JP3819080B2 - 耐食性に優れた熱交換器 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィン部材とチューブのろう付け部とその周囲部分の耐食性を向上させた技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の熱交換器において、ヘッダーパイプと称される左右一対の管体の間に多数のチューブを互いに平行に間隔をあけてヘッダーパイプと直角に架設し、各チューブの端部をヘッダーパイプの側面に接続して各チューブの内部空間とヘッダーパイプの内部空間を連通させ、複数のチューブの間にフィン部材を配して熱交換性を高めた構成の熱交換器が知られている。この形式の熱交換器にあっては、ヘッダーパイプの内部と各チューブの内部に渡って媒体が循環され、各チューブ間に配されたフィンを介して効率よく熱交換できるようになっている。
【0003】
そして、この形式の熱交換器においてAlあるいはAl合金からなる熱交換器にあっては、通常、チューブとフィン部材がろう付けにより接合されるので、この際のろう付け性を考慮して、Al-Si系合金などのろう材層を予めAl合金芯材にクラッド圧延した構成のブレージングシートからなるフィン部材が用いられており、このフィン部材がろう付けによりチューブに取り付けられていた。
【0004】
また、前記構成の熱交換器において、ろう付け部のフィレット部(ろう材が溶融凝固した部分)とその周囲部分の耐食性を高めるために、フィン部材のAl合金芯材にZn,In,Sn等の電位卑化元素を添加してフィンの電位を他の部分よりも卑とすることにより、いわゆる犠牲陽極フィンを構成し、これによって仮に腐食が生じた場合であっても、フィン部材を積極的に腐食させてチューブは腐食しないように構成し、チューブの耐食性を確保してチューブ内を流れる媒体の漏洩が生じないようにすることがなされている。
ところが、フィン部材とチューブが濡れていない場合、あるいは、濡れていても濡れた部分の腐食液の導電率が低い場合、更には、電気化学的に最も卑であるフィン部材が濡れた部分から離れている場合は、その陰極防食効果はほとんど期待できないことになるために、フィン部材のみによる防食機構では不十分となり易い傾向がある。そこで従来では、熱交換器のチューブ全体に、Zn層を溶射またはメッキで形成し、このZn層による犠牲防食機構によってチューブを防食する手法が採用されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く従来の犠牲陽極機構を有する熱交換器にあっては、チューブやろう付け部よりもフィン部材が優先的に腐食することによってチューブの耐食性が高められているが、フィン部材の腐食速度が速く、比較的早期にフィン部材の一部が失われることがあると、熱交換効率の低下や疲労強度の低下を引き起こし易い問題があった。
また、従来構造の熱交換器のチューブにおいては、フィン部材による犠牲陽極防食機構のみでは耐食性の面で不満があり、特に、防食効果の及ばないフィン部材どうしの間で濡れた場合には腐食が早期に進行しやすく、腐食により貫通孔が形成されてしまうおそれもあった。
次に、チューブ全体にZn層を溶射またはメッキにより形成することにより耐食性は改善されるが、Zn層をチューブ全体に形成するために生産コストが上昇し、製造時間も長くなって製造効率が低下してしまう問題があった。
本発明は前記課題に鑑みてなされたおのであって、チューブ全面にZn層を形成しなくともチューブが腐食し難いとともに、チューブとフィン部材にわたって液が付着していない場合であってもチューブの耐食性が高く、フィン部材の耐食性も高いとともに、疲労強度の低下も少ない熱交換器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、複数のヘッダーパイプと、これらのヘッダーパイプ間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付けされたフィン部材とが具備されてなる熱交換器において、前記フィン部材が、Mn:0.05〜2.5%、Si:0.1〜1.5%、Fe:0.2〜1.5%、Zr:0.05〜0.25%、Zn:0.2〜6.0%を含有し残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる芯材と、この芯材の少なくとも一面を被覆して設けられ、Si:3〜15%、Zn:6〜15%を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金のろう材層とからなるブレージングシートから構成され、フィン部材のチューブに対するろう付け部のフィレット部が、ろう材層の溶融凝固により形成されたものであって、フィレット部にZnの濃縮部が形成されるとともに、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材の芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように構成され、この電気化学的に次第に貴となる構成は、前記芯材のZn含有量範囲内におけるZn濃度よりも、前記ろう材層のZn含有量範囲内におけるZn濃度の方が高いことによりなされたことを特徴とする。
【0007】
前記構成であるならば、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置されるので、チューブが最も腐食し難くなる。これにより、特にチューブの全面にZn層を設けなくともチューブの防食効果を得ることができる。
また、相対的に厚さが大きく、応力が集中し難いろう付け部のフィレット部をチューブよりも優先的に腐食させることにより、チューブの腐食を防止し、チューブの腐食による疲労強度低下を防止する。更に、フィン部材よりもろう付け部の電位を卑とすることにより、ろう付け部を犠牲陽極として働かせることができる。
【0008】
このようにすることによって、フィン部材とチューブが濡れていなくとも、距離的に近いろう付け部とチューブが濡れていれば防食可能になる。更に、フィン部材とチューブが濡れていても、濡れた部分に存在する腐食液の導電率が低いと、チューブから距離的に離れているフィン部材の防食効果は期待できないが、犠牲陽極がろう付け部のフィレット部であるならば、ろう付け部のフィレット部がチューブに接触している関係から、チューブの防食が可能になる。
また、前記フィン部材に含有されるZn量を1.0〜5.0%の範囲とすることができる。更に、前記フィン部材に含有されるZn量を3.0〜5.0%の範囲とすることができる。
【0009】
前記の構成において、フィン部材の芯材に、更にTi:0.02〜0.25%、Cr:0.05〜0.25%、V:0.05〜0.25%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Cu:0.05〜0.7%、Mg:0.05〜0.7%の内、1種または2種以上が含有されてなることが好ましい。
更に前記の構成において、チューブが、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.05〜1%、Si:0.1〜1.0%、Mg:0.05〜1.0%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0.02〜0.25%の内、1種または2種以上が含有されたAl合金の押出管からなることが好ましい。
これらの元素を所定の割合で含有する組成とすることで、ろう付け部と、ろう材層と、フィン部材の芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は本発明に係る熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器Aは、左右に離間して配置されて上下方向に伸びるヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互の間に間隙をあけて互いに平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数のチューブ3と、チューブ3にそれぞれろう付けされた波形の複数のフィン部材4を主体として構成されている。
前記ヘッダーパイプ1、2とチューブ3とフィン部材4は、それぞれ熱伝導性に優れたAlまたはAl合金から構成されているが、これらの中でチューブ3は後述の組成のAl合金の押出材から構成され、フィン部材4は、後述の組成のAl合金の芯材4aと、この芯材4aの表面と裏面を覆って設けられた後述の組成のAl合金からなるろう材層4bとからなるブレージングシートをフィン状に加工することで構成されている。
【0011】
前記チューブ3は、MnとCuとSiとMgを添加したAl合金の押出材から形成され、各添加元素の含有量は、0.1%≦Mn≦1.5%、0.05%≦Cu≦1.0%、0.1%≦Si≦1.0%、0.05%≦Mg≦1.0%、0.05%≦Zr≦0.25%、0.02%≦Ti≦0.25%の関係を満足することが好ましい。 前記フィン部材4の芯材4aは、MnとSiとFeとZrとZnを添加したAl合金から形成され、各添加元素の含有量は、0.05%≦Mn≦2.5%、0.1%≦Si≦1.5%、0.2%≦Fe≦1.5%、0.05%≦Zr≦0.25%、0.2%≦Zn≦6.0%の関係を満足することが好ましい。
【0012】
また、前述の芯材4aの組成に加えて、TiとCrとVとInとSnとCuとMgのうち、1種または2種以上を、0.02%≦Ti≦0.25%、0.05%≦Cr≦0.25%、0.05%≦V≦0.25%、0.005%≦In≦0.5%、0.01%≦Sn≦0.5%、0.05%≦Cu≦0.7%、0.05%≦Mg≦0.7%の割合で添加しても差し支えない。
次に、ろう材層4は、SiとZnを添加したAl合金から形成され、各添加元素の含有量は、3%≦Si≦15%、6%≦Zn≦15%の関係を満足することが好ましい。
【0013】
次に、フィン部材4の折曲部4Aとチューブ3のろう付け部を図2に拡大して示すが、フィン部材4の折曲部4Aがチューブ3の外周部に当接され、この当接部まわりのろう材層4bが、ろう付け時の熱により溶融凝固されて折曲部分4Aの先端部周りを覆ってろう付け部6が形成され、このろう付け部6においてろう材が拡がった部分がフィレット部6aとされ、このフィレット部6aにはZnの濃縮部が形成されている。
前記ろう付け部6のフィレット部6aとその周囲部分の構造において、フィレット部6aとろう材層4bと芯材4aとチューブ3の順に次第に電気化学的に貴になるように各部材が設けられている。
【0014】
前記の組成において、ろう材層4bに含まれる元素のなかで、SiはZnとの共存下で融点を低下させ、かつ、ろう材層4bの溶融時に適度な流動性を付与してろう付けを可能にする元素である。Znは融点を低下させるとともに流動性を付与し、ろう付けを可能とする。また、Znは、ろう付け時にフィン部材4の芯材4aおよびチューブ3に拡散し、ろう付け部6のフィレット6aから芯材4aへ向かう、卑→貴への電気化学的電位勾配を形成し、ろう付け部6のフィレット部6a中に多く分布してこれを優先的に腐食させる。
ろう材層4bのSiの含有量において前記の範囲を超えると、加工性の低下、腐食速度の増大、溶融ろう材による芯材の侵食等の原因となるとともに、Znの含有量において前記の範囲を超えると、腐食速度が大きくなり、防食効果の寿命が短縮されるとともに、ブレージングシートからフィン材を形成する場合の圧延などの加工性が低下する。また、SiとZnの含有量が前記の範囲を下回るようであると、融点を降下させる効果が不足であり、流動性の付与も不十分となり易い。
【0015】
フィン部材4の芯材4aに含有させる元素、Mn、Si、Fe、Zrは、ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、ろう付け部の疲労強度を向上させるとともに、Ti、Cr、Vは、組織を微細化して疲労強度を向上させるが、これらの元素が前記の範囲を超えるようであるとフィン部材4としての加工性が低下し、前記の範囲を下回るようであると前記効果が不十分になる。次に、Zn、In、Snは、電気化学的性質を卑にする作用があるので、添加量を調整することによりフィン部材4の電気化学的性質を適宜調節することができる。これらの元素が前記の範囲を超えるようであるとフィン部材4がフィレット部6aよりも卑になる上、自己腐食速度が大きくなりすぎてフィン材4の腐食が速く進行してしまうとともに、前記範囲より少ないと電気化学的性質を調製する作用が不十分になる。
【0016】
チューブ3に含有させる元素として、Mn、Cuは、耐孔食性を向上させるためであり、Si、Mgはろう付け後に微細な金属間化合物として分散し疲労強度を向上させるためであり、ZrとTiは組織を微細化して疲労強度を向上させるためである。これらの元素の含有量が前記の範囲を超えるようであると、押出性が低下し、前記範囲を下回ると前述の各効果が不十分となり易い。
【0017】
前記構造の熱交換器Aを製造する場合にフィン部材4をチューブ3にろう付けるには、ブレージングシートからなるフィン部材4をチューブ3に当接した状で当接部分まわりを590℃以上の温度に3分以上加熱してフィン部材4の表面のろう材層4bを溶融させ、その後に溶融部分を冷却して凝固させ、フィレット部6aを形成することでろう付けができる。ここで、通常の熱交換器においてフィン部材をチューブにろう付けするには、550℃以下の低温でろう材浴にどぶ付けすることにより行っているが、本願発明の構造を実現するには、590℃以上の高温に3分程度以上加熱することが必要である。
このような高温に加熱してろう付けすることにより、芯材4aに含まれるZnとろう材層4b中に含まれるZnがフィレット部6aに十分に拡散して濃縮し、フィレット部6aにZnの濃縮部が形成されるので、ろう付け部6のフィレット部6aと、ろう材層4bと、フィン部材4の芯材4aと、チューブ3の順で電気化学的に次第に貴となるように構成される。従って、ろう付けの際の加熱温度は580℃〜620℃の範囲でより高い温度が好ましく、その場合に1分〜10分程度行うことが好ましい。
【0018】
前記のように電気化学的な電位関係となるならば、これらの部材およびその周囲が湿ってフィン部材4とフィレット部6とチューブ3にまたがって腐食液が付着し腐食環境にされた場合に、フィレット部6aが最初に犠牲陽極になって腐食するので、チューブ3と芯材4aを防食することができる。また、仮にフィレット部6aとチューブ3との間で濡れて、フィン部材4が濡れていない場合であっても、フィレット部6aが犠牲的に腐食することによりチューブ3を防食できるとともに、フィレット部6aとフィン部材4が濡れてチューブ3が濡れていない場合であっても、フィレット部6aが犠牲的に腐食することによりフィン部材4を防食できる。従って前記の構造によれば、フィン部材4とフィレット部6aとチューブ3とに渡って腐食液が接触してこれらが濡れている場合は勿論、フィン部材4とフィレット部とが濡れている場合、あるいは、フィレット部4とチューブ3とが濡れている場合であっても、防食機構が完全に作用し、フィン部材4あるいはチューブ3の防食効果を得ることができる。また、前記の構造によれば、フィン部材の全面にZn溶射などの防食処理を施す必要はなく、その分製造コストを削減でき、製造工程の簡略化もできる。
【0019】
【実施例】
熱交換器(コンデンサ)に図1と図2に示す本願発明の構造を採用した。この構造において、フィン部材の芯材を表1―1に示す組成のAl合金を用い、ろう材層を表1―1に示す組成のAl合金ろう材を用い、チューブとして表1―2の組成のAl合金を用いた。
ろう付けは、600℃で3分間、フラックス塗布N2ガス雰囲気中ノコロックろう付け法で行うものとし、フィン部材の折曲部とチューブとの当接部分のろう材層を溶融凝固させて熱交換器を組み立てた。
この熱交換器に対し、塩水噴霧4時間→乾燥2時間→湿潤2時間の乾湿サイクルを付加するサイクル試験を行い、腐食孔が形成されて腐食貫通が生じるまでの時間を測定して耐食性を評価した。
また、前記の腐食サイクル試験条件に500時間暴露して腐食させた後、疲労強度を評価する目的で無荷重負荷と荷重10kgを周波数30Hzで繰り返し負荷する疲労試験を行い、疲労破壊による漏れを生じるまでの時間を測定した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
表2に示すNo.1〜10の試験結果が本願発明例に相当し、いずれも、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置された例、即ち、孔食電位(mVVSSCE)の値がこれらの順に次第に大きくなる関係とされた例である。
表2に示す結果から明らかなように、これらの順で孔食電位が調整され、更にフィレット部のZn濃度が12〜17%と高くされたNo.1〜10の試料は、いずれも、優れた耐食性を備えていることが明らかである。また、孔食電位を前記の順番に揃えた構成であっても、フィレット部のZn濃度が低いNo.11、15の試料と、フィレット部にZnを含んでいないNo.14の試料はいずれも耐食性に劣ることが明らかである。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置され、電気化学的に次第に貴となる構成は、前記フィン部材の芯材におけるZn濃度よりも前記ろう材層におけるZn濃度が高いことによりなされたので、ろう付け部のフィレット部よりもろう材層が腐食し難くなり、ろう材層よりもフィン部材が腐食し難くなり、フィン部材よりもチューブが腐食し難くなる。これにより、特にフィン部材の全面にZn層を設けなくともチューブおよびフィン部材の防食効果を得ることができる。従って従来必要であった全面Zn層を省略できるので、製造工程の簡略化、製造コストの削減を実現できる。
【0024】
また、相対的に厚さが大きく、応力が集中し難いろう付け部のフィレット部をチューブよりも優先的に腐食させることにより、チューブの腐食を防止し、チューブの腐食による疲労強度低下を防止することができる。更に、フィン部材よりもろう付け部のフィレット部の電位を卑とすることにより、ろう付け部のフィレット部を犠牲陽極として働かせることができる。
このようにすることによって、フィン部材とチューブにまたがって液が付着していなくて、これらが濡れていなくとも、距離的に近いろう付け部のフィレット部とチューブにまたがって液が付着してこれらが濡れていればチューブの防食が可能になる。また、距離的に近いフィン部材とフィレット部にまたがって液が付着してこれらが濡れていれば、フィレット部が犠牲陽極になるので、フィン部材の防食効果を得ることができる。
【0025】
更に、仮に、フィン部材とチューブにまたがって液が付着してこれらが濡れていても、濡れた部分に存在する液の導電率が低いと、チューブから距離的に離れているフィン部材の防食効果は期待できないが、犠牲陽極がろう付け部のフィレット部であるならば、ろう付け部のフィレット部がチューブに接触している関係から、フィレット部とチューブが同時に濡れる場合にチューブの防食効果を確実に得ることができる。また、同様に、フィレット部がフィン部材に接触している関係から、フィレット部が犠牲陽極になるならば、フィレット部とフィン部材が同時に濡れる場合にフィン部材の防食効果を確実に得ることができる。
更に、前記Zn濃度としてフィン部材に含有されるZn量を1.0〜5.0%の範囲とすることができ、この範囲とすることにより、塩水噴霧、乾燥、湿潤の乾湿サイクル試験において腐食貫通までの時間を長くすることができるとともに、更に乾湿サイクル試験後の疲労試験において疲労破壊による漏れを生じるまでの時間を長くすることができるというフィン部材の防食効果を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱交換器の全体を示す側面図。
【図2】 図1に示す熱交換器の要部拡大図。
【符号の説明】
A 熱交換器
1、2 ヘッダーパイプ
3 チューブ
4 フィン部材
4a 芯材
4b ろう材層
6 ろう付け部
6a フィレット部
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィン部材とチューブのろう付け部とその周囲部分の耐食性を向上させた技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の熱交換器において、ヘッダーパイプと称される左右一対の管体の間に多数のチューブを互いに平行に間隔をあけてヘッダーパイプと直角に架設し、各チューブの端部をヘッダーパイプの側面に接続して各チューブの内部空間とヘッダーパイプの内部空間を連通させ、複数のチューブの間にフィン部材を配して熱交換性を高めた構成の熱交換器が知られている。この形式の熱交換器にあっては、ヘッダーパイプの内部と各チューブの内部に渡って媒体が循環され、各チューブ間に配されたフィンを介して効率よく熱交換できるようになっている。
【0003】
そして、この形式の熱交換器においてAlあるいはAl合金からなる熱交換器にあっては、通常、チューブとフィン部材がろう付けにより接合されるので、この際のろう付け性を考慮して、Al-Si系合金などのろう材層を予めAl合金芯材にクラッド圧延した構成のブレージングシートからなるフィン部材が用いられており、このフィン部材がろう付けによりチューブに取り付けられていた。
【0004】
また、前記構成の熱交換器において、ろう付け部のフィレット部(ろう材が溶融凝固した部分)とその周囲部分の耐食性を高めるために、フィン部材のAl合金芯材にZn,In,Sn等の電位卑化元素を添加してフィンの電位を他の部分よりも卑とすることにより、いわゆる犠牲陽極フィンを構成し、これによって仮に腐食が生じた場合であっても、フィン部材を積極的に腐食させてチューブは腐食しないように構成し、チューブの耐食性を確保してチューブ内を流れる媒体の漏洩が生じないようにすることがなされている。
ところが、フィン部材とチューブが濡れていない場合、あるいは、濡れていても濡れた部分の腐食液の導電率が低い場合、更には、電気化学的に最も卑であるフィン部材が濡れた部分から離れている場合は、その陰極防食効果はほとんど期待できないことになるために、フィン部材のみによる防食機構では不十分となり易い傾向がある。そこで従来では、熱交換器のチューブ全体に、Zn層を溶射またはメッキで形成し、このZn層による犠牲防食機構によってチューブを防食する手法が採用されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く従来の犠牲陽極機構を有する熱交換器にあっては、チューブやろう付け部よりもフィン部材が優先的に腐食することによってチューブの耐食性が高められているが、フィン部材の腐食速度が速く、比較的早期にフィン部材の一部が失われることがあると、熱交換効率の低下や疲労強度の低下を引き起こし易い問題があった。
また、従来構造の熱交換器のチューブにおいては、フィン部材による犠牲陽極防食機構のみでは耐食性の面で不満があり、特に、防食効果の及ばないフィン部材どうしの間で濡れた場合には腐食が早期に進行しやすく、腐食により貫通孔が形成されてしまうおそれもあった。
次に、チューブ全体にZn層を溶射またはメッキにより形成することにより耐食性は改善されるが、Zn層をチューブ全体に形成するために生産コストが上昇し、製造時間も長くなって製造効率が低下してしまう問題があった。
本発明は前記課題に鑑みてなされたおのであって、チューブ全面にZn層を形成しなくともチューブが腐食し難いとともに、チューブとフィン部材にわたって液が付着していない場合であってもチューブの耐食性が高く、フィン部材の耐食性も高いとともに、疲労強度の低下も少ない熱交換器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、複数のヘッダーパイプと、これらのヘッダーパイプ間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付けされたフィン部材とが具備されてなる熱交換器において、前記フィン部材が、Mn:0.05〜2.5%、Si:0.1〜1.5%、Fe:0.2〜1.5%、Zr:0.05〜0.25%、Zn:0.2〜6.0%を含有し残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる芯材と、この芯材の少なくとも一面を被覆して設けられ、Si:3〜15%、Zn:6〜15%を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金のろう材層とからなるブレージングシートから構成され、フィン部材のチューブに対するろう付け部のフィレット部が、ろう材層の溶融凝固により形成されたものであって、フィレット部にZnの濃縮部が形成されるとともに、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材の芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように構成され、この電気化学的に次第に貴となる構成は、前記芯材のZn含有量範囲内におけるZn濃度よりも、前記ろう材層のZn含有量範囲内におけるZn濃度の方が高いことによりなされたことを特徴とする。
【0007】
前記構成であるならば、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置されるので、チューブが最も腐食し難くなる。これにより、特にチューブの全面にZn層を設けなくともチューブの防食効果を得ることができる。
また、相対的に厚さが大きく、応力が集中し難いろう付け部のフィレット部をチューブよりも優先的に腐食させることにより、チューブの腐食を防止し、チューブの腐食による疲労強度低下を防止する。更に、フィン部材よりもろう付け部の電位を卑とすることにより、ろう付け部を犠牲陽極として働かせることができる。
【0008】
このようにすることによって、フィン部材とチューブが濡れていなくとも、距離的に近いろう付け部とチューブが濡れていれば防食可能になる。更に、フィン部材とチューブが濡れていても、濡れた部分に存在する腐食液の導電率が低いと、チューブから距離的に離れているフィン部材の防食効果は期待できないが、犠牲陽極がろう付け部のフィレット部であるならば、ろう付け部のフィレット部がチューブに接触している関係から、チューブの防食が可能になる。
また、前記フィン部材に含有されるZn量を1.0〜5.0%の範囲とすることができる。更に、前記フィン部材に含有されるZn量を3.0〜5.0%の範囲とすることができる。
【0009】
前記の構成において、フィン部材の芯材に、更にTi:0.02〜0.25%、Cr:0.05〜0.25%、V:0.05〜0.25%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Cu:0.05〜0.7%、Mg:0.05〜0.7%の内、1種または2種以上が含有されてなることが好ましい。
更に前記の構成において、チューブが、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.05〜1%、Si:0.1〜1.0%、Mg:0.05〜1.0%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0.02〜0.25%の内、1種または2種以上が含有されたAl合金の押出管からなることが好ましい。
これらの元素を所定の割合で含有する組成とすることで、ろう付け部と、ろう材層と、フィン部材の芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は本発明に係る熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器Aは、左右に離間して配置されて上下方向に伸びるヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互の間に間隙をあけて互いに平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数のチューブ3と、チューブ3にそれぞれろう付けされた波形の複数のフィン部材4を主体として構成されている。
前記ヘッダーパイプ1、2とチューブ3とフィン部材4は、それぞれ熱伝導性に優れたAlまたはAl合金から構成されているが、これらの中でチューブ3は後述の組成のAl合金の押出材から構成され、フィン部材4は、後述の組成のAl合金の芯材4aと、この芯材4aの表面と裏面を覆って設けられた後述の組成のAl合金からなるろう材層4bとからなるブレージングシートをフィン状に加工することで構成されている。
【0011】
前記チューブ3は、MnとCuとSiとMgを添加したAl合金の押出材から形成され、各添加元素の含有量は、0.1%≦Mn≦1.5%、0.05%≦Cu≦1.0%、0.1%≦Si≦1.0%、0.05%≦Mg≦1.0%、0.05%≦Zr≦0.25%、0.02%≦Ti≦0.25%の関係を満足することが好ましい。 前記フィン部材4の芯材4aは、MnとSiとFeとZrとZnを添加したAl合金から形成され、各添加元素の含有量は、0.05%≦Mn≦2.5%、0.1%≦Si≦1.5%、0.2%≦Fe≦1.5%、0.05%≦Zr≦0.25%、0.2%≦Zn≦6.0%の関係を満足することが好ましい。
【0012】
また、前述の芯材4aの組成に加えて、TiとCrとVとInとSnとCuとMgのうち、1種または2種以上を、0.02%≦Ti≦0.25%、0.05%≦Cr≦0.25%、0.05%≦V≦0.25%、0.005%≦In≦0.5%、0.01%≦Sn≦0.5%、0.05%≦Cu≦0.7%、0.05%≦Mg≦0.7%の割合で添加しても差し支えない。
次に、ろう材層4は、SiとZnを添加したAl合金から形成され、各添加元素の含有量は、3%≦Si≦15%、6%≦Zn≦15%の関係を満足することが好ましい。
【0013】
次に、フィン部材4の折曲部4Aとチューブ3のろう付け部を図2に拡大して示すが、フィン部材4の折曲部4Aがチューブ3の外周部に当接され、この当接部まわりのろう材層4bが、ろう付け時の熱により溶融凝固されて折曲部分4Aの先端部周りを覆ってろう付け部6が形成され、このろう付け部6においてろう材が拡がった部分がフィレット部6aとされ、このフィレット部6aにはZnの濃縮部が形成されている。
前記ろう付け部6のフィレット部6aとその周囲部分の構造において、フィレット部6aとろう材層4bと芯材4aとチューブ3の順に次第に電気化学的に貴になるように各部材が設けられている。
【0014】
前記の組成において、ろう材層4bに含まれる元素のなかで、SiはZnとの共存下で融点を低下させ、かつ、ろう材層4bの溶融時に適度な流動性を付与してろう付けを可能にする元素である。Znは融点を低下させるとともに流動性を付与し、ろう付けを可能とする。また、Znは、ろう付け時にフィン部材4の芯材4aおよびチューブ3に拡散し、ろう付け部6のフィレット6aから芯材4aへ向かう、卑→貴への電気化学的電位勾配を形成し、ろう付け部6のフィレット部6a中に多く分布してこれを優先的に腐食させる。
ろう材層4bのSiの含有量において前記の範囲を超えると、加工性の低下、腐食速度の増大、溶融ろう材による芯材の侵食等の原因となるとともに、Znの含有量において前記の範囲を超えると、腐食速度が大きくなり、防食効果の寿命が短縮されるとともに、ブレージングシートからフィン材を形成する場合の圧延などの加工性が低下する。また、SiとZnの含有量が前記の範囲を下回るようであると、融点を降下させる効果が不足であり、流動性の付与も不十分となり易い。
【0015】
フィン部材4の芯材4aに含有させる元素、Mn、Si、Fe、Zrは、ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、ろう付け部の疲労強度を向上させるとともに、Ti、Cr、Vは、組織を微細化して疲労強度を向上させるが、これらの元素が前記の範囲を超えるようであるとフィン部材4としての加工性が低下し、前記の範囲を下回るようであると前記効果が不十分になる。次に、Zn、In、Snは、電気化学的性質を卑にする作用があるので、添加量を調整することによりフィン部材4の電気化学的性質を適宜調節することができる。これらの元素が前記の範囲を超えるようであるとフィン部材4がフィレット部6aよりも卑になる上、自己腐食速度が大きくなりすぎてフィン材4の腐食が速く進行してしまうとともに、前記範囲より少ないと電気化学的性質を調製する作用が不十分になる。
【0016】
チューブ3に含有させる元素として、Mn、Cuは、耐孔食性を向上させるためであり、Si、Mgはろう付け後に微細な金属間化合物として分散し疲労強度を向上させるためであり、ZrとTiは組織を微細化して疲労強度を向上させるためである。これらの元素の含有量が前記の範囲を超えるようであると、押出性が低下し、前記範囲を下回ると前述の各効果が不十分となり易い。
【0017】
前記構造の熱交換器Aを製造する場合にフィン部材4をチューブ3にろう付けるには、ブレージングシートからなるフィン部材4をチューブ3に当接した状で当接部分まわりを590℃以上の温度に3分以上加熱してフィン部材4の表面のろう材層4bを溶融させ、その後に溶融部分を冷却して凝固させ、フィレット部6aを形成することでろう付けができる。ここで、通常の熱交換器においてフィン部材をチューブにろう付けするには、550℃以下の低温でろう材浴にどぶ付けすることにより行っているが、本願発明の構造を実現するには、590℃以上の高温に3分程度以上加熱することが必要である。
このような高温に加熱してろう付けすることにより、芯材4aに含まれるZnとろう材層4b中に含まれるZnがフィレット部6aに十分に拡散して濃縮し、フィレット部6aにZnの濃縮部が形成されるので、ろう付け部6のフィレット部6aと、ろう材層4bと、フィン部材4の芯材4aと、チューブ3の順で電気化学的に次第に貴となるように構成される。従って、ろう付けの際の加熱温度は580℃〜620℃の範囲でより高い温度が好ましく、その場合に1分〜10分程度行うことが好ましい。
【0018】
前記のように電気化学的な電位関係となるならば、これらの部材およびその周囲が湿ってフィン部材4とフィレット部6とチューブ3にまたがって腐食液が付着し腐食環境にされた場合に、フィレット部6aが最初に犠牲陽極になって腐食するので、チューブ3と芯材4aを防食することができる。また、仮にフィレット部6aとチューブ3との間で濡れて、フィン部材4が濡れていない場合であっても、フィレット部6aが犠牲的に腐食することによりチューブ3を防食できるとともに、フィレット部6aとフィン部材4が濡れてチューブ3が濡れていない場合であっても、フィレット部6aが犠牲的に腐食することによりフィン部材4を防食できる。従って前記の構造によれば、フィン部材4とフィレット部6aとチューブ3とに渡って腐食液が接触してこれらが濡れている場合は勿論、フィン部材4とフィレット部とが濡れている場合、あるいは、フィレット部4とチューブ3とが濡れている場合であっても、防食機構が完全に作用し、フィン部材4あるいはチューブ3の防食効果を得ることができる。また、前記の構造によれば、フィン部材の全面にZn溶射などの防食処理を施す必要はなく、その分製造コストを削減でき、製造工程の簡略化もできる。
【0019】
【実施例】
熱交換器(コンデンサ)に図1と図2に示す本願発明の構造を採用した。この構造において、フィン部材の芯材を表1―1に示す組成のAl合金を用い、ろう材層を表1―1に示す組成のAl合金ろう材を用い、チューブとして表1―2の組成のAl合金を用いた。
ろう付けは、600℃で3分間、フラックス塗布N2ガス雰囲気中ノコロックろう付け法で行うものとし、フィン部材の折曲部とチューブとの当接部分のろう材層を溶融凝固させて熱交換器を組み立てた。
この熱交換器に対し、塩水噴霧4時間→乾燥2時間→湿潤2時間の乾湿サイクルを付加するサイクル試験を行い、腐食孔が形成されて腐食貫通が生じるまでの時間を測定して耐食性を評価した。
また、前記の腐食サイクル試験条件に500時間暴露して腐食させた後、疲労強度を評価する目的で無荷重負荷と荷重10kgを周波数30Hzで繰り返し負荷する疲労試験を行い、疲労破壊による漏れを生じるまでの時間を測定した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
表2に示すNo.1〜10の試験結果が本願発明例に相当し、いずれも、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置された例、即ち、孔食電位(mVVSSCE)の値がこれらの順に次第に大きくなる関係とされた例である。
表2に示す結果から明らかなように、これらの順で孔食電位が調整され、更にフィレット部のZn濃度が12〜17%と高くされたNo.1〜10の試料は、いずれも、優れた耐食性を備えていることが明らかである。また、孔食電位を前記の順番に揃えた構成であっても、フィレット部のZn濃度が低いNo.11、15の試料と、フィレット部にZnを含んでいないNo.14の試料はいずれも耐食性に劣ることが明らかである。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材のアルミニウム合金芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように部材が配置され、電気化学的に次第に貴となる構成は、前記フィン部材の芯材におけるZn濃度よりも前記ろう材層におけるZn濃度が高いことによりなされたので、ろう付け部のフィレット部よりもろう材層が腐食し難くなり、ろう材層よりもフィン部材が腐食し難くなり、フィン部材よりもチューブが腐食し難くなる。これにより、特にフィン部材の全面にZn層を設けなくともチューブおよびフィン部材の防食効果を得ることができる。従って従来必要であった全面Zn層を省略できるので、製造工程の簡略化、製造コストの削減を実現できる。
【0024】
また、相対的に厚さが大きく、応力が集中し難いろう付け部のフィレット部をチューブよりも優先的に腐食させることにより、チューブの腐食を防止し、チューブの腐食による疲労強度低下を防止することができる。更に、フィン部材よりもろう付け部のフィレット部の電位を卑とすることにより、ろう付け部のフィレット部を犠牲陽極として働かせることができる。
このようにすることによって、フィン部材とチューブにまたがって液が付着していなくて、これらが濡れていなくとも、距離的に近いろう付け部のフィレット部とチューブにまたがって液が付着してこれらが濡れていればチューブの防食が可能になる。また、距離的に近いフィン部材とフィレット部にまたがって液が付着してこれらが濡れていれば、フィレット部が犠牲陽極になるので、フィン部材の防食効果を得ることができる。
【0025】
更に、仮に、フィン部材とチューブにまたがって液が付着してこれらが濡れていても、濡れた部分に存在する液の導電率が低いと、チューブから距離的に離れているフィン部材の防食効果は期待できないが、犠牲陽極がろう付け部のフィレット部であるならば、ろう付け部のフィレット部がチューブに接触している関係から、フィレット部とチューブが同時に濡れる場合にチューブの防食効果を確実に得ることができる。また、同様に、フィレット部がフィン部材に接触している関係から、フィレット部が犠牲陽極になるならば、フィレット部とフィン部材が同時に濡れる場合にフィン部材の防食効果を確実に得ることができる。
更に、前記Zn濃度としてフィン部材に含有されるZn量を1.0〜5.0%の範囲とすることができ、この範囲とすることにより、塩水噴霧、乾燥、湿潤の乾湿サイクル試験において腐食貫通までの時間を長くすることができるとともに、更に乾湿サイクル試験後の疲労試験において疲労破壊による漏れを生じるまでの時間を長くすることができるというフィン部材の防食効果を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱交換器の全体を示す側面図。
【図2】 図1に示す熱交換器の要部拡大図。
【符号の説明】
A 熱交換器
1、2 ヘッダーパイプ
3 チューブ
4 フィン部材
4a 芯材
4b ろう材層
6 ろう付け部
6a フィレット部
Claims (5)
- 複数のヘッダーパイプと、これらのヘッダーパイプ間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付けされたフィン部材とが具備されてなる熱交換器において、前記フィン部材が、Mn:0.05〜2.5%、Si:0.1〜1.5%、Fe:0.2〜1.5%、Zr:0.05〜0.25%、Zn:0.2〜6.0%を含有し残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる芯材と、この芯材の少なくとも一面を被覆して設けられ、Si:3〜15%、Zn:6〜15%を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金のろう材層とからなるブレージングシートから構成され、フィン部材のチューブに対するろう付け部のフィレット部が、ろう材層の溶融凝固により形成されたものであって、フィレット部にZnの濃縮部が形成されるとともに、ろう付け部のフィレット部と、ろう材層と、フィン部材の芯材と、チューブの順で電気化学的に次第に貴となるように構成され、この電気化学的に次第に貴となる構成は、前記芯材のZn含有量範囲内におけるZn濃度よりも、前記ろう材層のZn含有量範囲内におけるZn濃度の方が高いことによりなされたことを特徴とする耐食性に優れた熱交換器。
- 前記フィン部材に含有されるZn量が1.0〜5.0%の範囲とされてなることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた熱交換器。
- 前記フィン部材に含有されるZn量が3.0〜5.0%の範囲とされてなることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた熱交換器。
- 前記フィン部材の芯材に、Ti:0.02〜0.25%、Cr:0.05〜0.25%、V:0.05〜0.25%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Cu:0.05〜0.7%、Mg:0.05〜0.7%の内、1種または2種以上が更に含有されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性に優れた熱交換器。
- 前記チューブが、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.05〜1%、Si:0.1〜1.0%、Mg:0.05〜1.0%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0.02〜0.25%の内、1種または2種以上が含有されたAl合金の押出管からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性に優れた熱交換器。
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