JP3809479B2 - 車両における座席のスライド・昇降装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に装備される座席のスライド・昇降装置に関し、特に、座席をドア開口部に向けてスライド可能かつ同ドア開口部を通して昇降可能とした車両における座席のスライド・昇降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車両における座席のスライド・昇降装置は、例えば特開平7−89382号公報に示されていて、車室のフロアに対して支持される座席を定位置とスライド位置間にて同座席の前後方向にスライド可能なスライド機構と、前記座席をそのスライド位置より下方に下降可能かつ同スライド位置に上昇可能な昇降機構を備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した特開平7−89382号公報の装置においては、車室のフロアに対して旋回可能とした回転台座上に座席の前後方向に沿って設けたレールと、このレールに長手方向へ移動可能に組付けられて座席の下部及び背部に配置される移動台と、この移動台を定位置またはスライド位置に解除可能に固定するスライド用固定装置を備えたスライド機構が採用されるとともに、前記移動台と、座席のシートバック背面に設けた接続板と、これら移動台と接続板を連結する一対のリンクアームと、接続板の前方に固着されて座席のシートクッション及びシートバックを支持する昇降フレームとを備えて、座席のシートバック後方に配置されてリンクアームの一つを駆動する油圧シリンダによって駆動される昇降機構が採用されていて、スライド機構にて座席を定位置とスライド位置間にてスライドさせるときには、スライド機構の移動台と昇降機構の全構成部材が座席の定位置とスライド位置間の全ストロークを一体的に移動する。したがって、座席を定位置とスライド位置間にて人力でスライドさせる場合には、大きな労力を必要とする。
本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、その目的はスライド機構によって座席を定位置とスライド位置間にてスライドさせるときには昇降機構の構成部材が全ストロークを移動しないように構成した車両における座席のスライド・昇降装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、車室のフロアに対して支持される座席を定位置とスライド位置間にて同座席の前後方向にスライド可能なスライド機構と、前記座席をそのスライド位置より下方に下降可能かつ同スライド位置に上昇可能な昇降機構とを備えて、前記座席をドア開口部に向けてスライド可能かつ同ドア開口部を通して昇降可能とした車両における座席のスライド・昇降装置において、前記昇降機構として、前記フロアに対して前記座席の前後方向へ移動可能に組付けたベースプレートと、このベースプレートの上部に基部にて回動可能に組付けられて前記ベースプレートの移動方向に沿って延び収納状態では略水平な直線状の上部リンクアームと、前記ベースプレートの下部に基部にて回動可能に組付けられて前記ベースプレートの移動方向に沿って延びる下部リンクアームと、これら両アームの先端部が回動可能に連結された昇降プレートとからなる四節リンク機構を備えた昇降機構を採用するとともに、前記スライド機構として、前記昇降機構における収納状態の前記上部リンクアームと前記昇降プレートに形成されて前記上部リンクアームと一直線状に連続するレール部とによって構成したレールと、このレールに長手方向へ移動可能に組付けられて前記座席を支持するシート取付台と、このシート取付台を定位置またはスライド位置に解除可能に固定するスライド用固定装置を備えたスライド機構を採用した。
【0005】
この場合において、前記レールを構成する前記上部リンクアームと前記昇降プレートのレール部とを略コ字状に形成して側方に開口する凹部を設け、この凹部に前記シート取付台を前記レールの長手方向へ移動可能とするローラを配置するのが望ましい。
【0006】
【発明の作用・効果】
本発明による車両における座席のスライド・昇降装置においては、スライド用固定装置によるシート取付台の固定を解除すれば、昇降機構における収納状態の上部リンクアームと昇降プレートに形成されて上部リンクアームと一直線状に連続するレール部とによって構成したレールに沿ってシート取付台を座席とともに移動させることができ、このときにはシート取付台と座席が定位置とスライド位置間の全ストロークを移動するのみで昇降機構の構成部材は全ストロークを移動しない。したがって、座席を定位置とスライド位置間にて人力でスライドさせる場合には、小さな労力にて軽快に操作することができる。
【0007】
また、本発明において、前記レールを構成する前記上部リンクアームと前記昇降プレートのレール部とを略コ字状に形成して側方に開口する凹部を設け、この凹部に前記シート取付台を前記レールの長手方向へ移動可能とするローラを配置した場合には、板状の上部リンクアームとレール部とで構成するレールに、同レールの上面と下面にそれぞれ接する各ローラを上下に間隔を有して配置し、これらローラによりシート取付台を長手方向へ移動可能とする場合に比して、当該装置全体の高さをレールの上面に接して配置するローラの高さに相当する分抑制でき、限られた高さの車室で座席を良好に支持することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8は本発明による装置をワンボックスカーの中列左側の座席、すなわち左側にスライドドア91によって開閉されるドア開口92が形成されている部位に配置されている座席S1に実施した例を示していて、この装置は、座席S1を車室のフロア93に対して旋回可能な旋回機構A1と、座席S1を定位置(図2の位置)とスライド位置(図6の位置)間にて座席S1の前後方向(車両の左右方向)にスライド可能なスライド機構B1と、座席S1をそのスライド位置より下方に下降可能かつ同スライド位置に上昇可能な昇降機構C1を備えている。
【0009】
旋回機構A1は、図2及び図3に示したように、車室のフロア93に固着された固定板11と、この固定板11の略中央に立設した支柱12と、この支柱12の上部にベアリング13を介して回動自在に組付けた回転台座14と、この回転台座14を原位置(座席S1が図1の実線にて示した非旋回定位置に保持される位置)と旋回位置(座席S1が図1の一点鎖線に示した旋回定位置及び二点鎖線にて示したスライド位置に保持される位置)にて解除可能に固定する旋回用固定装置20によって構成されている。なお、図2及び図3は座席S1が図1の一点鎖線に示した旋回定位置に保持されている状態を示している。
【0010】
旋回用固定装置20は、図4に示したように、回転台座14に回動可能に組付けたハンドルシャフト21と、このハンドルシャフト21の中間部位に結合ピン22を用いて一体的に組付けたアーム23と、回転台座14に上下動可能に組付けられてスプリング24により下方に付勢され下端にて固定板11に設けた係止孔11a(原位置と旋回位置の二箇所に設けられている)に嵌合するロックピン25と、このロックピン25を貫通してアーム23の先端に形成したU字溝に係合しアーム23の揺動運動をロックピン25の上下運動に変換して伝える連結ピン26によって構成されていて、ハンドルシャフト21を図2の反時計方向へ回動することによりロックピン25を係止孔11aから抜き上げて回転台座14を旋回可能とすることができるようになっている。
【0011】
スライド機構B1は、図2に示した収納状態の昇降機構C1の上部リンクアーム52と、この上部リンクアーム52の前端に連結した昇降プレート54に形成されて上部リンクアーム52と一直線状に連続するレール部54aとによって構成される左右一対のレールと、これら各レールに4個のローラ32〜35を介して同レールの長手方向へ移動可能に組付けられて座席S1を支持するシート取付台31と、昇降プレート54に形成されてシート取付台31の前方への移動を規制するストッパ54bと、シート取付台31を定位置(図2の位置)とスライド位置(図6の位置)にて解除可能に固定するスライド用固定装置40によって構成されている。
【0012】
スライド用固定装置40は、図2,図3及び図5に示したように、シート取付台31に固着したブラケット41に支持ピン42を用いて揺動可能に組付けたハンドルレバー43と、シート取付台31に左右動可能に組付けられてスプリング44により上部リンクアーム52に向けて付勢され大径端にてベースプレート51に設けた係止切欠51aまたは昇降プレート54に設けた係止切欠(図示省略)に係合するロックピン45と、このロックピン45のブラケット41を貫通する小径端部(ハンドルレバー43の先端が嵌合するスリットが形成されている)の端面に固着されてハンドルレバー43の先端に形成したU字溝に係合しハンドルレバー43の揺動運動をロックピン45の左右運動に変換して伝える連結ピン46によって構成されていて、ハンドルレバー43を図5の反時計方向へ回動することによりロックピン45を係止切欠51aから引き抜いてシート取付台31をレールの長手方向に移動可能とすることができるようになっている。
【0013】
昇降機構C1は、図2及び図3に示したように、回転台座14の左右両端に設けた断面コ字状の各ガイドレール部14aに前後一対のガイドローラ58,59を介して座席S1の前後方向へ移動可能に組付けたベースプレート51と、このベースプレート51の上部に基部にて回動可能に組付けられて各ガイドレール部14aに沿って延び図2の収納状態では略水平な直線状の上部リンクアーム52と、ベースプレート51の下部に基部にて回動可能に組付けられて各ガイドレール部14aに沿って延びる湾曲状の下部リンクアーム53と、これら各アーム52,53の先端部が回動可能に連結された昇降プレート54とからなる左右一対の四節リンク機構と、回転台座14の先端下面に固着されて下部リンクアーム53の下面(カム面)に摺動可能に係合するガイドピン55によって構成されていて、駆動装置60により昇降駆動されるようになっている。
【0014】
駆動装置60は、図2及び図3に示したように、回転台座14に前後両端にて支持されてガイドレール部14aに沿って延び上面にラック歯61aを有するラック軸61と、ベースプレート51の下面に固着したボックス62内に回転自在に組付けられてラック軸61のラック歯61aと噛合するピニオン(図示省略)と、ボックス62の側部に組付けられてピニオンを正逆回転させる減速機付の電気モータ63によって構成されていて、電気モータ63によってピニオンを正回転させることによりベースプレート51を前進させることができ、また電気モータ63によってピニオンを逆回転させることによりベースプレート51を後退させることができるようになっている。
【0015】
上記のように構成したこの実施形態においては、以下に示す(1)〜(3)の各操作を順次行うことにより、図1の実線に示した非旋回定位置にある座席S1を図7に示した車外下降位置に移動させることができ、また逆の操作を順次行うことにより元に戻すことができる。
(1) 図1の実線に示した非旋回定位置にある座席S1において、旋回用固定装置20のハンドルシャフト21を操作してロックピン25を固定板11の定位置にある係止孔11aから抜き上げ、かかる状態にて座席S1を回転台座14等とともに図1の一点鎖線にて示した位置まで旋回させ、その状態にてハンドルシャフト21を戻してロックピン25を固定板11の旋回位置にある係止孔に嵌合させて回転台座14を旋回不能とする。
(2) 図1の一点鎖線及び図2にて示した旋回定位置にある座席S1において、スライド用固定装置40のハンドルレバー43を操作してロックピン45をベースプレート51の係止切欠51aから引き抜き、かかる状態にて座席S1をシート取付台31とともに図1の二点鎖線にて示した位置すなわち図6に示したスライド位置までスライドさせ、その状態にてハンドルレバー43を戻してロックピン45を昇降プレート54の係止切欠に係合させ、シート取付台31を昇降プレート54に連結させる。
(3) 図1の二点鎖線及び図6にて示したスライド位置にある座席S1において、電気モータ63を駆動させてピニオンを正回転させ、ベースプレート51を図7及び図8に示した位置まで前進させる。このときには、昇降機構C1の下部リンクアーム53の下面がガイドピン55上を滑り、シート取付台31に支持された座席S1が水平状態にて下降する。
【0016】
ところで、この実施形態においては、スライド用固定装置40によるシート取付台31の固定を解除すれば、昇降機構C1における収納状態の上部リンクアーム52と昇降プレート54に形成されて上部リンクアーム52と一直線状に連続するレール部54aとによって構成したレールに沿ってシート取付台31を座席S1とともに移動させることができ、このときにはシート取付台31と座席S1が旋回定位置とスライド位置間の全ストロークを移動するのみで昇降機構C1の構成部材は全く移動しない。したがって、座席S1を旋回定位置とスライド位置間にて人力でスライドさせる場合には、小さな労力にて軽快に操作することができる。
【0017】
また、この実施形態においては、回転台座14に対して定位置(図1の実線及び一点鎖線にて示した位置)にある座席S1のシートクッションS1aと回転台座14間にスライド機構B1と昇降機構C1が収容されていて、座席S1のシートバックS1b後方にはスライド機構B1と昇降機構C1の構成部材が全く配置されないため、シートバックS1b後方にシートクッションS1aに対してシートバックS1bをリクライニングさせるためのスペースを確保することが可能であり、シートクッションS1aに対してシートバックS1bをリクライニングさせることが可能である。また、回転台座14に対して定位置にある座席S1のシートクッションS1aと回転台座14間にスライド機構B1と昇降機構C1と駆動装置60が収容されていて、座席前後方向のコンパクト化を図ることができるため、当該座席S1の後方に大きなスペースを確保することが可能であり、同スペースを後部座席のレッグスペースあるいはラゲッジスペース等に有効に利用することができる。更に、昇降機構として電気モータ63によって駆動される昇降機構C1を採用し、電気モータ63が回転台座14に対して定位置にある座席S1のシートクッションS1aと回転台座14間に配置されるようにしたため、上記した両効果に加え、油漏れによる汚れの心配をなくすことができる。
【0018】
上記した実施形態においては、旋回機構によって座席がフロアに対して旋回可能とされている装置に本発明を実施したが、座席がフロアに対して旋回不能に支持される装置にも本発明は実施できるものであり、この場合には例えば図2に示した旋回状態にてスライド機構及び昇降機構がフロアに対して旋回不能に組付けられ、かかるスライド機構及び昇降機構に対して座席が図1の一点鎖線または実線にて示した状態で組付けられる。
【0019】
また、上記実施形態においては、シート取付台31と座席S1が旋回定位置とスライド位置間の全ストロークを移動するときに昇降機構C1の構成部材が全く移動しないように構成したが、図9〜図23に示す実施形態のように、シート取付台131と座席S2が旋回定位置とスライド位置間の全ストロークを移動するときに昇降機構C2の構成部材が所定量移動するように構成して本発明を実施することも可能である。
【0020】
図9〜図23に示した本発明による他の実施形態の装置は、座席S2と車室のフロア193間に、座席S2を図9に示した旋回定位置とこの旋回定位置から車両前方に90度旋回した原位置間にて旋回可能かつ旋回定位置と旋回定位置から車両後方に90度旋回した対面位置間にて旋回可能な旋回機構A2と、座席S2を旋回定位置とスライド位置(図19の位置)間にて座席S2の前後方向(車両の左右方向)にスライド可能なスライド機構B2と、座席S2をそのスライド位置(上昇位置)より下方に下降可能かつ同スライド位置に上昇可能な昇降機構C2と、座席S2を旋回機構A2,スライド機構B2及び昇降機構C2とともに車両の前後方向へ所定量移動可能な移動機構Dが設けられている。
【0021】
旋回機構A2は、図9〜図12に示したように、スライド機構B2の上方支持台132に固着した固定リング112と、座席S2を支持するシート取付台131に固着され固定リング112にベアリング113を介して回動自在に組付けた上下2枚の回転リング114と、シート取付台131を原位置(図10に示した状態から時計方向に90度旋回した前向き位置)と旋回定位置(図10に示した横向き位置)と対面位置(図10に示した状態から反時計方向に90度旋回した後向き位置)にて上方支持台132に対して解除可能に固定して座席S2の旋回を固定する旋回用固定装置120によって構成されていて、回転リング114の回転中心を中心として座席S2が旋回可能となっている。
【0022】
旋回用固定装置120は、図10及び図11に示したように、シート取付台131に回動可能に組付けたハンドルシャフト121と、このハンドルシャフト121とシート取付台131間に介装されてハンドルシャフト121を中立位置(ハンドル部121aを略水平とする位置)に保持するバランススプリング122と、固定リング112の内周にてシート取付台131の下面に固着したスリーブ129に移動可能に組付けられて固定リング112の内周に設けた切欠112a,112bまたは112c(原位置と旋回定位置と対面位置に対応して旋回方向にてそれぞれ90度変位して設けられている)に離脱可能に係合するロックピン123と、このロックピン123とシート取付台131間に介装されてロックピン123を固定リング112の内周すなわた各切欠112a,112bまたは112cに向けて付勢するスプリング124と、シート取付台131に図10の上下方向に移動可能に組付けられて図11に示したようにハンドルシャフト121の中間部に設けたピン部121aとハンドルシャフト121の図11時計方向への回動によって係合し図10の上方へ移動されるリンク125と、シート取付台131に揺動可能に組付けられて一端にてリンク125に連結され他端にてロックピン123に連結されたベルクランク126によって構成されている。
【0023】
この旋回用固定装置120においては、ハンドルシャフト121が操作されていないとき、ハンドルシャフト121は図9及び図10に示した中立位置にあって、ロックピン123がスプリング124の作用によって固定リング112の切欠112a,112bまたは112cに係合している(図10では切欠112bに係合している)ため、シート取付台131は上方支持台132に対して回動不能であり、座席S2は原位置、旋回位置または対面位置にて旋回を固定される。また、ハンドルシャフト121がそのハンドル部121aにて図11の時計方向へ所定量回動されたとき、ロックピン123がリンク125とベルクランク126によりスプリング124に抗して所定量移動されて固定リング112の切欠112a,112bまたは112cから外れるため、シート取付台131は上方支持台132に対して回動可能となり、座席S2は原位置と旋回位置と対面位置間にて旋回可能となる。
【0024】
スライド機構B2は、図9〜図14に示したように、昇降機構C2の上部リンクアーム152と、この上部リンクアーム152の先端に連結した昇降プレート154に形成されて上部リンクアーム152と一直線状に連続するレール部154aとによって構成される左右一対のレールと、これら各レールに2個のローラ133,134を介してレールの長手方向(車両の左右方向)へ移動可能に組付けられて座席S2を旋回機構A2とともに支持する上方支持台132と、基台171に組付けられて車両の左右方向に延びる前後一対のレール135と、これら各レール135に2個のローラ136,137を介してレール135の長手方向へ移動可能に組付けられて座席S2,旋回機構A2及び昇降機構C2を支持する下方支持台138と、ベースプレート151と昇降プレート154にそれぞれ組付けられて上方移動台132に固着したストッパ片132aとの係合により上方移動台132の移動量を規定するストッパ156,157と、上方支持台132を定位置(図9の位置)とスライド位置(図19の位置)にてベースプレート151または昇降プレート154に解除可能に固定するとともに下方支持台138を定位置とスライド位置にて基台171に解除可能に固定して座席S2のスライドを不能とするスライド用固定装置140によって構成されている。
【0025】
スライド用固定装置140は、図10及び図12〜図15に示したように、上方支持台132に回動可能に組付けられて旋回用固定装置120のハンドルシャフト121に設けたクランク部121bによって回動される解除シャフト141と、この解除シャフト141と上方支持台132間に介装されて解除シャフト141を図13の時計方向へ付勢するスプリング142(図10参照)と、解除シャフト141に一体的に組付けられて一体的に回転する一対の解除バー143と、各解除バー143に連結されて上方支持台132に設けた貫通孔を通してベースプレート151に設けた係合孔151aまたは昇降プレート154に設けた係合孔154bに係合する上方ロックピン144を備えている。
【0026】
また、スライド用固定装置140は、ベースプレート151に送りねじ軸161を介して連結された下方支持台138にブラケット138a(図12参照)を介して上下動可能に組付けられてベースプレート151の端部に形成した切欠151bを貫通して上方支持台132の端部に形成した押動突片132bに離脱可能に係合するロッド145と、このロッド145の中間部に設けた鍔部とブラケット138a間に介装されてロッド145を上方へ付勢するスプリング146と、ロッド145の下端にピンを介して一体的に組付けられてロッド145と一体的に移動し基台171上に固着したロックレール172の端部に設けた円弧状切欠172a(図14参照)と係合可能な段付のロックスリーブ147と、ロックレール172にブラケット173(図14及び図15参照)を介して上下動可能に組付けられてロックスリーブ147に離脱可能に係合する鍔付の下方ロックピン148と、この下方ロックピン148とロックレール172間に介装されて下方ロックピン148を上方へ付勢するスプリング149(図15参照)によって構成されている。
【0027】
このスライド用固定装置140においては、座席S2が旋回定位置に旋回した状態でハンドルシャフト121が操作されていないとき(図9〜図15に示した状態のとき)、解除シャフト141及び解除バー143はスプリング142の作用によって図12及び図13に示した復帰位置にあって、上方ロックピン144がベースプレート151に設けた係合孔151aに係合しているため、ベースプレート151に対して上方支持台132は移動不能であり、またロッド145とロックスリーブ147が押動突片132bにより所定量下方に押された状態に維持されてロックレール172と非接触状態に維持され、下方ロックピン148がロックスリーブ147に係合しているため、ベースプレート151に送りねじ軸161を介して連結された下方支持台138が基台171に対して移動不能であり、座席S2は旋回定位置にて左右方向へのスライドを不能とされる。
【0028】
また、座席S2がスライド位置にあってハンドルシャフト121が操作されていないとき(図19に示した状態のとき)、解除シャフト141及び解除バー143はスプリング142の作用によって復帰位置にあって、上方ロックピン144が昇降プレート154に設けた係合孔154bに係合しているため、昇降機構C2の上部リンクアーム152及び下部リンクアーム153を介してベースプレート151に連結されている昇降プレート154に対して上方支持台132は移動不能であり、また押動突片132bがロッド145から離れていて、ロッド145とロックスリーブ147が上方に移動した状態に維持され、ロックスリーブ147がロックレール172の円弧状切欠172aに係合しているため、基台171に対して下方支持台138がスライド位置にて移動不能であり、座席S2はスライド位置にて左右方向へのスライドを不能とされる。
【0029】
ところで、スライド用固定装置140においては、座席S2が旋回定位置に旋回した状態でハンドルシャフト121が図11の反時計方向に回動されたとき(このとき、ピン部121aはリンク125に設けた長孔内を回動してリンク125と係合せず、リンク125はピン部121aによって動かされない)、ハンドルシャフト121のクランク部121bにて解除シャフト141及び解除バー143が回動されてスライド固定が解除されるように構成されていて、座席S2が原位置及び反転位置にある状態にてハンドルシャフト121が図11の反時計方向に回動されたときには、ハンドルシャフト121のクランク部121bが解除シャフト141と係合していないので、解除シャフト141及び解除バー143が回動されなくてスライド固定が解除されないようになっている。なお、ハンドルシャフト121のクランク部121bにて解除シャフト141及び解除バー143が回動されてスライド固定が解除された状態では、座席S2は旋回定位置とスライド位置間にてスライド可能となる。
【0030】
昇降機構C2は、下方支持台138に設けた前後一対の断面コ字状ガイドレール139に左右一対のガイドローラ158,159を介して左右方向へ移動可能に組付けたベースプレート151と、このベースプレート151の上部に基部にて回動可能に組付けられて各ガイドレール139に沿って延び図9の収納状態では略水平な直線状の上部リンクアーム152と、ベースプレート151の下部に基部にて回動可能に組付けられて各ガイドレール139に沿って延びる湾曲状の下部リンクアーム153と、これら各アーム152,153の先端部が回動可能に連結された昇降プレート154とからなる左右一対の四節リンク機構と、各ガイドレール139の先端部下面に固着されて下部リンクアーム153の下面(カム面)に摺動可能に係合するガイドピン155によって構成されていて、ベースプレート151が電気モータを備えた駆動装置160により各ガイドレール139に沿って移動されることにより昇降プレート154が図19及び図21に示したように昇降移動されるようになっている。
【0031】
駆動装置160は、図13及び図14に示したように、下方支持台138に回転自在かつ軸方向移動不能に組付けられてガイドレール139に沿って延びる送りねじ軸161と、ベースプレート151の下面に固着されて送りねじ軸161に螺合し送りねじ軸161の回転によって送りねじ軸161に沿って移動するナット162と、送りねじ軸161に一体回転可能に組付けたドリブンギヤ163と、下方支持台138に組付けた正逆回転可能な減速機付の電気モータ164と、この電気モータ164の出力軸に一体回転可能に組付けられてドリブンギヤ163に噛合するドライブギヤ165によって構成されていて、電気モータ164を正回転させることによりベースプレート151を図19の位置から図21の位置に移動でき、また電気モータ164を逆回転させることによりベースプレート151を図21の位置から図19の位置に移動できるようになっている。
【0032】
また、この実施形態においては、図21に示した座席S2の下降位置にて回動支点が上方に位置する四節リンク機構の上部リンクアーム152の支点間距離より下方に位置する下部リンクアーム153の支点間距離が所定量短くしてあり、図19に示したように上昇位置にて水平状態にある座席S2を四節リンク機構により図21に示した下降位置まで下降動作させると、両リンクアーム152,153の揺動軌跡差により座席S2が図21に示したように傾動するようになっている。
【0033】
移動機構Dは、座席S2が原位置または対面位置とされたときに座席S2の前方に十分なレッグスペースを確保するために設けたものであり、図9及び図16に示したように、車室のフロア193に取付板194を介して組付けられて車両の前後方向に延びる左右一対のレール174と、基台171の下面に固着されて各レール174上に移動可能に組付けた前後一対のスライダ175,176と、取付板194に組付けられて基台171の下面に固着した前後一対の各ストッパ片171a,171bとの係合により基台171の移動量を規定するストッパ177と、基台171を取付板194に対して解除可能に固定する移動用固定装置180によって構成されている。
【0034】
移動用固定装置180は、取付板194に固着されてレール174に沿って延びる左右一対のロックプレート181と、基台171の下面に組付けられて各ロックプレート181に設けた前後一対の係合孔181a,181bに離脱可能に嵌合するロック片182と、各ロック片182を係合孔181aまたは181bに係合する位置まで付勢するスプリング183と、基台171の下面に揺動可能に組付けられて各リンク184を介して各ロック片182に連結された解除レバー185によって構成されていて、解除レバー185を図16の仮想線にて示した位置に揺動することにより両ロック片182を係合孔181aまたは181bから離脱させることができるようになっており、基台171を前方位置と後方位置にて固定可能である。
【0035】
上記のように構成したこの実施形態においては、例えば図9〜図16に示した状態(座席S2が旋回定位置にある状態)にてハンドルシャフト121を図11の時計方向へ所定量回動操作すれば、旋回用固定装置120のロックピン123が切欠112bから外れてシート取付台131が上方支持台132に対して旋回可能となる。このため、かかる状態で座席S2を原位置または対面位置に旋回させることができ、各位置にてハンドルシャフト121を戻せば(手を離せば)、ロックピン123が切欠112aまたは112cに係合してシート取付台131が上方支持台132に対して旋回不能となり、座席S2が原位置または対面位置にて固定される。なお、座席S2を原位置または対面位置から他の位置に旋回させる場合にも同様の操作にて行うことができる。
【0036】
また、この実施形態においては、図9〜図16に示した状態にてハンドルシャフト121を図11の反時計方向へ所定量回動操作すれば、スライド用固定装置140の上方ロックピン144がベースプレート151の係合孔151aから外れて上方支持台132がベースプレート151に対してスライド可能となる。このため、座席S2をその前方に向けて移動すれば、座席S2はシート取付台131及び上方支持台132とともに上部リンクアーム152とレール部154aからなるレールに沿って移動する。
【0037】
この移動時には、上方支持台132の移動により押動突片132bが図17にて示したようにロッド145から外れると、図18に示したようにロッド145がスプリング146によって上動して、ロックスリーブ147の下方ロックピン148による固定が解除されるとともに、ロックスリーブ147がその段部にてロックレール172にスライド可能に当接するため、ベースプレート151,両リンクアーム152,153及び昇降プレート154が下方支持台138と一体で基台171に固着したレール135に対してスライド可能となる。したがって、その後においては、座席S2がシート取付台131及び上方支持台132とともに上部リンクアーム152とレール部154aからなるレールに沿って図19に示した位置に向けて移動するとともに、ベースプレート151,両リンクアーム152,153及び昇降プレート154が下方支持台138と一体でレール135に沿って図19に示した位置に向けて移動する。
【0038】
座席S2,シート取付台131及び上方支持台132等が図19に示した位置に移動した状態でハンドルシャフト121を戻せば(手を離せば)、上方ロックピン144が昇降プレート154の係合孔154bに係合して、座席S2がシート取付台131及び上方支持台132とともに昇降プレート154に連結固定される。また、図19に示した状態では、図20に示したようにロックスリーブ147がロックレール172の切欠172aにスプリング146の作用によって自動的に係合して、ベースプレート151,両リンクアーム152,153及び昇降プレート154が下方支持台138とともに基台171に連結固定される。したがって、座席S2は図19に示したスライド位置に固定される。
【0039】
また、図19に示した状態で駆動装置160の電気モータ164を正回転させると、送りねじ軸161が回転してベースプレート151が下方支持台138に固着したレール139に沿って移動し、このベースプレート151の移動によって両リンクアーム152,153及び昇降プレート154が図21に示したように下降移動する。このため、昇降プレート154に連結固定されている上方支持台132及びこれと一体のシート取付台131と座席S2を図21に示した車外下降位置に移動させることができる。なお、図21に示した車外下降位置の座席S2は、駆動装置160の電気モータ164を逆回転させることにより、図19に示したスライド位置に戻すことができる。
【0040】
また、図19に示した状態にてハンドルシャフト121を図11の反時計方向へ所定量回動操作すれば、スライド用固定装置140の上方ロックピン144が昇降プレート154の係合孔154bから外れて上方支持台132が昇降プレート154に対してスライド可能となる。このため、座席S2をその後方に向けて移動すれば、座席S2はシート取付台131及び上方支持台132とともに上部リンクアーム152とレール部154aからなるレールに沿って移動する。
【0041】
この移動により上方支持台132が図22に示した位置に至ると、上方支持台132の押動突片132bにより図23に示したようにロッド145がスプリング146に抗して下動されて、ロックスリーブ147がロックレール172の切欠172aとの係合を解かれ、下方支持台138が基台171に対してスライド可能となる。したがって、その後においては、座席S2がシート取付台131及び上方支持台132、並びにベースプレート151,両リンクアーム152,153及び昇降プレート154と一体でレール135に沿って図9に示した旋回定位置に向けて移動する。なお、ロックスリーブ147が図12及び図15に示した位置(下方ロックピン148によってスライド不能に固定される位置)に戻る直前では、下方ロックピン148がロックスリーブ147の下端に設けたテーパ面にてスプリング149に抗して押動されて一時的に退避する。
【0042】
座席S2等が図9に示した旋回定位置に移動した状態でハンドルシャフト121を戻せば(手を離せば)、上方ロックピン144がベースプレート151の係合孔151aに係合して、座席S2がシート取付台131及び上方支持台132とともにベースプレート151に連結固定される。したがって、座席S2は図9に示した旋回定位置に固定される。
【0043】
また、この実施形態においては、座席S2が図9〜図16に示した旋回定位置から90度旋回された原位置または対面位置とされている状態にて、移動用固定装置180の解除レバー185を操作して各ロック片182を各ロックプレート181の各係合孔181aまたは181bから外せば、基台171が取付板194に対して車両の前後方向に移動可能となる。したがって、座席S2が原位置にあるとき基台171を後方位置に移動させ、また座席S2が対面位置にあるとき基台171を前方位置に移動させれば、座席S2の前方に十分なレッグスペースを確保することができる。なお、基台171が前方位置または後方位置に移動した状態で解除レバー185の操作を解除すれば、各ロック片182がスプリング183の作用にて各ロックプレート181の各係合孔181aまたは181bに係合して、基台171が取付板194に対して移動不能に固定される。
【0044】
以上の説明から明らかなように、図9〜図23に示した実施形態においては、図1〜図8に示した実施形態と同様の作用効果が期待できることは勿論のこと、上方支持台132を移動させるためのレールを構成する上部リンクアーム152と昇降プレート154のレール部154aが略コ字状に形成されていて側方に開口する凹部を備えていて、この凹部にローラ133,134が配置されているため、図1〜図8に示した実施形態に比して、当該装置全体の高さを図2に示したレール(52)の上面に接して配置されているローラ32,34の高さに相当する分抑制でき、限られた高さの車室で座席S2を良好に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による装置によって移動される座席の一実施形態を示す平面図である。
【図2】 本発明による装置の一実施形態を示す側面図である。
【図3】 図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】 図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】 図2の5−5線に沿った断面図である。
【図6】 座席がスライド位置にある状態を示す作動説明図である。
【図7】 座席が下降位置にある状態を示す作動説明図である。
【図8】 図7の矢印8方向からみた平面図である。
【図9】 本発明による装置の他の実施形態を示す図である。
【図10】 図9にて座席を外した状態の平面図である。
【図11】 図9に示した装置の座席前方からみた一部破断図である。
【図12】 図9に示した装置の座席後方からみた一部破断図である。
【図13】 図11の13−13線に沿った断面図である。
【図14】 図11の14−14線に沿った断面図である。
【図15】 図12に示したロックレール,下方ロックピン,ロックスリーブ等の関係を示す拡大断面図である。
【図16】 図9の16−16線に沿った断面図である。
【図17】 図10においてシート取付台と上方支持台がベースプレートに対してスライド位置方向へ僅かに移動した状態の平面図である。
【図18】 図17に示した装置の座席後方からみた一部破断図である。
【図19】 座席がスライド位置(上昇位置)にある状態を示す作動説明図である。
【図20】 図19の20−20線に沿った断面図である。
【図21】 座席が下降位置にある状態を示す作動説明図である。
【図22】 座席がスライド位置から旋回定位置に向けて移動される途中での状態を示す作動説明図である。
【図23】 図22の23−23線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…固定板、12…支柱、14…回転台座、20…旋回用固定装置、31…シート取付台、32〜35…ローラ、40…スライド用固定装置、51…ベースプレート、52…上部リンクアーム、53…下部リンクアーム、54…昇降プレート、54a…レール部、55…ガイドピン、60…駆動装置、92…ドア開口部、93…フロア、A1…旋回機構、B1…スライド機構、C1…昇降機構、S1…座席、120…旋回用固定装置、131…シート取付台、132…上方支持台、133,134…ローラ、135…レール、136,137…ローラ、138…下方支持台、139…ガイドレール、140…スライド用固定装置、151…ベースプレート、151a…係合孔、152…上部リンクアーム、153…下部リンクアーム、154…昇降プレート、154a…レール部、154b…係合孔、155…ガイドピン、160…駆動装置、171…基台、172…ロックレール、172a…切欠、193…フロア、194…取付板、A2…旋回機構、B2…スライド機構、C2…昇降機構、S2…座席、D…移動機構。
Claims (2)
- 車室のフロアに対して支持される座席を定位置とスライド位置間にて同座席の前後方向にスライド可能なスライド機構と、前記座席をそのスライド位置より下方に下降可能かつ同スライド位置に上昇可能な昇降機構とを備えて、前記座席をドア開口部に向けてスライド可能かつ同ドア開口部を通して昇降可能とした車両における座席のスライド・昇降装置において、前記昇降機構として、前記フロアに対して前記座席の前後方向へ移動可能に組付けたベースプレートと、このベースプレートの上部に基部にて回動可能に組付けられて前記ベースプレートの移動方向に沿って延び収納状態では略水平な直線状の上部リンクアームと、前記ベースプレートの下部に基部にて回動可能に組付けられて前記ベースプレートの移動方向に沿って延びる下部リンクアームと、これら両アームの先端部が回動可能に連結された昇降プレートとからなる四節リンク機構を備えた昇降機構を採用するとともに、前記スライド機構として、前記昇降機構における収納状態の前記上部リンクアームと前記昇降プレートに形成されて前記上部リンクアームと一直線状に連続するレール部とによって構成したレールと、このレールに長手方向へ移動可能に組付けられて前記座席を支持するシート取付台と、このシート取付台を定位置またはスライド位置に解除可能に固定するスライド用固定装置を備えたスライド機構を採用したことを特徴とする車両における座席のスライド・昇降装置。
- 前記レールを構成する前記上部リンクアームと前記昇降プレートのレール部とを略コ字状に形成して側方に開口する凹部を設け、この凹部に前記シート取付台を前記レールの長手方向へ移動可能とするローラを配置したことを特徴とする請求項1記載の車両における座席のスライド・昇降装置。
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