JP3815949B2 - 硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法、とその製造方法及び装置 - Google Patents

硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法、とその製造方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土に水又は泥液を添加して混練し流動性を付与したもの(以下、「含水流動性土」という。)に自硬性の硬化材を添加・混練して硬化させ強度を高めた硬化材添加含水流動性土、含水流動性土に添加する硬化材量を決定する方法、この方法を用いて硬化材添加含水流動性土を製造する方法、この方法を用いて硬化材添加含水流動性土を製造する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、硬化材添加含水流動性土としては、上記の含水流動性土にセメント系硬化材、あるいは石灰系硬化材を添加して生成したものが知られている。この硬化材添加含水流動性土は、建設現場における埋め戻し材料や、裏込め材料、充填材料等として用いることができる。
【0003】
硬化材添加含水流動性土内の硬化材は、時間の経過により水と反応して硬化するため、硬化材添加含水流動性土は、所定時間経過後には、所定の強度を発揮するようになる。この強度は、含水流動性土の密度(比重)、硬化材の添加量などによって変化すると考えられている。また、硬化材は、土の量に応じて所定の比率で添加することとなるため、その使用量も多量となり、そのコストも大きな額にのぼる。また、生成した硬化材添加含水流動性土を用いて埋め戻し作業等を行う場合、硬化材添加含水流動性土が固すぎると、硬化材添加含水流動性土の取り扱いや、埋め戻し作業が困難となる。このことから、硬化材添加含水流動性土の柔らかさ(コンシステンシー)は、好適な値、又は好適な値の範囲が存在する。硬化材添加含水流動性土のコンシステンシーとしては、シリンダー法によるフロー値が用いられている。
【0004】
したがって、強度とコストと流動性の観点から、硬化材添加含水流動性土のフロー値と、硬化材の添加量等の配合を適切に決定することが必要となる。従来のこの種の方法としては、特開平7−82984号公開公報に開示された方法が知られている。
【0005】
この方法では、処理される土(以下、「被処理土」という。)に調整泥水と呼ばれる材料を混合する。調整泥水は、水の中に粘土、シルト、ベントナイト等の細粒土を含ませたものである。この調整泥水について、異なる各種の比重ごとに複数の試料を生成し、この調整泥水を被処理土に混合する比率(以下、「調整泥水混合比」という。)を異ならせた複数の試料を生成する。これら試料に、さらにある量の硬化材を混合したものについて、フロー値を測定するとともに強度(一軸圧縮強度)を測定してグラフを描き、好適なフロー値が得られるとともに好適な強度を得られる配合を決定していた。以下、この方法を「調整泥水法」という。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の調整泥水法では、上記のグラフを描くために、調整泥水の比重や調整泥水混合比が異なる試料を16から17個程度作成する必要があり、煩雑であるとともに、コストも高かった。このため、より簡易で有効な配合決定方法が要請されていた。
【0007】
調整泥水法より簡易な方法としては、上記の含水流動性土の比重を異ならせた複数個、例えば4個の試料を作成し、これらに硬化材としてある一定の量を混合した4個の試料を作成し、フロー値と強度を求め、好適なフロー値と好適な強度が得られる配合を決定する方法が知られている。以下、この方法を「硬化材量一定法」という。
【0008】
しかし、この硬化材量一定法では、硬化材の最小所要量を求めるためには、硬化材の量を異ならせた試験を少なくとも3回程度は行う必要があり、上記した4個の試料ごとに行うとすると、少なくとも12(=4個×3回)の試料を作成する必要があった。このため、調整泥水法に比べ、煩雑さやコスト額の低減は十分ではない。
【0009】
また、調整泥水法と硬化材量一定法のいずれにも共通する問題として、これらの方法は、含水流動性土に含まれる水の質量を直接に決定しているわけではなく、調整泥水混合比や含水流動性土の比重といった値から間接的に配合を決定しようとしているため、同じ密度(比重)等であっても、得られた硬化材添加含水流動性土の最終強度が異なり、ばらつきが大きい、という問題があった。
【0010】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、硬化材添加含水流動性土に硬化材を添加する場合の配合決定等が容易かつ有効な方法等を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法は、
土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の密度である第1密度を測定によって得るとともに、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土のフロー値である第1フロー値を測定によって得、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関係を示す関数である第1関数又はグラフである第1グラフを作成する第1過程を実施し、
次いで、前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数又は前記第1グラフから求める第2過程を実施し、
次いで、前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と推定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
により算出する第3過程を実施し、
次いで、前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数又はグラフである第2グラフを用いて、前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを求める第4過程を実施し、
次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
T=Ww/R
により算出し決定する第5過程を実施すること
を特徴とする。
【0012】
上記の硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法において、好ましくは、前記土の粒子の密度の推定値ρs(g/cm3)として、2.7(g/cm3)を用いる。
【0013】
また、上記の硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法において、好ましくは、前記第1質量は、前記含水流動性土の単位体積当り、50(kg/m3)〜700(kg/m3)の範囲内の適宜の値とする。
【0014】
また、本発明に係る硬化材添加含水流動性土の製造方法は、
土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の密度である第1密度を測定によって得るとともに、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土のフロー値である第1フロー値を測定によって得、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関係を示す第1関数又はグラフである第1グラフを作成する第1過程を実施し、
次いで、前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数又は前記第1グラフから求める第2過程を実施し、
次いで、前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と推定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
により算出する第3過程を実施し、
次いで、前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数又はグラフである第2グラフを用いて、前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを求める第4過程を実施し、
次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
T=Ww/R
により算出し決定する第5過程を実施し、
次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)当りCT(g)の質量の硬化材を添加して混練し流動状態の硬化材添加含水流動性土を生成する第6過程を実施すること
を特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る硬化材添加含水流動性土製造装置は、
土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の測定された密度である第1密度と、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土の測定されたフロー値である第1フロー値から得られた、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関数である第1関数のデータを格納する第1関数記憶手段と、
前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値が入力された場合に、前記第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数から算出する第1演算手段と、
前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と設定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
により算出する第2演算手段と、
前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数のデータを格納する第2関数記憶手段と、
前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTが入力された場合に、前記目標強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを前記第2関数を用いて算出する第3演算手段と、
前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
T=Ww/R
により算出する第4演算手段と、
前記第2密度を有する前記含水流動性土に体積V(cm3)当りCT(g)の質量の硬化材を添加して混練し流動状態の硬化材添加含水流動性土を生成する混練手段を
備えることを特徴とする。
【0016】
上記の硬化材添加含水流動性土製造装置において、好ましくは、前記第4演算手段により算出された体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)を出力又は表示する硬化材添加量出力・表示手段を備える。
【0017】
また、上記の硬化材添加含水流動性土製造装置において、好ましくは、前記第4演算手段により算出された体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)に基き、所要量の硬化材を計量し前記混練手段に供給する硬化材計量・供給手段を備える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である硬化材添加含水流動性土製造装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100は、含水流動性土調製部1と、硬化材調製部2と、混練ミキサー3と、計測・制御部4を備えて構成されている。
【0022】
含水流動性土調製部1は、土貯留容器11と、搬送装置12と、貯水槽13と、ポンプ14と、混練ミキサー15と、ポンプ16と、計量槽19を有している。また、硬化材調製部2は、硬化材貯留容器21と、搬送装置22と、計量容器23と、開閉バルブ24を有している。また、計測・制御部4は、制御装置41と、質量測定装置42、43、44、46、及び47と、体積測定装置45を有している。
【0023】
以下に、上記した各機器・装置等のさらに詳細な構成と、その作用を詳細に説明する。
【0024】
土貯留容器11は、土木・建築作業等の建設現場、あるいは農業土木工事の現場等から地盤掘削等により発生した土、あるいは土採取場等から採取した土などを収容する容器である。この土には、水分含有量が少なくほぼ固体状となっている通常の土のほか、当初から相当量の水を含有し軟弱となっている土や、泥状となっている土、若しくはヘドロ状の土も含まれる。
【0025】
この土貯留容器11には、質量測定装置42が設けられている。質量測定装置42は、例えば、圧力センサー(図示せず)を有しており、土の質量(重量)によって土貯留容器11に発生する圧力を検出し、この検出圧力に基いて、土貯留容器11内に収容されている土の質量を算出する。圧力センサーとしては、ストレインゲージ(ロードセル)、圧電素子、ダイアフラム、ブルドン管、ベローズ等の公知の力検出器が用いられる。質量測定装置42が検出した土貯留容器11内の土の質量データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0026】
制御装置41は、図示してはいないが、コントローラと、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)や液晶表示器等を含む表示装置、キーボードやスイッチ等の入力装置、出力端子等の出力装置、ハードディスクや光ディスク記録再生装置等の外部記憶装置を有している。コントローラは、コンピュータにより構成されており、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit :中央演算処理装置)と、図示しないROM(Read Only Memory:読出し専用メモリ)と、図示しないRAM(Random Access Memory:随時書込み読出しメモリ)等を有している。
【0027】
このうち、CPUは、ROMやRAM等を統括し、各種演算やプログラム実行等の処理を実行する部分である。ROMは、CPUの実行するプログラムや予め設定された情報等を格納した記憶装置である。RAMは、CPUにより演算された中間結果データ等を一時記憶する記憶装置である。このような構成により、CPUは、ROMに格納された演算プログラムを読み出し、ROMやRAM又は外部から与えられるデータ値に基づいて前記演算プログラムを実行して演算結果を得た後、この演算結果をRAMに一次記憶させ、外部に出力したり、RAMの一次記憶値に基づき、さらに他の演算プログラムを実行する。
【0028】
上記の土貯留容器11には、搬送装置12が接続している。搬送装置12は、例えばベルトコンベア(図示せず)を有しており、土貯留容器11から土51を取り出して搬送し混練ミキサー15へ供給する。
【0029】
貯水槽13は、水道等から供給される水を収容する水密性を有する容器である。この貯水槽13には、質量測定装置43が設けられている。質量測定装置43は、上記した質量測定装置42と同様の構成を有している。質量測定装置43が検出した貯水槽13内の水の質量(重量)データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0030】
貯水槽13には、配管を介してポンプ14が接続している。ポンプ14は、貯水槽13から水52を汲み上げ、配管を介して圧送し混練ミキサー15へ供給する。
【0031】
混練ミキサー15は、容器の内部に、回転する羽根や螺旋状突起部等が設けられており、供給された土51と水52を十分均一になるように混合し練り混ぜる装置である。内部の羽根等は、電動モータ等の回転駆動源によって回転駆動される。混練ミキサー15により、土51には水52が添加されるとともに十分混練されるため、流動性を有するようになる。以下、この状態の土51と水52の混練物を含水流動性土という。
【0032】
この混練ミキサー15には、質量測定装置44が設けられている。質量測定装置44は、上記した質量測定装置42と同様の構成を有している。質量測定装置44が検出した混練ミキサー15内の含水流動性土の質量(重量)データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0033】
混練ミキサー15には、配管を介してポンプ16が接続している。ポンプ16は、混練ミキサー15内の含水流動性土53を汲み上げ、配管を介して圧送し含水流動性土貯留槽17内に収容する。
【0034】
含水流動性土貯留槽17は、混練ミキサー15から送られてきた含水流動性土53を一時的に収容するための水密性を有する容器である。この含水流動性土貯留槽17には、配管を介してポンプ18が接続している。ポンプ18は、含水流動性土貯留槽17内の含水流動性土を汲み上げ、配管を介して圧送し計量槽19へ供給する。
【0035】
計量槽19は、含水流動性土貯留槽17から供給される含水流動性土53を計量するための水密性を有する容器である。この計量槽19の内部の寸法はあらかじめ計測されており、内部の含水流動性土の表面の位置を計測することにより、計量槽19内に収容された含水流動性土53の体積が算出できるようになっている。このため、計量槽19の例えば上方には、体積測定装置45が設けられている。体積測定装置45は、例えば、表面位置検出センサー(図示せず)を有しており、含水流動性土の表面位置を計測し、この距離に基いて、計量槽19内に収容されている含水流動性土の体積を算出する。表面位置検出センサーとしては、レーザー光線を利用した距離測定センサー等の公知の位置検出器が用いられる。体積測定装置45が検出した計量槽19内の含水流動性土の体積データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0036】
また、計量槽19には、質量測定装置46が設けられている。質量測定装置46は、上記した質量測定装置42と同様の構成を有している。質量測定装置46が検出した計量槽19内の含水流動性土の質量(重量)データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0037】
計量槽19には、配管を介して混練ミキサー3が接続している。この配管には、開閉弁(図示せず)が配置されており、この開閉弁は、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に接続され、その開閉が制御されるようになっている。これにより、計量槽19内の含水流動性土53の計量が終了した後は、制御装置41のCPU(図示せず)が開閉弁(図示せず)に開放指令信号を送って開放させ、含水流動性土53は、配管を通って混練ミキサー3に供給される。
【0038】
硬化材貯留容器21は、硬化材を収容する容器である。硬化材には、セメント系硬化材と、石灰系硬化材がある。セメント系硬化材は、セメントを母材とし、各種の機能を発揮させるための機能成分を混入させて生成される。セメントとしては、ポルトランドセメント等が用いられる。また、混入される機能成分としては、硬化時に水を結合水として取り込むエトリンガイトの生成を補助する石膏、ポゾラン反応を促進するためのスラグやフライアッシュ、硬化材の硬化性能を向上させるアルミナセメントやジェットセメント、成分を調整して焼成したクリンカー等が使用される。
【0039】
また、石灰系硬化材は、石灰を母材とし、各種の機能を発揮させるための機能成分を混入させて生成される。石灰としては、生石灰(酸化カルシウム)でもよいし、消石灰(水酸化カルシウム)でもよく、これらの適宜の混合物でもよい。
【0040】
上記の硬化材貯留容器21には、搬送装置22が接続している。搬送装置22は、例えばベルトコンベアやスクリューコンベア(図示せず)を有しており、硬化材貯留容器21から硬化材54を取り出して搬送し計量容器23へ供給する。
【0041】
計量容器23には、質量測定装置47が設けられている。質量測定装置47は、上記した質量測定装置42と同様の構成を有している。質量測定装置47が検出した計量容器23内の硬化材54の質量(重量)データは、有線又は無線の回線(図示せず)を介して制御装置41に出力される。
【0042】
計量容器23には、直接に、あるいは配管を介して開閉バルブ24が接続している。この開閉バルブ24は、有線又は無線の制御回線48を介して制御装置41に接続され、その開閉が制御されるようになっている。開閉バルブ24を通過した硬化材54は、配管を通って混練ミキサー3に供給される。
【0043】
混練ミキサー3は、混練ミキサー15と同様の構成を有しており、供給された含水流動性土53と硬化材54を十分均一になるように混合し練り混ぜる装置である。混練ミキサー3により、含水流動性土53には硬化材54が添加されるとともに十分混練される。この結果、混練ミキサー3により生成された混練物55は、所定時間が経過した後に硬化して強度を発現する性質(自硬性)を有するようになる。以下、この状態の含水流動性土53と硬化材54の混練物55を硬化材添加含水流動性土という。
【0044】
上記した本実施形態の装置100の特徴は、混練ミキサー3において含水流動性土53に添加すべき硬化材54の質量を制御装置41で決定し、開閉バルブ24を制御し、適正質量の硬化材54を混練ミキサー3に供給する方法にある。以下、この方法(以下、「本制御方法」という。)の内容について説明する。
【0045】
本制御方法においては、「含水流動性土53のある体積(以下、Vとする。)中に含まれる水の質量又は重量(以下、Wwとする。)と、体積Vの含水流動性土53に添加される硬化材54の質量又は重量(以下、Cとする。)の比(Ww/C:以下、「水硬化材比」という。)を一定とすれば、所定時間が経過した後に硬化材添加含水流動性土55が硬化して発現する強度(例えば、一軸圧縮強度)は、ほぼ一定となる。」という事実を前提としている。この事実は、出願人らの研究により発見された。以下に、この事実を明示する実験結果を表1として示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003815949
【0047】
上記の表1から明らかなように、試料20A、20B、20Cの場合には、単位体積の含水流動性土に添加する硬化材の質量Cを一定としても、水硬化材比(表1におけるWw/C)が異なっているため、強度(14日経過後の一軸圧縮強度:単位はキロパスカル)の値がばらつき、値が11〜38%も変動している。これに対し、試料20AA、20BB、20CCの場合には、水硬化材比(表1におけるWw/C)を一定にしたため、強度(28日経過後の一軸圧縮強度:単位はキロパスカル)の値はほとんど一定となり、変動率は2〜6%程度である。
【0048】
水硬化材比を一定にするように制御するためには、含水流動性土53のある体積(以下、Vとする。)中に含まれる水の質量Wwを正確に求める必要がある。
【0049】
図2は、ある含水流動性土の中の土と水の関係を模式的に表現した図である。図2において、Vは含水流動性土の全体の体積(単位:cm3)を示し、Wは含水流動性土の全体の質量又は重量(単位:g(グラム))を示し、γは含水流動性土の密度又は比重(単位:g/cm3)を示している。また、Vsは含水流動性土中の土粒子のみの体積(単位:cm3)を、Wsは含水流動性土中の土粒子のみの質量又は重量(単位:g(グラム))を、ρsは含水流動性土中の土粒子の密度又は比重(単位:g/cm3)を、それぞれ示している。また、Vwは含水流動性土中の水のみの体積(単位:cm3)を、Wwは含水流動性土中の水のみの質量又は重量(単位:g(グラム))を、ρwは含水流動性土中の水の密度又は比重(単位:g/cm3)を、それぞれ示している。
【0050】
まず、密度=質量/体積であるから、下式
γ=W/V ………(1)
ρs=Ws/Vs ………(2)
ρw=Ww/Vw ………(3)
が成立する。
【0051】
また、土の体積と水の体積の和は、全体の体積であるから、下式
s+Vw=V ………(4)
が成立する。
【0052】
また、土の質量と水の質量の和は、全体の質量であるから、下式
s+Ww=W ………(5)
が成立する。
【0053】
上式(5)より、
w=W−Ws ………(6)
となる。
【0054】
上式(1)より得たW=γ×Vを上式(6)に代入し、
w=γ×V−Ws
=γ×V−ρs×Vs
=γ×V−ρs×(V−Vw) ………(7)
となる。
【0055】
ここで、上式(3)より得たVw=Ww/ρwを上式(7)に代入すると、
w=γ×V−ρs×{V−(Ww/ρw)}
=γ×V−ρs×V+Ww×(ρs/ρw) ……(8)
となる。
【0056】
上式(8)のWwをまとめると、
w−Ww×(ρs/ρw
=γ×V−ρs×V ………(9)
となる。
【0057】
上式(9)より、
w×(ρs/ρw)−Ww
=ρs×V−γ×V ………(10)
となる。
【0058】
上式(10)を整理すると、
w×{(ρs/ρw)−1}
=V×(ρs−γ) ………(11)
となる。
【0059】
上式(11)をWwについて解くと、下式
w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1} ………(12)
が得られる。
【0060】
上式(12)において、Vは、含水流動性土の全体の体積(cm3)であるから、図1における体積測定装置45によって測定される既知の値である。また、γは、含水流動性土の全体の密度又は比重(g/cm3)であるから、W/Vで算出できる。Wは、含水流動性土の全体の質量(g)であるから、図1における質量測定装置46によって測定される既知の値であり、Vは上述のように既知である。また、ρwは、含水流動性土の中の水の密度又は比重(g/cm3)であるから、あらかじめ室内試験等により計測により求めておくことができる。このρwの値は、水の温度の関数となる場合もあるが、水温との関係についても、室内試験等により、あらかじめ把握することが可能である。水温をパラメータとして考慮する場合には、制御装置41の入力装置により、水温の値を入力する。また、ρwの値を近似的に1.0とすることも可能である。
【0061】
ρsは、含水流動性土の中の土粒子の乾燥状態での密度又は比重(g/cm3)である。この値も、室内試験により厳密な値を求めることは可能であるが、建設現場で土質が変化するたびに室内試験によりρsを求めることは煩雑である。
【0062】
出願人らは、日本国内での各種の土を調査し、その土粒子密度を厳密に測定することにより、「日本国内の土においては、土質が異なっても、土粒子の密度又は比重は、おおむね2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の値である。」という事実を発見した。以下に、この事実を明示する実験結果の一例を表2として示す。
【0063】
【表2】
Figure 0003815949
【0064】
したがって、上式(12)においては、ρsの値として、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値を用いることができると考えられる。例えば、ρsの値を2.7として上式(12)によりWwの値を計算したとき、実際に実験で求めたρsの値を用いた場合との差は、各種の土で比較したが、3%以下であった。このことから、通常は、ρsの値を2.7としても、さしつかえないと考えられる。
【0065】
しかし、他のデータ等により土質等が判明している場合には、上記の表2等を参考にして、ρsの値を2.7から2.9までの間で適宜増加させ、あるいは2.7から2.5までの間で適宜減少させるように補正すればよい。また、あらかじめ室内試験を行って、表2よりも詳細な土質分類と土粒子密度の関係表を作成しておき、これに基いてρsの値を詳細に決定してもよい。この場合、土の外観観察による土質分類だけでなく、土のデータで比較的簡易に得られるデータ、例えば、N値等とも関連づけられれば、より簡易で有効な土質と土粒子密度の関係表を作成することができる。
【0066】
上記のようにして含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)が算出できれば、次は、硬化後の硬化材添加含水流動性土の目標強度qT(例えば、一軸圧縮強度)を得るために必要な水硬化材比が求められればよい。これは、含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)が判明しているのであるから、硬化材の質量を変えた複数(例えば、3個、又は4個、若しくは5個以上)の硬化材添加含水流動性土の試料を作成し、硬化した試料について強度試験を行えば、水硬化材比と強度(例えば、一軸圧縮強度)との関係を表す関数(グラフに描けば関係曲線)を得ることができる。この関数から内挿比例配分又は外挿比例配分を行って算出するか、グラフ上から読み取ることにより、硬化後の硬化材添加含水流動性土の目標強度qTを得るために必要な水硬化材比R(以下、「目標水硬化材比」という。)を求めることができる。目標水硬化材比Rが求められれば、含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)は、上記のように求められているから、含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量又は重量の目標値CT(g)を計算によって求めることができる。
【0067】
しかし、上記の手順だけでは十分ではない。上記の手順においては、混練ミキサー15で生成される含水流動性土53の密度γの値は適宜であった。しかし、含水流動性土53の含水量が小さく、γの値が1よりかなり大きい場合には、最終的に生成される硬化材添加含水流動性土55の流動性が低く、建設現場等において埋め戻し作業や充填作業等が困難となる場合がある。したがって、含水流動性土53の密度γの値には、好適な範囲があると考えられる。
【0068】
本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100で実施される手順は、施工等から規定される含水流動性土53の密度γの所要値をも考慮したものである。
【0069】
本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100においては、制御装置41のコンピュータのROM(図示せず)に、図3のグラフに示すような関数データが格納されている。図3のグラフの横軸は、含水流動性土53の密度又は比重(g/cm3)を示している。また、図3のグラフの縦軸は、含水流動性土53ではなく、含水流動性土53にさらに硬化材を添加した後の硬化材添加含水流動性土55のフロー値(mm)を示している。
【0070】
フロー値とは、硬化材添加含水流動性土55の柔らかさ、流動し易さ等(コンシステンシー)を示す指標値である。硬化材添加含水流動性土55のフロー値の試験方法としては、一般的には、「日本道路公団規格(JHS)」のA313−1992に規定されている「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」の「1.2 シリンダー法」が準用されている。
【0071】
このシリンダー法は、内径80mm、高さ80mmの黄銅等からなる両端開放の円筒を用いる。以下、上記規格に記載された「エアモルタル及びエアミルク」を「硬化材添加含水流動性土」に読み替えて説明する。
【0072】
まず、このシリンダーを水平な鋼板等の板の上に静置する。その後、硬化材添加含水流動性土を、シリンダーからあふれさせないように、シリンダーの上端まで静かに入れる。その後、硬化材添加含水流動性土の表面が水平で、かつシリンダーの上端に一致するように、シリンダーの側面を指で軽くたたく。その後、シリンダーを静かに鉛直上方に引き上げる。これにより、硬化材添加含水流動性土が板上に広がる。広がって1分後に、最大と認められる方向の径(以下、「最大径」という。単位:mm)、及びこの最大径に直角な方向の径(以下、「直交径」という。単位:mm)を計測する。フロー値としては、上記の最大径と直交径の加重平均値(mm)を用いる。
【0073】
図3のグラフは、密度の異なる複数個(例えば4個)の含水流動性土について、それぞれ硬化材を添加した後の硬化材添加含水流動性土のフロー値を測定しプロットしたものである。なお、試料の個数は、4個には限定されず、3個、あるいは5個以上であってもよい。この場合、複数個の含水流動性土の試料のそれぞれの密度の測定値は、特許請求の範囲における第1密度に相当している。また、複数個の含水流動性土の各試料に添加される硬化材の質量又は重量は、特許請求の範囲における第1質量に相当している。また、複数個の硬化材添加含水流動性土の試料のそれぞれのフロー値の測定値は、特許請求の範囲における第1フロー値に相当している。また、図3に示すグラフは、特許請求の範囲における第1グラフに相当し、第1グラフの内容を示す関数は、特許請求の範囲における第1関数に相当している。
【0074】
この場合、硬化材添加含水流動性土のフロー値は、添加する硬化材の質量にはほとんど左右されない。図3のグラフの横軸に示すように、硬化材を添加する前の状態の含水流動性土の密度(g/cm3)が、1.1〜1.3程度であり、ほとんど液体状であるため、硬化材の添加質量が多少変わっても、硬化材添加含水流動性土のフロー値の変動は非常に微小であるからである。しかしながら、硬化材添加質量が極端に多い場合と極端に少ない場合には、その差が無視できなくなるため、図3のグラフを得るためのフロー値測定における硬化材添加質量の値には、好適な範囲があると考えられる。本実施形態においては、各種の調査、試験を行い、図3のグラフを得るためのフロー値測定における硬化材添加質量の値として、含水流動性土の単位体積当り、50(kg/m3)〜700(kg/m3)の範囲内の適宜の値が好適であるという結果を得ており、この値を採用している。
【0075】
上記したように、本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100においては、制御装置41のコンピュータのROM(図示せず)に、図3のグラフに示すような関数データが格納されている。したがって、まず、試験工事等により、建設現場等における埋め戻し作業等に必要なフロー値(以下、「目標フロー値」という。)Fを決定する。目標フロー値Fは、特許請求の範囲における第2フロー値に相当している。この目標フロー値Fを、この装置100の操作者が、制御装置41の入力装置(図示せず)から入力すれば、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)が、図3に示すような関数により、含水流動性土の密度の目標値(以下、「目標含水流動性土密度」という。)γを算出する。目標含水流動性土密度γは、特許請求の範囲における第2密度に相当している。
【0076】
したがって、図1の装置100において、所定の硬化材添加含水流動性土55を製造するためには、まず、混練ミキサー15によって生成される含水流動性土53の密度が、上記の目標含水流動性土密度γの値からはずれないように制御する必要がある。このため、制御装置41のコンピュータのCPUは、計量槽19に設けられた質量測定装置46及び体積測定装置45からおくられてくる含水流動性土53の質量Wと体積Vから密度を算出し、この値を監視する。
【0077】
そして、監視している含水流動性土53の密度が、γの値の上下に設定された所定の許容値のうち上限許容値を上まわって大きくなった場合(含水流動性土53が固くなりすぎた場合)には、制御装置41のコンピュータのCPUは、制御回線(図示せず)を介して混練ミキサー15に土を供給する搬送装置12に停止指令信号を送って停止させる。一方、監視している含水流動性土53の密度が、γの値の上下に設定された所定の許容値のうち下限許容値を下まわって小さくなった場合(含水流動性土53が液状になりすぎた場合)には、制御装置41のコンピュータのCPUは、制御回線(図示せず)を介して混練ミキサー15に水を供給するポンプ14に停止指令信号を送って停止させる。このようにして、制御装置41のコンピュータのCPUは、含水流動性土53の密度が、γを中心とした上下の所定許容値の範囲内に収まるように制御する。
【0078】
この場合、制御装置41のコンピュータのCPUは、土貯留容器11の質量測定装置42から送られてくる土の質量データ、貯水槽13の質量測定装置43から送られてくる水の質量データ、混練ミキサー15の質量測定装置44から送られてくる混練中の含水流動性土の質量データも監視し、混練ミキサー15で混練中の含水流動性土の密度の予測を行うこともできる。このようにすれば、計量槽19からのデータにより含水流動性土53の密度が判明する以前の段階で状況を把握できるため、含水流動性土53の密度管理をより正確、かつ、きめ細かく行うことが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100においては、制御装置41のコンピュータのROM(図示せず)に、上式(12)の関数と、温度パラメータ等も含んだρwの関数が格納されている。ρsの値は、一定値としてROMに格納しておいてもよいし、この装置100の操作者が制御装置41の入力装置(図示せず)により入力するようにしてもよい。上式(12)におけるVの値は、体積測定装置45によって測定され、制御装置41に送られてくる。また、Wの値は、質量測定装置46によって測定され、制御装置41に送られてくる。また、γは、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)が、W/Vにより算出する。この結果、あらかじめROM等に記憶された値や関数、装置100内で測定されて送られてきた値に基き、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)が、上式(12)により含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)の値を算出する。
【0080】
また、本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100においては、制御装置41のコンピュータのROMに、図4のグラフに示すような関数データが格納されている。図4のグラフの横軸は、硬化材添加含水流動性土55の水硬化材比Ww/Cを示している。また、図4のグラフの縦軸(右側)は、硬化材添加含水流動性土55の硬化後の一軸圧縮強度(kgf/cm2)を示している。なお、図4のグラフの縦軸(左側)は、硬化材添加含水流動性土55のフロー値(mm)を示している。
【0081】
図4のグラフは、水硬化材比の異なる複数個(例えば4個)の硬化材添加含水流動性土について、それぞれ硬化後の一軸圧縮強度を測定しプロットしたものである。なお、試料の個数は、4個には限定されず、3個、あるいは5個以上であってもよい。図4に示すグラフは、特許請求の範囲における第2グラフに相当し、第2グラフの内容を示す関数は、特許請求の範囲における第2関数に相当している。
【0082】
上記したように、本実施形態の硬化材添加含水流動性土製造装置100においては、制御装置41のコンピュータのROM(図示せず)に、図4のグラフに示すような関数データが格納されている。したがって、まず、試験工事等により、建設現場等における埋め戻し作業等に必要な最終強度(以下、「目標強度」という。)qTを決定する。この目標強度qTを、この装置100の操作者が、制御装置41の入力装置(図示せず)から入力すれば、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)が、図4に示すような関数により、硬化材添加含水流動性土の水硬化材比の目標値(以下、「目標水硬化材比」という。)Rを算出する。
【0083】
制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)は、求められた目標水硬化材比の値と、すでに求められている含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)の値から、添加すべき硬化材の質量(g)の目標値(以下、「目標硬化材添加質量」という。)CT(g)を算出する。
【0084】
制御装置41のコンピュータのCPUは、この目標硬化材添加質量値CTに基き、制御回線48を介して開閉バルブ24にバルブ開放指令信号を出力して開閉バルブ24を開放させる。この際、制御装置41のコンピュータのCPUは、質量測定装置47から送られてくる値を監視する。これにより、計量容器23から放出された硬化材の質量が、上記のようにして算出された目標硬化材添加質量値CTに達したことが検出された場合には、制御装置41のコンピュータのCPUは、制御回線48を介して開閉バルブ24にバルブ閉塞指令信号を出力し、開閉バルブ24を閉塞させる。このようにして、混練ミキサー3により、目標の硬化強度qTが得られる硬化材添加含水流動性土55が生成される。
【0085】
混練ミキサー3から取り出された硬化材添加含水流動性土55は、アジテータ車等(図示せず)で運搬され、建設現場における埋め戻し材料や、裏込め材料、充填材料等として用いることができる。また、流動状態の硬化材添加含水流動性土55を地盤内に混入させ、地盤中の土又は他の地盤構成要素と攪拌させれば、所定時間経過後には、硬化材の硬化により地盤の強度を増加させることができ、この方法を地盤改良工法として利用することもできる。
【0086】
上記において、混練ミキサー3は、特許請求の範囲における混練手段に相当している。また、制御装置41のコンピュータのROM(図示せず)は、特許請求の範囲における第1関数記憶手段及び第2関数記憶手段に相当している。また、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)は、特許請求の範囲における第1演算手段、第2演算手段、第3演算手段、及び第4演算手段に相当している。また、計量容器23と、質量測定装置47と、開閉バルブ24と、制御装置41のコンピュータのCPU(図示せず)と、制御回線48は、特許請求の範囲における硬化材計量・供給手段を構成している。
【0087】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0088】
例えば、上記実施形態においては、各質量の測定を質量測定装置42、43、44、46、47が行って質量データを制御装置41内のCPU(図示せず)に出力し、計量槽19における体積の測定を体積測定装置45が行って体積データを制御装置41内のCPU(図示せず)に出力する例について説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の構成、例えば、質量を算出する前の段階のセンサーの直接検出値(圧力検出式の質量測定装置における圧力値、あるいは検出した電気信号のレベル値そのもの)や、体積を算出する前の段階のセンサーの直接検出値(レーザー光線による距離値、あるいは検出した電気信号のレベル値そのもの)を制御装置41内のCPU(図示せず)に出力し、CPUが質量や体積を演算するように構成してもよい。この場合には、質量測定装置や体積測定装置のかわりに、質量や体積を算出可能な各種の値を検出するセンサーを配置すればよい。
【0089】
また、上記実施形態の装置100に設けられた質量積測定装置42、43、44は設けなくてもよい。少なくとも、質量測定装置46及び47と、体積測定装置45が設けられていれば、本発明の基本的な制御は可能である。
【0090】
また、上記実施形態においては、制御装置41のROM(図示せず)が、図3に示す第1グラフの内容を有する第1関数のデータや、図4に示す第2グラフの内容を有する第2関数のデータを格納しており、制御装置41のCPU(図示せず)がこれらの関数に基いて演算を行って各目標値を算出する例について説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の方法、例えば、混練手段(例えば混練ミキサー3)の操作者が、第1グラフや第2グラフから所要の目標値を読み取って、後の計算や硬化材添加質量の計量等を行うようにしてもよい。あるいは、混練手段(例えば混練ミキサー3)の操作者が、第1関数や第2関数から所要の目標値を計算により算出し、後の計算や硬化材添加質量の計量等を行うようにしてもよい。
【0091】
また、制御装置41が算出した体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)を、出力端子等の出力装置(図示せず)から外部へ出力し、この出力によって外部の他のコンピュータ、コントローラなどを用いて硬化材の計量や、開閉バルブ24の制御等を行うようにしてもよい。あるいは、制御装置41が算出した体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)を、CRT(陰極線管)や液晶表示器等を含む表示装置(図示せず)により操作者等に表示し、操作者が、この値を視認し、この値に基いて硬化材の計量等を行うようにしてもよい。これらは、特許請求の範囲における硬化材添加量出力・表示手段に相当している。
【0092】
また、上記実施形態においては、混練ミキサー15において、土51に水52を添加して練り混ぜ含水流動性土53を生成する例について説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の方法、例えば、土中に相当量の水を含み液状に近いものをあらかじめ他の装置等で生成しておき、混練ミキサー15において、水51のかわりに添加して練り混ぜ含水流動性土を生成するようにしてもよい。この「土中に相当量の水を含み液状に近いもの」は、特許請求の範囲における泥液に相当している。この泥液としては、例えば、含水比が70%以上の土などが挙げられる。ここに、含水比は、(mw/ms)×100で表される百分率であり、式中のmwは水分質量を、msは土の乾燥質量を示している。このような泥液としては、基礎工事等で発生する各種泥土、掘削壁面安定液(連続地中壁工法、シールド工法等における地盤掘削に用いられる材料で、ベントナイト等を含む水溶液)、上記した調整泥水、水底のヘドロ状の泥土等を用いることが可能である。あるいは、上記の調整泥水の含有成分(細粒土)とともに、又はそのかわりに、砂、又は砂質土、若しくはこれらの適宜の混合物を水中に含ませてもよい。このような泥液を添加して含水流動性土を生成した場合でも、上記装置100の計量槽19における質量及び体積の測定によって含水流動性土の密度γは測定され、土粒子の密度ρsは上述した方法と同様に推定し、泥液中の水の密度ρwについてもあらかじめ測定するか水温の関数として算出するか1.0に設定すればよいから、上記の式(12)を上記と同様に用いて水の質量Wwを算出し、硬化材の質量の目標値CTを算出することができ、上記した硬化材添加含水流動性土55と同様の硬化材添加含水流動性土を生成することができる。また、上記のような泥液は、建設現場等から発生する廃棄物であることが多く、従来は処分場等へ運搬して処分する必要があったが、上記のようにして含水流動性土の材料として利用することにすれば、材料費と廃棄物処理費をともに節約することができ、建設コストの低減について二重の効果がある。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、含水流動性土に含まれる水の質量を求めて水硬化材比を管理するので、硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度のばらつきを低く抑えることができ、施工に必要な好適なフロー値を確保することができ、かつ、フロー値、密度、強度等についてあらかじめ行う予備試験の試料個数を従来の方法よりも少なくすることができ、全体として簡易な手順となる、という利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である硬化材添加含水流動性土製造装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態である硬化材添加含水流動性土製造装置の制御装置における動作を説明する第1の図である。
【図3】本発明の一実施形態である硬化材添加含水流動性土製造装置の制御装置における動作を説明する第2の図である。
【図4】本発明の一実施形態である硬化材添加含水流動性土製造装置の制御装置における動作を説明する第3の図である。
【符号の説明】
1 含水流動性土調製部
2 硬化材調製部
3 混練ミキサー
4 計測・制御部
11 土貯留容器
12 搬送装置
13 貯水槽
14 ポンプ
15 混練ミキサー
16 ポンプ
17 含水流動性土貯留槽
18 ポンプ
19 計量槽
21 硬化材貯留容器
22 搬送装置
23 計量容器
24 開閉バルブ
41 制御装置
42〜44 質量測定装置
45 体積測定装置
46、47 質量測定装置
48 制御回線
51 土
52 水
53 含水流動性土
54 硬化材
55 硬化材添加含水流動性土
100 硬化材添加含水流動性土製造装置

Claims (7)

  1. 土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の密度である第1密度を測定によって得るとともに、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土のフロー値である第1フロー値を測定によって得、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関係を示す関数である第1関数又はグラフである第1グラフを作成する第1過程を実施し、
    次いで、前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数又は前記第1グラフから求める第2過程を実施し、
    次いで、前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と推定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
    w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
    により算出する第3過程を実施し、
    次いで、前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数又はグラフである第2グラフを用いて、前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを求める第4過程を実施し、
    次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
    T=Ww/R
    により算出し決定する第5過程を実施すること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法。
  2. 請求項1記載の硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法において、
    前記土の粒子の密度の推定値ρs(g/cm3)として、2.7(g/cm3
    を用いること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法。
  3. 請求項1記載の硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法において、
    前記第1質量は、前記含水流動性土の単位体積当り、50(kg/m3)〜700(kg/m3)の範囲内の適宜の値であること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土の硬化材添加量決定方法。
  4. 土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の密度である第1密度を測定によって得るとともに、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土のフロー値である第1フロー値を測定によって得、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関係を示す第1関数又はグラフである第1グラフを作成する第1過程を実施し、
    次いで、前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数又は前記第1グラフから求める第2過程を実施し、
    次いで、前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と推定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
    w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
    により算出する第3過程を実施し、
    次いで、前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数又はグラフである第2グラフを用いて、前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを求める第4過程を実施し、
    次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
    T=Ww/R
    により算出し決定する第5過程を実施し、
    次いで、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)当りCT(g)の質量の硬化材を添加して混練し流動状態の硬化材添加含水流動性土を生成する第6過程を実施すること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土の製造方法。
  5. 土に水又は泥液を添加し混練して生成した流動性を有する含水流動性土の測定された密度である第1密度と、水の添加により流動化した後に硬化して強度を発現する自硬性の硬化材を第1質量だけ前記含水流動性土に添加し混練して生成した流動性を有する硬化材添加含水流動性土の測定されたフロー値である第1フロー値から得られた、前記第1密度に対する前記第1フロー値の関数である第1関数のデータを格納する第1関数記憶手段と、
    前記硬化材添加含水流動性土の目標のフロー値である第2フロー値が入力された場合に、前記第2フロー値に対応する含水流動性土の密度である第2密度を前記第1関数から算出する第1演算手段と、
    前記第2密度をγ(g/cm3)とし、測定によって得た前記水の密度をρw(g/cm3)とし、前記土の粒子の密度を、2.5(g/cm3)〜2.9(g/cm3)の範囲内の適宜の値であるρs(g/cm3)と設定したとき、前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)を、下式
    w=V×(ρs−γ)/{(ρs/ρw)−1}
    により算出する第2演算手段と、
    前記Wwを有する硬化材添加含水流動性土の体積V(cm3)に含有される硬化材質量Cに対する前記Wwの比である水硬化材比(Ww/C)に対応する前記硬化材添加含水流動性土の硬化後の強度の関係をあらかじめ求めて作成した関数である第2関数のデータを格納する第2関数記憶手段と、
    前記硬化材添加含水流動性土の目標の強度qTが入力された場合に、前記目標強度qTに対応する水硬化材比である目標水硬化材比Rを前記第2関数を用いて算出する第3演算手段と、
    前記第2密度を有する前記含水流動性土の体積V(cm3)に含有される水の総質量Ww(g)と、前記Rの値から、前記目標強度qTを得るために前記含水流動性土の体積V(cm3)当りに添加する硬化材の質量の目標値CT(g)を、下式
    T=Ww/R
    により算出する第4演算手段と、
    前記第2密度を有する前記含水流動性土に体積V(cm3)当りCT(g)の質量の硬化材を添加して混練し流動状態の硬化材添加含水流動性土を生成する混練手段を
    備えることを特徴とする硬化材添加含水流動性土製造装置。
  6. 請求項5記載の硬化材添加含水流動性土製造装置において、
    前記第4演算手段により算出された体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)を出力又は表示する硬化材添加量出力・表示手段を備えること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土製造装置。
  7. 請求項5記載の硬化材添加含水流動性土製造装置において、
    前記第4演算手段により算出された体積V(cm3)当りの含水流動性土への硬化材の添加質量の目標値CT(g)に基き、所要量の硬化材を計量し前記混練手段に供給する硬化材計量・供給手段を備えること
    を特徴とする硬化材添加含水流動性土製造装置。
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