JP3808290B2 - 分散シフト光ファイバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は分散シフト光ファイバに関し、大きな有効コア断面積を有し、かつ小さい分散スロープを有するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ増幅器を用いた光増幅中継伝送システムなどの長距離システムにおいては、非線形光学効果を低減することが重要である。非線形光学効果の程度は非線形定数というパラメータが指針となる。非線形定数はn2/Aeffで示される。ここでn2は非線形屈折率、Aeffは有効コア断面積である。n2は材料によりほぼ一定の値をとるため、Aeffを拡大することは非線形光学効果を低減するのに効果的な手法である。
一方、大容量伝送が可能な波長多重伝送システムにおいては、波長分散値の抑制と、分散スロープの低減が要求される。波長多重伝送システムにおいて、伝送帯域に零分散波長が存在すると四光子混合と呼ばれる非線形効果により伝送品質が低下することが知られている。一方、大きな波長分散値は信号波形の劣化を伴うため、ある程度の大きさに抑制することが必要である。これらの相反する要求を満足するために、使用波長帯における波長分散値を狭い範囲に制御したノンゼロ分散シフトファイバと呼ばれる光ファイバが開発されている。
また波長多重伝送システムにおいては、分散スロープの低減も重要である。分散スロープとは、波長分散値の波長依存性を示すもので、横軸に波長(nm)、縦軸に波長分散値(ps/km・nm)をとって分散値をプロットした際の曲線の勾配である。波長多重伝送システムにおいては、伝送線路(光ファイバ)の分散スロープが大きいと、各波長間の波長分散値の違いが大きくなる。このため、波長によっては非常に大きな分散値をとることになり、チャンネルにより伝送品質が大きく異なる等の不都合が生じる。したがって分散スロープを小さくすることが要求される。
以上のAeffや分散に求められる特性の具体的な値は、適用されるシステムにより異なってくる。例えば、海底システムのように非常に長い距離の伝搬を行うシステムでは、Aeff拡大による非線形効果低減が求められる。一方、数十kmから数百km程度までのシステムでは、分散スロープの低減による広い波長帯での分散値の抑制が求められることがある。さらに、光通信システムの伝送路として、実質的にシングルモードであること、曲げ損失を100dB/m以下に保つことが最低限の条件として要求される。
【0003】
そこで、最近では、例えば特開平10−62640号公報、特開平10−293225号公報、特開平8−220362号公報、特開平10−246830号公報などにおいて、様々な屈折率分布形状(屈折率プロファイル)を用いて、ある程度Aeffの拡大と分散スロープの低減を図る提案がなされてきた。
【0004】
図4(a)〜図4(c)はこのような分散シフト光ファイバの屈折率分布形状の例を示したものである。
図4(a)はデュアルシェイプコア型(階段型)の屈折率分布形状の一例を示したもので、符号11は中心コア部であり、その外周上に、この中心コア部11よりも低屈折率の階段コア部12が設けられてコア14が形成されている。そして、このコア14の外周上に、前記階段コア部12よりも低屈折率のクラッド17が設けられている。
本出願人は、デュアルシェイプコア型の屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおて、Aeffの拡大を目指したものとして、細径解を用いたものを特開平8−220362号公報に開示した。
なお、従来、ある波長において、分散シフト光ファイバのコア径を、屈折率分布形状の相似形を保ったまま拡大していくと、波長分散値が所望の値になる解が2つ以上存在することが知られている。このとき、曲げ損失やカットオフ波長特性などが比較的実用的な範囲にある解のうち、相対的にコア径が細い解を細径解、太い解を太径解と呼んでいる。
【0005】
図4(b)は、セグメントコア型の屈折率分布形状の一例を示したもので、高屈折率の中心コア部21の外周上に低屈折率の中間部22が設けられ、この中間部22の外周上に、この中間部22よりも高屈折率で、かつ前記中心コア部21よりも低屈折率のリングコア部23が設けられてコア24が構成されている。さらにこのリングコア部23の外周上に、前記中間部22よりも低屈折率の第1クラッド25が設けられ、この第1クラッド25の外周上に、この第1クラッド25よりも高屈折率で、かつ前記中間部22よりも低屈折率の第2クラッド26が設けられてクラッド27が構成されている。
なお、本出願人は、セグメントコア型の屈折率分布形状において、太径解を用いることにより、Aeffの拡大よりも分散スロープの低減が厳しく要求される光通信システムに適した分散シフト光ファイバを、特開平11−119045号公報において開示した。
【0006】
図4(c)は、Oリング型の屈折率分布形状の一例を示したもので、中心の低屈折率の中心コア部31の外周上に高屈折率の周辺コア部32が設けられて2層構造のコア34が構成されている。そして、このコア34の外周上に、前記周辺コア部32よりも低屈折率のクラッド37が設けられることにより、クラッド37を含めて3層構造の凹型の屈折率分布形状が構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来提案されている分散シフト光ファイバにおいては、実質的にシングルモードであることや、曲げ損失を100dB/m以下に保つという条件下では、Aeffの拡大と分散スロープの低減を同時に十分に満足することは困難であった。
例えば、特開平8−220362号公報に開示された細径解を用いたデュアルシェイプコア型のものは、分散スロープが最小で0.10ps/km/nm2 前後程度であったため、分散スロープの低減が厳しく要求されるシステムに適用するには不十分な場合があった。
また、特開平11−119045号公報に開示された太径解を用いたセグメントコア型のものは、ある程度最近の波長多重伝送システムにおける要求特性に近いものが得られる。しかしながら、屈折率が増減する5層構造からなる屈折率分布形状であるため、各層の位置、幅、形状などによって微妙に特性が変化する。よって、製造時に、各層の半径、比屈折率差などの構造パラメータの高度な制御性が要求され、その結果、製品歩留まりの向上に限界があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、実質的にシングルモードであり、かつ曲げ損失が100dB/m以下であるという条件を満足し、かつ十分にAeffの拡大と分散スロープの低減を図ることができる分散シフト光ファイバを提供することを目的とする。
さらにはできるだけ簡単な屈折率分布形状で、所望の特性を効率よく得られる分散シフト光ファイバを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、デュアルシェイプコア型の屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、太径解を用い、各層の構造パラメータの範囲や、構造パラメータの各層間の関係を最適化することによって、前記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、前記課題を解決するために、本発明においては、以下のような解決手段を提案する。第1の発明は、高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2としたとき、r2/r1が5〜10、Δ2/Δ1が0.06〜0.14、Δ1が0.600〜0.660%であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.062〜0.076ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−2.64〜−1.89ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバである。
第2の発明は、高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2としたとき、r2/r1が5.0〜7.0、Δ2/Δ1が0.086〜0.114、Δ1が0.70〜0.75%であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.068〜0.079ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−5.10〜−3.99ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバである。
第3の発明は、高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなり、該クラッドが、階段コア部の外周上に設けられた第1クラッドと、該第1クラッドの外周上に設けられた、該第1クラッドよりも高屈折率の第2クラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、第1クラッドの半径をr3、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2、第1クラッドの比屈折率差をΔ3としたとき、r2/r1が7〜10、Δ2/Δ1が0.09〜0.1、Δ1が0.61〜0.625%、Δ3が−0.3〜0.06%、(r3−r2)/r1が0.5〜2.0であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.064〜0.072ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−2.40〜−1.93ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本発明の分散シフト光ファイバの屈折率分布形状の第1の例を示したものである。
この屈折率分布形状は、中心コア部1の外周上に階段コア部2が設けられてなるコア4と、その外周上に設けられた一律の屈折率を有する一層構造のクラッド7とから構成されている。
前記中心コア部1は最も高屈折率であり、前記階段コア部2はこの中心コア部1よりも低屈折率であり、また、クラッド7はこの階段コア部2よりも低屈折率である。
また、図中符号r1、r2は、それぞれ、中心コア部1と階段コア部2の半径を示し、Δ1、Δ2は、それぞれ、クラッド7の屈折率を基準にしたときの中心コア部1の比屈折率差と階段コア部2の比屈折率差を示している。
【0011】
この例において、例えば中心コア部1と階段コア部2は屈折率を上昇させる作用を有するゲルマニウムを添加したゲルマニウム添加石英ガラス、クラッド7は純石英ガラスから構成されている。
なお、分散シフト光ファイバの屈折率分布形状においては、図1(a)に示したように各層(中心コア部1、階段コア部2、クラッド7)の境界が明確ではなく、丸みを帯びた、いわゆるだれを生じた状態であってもよく、実効的に本発明の分散シフト光ファイバとしての特性を得ることができれば特に限定することはない。
【0012】
本発明の分散シフト光ファイバは1490〜1625nm、一般的には1490〜1610nmにわたる波長範囲を主たる使用波長帯とし、実施の仕様に際しては、これらの範囲から適度な波長幅の波長帯が選択される。これらの波長帯は、光通信システムに用いる光ファイバ増幅器による増幅波長帯などにより大きく3つの波長帯に区分されている。すなわち、1490〜1530nmにわたる波長帯をS−band、1530〜1565nmにわたる波長帯をC−band、1565〜1625nm、一般的には1490〜1610nmにわたる波長帯をL−bandと称することが多い。現在用いられているシステムは、主としてC−bandを用いたものであるが、伝送容量増帯の要求に対応するために、C−bandに加えてL−bandの利用を想定したシステムの開発が進められている。
【0013】
Aeffは以下の式から求められるものである。
【0014】
【数1】
【0015】
本発明において、使用波長帯におけるAeffが45μm2未満であると、非線形効果の抑制が不十分である。Aeffが70μm2をこえるものは製造が困難である。
【0016】
また、使用波長帯における分散スロープは、上述のように小さい程好ましく、本発明において、使用波長帯における分散スロープは0.05〜0.08ps/km/nm2という非常に小さい値を実現することができる。0.08ps/km/nm2をこえると波長分散値の波長依存性が大きくなり、本発明においては、波長多重伝送システムへの適用に不都合となる場合がある。0.05ps/km/nm2未満のものは製造が困難である。
【0017】
曲げ損失は、使用波長帯において曲げ直径(2R)が20mmの条件の値をいうものとする。
曲げ損失は小さい程好ましく、本発明において、曲げ損失は100dB/m以下、好ましくは40dB/m以下とされる。100dB/mをこえると、分散シフト光ファイバに加えられる僅かな曲がりなどによって伝送損失が劣化しやすく、敷設時や取り扱い時に余分な損失を生じやすくなるため不都合である。
【0018】
波長分散値は、−0.5〜−8.0ps/km/nmの範囲とされる。−0.5ps/km/nmよりも大きいと波長分散値が零に近くなり、非線形効果の一つである4光子混合が発生しやすくなるため不都合である。また、−8.0ps/km/nmよりも小さいと、分散による波形歪みが生じ、伝送特性の劣化が大きくなるため不都合が生じる。ただし、中継距離などシステムの設計により、実際に許容される分散値の範囲は変化することがある。
【0019】
また、本発明の分散シフト光ファイバはシングルモード光ファイバであるため、使用波長帯において、実質的にシングルモード伝搬を保証するカットオフ波長を有する必要がある。
通常のカットオフ波長は、CCITTの2m法(以下2m法と記す)による値によって規定されている。しかし、実際の長尺の使用状態においては、この値が使用波長帯の下限値よりも長波長側であってもシングルモード伝搬が可能である。
【0020】
したがって、本発明の分散シフト光ファイバにおいて、2m法で規定されるカットオフ波長は、分散シフト光ファイバの使用長さと使用波長帯によってシングルモード伝搬可能であるように設定する。具体的には、例えば2m法におけるカットオフ波長が1.8μm以下であれば、5000m程度以上の長尺の状態で、上述の使用波長帯におけるシングルモード伝搬を実現することができる。
【0021】
このような特性を満足するための構成について、検討の経緯とともに以下に説明する。
まず、本発明においては、上述のようにコア径として太径解を用いる。具体的には、シミュレーションによって後述するr2/r1、Δ2/Δ1、Δ1の数値範囲を満足する各構造パラメータを設定するにおいて、コア径が太径解になるように設定し、かつ、上述の所望の使用波長帯において、Aeff、分散スロープなどの特性値を満足する設計条件を定める。なお、本発明の分散シフト光ファイバの実際の製造方法としては、CVD法、VAD法などの従来法を適用することができる。
【0022】
図2は、この第1の例の屈折率分布形状を用いた場合の解析例を示したグラフである。
グラフ中に示されている◇、△、+にそれぞれ対応する5、7、10は、図1(a)に示した中心コア部1と階段コア部2の半径の比率であるr2/r1(階段倍率)の値である。横軸はAeff、縦軸は分散スロープを示している。
【0023】
このグラフより、r2/r1が大きい程、Aeffが拡大する傾向があり、かつ分散スロープが小さくなる傾向があることがわかる。また、上述の波長分散値と曲げ損失の数値範囲を満足するためには、r2/r1は4倍以上に設定すると好ましい。4倍未満の場合は、従来の分散シフト光ファイバよりも良好な特性を実現することが困難となる。12倍をこえると、製造性が低下するため、不都合である。
また、△2/△1は0.05〜0.15であることが望ましい。0.05未満の場合は、曲げ損失が大きくなるため不都合である。0.15をこえるとカットオフ波長が長くなり、シングルモード伝送を維持できなくなる場合がある。
また、Δ1は0.55〜0.85%とされる。0.55%未満の場合は波長分散値を所望の値、すなわち使用波長帯において−0.5〜−8.0ps/km/nmの範囲内に設定することが困難になる。Δ1を大きくすると、分散値を小さくすることが可能になるが、0.85%をこえるとAeffを十分に大きくすることが不可能になり不都合である。
そして、これらr2/r1、Δ2/Δ1およびΔ1の数値範囲からの数値の組み合わせにおいて、本発明の分散シフト光ファイバの特性を満足するものを選択して設計する。
なお、本発明の分散シフト光ファイバにおいて、r2、すなわちコアの半径は特に限定するものではない。通常10〜25μmの範囲となる。また、クラッド7の外径は、通常約125μmとされる。
【0024】
表1に、このような条件を満足する分散シフト光ファイバの具体的な設計例を示す。表中のλcfは2m法によるファイバカットオフ波長、λopは特性の測定波長、MFDはモードフィールド径を示す。
いずれの例においてもAeff、分散スロープ、波長分散値、曲げ損失、カットオフ波長の好ましい数値範囲を満足し、波長多重伝送システムに適した特性が得られている。
図5に示したグラフ(a)は、表1に示したプロファイルにおける波長分散値の波長依存性の例を示したものである。表1に示した各プロファイルは、いずれもほぼ同様な波長依存性を持っており、1570nm付近までのC−bandと呼ばれる領域において、−0.5ps/km/nm以下の分散値をとっており、C−bandを用いたWDM(wave-length division multiplexing;波長分割多重 )伝送システムに適した光ファイバであることが分かる。
また図5中のグラフ(b)で示されるような波長分散値の波長依存性をとる場合には、−0.5ps/km/nm以下の波長分散値をとる範囲を1600nm付近まで拡大することができる。つまり図5のグラフ(a)に示されるような特性を持つ光ファイバに比べて、図5のグラフ(b)に示されるような特性を持つ光ファイバによれば、WDM伝送システムに利用可能な波長範囲を拡大することが可能となる。図5のグラフ(b)に示されるような特性を実現するプロファイル設計例を表2に示す。
【0025】
【表1】
【表2】
【0026】
図1(b)は本発明の分散シフト光ファイバの屈折率分布形状の第2の例を示したものである。
この屈折率分布形状が上述の第1の例の屈折率分布形状と異なるところは、クラッド7が第1クラッド5と第2クラッド6とからなる2層構造となっている点である。
このクラッド7において、最も外側の第2クラッド6の屈折率が高く、第1クラッド5は、この第2クラッド6よりも低屈折率となっている。
また、図中符号r3は第1クラッド5の半径、Δ3は、最も外側の第2クラッド6の屈折率を基準にしたときの第1クラッド5の比屈折率差である。なお、r1、r2は図1(a)に示したものと同様であり、Δ1、Δ2は、それぞれ、第2クラッド6の屈折率を基準にしたときの中心コア部1の比屈折率差と階段コア部2の比屈折率差を示している。
【0027】
この例において、例えば中心コア部1と階段コア部2はゲルマニウム添加石英ガラス、第1クラッド5は屈折率を下降させる作用を有するフッ素を添加したフッ素添加石英ガラス、第2クラッド6は純石英ガラスから構成されている。
なお、各層(中心コア部1、階段コア部2、第1クラッド5、第2クラッド6)の境界が明確ではなく、丸みを帯びた、いわゆるだれを生じた状態であってもよいことは、第1の例と同様である。
第2の例の屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいては、中心コア部1と階段コア部2のそれぞれの構造パラメータ(r1、Δ1)および(r2、Δ2)が、上述の第1の例において示したr2/r1、Δ2/Δ1、Δ1の数値範囲を満足するように、かつ、本発明のAeffなどの特性値を実現できるように設定することにより、第1の例と同様の効果が得られる。
【0028】
さらに、第1クラッド5を付加した構成としたことにより、第1の例と比較して、より曲げ損失を低減することが可能となる。特に限定するものではないが、この第2の例の屈折率分布形状を採用することにより、曲げ損失は100dB/m以下、好ましくは40dB/m以下に設定することができる。
また、構造パラメータの設定(組み合わせ)によっては、さらにカットオフ波長を短くすることができ、また、さらにAeffを拡大できるという効果を得ることができる。
【0029】
図3は、Δ1、Δ2、r1、r2を固定し、Δ3とr3を変化させたときの、Δ3と(r3−r2)/r1の組み合わせによる曲げ損失の変化を示したグラフである。横軸は(r3−r2)/r1、縦軸はΔ3の値を示している。
このグラフより、Δ3が零からマイナスにシフトする程、すなわち第1クラッド5の屈折率が小さくなり、第1クラッド5による屈折率の落ち込みが大きくなる程、曲げ損失が小さくなる傾向がある。また、(r3−r2)/r1、すなわちr3の値が大きくなる程、曲げ損失が小さくなる傾向がある。
【0030】
このように、曲げ損失はΔ3と(r3−r2)/r1との組み合わせによって変化するため、曲げ損失の好ましい数値範囲を満足するための第1クラッド5の構造パラメータ(Δ3、r3)の設定においては、比較的自由度が大きい。
例えば図3において、(r3−r2)/r1が0.6、△3が−0.18%の組み合わせと、(r3−r2)/rが1.8、△3が−0.05%の組み合わせとでは、いずれも30dB/m程度の曲げ損失を得ることができる。よって、曲げ損失のみを考えれば、これらのうちのいずれの組み合わせを採用してもよいことになる。
しかしながら、△3が小さくなると(マイナス側にシフトすると)伝送損失が悪化する傾向があるため、△3は−0.3%以上であることが望ましい。
また、(r3−r2)/r1が大きくなると(r3が大きくなると)、製造上問題が生じるので、(r3−r2)/r1は4.0以下に設定すると好ましい。さらに、(r3−r2)/r1が小さくなると、△3を小さく設定する必要があるため、伝送損失が劣化する傾向があり、また、製造上においても問題が生じるため、(r3−r2)/r1は0.2以上であることが好ましい。
【0031】
表3は、このような条件を満足する分散シフト光ファイバの具体的な設計例を示したものである。いずれも本発明のAeff、分散スロープ、波長分散値、曲げ損失、カットオフ波長の好ましい数値範囲を満足し、波長多重伝送システムに適した特性が得られている。この表の設計例は主としてC−bandでの適用を想定した例となっている。第1の例と同様に、C−bandのみならずL−bandでの仕様も想定した設計が可能である。
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、実質的にシングルモードであり、かつ曲げ損失が100dB/m以下であるという条件を満足し、かつ十分にAeffの拡大と分散スロープの低減を図ることができる分散シフト光ファイバが得られ、特に本発明においては、非常に小さい分散スロープの値を実現することができる。
よって、特に波長多重伝送システムに対して最適な分散シフト光ファイバを提供することができる。
また、比較的簡単な屈折率分布形状を有するため、製造時に制御すべき構造パラメータの数が少なく、製造上有利であり、所望の特性を効率よく得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)、図1(b)は、それぞれ、本発明の分散シフト光ファイバの屈折率分布形状の第1の例と第2の例を示した図である。
【図2】 図1(a)に示した第1の例の屈折率分布形状を用いた場合の解析例を示したグラフである。
【図3】 図1(b)に示した第2の例の屈折率分布形状を用いた場合のΔ3と(r3−r2)/r1の組み合わせによる曲げ損失の変化を示したグラフである。
【図4】 図4(a)〜図4(c)は、従来の分散シフト光ファイバの屈折率分布形状の例を示した図である。
【図5】 本発明に係る分散シフト光ファイバの波長分散値の波長依存性の例を示したグラフである。
【符号の説明】
1…中心コア部、2…階段コア部、4…コア、
5…第1クラッド、6…第2クラッド、7…クラッド。
Claims (3)
- 高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2としたとき、r2/r1が5〜10、Δ2/Δ1が0.06〜0.14、Δ1が0.600〜0.660%であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.062〜0.076ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−2.64〜−1.89ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバ。 - 高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2としたとき、r2/r1が5.0〜7.0、Δ2/Δ1が0.086〜0.114、Δ1が0.70〜0.75%であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.068〜0.079ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−5.10〜−3.99ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバ。 - 高屈折率の中心コア部と、その外周上に設けられた、該中心コア部よりも低屈折率の階段コア部と、該階段コア部の外周上に設けられた、該階段コア部よりも低屈折率のクラッドとからなり、該クラッドが、階段コア部の外周上に設けられた第1クラッドと、該第1クラッドの外周上に設けられた、該第1クラッドよりも高屈折率の第2クラッドとからなる屈折率分布形状を有する分散シフト光ファイバにおいて、
中心コア部の半径をr1、階段コア部の半径をr2、第1クラッドの半径をr3、最も外側のクラッドの屈折率を基準にしたときの中心コア部の比屈折率差をΔ1、階段コア部の比屈折率差をΔ2、第1クラッドの比屈折率差をΔ3としたとき、r2/r1が7〜10、Δ2/Δ1が0.09〜0.1、Δ1が0.61〜0.625%、Δ3が−0.3〜0.06%、(r3−r2)/r1が0.5〜2.0であり、
コア径として太径解を採用し、
測定波長1550nmにおいて、Aeffが45〜70μm2、分散スロープが0.064〜0.072ps/km/nm 2 、曲げ損失が100dB/m以下、波長分散値が−2.40〜−1.93ps/km/nmであり、
かつ実質的にシングルモード伝搬となるカットオフ波長を有することを特徴とする分散シフト光ファイバ。
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