JP3807480B2 - ウォータージェット推進式水中翼船 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中翼を有するウォータージェット推進艇の船外式推進装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、水中翼船は特開平7−196085号公報に開示している発明のように、後部ストラットの下端に設けたスクリュープロペラによって航走したり、あるいは、特開平6−16173号公報のように後部ストラットの下端に取水口を設け、この取水口から吸込んだ水を船体内に設けたポンプで加圧し、船尾に配設した噴出口からウォータージェットを噴射して、その反力で航走するものが知られている。
【0003】
【発明が解決しょうとする課題】
上記、従来の水中翼船では以下のような問題点が有る。即ち、特開平7−196085号公報に記載の水中翼船は、船体から垂下した後部ストラットの下端部にプロペラ駆動による推進装置を設けている。この船艇が水中翼により浮上して航走する以前の状態、即ち、停船時や低速航走時においては、推進装置は水面よりも相当深い位置にある。同じく、特開平6−16173号公報に記載の発明においても、船体から垂下した後部ストラットの下端部にウォータージェットの取水口を設けているため、船艇の停船時や低速航走時では取水口は水深の深い所に位置している。
【0004】
上述のように従来の水中翼船は停船時や低速航走時においては、その推進装置部やウォータージェットの取水口部が水面より相当深い所に位置するため、浅瀬や岩石が多く水深の浅い河川では推進装置やストラットが破損の危険性が有るため、航走することができない。これらの場所を航走するには水中翼を装備していない船艇を使用している。しかし、この船艇では水深の深い所を航走する場合には、船体の浸水面積が大きく、水との摩擦係数が大きいため、あまり高速での航走は行なえないという課題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述のような課題を解決するものである。その要旨とするところは、本発明に係るウォータージェット推進式の水中翼船は、船外機を使用し、船体の底面に前後一対のV型状の水中翼を設け、該水中翼は船体側面部に設けた取付部でボルトにより着脱自在に接合したもので、さらに、船尾に配設した船外機は油圧シリンダーを用いてガイドレールに沿って昇降可能とした。そして、上記船外機の底部に、船速に対応して発生する水流の圧力の検知器を設け、該検知器の信号を船体内に設けた制御装置には、船速に対応した船外機の最適位置を記憶させた回路を設け、船速に応じて船外機を昇降するようにしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係るウォータージェット推進式水中翼船は上述のように構成してあり、水深の深い海、湖、河川等を高速で航走する際には船体側面部に設けた取付部に、V型状の水中翼を船底の前後各1脚づつボルトで接合して固定し、水中翼船として航走すれば、水中翼の揚力によって船体は水面上方へ浮上して航走する。そして、船体の船尾に配設している船外機は船体の浮上にともなって下降し、吸水口が常に水面下一定の位置にある。又、上記水中翼船が高速航走から低速航走に移行したり、停船する際には、船底面が喫水線より下がり水中に位置するようになり、この状態では船外機のウォータージェットの噴射口が水没してしまうため、推進力が得られず、航走できなくなる恐れがある。しかし、高速航走から低速航走に移行したり、停船する際には、船体の低下にともない、船外機は上昇するようにしているので、吸水口の位置は常に水面下一定の深さにあり、航走不能という事態になることはない。
【0007】
上記船外機の昇降は、船内に設けている制御装置にあらかじめ船速に対応した船外機の最適位置を記憶させた回路を組込んでおき、この制御装置へ船外機に設けた水流の圧力検知器からの信号を伝達することにより、船外機上方に設けている油圧シリンダーのロッドを設定値だけ伸縮させるようにしているので、船外機の吸水口は船速にかかわらず、常に水面下一定の深さに位置する。尚、船外機は船尾に配設しているガイドレールに沿って昇降するものである。
【0008】
上述の水中翼船では船体の下方に水中翼が延設しているので、浅瀬や岩石が多く水深の浅い河川では、水中翼が底部や岩石に接触して破損する危険性が有るため、航走できない。これらの場所を航走する際は、水中翼を船体から取外し、船底に突起物が無いようにすればよく、この水中翼は船体の取付部にボルトで接合して固定しており、容易に脱着可能である。そして、船外機の吸水口も船底面と略同一にしておけば、ウォータージェット推進船として浅瀬や岩石が多く水深の浅い河川等も航走することができるものである。以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0009】
【実施例】
図1は本発明のウォータージェット推進式水中翼船の側面図であり、船体1は底面に設けた、前後一対のV型状をした水中翼2の揚力によって浮上し、高速航走の状態を示している。この高速航走による船体1の浮上にともない、船外機3は油圧シリンダー4のロッド4aを伸長させ、ガイドレール5に沿って下降しており、吸水口6は水面下に位置している。この吸水口6から吸込んだ水は、図5で後述するように、ポンプケーシング7に流入し、羽根車8で加圧増速され、ガイドベーン9により整流されて、噴射口10からウォータージェットとして噴出する。このウォータージェットの噴射による反力によって船体1は推進力を得て航走を行なうものである。図1のように船体1は水中翼2によって浮上しているので、船体1の浸水面積は非常に小さく、水との摩擦係数も小さくなり、高速で航走が行なえるものである。
【0010】
次に、図2は上述の水中翼船が低速航走状態、あるいは停船している状態の側面図である。船体1は船底面1aが喫水線より下がり、水中に位置している。この状態では船外機3は油圧シリンダー4のロッド4aの収縮により、ガイドレール5に沿って上昇し、吸水口6は船底面1aと略同一高さとなっている。そして、噴射口10は水没することなく水面上に位置しているので、船体1はウォータージェット噴射の推力によって航走できるものである。
【0011】
図3は前記の水中翼2を取外した状態を示すウォータージェット推進船の側面図である。水中翼2を取外しているので、船体1の船底面1aには突起物が無く、浅瀬や岩石が多く水深の浅い河川等でも航走できるものである。このとき、船外機3の吸水口6は図2における低速航走時と同様、船底面1aと略同一高さに調整しているので、噴射口10が水没することもなく、又、吸水口6が岩石等と接触して破損することもない。上述の水中翼2の着脱方法を図4の図面に基づき詳述する。図4は船体1の側面部の前後に左右一ヵ所づつ配設している取付部11とV型状をした水中翼2の両端部とを複数のボルト12…で固着している。このボルト12を取外すことにより、水中翼2は容易に船体1から分離させることができる。
【0012】
次に船外機3を図5に基づいて詳述する。船体1の船尾13に止着しているガイドレール5に船外機3の支持部14を摺動自在に配設し、船尾13の上部に設けた支持バー15には油圧シリンダー4を止着している。油圧シリンダー4のロッド4aの先端には先端金具4bを固着し、この先端金具4bと船外機3の支持部14に設けたピン16とを遊着している。油圧シリンダー4のロッド4aを伸縮させることにより、船外機3はガイドレール5に沿って上下に滑動するものである。上述のように配設した船外機3において、エンジン17を駆動することにより、エンジン17から垂下している出力軸とベベルギヤー(図示せず)によって、駆動軸18を回転させる。駆動軸18には羽根車8が固着してあり、羽根車8が回転することにより、吸込口6から水が吸込まれる。この水はポンプケーシング7に流入し、羽根車8によって加速増圧される。加速増圧された水はガイドベーン9によって整流され、噴射口10からジェット流として噴出する。符号19はデフレクターであり、噴射口10から噴出するウォータージェットの方向を左右に転向させて、船艇を左右に回動させる装置である。符号20は船艇の前進・後進切換用のリバーサーである。
【0013】
図6は船外機3を船速に応じて昇降させる装置の模式図である。船外機3の下端部側面に設けた検知器21によって、船艇の航走時における水流の圧力を検知し、その信号を船体1内の制御装置22へ伝達する。この制御装置22には船速に対応した水流の圧力と船外機3の最適位置とを記憶させた回路を組込んでいる。検知器21からの信号を受けた制御装置22から油圧シリンダー4に対して、船外機3を船速に対応した最適位置に移動させるための信号を送信し、ロッド4aを設定値だけ伸縮させるようにしている。船外機3の昇降は段階制御でもリニア制御でもよいものである。上述のように船外機3を、船速に応じて浮沈する船体1にともなって昇降するようにしているので、船外機3の吸込口6は常に水面下一定の深さに位置しており、吸込口6から空気を吸いこんでキャビテーションを起こしたり、噴射口10が水没して航走不能となることがなく、高速でも低速でも効率のよい、安定した航走がおこなえる。
【0014】
【発明の効果】
本発明のウォータージェット推進式水中翼船は前後にV型状の水中翼を配設しており、高速時には安定した航走を行なうことができる。この水中翼はボルトを用いて容易に着脱自在としているので、水中翼を取外すことによって、ウォータージェット推進船として浅瀬や岩石が多く水深の浅い河川等でも航走することができる。又、船外機は高速時や低速時等の航走状態に応じて昇降し、その吸水口の位置が常に水面下一定の深さにあるので、効率良く航走することができる。上記の通り、本発明のウォータージェット推進式水中翼船は多目的に使用することができるので利用価値が高く、その効果は非常に大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るウォータージェット推進式水中翼船の高速航走時における側面図である。
【図2】 同じく、低速航走時あるいは停止時における側面図である。
【図3】 同じく、水中翼を取外して航走している状態の側面図である。
【図4】 同じく、水中翼の接合状態を示す側面図である。
【図5】 同じく、船外機の取付状態を示す部分断側面図である。
【図6】 同じく、船外機を昇降させる装置の模式図である。
【符号の説明】
1 船体
2 水中翼
3 船外機
4 油圧シリンダー
5 ガイドレール
11 取付部
13 船尾
21 検知器
22 制御装置
Claims (1)
- 船体(1)の底面に前後一対のV型状を形成する水中翼(2)を船体(1)側面部に設けた取付部(11)に着脱自在に接合可能とする水中翼船に、ウォータージェット推進装置を船外機(3)として使用したウォータージェット推進艇において、船体(1)の船尾(13)に配設した船外機(3)の下端側面部に、船速に対応して発生する水流の圧力の検知器(21)を設け、該検知器(21)の信号を船速に対応した船外機(3)の最適位置を記憶させた回路を組込んだ制御装置(22)に伝達するとともに、制御装置(22)から油圧シリンダー(4)に信号を送信し、ガイドレール(5)に沿って船外機(3)を昇降させることを特徴とするウォータージェット推進式水中翼船。
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