衝突が開始してから衝突形態を判定する期間が限定される。従って、衝突開始時期を検出するトリガ(例えば実施の形態5の衝突開始時期検出部44)がなくても、非対称衝突での比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の後の段階でのピークを無視することができる。そして、非対称衝突での比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の後の段階でのピークを無視するので、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易かつ確実に識別することができる。
【0093】
さらに非対称衝突での比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の後の段階でのピークを無視するので、形態判定用敷居値Thr4をより低く設定することができるため、より迅速に衝突形態判定を行うことが可能となる。さらにまた、衝突後の初期段階における変化する形態判定用敷居値Thr4を適切に設定することにより、外乱によるセンサの計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果が得られる。
【0094】
上述した実施の形態6は、実施の形態3(図5参照)の修正された形態であって、中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前の期間における選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]に基づいて衝突形態を判定する。但し、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態4を同様に修正することも可能である。
【0095】
また、上述した実施の形態6では、フロアセンサ26により検出される中央部の減速度である出力Gmの演算結果f(Gm)に基づいて、衝突形態を判定する段階を実質的に制限するが、出力Gmを演算しないことも可能である。すなわち、中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、平均値または選択値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないようにしてもよい。これらの修正された形態もこの発明の範囲内にあるものと出願人は意図している。
【0096】
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7を説明する。この実施の形態7は上述した実施の形態6の修正された形態であり、実施の形態7による衝突形態判定装置の構成は図12に示された実施の形態6の衝突形態判定装置の構成と同様でよく、車両10における衝突形態判定装置の配置も図9と同様でよい。
【0097】
次に動作について説明する。上述した実施の形態6によれば、判別部46は、車両10の中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前の期間における、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の変化と形態判定用敷居値Thr4とを比較し、この比較に基づいて車両10の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する。また、判別部46は中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後は車両10の衝突の形態を実質的に判定しない。
【0098】
上記の特徴に加えて、実施の形態7では、判別部46は、車両10の中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力する。つまり、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前は、判別部46は衝突形態を不定であると判定する。そして、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前の期間における、比較部36の選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]の変化と形態判定用敷居値Thr4とを比較して、衝突の形態を判定し、判定結果を出力する。
【0099】
例えば、図15に示されたグラフにおいて、曲線AまたはBのように選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が変動する場合には、少なくとも一定の期間は選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が形態判定用敷居値Thr4を越えたので、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、判別部46は車両の衝突形態が対称衝突であると判定し、その旨を示す信号を出力する。一方、曲線Cのように選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が変動する場合には、選択結果MIN[f(Gl),f(Gr)]が形態判定用敷居値Thr4を越えることはなかったので、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、判別部46は車両の衝突形態が非対称衝突であると判定し、その旨を示す信号を出力する。
【0100】
判別部46からの判定結果を示す信号は、実施の形態1と同様に、エアバッグECU30(図9参照)によるエアバッグの起動の制御に用いられる。対称衝突と非対称衝突では、エアバッグを起動すべき最小の減速度または速度が異なるので、エアバッグECU30は、判別部46の判定結果に基づいて、エアバッグの動作のための閾値(対称衝突と非対称衝突とでは異なる)を設定する。例えば、このエアバッグ起動用閾値は図示しないメモリに格納されている。
【0101】
そして、エアバッグECU30は、このエアバッグ起動用閾値と車両の減速度または速度を比較し、減速度または速度がこのエアバッグ起動用閾値を越えていたときに、エアバッグを起動して展開させる。エアバッグの起動の制御のために、エアバッグECU30は、車両10の車室内に設けられたフロアセンサ26に接続されており、このフロアセンサ26で計測された加速度がエアバッグECU30に通知されるとよい。あるいは、エアバッグの起動の制御のために、センサ22,24の検出結果をエアバッグECU30が利用してもよい。
【0102】
この実施の形態では、衝突後の初期の段階、すなわち演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達する以前は、判別部46は衝突形態を不定であると判定する。この段階でもエアバッグを起動すべき場合があるが、通常は不用意に起動しない方が好ましい。そこで、衝突形態が不定であると判断されている間は、エアバッグ起動用閾値を高く設定し、減速度または速度がこれを越える場合にだけ、エアバッグECU30はエアバッグを起動して展開させる。そして、演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、判別部46の判定結果に基づいて、エアバッグ起動用閾値を対称衝突または非対称衝突のいずれかに適したレベルまで低下させる。
【0103】
以上のように、この実施の形態7によれば、実施の形態6に関する効果に加えて、衝突後の初期の段階で、乗員保護装置の起動を制御する閾値等の初期状態を自由に設定することが可能であるなどの効果が得られる。
【0104】
この実施の形態7の趣旨に従って、車両10の中央部近傍についての演算結果f(Gm)が所定値Ef2に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力するように、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態4を修正することも可能である。また、出力Gmを演算せずに、車両の中央部近傍の減速度であるフロアセンサ26の出力Gmが所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力するようにしてもよい。これらの修正された形態もこの発明の範囲内にあるものと出願人は意図している。
【0105】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、前記演算結果の平均値を算出する平均算出部と、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えるように構成したので、外乱による減速度検出部の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0106】
この発明によれば、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度の平均値を算出する平均算出部と、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えるように構成したので、外乱による減速度検出部の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0107】
この発明によれば、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、前記演算結果のうち、小さい方を選択する選択部と、前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えるように構成したので、外乱による減速度検出部の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0108】
この発明によれば、車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、前記減速度検出部により検出される各々の減速度のうち、小さい方を選択する選択部と、前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えるように構成したので、外乱による減速度検出部の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0109】
この発明によれば、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度、あるいは前記中央減速度検出部と少なくともいずれかの左右減速度検出部により検出される減速度に基づいて、車両の衝突開始時期を検出する衝突開始時期検出部とをさらに備えており、判別部は、前記衝突開始時期から所定時間のみ車両の衝突の形態の判定結果を出力するように構成したので、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができるなどの効果がある。
【0110】
この発明によれば、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないように構成したので、衝突開始時期を検出するトリガがなくても、非対称衝突での平均値の後の段階でのピークを無視することができ、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができるなどの効果がある。
【0111】
この発明によれば、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないように構成したので、衝突開始時期を検出するトリガがなくても、非対称衝突での選択結果の後の段階でのピークを無視することができ、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができるなどの効果がある。
【0112】
この発明によれば、判別部は、車両の中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力するように構成したので、衝突後の初期の段階で、乗員保護装置の起動を制御する閾値等の初期状態を自由に設定することが可能であるなどの効果がある。
【0113】
この発明によれば、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないように構成したので、衝突開始時期を検出するトリガがなくても、非対称衝突での平均値の後の段階でのピークを無視することができ、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができるなどの効果がある。
【0114】
この発明によれば、車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないように構成したので、衝突開始時期を検出するトリガがなくても、非対称衝突での選択結果の後の段階でのピークを無視することができ、対称衝突に固有の衝突後の初期段階における大きな減速度の発生を利用して、対称衝突と非対称衝突とを容易、確実かつ迅速に識別することができるなどの効果がある。
【0115】
この発明によれば、判別部は、車両の中央部近傍の減速度が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力するように構成したので、衝突後の初期の段階で、乗員保護装置の起動を制御する閾値等の初期状態を自由に設定することが可能であるなどの効果がある。
【0116】
この発明によれば、車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、前記演算結果の平均値を算出して、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するように構成したので、外乱による減速度の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0117】
この発明によれば、車両の左右の各々の位置の減速度の平均値を算出して、前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するように構成したので、外乱による減速度の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0118】
この発明によれば、車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、前記演算結果のうち、小さい方を選択し、選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するように構成したので、外乱による減速度の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【0119】
この発明によれば、車両の左右の各々の減速度のうち、小さい方を選択し、選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定するように構成したので、外乱による減速度の計測誤差があっても、適切に衝突の形態を判定することができるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1に示された衝突形態判定装置が搭載された車両を示す平面図である。
【図3】 (A)は対称衝突での図1に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフであり、(B)は非対称衝突での図1に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフである。
【図4】 この発明の実施の形態2に係る衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】 この発明の実施の形態3に係る衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 (A)は対称衝突での図5に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフであり、(B)は非対称衝突での図5に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフである。
【図7】 この発明の実施の形態4による衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態5に係る衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図9】 図8に示された衝突形態判定装置が搭載された車両を示す平面図である。
【図10】 対称衝突での図8に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフである。
【図11】 非対称衝突での図8に示された衝突形態判定装置の各部の出力の変化を示すグラフである。
【図12】 この発明の実施の形態6に係る衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図13】 図12に示された衝突形態判定装置の判別部が使用する判定マップを示すグラフである。
【図14】 (A)は対称衝突での図12に示された衝突形態判定装置の比較部の出力の変化を図13のマップ上に描いた図であり、(B)は対称衝突での図12に示された衝突形態判定装置の比較部の出力の変化を図13のマップ上に描いた図である。
【図15】 この発明の実施の形態7に係る衝突形態判定装置の判別部が使用する判定マップを示すグラフである。
【図16】 従来の技術における衝突形態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図17】 (A)は対称衝突での図16に示された衝突形態判定装置の各部の出力を示すグラフであり、(B)は非対称衝突での図16に示された衝突形態判定装置の各部の出力を示すグラフである。
【符号の説明】
10 車両、20,20A,120,120A,220,320 衝突形態判定装置、22 左フロントセンサ(減速度検出部)、24 右フロントセンサ(減速度検出部)、26 フロアセンサ(中央減速度検出部)、30 エアバッグECU、32 演算部、34 平均算出部、36,50 比較部(選択部)、38 演算部(第2の演算部)、40,42,46,48 判別部、41,45,47,51 メモリ、44 衝突開始時期検出部、52 論理積ゲート。

Claims (15)

  1. 車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、
    前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、
    前記演算結果の平均値を算出する平均算出部と、
    前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えた衝突形態判定装置。
  2. 車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、
    前記減速度検出部により検出される各々の減速度の平均値を算出する平均算出部と、
    前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えた衝突形態判定装置。
  3. 車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、
    前記減速度検出部により検出される各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得る演算部と、
    前記演算結果のうち、小さい方を選択する選択部と、
    前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えた衝突形態判定装置。
  4. 車両の左右の前方に各々配置され、配置された各々の位置の減速度を検出する減速度検出部と、
    前記減速度検出部により検出される各々の減速度のうち、小さい方を選択する選択部と、
    前記選択部で選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定する判別部とを備えた衝突形態判定装置。
  5. 車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、
    前記中央減速度検出部により検出される減速度、あるいは前記中央減速度検出部と少なくともいずれかの左右減速度検出部により検出される減速度に基づいて、車両の衝突開始時期を検出する衝突開始時期検出部とをさらに備えており、
    判別部は、前記衝突開始時期から所定時間のみ車両の衝突の形態の判定結果を出力することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の衝突形態判定装置。
  6. 車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、
    前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、
    判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の衝突形態判定装置。
  7. 車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部と、
    前記中央減速度検出部により検出される減速度を演算して、前記中央部近傍についての演算結果を得る第2の演算部とをさらに備えており、
    判別部は、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないことを特徴とする請求項3または請求項4記載の衝突形態判定装置。
  8. 判別部は、車両の中央部近傍についての演算結果が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力することを特徴とする請求項6または請求項7記載の衝突形態判定装置。
  9. 車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、
    判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、平均算出部で算出された平均値の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の衝突形態判定装置。
  10. 車両の中央部近傍に配置され、前記中央部近傍の減速度を検出する中央減速度検出部をさらに備えており、
    判別部は、前記中央部近傍の減速度が所定値に達する以前の期間における、選択部で選択された選択結果の変化と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定し、前記中央部近傍の減速度が所定値に達した後は車両の衝突の形態を実質的に判定しないことを特徴とする請求項3または請求項4記載の衝突形態判定装置。
  11. 判別部は、車両の中央部近傍の減速度が所定値に達した後に、車両の衝突の形態の判定結果を出力することを特徴とする請求項9または請求項10記載の衝突形態判定装置。
  12. 車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、
    前記演算結果の平均値を算出して、
    前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定することを特徴とする衝突形態判定方法。
  13. 車両の左右の各々の位置の減速度の平均値を算出して、
    前記平均値と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定することを特徴とする衝突形態判定方法。
  14. 車両の左右の各々の減速度を演算して、車両の左右についての演算結果を得て、
    前記演算結果のうち、小さい方を選択し、
    選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定することを特徴とする衝突形態判定方法。
  15. 車両の左右の各々の減速度のうち、小さい方を選択し、
    選択された選択結果と敷居値とを比較し、この比較に基づいて車両の衝突の形態が対称衝突であるか非対称衝突であるかを判定することを特徴とする衝突形態判定方法。
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