JP3816242B2 - 防汚性部材及び防汚性部材に貼着される保護フイルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒による親水性によって防汚性が付与された防汚性部材及び防汚性部材に貼着される保護フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、屋外に設置される防音壁や道路標識、視線誘導装置等の道路用工作物等は、常に車両の排気ガスや塵埃にさらされているために、時々洗浄しないとこれら排気ガスや塵埃等が表面に付着して汚れ、著しくその機能や美感を低下させる問題がある。しかしながら人手によって洗浄するのは大変面倒であり且つ手間であることから、二酸化チタン等の光触媒を含む光触媒含有層を表面に形成し、光触媒によって表面を親水化することによって防汚性を付与することが提案されている。
【0003】
すなわち二酸化チタン等の光触媒は、紫外線を照射することにより活性化されてその表面は親水化され、塵埃や車両の排気ガス等の汚染物質が表面に付着しても、親水化された表面によって、表面に付着する汚染物質と表面との間に水が割り込んで汚染物質を浮かせるために付着しにくく、また付着しても降雨等により容易に洗い流されて除去されるため、汚染物質が堆積しにくくなるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記の如き光触媒は、紫外線の照射によって活性化されることにより、始めてその表面は親水化されて防汚性が付与されるが、屋外に設置して太陽光のみの弱い紫外線量でその表面を活性化させようとすると所定の日数が必要であり、初期の段階では活性化が不充分であるために、親水化されず防汚性は発揮されない。
【0005】
そこで本発明は光触媒によって防汚性を付与した防汚性部材において、上記の如き問題を解決し、初期の段階から防汚性を付与した防汚性部材及び防汚性部材に貼着される保護フイルムを提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る請求項1記載の防汚性部材は、表面に光触媒含有層が形成され、さらにその表面に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が付着されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、光触媒含有層の表面にさらに親水性剤が付着されているので、初期の段階においてはまず親水性剤による親水性によって防汚性が付与される。この親水性剤は、光触媒含有層の光触媒によって分解されるために長期間その親水性を維持することができない。しかしながら親水性剤が分解されるまで、光触媒含有層には紫外線が照射され続けられているので、この間に光触媒が活性化され、親水性剤が分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0008】
次に本発明に係る請求項2記載の防汚性部材は、表面に光触媒含有層が形成され、さらにその表面に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が保持された保護フイルムが貼着され、使用時に前記保護フイルムを剥がした際に、親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、光触媒含有層の表面に保護フイルムが貼着されているので、輸送及び加工時においては、表面が保護フイルムにより保護されて光触媒含有層の表面の損傷等が防止されるため、光触媒の活性化による親水性が発揮される際においては損傷等によってその親水性が低下していることがない。また保護フイルムには親水性剤が保持され、使用時に前記保護フイルムを剥がした際に、親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされているので、保護フイルムを剥がした使用時においては、前記請求項1記載の防汚性部材と同様に、初期の段階においてはまず付着残存された親水性剤による親水性によって防汚性が付与されると共にこの間に照射され続けられていた紫外線によって光触媒が活性化され、この親水性剤が光触媒含有層の光触媒によって分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0010】
また本発明に係る請求項3記載の保護フイルムは、光触媒含有層が表面に形成された防汚性部材の前記光触媒含有層の表面に貼着されると共に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が保持され、剥がした際に、親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、本発明保護フイルムを光触媒含有層が表面に形成された防汚性部材の前記光触媒含有層の表面に貼着することにより、前記請求項2記載の防汚性部材と同様に、輸送及び加工時においては、表面が保護フイルムにより保護されて光触媒含有層の表面の損傷等が防止されるため、光触媒の活性化による親水性が発揮される際に損傷等によってその親水性が低下していることがない。またこの保護フイルムを剥がした使用時においては、初期の段階においてはまず付着残存された親水性剤による親水性によって防汚性が付与されると共にこの間に照射され続けられていた紫外線によって光触媒が活性化され、この親水性剤が光触媒含有層の光触媒によって分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明において、光触媒としては二酸化チタンが好適に用いられる。二酸化チタンは、ルチル型でもよいが、活性の高さからアナターゼ型のものが好ましく、この二酸化チタンに波長領域が300〜400nm付近の紫外線を照射することによって活性化され、その活性化によって強い酸化力が発現されて、表面に付着した汚染物質は分解されると共に、活性化によってその表面は水との接触角でほぼ0〜20度程度まで親水化され、かかる親水化によって汚染物質は付着しにくくなり、例え付着しても降雨等によって容易に洗い流されるようになる。
【0017】
なお二酸化チタンによる光触媒含有層を形成するには、二酸化チタンの粉末を溶融させて吹き付ける溶射法、化学反応を介して二酸化チタンを析出させるCVD(化学的製膜法)、二酸化チタンをスパッタ蒸発させて沈着させるスパッタ蒸着法、真空蒸着法等であってもよいが、バインターに二酸化チタンを分散させて塗料組成物とし、それをディッピングやスプレー、フローコーター等により塗布れば、均一且つ平滑な塗膜としてが形成されるので好ましい。
【0018】
また光触媒含有層の表面に付着させる親水性剤としては、一般には滑剤が用いられるが、長期間光触媒含有層の表面に付着させる必要がなく、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されるまでの間だけ親水性剤によって親水性が維持されていればよいので、光触媒によって分解されやすいように、炭素と水素と酸素のみで組成され、且つ低分子のものの方が好ましい。なお親水性剤の親水性によって初期の防汚性を発揮させるためには、親水性剤が付着した初期の光触媒含有層の表面は水に対する接触角が10度以下になるようにするのが最も好ましいが、一般的に接触角が30度以下であれば効果的に防汚性を発揮することができるため、30度以下であればよい。
【0019】
また親水性剤を保護フイルムに保持させる場合においては、親水性剤が保護フイルム自体に混合、分散あるいは塗布されていてもよいし、保護フイルムの貼着のためにその裏面に粘着剤層を形成し、その粘着剤層に親水性剤が混合、分散あるいは塗布されていれば、使用時に保護フイルムを剥がした際に、粘着剤層と共に親水性剤が光触媒含有層の表面に効果的に付着残存されるので好ましい。前記保護フイルムの材質は特に限定されず、一般の合成樹脂製フイルムが適宜使用される。
【0020】
【0021】
本発明に係る防汚性部材の用途は、屋外に設置されて常に車両の排気ガスや塵埃にさらされている防音壁やトンネル内装板、道路標識、視線誘導装置、橋梁、防護柵、高欄、照明灯、サイン等の道路用工作物等に限定されるものではなく、建材、建築物の外装材や内装材、窓枠材、窓ガラス等、防汚性の要求される屋内外において広く使用されるものである。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0023】
(実施例1)透明性の遮音壁に用いられる耐殺傷性ポリカーボネート板の表面に、二酸化チタンからなる光触媒含有層を形成した。この形成直後の紫外線を照射していない光触媒含有層の表面の水に対する接触角は40度前後であった。この光触媒含有層の表面に、親水性を有する滑剤であるオレイン酸のポリオキシエチレンエステル(分子量600〜700)からなる親水性剤を粘着剤層に有する保護フイルムを前記粘着剤層を介して貼着し、60度の温度で1時間放置した後にこの保護フイルムを剥がした所、保護フイルムを剥がした後においては水との接触角は10度前後であり、充分親水性を有し初期の防汚性が発揮され、またこの間に太陽光による紫外線を照射し続け、親水性剤が分解されたり流れ落ちた後の、光触媒含有層の表面の水に対する接触角を調べると、10度以下となっており、親水性剤の親水性が喪失された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されていることが確認された。
【0024】
【0025】
【発明の効果】
本発明による請求項1記載の防汚性部材によれば、光触媒含有層の表面にさらに滑剤等の親水性剤が付着されているので、初期の段階においてはまず親水性剤による親水性によって防汚性が付与される。この親水性剤は、光触媒含有層の光触媒によって分解されるために長期間その親水性を維持することができない。しかしながら親水性剤が分解されるまで、光触媒含有層には紫外線が照射され続けられているので、この間に光触媒が活性化され、親水性剤が分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0026】
本発明による請求項2記載の防汚性部材によれば、光触媒含有層の表面に保護フイルムが貼着されているので、輸送及び加工時においては、表面が保護フイルムにより保護されて光触媒含有層の表面の損傷等が防止されるため、光触媒の活性化による親水性が発揮される際に損傷等によってその親水性が低下していることがない。また保護フイルムには滑剤等の親水性剤が保持され、使用時に前記保護フイルムを剥がした際に、滑剤等の親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされているので、保護フイルムを剥がした使用時においては、前記請求項1記載の防汚性部材と同様に、初期の段階においてはまず付着残存された親水性剤による親水性によって防汚性が付与されると共にこの間に照射され続けられていた紫外線によって光触媒が活性化され、この親水性剤が光触媒含有層の光触媒によって分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0027】
本発明による請求項3記載の保護フイルムによれば、本発明保護フイルムを光触媒含有層が表面に形成された防汚性部材の前記光触媒含有層の表面に貼着することにより、前記請求項2記載の防汚性部材と同様に、輸送及び加工時においては、表面が保護フイルムにより保護されて光触媒含有層の表面の損傷等が防止されるため、光触媒の活性化による親水性が発揮される際に損傷等によってその親水性が低下していることがない。またこの保護フイルムを剥がした使用時においては、初期の段階においてはまず付着残存された親水性剤による親水性によって防汚性が付与されると共にこの間に照射され続けられていた紫外線によって光触媒が活性化され、この親水性剤が光触媒含有層の光触媒によって分解された後は、本来の光触媒の活性化による親水性が発揮されて引き続き防汚性が維持される。
【0028】
Claims (3)
- 表面に光触媒含有層が形成され、さらにその表面に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が付着されていることを特徴とする防汚性部材。
- 表面に光触媒含有層が形成され、さらにその表面に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が保持された保護フイルムが貼着され、使用時に前記保護フイルムを剥がした際に、親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされたことを特徴とする防汚性部材。
- 光触媒含有層が表面に形成された防汚性部材の前記光触媒含有層の表面に貼着されると共に、前記光触媒含有層に含有された光触媒の紫外線による活性化により分解される親水性剤が保持され、剥がした際に、親水性剤が光触媒含有層の表面に付着残存されるようになされたことを特徴とする防汚性部材に貼着される保護フイルム。
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