JP3809072B2 - 靴下類及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内底面に足裏の接地状態を矯正するアーチ部を設けた靴下類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、足裏のツボの刺激を目的として、樹脂からなる多数の小突部を内底面に形成した構成の靴下が知られている。このような靴下を製造する方法としては、裏返しにした靴下類を型版に装着し、その上に貫通孔を有するプリント版上において樹脂をスキージングして内底面上に樹脂を押し出して硬化させる方法が一般的に採用されている。ただ、このようにして得られた樹脂の厚みは薄く、ツボを刺激するのに十分な突出度が得られないことから、樹脂として発泡性樹脂を使用し、これにより小突部の突出度を高くしている。
【0003】
しかし、上記構成の靴下では小突部が発泡樹脂製のため硬度が低く、十分なツボ刺激効果が得られないといった問題が生じていた。さらに、足裏の接地状態の変化により生じる膝痛、腰痛、外反母趾等の症状を緩和する作用はまったく期待できないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を解決する方法として、靴下類の内底面に適当な形状に成形した樹脂製の成形体を固着することも考えられる。たしかに、この方法では、樹脂の硬度や形状を適宜選択することにより足裏の接地状態を矯正することが可能になるが、成形体を別途作成しておく必要が生じ、さらにそれを靴下の所定位置に固着する工程が必要となることから生産性が低く、また、靴下類の伸縮性を阻害するという問題が生じることになる。
【0005】
そこで、本発明においては、足裏の接地状態を矯正可能であり、しかも生産性に優れた靴下類を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る靴下類は、内底面に足裏の接地状態を矯正するアーチ部を設けたものであって、アーチ部が軟質樹脂の半球状小突部の集合体で形成され、半球状小突部の集合体は直径に比例して突出度が高くなるような大小の半球状小突部からなり、半球状小突部の配列によって所望アーチ部を構成したことを特徴とするものである。
【0007】
上記構成によれば、半球状小突部を非発泡性の軟質樹脂によって形成しているため、従来の発泡樹脂製の小突部に比べて適度な硬度を有するとともに保形性が高く、この半球状小突部の集合体によってアーチ部を形成することにより足裏の接地状態を矯正することが可能となる。また、アーチ部は、小突部の集合体で形成されているため、塊状の成形体のように靴下類の伸縮性を阻害するおそれもない。
【0008】
上記構成の靴下類を製造する方法としては、例えば、靴下類の内底面の所定位置に高さに応じた量の軟質樹脂を個々に滴下すると言った方法も考えられるが、樹脂の滴下量を調整するという制御が必要になる。
【0009】
そこで、より生産性の高い靴下類の製造方法について本発明者が鋭意検討した結果、前述のプリント版を使用する靴下の製造方法において、プリント版として大小の貫通孔を設けたものを用いた場合、得られる小突部の突出度、すなわち高さは、貫通孔の直径に比例して高くなり、しかも、大径の貫通孔から得られる小突部は非発泡性樹脂でも十分な突出度を有することを見い出して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る靴下類の製造方法は、内底面に足裏の接地状態を矯正するアーチ部を設けた靴下類の製造方法において、裏返しにした靴下類を型版に装着し、形成するアーチ部の位置及び形状に合わせて配列した大小の貫通孔を有するプリント版上において未硬化の軟質樹脂をスキージングして貫通孔から靴下類の内底面上に軟質樹脂を押し出して硬化させることにより所望アーチ部を構成する製造方法であり、押し出された軟質樹脂が貫通孔の直径に比例して突出度が高くなる大小の半球状小突部を形成し、半球状小突部の集合体によって所望アーチ部を構成することを特徴とするものである。
【0011】
上記方法によれば、1回のスキージングにより突出度の異なる大小の半球状小突部を任意のパターンで生産性よく形成することが可能となり、半球状小突部の配列を変えることによって形態の異なるアーチ部を容易に構成することが可能となる。ここで、アーチ部とは、大小の半球状小突部が複数個集まった集合体において各小突部の頂部を通る仮想の曲面を意味するものである。
【0012】
上記製造方法においては、プリント版厚みよりも突出度の高い半球状小突部を形成することが可能となる。その理由については、詳細は不明であるが、軟質樹脂が貫通孔から押し出される際、貫通孔から離脱した樹脂が表面張力により球状化し、このとき周縁部の樹脂が中央に引き寄せられることによってプリント版の厚み以上の突出度が得られるものと考えられる。このため、周縁部から引き寄せられる樹脂量の多い大径の小突部ほど突出度が高くなるものと考えられる。
【0013】
本発明において、靴下類とは、男性用・女性用靴下のほかに、ハイソックス、パンティストッキング、ストッキング、タイツなど足に着用する衣類を意味するものである。
【0014】
貫通孔の直径は、1〜7mmとするのが好ましく、2〜6mmとするのがより好ましい。直径が1mm未満の場合は、小突部が小さくなりすぎてアーチ部の構成に殆ど寄与せず矯正効果が得られなくなり、また、直径が7mmを越えると、小突部の断面形状が台形となりやすく、足に与える刺激が鈍化するとともに、小突部が形成された部分の靴下類の伸縮性を阻害するようになる。
【0015】
プリント版の厚みは、0.6〜1.5mmとするのが好ましく、0.8〜1.2mmとするのが特に好ましい。プリント版の高さが0.6mm未満の場合は、大径の小突部であっても突出度が十分でなくなり、高さが1.5mmを越えると樹脂が貫通孔壁に付着しやすくなり印刷性が低下する。
【0016】
プリント版については、金属製あるいは合成樹脂製のいずれのものを使用してもよい。ただ、貫通孔を高密度で配置したパターンでは、プリント版の強度が不足するおそれが生じるため、このような場合には金属製メッシュで補強した合成樹脂製プリント版を使用すればよい。具体的には金属製メッシュの両面を合成樹脂シートで挟み込んで加熱プレスすることにより一体成形する。
【0017】
その後、貫通孔を形成する樹脂部分のみをレーザ等によって加熱除去すれば、貫通孔に金属製メッシュが一部露出したプリント版を得ることができる。メッシュのサイズは、貫通穴に露出した部分が樹脂刷り込みを阻害しない程度であればよく、具体的には40メッシュ程度が好ましい。
【0018】
上記靴下類及び靴下類の製造方法において、小突部形成用の軟質樹脂については、硬化物が適度な硬度を有するものであれば、特に制限なく使用することが可能で、たとえば、ポリ塩化ビニルペーストゾル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。中でも、ポリ塩化ビニルペーストゾルは、靴下類への接着性に優れている点で好ましい。
【0019】
軟質樹脂の硬化物の硬度はタイプAデュロメ−タを用いて測定した硬度(デュロメ−タA硬度)が40〜50であるのが好ましく、45〜47であるのがより好ましい。樹脂中には硬化物の硬度を調整するために適当な可塑剤を添加してもよい。
【0020】
小突部形成用の樹脂として、樹脂中にフレーク状充填物を分散させたものを使用すれば、硬度の調整が容易であり、また、フレーク状充填物が補強材となって保形性が向上し、プリント版を離版した際に形成される小突部の球形面をそのままの形状に保持して硬化させることが可能となる。さらに、硬化後においても、フレーク状充填物が小突部の補強材として機能し、大きな負荷がかかる小突部が変形するのを効果的に防止することができる。
【0021】
フレーク状充填物の種類については特に制限なく使用することができるが、セラミックス片のような無機物を使用する場合は、フレーク状充填物自体の硬度が高いため、小突部の硬度を著しく増加させ、過度の刺激を与えるおそれがあることから、無機物に比べて硬度の低い有機物を使用するのが好ましい。
【0022】
具体的には、フレーク状充填物としてポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂製フィルムを細断したものを使用することができ、さらに、フィルムの少なくとも片面に金属蒸着させたものを使用すれば、美観に優れた小突部を得ることが可能となる。さらに、樹脂フィルムとしてホログラムフィルムを使用すれば、より美観に優れた小突部を得ることができる。
【0023】
フレーク状充填物の大きさについては、樹脂中に均一に分散させることが可能で、小径の貫通孔にもスムーズに導入される程度の大きさであり、樹脂の硬化後に得られる小突部の硬度が40〜50の範囲に収まる大きさであれば特に制限されないが、樹脂フィルムの厚さが約25ミクロン、標準篩による平均粒度が42〜60メッシュのものを好適に使用することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は本発明にかかる靴下類の製造方法を示す工程図である。図中、靴下類1は裏返しにされ、内底面を上に向けた状態で図示しない型版に装着されている。この状態で、先ず、(a)において、径の異なる貫通孔2a、2b、2c(径の大きさは2a>2b>2cとする)を有するプリント版3を靴下類1上にセットし、未硬化の軟質樹脂4をプリント版3の上に展開する。
【0025】
次に、(b)で、スキージ7によってスキージングして、軟質樹脂4を各貫通孔2a、2b、2cを通して内底面上に押し出し、最後に、(c)でプリント版3を離版すると、靴下類1の内底面上に貫通孔2a、2b、2cに対応して高さの異なる小突部5a、5b、5cが得られる(小突部の突出度は、5a>5b>5cとなる)。この状態で、硬化処理を行うことにより大小の半球状小突部が複数個集まった集合体によってアーチ部6が形成された靴下類1を得ることができる。なお、図示の例においては、靴下類1とプリント版3とを定着状態とさせているが、僅かな隙間を設けて軟質樹脂4を押し出す方法も採用できる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明に係る靴下類を実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、靴下類として靴下を使用し、上記実施の形態で示した方法により内底面にアーチ部を形成した靴下を作製した。なお、用いた軟質樹脂及び小突部形成条件の詳細については以下の通りである。
【0027】
[軟質樹脂]
軟質樹脂として、下記ポリ塩化ビニルペーストゾルとフレーク状充填物を重量比で86:14の割合で混合したものを使用した。
【0028】
(1)ポリ塩化ビニルペーストゾル
・商品名:(株)ヒガシ化学製VT−124
・粘度(東京計器製B型粘度計、7号ロータ使用時)
・デュロメ−タA硬度:44.7(160℃×20分処理後、高分子計器製 デュロメータタイプAを使用してJIS K6253に準拠して測定)
【0029】
(2)フレーク状充填物
・商品名:ダイヤ工業(株)製HG−S40(PET製ホログラムフィ ルムにアルミ蒸着したフィルムを細断したもの)
・フィルム厚:25μm
・粒度:標準篩42メッシュアンダー〜60メッシュオン
【0030】
[小突部作成条件]
・プリント版:厚み1mm、貫通孔として直径2、3、4、5mmの4種 類のストレート孔を形成
・軟質樹脂硬化条件:130℃×70sec加熱処理
【0031】
上記条件により得られた小突部のデュロメ−タA硬度は45.8であり、突出度については、以下に示すように、貫通孔径が2mmのときはプリント版3の厚みと同じであるが、貫通孔径が大きくなるにしたがって高くなっている。本実施例においては、プリント版の厚みの1〜1.8倍の突出度を有する小突部を得ることができた。
【0032】
次に、足裏の接地状態を矯正することによって魚の目、腰痛、外反母趾、膝痛の各症状の緩和に有効と考えられるアーチ部の配置図を図2〜5に示す。各図は右足用であり、左足用は右足用と左右対称となるため省略する。なお、図中、黒丸は小突部を表しており、小突部の径に応じて黒丸の大きさを変化させており、最少径のものが2mm、最大径のものが5mmを示している。
【0033】
以下、各図について説明する。図2は、魚の目用のアーチ部配置図であり、土踏まず部分から足中央部にかけて突出度の高い第1アーチ部6aが形成され、その外足側やや前方に突出度の低い第2アーチ部6bが形成されている。
【0034】
図3は、腰痛用のアーチ部配置図であり、土踏まず部分に突出度の高い第1アーチ部6aが形成され、その外足側の前方と後方とに突出度の低い第2アーチ部6b及び第3アーチ部6cが形成されている。
【0035】
図4は、外反母趾用のアーチ部配置図であり、足裏中央に突出度の高い第1アーチ部6aが形成され、その外足側前方及び内足側前方に突出度の低い第2アーチ部6b及び第3アーチ部6cが形成されている。
【0036】
図5は、膝痛用のアーチ部配置図であり、土踏まず部分に突出度の高い第1アーチ部6aが形成され、その外足側に突出度の低い第2アーチ部6bが形成されている。
【0037】
以上説明したようにアーチ部を形成して足裏の接地状態を矯正することにより、魚の目、腰痛、外反母趾、膝痛等の緩和を企図した靴下類を提供することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によると、直径に比例して突出度が高くなるような形状とされた非発泡性の軟質樹脂からなる半球状小突部を複数個集めた集合体によってアーチ部を靴下類に形成したため、足裏の接地状態を矯正することが可能となる。アーチ部は大小の小突部の集合体で形成されているため、塊状の成形体のように靴下類の伸縮性を阻害するおそれもなく、また、半球状をなすため足裏に過度の刺激を与えることもない。
【0039】
また、小突部形成用の樹脂として、樹脂中にフレーク状充填物を分散させたものを使用すれば、硬度の調整が容易であり、また、フレーク状充填物が補強材となって小突部の硬化前及び硬化後において保形性が向上し、足裏の接地状態を矯正する効果を維持することができる。
【0040】
さらに、フレーク状充填物として、金属蒸着したホログラムフィルムを用いれば美観に優れた小突部を得ることができる。
【0041】
軟質樹脂としては、靴下類との接着性が良好であることからポリ塩化ビニルペーストゾルを使用するのが好ましく、特に硬化物のデュロメ−タA硬度が40〜50であるものを使用するのが接地状態を矯正する上において好ましい。
【0042】
また、本発明に係る靴下類の製造方法として、大小の貫通孔を有するプリント版上において未硬化の軟質樹脂をスキージングして貫通孔から靴下類の内底面上に軟質樹脂を押し出して硬化させることにより、貫通孔の直径に比例して突出度が高くなる大小の半球状小突部を形成し、この小突部の集合体によって所望アーチ部を構成するようにしたため、1回のスキージングにより突出度の異なる大小の半球状小突部を任意のパターンで生産性よく形成することが可能となり、貫通孔の配列を変えることによって形態の異なるアーチ部を容易に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る靴下類の製造方法を示す工程図
【図2】魚の目用のアーチ部配置図
【図3】腰痛用のアーチ部配置図
【図4】外反母趾用のアーチ部配置図
【図5】膝痛用のアーチ部配置図
【符号の説明】
1 靴下類
2 貫通孔
3 プリント版
4 軟質樹脂
5 小突部
6 アーチ部
7 スキージ
Claims (8)
- 内底面に足裏の接地状態を矯正するアーチ部を設けた靴下類であって、前記アーチ部が軟質樹脂の半球状小突部の集合体で形成され、該半球状小突部は直径に比例して突出度が高くなる大小の半球状小突部からなり、該半球状小突部の配列によって所望アーチ部を構成し、前記軟質樹脂中にフレーク状充填物を含有させてなる靴下類。
- 前記フレーク状充填物は、金属蒸着した樹脂フィルムを細断したもの、又はホログラムフィルムを細断したものである請求項1記載の靴下類。
- 前記ホログラムフィルムに金属蒸着を施したことを特徴とする請求項2記載の靴下類。
- 軟質樹脂がポリ塩化ビニルペーストゾルである請求項1、2又は3記載の靴下類。
- 内底面に足裏の接地状態を矯正するアーチ部を設けた靴下類の製造方法において、裏返しにした靴下類を型版に装着し、形成するアーチ部の位置及び形状に合わせて配列した大小の貫通孔を有するプリント版上において未硬化の軟質樹脂をスキージングして貫通孔から靴下類の内底面上に軟質樹脂を押し出して硬化させることにより所望アーチ部を構成する製造方法であり、前記押し出された軟質樹脂が貫通孔の直径に比例して突出度が高くなる大小の半球状小突部を形成し、該半球状小突部の集合体によって所望アーチ部を構成することを特徴とする靴下類の製造方法。
- 前記軟質樹脂中にフレーク状充填物を含有させてなる請求項5記載の靴下類の製造方法。
- 前記フレーク状充填物が樹脂フィルムである請求項6記載の靴下類の製造方法。
- 軟質樹脂がポリ塩化ビニルペーストゾルである請求項5、6又は7記載の靴下類の製造方法。
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