JP3809060B2 - ローラバニシングツール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被加工孔の内面を仕上加工するためのローラバニシングツールに関するものであり、特に、自動車、家電製品、半導体等幅広い分野の小物部品の孔内面を複数のローラの転圧によって仕上げるためのローラバニシングツールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種、ローラバニシングツールとしては、たとえば、実公昭64−275号公報に開示されているようなものが知られている。図5(a),(b)は係るローラバニシングツール111を示し、筒状のフレーム112の先端外周部にワークWの被加工穴W1の内面を転圧加工するための複数のローラ113,113,…を出没自在に且つ回転自在に係合し、前記フレーム112内に、これらローラ113,113,…をフレーム112の軸芯側から回転支持するとともに、回転駆動力を伝達するように形成されたマンドレル114を内蔵し、このマンドレル114を、シャンク115を介して工作機械、ボール盤等の駆動機によって回転駆動するよう構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記ローラバニシングツール111においては、被加工孔W1の内径に対して複数のローラ113,113,…の包絡円の直径(以下、ツール径という)を設定するときは、前記フレーム112の外周に嵌挿されたハウジング部116の後部に形成されたねじ孔117に螺入させて支持されているマンドレル114を前後方向に移動させ、マンドレル114のテーパー状の先端部と各ローラ113との接点位置の変更によってフレーム112の外周面に対する各ローラ113の出没度を調節する。しかし、このように、ツール径調節のための機構をフレーム112の外側に配置する構成では、ツール長の短縮や小型化には自ずと限界があり、有効な小型・軽量化を図ることはできない。
【0004】
従って、この種のローラバニシングツールでは、シャンク115より先端側のフレーム112およびハウジング部116の突出長は自ずと長くなり、小型のマシニングセンターや小型のNC旋盤等に取り付けて使用することはできない。
【0005】
また、マンドレル114を駆動し、マンドレル114から伝達される回転駆動力によってローラ113,113,…を駆動する方式では、たとえ、マンドレル114とフレーム112との間に径方向のクリアランスを設定してもフローティング機能は得られず、従って、被加工孔との偏芯に良好に対応することもできない。
【0006】
また、フレーム112の軸芯線に沿わせて配置された細径なマンドレル114を回転駆動する構成のため、ツール剛性は低く、高回転による能率の改善も困難となる。
【0007】
さらに、ツール径の設定のために、フレーム112を軸方向に移動させてツール径を設定する構造のため、ツール径を微調節するときは、ローラ113,113,…の位置も移動することになり、都度、駆動機側でストロークの再調節が必要となる。
【0008】
そこで本発明はこの種の課題を解決するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、駆動機に装着して回転駆動する筒状のシャンク部に、転圧加工のための筒状のフレームを同軸に連結し、該フレームに転圧加工のための複数のローラを径方向に出没自在に且つ回転自在に係合するローラ係合溝を周方向に間隔を隔てて形成し、各ローラ係合溝に前記ローラを係合するとともに、前記シャンク部内およびフレーム内に、先端部が前記複数のローラを径方向内方側から回転支持すべくテーパ状に形成されたマンドレルを回転自在に収容し、前記シャンク部内に前記マンドレルをシャンク部側よりフレーム側に付勢すべく弾発手段を設けるとともに、前記マンドレルの前記フレームに対する軸方向の位置を移動しツール径を設定するための調節手段を設けたローラバニシングツールを提供するものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記フレームのローラ係合溝に、前記フレームが加工方向と逆方向に回転されたとき、前記マンドレルを前記フレーム側から前記シャンク側に移動させるためのフィードアングルを設定したローラバニシングツールを提供するものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記マンドレルの外周面と前記フレームの内面との間にこのマンドレルをフローティング可能とするためのクリアランスを設定したローラバニシングツールを提供するものである。
【0012】
[作用]
請求項1記載の発明では、前記ワークの被加工穴に前記フレームを正回転駆動しながら挿入すると、各ローラは、マンドレルのテーパー状の先端部に接し、相互間に発生する摩擦力によって自転を開始する。
【0013】
このとき、マンドレルは回転自在に支持されていて回転方向にフリーであるため、各ローラはフレームの回転によって従属回転される。被加工孔の内面に対するローラの転圧力は、ツール径と被加工孔の差によって決定される。
【0014】
フレームを駆動する構造とすると、遊星運動の原理によってローラを従来のマンドレルを駆動する構造と比較して高速送り加工をすることができる。
【0015】
もちろん、フレームにマンドレルを同心に配置する構造とすると回転精度が良好となるため、高速回転が可能となるとともに、回転駆動するシャンク部にフレームが同軸に連結されているためフレームの回転精度が良好となり、ローラを高精度でかつ、高速回転で回転することができる。このため、トータルの能率は従来例と比較して大幅に向上する。
【0016】
請求項2記載の発明では、前記フレームを逆回転したときはフィードアングルθの作用でマンドレルに後退力が作用し、この後退力が前記弾発手段の付勢力に打ち勝ったときツール径が縮小される。従って、フレームを逆回転するだけで被加工孔からフレームを簡単に抜き取ることが可能となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明では、各ローラ係合溝にはフィードアングルが設けられている。フレームを正転させるとツール径は初期設定値に保たれる。後退時には、フレームを逆転するとテーパー付きのマンドレルがシャンク部の方向に後退しローラは径方向内方に沈み込む。このためツール径が縮小され、早戻しが可能となる。フレームをワークの内部から抜き出すとシャンク部に内臓されている弾発手段の蓄圧された付勢力によってツール径は初期状態に復帰する。
【0018】
さらに、請求項3記載の発明では、マンドレルがラジアル方向にフレームの内径とマンドレルの内径とのクリアランス分だけフローティングするため、被加工物との少々の芯ずれ位置でのツール径設定でも加工精度を維持できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図1ないし図4を参照して説明する。
【0020】
図1は本実施の形態に係るローラバニシングツールを示す。図示されるようにローラバニシングツール1の本体は円筒状のフレーム2とシャンク部3とから成り、工作機械等の駆動機(図示せず)に取り付けられて駆動される円筒状のシャンク部3の先端に、転圧加工のためのフレーム2を同軸に連結している。
【0021】
前記フレーム2には先端外周部2aに複数のローラ係合溝4,4,…が周方向に間隔を隔てて設けられ、各ローラ係合溝4,4,…に転圧加工のためのローラ5が径方向に出没自在に且つ回転自在に係合される。前記ローラ係合溝4,4,は前記フレーム2の軸芯線に対して所定角度θ傾いて設定されており、フレーム2の軸方向内方から前記ローラ係合溝4,4,…に係合されている前記ローラ5,5…が、フレーム2およびシャンク部3内に内蔵されているマンドレル6の先端部6aに回転支持されている。
【0022】
前記マンドレル6は、前記シャンク部3の後端面に開口する挿入口3aよりフレーム2およびシャンク部3内に挿入されていて、マンドレル6の先端部6aはフレーム2の先端側に向かって順次縮径されたテーパーとなっている。
【0023】
前記フレーム2および前記シャンク部3は捩じり、曲げ等、機械的強度に対応させて断面係数が設定される。
【0024】
そして、前記シャンク部3の後部内に設けられたアジャストスクリュー7に前記マンドレル6の後部を支持し、マンドレル6の外周面とフレーム2の内面およびシャンク部3の内面との間に設定された径方向のクリアランスS1により前記マンドレルをフローティング支持している。
【0025】
この場合、前記アジャストスクリュー7は有底筒体状に形成されており、スクリュー本体となる筒状部7aの外周面に前記シャンク部3の内周面の雌ねじ3bと螺合する雄ねじ7bを設け、底部となるフランジ7cの軸芯部に前記マンドレル6の後部を支持するための軸支孔7dを設けている。
【0026】
そして、筒状部7aには、このアジャストスクリュー7の回転によって前記マンドレル6に対する支持位置の設定のため、螺入方向後方に臨んで開口したすり割り7fが形成され、前記マンドレル6の前記フレーム2に対する軸方向の位置を移動しツール径を設定する調節手段として前記シャンク部3の挿入口3aに挿入されているアジャストリング8の挿入軸部8aに、前記すり割り7fに係合するピン9が取り付けられている。この場合、前記アジャストリング8の挿入軸部8aは前記筒状部7aの内面に摺動自在に且つ、挿抜自在に嵌合され、シャンク部3の後部外周に螺入されたセットスクリュー10の押圧力によって軸方向の移動および回転が規制される。
【0027】
さらに、前記マンドレル6には、前記アジャストスクリュー7のフランジ7cを挟んで前記マンドレル6の先端側と後端側とにスラストベアリング11a,11bが嵌合され、これらスラストベアリング11a,11bの軸方向外側にスラストベアリング11a,11bの軸方向の位置を設定するための軸用止め輪12a,12bが取り付けられ、さらに、先端側の軸用止め輪12aと前記アジャストスクリュー7のフランジ7cとの間に両者に弾発力を付勢する弾発手段としての圧縮コイルばね13が介設されている。
【0028】
従って、前記アジャストリング8の正転、逆転によりアジャストスクリュー7とアジャストリング8の軸方向の相対位置が変化する。すなわち、ローラ5に対するマンドレル6のテーパー付き先端部6aの位置が移動して、所定のツール径に微調節できる。
【0029】
もちろん、無負荷時、つまり、ワークWの被加工孔W1の内面加工前は、前記圧縮コイルばね13のセットフォースによって、前記ローラ5,5,…の包絡円の直径(以下、ツール径という)を最大に保持しておくことが可能となり、また、この状態でのローラ5,5,…のガタ付きを防止することが可能となる。
【0030】
そして、前記ローラ係合溝4,4,…の傾斜角(フィードアングル)θは、前記フレーム2が前記ワークWの被加工孔W1に挿入され、工作機械の回転駆動力によって逆転方向に駆動されたときに、前記マンドレル6が弾発手段としての前記圧縮コイルばね13の付勢力に抗して前記フレーム2側から前記シャンク部3側に移動されるように設定され、またマンドレル6の後端面とアジャストリング8の挿入部8aの前端面との間にクリアランスS2が設定されている。さらに、前記アジャストリング8及び挿入軸部8aには、前記シャンク部3内にオイルクーラントを供給するために両端面に開口する孔または切欠等の通路14が設けられる。
【0031】
以下、本実施の形態に係るローラバニシングツール1の作動を説明する。
図1及び図2に示すように、ワークWの被加工穴W1に前記フレーム2を正転方向に回転駆動しながら挿入する。ローラ5,5,…は被加工穴W1の内面、および、マンドレル6の先端部6aの外周面に接し、相互間に発生する摩擦力によって自転を開始する。このとき、前記マンドレル6は前記ローラ5,5,…と前記アジャストスクリュー7の軸支孔7dに支持されていて回転方向にフリーであるため、前記ローラ5,5,…の回転に伴い従属回転されることになる。
【0032】
シャンク部2内に組み込まれた圧縮スプリング13は、常時、マンドレル6を先端側に押し付け、その結果として無負荷時の初期設定ツール径を維持する。ただし、図3に示すように、フレーム7を逆回転したときは前記フィードアングルθの作用でマンドレル6に後退力が作用するため、後退力が圧縮スプリング13の力に打ち勝ったときにツール径が縮小することになる。
【0033】
このように、フレーム2を駆動する構造とすると、ローラ5,5,…を従来のマンドレルを駆動する構造と比較して3〜4倍の高速送り加工をすることができる。すなわち、遊星運動の原理から、従来のマンドレル114を1000min -1で回転させた場合と本発明のフレーム2を1000min -1で回転させた場合について比較すれば、本発明は送り速度を3〜4倍速くしてもローラ1本当たりの送り量は同等で同一の仕上がりが得られる。もちろん、前記したように、フレーム2を回転駆動する構造とすると、従来のマンドレル114を駆動する構造と比較して剛性が高くなり、フレーム2にマンドレル6を同心に配置する構造とすると回転精度が良好となり、高速回転が可能となる。従って、トータルの能率は従来例と比較して6〜7倍に向上する。
【0034】
また、ローラバニシングツール1を回転駆動した状態では、前記したようにマンドレル6は増速回転するが、一対のスラストベアリング11a,11bによって支持されているため、円滑に回転する。
【0035】
図1に示すように、前記マンドレル6はラジアル方向に拘束されておらず、図4にも示すように、フレーム2の内径とマンドレル6の外径のクリアランスS1分だけフローティング支持されている。また、ローラバニシングツール1を回転駆動して被加工孔W1の内面を加工するときは、図4に示すように、ローラバニシングツール1と被加工孔W1との間に芯ずれがあっても、形状精度が悪化することがない。よって、被加工孔W1をより高精度に仕上げることができる。
【0036】
また、ツール径を微調節してもローラ5,5,…の軸方向の位置は移動することがないため、止まり穴を加工するときに有効となる。つまり、従来のローラバニシングツール111で止まり穴を加工する場合にはツール径を変化させると、その都度、駆動機の前進端の位置を微調節する必要があるが、本実施形態に係るローラバニシングツール1にあっては、ローラ5,5,…の位置は変化しないため、駆動機のストロークは一定で微調節が不要となる。
さらに、駆動機(図示せず)のセンタースピンドルから供給されたオイルクーラントを前記通路14に接続すると、オイルクーラントは途中で外部に漏れることなく、フレーム先端の開口15および各ローラ係合溝4から噴出することになる。このため、最良の潤滑状態が保証され、冷却および潤滑しながら孔の内面加工を行うことが可能となるので、より高精度の鏡面加工を行うことができる。
【0037】
【発明の効果】
この発明は上記一実施の形態に詳述したように次の如き優れた効果を発揮する。
(1)ツール径を調節するための調節手段および弾発手段をフレーム及びシャンク部の内部に備えることができるため、シャンク部より前方のフレームを全て有効加工長とすることができる。従って、小型のマシニングセンタやNC旋盤などツールの突出量に制限がある小型駆動機に取り付けて使用することができる。
【0038】
(2)フレームを駆動する構造であるため、従来のマンドレル駆動方式と比較して高速送り加工をすることができる。さらに、フレームを回転駆動するように構成したので、ツール全体の剛性が高くなる。また、フレームにシャンク部を同軸に連結したので、回転精度が良好となり、高速回転が可能となりトータルの能率を飛躍的に向上することができる。
【0039】
(3)マンドレルはラジアル方向に拘束されておらず、マンドレルをフローティング可能とするためフレームの内面とマンドレルの外面とのクリアランスを設定したので、ツールと被加工孔とに芯ずれがあっても形状精度を悪化させずに高精度に仕上げることができる。
【0040】
(4)テーパー付きのマンドレルを軸方向に移動してツール径を調節するように構成し、ローラの位置を移動することがないように構成したので、止まり穴を容易に加工することができる。
【0041】
(5)構造がコンパクトで小さくなり、部品点数も減少してローコストとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るローラバニシングツールの一実施の形態を示し、図1(a)はローラバニシングツールの半断面図、図1(b)はアジャストスクリューとアジャストリングの構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るローラバニシングツールの一実施の形態を示し、被加工孔に対するローラバニシングツールの正転前進状態を示す解説図である。
【図3】本発明に係るローラバニシングツールの一実施の形態を示し、被加工孔からローラバニシングツールを抜き出すときの逆転戻し状態を示す解説図である。
【図4】本発明に係るローラバニシングツールの一実施の形態を示し、被加工孔に対するローラバニシングツールの偏芯の吸収状態を示す解説図である。
【図5】従来例を示し、図5(a)はローラバニシングツールの半断面図、図5(b)はマンドレルの先端部、及びフレームに対するローラの接触状態を示す図5(a)のX−X断面図である。
【符号の説明】
2 フレーム
3 シャンク部
5 ローラ
6 マンドレル
6a マンドレルの先端部
8 アジャストリング(調節手段)
13 圧縮コイルばね(弾発手段)
θ フィードアングル
S1 クリアランス

Claims (3)

  1. 駆動機に装着して回転駆動する筒状のシャンク部に、転圧加工のための筒状のフレームを同軸に連結し、該フレームに転圧加工のための複数のローラを径方向に出没自在に且つ回転自在に係合するローラ係合溝を周方向に間隔を隔てて形成し、各ローラ係合溝に前記ローラを係合するとともに、前記シャンク部内およびフレーム内に、先端部が前記複数のローラを径方向内方側から回転支持すべくテーパ状に形成されたマンドレルを回転自在に収容し、前記シャンク部内に前記マンドレルをシャンク部側よりフレーム側に付勢すべく弾発手段を設けるとともに、前記マンドレルの前記フレームに対する軸方向の位置を移動しツール径を設定するための調節手段を設けたことを特徴するローラバニシングツール。
  2. 前記フレームのローラ係合溝に、前記フレームが加工方向と逆方向に回転されたとき、前記マンドレルを前記フレーム側から前記シャンク側に移動させるためのフィードアングルを設定した請求項1記載のローラバニシングツール。
  3. 前記マンドレルの外周面と前記フレームの内面との間にこのマンドレルをフローティング可能とするためのクリアランスを設定した請求項1又は2記載のローラバニシングツール。
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