JP3817813B2 - インクジェット記録用水性インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吐出オリフィスから吐出させ液滴として飛翔させて記録を行うインクジェット記録方法に適用される水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は現在知られる各種記録法式の中でも、記録時に騒音のほとんどないノンインパクト記録方式であって、且つ、高速記録が可能であり、しかも普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記録が行える等の利点を有している。このようなインクジェット記録方法に用いられるインクとしては、有機溶剤を媒体とする油性インクや水を媒体とする水性インクが知られているが、安全性や匂い等の観点から水性インクが優れており、特にパーソナルユースのインクジェットプリンタでは水性インクが主流となっている。
【0003】
しかし、このような水性インクを用いて得られた画像は、水によってにじみが生じて画像が不鮮明になり易く、また摩耗性や耐久性に劣るという欠点を有するものであった。このような問題を解決するため従来より種々のインクが提案されているが、ノズルの目詰まり等の新たな問題が生じたり、上述した問題を十分に解決することはできなかった。
【0004】
例えば、特開昭54−58504号公報には、疎水性染料溶液とビニル系重合体微粒子を水性媒体に分散したインクが記載されており、ビニル系重合体微粒子は染料溶液の溶剤により膨潤され着色されて水性媒体中に分散されている。このインクの場合、画像の耐水性は向上されるが重合体微粒子が溶剤で膨潤されているためノズルの目詰まりが生じやすいという欠点がある。
【0005】
また、特開平3−210373号公報には、水性媒体中に酸性カーボンブラックおよび水溶性樹脂を含むインクジェット用インクが、特開平4−18462号公報には、水性媒体中に顔料、マイクロエマルジョンおよび顔料の分散剤である水溶性樹脂を含むインクジェット用インクが、また、特開平6−145570号公報には、水に不溶な樹脂エマルジョン、顔料および高分子分散剤を含むインクジェット用インクがそれぞれ記載されている。これらのインクでは顔料の分散剤の影響でノズルの目詰まりを生じやすいという欠点があり、またこのため分散剤の含有量を少なくすると顔料等の水性媒体に対する分散性が不十分になってしまうという問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題を解決し、ノズルの目詰まりが発生せず、水によるにじみが生じがたく、且つ耐摩耗性や耐久性に優れたインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤、ビニル系単量体および色材を含有する着色樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、水溶性有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させて得られた非球形着色樹脂微粒子を含有するインクジェット記録用水性インクに関する。
【0008】
また、本発明は、イオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤およびビニル系単量体を含有する樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、水溶性有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させて得られた非球形樹脂微粒子と、色材とを水系媒体に分散させたインクジェット記録用水性インクに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、イオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤およびビニル系単量体を含有する樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、前記有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させて得られた非球形樹脂微粒子を水系媒体中に含んでいる。色材は樹脂微粒子中に含有させる形態あるいは樹脂微粒子とは別に水系媒体中に分散させる形態のいずれでもよい。
【0010】
通常、イオン性基を有する樹脂およびこの樹脂を溶解可能な有機溶剤を含有する樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、前記有機溶剤を除去して得られた樹脂微粒子は球形の微粒子である。本発明においてはビニル系単量体が樹脂溶液に添加されており、有機溶剤の除去とビニル系単量体の重合によって粒子表面に収縮が生じて、得られる樹脂粒子表面に凹凸が形成され非球形化される。
【0011】
このような特定の樹脂微粒子は、水系媒体に対して非膨潤性であるためノズルの目詰まりが発生せず、イオン性基の存在により水系媒体に対する分散性が優れており、さらにその形状に起因して画像のにじみ防止性に優れている。また、画像を擦った際の耐摩耗性にも優れている。
【0012】
本発明の樹脂微粒子を構成する樹脂としては、その表面にイオン性基を有するものであれば良く、例えばポリエステル系樹脂、ビニル重合体、ポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等の様々な樹脂を用いることができるが、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0013】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸類と多価アルコール類からなり、多価カルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸等を例示することができ、また多価アルコール類としては、脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等を例示することができる。また、ポリエステル系樹脂として、主鎖がポリエステルまたはポリエステルポリウレタンであり、側鎖がラジカル重合性不飽和単量体であるグラフト生成物も使用可能である。
【0014】
樹脂微粒子は、その表面にイオン性基を含有することによって優れた水分散性を発現する。このようなイオン性基としてはスルホン酸基、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基もしくはこれらのアルカリ金属塩基やアンモニウム塩基、または第1級〜第3級アミン基等を例示することができ、カルボン酸アルカリ金属塩基、カルボン酸アンモニウム塩基、スルホン酸アルカリ金属塩基およびスルホン酸アンモニウム塩基が好ましく、特にスルホン酸アルカリ金属塩基およびスルホン酸アンモニウム塩基が水分散安定性の点で好ましい。上述したイオン性基の導入は、樹脂微粒子合成時にイオン性基を有する単量体を添加すればよい。
【0015】
ポリエステル系樹脂微粒子にイオン性基としてカルボン酸アルカリ金属塩基またはカルボン酸アンモニウム塩基を導入する場合には、ポリエステルの重合末期にトリメリット酸等の多価カルボン酸を系内に導入することにより樹脂末端にカルボキシル基を付加し、さらにこれをアンモニア、水酸化ナトリウム等にて中和することによりカルボン酸塩の基に交換する方法用いることができる。また、ポリエステル系樹脂微粒子にイオン性基としてスルホン酸アルカリ金属塩基またはスルホン酸アンモニウム塩基を導入する場合には、スルホン酸アルカリ金属塩基またはスルホン酸アンモニウム塩基を有するモノまたはジカルボン酸を含有することにより、これらのイオン性基をポリエステル樹脂に導入することができる。塩としてはアンモニウム系イオン、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等が挙げられ、特に好ましいものはKまたはNaである。
【0016】
本発明においては、まずこのようなイオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤、ビニル系単量体、重合開始剤および必要に応じて色材を混合した樹脂溶液を調整する。次にこの樹脂溶液に水系媒体を加え転相乳化させて分散した後、系内の温度を上昇させて有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させる。
【0017】
本発明に用いられるイオン性基を有する樹脂を溶解可能な有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレンまたはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0019】
ビニル系単量体を重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2’ーアゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル、2,2’ーアゾビスイソブチロニトリル、1,1’ーアゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’ーアゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0020】
本発明において、色材としては公知の水溶性染料あるいは水に不溶の染顔料が使用可能であるが、耐水性向上の観点から水に不溶の色材を使用することが好ましく、例えば有機あるいは無機の顔料、分散染料、油溶性染料等が挙げられる。色材を上述した樹脂微粒子に含有させて着色樹脂微粒子としてインクに添加する場合、着色樹脂微粒子は、例えばイオン性基を有する樹脂、水溶性有機溶剤、色材およびビニル系単量体を含有する樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、水溶性有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させることにより得ることができる。このように色材を樹脂微粒子に含有させると、この樹脂微粒子が上述したように優れた水分散性を有しているため、色材の水分散性を向上させるために水溶性樹脂等の分散剤を水系媒体中に添加する必要がなく、水溶性樹脂等によるノズルの目詰まり等の問題が生じないため好ましい。
【0021】
上記着色樹脂微粒子としては平均粒径が0.01〜1μm、好ましくは0.05〜0.8μmのものを使用することが望ましい。これは平均粒径が小さすぎると画像濃度の低下や耐水性の低下を招く恐れがあり、また大きすぎるとインク中における分散安定性が低下して沈降し易くなり、またノズルの目詰まりも生じ易くなる。
【0022】
着色樹脂微粒子中の色材の含有量は、着色樹脂微粒子に対して1〜100重量%、好ましくは10〜70重量%である。色材の含有量が1重量%より少ないと十分な発色を得ようとした際に着色樹脂粒子をインク中に多量に添加する必要が生じ、また100重量%より多いと色材が樹脂粒子の外に析出し易くなる。また、着色樹脂微粒子のインクに対する含有量は1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。着色樹脂微粒子の含有量が1重量%より少ないと十分な発色が得られなくなり、50重量%より多いと分散安定性の低下を招く恐れがある。
【0023】
一方、色材と樹脂微粒子をそれぞれ水系媒体に分散させてインクとする場合には、インク中の色材の含有量は0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%であり、また樹脂微粒子の含有量は1〜15重量%、好ましくは5〜10重量%が好ましい。樹脂粒子の含有量が多すぎるとノズルが詰まる場合や画像の発色性が低下することがあり、少なすぎると添加による効果が不十分となる。
【0024】
また、樹脂微粒子としては平均粒径が0.01〜1μm、好ましくは0.05〜0.8μmのものを使用することが望ましい。これは平均粒径が小さすぎると画像濃度の低下や耐水性の低下を招く恐れがあり、また大きすぎるとインク中における分散安定性が低下して沈降し易くなり、またノズルの目詰まりも生じ易くなる。なお、樹脂微粒子の平均粒径はレーザー光拡散方式粒度分布測定機で測定した。
【0025】
本発明のインクには上述した成分以外に、公知の各種有機溶剤や添加剤を含有してもよい。インクの保湿性、表面張力、粘度、乾燥速度等を調整するために水溶性有機溶剤を含有させることが好ましい。水溶性有機溶剤としてはエタノール、イソプロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールの低級アルキルエーテル類、2ーピロリドンおよびNーメチル−2ーピロリドン等のピロリドン類、グリセリン等を用いることができる。これらの水溶性有機溶剤を含有させる場合には、インク全量に対して1〜30重量%含有させることが好ましい。なお、これらの水溶性有機溶剤は、上記樹脂微粒子に対して非膨潤性のものを使用することが目詰まり防止性の観点から好ましい。
【0026】
また、インクの保存安定性を向上させるためにインクのpHを7〜10に調整することが好ましい。pH調整剤としては、NaHCO3、Na2B4O7、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の水性顔料インクには、公知の粘度調整剤、防黴剤及び防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、分散安定剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤(キレート剤)等の添加剤を適宜選択して適量使用することもできる。
【0028】
【実施例】
(着色樹脂微粒子分散液1の製造例)
温度計、攪拌機を備えたオートクレーブ中に、ジメチルテレフタレート200重量部、5ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル10重量部、エチレングリコール150重量部、トリシクロデカンジメタノール30重量部、テトラブトキシチタネート0.1重量部を仕込み200℃で約3時間加熱してエステル交換反応を行った。ついで反応系を240℃まで昇温し、系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を続けて共重合ポリエステル樹脂を得た。次に、得られたポリエステル樹脂100重量部、メチルエチルケトン250重量部、テトラヒドロフラン250重量部、ビニル系単量体としてスチレンとブチルメタクリレートの混合物(重量比7:3)50重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、C.I.Disperse Blue 87のコンクケーキ100重量部を十分に混合した後、水1000重量部を添加して転相乳化させ、着色樹脂溶液の水系ミクロ分散体を得た。さらに得られた水系ミクロ分散体を100℃に昇温して溶剤を留去させるとともにビニル系単量体を重合させた。冷却後に水を加え固形分濃度を20重量%とし、着色樹脂微粒子分散液1(C)を得た。分散液中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.2μmであり、電子顕微鏡写真で観察したところ樹脂微粒子表面に凹凸が形成されて非球形化されていた。
【0029】
また、C.I.Disperse Blue 87をC.I.Disperse Yellow 162 に変更する以外は同様にして、着色樹脂微粒子分散液1(Y)を得た。また、C.I.Disperse Blue 87を、C.I.Disperse Red 92およびC.I.Solvent Black 3にそれぞれ変更する以外は同様にして、着色樹脂微粒子分散液1(M)および着色樹脂微粒子分散液1(BK)を得た。
【0030】
(着色樹脂微粒子分散液2の製造例)
着色樹脂微粒子分散液1の製造例において、ビニル系単量体および重合開始剤を添加しないこと以外は同様にして着色樹脂微粒子分散液2(C、Y、MおよびBK)を得た。分散液中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.2μmであり、電子顕微鏡写真で観察したところ樹脂微粒子は球形であった。
【0031】
(着色樹脂微粒子分散液3の製造例)
着色樹脂微粒子分散液1の製造例において、共重合ポリエステル樹脂を得る反応時間を120分間に変更すること以外は同様にして着色樹脂微粒子分散液3(C、Y、MおよびBK)を得た。分散液中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.5μmであり、電子顕微鏡写真で観察したところ樹脂微粒子表面に凹凸が形成されて非球形化されていた。
【0032】
(樹脂微粒子分散液1の製造例)
着色樹脂微粒子分散液1の製造例において、色材C.I.Disperse Blue 87を添加しないこと以外は同様にして樹脂微粒子分散液1を得た。分散液中の樹脂微粒子の平均粒径は0.2μmであり、電子顕微鏡写真で観察したところ樹脂微粒子表面に凹凸が形成されて非球形化されていた。
【0033】
(樹脂微粒子分散液2の製造例)
着色樹脂微粒子分散液の製造例1において、ビニル系単量体、重合開始剤および色材C.I.Disperse Blue 87を添加しないこと以外は同様にして樹脂微粒子分散液2を得た。分散液中の樹脂微粒子の平均粒径は0.2μmであり、電子顕微鏡写真で観察したところ樹脂微粒子は球形であった。
【0034】
(実施例1)
着色樹脂微粒子分散液1(C、Y、MおよびBK)のそれぞれについて、グリセリンおよび水を添加し、着色樹脂微粒子10重量%およびグリセリン15重量%を含有する各色の水性インクを得た。
【0035】
次に、この各インクをインクジェット記録装置(MJ500C;エプソン社製)を用いて印字した。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りは見られず、優れた耐にじみ性を有していた。文字を印字したところ文字まわりにヒゲ状のノイズは見られず文字のシャープネスも優れていた。得られた画像を指で強く摩擦しても印字文字ははがれ落ちず優れた耐摩擦性を有していた。また、インクの吐出性は安定しており、ノズルにインクが固化することもなく、数時間後の印字テストにおいても吐出不良は発生しなかった。また画像を1分間水に浸漬し、乾燥させた後の画像と浸漬前の画像について色差計で色差を測定したところ、浸漬試験前後の色差変動量ΔEは5未満と小さく優れた耐水性を有していることが確認された。なお色差変動量ΔEは下記式(1)により求めた。
【0036】
【数1】
【0037】
さらに耐光試験機(SUNTESTER XF-180;島津製作所社製)にてキセノンランプで15時間(光強度31W/400nm〜14W/600nm)光照射を行い、光照射前後の画像について色差計で色差を測定したところ、光照射試験前後の色差変動量は5未満と小さく優れた耐光性を有していることが確認された。なお、この色差変動量も上記式(1)より求めた。
【0038】
(実施例2)
着色樹脂微粒子分散液3(C、Y、MおよびBK)のそれぞれについてグリセリンおよび水を添加し、着色樹脂微粒子10重量%およびグリセリン15重量%を含有する各色の水性インクを得た。
【0039】
次に、実施例1と同様にして印字評価を行った。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りは見られず、優れた耐にじみ性を有していた。文字を印字したところ文字まわりにヒゲ状のノイズは見られず文字のシャープネスも優れていた。得られた画像を指で強く摩擦しても印字文字ははがれ落ちず優れた耐摩擦性を有していた。また、インクの吐出性は安定しており、ノズルにインクが固化することもなく、数時間後の印字テストにおいても吐出不良は発生しなかった。また耐水性および耐光性についても実施例1と同様優れていた。
【0040】
(実施例3)
樹脂微粒子分散液1にカーボンブラック(MICROJET C-TYPE;オリエント化学工業社製)、グリセリンおよび水を添加し、カーボンブラック4重量%、樹脂微粒子6重量%およびグリセリン15重量%を含有する黒色水性インクを得た。
【0041】
次に、実施例1と同様にして印字評価を行った。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りは見られず優れた耐にじみ性を有していた。文字を印字したところ文字まわりにヒゲ状のノイズは見られず文字のシャープネスも優れていた。得られた画像を指で強く摩擦しても印字文字ははがれ落ちず優れた耐摩擦性を有していた。また、インクの吐出性は安定しており、ノズルにインクが固化することもなく、数時間後の印字テストにおいても吐出不良は発生しなかった。また耐水性および耐光性についても実施例1と同様優れていた。
【0042】
(比較例1)
着色樹脂微粒子分散液2(C、Y、MおよびBK)のそれぞれについてグリセリンおよび水を添加し、着色樹脂微粒子10重量%およびグリセリン15重量%を含有する各色の水性インクを得た。
【0043】
次に、実施例1と同様にして印字評価を行った。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りが若干見られ、実施例1のインクに比べて耐にじみ性が劣っていた。文字を印字したところ文字まわりにヒゲ状のノイズが数本見られた。得られた画像を指で強く摩擦した際に印字文字が少しにじんでしまい実施例1のインクに比べ耐摩擦性が劣っていた。また耐水性については色差変動量が10を越えており、実施例1のインクに比べて耐水性に劣ることが確認された。
【0044】
(比較例2)
樹脂微粒子分散液2にカーボンブラック(MICROJET C-TYPE;オリエント化学工業社製)、グリセリンおよび水を添加し、カーボンブラック4重量%、樹脂微粒子6重量%およびグリセリン15重量%を含有する黒色水性インクを得た。
【0045】
次に、実施例1と同様にして印字評価を行った。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りが若干見られ、実施例3のインクに比べて耐にじみ性が劣っていた。得られた画像を指で強く摩擦した際に印字文字が少しにじんでしまい実施例3のインクに比べ耐摩擦性が劣っていた。また耐水性については色差変動量が10を越えており、実施例3のインクに比べて耐水性に劣ることが確認された。(比較例3)
カーボンブラック(MICROJET C-TYPE;オリエント化学工業社製)、グリセリンおよび水を添加し、カーボンブラック4重量%、グリセリン15重量%を含有する黒色水性インクを得た。
【0046】
次に、実施例1と同様にして印字評価を行った。1ドット幅の細線を印字したところ線幅の太りが見られ耐にじみ性が劣っていた。得られた画像を指で強く摩擦した際に印字文字のにじみが生じ、耐摩擦性が低いものであった。また耐水性については比較例2のインクより色差変動量が大きくなっており、耐水性に劣ることが確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ノズルの目詰まりが発生せず、水によるにじみが生じがたく、且つ耐摩耗性や耐久性に優れたインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
Claims (8)
- イオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤、ビニル系単量体および色材を含有する着色樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、前記有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させて得られた非球形着色樹脂微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
- 前記樹脂微粒子の平均粒径が0.01〜1.0μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記色材が顔料、分散染料または油溶性染料であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
- イオン性基を有する樹脂、この樹脂を溶解可能な有機溶剤およびビニル系単量体を含有する樹脂溶液を水系媒体中に分散した後、前記有機溶剤を除去するとともにビニル系単量体を重合させて得られた非球形樹脂微粒子と、色材とを水系媒体に分散させたことを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
- 前記樹脂微粒子の平均粒径が0.01〜1.0μmであることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記色材が顔料、分散染料または油溶性染料であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用水性インク。
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