JP3818478B2 - シート型トランス、その製造方法およびシート型トランスを含むスイッチング電源モジュール - Google Patents

シート型トランス、その製造方法およびシート型トランスを含むスイッチング電源モジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子部品としてのトランスに関するもので、特にシート型トランス、その製造方法およびシート型トランスを含むスイッチング電源モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器に対する小型化、高性能化、低価格化の要求は一層強くなってきており、そのためにはこれら電子機器に用いられる電子部品の小型化、高性能化、低価格化が必須である。特にノート型パソコン等の小型携帯機器に用いられる電源モジュールは、その主要部品であるトランスが比較的大型の部品であることより、電源モジュールの小型化、薄型化のためには、トランスの薄型化が求められている。
【0003】
一般に従来のトランスは、ボビンに線材を巻いたものをフェライトコアに挿入して成っており、スイッチング電源を構成する回路基板上に搭載されており、薄型化が困難であった。
【0004】
実開昭61−127618号公報に示されているように、近年、巻線を使わないシート型のトランス等が開発されてきている。これらは巻線型のトランスに比べ薄型化に貢献するが、トランスを構成する1次側、2次側の配線を一体形成した積層板にフェライトコアを挿入して成り、スイッチング電源を構成する回路基板上に搭載されており、フェライトコアの高さに制約されていた。
【0005】
特開平5−82350号公報では、この構造に低抵抗導体である銀ペーストを使ったガラス系セラミック基板の応用例が示されているが、従来の銅巻線を用いたコイルに比べて導通抵抗値は高く、特に2次側回路の抵抗値の高さは、トランスの効率を悪くする問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のスイッチング電源モジュールは、その構成部品であるトランス等の、特に背の高い部分の制約を受けて、薄型化することができなかった。この為、ノート型パソコンをはじめとする小型携帯機器の電源モジュールを機器に組み込むことは、機器本来の小型、薄型化を阻害するため、著しく商品価値をさげることになっていた。従って現在これら機器の電源モジュールは外付け式のACアダプター2に組み込まれる事が一般的である(図16(a))。
【0007】
しかしながらこれら携帯機器の本来の目的である携帯性を考えた時、機器本体の小型・簿型化にもかかわらず、嵩高く厚手のACアダプター2を本体1と一緒に持ち運びすることは、携帯性を著しく阻害していた。
【0008】
さらにはACアダプター2自体の構造もアダプターの両端からそれぞれACコンセントから電流を取り込む為のコードと、機器本体1へ電流を供給する為のコードをそれぞれ2本出すのが一般的であり、コード同士が絡み合うなどの問題が生じていた。この為、図16(b)に示すように、機器本体1に充電式バッテリー8等を組み込めるようにして、外付けのACアダプターを使わないで済むような工夫がなされてきているが、これら充電式バッテリーの1回の充電で使える時間には制約があり、一般的にはその短かさ故、ノート型パソコン等の用途ではデータの保存ができなくなる等の致命的な不具合が生じる可能性もあり、安全性の配慮から、外付け電源を一緒に持ち歩かざるを得ない状況にあった。
【0009】
また、ここで言及したトランスに関して以下特記する。
【0010】
従来のシート型トランスの構造を図17に示す。1次側回路(制御回路含む)、2次側回路(いずれも渦巻きパターン)を形成した各々複数層のシート3を積層して積層体(シート型コイル)4を形成し(図17(b))、2分割されたフェライトコア5を積層体4の中心、及び両端部を取り囲む様に挟み込んで(図17(c))、シート型トランスを形成する(図17(a))。
【0011】
その後、このシート型トランスを多層プリント配線板6上に搭載し、コイルの端子を電気的に接続させていた。この時の断面構造を図18に模式的に表わす。一般にフェライトコア自体は接着剤7等を介して多層プリント配線板6上に取り付けられる。全体の厚みd1は、マザーボードである多層プリント配線板6、接着剤7、フェライトコア5の合計の厚さとなる。
【0012】
従来方法には次の様な問題がある。
【0013】
(1)シート型トランス採用の第一の目的は、トランスを搭載した状態での低背化であるが、1次側回路(制御回路を含む)及び2次側回路を一体化した積層体4ではその厚さが増し、また多層プリント配線板6上にフェライトコア5をそのまま搭載するのでフェライトコア5の厚さ分が加算され、さらなる低背化の障害となっていた。また、フェライトコア5自体をマザーボードに取り付ける際には一般に接着剤7が用いられ、接着剤7の厚みもトータル厚さ低減の障害になっていた。特にマザーボードの片面側にのみ高さが集中することは両面実装している他の部品とのバランスが取りにくく、機器によっては全体の薄型化に支障をきたすことがあった。
【0014】
(2)シート型トランスを使った電子回路を形成する為に、まず積層体を2分割されたフェライトコアで挟み込み、固定する作業をした後、このシート型トランスをマザーボード上に実装する工程が必要で2度手間なっていた。また積層体の端子をマザーボード上の所定の端子に接続するためには、フェライトコアの厚さ分を考慮して接続させなければならない。このため、リード部を設けるなど、手間がかかっていた。
【0015】
(3)1次側と2次側の回路間は規格に基づく一定の耐電圧が必要(例えばlEC−950規格では3.6kV)であるが、一体構造の場合、絶縁間距離の不足、異物の混入、ボイド(空隙)の発生等、製造上の問題によって耐電圧が不足するといった不具合が生じることがあった。また逆に絶縁間距離が大きくなりすぎると、1次側回路と2次側回路の結合度の不足からトランスとしての変換効率が悪くなることがあった。いずれのケースでも一度積層体を形成してからでは調整が不可能であった。
【0016】
(4)シート型トランスの層数が多くなることはコストアップにつながり、少しでも層数を減らすことが望まれる。
【0017】
(5)セラミック基材にて銀導体を用いたシート型基板では、導体のシート抵抗値がせいぜい0.4mΩ/□であり、特に2次側の回路の抵抗値が問題で、トランスとしての効率が悪くなることがあった。
【0018】
(6)トランスの特性で大きな問題となる発熱に関し、従来は、トランスの周辺に温度センサーを設けて管理、制御している。コイルの発熱がフェライトコアを通じてフェライトコアの外部に設けられたセンサーに伝わるのに2時間程度かかることがあり、温度の管理、制御が不正確であった。従来のトランスの構成では独立した部品である温度センサーをフェライトコアの内部に設置することはできなかった。
【0019】
本発明は上記問題に鑑みなされたものである。本発明の目的は、小型・低背な薄型スイッチング電源を創出し、ノート型パソコン等の小型携帯機器に内蔵、又は脱着自在に装着できる、カード/カセット型の電源モジュールを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、このスイッチング電源モジュールに採用して好適な薄型で、導体抵抗の少なく高効率な、安価なシート型トランスを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明のシート型トランスは、複数のシートが積層されて形成されており、渦巻きパターンによって形成された1次側コイル回路を有するとともに、該1次側コイル回路の中心部に第1開口部が設けられたシート型コイル積層体と、渦巻きパターンによって形成された2次側コイル回路を有し、該2次側コイル回路の中心部に第2開口部が設けられるとともに、該2次側コイル回路の両側に第3の開口部がそれぞれ設けられており、前記シート型コイル積層体が、前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とが絶縁された状態で搭載された多層プリント配線板と、前記シート型コイル積層体の第1の開口部を貫通するとともに前記多層プリント配線板の第2の開口部を貫通する芯部と、前記多層プリント配線板の前記各第3の開口部を貫通する外周部とを有し、前記シート型コイル積層体および前記多層プリント配線板を、第1および第2のフェライトコアによって挟み込んで、前記多層プリント配線板に前記シート型コイル積層体を固定するフェライトコアとを備え、前記2次側コイル回路が前記多層プリント配線板の内部に設けられており、該2次側コイル回路と前記1次側コイル回路とが、前記多層プリント配線板を構成する基板材料によって絶縁され、前記多層プリント配線板上には電子部品が搭載されていることを特徴とする。
【0023】
前記シート型コイル積層体は、多層プリント配線板または低温焼成型多層セラミック配線板であってもよい
【0025】
前記多層プリント配線板の各層において、前記2次側コイル回路がそれぞれ形成されており、各2次側コイル回路における渦巻きパターンのそれぞれは、電流の回転方向が同一方向となるように形成されていてもよい。
【0026】
前記シート型コイル積層体は多層セラミック配線板によって構成されており、前記1次側コイル回路が該多層セラミック配線板の各層においてそれぞれ形成されて、該1次側コイル回路における渦巻きパターンは、電流の回転方向が該渦巻きパターンの電流の回転方向と同一方向となるように形成されていてもよい。
【0031】
前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とを絶縁する基板材料がプリプレグ絶縁材であってもよい
【0032】
前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とによる発熱を検出する温度センサーが、前記多層プリント配線板上の前記フェライトコアで囲まれる位置に設けられていてもよい。
【0033】
また、本発明は、請求項1に記載のシート型トランスの製造方法であって、前記シート型コイル積層体を形成する工程と、前記2次側回路が内部に設けられた多層プリント配線板を形成する工程と、その後に、形成された多層プリント配線板上に、形成されたシート型コイル積層体の1次側コイル回路を、該多層プリント配線板を構成する基板材料によって絶縁した状態で搭載する工程と、前記フェライトコアの芯部を前記シート型コイル積層体の前記第1の開口部および前記多層プリント配線板の第2の開口部に貫通させるとともに、前記外周部を前記多層プリント配線板の前記第3の開口部に貫通させて、前記第1および第2のフェライトコアによって、前記多層プリント配線板と前記シート型コイル積層体とを挟み込んで前記多層プリント配線板に前記シート型コイル積層体を固定する工程と、 を包含する。
【0035】
本発明のスイッチング電源モジュールは、請求項1に記載のシート型トランスと、該シート型トランスの動作を制御するために前記多層プリント配線板上に設けられた制御回路とを有する。
【0036】
従来、電源基板の薄型化の為に、シート型トランスを使ったとしても、マザー基板上にフェライトコア一体型のものを搭載しなければならず、フェライトコア自体の厚さが全体の高さの制約となっていた。
【0037】
本発明のトランス構造では、マザー基板をトランスの一部(2次側回路)として使っているので、シート型トランス単体のものをマザー基板上に載せるよりも、全体の厚さを薄くできる。また、トランスを覆うフェライトコアもマザー基板の開口部を通してマザー基板自体を覆うように設置するので、総厚さは少なくともマザー基板の厚さ分は加味されない。これにより、従来にない薄型の基板を創出することが可能となり、ノート型パソコンをはじめとする小型携帯機器の電源モジュールとして機器に組み込むことが可能となり、従来の様に嵩高く厚手のACアダプターを本体と一緒に持ち運びする手間がなくなり、前述の種々の問題点を解決することが可能となる。
【0038】
また、前述した、特にトランスに関する問題については、以下の通り作用する。
【0039】
(1)図10に示すとおり、シート型トランスの2次側回路部を多層プリント配線板6内に形成する事により、多層プリント配線板6上の積層体はシート型コイル積層体11(1次側回路および制御部を含む)のみの厚みで済む。これをフェライトコア5で挟みこんで形成することにより、トータルの厚みd2はフェライトコアの厚さだけに押さえることができ、フェライトコア5を多層プリント配線板6上に搭載固定する為の接着剤等の厚みもなくなる。またフェライトコア5の厚さは基板の上下に分散されるので、各々の面での最大高さをさらに下げることができる。
【0040】
(2)図10に示す通り、シート型コイル積層体11を多層プリント配線板6上に設置し、両者を2分割されたフェライトコア5で挟み込み、固定するという作業だけで実装できる。またシート型コイル積層体11が直接多層プリント配線板6上に接するので、適切な位置に電極端子を設けておくことにより、容易に電気接続できる。
【0041】
(3)1次側回路と2次側回路を個別に形成する為、その間の絶縁は1次側、2次側、あるいはその中間に絶縁体を入れる等、適宜設定することができる。外観検査も容易で絶縁不良等の問題が生じる事が少なく、確実な耐電圧を有することができる。また、1次側回路と2次側回路の結合度に起因する変換効率の調整の為に、任意に絶縁間距離を変更することが容易にでき、基板作成後にも変更可能である。
【0042】
(4)シート型トランス基板の層数は、2次側回路が不要な分、減らすことができ、コストダウンにつながる。2次側回路は従来のマザーボードの作成と同時にできるのでコストアップにつながらない。
【0043】
(5)2次側回路にプリント配線板を用いることで、回路導体に銅箔を使うことができ、比較的容易に導体抵抗値を下げることができる(銅箔70μm厚の場合シート抵抗約0.2mΩ/□)。2次側の導体抵抗を低減させることにより、トランス効率の向上が見込める。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0045】
図1は本実施の形態によるスイッチング電源モジュールの一例の外観を示す模式図である。スイッチング電源モジュールは、マザーボードと呼ばれる多層プリント配線板6、シート型トランス10、入力コネクタ12、出力コネクタ13、パワーFET14および電解コンデンサ15等のその他の部品を含んでいる。
【0046】
図2はスイッチング電源モジュールの一例を断面を示す模式図である。シート型トランス10は、トランスの1次側回路が形成されているシート型コイル積層体11を備えており、多層プリント配線板6のフェライトコア5で囲まれた部分には2次側回路が形成されている。スイッチング電源モジュールは、チョークコイル16,IC17等、その他のスイッチング電源回路を形成する部品をさらに含んでいる。
【0047】
スイッチング電源モジュールの製造プロセスを、特にシート型トランス10を中心に、以下、図3〜図10を用いて説明する。
【0048】
多層セラミック配線板を構成するグリーンシート3上の所定の位置に1次側パターン、及び制御部パターン及び接続用ビアを印刷形成する(図3)。グリーンシート3を多層積層し、焼成することにより、シート型コイル積層体11を作製する(図4)。この時、グリーンシート3の中央にはフェライトコア5を挿入する穴11Aを穿孔させておく。なお、グリーンシート3を多層積層し、焼成する前に穴11Aを穿孔してもよい。
【0049】
多層セラミック配線板としてはガラス系低温焼成タイプの基材を用い、銀又は銅導体の組合わせがあるが、さらに多層プリント配線板等も用いることができる。
【0050】
また、配線板の層数はパターン巻き数とパターン幅、コイルサイズによって決まる。例えば50Wクラスのスイッチング電源用途としては、1層当たり5巻きのコイルを12層重ねる(図5)。この時制御用コイルとして1層当たり3.5巻きのコイルを2層重ねる。このパターン形状は一般的なもので、これを限定するものではない。
【0051】
図6を参照して、マザーボードとして、所定の位置に2次側パターンを形成した多層プリント配線板6を別途作製する。この時多層プリント配線板6にはフェアライトコア5を挿入する穴6A、6Bを穿孔させておく。
【0052】
前述のスイッチング電源用途としては、1層当たり3.5巻きのコイルを2層重ねる(図7)。
【0053】
多層プリント配線板6上にシート型コイル積層体11を搭載し、シート型コイル積層体11の下部に設けた端子と多層プリント配線板6上の端子とを半田等で接続する。その後フェアライトコア5で挟み込み固定する(図8)。
【0054】
図6を参照して、フェライトコアの内部に設けられ、コイル部による発熱を検出する温度センサーを説明する。温度センサー61は、多層プリント配線板6上の、フェライトコア5で囲まれる位置に座刳り等を施すことにより、設けられている。
【0055】
図9は、本実施の形態に係るシート型コイルの製造方法のフローチャートを示す。まず、シート型コイル積層体11を作成する(S901)。次に、多層プリント配線板6を作成する(S902)。次に、シート型コイル積層体11を多層プリント配線板6上に搭載する(S903)。次に、シート型コイル積層体11をフェライトコア5で挟み込み、多層プリント配線板6上に固定し、シート型コイルが完成する(S904)。
【0056】
本実施の形態に係るシート型トランスの断面構造を図10に模式的に表す。シート型トランスを構成する1次側コイル回路(及び制御回路)はシート型コイル積層体11に形成され、2次側コイル回路は多層プリント配線板6内に形成されている。この両回路を囲むようにフェアライトコア5で挟み込むことで、シート型トランスを構成する。全体の厚みd2は、フェアライトコア5の厚さのみとなる。
【0057】
従来のシート型トランス(マザーボードを含む)のトータル厚さd1(図18)は約12mmであるのに対し、本実施形態の場合のトータル厚さd1は9.8mmと薄くなっている。ここで図10と図18とを比較することにより、本発明のトランス(図10)と従来トランス(図18)の高さ(薄型)の差異が明らかである。
【0058】
図11〜図14を参照して、シート型コイル積層体11(1次側回路)と多層プリント配線板6(2次側回路)とを絶縁する絶縁手段を説明する。
【0059】
図11を参照して、シート型コイル積層体11と多層プリント配線板6との間に設けられた絶縁シート111を本発明の参考例として説明する。シート型コイル積層体11と多層プリント配線板6との間に適切な絶縁シート111を挟み込むことにより、シート型コイル積層体11に形成された1次側回路11Cと多層プリント配線板6に形成された2次側回路6Cとの間の絶縁が確保される。
【0060】
図12を参照して、シート型コイル積層体11に形成された絶縁体シートを説明する。1次側回路11Cを有するシート型コイル積層体11の内部に回路導体を形成することにより、積層体材料(セラミックまたはプリント基板材料)自体を絶縁体として機能させる。即ち、シート型コイル積層体11の多層プリント配線板6側に形成された積層体である絶縁体シート11Bが、シート型コイル積層体11に形成された1次側回路11Cと多層プリント配線板6に形成された2次側回路6Cとを絶縁する。1次側回路11Cを有するシート型コイル積層体11を多層セラミック基板でつくる場合は、絶縁体シート11Bはグリーンシートから成る。1次側回路11Cを有するシート型コイル積層体11を多層プリント基板でつくる場合は、絶縁体シート11Bはプリプレグから成る。
【0061】
図13を参照して、多層プリント配線板6に形成された絶縁ペーストを本発明の参考例として説明する。絶縁ペーストとしてはソルダーレジスト6Sが用いられる。多層プリント配線板6に形成された2次側回路6Cをソルダーレジスト6Sを用いて覆うことにより、シート型コイル積層体11に形成された1次側回路11Cと多層プリント配線板6に形成された2次側回路6Cとの間の絶縁が確保される。ソルダーレジスト6Sは、これに類する絶縁塗料であってもよい。ソルダーレジスト6Sと図11で説明した絶縁シート111を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
図14を参照して、多層プリント配線板6の外層に形成されたプリプレグ絶縁材を説明する。多層プリント配線板6の内部に回路導体を形成することにより、基板材料が最外層6PXに位置し、シート型コイル積層体11に形成された1次側回路11Cと多層プリント配線板6に形成された2次側回路6Cとの間の絶縁が確保される。多層プリント配線板6は、一般によく知られている多層基板の製造方法により製造される。ここで使われる多層プリント配線板用の材料をプリプレグ(積層・硬化前の基板材料)と呼ぶ。プリプレグとは、ガラスクロスや紙等の基材に調整された樹脂ワニスを含浸させ、乾燥処理した半硬化状態のシートをいう。多層プリント配線板6の各層6PA、6PB、6PXはプリプレグから成っており、加工・硬化させることにより、多層プリント配線板6が形成される。
【0063】
図15を参照して、本実施の形態に係るシート型トランスと、シート型トランスの動作を制御する制御回路とを含んでいるスイッチング電源モジュールを説明する。1次巻線18はシート型コイル積層体11に形成された1次側回路に対応し、2次巻線19は多層プリント配線板6に形成された2次側回路に対応する。
【0064】
交流電源151がオンされると、交流電圧は1次側整流平滑回路152で整流されて直流電圧となり、スイッチング素子156に供給される。1次側整流平滑回路152で整流された直流電圧は同時に補助電源回路153に供給される。
【0065】
その結果、補助電源回路153内の電解コンデンサの電位が徐々に上昇し、PWM制御回路154の動作開始電圧に達した時点でPWM制御回路154は動作を開始する。PWM制御回路154が動作を開始するとスイッチング素子156がオンオフ動作し、トランス157の2次巻線19および3次巻線20に交流電圧を出力して、2次側整流平滑回路155を介して負荷に電力を供給するとともに、補助電源回路153に電圧を供給してPWM制御回路154を動作状態に保つ。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、従来にない薄型の基板を創出することが可能となり、この為ノート型パソコンをはじめとする小型携帯機器の電源モジュールとして機器に組み込むことが可能となり、従来の様に嵩高く厚手のACアダプタを本体と一緒に持ち運びする手間がなくなり、前述の種々の問題点を解決することが可能となる。
【0067】
特にトランス部に係わる問題に対しては、以下の通りの効果を奏する。
【0068】
(1)シート型トランスの2次側コイル部をマザーボード内に形成する事により、マザーボード上に乗る積層体は1次側コイル部(制御部含む)のみの厚みで済む。これをフェライトコアで挟み込んで形成することにより、トータル厚みはフェライトコアの厚さだけに押さえることができ、フェライトコアをマザーボード上に搭載固定する為の接着剤等の厚みもなくなる。またフェライトコアの厚さは基板の上下に分散されるので、各々の面での最大高さをさらに下げることができ、機器全体の薄型化が実現できる。
【0069】
(2)1次側コイル部をマザーボード上に設置し、両者を2分割されたフェライトコアで挟み込み、固定するという作業だけで実装できる、従来の如く、一度シート型トランスをフェアライトコアで挟み込んで固定した後、フェアライトコアごとマザーボードに取り付けるという手間が省ける。また1次側コイル部が直接マザーボード上に接するので、適切な位置に電極端子を設けておくことにより、リード部等を設けることなく容易に電気接続できる。
【0070】
(3)1次側回路と2次側回路とを個別に形成する為、その間の絶緑は1次側、2次側、あるいはその中間に絶緑体を入れる等、適宜設定することができ、外観検査も容易で絶緑不良等の間題が生じる事が少なく、確実な耐電圧を有すことができる。また、1次側回路と2次側回路の給合度に起因する変換効率の調整の為に、任意に絶縁間距離を変更することが容易にでき、基板作製後にも変更可能である。
【0071】
(4)1次側コイル部に2次側回路が不要なので、層数も減り、コストダウンにつながる。2次側回路は従来のマザーボードの作製と同時にできるのでコストアップにはつながらない。ここでマザーボードだけで多層コイルを形成する事は、基板の層数が極端に増え、サイズも大きいことにより極端なコストアップにつながり現実的ではない。
【0072】
(5)2次側回路にプリント配線板を用いる事で、回路導体に銅箔を使う事ができ、比鞍的容易に導体抵抗値を下げることができる(銅箔70μm厚の場合シート抵抗約0.2mΩ/□)。2次側の導体抵抗を低減させることにより、トランス効率の向上が見込める。
【0073】
(6)温度センサーをマザーボード内の配線に支障ない領域に切り穴形成等により設置することができるので、従来の様にコイルの発熱がフェライトコアを通じて外部のセンサーに伝わるのに2時間程度かかることがなくなり、正確な管理、制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るスイッチング電源モジュールの斜視図。
【図2】本実施の形態に係るスイッチング電源モジュールの断面図。
【図3】本実施の形態に係る1次側コイルの積層方法の説明図。
【図4】本実施の形態に係る1次側コイルの斜視図。
【図5】本実施の形態に係る1次側回路のコイルパターン(5巻き)の模式図。
【図6】本実施の形態に係るシート型コイルの構造の説明図。
【図7】本実施の形態に係る2次側回路のコイルパターン(3.5巻き)の模式図。
【図8】本実施の形態に係るシート型コイルの斜視図。
【図9】本実施の形態に係るシート型コイルの製造方法のフローチャート。
【図10】本実施の形態に係るシート型コイルの断面図。
【図11】本実施の形態に係るシート型コイルに用いられる絶縁シート111の説明図。
【図12】本実施の形態に係るシート型コイルに用いられる絶縁体シート11Bの説明図。
【図13】本実施の形態に係るシート型コイルに用いられる絶縁ペーストの説明図。
【図14】本実施の形態に係るシート型コイルに用いられるプリプレグ絶縁体の説明図。
【図15】本実施の形態に係るスイッチング電源モジュールの回路図。
【図16】ノート型パソコンに用いられる電源モジュールの使用例を示す模式図。
【図17】従来のシート型トランスの製造方法および構造を示す模式図。
【図18】従来のシート型トランスの断面構造を示す模式図。
【符号の説明】
1 ノートパソコン本体
2 電源モジュール
3 グリーンシート(又はプリント基板の各層を表わす)
4 シート型コイル積層体(1次、2次、制御回路を含む)
5 フェライトコア
6 多層プリント配線板
7 部品固定用接着剤
11 シート型コイル積層体(1次、制御回路のみ)

Claims (8)

  1. 複数のシートが積層されて形成されており、渦巻きパターンによって形成された1次側コイル回路を有するとともに、該1次側コイル回路の中心部に第1開口部が設けられたシート型コイル積層体と、
    渦巻きパターンによって形成された2次側コイル回路を有し、該2次側コイル回路の中心部に第2開口部が設けられるとともに、該2次側コイル回路の両側に第3の開口部がそれぞれ設けられており、前記シート型コイル積層体が、前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とが絶縁された状態で搭載された多層プリント配線板と、
    前記シート型コイル積層体の第1の開口部を貫通するとともに前記多層プリント配線板の第2の開口部を貫通する芯部と、前記多層プリント配線板の前記各第3の開口部を貫通する外周部とを有し、前記シート型コイル積層体および前記多層プリント配線板を、第1および第2のフェライトコアによって挟み込んで、前記多層プリント配線板に前記シート型コイル積層体を固定するフェライトコアとを備え、
    前記2次側コイル回路が前記多層プリント配線板の内部に設けられており、該2次側コイル回路と前記1次側コイル回路とが、前記多層プリント配線板を構成する基板材料によって絶縁され、
    前記多層プリント配線板上には電子部品が搭載されていることを特徴とするシート型トランス。
  2. 前記シート型コイル積層体は、多層プリント配線板または低温焼成型多層セラミック配線板である、請求項1に記載のシート型トランス。
  3. 前記多層プリント配線板の各層において、前記2次側コイル回路がそれぞれ形成されており、各2次側コイル回路における渦巻きパターンのそれぞれは、電流の回転方向が同一方向となるように形成されている、請求項1に記載のシート型トランス。
  4. 前記シート型コイル積層体は多層セラミック配線板によって構成されており、前記1次側コイル回路が該多層セラミック配線板の各層においてそれぞれ形成されて、該1次側コイル回路における渦巻きパターンは、電流の回転方向が該渦巻きパターンの電流の回転方向と同一方向となるように形成されている、請求項1に記載のシート型トランス。
  5. 前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とを絶縁する基板材料がプリプレグ絶縁材である、請求項1に記載のシート型トランス。
  6. 前記1次側コイル回路と前記2次側コイル回路とによる発熱を検出する温度センサーが、前記多層プリント配線板上の前記フェライトコアで囲まれる位置に設けられている、請求項1に記載のシート型トランス。
  7. 請求項1に記載のシート型トランスの製造方法であって、
    前記シート型コイル積層体を形成する工程と、
    前記2次側回路が内部に設けられた多層プリント配線板を形成する工程と、
    その後に、形成された多層プリント配線板上に、形成されたシート型コイル積層体の1次側コイル回路を、該多層プリント配線板を構成する基板材料によって絶縁した状態で搭載する工程と、
    前記フェライトコアの芯部を前記シート型コイル積層体の前記第1の開口部および前記多層プリント配線板の第2の開口部に貫通させるとともに、前記外周部を前記多層プリント配線板の前記第3の開口部に貫通させて、前記第1および第2のフェライトコアによって、前記多層プリント配線板と前記シート型コイル積層体とを挟み込んで前記多層プリント配線板に前記シート型コイル積層体を固定する工程と、
    を包含するシート型トランスの製造方法。
  8. 請求項1に記載のシート型トランスと、
    該シート型トランスの動作を制御するために前記多層プリント配線板上に設けられた制御回路とを有するスイッチング電源モジュール。
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