JP3814832B2 - 無機粉末混合物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、単結晶用原料、溶射材用原料に用いられる無機粉末混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機粉末は、単結晶用原料、溶射材用原料、焼結体用原料、多孔体用原料等に広く用いられている。従来の無機粉末は、破砕法で製造されるため、形状や粒度分布が不均一で、単結晶製造あるいは溶射等に使用される原料として、流動性が悪く、安定な供給が困難で、充填密度が低い等の問題があった。
【0003】
これらの問題を克服するために、ホッパーの傾きやノズルの径を最適化する等装置の形状の改善を行ったり、撹拌、振動、加圧等、外部から力をかけるなど強制的に流動させていた。しかしながら、この様な方法では装置が複雑で高価になるという問題があった。
【0004】
また、流動性を向上させるために数百ミクロン〜数ミリの大きさに造粒した粒子が用いられているが、この方法では流動性がよくなる反面、充填密度が低くなるという問題があった。
【0005】
流動層の流動性を改良する方法の一つとして、微粉を混入させることが化学工学、38巻(1974)、29頁に記されているが、粒度分布改善による流動性の改善が目的であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、流動性が高く、安定な供給が可能で充填密度の高い無機粉末混合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の発明からなる。
1)数平均粒子径がD1であり実質的に破面を有しない球状または多面体粒子からなる無機粉末A(ただし、無機粉末Aは酸化アルミニウムまたはイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)である。)と数平均粒子径がD2である粉末B(ただし、粉末Bは酸化アルミニウムまたは遷移アルミナである。)との粉末混合物からなり、D1が0.1μm以上300μm以下、D1/D2比が50以上、無機粉末Aの100体積部に対して粉末Bが0.01から2体積部の範囲にあり、該粉末混合物の安息角が40゜以下であることを特徴とする単結晶用原料用または溶射材用原料用の無機粉末混合物。
2)数平均粒子径がD1 である無機粉末Aの表面に数平均粒子径がD2 である粉末Bが付着した粉末混合物からなることを特徴とする前項1記載の無機粉末混合物。
【0008】
3)無機粉末Aと粉末Bが同一物質であることを特徴とする前項1または2記載の無機粉末混合物。
【0009】
4)1/D2比が70以上161以下である前項記載の無機粉末混合物。
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の無機粉末混合物は、大きな粒子径を有する無機粉末Aと小さな粒子径を有する粉末Bとを混合用装置を用いて混合させることにより、無機粉末Aの表面に粉末Bを付着させることにより流動性が著しく改善されたものである。
【0011】
無機粉末Aとしては、流動性の改良を必要とする全ての酸化アルミニウムまたはイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を用いることができる。ここで無機粉末Aの合成方法は特に限定されない。
【0012】
無機粉末Aの好ましい具体例としては、酸化アルミニウムまたはイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を挙げることができる。
【0013】
無機粉末Aの数平均粒子径D1 は、0.1μmから300μm、好ましくは1μmから300μmである。無機粉末Aの数平均粒子径D1 が0.1μm未満の場合には、それより小さな数平均粒子径D2 を有する粉末Bと混合させて低い安息角を有する無機粉末混合物を得ることは困難であり、実用的ではない。一方、300μmを超える場合は、流動性を改善しなくても安息角は低い。ここで、無機粉末Aの数平均粒子径D1 と粉末Bの数平均粒子径D2 との比(D1 /D2は50以上である。D1 /D2 の比が15未満では50°以下の安息角を有する無機粉末混合物を得ることができない。
【0014】
無機粉末Aの粒度分布は特に限定されない。粒度分布のシャープな粒子から粒度分布の比較的ブロードな粒子まで、いずれでも用いることができる。また数平均粒子径の異なる2種類以上の粉末を混合させたものも用いることができる。
【0015】
無機粉末Aの形状は、実質的に破面を有しない球状あるいは多面体粒子が好ましい。無機粉末Aをより球状に近付けることにより、流動性をより改善することができる。
【0016】
粉末Bとして用いる粉末は、その数平均粒子径が無機粉末Aの1/50以下の酸化アルミニウムまたは遷移アルミナを用いることができる。
【0017】
粉末Bの好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、遷移アルミナを挙げることができる。
【0018】
粉末Bとしては、最終製品を得るまでに除去できるもの、化学変化を起こしても最終製品に対して無害となるもの、残留しても最終製品の特性に影響を与えないものであればいかなる粉末でも用いることができる。ここで、無機粉末Aと粉末Bとは異なる物質でも使用することができるが、同一物質を混合することが好ましい。
【0019】
無機粉末Aと粉末Bとが同一物質である場合、結晶型が異なっても問題はない。例えば、α−アルミナ表面にγ−アルミナを付着させることにより、安息角の低い無機粉末混合物を得ることができる。
【0020】
粉末Bの添加量は、無機粉末Aの体積の100体積部に対して、粉末Bの体積が0.01から2体積部の範囲である。粉末Bの体積が0.001体積部未満の場合、粉末Bの体積が15体積部を超える場合、いずれも安息角が50°を超えるので好ましくない。
【0021】
粉末Bの粒度分布は特に限定されない。粒度分布のシャープな粒子から粒度分布の比較的ブロードな粒子まで、いずれでも用いることができる。また、数平均粒子径の異なる2種類以上の粉末を混合させたものも用いることができる。
【0022】
無機粉末Aと粉末Bとを混合する混合装置は必ずしも限定されず、湿式法、あるいは乾式法が採用でき、また通常用いている粉砕機、解砕機あるいは混合機を用いることができる。具体的にはボールミル、振動ミル、ジェットミル、V型混合機等を挙げることができる。
【0023】
無機粉末Aの製造工程において、同時に数平均粒子径が無機粉末Aの1/50以下の粉末Bが得られるような場合には、無機粉末Aに粉末Bを混合する混合工程を省略することも可能である。
【0024】
無機粉末Aの製造工程中に、粉砕工程、解砕工程あるいは混合工程が存在する場合には、それぞれの工程の前にあらかじめ粉末Bを添加することにより、流動性を改良した粉末を得ることができる。
【0025】
無機粉末Aと粉末Bとを混合して得られる無機粉末混合物を焼成することにより、無機粉末Aと粉末Bとを強固に付着させて付着力を増加させて用いることも可能である。ここで無機粉末Aどうしがネックを形成することがあるので、そのような場合には解砕が必要となる。
【0026】
得られた無機粉末混合物の安息角は40゜以下、更に好ましくは30゜以下である。安息角が50゜以上では流動性が悪く、原料としての無機粉末混合物の安定な供給が困難であり、また、充填密度が低い等の問題が生じる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における各種の測定は次のようにして行った。
1)無機粉末Aと粉末Bの数平均粒子径。
無機粉末AのSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製:T−300)写真を写し、その写真から80ないし100個の粒子を選び出して画像解析を行い、円相当径の平均値とその分布を求めた。円相当径とは、面積が等しい真円の直径に換算した値をいう。
無機粉末Aの表面に付着した粉末BのSEM写真から、無機粉末Aと同様にして円相当径を求めた。
2)安息角の測定。
安息角は注入法によって測定した。測定には10〜20gのサンプルを用い、42メッシュのふるいを、はけで掃きながら通し、その後ロート(排出孔径6mm)を通して堆積させた。排出孔から粉体が堆積する面までの距離を100mmに設定した。角度の読み取りは分度器を用いた。
【0028】
3)充填密度の測定。
充填密度は軽装密度として測定した。測定には50mlのメスシリンダーを用いた。仕込んだ重量、タップを行わない状態での体積それぞれを求め、仕込み重量/体積を充填密度とした。
4)粉末Bの添加量。
粉末Bの重量部とは、無機粉末Aの重量を100としたときの粉末Bの重量のことである。さらに、粉末Bの体積部とは、粉末Bの重量部×(無機粉末Aの密度/粉末Bの密度)から得られる。
【0029】
実施例において使用した無機粉末A、粉末Bは次に示すとおりである。
無機粉末A
1)α−アルミナA(αアルAと略すことがある)。
遷移アルミナを塩化水素ガス気流中にて焼成して得られた多面体のα−アルミナ粉末(住友化学工業株式会社製、粒子径:16.1μm、密度:3.99g/cm3 )。
2)α−アルミナB(αアルBと略すことがある)。
遷移アルミナを塩化水素ガス気流中にて焼成して得られた多面体のα−アルミナ粉末(住友化学工業株式会社製、粒子径:4.7μm、密度:3.99g/cm3 )。
3)α−アルミナC(αアルCと略すことがある)。
溶融アルミナ(商品名:WA、不二見研磨材製、粒子径:16.8μm、密度3.99g/cm3 )。
【0030】
4)イットリウムアルミニウムガーネット(YAGと略すことがある)。
遷移アルミナとイットリアの混合物を塩化水素ガス中にて焼成して得られた多面体YAG粉末(住友化学工業株式会社製、粒子径:8.5μm、密度:4.55g/cm3 )。
【0031】
粉末B
1)α−アルミナD(αアルDと略すことがある)。
α−アルミナ(商品名:AKP−50、住友化学工業株式会社製、粒子径:0.23μm、密度:3.99g/cm3 )。
2)α−アルミナE(αアルEと略すことがある)。
遷移アルミナを塩化水素ガス気流中にて焼成し得られた多面体のα−アルミ製ナ粉末(住友化学工業株式会社製、粒子径:1.63μm、密度:3.99g/cm3 )。
3)遷移アルミナ(遷移アルと略すことがある)。
有機アルミニウムの加水分解により合成して得た水酸化アルミニウムを焼成した遷移アルミナ(商品名:AKP−G15、住友化学工業株式会社製、2次粒子径:0.1μm、密度:3.2g/cm3 )。
遷移アルミナのBET比表面積より求めた一次粒子径は0.01μmであるが、実際に流動性に影響を与える粒子は、一次粒子の凝集した二次粒子であるため二次粒子径を示した。
【0032】
実施例1〜5、参考例1〜2
無機粉末A(α−アルミナA)50gに、粉末B(遷移アルミナ)をそれぞれ0.1g(実施例1)、0.25g(実施例2)、0.025g(実施例3)、0.5g(実施例4)、0.01g(実施例5)、1.5g(参考例1)、2.5g(参考例2)添加して、小型ミル(石崎電機製作所製、SCM−40A)で30秒間撹拌して無機粉末混合物を得た。撹拌後、安息角と充填密度を測定した。実施例1により得られた無機粉末混合物のSEM写真を図1に示す。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0033】
実施例8
無機粉末A(α−アルミナA)を50g、粉末B(α−アルミナD)を0.5gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0034】
参考例3
無機粉末A(α−アルミナB)を50g、粉末B(遷移アルミナ)を0.5gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0035】
参考例4
無機粉末A(α−アルミナC)を50g、粉末B(遷移アルミナ)を0.1gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0036】
参考例5
無機粉末A(α−アルミナC)を50g、粉末B(α−アルミナD)を0.25gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0037】
実施例12
無機粉末A(α−アルミナA)50gに、粉末B(遷移アルミナ)0.25gを、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製、PJM−100SP)(Jミルと略すことがある)を用いて空気圧1kg/cm2 、処理量5.7kg/時間で混合して無機粉末混合物を得た。得られた無機粉末混合物の安息角と充填密度を測定した。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0038】
実施例13
無機粉末A(YAG)を36g、粉末B(遷移アルミナ)を0.072g用い、小型ミルで1分間撹拌して無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0039】
比較例1
無機粉末A(α−アルミナA)に粉末Bを添加せず、α−アルミナAの安息角と充填密度を測定した。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0040】
比較例2
無機粉末A(α−アルミナC)に粉末Bを添加せず、α−アルミナCの安息角と充填密度を測定した。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0041】
比較例3
無機粉末A(α−アルミナA)を50g、粉末B(遷移アルミナ)を0.0025gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0042】
比較例4
無機粉末A(α−アルミナA)を50g、粉末B(遷移アルミナ)を10gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0043】
比較例5
無機粉末A(α−アルミナA)を50g、粉末B(α−アルミナE)を0.5gとした以外は実施例1と同様にして無機粉末混合物を得た。実験条件および結果を表1、2に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003814832
【0045】
【表2】
Figure 0003814832
【0046】
【発明の効果】
本発明の無機粉末混合物は、充填密度が高く、流動性が著しく改善されたもので、その安息角が50゜以下であるという優れた特徴を有している。
本発明の無機粉末混合物は、単結晶用原料、溶射材用原料、焼結体用原料、多孔体用原料に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で観察されたα−アルミナ粉末と遷移アルミナ粉末との混合物の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率1700倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図2】比較例1で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率1700倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図3】実施例1〜5、参考例1〜2および比較例3、4の結果をプロットしたもので、安息角(縦軸)と粉末Bの添加量(横軸)との関係を示す図。

Claims (4)

  1. 数平均粒子径がD1であり実質的に破面を有しない球状または多面体粒子からなる無機粉末A(ただし、無機粉末Aは酸化アルミニウムまたはイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)である。)と数平均粒子径がD2である粉末B(ただし、粉末Bは酸化アルミニウムまたは遷移アルミナである。)との粉末混合物からなり、D1が0.1μm以上300μm以下、D1/D2比が50以上、無機粉末Aの100体積部に対して粉末Bが0.01から2体積部の範囲にあり、該粉末混合物の安息角が40゜以下であることを特徴とする単結晶用原料用または溶射材用原料用の無機粉末混合物。
  2. 数平均粒子径がD1である無機粉末Aの表面に数平均粒子径がD2である粉末Bが付着した粉末混合物からなることを特徴とする請求項1記載の無機粉末混合物。
  3. 無機粉末Aと粉末Bが同一物質であることを特徴とする請求項1または2記載の無機粉末混合物。
  4. 1/D2比が70以上161以下である請求項記載の無機粉末混合物。
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