JP3813918B2 - 誘電体磁器組成物及びこれを用いた電子部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘電体磁器組成物に関する。更に詳しくは、新規な組成の誘電体磁器組成物であって、比誘電率、無負荷品質係数及び共振周波数の温度係数等の各種誘電特性をバランスよく備え、導体層との同時焼成によっても導体層を構成する成分の拡散(マイグレーション)を生じ難い誘電体磁器組成物及びこれを用いた電子部品に関する。
【0002】
本発明の誘電体磁器組成物は、マイクロ波帯域及びミリ波帯域において使用される各種電子部品として好適である。この各種電子部品とは、LCデバイス、共振器、カプラ、デュプレクサ、ダイプレクサ、ダイオード及びセラミックコンデンサ等の個別部品類、汎用基板の他、各種機能部品が埋め込まれた機能基板(LTCC多層デバイス等)などの基板類、MPU及びSAW等のパッケージ類、これら個別部品類、基板類及びパッケージ類の少なくともいずれかを備えるモジュール類等である。また、本発明の電子部品は、各種のマイクロ波帯域及び/又はミリ波帯域の電波を利用する移動体通信機器、移動体通信基地局機器、衛星通信機器、衛星通信基地局機器、衛星放送機器、無線LAN機器、及びBluetooth(登録商標)用機器等に利用することができる。
【0003】
【従来の技術】
一般に、高周波帯域で使用される誘電体磁器は、比誘電率が大きく、誘電損失が小さく、且つ共振周波数の温度係数の絶対値が小さいことが求められる。加えて、銀、銀合金、銅及び銅合金等の融点が低い金属と不具合なく同時焼成できることが望まれている。このような誘電体磁器を構成する誘電体磁器組成物として下記特許文献1等が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−187783号公報
【特許文献2】
特開平7−277824号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記特許文献1及び特許文献2に開示された優れた誘電特性を発揮する誘電体磁器組成物を得ている。特許文献1は、Bi(NbTa)O系の組成にVを含有する誘電体磁器組成物を開示するものであり、これにより誘電体磁器の共振周波数の温度係数を安定して所望の値にコントロールすることが困難であるという問題が解決され、優れた各種誘電特性を幅広く得ることが可能となった。また、特許文献2は、更にMnを含有する誘電体磁器組成物を開示するものであり、これにより更に優れた誘電特性の発揮が可能となった。
しかし、これらの誘電体磁器の表面や内部に導体層を設けるために、導体層とこの誘電体磁器となる未焼成成形体との同時焼成を行ったところ、導体層を構成する成分(特にAg)が誘電体磁器内に拡散し、本来発揮できるはずの電気特性を十分に発揮できない場合があることが分かった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、新規な組成であり、低温で焼成でき、高周波帯域における比誘電率、誘電損失及び共振周波数の温度係数の各誘電特性を実用的な範囲でバランスよく発揮でき、導体層との同時焼成により導体層を構成する成分の拡散(マイグレーション)を生じ難い誘電体磁器組成物及びこれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を勘案し、検討を行った。その結果、上記特許文献2に示す組成からVを除いただけでは十分に低温で焼成することが困難であるが、Mnを含有し、Bi、Nb及びTaの各元素が特定範囲で含有される場合に、低温焼成できる性能は保持しながら、高周波帯域においてバランスよく誘電特性を発揮できる誘電体磁器組成物を得ることができることを見出した。更に、この誘電体磁器組成物となる未焼成体と導体層とが同時焼成されて得られた電子部品においては、驚くほど効果的に上記拡散が抑制されていることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下に示す通りである。
本発明の誘電体磁器組成物は、Biのモル比をx、Nbのモル比をy、Taのモル比をzとした場合に0.445≦x≦0.570、0≦y≦0.500、0.010≦z≦0.500、且つx+y+z=1を満たすようにBi、Nb及びTaが含有され、更に、BiをBi、NbをNb、TaをTaとして各々換算したBi、Nb及びTaの合計含有量を100質量部とした場合に、MnがMnOに換算して5質量部以下含有され、Vが含有されないことを特徴とする。
本発明の電子部品は、本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器と、該誘電体磁器の表面及び内部のうちの少なくとも一方に形成された導体層とを備え、該導体層は該誘電体磁器と同時に焼成されたものであることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
本発明の誘電体磁器組成物によると、高周波帯域において比誘電率が大きく、誘電損失が小さく、且つ共振周波数の温度係数の絶対値が小さいという優れた各誘電特性をバランスよく備える。また、銀、銀合金、銅及び銅合金等のような低融点の金属を導体層として同時焼成することができるために電子部品の設計において自由度が高い。
更に、本発明の電子部品とよると、表面及び/又は内部に同時焼成により形成された導体層を備える場合であっても、導体層を構成する成分が誘電体磁器側へほとんど拡散することなく、優れた誘電特性を発揮することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の誘電体磁器組成物及び電子部品を詳細に説明する。
本発明の誘電体磁器組成物は、Bi、Nb、Ta及びMnのうちのNbを除く3種の元素を少なくとも含有するものである。この誘電体磁器組成物は、通常、Bi(NbTa)O、BiNbO及びBiTaO等の結晶相を含有し、なかでもBi(NbTa)Oを主結晶相とする。
【0011】
上記「Bi」は、Bi、Nb及びTa(但し、Nbは含有されない場合がある)の3元素間におけるモル比上記「x」が0.445≦x≦0.570の範囲で含有される。このxは、0.450≦x≦0.570であることが好ましく、0.450≦x≦0.560であることがより好ましく、0.450≦x≦0.550であることが特に好ましい。xが0.445未満又は0.570を超えると無負荷品質係数(以下、単に「Qu」という)が小さくなる傾向(例えば、Qu<300となる)にある。また、比誘電率(以下、単に「ε」という)も小さくなる傾向(例えば、ε<40となる)が認められる。
【0012】
上記「Nb」は、上記Biと同様に3元素間におけるモル比上記「y」がy≦0.500の範囲で含有されるか、又は、含有されない。このyは、0.100≦y≦0.490であることが好ましく、0.200≦y≦0.480であることがより好ましく、0.300≦y≦0.470であることが特に好ましい。このNbの含有によりQuを向上させ、更には共振周波数の温度係数(以下、単に「τ」という)の絶対値を小さくすることができる。しかし、yが0.500を超えるとεが小さくなる傾向(例えば、ε<40となる)にある。
【0013】
上記「Ta」は、上記Biと同様に3元素間におけるモル比上記「z」が0.010≦z≦0.500の範囲で含有される。このzは、0.010≦z≦0.450であることが好ましく、0.020≦z≦0.400であることがより好ましく、0.020≦z≦0.350であることが特に好ましい。このTaの含有によりεを向上させることができる。しかし、zが0.010未満ではTaを含有させる効果が十分に発揮されず、また、τを負の値へ制御できず、τの値を幅広く得ることが困難となる場合がある。一方、zが0.500を超えるとτが過度に負側へ大きくなる傾向(例えば、τ<−50ppm/℃となる)にある。
【0014】
上記「Mn」は、本発明の誘電体磁器組成物に含有されるBiをBi、NbをNb(Nbは含有されない場合がある)、TaをTaとして各々酸化物換算したBi、Nb及びTaの合計含有量を100質量部とした場合に、MnOに酸化物換算した含有量をα質量部とすると0<α≦5.0である。αは、0.02≦α≦4.0であることが好ましく、0.02≦α≦3.0であることがより好ましく、0.02≦α≦2.5であることが特に好ましい。
【0015】
Mnが含有されることにより、低温焼成が可能となり、更には、ε、Qu及びτのいずれの誘電特性も向上させることができる。各誘電特性においてMn含有の効果はBi、Nb及びTa等の他の元素との関係等によっても変化するが、通常、ε及びτに関しては0<α≦5.0の間で確認でき、特にεrでは1.0≦α≦4.0において、また、τでは0.4≦α≦4.0において各々顕著である。また、Quに関しては0<α≦0.5の間でMn含有の効果が確認でき、0<α≦4.5の間で実用的な特性を保持している。従って、αはいずれもの誘電特性がバランスよく得られ易い0<α≦4.0であることが好ましく、0.1≦α≦3.0であることがより好ましく、0.1≦α≦2.0であることが特に好ましい。
更に、Mnが含有されることにより、Agの拡散領域(以下、単に「Ag拡散域」という)の大きさに影響を与えることなく、誘電特性に対する焼成温度の影響を極めて効果的に抑制できる(図2参照)。従って、Mnを含有することにより優れた誘電体磁器及び電子部品を安定して得ることができるようになる。
【0016】
上記「V」は、本発明の誘電体磁器組成物には含有されない。但し、製造過程において不可避的に混入される場合があるが、通常、下記酸化物換算において0.01質量部未満である。即ち、この酸化物換算とは、本発明の誘電体磁器組成物に含有されるBiをBi、NbをNb(Nbは含有されない場合がある)、TaをTaとして各々酸化物換算したBi、Nb及びTaの合計含有量を100質量部とした場合に、VをVに酸化物換算した含有量である。
【0017】
本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器によると、共振周波数を4〜5GHzとして、後述する平行導体板型誘電体円柱共振器法(TE011モード)により測定した場合のεは41〜52とすることができ、更には42〜51とすることができ、特に43〜51とすることができる。同様に、Quは350〜800とすることができ、更には400〜780とすることができ、特に500〜760とすることができる。更に、τは−50〜0ppm/℃とすることができ、更には−40〜−1ppm/℃とすることができ、特に−30〜−1ppm/℃とすることができる。尚、これら各誘電特性の範囲は相互の組み合わせとすることができる。
また、Agを70質量%以上含有する導体層を本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器に同時焼成により形成した場合、得られる導体層を備える誘電体磁器における後述する方法により求めたAg拡散域は、24μm以下(通常18μm以上)にすることができ、更に23μm以下にすることができ、特に22μm以下にすることができる。
【0018】
更に、0.445≦x≦0.570、0≦y≦0.500、0.010≦z≦0.500、且つ、0<α≦5.0であることにより、εは41〜52、Quは350〜800、τは−50〜0ppm/℃、且つ、Ag拡散域は24μm以下(通常18μm以上)とすることができる。また、0.445≦x≦0.570、0.100≦y≦0.500、0.010≦z≦0.400、且つ、0<α≦3.0とすることにより、εは41〜52、Quは390〜800、τは−41〜0ppm/℃、且つ、Ag拡散域は24μm以下とすることができる。更に、0.445≦x≦0.570、0.200≦y≦0.500、0.010≦z≦0.300、且つ、0<α≦2.0とすることにより、εは41〜52、Quは450〜800、τは−38〜0ppm/℃、且つ、Ag拡散域は23μm以下とすることができる。また、0.445≦x≦0.570、0.250≦y≦0.500、0.010≦z≦0.250、且つ、0<α≦1.5とすることにより、εは41〜52、Quは500〜800、τは−29〜0ppm/℃、且つ、Ag拡散域は23μm以下とすることができる。
【0019】
上記「電子部品」は、誘電体磁器の表面及び誘電体磁器の内部のうちの少なくとも一方に同時焼成された導体層を備える。この電子部品は、能動部品であってもよく、受動部品であってもよい。即ち、使用時には他の回路と接続されなければ単独では誘電特性を発揮できない場合であっても、その発揮に必要な他の回路を同時に備えるものも、備えないものも、本発明の電子部品に含まれる。例えば、他の回路を同時に備える電子部品としてはアンテナスイッチモジュール等を挙げることができ、その一部として設置され単独では誘電特性を発揮できないカプラ及びコンデンサ等も本発明にいう電子部品である。
上記「誘電体磁器」は本発明の誘電体磁器組成物からなる。但し、本発明の電子部品は、上記の誘電体磁器以外にも、本発明の誘電体磁器組成物とは異なる組成の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器を備えていてもよい。
【0020】
また、上記「導体層」は、上記誘電体磁器の表面又は内部に形成されて導電性を発揮する層である。この導電性は特に限定されないが、通常、常温において3〜5μΩ・cm程度である。このような導体層を構成する成分も特に限定されないが、Ag、Cu、Ni、Mo、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、Pt及びAu等のうちの1種又は2種以上から構成されるものを挙げることができる。これらの導体層のなかでも、特にAgのみからなる導体層、Agを含む2種以上からなる導体層、Cuのみからなる導体層及びCuを含む2種以上からなる導体層が好ましい。特に本発明では、導体層全体に対してAgを70質量%以上(100質量%を含む)含有する導体層を備える場合であっても、Agが誘電体磁器側へ拡散することが防止される。
【0021】
尚、これらの導体層が、製造時に誘電体磁器に対して同時焼成されているか否かは、同時焼成して得られた誘電体磁器と2次焼成を行って得られた誘電体磁器との間に下記▲1▼〜▲3▼の3つの差異を生じることを利用して判断することができる。即ち、同時焼成して得られたものは、▲1▼より大きく粒成長し、▲2▼電気抵抗が大きく、▲3▼導体層に磁器成分が多く拡散されている。また、誘電体磁器内に形成されている導体層は、通常、同時焼成されたものである。
【0022】
本発明の誘電体磁器組成物を得る方法は特に限定されないが、例えば、以下のようにして得ることができる。
即ち、上記x、上記y、上記z及び上記αの各々の関係を満たすように成分粉末を混合して混合粉末を得る混合粉末調製工程と、該混合粉末調製工程において得られた混合粉末を850℃以下で仮焼する仮焼工程と、該仮焼工程において得られた仮焼粉末を造粒して造粒粉末を得る造粒粉末調製工程と、該造粒粉末調製工程において得られた造粒粉末を成形し未焼成成形体を得る成形工程と、該未焼成成形体を、仮焼温度を超える温度であって且つ850〜1100℃の範囲の温度で焼成する焼成工程とを、この順に備える方法により得ることができる。
【0023】
上記成分粉末としては、Bi酸化物粉末及び加熱されてBi酸化物になる化合物粉末のうちの少なくとも1種、Nb酸化物粉末及び加熱されてNb酸化物になる化合物粉末のうちの少なくとも1種、Ta酸化物粉末及び加熱されてTa酸化物になる化合物粉末のうちの少なくとも1種、Mn酸化物粉末及び加熱されてMn酸化物になる化合物粉末のうちの少なくとも1種等を挙げることができる。各々の化合物粉末としては、例えば、上記各元素を含有する炭酸塩、硝酸塩及び水酸化物等を挙げることができる。
更に、その他にも、例えば、BiTaO系化合物粉末や、BiNbO系化合物粉末や、予め上記のx、y及びzを満たすBi(NbTa)O系化合物粉末等の必要な成分を2種以上含有する粉末を使用することもできる。
【0024】
また、上記仮焼工程においては、通常600〜850(好ましくは700〜800℃)の仮焼温度で加熱を行う。仮焼温度が600℃未満では、例えば、反応をある程度進行させて本焼成時の収縮を抑えて収縮率を制御し易くするという仮焼を行う目的を十分に達することができない場合がある。一方、850℃を超えると、仮焼粉末が硬くなり、仮焼物を粉砕し、更には造粒する工程において粒度を制御し難くなる場合がある。
【0025】
上記造粒工程において造粒する造粒粉末の粒径は特に限定されないが、得られる造粒粉末の最大粒径が8μm以下であることが好ましい。造粒粉末の最大粒径が8μmを超えると、焼成時の結晶相の均質な成長が妨げられる場合があり、十分な誘電特性が得られ難くなる場合がある。更に、この造粒粉末の平均粒径は0.8〜1.2μm(特に0.9〜1.1μm)であることが好ましい。
【0026】
上記成形工程においては、加える圧力は特に限定されないが、100MPa以上の圧力を加えることにより成形することが好ましい。100MPa未満の加圧では得られる未焼成体の緻密化が不十分となり、焼成時にその形状を十分に保持することができない場合がある。
上記焼成工程においては、焼成温度は850〜1100℃とすることが好ましく、更に870〜1080℃とすることができ、特に890〜1060℃とすることができ、とりわけ900〜1050℃とすることができる。即ち、本発明の誘電体磁器組成物は低温における焼成で得ることができる。この焼成温度が850℃未満であると十分に焼結させることができない場合があり、焼成温度が1100℃を超えると目的としない結晶相が成長し易くなり、十分な誘電特性が得られ難くなる場合があり好ましくない。
【0027】
尚、上記の各工程以外にも必要な工程を備えることができる。即ち、例えば、脱脂工程等である。通常、未焼成成形体にはバインダが含有されるため、このバインダを脱脂するための脱脂工程を備えることができる。この脱脂工程は焼成工程を行う前に行い、そのまま焼成工程を引き続いて行うことができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)誘電特性測定用の誘電体磁器の製造
Bi粉末(純度;98.9%)、Nb粉末(純度;99.9%)、Ta粉末(純度;99.9%)及びMnO粉末(純度;96.0%)を成分粉末として、表1の実験例1〜31に各々示すx、y、z及びαとなるように、所定量(いずれの実験例においても混合粉末の全量は200gとした)を秤量後、混合して混合粉末を得た。
【0029】
【表1】
Figure 0003813918
表中「*」は本発明の範囲外であることを示す。
【0030】
その後、得られた混合粉末を振動ミル中に投入し、一次粉砕(3時間)を行った後、大気雰囲気において昇温速度200℃/時間で800℃まで昇温させて2時間仮焼を行い、降温速度200℃/時間で降温させて仮焼粉末を得た。得られた仮焼粉末に有機バインダー(約5g)と水(約200g)とを加え、ボールミルに投入し、直径20mmのアルミナボールを用いて、ミルの回転数90rpmで二次粉砕(24時間)を行った。その後、得られた二次粉砕粉末を、真空凍結乾燥(圧力;約53Pa、凍結温度;−40〜−20℃、乾燥温度;40〜50℃、時間;20時間)により造粒して造粒粉末を得た。得られた造粒粉末を金型に投入し、100MPaで加圧して、直径19mm、高さ10mmの円柱状の未焼成成形体を得た。
【0031】
次いで、得られた未焼成成形体を大気雰囲気において昇温速度50℃/時間で500℃まで昇温させて3時間保持することで脱脂を行った。その後、引き続いて、昇温速度100℃/時間で表1に示す各温度まで昇温させて2時間保持することで焼成を行い、次いで、降温速度100℃/時間で降温させ、本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器及び比較例の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器を得た。
その後、得られた各誘電体磁器を直径16mm、高さ8mmの円柱状となるように研磨し、次いで、超音波洗浄を行い、その後、100℃で4時間保持して乾燥させ、本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電特性測定用の誘電体磁器(実験例1〜9、12〜15及び17〜31)及び比較例の誘電体磁器組成物からなる誘電特性測定用の誘電体磁器(実験例10、11、16及び27〜31)を得た。
【0032】
(2)Ag拡散域測定用の電子部品の製造
▲1▼実験例1〜31
上記(1)と同様な成分粉末を用い、表1の実験例1〜31に各々示すx、y、z及びαとなるように、所定量(いずれの実験例においても混合粉末の全量は200gとした)を秤量後、混合して混合粉末を得た。この混合粉末を用いて上記(1)と同様な方法により仮焼粉末を得た。得られた仮焼粉末にトルエンと分散剤とを所定量加え、上記(1)と同様にして二次粉砕を行った。その後、トルエン中にアクリル系バインダと可塑剤であるジオクチルフタレートとを4時間以上撹拌して溶解させた樹脂溶液を、得られた二次粉砕粉末に加え、粉砕時間を4時間とした以外は上記二次粉砕と同様にして混合してスラリーを得た。得られたスラリーを200メッシュのフィルタを通過させることで、スラリー中の異物等を除去した。その後、更にトルエンを加えて3Pa・sとなるように粘度を調整し、次いで、脱泡を行った。このようにして得られたスラリーをドクターブレード方式のキャスティング装置に投入して、厚さ100〜300μmのシート状に成形した。その後、縦6cm、横5cmに切り出して未焼成成形体を得た。
【0033】
得られたシート状の未焼成成形体3枚を圧着積層し、その表面の□2mmの領域に、Agをペースト全体の90質量%含有する導電層用ペーストをスクリーン印刷した。その後、更に、印刷された導電層用ペーストを覆うように3枚のシート状の未焼成成形体を圧着積層した。次いで、得られた未焼成積層体を熱圧着機を用いて20MPaで加圧して圧着した。
その後、得られた未焼成積層体を上記(1)と同様にして、脱脂を行い、引き続いて焼成を行い、本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器と同時焼成された導電層とを備える電子部品(実験例1〜9、12〜15及び17〜26)、及び、比較例の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器と同時焼成された導電層とを備える電子部品(実験例10、11、16及び27〜31)を得た。尚、これらの電子部品は分かり易さのために上記(1)における実験例Noと同じ番号を用いて各表に表した。
【0034】
▲2▼実験例32(Vを含有する)
更に、実験例1(x=0.50、y=0.45、z=0.05、α=0.03質量部)に対する比較例としてVを含有する実験例32の電子部品を製造した。Vの含有量は、Cu及びMnの含有量と同様な換算方法により、誘電体磁器組成物に含有されるBiをBi、NbをNb、TaをTaとして各々酸化物換算したBi、Nb及びTaの合計含有量を100質量部とした場合に、VのVに酸化物換算した含有量βが0.07質量部となるように含有させた。また、製造にあたっては、Vの原料としてV粉末(純度;99.5%)を用いた以外、上記実験例1〜31の電子部品と同様にして行った。
【0035】
(3)誘電特性及び焼結密度の測定
上記(1)で得られた誘電特性測定用の誘電体磁器を用い、平行導体板型誘電体円柱共振器法(TE011モード)により表1に示す共振周波数fにおけるε、Qu及びτを測定した。この結果を表1に示す。尚、τは25〜80℃の温度領域で測定し、下記式▲1▼に従って算出した。式▲1▼におけるf25は25℃における共振周波数を表し、f80は80℃における共振周波数を表し、ΔTは80℃と25℃との差である55℃を表す。
τ=(f80−f25)/(f25×ΔT) ・・・・▲1▼
また、アルキメデス法により焼成後の密度を測定し、表1に焼結密度として併記した。
【0036】
(4)Ag拡散域の測定(図3参照)
上記(2)で得られた電子部品1(実験例1〜32)を樹脂11に封入し、誘電体磁器12の内部に形成した導体層13が表出するように積層方向に研磨を行った。その後、導体層13が表出している面を積層方向にX線プローブマイクロアナライザ(以下、単に「EPMA」という。日本電子データダム社製、型式「JXA−8800M」)を用いてAgについて線分析を行った。この線分析においては、真空条件下で、波長分散型X線分光器(WDS)を用い、照射電流を0.25nAとし、加速電圧を20kVとした。
【0037】
この結果において、AgのX線強度が9以上として測定された領域から導体層13を除いた領域をAgの拡散が認められるAg拡散域14とした。この基準に従い導体層13からAg拡散域14を通過して導体層13から遠ざかる一方向へ観察したAg拡散域14の長さを測定し(図3における太い矢印16のように)、「Ag拡散域」として実験例1〜22については表1に併記した。また、実験例31{x=0.50、y=0.45、z=0.05、α=0.03質量部、β=0.07質量部(V含有量)}のAg拡散域は180μmであった。
【0038】
(5)評価
以下、上記(3)及び(4)で得られた測定結果に基づき説明する。
▲1▼x、y及びzに関して、
表1において実験例11〜16は、Nbのモル比とTaのモル比との割合を一定に保ち、Mnの含有量も一定に保ったまま、Biの含有量を変化させている。この結果から、Biは本発明の範囲外のx=0.40(実験例11)及びx=0.60(実験例16)では共に、εが40以下と小さく、Quが190以下と小さく、τが−49ppm/℃以下と負側に大きいことがわかる。
【0039】
表1において実験例17〜22は、Biのモル比を一定に保ち、Mnの含有量も一定に保ったまま、Nbのモル比とTaのモル比とを変化させている。この結果から、Nbが含有されない(実験例22)場合であってもεは49.5と大きく、Quは711と大きいことがわかる。また、τも−46.6ppm/℃と−47ppm/℃以下であり十分に実用に供する範囲に収まっている。更に、Nbの含有量を増やし、Taの含有量が相対的に減少するに連れてτが負側に大きな値から0ppm/℃へ近づくことが分かる。また、同時にQuが大きくなることも確認できる。
更に、実験例11〜22ではいずれにおいてもAg拡散域が21〜23μmと極めて小さく、拡散は実使用上なんら問題無い範囲に抑えられていることが分かる。
【0040】
▲2▼αに関して
表1において実験例1〜10は、Bi、Nb及びTaの各モル比を一定に保ったまま、Mnの含有量を変化させている。このMnの含有量に伴う各誘電特性の変化を図1に示した。これらの結果から、Mnの含有量には各々の誘電特性で異なるMn含量において極大が存在することが分かる。即ち、例えば、表1に示すようにx=0.5、y=0.45及びz=0.05に保たれた誘電体磁器組成物では、εはα=2.0で極大値50.9を示し、Quはα=0.20で極大値747を示し、τはα=1.00で極大値−2.80ppm/℃を示している。従って、x、y及びzのバランスに加えて、αにより各誘電特性を幅広く制御できることが分かる。但し、本発明の範囲外であるα=6.00ではQuが149と300を大きく下回っていることが分かる。
更に、実験例1〜10ではいずれにおいてもAg拡散域が21〜22μmと極めて小さく、拡散は実使用上なんら問題無い範囲に抑えられていることが分かる。
【0041】
また、表1において実験例4及び23〜26は、Mnを含有するものであり、焼成温度を950〜1050℃の間で変化させたものである。一方、表1において実施例27〜31は、Mnを含有しないものであり、焼成温度を950〜1050℃の間で変化させたものである。これら実験例4及び23〜26並びに実験例27〜31について焼成温度と各誘電特性(ε、Qu及びτ)との相関を図2に示した。この結果から、図2中で「○」で表される本発明品(Mnを含有する)に対して、「●」で表される比較品(Mnを含有しない)は、焼成温度により誘電特性が変化していることが分かる。即ち、εは最大値と最小値との間で約9%の差を生じており、Quは最大値と最小値との間に約19%の差を生じており、τは最大値と最小値との間に約55%の差を生じている。これに対して、本発明品では焼成温度の影響を受け難く、得られる誘電特性が極めて安定していることが分かる。即ち、εでは約1%、Quでは約2%、τでは約10%の差に各々抑えられていることが分かる。
【0042】
▲3▼Ag拡散域に関して
本発明品である実験例1と比較例である実験例32とを比べると、実験例32ではAg拡散域が180μmであるのに対して、実験例1では22μmと実使用上なんら問題無い程度にまで抑制されている。即ち、Vを含有しないことによりAg拡散域は約88%縮小されており、極めて効果的にAgの拡散が抑制されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mnの配合量と各誘電特性との相関を示すグラフである。
【図2】焼成温度と各誘電特性との相関を示すグラフである。
【図3】Ag拡散域の測定に関する説明図である。
【符号の説明】
1;電子部品、11;樹脂、12;誘電体磁器組成物(誘電体磁器)、13;導体層、14;Ag拡散域、16;走査方向を示す矢印。

Claims (2)

  1. Biのモル比をx、Nbのモル比をy、Taのモル比をzとした場合に0.445≦x≦0.570、0≦y≦0.500、0.010≦z≦0.500、且つx+y+z=1を満たすようにBi、Nb及びTaが含有され、更に、BiをBi、NbをNb、TaをTaとして各々換算したBi、Nb及びTaの合計含有量を100質量部とした場合に、MnがMnOに換算して5.0質量部以下含有され、Vが含有されないことを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 請求項1記載の誘電体磁器組成物からなる誘電体磁器と、該誘電体磁器の表面及び内部のうちの少なくとも一方に形成された導体層とを備え、該導体層は該誘電体磁器と同時に焼成されたものであることを特徴とする電子部品。
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