JP3814014B2 - 高吸水性複合シートの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、幼児用および成人用オムツ、女性用生理用品、あるいはメディカル用の血液吸収体等の吸収体製品に広く用いられている、いわゆる高吸水性高分子を利用した、パルプレスの超薄型高吸水性複合シートとその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸収体製品に用いられている水分や体液を吸収する吸収体主成分としては、従来よりフラッフ状木材パルプと、いわゆる高分子吸収体(以下「SAP」と略称する)との組合せから成り立っている。しかし近年、物流の効率化、小売店頭での棚効率の向上のため、さらには省資源化のために、従来の比較的嵩張る吸収体製品に対して、薄物化、コンパクト化への社会的要請が大となっている。
【0003】
コンパクト化、薄物化の手段としては、SAPとパルプの組合せにおいては、パルプに対して2〜4倍の吸水能力を持つSAPの比率を上げ、パルプの比率を下げれば、薄く、コンパクトになり、究極的にはSAP100%の構造をとれば、最大限に薄層、コンパクト化を追求できるはずである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが一方、SAPの比率が高くなるほど、水の吸収の際に、SAPの特性に基づくいわゆる「ゲルブロッキング現象」が起り、吸収体製品が計算通りの効率では機能しなくなるため、現状ではSAP/パルプ=1/1前後の構成が限界とされており、SAP/パルプ=3以上、あるいは、さらにSAP比率を上げてSAP100%に近いパルプレスの構造をとることは、極めて難しい技術課題となっている。ここで、「パルプレス」という用語は、この分野で一般的に適用されている概念にしたがって、SAPに対するパルプの比が1前後よりも小さいものを総称するものとして使用される。
【0005】
勿論、パルプレス構造に関しては、従来から種々の挑戦がなされている。たとえば、直接紡糸やアクリル酸系繊維の部分加水分解等により、繊維状、ウエブ状のSAPシートをつくる方法、あるいはアクリル等のモノマーをウエブに含浸させて、それを紫外線あるいはエレクトロンビーム等で重合させて、ウエブ状のポリマーをつくる等の様々な試みがなされている。
【0006】
しかし、素材のコストの問題、および多大な設備投資額等により、工業的、経済的に成功した例は報告されていない。
【0007】
本発明は、大量生産により容易に安価に入手できる粒子状の高分子吸収体を利用し、それを結合、2次構造化することによって、いわゆるパルプレスな吸収体を得ようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような粒状ポリマーの2次構造化を果たすためには、第一には水分に安定であると同時に、SAPの吸収性を阻害しないような結合剤の存在が必要であり、第二には物理的サポートや、拡散の媒体になるような基材の存在が必要であり、第三にはその基材上に結合剤とSAPをどのように分布させるかが重要になる。
【0009】
本発明者は、これらの結合剤、基材、そしてその分布状態の最適化を試み、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
本発明によれば、粒子状SAP(A)と、それらを結合するセルロース誘導体を主成分とする結合剤(B)とからなる複合体と、この複合体を支持するシート状基材(C)の3要素を備え、
前記複合体は、前記支持体と結合して存在するA-B-C層と、このA-B-C部分と連続して存在するA-B層とからなり、前記A-B-C層中の前記結合剤(B)の含有量が、前記A-B層よりも高くなるような結合剤の濃度勾配を持っていることを特徴とする高吸水性複合シートが提供される。
【0011】
本発明は、さらに上記の高吸収性複合シートを製造する方法を提供する。この方法は、SAP(A)に対して非膨潤性で、かつ結合剤(B)に対して溶解性をもつ溶媒中に、前記結合剤(B)を溶解させて前記結合剤(B)の希薄溶液を調製する工程と、
前記結合剤(B)の溶液中に前記SAP(A)粒子を分散させて、分散液を調製する工程と、
前記分散液を前記基材上に注下し、脱溶媒しつつ前記基材(C)上にA-B-C層およびその上にA-B層を形成し、脱溶媒により固定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の高吸収性複合シートを構成するSAP、結合剤および基材の3要素について詳細に説明する。
【0013】
SAPと略称される高分子吸水体は、一般にはカルボキシメチルセルローズ、ポリアクリル酸およびその塩類、ポリエチレンオキサイド等の水膨潤性ポリマーの部分架橋したものであって、粒子状、繊維状、顆粒状、フィルム状、そして不織布のさまざまな形態を持ったものが開発されているが、本発明で使用されるものは、粉状、フレーク状、ペレット状のもので、ここでは粒子状と総称するものである。
【0014】
本発明において用いられる結合剤は、SAPが水を吸収したときにその膨潤によって直ちに構造が崩壊するのを防止することができる耐水性をもち、しかも水の浸透性、SAPの膨潤性を阻害しないような性質を持った物質であって、例えば、カルボキシメチルセルローズ、アセチルセルローズ、エチルセルローズ、澱粉、高重合度ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性ポリマーが使用可能である。望ましいのは、カルボキシメチルセルローズ、アセチルセルローズ、エチルセルローズ等のセルロース誘導体であり、更に望ましくは後述するような製造法に適した有機溶媒溶解性のモノアセチル、ジアセチルあるいは、トリアセチルセルローズやその混合体が望ましい。特にこのジアセチルセルローズ(以下、「DAC」と記すこともある)については最近、微生物分解性の良好な製品も発売され、本発明の目的には最適の材料である。
【0015】
本発明で使用される基材に関しては、シート状のフィルム、不織布、発泡フォーム等の、適度な強度と柔軟性をもつシート材料であればよく、好ましくはA-B-C層の形成を充分にとることができる嵩高性のある構造を有するものである。例えば、1〜3mmの厚さの連続気泡の軟質ポリウレタンフォーム、サイド・バイ・サイドのバイコンポーネントファイバーを利用した嵩高不織布、エアレイド法で得られる不織布等の、目掛け比重が0.1以下、望ましくは0.06以下のものが望ましい。また基材は、水の拡散性、一次貯留効果等を勘案すると親水性であることが望ましく、基材に木材パルプ、レーヨン、あるいはリヨセルのような親水性繊維を混合するか、界面活性剤処理により親水性を賦与することが望ましい。
【0016】
つぎに、上述の3要素の最適な組み合わせについて検討する。SAP(A)と結合剤(B)の複合体(A-B)において、結合剤の含有量(X)を
X=B/A×100(%)
と表現すると、Xの値が高くなれば、すなわち結合剤の濃度が高くなれば、構造が安定化する反面、水の吸収性能は低下する。後で詳細に説明するが、図1,図2はジアセチルセルローズの濃度を変えることでXの割合を変えて行った実験結果を示したものである。
【0017】
図1は、結合剤としてのジアセチルセルローズ(DAC)のアセトン溶液を用いてSAPを結合させたのちシート形状に形成して得られた複合体(A-B)の、DAC/SAP重量比(%)の変化に対する吸収性能の変化を示している。なお吸収性能は、高吸水性複合シート上に水20ccを注いでから吸収されるまでに要した時間(秒)で表す。また図2は、DACのアセトン溶液の中に溶液量の約50%に相当する空気を含有させた後、シート形状に形成して得られた複合体(A-B)についてのものである。
【0018】
図1から分かるように、結合剤の含有量が2%以下では安定結合性は弱いが、逆に6%を超えると吸水阻害を起こすようになる。しかし、図2のように多孔質構造を賦与すると、毛管現象による水の吸収移動を可能にする多孔質構造が形成されるために、吸水スピードが大幅に改善されると同時に、吸水阻害に至る結合剤含有量が、10%以上まで増加する。結合剤含有量については、複合体(A-B)層では、多孔質構造を賦与しても、20%を超えると吸水阻害を妨げないので、20%以下、A/B比で示せば5以上に保つことが望ましい。
【0019】
一方、基材との共存部(A-B-C)については、基材(C)との安定結合のためには、結合剤(B)の含有量(X)が20%を超えても構わないし、また場合によってXを増加させる必要も生ずる。実際に工業的に得ようとするA-B,A-B-Cの構成を有する複合体領域(D)は、図式的に示すと、図3のように層P-4〜P-1からなる連続的な複数(この例では4)の層を形成しており、結合剤濃度、SAP濃度および吸水スピードは、下記のような関係になる。
【0020】
結合剤濃度 :P-1<P-2<P-3<P-4
SAP濃度 :P-1>P-2>P-3>P-4
吸水スピード:P-1>P-2>P-3>P-4
すなわち結合剤のこのような濃度勾配のために、複合体(A-B)層の膨潤性(吸水スピード)もまた勾配を持つことになる。
【0021】
これらの複合体(A-B)層を基材(C)に結合、固定して形成される本発明の高吸水性複合シートは、種々の形態をとり得るが、最も単純な形態は、基材(C)全面に渡って均一に複合体(A-B)層をコーティング等の手段で分布させた形態である。
【0022】
本発明の高吸水性複合シートの他の好ましい形態は、基材(C)に対して適当な密度で複合体領域(D)を分布させた形態である。たとえば図4および図5に示すように、基材(C)の所定の領域に、帯状の複数の複合体領域(D)を適当な間隔で平行に配置した形態を有する。あるいは複合体領域(D)は、図6に示すように円形であってもよく、もしくは図7に示すように、適当な長さの帯状のものを位相をずらして平行に配置した形態であってもよい。さらに図8に示すように、円形の複合体領域(D)と帯状の複合体領域(D)とを交互に配置してもよい。
【0023】
このような形態では、SAP(A)の膨潤に複合体領域(D)伴う体積膨潤が阻害されない構造であるために、その吸収性能が最大限に発揮され、また基材(C)はA/Bの結合によって構造が比較的もろく、硬くなるという欠点を回避し、より柔軟な高吸水性複合シートとなり得る。
【0024】
上述したようなA-B,A-B-Cの複合体を形成する方法について以下に説明する。従来のSAP/パルプ系シートの形成は、空気気流中でSAPとパルプを混合し、ネット上に成形する方式が一般的である。この方法は、比較的装置も簡単ではあるが、SAPとパルプの混合状態は、ミクロなレベルでは極めて不均一であり、本発明のように少量の結合剤を有効に機能させるためには、SAP(A)と結合剤(B)のミクロレベルでの均一混合状態をつくることが必要であり、そのためには何らかの分散媒体が必要である。
【0025】
本発明では、有機溶媒をその分散媒体として、均一なSAP(A)/結合剤(B)の分散状態をつくり、ついで脱溶媒によってシート形成を行う。工業的にこのようなプロセスを達成するためには、装置のコンパクト化、脱溶媒エネルギー等を考えるとできるだけ高濃度の系で行う必要がある。またシート形成に至る時間に沈積や相分離することなくSAP(A)と結合剤(B)とが均一な混合状態をある時間保つことも必要である。例えばSAPを高含水系状態の溶媒に分散させれば、直ちに吸水ゲル化し、たとえシート化しても乾燥に多大のエネルギーを要することになる。従って、SAPの分散媒体としては、少量の水分を含有してもよいが、実質的には非水系のSAPを実質的に膨潤させない有機溶媒系を選択することが望ましい。
【0026】
また一方、本発明にとって望ましい結合剤(B)は、水溶性ではなく、溶媒溶解性のものが多いため、結合剤を溶解状態にして、その系にSAPを安定に高濃度分散ができれば、望ましい状態が得られたということになる。例えば、高重合度の繊維原料となるようなアセチルセルローズは、アセトンや塩化メチレン等の有機溶媒に溶解したときに、低濃度でも高粘度を保つため、その溶媒溶液中にSAPを高濃度に分散しても、ある時間は沈積や相分離することなく安定状態を保つことができるし、たとえ沈積しても攪拌によって容易にもとに復することが可能である。SAP(A)と結合剤(B)の濃度比は結合剤の少なくとも5倍以上、好ましくは10倍以上の高濃度を保つことが望ましい。
【0027】
この有機溶媒分離液を基材上に、所望の形状の領域として、所望の分布で塗布したのち脱溶媒すると、図3に示したようなA-B部分、A-B-C部分からなり、かつ濃度勾配を持った複合構造の高吸水性複合シートが得られる。
【0028】
図9に、本発明の高吸水性複合シートの製造法の一例のフローシートを示す。
【0029】
ここで、本発明で得られる高吸水性複合シートの吸水挙動について説明する。図3の模式図で示した層P-1,P-2,P-3,P-4のような濃度勾配を持った構造では、層P-1は結合剤の濃度が相対的に低く、従って相対的に吸水、膨潤スピードは早いが、相対的な構造安定度は低い。逆に層P-4は非常に結合剤の濃度が高く、構造の安定度は高いが吸収、膨潤スピードは遅くなる。
【0030】
このような高吸水性複合シートの吸水挙動は、例えば幼児用オムツなどのように、何回もの尿失禁に耐える吸収体製品については、1回目と2回目の失禁に時間的間隔があるため、このような用途には望ましい性能であるといえる。
【0031】
しかし用途によっては、吸水速度の絶対的レベルが高いことが望まれることもある。この目的のためには、前述したように水分の毛細管移動を可能にするような空隙を持った多孔質構造を賦与することがより効果的である。本発明では、シート形成後の脱溶媒のプロセスにおいて、脱溶媒に伴う多孔質構造が自然発生的に賦与されるが、このような空隙構造をとくに積極的に賦与する手段としては、空気の物理的添加混入、化学発泡等により、微細な大量の気泡を含有するような構造にする、あるいは物理的な粒子径をもつスペーサとなるような物質を共存させる、等のさまざまな方法が適用可能である。空気の混入については、例えば、ジアセチルセルロース(DAC)のアセトン溶液にSAPを混合するような系では、DACのアセトン溶液が適度な粘度を持っているために極めて安定に気泡を含有しやすく、空気添加下で高速攪拌することによって比較的容易に多量の気泡を含んだ系が得られる。この系にSAPを分散させ、この分散液を基材上に塗布、脱溶媒することによって多孔質構造を吸収体に賦与できる。またスペーサーを添加する手段としては、結合剤の溶媒液液中に、アルミナ、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、カオリン等の水不溶性の無機物粉末をSAPと混合し、その分散液を基材上に塗布、脱溶媒することによっても多孔質構造を持った高吸水性複合シートを得ることができる。
【0032】
このようなスペーサ効果をもつ粒子は、SAPに比較して、たとえば1/10以下というような極めて小さい粒径をもつものであるために、このような微細な粒子がSAP表面に付着することにより、SAP同士の結合を妨げ、ここに水が浸透するスペースをつくる。このため、SAPと無機物粉末、もしくはこれらとパルプからなる複合体の吸水スピードが大幅に向上することになる。このような水不溶性無機物粉末のSAPに対する添加割合は、好ましくは2〜100%、より好ましくは5〜50%である。興味深いことは、水不溶性無機物粉末のSAPに対する添加割合が100%を超えると、かえって吸水スピードが阻害される場合があるということである。
【0033】
また、上述のような気泡あるいは水不溶性無機物粉末の添加は、それぞれ単独でなされてもよいが、気泡と水不溶性無機物粉末の両方を添加した場合には、さらに吸水スピードを向上させることができる。気泡および水不溶性無機物粉末の両方をSAPに添加する方法は、具体的には、周囲の空気を巻き込みやすい条件で水不溶性無機物粉末をSAPに添加することにより容易に行うことが可能であり、工業的にも有利である。このような操作を行うための装置としては、ダブルアーム式ニーダ、スクリュー式ブレンダー、ダービュライズ・リアクター等が挙げられる。
【0034】
本発明を以下実施例を用いて説明する。
【0035】
【実施例】
(実施例1)
<準備>
所定量のジアセチルセルロースフレーク(大セル化学製、タバコフィルタートウ用)をアセトン(一級試薬)に溶解し、濃度がそれぞれ1%、2%、3%、4%の4種のDACのアセトン溶液を用意する。
【0036】
一方、図10に示すように、ふた付きの直径120mmのシャーレ11中に直径110mmの濾紙(東洋濾紙製、No.2)12を敷いたものを容器として用意する。濾紙2の中央には直径40mm、深さ3mm程度の窪みを作り、この窪みの中に、1gの粒状SAP(三菱化学製、US−45)13をできるだけ均一に装填する。このようなサンプルを24個(8水準×3サンプル)準備する。
【0037】
各シャーレ11中のSAPに、種々の量でビューレット14からDACアセトン溶液を添加しつつ、脱溶媒を行って乾燥させた。乾燥を促進させるために、シャーレは80℃のホッとプレート15上で加温した。添加量は、SAPに対して1%〜12%の間で変化させた。添加速度は、脱溶媒スピードに応じて加減したが、すべて1分以内で完了した。
【0038】
SAPに対するDACの添加量は、下の表1に示すような関係で調節した。
【0039】
【表1】
Figure 0003814014
<吸収スピードの測定>
結合剤を添加乾燥して得られた各サンプルに、ビュレットで20ccの蒸留水を注下し、吸収されるまでの時間を測定した。前述の図1のグラフは、各水準でこの測定を行って得られた結果をプロットして得たものである。このグラフから明らかなように、DACの濃度が2%未満では結合が不充分であり、約7%を超えると吸水スピードが大幅にダウンしていることが分かる。
【0040】
(実施例2)
<含気泡SAP/DAC混合液の準備>
実施例1と同様にして、1%のジアセチルセルローズ(DAC)アセトン溶液を調製した。このDAC1%溶液200ccを500ccのステンレス製の密閉可能な高速ホモジナイザー容器に入れ、空気約300ccをチューブにより添加しながら高速攪拌したところ、ミルクセーキ状になった約400ccの白濁液が得られた。(因みにこの白濁液は脱気され難く、静置状態では2hr程度ではまだ透明状態にはならなかった。)
この白濁液20cc程度を、複数の密閉できるサンプルビンにとり、このサンプルビンにそれぞれ1g〜10gのSAPを添加し、ガラス棒ですばやく混合し、ほぼSAP1gに相当する量を、実施例1で用いたものと同様の窪みを持った濾紙上に添加し、表面をスパチュラーでならしながら乾燥させた。
【0041】
<吸水スピードの測定>
上記乾燥サンプルに、ビュレットから20ccの蒸留水を添加し、その蒸留水の吸収時間を測定した。ところ、前述の図2のグラフは、各水準でこの測定を行って得られた結果をプロットして得たものである。このグラフから、実施例1に比較して吸収スピードが大幅に上昇し、しかも吸水阻害をおこす濃度が大幅に増加していることが分かる。
【0042】
(実施例3)
<試料の調整>
・DACのアセトン溶液の調整
前実施例と同様に1%のDACアセトン溶液を調整した。
【0043】
・SAPの準備
SAPとして微粒子タイプ(三洋化成製、140〜330メッシュ21.3%、330メッシュ以下78.5%以下)を用意した。目掛け比重は0.65g/cm3であった。
【0044】
・タルクの準備
タルクとして市販のMgO、SiO2(水沢化学製)を用意した。
【0045】
<タルク混合SAP/DAC複合体の調製>
1%のDAC、アセトン溶液50ccをとり、その中にSAP5gを添加しスパラチュラーでよく攪拌し、それに更にタルクを1g添加し、よく攪拌したスラリー状のものを約SAP相当1g分を5サンプル採取し、実施例1、2同様の濾紙上で脱溶媒、乾燥させた。
【0046】
<吸水スピードの測定>
上記サンプルに蒸留水20ccを添加してその吸水時間を測定したところ、40秒〜55秒で5サンプルの平均値は42秒であった。計算値のSAPに対するDAC含有量は8.5%であり、図1、図2に比較すると、気泡含有系に近い吸水特性を示した。
【0047】
(実施例4)
<試料の調整>
・SAP/DAC分散溶液の調整
実施例2の気泡含有状態のミルクセーキ状のDAC1%アセトン溶液100cc中にSAP10gを分散、攪拌したスラリーを用意した。
【0048】
・嵩高不織布の準備
チッソ(株)製のPP/PEのサイド・バイ・サイド型複合繊維(6d×10mm)のショートカットステーブルを原料とした。この複合繊維は、いわゆる紡績油剤による表面油剤加工を行ったものであり、表面が親水化されているとともに、静電気の発生も少ない。
【0049】
この複合繊維を原料として、本州キノクロス(株)製のエアレイド装置により開繊、マット形成、及び熱風中で熱結合して、次表のような物性を持つ嵩高不織布を用意した。この不織布は、水に対する濡れスピードも速く、水の拡散性にも優れた、いわゆるアクイジション効果の優れたものである。
【0050】
【表2】
Figure 0003814014
<不織布へのSAP/DAC分散液の添加複合化>
上記スラリー状SAP/DAC分散液を多列チューブから流しだして、図5のような帯状のパターンでコーティング幅10mmの複合吸収体層を間隔8mmをおいて、上記嵩高不織布上に形成せしめた後、ホットプレート上を通過させて脱溶媒、乾燥を行った。複合化シート中のSAPの含有量は150g/m2であった。
【0051】
乾燥状態での複合化シートは極めて安定にシートに結合されていて、不織布に埋没したA/B/Cの部分が約半分、シート表面に露出したA/B部分が約半分であった。
【0052】
<A/B/C部分とA/B部分のDAC含有量>
シート上の露出分布をスパチュラーを用いて削り取りA/B部分の試料とした。残りのシート部分をA/B/Cの部分の試料とし、小さく砕いてフラスコ中に入れ、充分量のアセトンを添加し、環流管をつけて1時間抽出した。冷却後、1G4グラスフィルターで濾過し、濾液溶媒を秤量済のビーカーにとり蒸発させて恒量とした。これにより、DACの含量を比較したところ、下記の通りであった。
【0053】
A/B部分 : 約5%
A/B/C部分:約12%
<吸収性の評価>
上記複合シート上の高吸収性複合シートを200mm×400mmにカットし、市販のオムツ(花王製、商品名「メリーズ超ウス型Lサイズ」)からトップシート/ティッシュ、バックシート以外の吸収体を除き、そこに挿入してサンプルとし、ブランクの市販品と性能の比較を行った。本法は業界で用いられている一般的方法を用いた。重量は約半分となり、しかも良好な吸収性能を示した。
【0054】
【表3】
Figure 0003814014
(実施例5)
<試料の調整>
・SAP/DAC分散溶液の調整
DAC1%含有アセトン溶液100ccにSAP10gを分散させてスラリーを用意した。
【0055】
・嵩高不織布の準備
実施例4と同様にして得られた目付45g/m2、厚さ3.0mm、密度0.015g/cm3の嵩高不織布を用意する。
【0056】
<複合体の作成>
ホットプレート上に上記嵩高不織布を置き、その上に上記のSAP/DAC分散液を約1cc/10secのスピードで添加して脱溶媒しつつ、直径約30mmの図3に示したような円錐台状のSAP/DAC複合体を嵩高不織布上に形成させた。不織布と結合したA/B/C部分が約2.5mm、表面に露出したA/B部分が約9mmであった。同様なサンプルを2個作成した。
【0057】
<吸収体の吸水挙動>
上記サンプルの1つを500ccビーカーの底に置き、上から300の0.9%NaCl水溶液を注いで2hr放置し、吸水状態を経時的に観察した。
【0058】
複合体は上部からP1→P2→P3という風に膨潤し、P1部分から順次崩壊した。P4部分は最後まで安定に残った。
【0059】
<複合体のDCA結合量の測定>
上記複合体のサンプルの1つをカットナイフを用いて上部から約3mmづつ切り取り、P1、P2、P3に分割し、不織布部分をP4とした。それぞれP1〜P4を細かく砕き、実施例4で説明したと同様な方法でDACをアセトン抽出し、DACの結合量を調べた。その結果を下の表4に示す。
【0060】
抽出精度については明確ではないが、明らかに明確な濃度勾配を持っていることがわかる。
【0061】
【表4】
Figure 0003814014
【0062】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明の高吸水性複合シートによれば、大量生産により容易に安価に入手できる粒子状の高分子吸収体を利用し、それを結合、2次構造化することによって、パルプをほとんどもしくは全く使用することなしに、高度な吸水性を発揮し、しかも任意の柔軟性を賦与することができるので、吸収体製品の超薄型化に寄与するところは大きい。
【0063】
(実験例)
<サンプルの調製>
実施例5と同様にしてDACの1%アセトン溶液を調製した。この溶液500ccに、SAP(三菱化学製、DIAWET US−45)100gを添加混合した。SAPに対するDACの添加割合は5%である。つぎに、この分散スラリー50ccをとり、これにタルクを所定の割合で添加し、よく撹拌した後、含有されるSAPが5gになる量をとり、これを濾紙上にのばし、溶媒を除去して乾燥させて6種のサンプルNo.1〜6を調製した。別に、タルクを含まない分散スラリーを使用した以外は同様に操作してブランクを調製した。
【0064】
<吸水スピードの測定>
上記のサンプルNo.1〜6およびブランクの各々について、蒸留水20ccを添加し、その吸水スピードを測定した。
【0065】
タルクの添加量と吸水スピードとの関係を下記の表5に示す。
【0066】
【表5】
Figure 0003814014

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高吸水性複合シートにおける複合体(A-B)の、DAC/SAP重量比(%)の変化に対する吸収性能の変化を示すグラフ。
【図2】本発明の気泡を含有する高吸水性複合シートにおける複合体(A-B)の、DAC/SAP重量比(%)の変化に対する吸収性能の変化を示すグラフ。
【図3】本発明の高吸水性複合シートの複合体領域を示す縦断面図。
【図4】本発明の一実施例による高吸水性複合シートの平面図。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図。
【図6】本発明の他の実施例による高吸水性複合シートの平面図。
【図7】本発明のさらに実施例による高吸水性複合シートの平面図。
【図8】本発明の別の実施例による高吸水性複合シートの平面図。
【図9】本発明の高吸水性複合シートの製造法の一例を示す工程図。
【図10】粒子状SAPへの結合剤溶液の添加実験方法を示す説明図。
【符号の説明】
P-1 層
P-2 層
P-3 層
C 基材
D 複合体領域

Claims (2)

  1. SAP(A)に対して非膨潤性で、かつ結合剤(B)に対して溶解性をもつ溶媒中に、前記結合剤(B)を溶解させて前記結合剤(B)の希薄溶液を調製する工程と、前記結合剤(B)の溶液中に前記SAP(A)粒子を分散させて、分散液を調製する工程と、前記分散液を前記基材上に注下し、前記基材(C)上にA−B−C層およびその上にA−B層を形成し、脱溶媒により固定する工程と、を備え、
    前記SAP(A)を分散させるのに先立って、前記結合剤(B)の希薄溶液中に気泡を含有させる工程を含むことを特徴とする高吸水性複合シートの製造法。
  2. 前記結合剤(B)の希薄溶媒溶液中に前記SAP(A)とともに水不溶性無機物粉末が分散される請求項に記載の多孔質高吸水性複合シートの製造法。
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