JP3811463B2 - 研磨工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートやコンクリート2次製品、石材、ガラス材などの被加工物(ワーク)を研磨、研削するための研磨工具及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性体のゴム(ラバー)を使用した従来の研磨工具として、ラバーパットが市販されている。図7(a)は、そのラバーパットの組み付け手順を示す分解斜視図であり、図7(b)は、その使用状況を示す斜視図である。図7(a)に示すように、ディスクグラインダ30の回転主軸部21にインナーフランジ22を装着し、ラバーパット23を挿入してディスクペーパ24を重ね、ロックナット25を螺着し、ロックナットレンチ(図示せず)で締結する。これにより、図7(b)に示すように、ラバーパット23はゴム製であるため、ゴムにより柔軟な研磨作業を行うことができる。
なお、特許文献を検索したが該当するものがない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゴム製ラバーパット23では押圧力に対して腰が柔軟しすぎて十分な研摩作業が出来ないという問題があった。また、研磨作業用のディスクペーパ24は、円形に成形したサンドペーパであり、腰が弱く研磨量も少なく、しかも砥粒の脱落により切れ味がすぐに悪くなるという問題があった。また、研磨による研磨熱がこもり、放熱が悪いという問題があり、ディスクペーパ24は消耗品であるため、交換頻度が高く、作業性が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の研磨工具は、従来の問題点に鑑み創案されたものであり、弾性体を主体とする研磨工具であって、押圧力に対しても腰が強く、十分な研摩量を確保でき、砥粒の脱落がしにくく、切れ味が変わらずに持続できて、しかも、柔軟性に富み、振動や騒音の少ない研磨工具を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る研磨工具は、電動工具のスピンドルに取り付けられて回転して、被加工物に対して押し付けながら、加工物の研磨面を研磨する研磨工具において、前記被研磨面を研磨する切刃部を下面に有する円板状の切刃板と、前記切刃板に弾性体を介して回転力を伝える回転基体と、を備えた研磨工具であって、前記切刃板は、切刃を有する円環状の切刃部と、前記切刃部の内周縁から所定角度で筒状に立ち上げた立ち上げ部と、前記立ち上げ部の端部に前記切刃部と平行に設けられて中央に穴を有する円板部とを備え、前記回転基体は、前記スピンドルに装着するために取付機構を有する軸部と、前記軸部の下端に設けられた下フランジを備え、前記軸部が前記切刃板の円板部の穴に挿通され、前記回転基体の下フランジと、前記切刃板の円板部には、複数の孔を穿設し、前記下フランジの上面と前記切刃板の円板部の下面を対峙させ、前記弾性体に埋設されて配置するとともに、前記弾性体を複数の孔に充填させたことを特徴とする。
【0006】
このように、回転基体と切刃板とは弾性体を介して連結し、弾性体で回転基体と切刃板とを一体としたことにより、研磨工具の押圧力に対して腰があり、柔軟性もある。また、弾性変形することにより、切削力の反力を吸収することから、手に伝わる振動がほとんどなく、衝撃音が緩和されるため、振動や騒音の少ない高寿命の研磨工具を提供することができる。さらに、電動工具の主軸にかかる衝撃が緩和され、モータにかかる負担を軽減できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の研磨工具であって、前記切刃板の円板部の上面に前記弾性体を介して上フランジの下面が対峙するように、前記軸部上端の近傍に当該上フランジを設けたことを特徴とする。
【0008】
このように、上フランジを設け、下フランジと上フランジが上下方向に切刃板を挟み込んだ状態で弾性体に埋設されることにより、研磨工具の押圧力に対しては、上フランジが力を受ける分、腰が強くできるため、十分な研摩量を確保できる。且つ柔軟性に富み、弾性体の伸縮して弾性変形する。また、弾性変形することにより、切削力の反力を吸収することから、手に伝わる振動がほとんどなく、衝撃音が緩和されるため、振動や騒音の少ない研磨工具を提供することができる。さらに、電動工具の主軸にかかる衝撃が緩和されることから、モータにかかる負担を軽減できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の研磨工具であって、前記上フランジには、複数の孔を穿設するとともに、前記弾性体を当該複数の孔に充填させたことを特徴とする。
【0011】
このように、回転基体の下フランジと、または回転基体の下フランジと上フランジには、複数の孔が形成され、前記切刃板の円板部にも同様に複数の孔を穿設したことにより、弾性体がこれらの穴の中にも充填されるため、回転基体と弾性体、上フランジと弾性体、切刃板と弾性体とがしっかりと連結できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨工具であって、前記回転基体は、当該回転基体の外径D1と下フランジの外径D2と、前記切刃板の中央に開口を有する円板部の穴径dと、D2>d>D1の条件で構成されることを特徴とする。
【0013】
このように、D2>d>D1の条件で各穴径と軸径が構成されることにより、回転基体と切刃板との係合を確保することができ、且つ、切刃板は回転基体に対して柔軟に変形することができるため、凹凸または段差がある被加工物に対してスムーズに研磨、研削作業を行うことができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨工具であって、前記弾性体は、前記切刃部の穴に対応する位置に上下に貫通した孔を有することを特徴とする。
【0015】
このような貫通孔を設けることにより、切粉の排出の他、空冷による冷却効果が高まると共に、軽量化ができるため、扱いやすくすることができる。
この場合、上下に貫通した孔の他に、弾性体のみに穴を設けても構わない。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨工具であって、前記切刃は、前記切刃板の外周縁より突出させていることを特徴とする。
【0017】
このように、切刃板の外周縁より切刃を突出させていることにより、被加工物の被研磨面と切刃板の外周縁および弾性体と干渉することがなく、スキマが確保されるため、弾性体の耐久性を確保し、寿命を延ばすことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の4つの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施の形態>
図1は、本発明の第1実施の形態を示し、図1(a)は研磨工具の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線の断面図である。図2は研磨工具の下面図である。
図1(b)に示すように、研磨工具10は、被研磨面を研磨する切刃3を下面に有する円板上の切刃板2と、切刃板2に弾性体4を介して回転力を伝える回転基体1とによって構成されている。
【0021】
回転基体1は、電動工具に装着するために取付機構を有した軸部1aと、この軸部1aの下端部(先端ともいう)に設けられたフランジ部1bを備えている。
この取付機構は、電動工具(ディスクグラインダ)13(図5参照)のスピンドル13aに回転基体1の雌ネジ1cを螺入して接続される。そして、回転基体1の軸部1aに形成されたスパナ掛けのための2面削ぎ面1e、1eが施されており、スパナ工具によって、取り付け、取り外しが行われる。
【0022】
回転基体1は、旋削加工、フライス加工、穴あけ加工によって製作される。回転基体1の上端(基端ともいう)は、スパナ掛けに必要な頭部が上面から突出しており、軸部1aの下端には、下フランジ1bが一体に形成され、複数の孔1d、1d…が例えば、8等配に穿設されている。
回転基体1の軸部1aは、外径φD1の軸を形成し、下端には外径φD2の下フランジ1bが形成されている。
【0023】
切刃板2は、円環状の切刃部2aと、切刃部2aの内周縁から所定角度で筒状に立ち上げた立ち上げ部2bと、立ち上げ部2bの端部を閉鎖して中央に穴2eを設けた円板部2cを備えている。
切刃板2の円板部2cの穴2eに回転基体1の軸部1aが挿通され、回転基体1の下フランジ1bと上下に対峙して、弾性体4に埋設されて連結されている。
切刃板2の円板部2cには、複数の孔2d,2d…、例えば、8等配に並んで配設されている。切刃板2は、薄い円板状の鉄板であり、ここでは、同じSPCC材やSK材で厚みt0.5〜2.0mmが好適である。
【0024】
切刃板2は、被加工物を研磨するための切刃3を有し、略円板状で、半断面がクランク形状をしており、円板部2cには内径φdの穴2eに、回転基体1の軸部1aを挿通し、下フランジ1bとの隙間、例えば約5mmを確保して配設している。その上から弾性体4によって覆われている。回転基体1と切刃板2との隙間には、弾性体4が充填され、充填した弾性体4によって回転基体1と切刃板2と上フランジ7とが連結されている。
したがって、前記回転基体1の軸部1aの外径φD1と下フランジ1bの外径φD2と、前記切刃板2の開口部の穴径φdとは、D2>d>D1とすることによって、切刃板2が外に抜けないようになっている。
【0025】
弾性体4は、図1(b)に示すように、切刃板2の円板部2cと下フランジ1bとが上下に対峙した状態で、その隙間に充填されている。下フランジ1bの孔1d、1d…や切刃板2の孔2d、2d…にも充填されており、回転基体1と切刃板2とを包み込んでしっかりと結合させている。この弾性体4は、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリルゴム、フッ素ゴム等の高分子を用いた合成ゴム等から構成してもよい。また、弾性体4の中に、ケプラーやワイヤーあるいはグラスファイバー繊維等の引張力に強い細線を混入して強度を高めても構わない。
【0026】
また、図1(a)、図2に示すように、切刃板2と弾性体4には、上下に複数の貫通した孔5、5…が、例えば9個配設されている。このように、貫通した孔5、5…を設けたことにより、研磨、研削によって発生した研磨熱や研摩熱を上方に開放し、発散させ、空気冷却効果を高めると共に、軽量化に有効である。
【0027】
図2に示すように、切刃3は、切刃部2aの下面の外周縁に沿って円周方向に島状に、しかも横向きまたは縦向きに配設されており、切刃部2aの外周縁より寸法tだけ突出している。ここでは、寸法tは、約1mmが好適である。また、図中の大きな黒点は、硬質砥粒3a、3a…の例えばダイヤモンド粒子であるが、他の超硬度の砥粒、例えば、CBN(立方晶窒化ほう素)粒子や、アルミナやアランダム、炭化珪素あるいは超硬粉末等を単体あるいは複数または全部を混合して使用しても構わない。
【0028】
<第2実施の形態>
図3は、本発明の第2実施の形態に係り、図1(a)に示すA−A線の断面図である。第1実施の形態の図1(b)との相違点は、回転基体6であるため、回転基体1と回転基体6の違いについて説明する。
図3に示すように、研磨工具20の回転基体6は、電動工具に装着するために取付機構を有した軸部6aと、軸部6aの下端に設けられた下フランジ6bを備えている。回転基体6の軸部6aには、雌ネジが無い代わりに筒状の上端には取付部6eが形成され、取付部6eには取付孔6cが形成されている。下端には下フランジ6bが形成されて、その下フランジ6dには複数の孔6d、6d、…が穿設されている。回転基体6は、プレス加工によって、成形される。
以下、切刃板2、切刃部3及び弾性体4については、第1実施の形態での説明と重複するため、同符号を付し説明は省略する。
【0029】
<第3実施の形態>
図4(a)は、本発明の第3実施の形態に係り、上フランジ付の研磨工具30を示し、図1(b)の第1実施の形態をベースとする研磨工具の断面図である。図4(a)に示すように、研磨工具30は、被研磨面を研磨する切刃3を下面に有する円板上の切刃板2と、切刃板2に弾性体4を介して回転力を伝える回転基体1と腰を強くする上フランジ7によって構成されている。
【0030】
軸部1aの上端近傍には外径が小さい直径φD3により位置決めがなされて上フランジ7が嵌入され、その軸部1aにカシメによって回転基体1に嵌着されている。この上フランジ7にも複数の孔7a、7a…が例えば、8等配に穿設されている。下フランジ1bの孔1dと上フランジ7の孔7aは、回転基体1と弾性体4とを連結するのに重要な役目を果たし、弾性体4はこの孔1d、7aに浸入し、しっかりと包み込んで一体になっている。
【0031】
切刃板2の円板部2cの穴2eに回転基体1の軸部1aが挿通され、回転基体1の下フランジ1bと上下フランジ7とが上下に対峙して、弾性体4に埋設されて連結されている。また、切刃板2の円板部2cには内径φdの穴2eに、回転基体1の軸部1aを挿通し、下フランジ1bとの隙間、例えば約5mmを確保して配設し、その上から上フランジ7を嵌着して、例えば約3mmの隙間を確保する。そして、回転基体1と切刃板2と上フランジ7との隙間には、弾性体4が充填され、充填した弾性体4によって回転基体1と切刃板2と上フランジ7とが連結されている。
弾性体4は、切刃板2の円板部2cを挟んで、上下に上フランジ7と下フランジ1bとを配置した状態の隙間に充填され、それらが埋設されている。
【0032】
<第4実施の形態>
図4は、本発明の第4実施の形態に係り、上フランジ付の研磨工具40を示し、(b)は、図3の第2実施の形態をベースとする研磨工具の断面図である。
図4(b)に示すように、研磨工具40は、上フランジ8は、回転基体6の軸部6aの上端近傍に嵌着されており、上フランジ8には複数の孔8a、8a…が穿設されている。回転基体6についての説明は、重複するため省略する。
【0033】
続いて、本発明の研磨工具の動作について説明する。
図5は、本発明の第3実施の形態で示した研磨工具30を使用して被加工物を研磨加工している様子を示す断面図である。図5に示すように、電動工具(ディスクグラインダ)13に研磨工具30を装着する。
まず、ディスクグラインダ13のスピンドル13aに形成された雄ネジ13bを回転基体1の雌ネジ1bに螺入し、スパナをスパナ掛け用の2面削ぎ面1e、1eに挿入し取り付ける。
次に、ディスクグラインダ13の電源入用押しボタン(図示せず)を押し、スピンドル13aを回転させる。そして、被加工物の研磨面に切刃板2の切刃3を押し付ける。このとき、切刃板2の切刃3は被加工物Wに当接し、押圧力がかかると弾性体4が柔軟に変形するが、上フランジ7により押し戻されて、研摩加工が行われる。
これにより、弾性体4の下面に設けられた切刃3を有する切刃部2aもソフトに接触しながら回転し、硬質砥粒3aにより砥粒の脱落がしにくく、切れ味が変わらずに持続できて、しかも、柔軟性に富み、騒音の少ない研磨ができる。このように、研磨する切刃3は、ダイヤモンド粒子からなる硬質砥粒3aであり、極めて硬度は高く、かつ十分な厚みを有しているため長寿命であり、工具交換の頻度は極めて低くできる。
【0034】
弾性体4の変形は、切刃板2の切刃部2aの研磨面を柔軟に変えるため、硬質砥粒3aの切刃部2aの当接面も柔軟に変わることになる。
さらに、被加工物Wの形状に倣いながら柔軟に変形して研磨作業を行い、回転基体1がゴム製の弾性体4に覆われているために被加工物Wとの衝突の際に発生する振動が手に伝わることがなく、騒音を抑えることができる。
【0035】
続いて、図6を参照して研磨工具40の装着方法について説明する。
図6は、研磨工具40を使用して、被加工物を研磨加工している様子を示す断面図である。図6に示すように、ディスクグラインダ13に研磨工具40を装着する方法は、ディスクグラインダ13のスピンドル13aに形成された雄ネジ13bに回転基体6の取付穴6cを挿通し、取付部6eにスリーブ14を挿入する。そして、スパナ工具(図示せず)によってナット15を固定する。
動作の説明は、第3実施の形態での説明と重複するため、省略する。
【0036】
つぎに、本発明に係る研磨工具10〜40の製造方法について説明する。
ただし、研磨工具10、20の場合は、上フランジ7、8は不要とする。
第1工程は、金属粉末と硬質砥粒の混合物を生成してチップを成形する。金属粉末は、銅(Cu)、すず(Sn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)等の金属の粉末であり、硬質砥粒はダイヤモンド粒子である。これらの各種金属を所定量、例えば、チップを100個分製造するに当たっては、銅、コバルト、鉄、ニッケルは20〜50g、すず(Sn)は10〜30g、タングステンは5〜20gずつ計量し、仮混合容器に投入する。そして、所定時間、例えば、10分間程攪拌、混合し、高速混合容器に投入し、例えば、15〜20分間程攪拌して本混合する。
【0037】
つぎに、本混合した金属粉末に所定量のダイヤモンド粒子を散布、投入し、所定時間、例えば、10分間程混合して成形機ホッパーに投入して成形機を稼動させて切刃3となるチップを成形する。
【0038】
第2工程は、図2に示すように、切刃板2をプレス加工にて成形した後、銅メッキCuを施した切刃部2aに切刃(チップともいう)3を配置して焼結し、切刃部2aに一体とした切刃3を形成する。切刃板2は、一例として鋼板の、例えばSPCC材、SK材の厚みt2.0mmが好適であるが、その他の材料であっても構わない。これらの鋼板を円形状にプレスにより打ち抜き、その後、半断面がクランク形状のように絞り加工と中央の穴2e、孔2d、2d…をプレスにて加工する。
【0039】
チップの成形には、圧縮率を上げ、型の離型を良くするために、ステアリン酸亜鉛を0.1〜0.3%程度添加してもよい。切刃板2に施す銅メッキCuは5〜10μmの厚みが都合がよく、時間は60〜80分、温度は700〜1000°C、圧力は15〜30MPaの条件により、各種金属粉末が焼結し、銅メッキ層に拡散し結合する。
【0040】
第3工程は、図4(a)に示すように、回転基体1は、材料がS45Cのバー材であり、旋盤による旋削加工をした後、フライス盤による2面削ぎ面1e、1eを加工し、ボール盤による下フランジ1bの孔1d、1d…の穴あけ加工が好ましく、これらの加工を1台で行うことができる複合加工機で行ってもよい。
また、図4(b)に示すように、回転基体6の場合は、SPCC材またはSK材が好適だが、その他の材料であっても構わない。プレス加工によって、絞り加工を行い、下フランジ6bに配置した複数の孔6d、6d…を加工する。
【0041】
第4工程は、図4(a)に示すように、回転基体1と切刃板2と上フランジ7の間に弾性体4を充填して成形し、前記切刃板2を固定する。弾性体4であるゴム成形は、回転基体1、6を下型のセンター穴に固定し、同時焼結された切刃部3が形成された切刃板2を下型に組み込み、ゴム材を下型に入れる。そして上型を下型に組み付け、この型をプレス成形機にセットする。つぎに、20〜30MPa程度に加圧しながら所定の温度、例えば、170°Cまで上昇させることによってゴムの流動性を増し、充填させる。
続いて、所定時間後の例えば、1時間後に型から成形したゴムカップ本体を取り出し、体裁を整える。さらに、ゴムカップ本体を旋盤に取り付け、回転させて、切刃部2aの切刃3の目立てを行い、研磨工具が完成する。
【0042】
なお、本発明は、この実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて適宜に変更することが可能である。たとえば、回転基体、切刃板、上フランジ等の材質は、その他の材質であってもよいし、切刃部の形状、材質も変更しても構わない。また、研磨工具の製造方法は、少なくとも(1)〜(4)の工程からなるが、その工程順を変えてもよいし、また、これに別工程を追加しても構わない。さらに、融着による製造方法の他に、電着による製造方法、粉末冶金で焼結したチップを切刃とする製造方法であってもよい。
【0043】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、回転基体と切刃板とは弾性体を介して連結し、弾性体で回転基体と切刃板とを一体としたことにより、研磨工具の押圧力に対して腰があり、柔軟性もある。また、弾性変形することにより、切削力の反力を吸収することから、手に伝わる振動がほとんどなく、衝撃音が緩和されるため、振動や騒音の少ない高寿命の研磨工具を提供することができる。
【0044】
請求項2に記載の発明によれば、上フランジを設けたことによって、研磨工具の押圧力に対しては、上フランジによって力を受けるために腰が強くできるため、十分な研磨量を確保できる。且つ柔軟性に富み、弾性体伸縮して弾性変形する。また、弾性変形することにより、切削力の反力を吸収することから、手に伝わる振動がほとんどなく、衝撃音が緩和されるため、振動や騒音の少ない研磨工具を提供することができる。
【0045】
請求項に記載の発明によれば、回転基体の下フランジと、または回転基体の下フランジと上フランジには、複数の孔が形成され、前記切刃板の円板部にも同様に複数の孔を穿設したことにより、弾性体がこれらの穴の中にも充填されるため、回転基体と弾性体、上フランジと弾性体、切刃板と弾性体とがしっかりと連結できる。
【0046】
請求項に記載の発明によれば、D2>d>D1の条件で各穴径と軸径が構成されることにより、回転基体と切刃板との係合を確保することができ、且つ、切刃板は回転基体に対して柔軟に変形することができるため、凹凸または段差がある被加工物に対してスムーズに研磨、研削作業を行うことができる。
【0047】
請求項に記載の発明によれば、このような貫通穴を設けることにより、切粉を排出し、空冷による冷却効果が高まると共に、軽量化ができるため、扱いやすくすることができる。
【0048】
請求項に記載の発明によれば、切刃板の外周縁より切刃を突出させていることにより、被加工物の研磨面と切刃板の外周縁および弾性体と干渉することがなく、隙間が確保されるため、弾性体の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係り、(a)は研磨工具の平面図、(b)は、(a)に示すA−A線の断面図である。
【図2】図1(b)に示す本発明の研磨工具の下面図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係り、図1(a)に示すA−A線の断面図である。
【図4】(a)は、第3実施の形態に係り、上フランジ付の研磨工具の断面図であり、(b)は第4実施の形態に係り、上フランジ付の研磨工具の断面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態を示した研磨工具を使用して被加工物を研磨加工している様子を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態を示し、研磨工具を使用して被加工物を研磨加工している様子を示す断面図である。
【図7】従来の研磨工具であるラバーパットを示し、(a)はその組み付け手順を示す分解斜視図であり、(b)はその使用状況を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、6 回転基体
1a、6a 軸部
1b、6b 下フランジ
1c 雌ねじ
1d、2d、5、6d、7a、8a 孔
1e 2面削ぎ面
2 切刃板
2a 切刃部
2b 立ち上げ部
2c 円板部
2e 穴
3 切刃
3a 硬質砥粒
4 弾性体
6c 取付穴
6e 取付部
7、8 上フランジ
10、20、30、40 研磨工具
13 電動工具(ディスクグラインダ)
13a スピンドル
14 スリーブ
15 ナット
W 被加工物(ワーク)

Claims (6)

  1. 電動工具のスピンドルに取り付けられて回転して、被加工物に対して押し付けながら、加工物の研磨面を研磨する研磨工具において、
    前記被研磨面を研磨する切刃部を下面に有する円板状の切刃板と、
    前記切刃板に弾性体を介して回転力を伝える回転基体と、
    を備えた研磨工具であって、
    前記切刃板は、切刃を有する円環状の切刃部と、前記切刃部の内周縁から所定角度で筒状に立ち上げた立ち上げ部と、前記立ち上げ部の端部に前記切刃部と平行に設けられて中央に穴を有する円板部とを備え、
    前記回転基体は、前記スピンドルに装着するために取付機構を有する軸部と、前記軸部の下端に設けられた下フランジを備え、前記軸部が前記切刃板の円板部の穴に挿通され、
    前記回転基体の下フランジと、前記切刃板の円板部には、複数の孔を穿設し、前記下フランジの上面と前記切刃板の円板部の下面を対峙させ、前記弾性体に埋設されて配置するとともに、前記弾性体を複数の孔に充填させたことを特徴とする研磨工具。
  2. 前記切刃板の円板部の上面に前記弾性体を介して上フランジの下面が対峙するように、前記軸部上端の近傍に当該上フランジを設けたことを特徴とする請求項1に記載の研磨工具。
  3. 前記上フランジには、複数の孔を穿設するとともに、前記弾性体を当該複数の孔に充填させたことを特徴とする請求項2に記載の研磨工具。
  4. 記回転基体は、当該回転基体の外径D1と下フランジの外径D2と、前記切刃板の中央に開口を有する円板部の穴径dと、D2>d>D1の条件で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨工具。
  5. 前記弾性体は、前記切刃部の穴に対応する位置に上下に貫通した孔を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨工具。
  6. 前記切刃は、前記切刃板の外周縁より突出させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨工具。
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