JP3805948B2 - 一次放射器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衛星放送反射式アンテナ等に備えられる一次放射器に係り、特に、円偏波を送受信する一次放射器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7はこの種の一次放射器の従来例を示すものであり、同図(a)は左側面図、同図(b)は断面図である。この従来の一次放射器は、一端にホーン部10aを有し他端を閉塞面10bとした断面方形の導波管10と、導波管10の内部に設置された90度位相板11と、導波管10の壁面から内部に挿入された一対のプローブ12,13とを備えており、これらプローブ12,13と閉塞面10bとの距離は管内波長の約1/4波長分だけ離れている。ホーン部10aは四角錐状に開口しており、このホーン部10aを含め導波管10は亜鉛ダイキャスト等の導電材料で一体形成されている。90度位相板11は均一な厚みを有する誘電体板からなり、その長手方向の両端は入力インピーダンスおよび出力インピーダンスを良好にするためにV字状に切り欠かれている。この90度位相板11はホーン部10aの開口端から挿入され、導波管10の内部の対角線上に位置する両角部に固定されている。両プローブ12,13は互いに直交しており、90度位相板11は両プローブ12,13に対してそれぞれ約45度傾いた状態で設置されている。
【0003】
このように構成された一次放射器において、例えば衛星から送信された右旋円偏波および左旋円偏波を受信する場合、この円偏波はホーン部10aから導波管10の内部に導かれ、導波管10の内部で90度位相板11により直線偏波に変換される。すなわち、円偏波は等振幅で互いに90度の位相差を持つ2つの直線偏波の合成ベクトルが回転している偏波であるため、円偏波が90度位相板11を通過することにより、90度ずれている位相が同相となって直線偏波に変換される。図7に示す例では、左旋円偏波が垂直偏波に変換され、右旋円偏波が水平偏波に変換されるため、これら垂直偏波および水平偏波をそれぞれプローブ12,13に結合させて受信すれば、その受信信号を図示せぬコンバータ回路でIF周波数信号に周波数変換して出力することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の如く構成された従来の一次放射器においては、導波管10の先端から突出するホーン部10aには所望の開口径と長さが必要であり、しかも、このホーン部10aに続く導波管10の内部に所定長さの90度位相板11を設置する必要があるため、一次放射器が導波管10の軸線方向に長くなるという問題があった。特に、断面方形の導波管10を用いた場合、図8の電界分布図から明らかなように、電界E1(破線)と電界E2(実線)は導波管10の角部を中心として円弧状に広がる強度分布となり、導波管10の角部に固定された90度位相板11の両縁部に電界E1がほとんど存在しなくなる。これは電界E1,E2が導波管10の平坦な各壁面に垂直に向かうからであり、その結果、90度位相板11内を伝播する偏波成分が少なくなる。このような理由から、90度位相板11によって90度ずれている位相を同相にするためには、90度位相板11を導波管10の軸線方向に沿って充分に長くする必要があり、このことが一次放射器の小型化を妨げる大きな要因となっていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化に好適な一次放射器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の一次放射器では、一端を開口した断面方形の導波管と、この導波管に保持された誘電体フィーダとを備え、前記誘電体フィーダに前記導波管の開口端から突出する放射部と前記導波管の内部に固定される保持部とを設け、前記保持部を前記導波管の内部に向かって収束する先窄まり形状にすると共に、この保持部に前記導波管の対角線を含む平面に関して対称形な一対の切欠きを形成することにより、該保持部の板厚を前記導波管の対角線方向における中心部が両縁部よりも薄くなるように形成した。
【0007】
このように構成された一次放射器においては、誘電体フィーダの放射部から円偏波が入力すると、この円偏波は位相変換部とインピーダンス変換部の両機能を持つ保持部により、直線偏波に変換されると共にインピーダンス整合されて導波管の内部に進入する。この場合、保持部に導波管の対角線を含む平面に関して対称形な一対の切欠きを形成することで、該保持部の中心部の板厚が両縁部よりも薄く形成され、保持部が電界の強度分布に沿った形状となるため、保持部の長さを短縮しても直交偏波に対する位相差が大きくなり、それ故、一次放射器の全長を大幅に短くすることができる。
【0008】
上記の構成において、前記保持部の各切欠きをそれぞれ断面円弧状で導波管の内部に向かって収束する1つの湾曲面によって構成することができ、あるいは、各切欠きをそれぞれ複数の面を導波管の内部に向かって連続させた段付き面によって構成することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の一実施形態例に係る一次放射器の構成図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は該一次放射器に備えられる誘電体フィーダの斜視図、図4は該誘電体フィーダを図3のV−V線方向に沿って見た説明図、図5は該誘電体フィーダを図3のH−H線方向に沿って見た説明図、図6は該誘電体フィーダと電界の分布状態を示す説明図である。
【0010】
これらの図に示すように、本実施形態例に係る一次放射器は、一端を開口し他端を閉塞面1aとした断面方形の導波管1と、この導波管1の開口端に保持された誘電体フィーダ2とを具備しており、導波管1の内壁面には一対のプローブ3,4が互いに直交するように設置されている。これらプローブ3,4と閉塞面1aとの距離は管内波長λgの約1/4波長に設定されており、両プローブ3,4は図示せぬコンバータ回路に接続されている。
【0011】
誘電体フィーダ2は誘電正接の低い誘電材料からなり、本実施形態例の場合は価格の点を考慮して安価なポリエチレン(誘電率ε≒2.25)が用いられている。この誘電体フィーダ2は、導波管1の内部に挿入される保持部2aと、保持部2aに連続してラッパ状に広がる放射部2bとで構成されており、放射部2bは導波管1の開口端から外部に突出している。
【0012】
保持部2aには導波管1の内部に向かって収束する一対の湾曲面5が形成されており、これら湾曲面5は図2,3のV−V線を含む平面に関して対称形で、その断面形状は円弧状になっている。図2に示すように、この保持部2aは導波管1の開口端から内部に挿入され、湾曲面5を除く部位を導波管1の内部の対角線V−V上に位置する角部に固定することにより、保持部2aは両プローブ3,4に対してそれぞれ約45度傾いた位置に設置される。これにより保持部2aは円偏波を垂直偏波に変換する位相変換部としての機能を持ち、しかも保持部2aは導波管1の内部に向かって収束する先窄まり形状であるため、この保持部2aはインピーダンス変換部としての機能を持つことになる。ここで、保持部2aの板厚は従来の90度位相板のように均一でなく、導波管1の軸心を通る中心部の板厚が導波管1に固定された両縁部の板厚に比べて薄くなっている。すなわち、対角線V−Vと直交する対角線H−H上に位置する角部をP1,P2とすると、両湾曲面5はそれぞれP1,P2を略中心とする円弧状断面を有するため、保持部2aの板厚は導波管1の軸心を通る中心部が両縁部に比べて薄くなっている。
【0013】
一方、放射部2bの外周面には4つの凹部6が90度の等間隔で形成されおり、各凹部6は保持部2aとの境界部分まで達している。これら凹部6は導波管1の開口端内壁と誘電体フィーダ2の外表面との間に所定深さの間隙を画成するもので、このような間隙により誘電体フィーダ2の外表面から導波管1の開口端と流れる表面電流を抑制し、該表面電流に起因して発生するサイドローブを低減できるようになっている。また、放射部2bの端面には複数の環状溝7が同心円状に形成され、各環状溝7の深さ寸法は空気中を伝播する電波波長λ0の約1/4波長に設定されている。
【0014】
このように構成された一次放射器において、例えば衛星から送信された右旋円偏波および左旋円偏波を受信する場合、この円偏波は放射部2bから進入して誘電体フィーダ2内を伝播し、保持部2aで直線偏波に変換されると共にインピーダンス整合されて導波管1の内部に進入する。そして、導波管1に入力した直線偏波をプローブ3,4に結合させ、両プローブ3,4からの受信信号を図示せぬコンバータ回路でIF周波数信号に周波数変換して出力することにより、衛星から送信された円偏波を受信することができる。その際、図6に示す電界分布図から明らかなように、両湾曲面5は電界E1の強度分布に沿った曲面形状となり、導波管1内部において保持部2aは電界の強い場所に位置することになるため、保持部2aの長さを短くしても直交偏波に対する位相差が大きくなる。しかも、この保持部2aはインピーダンス変換部としての機能も併せ持つため、この点からも保持部2aの長さを短くすることができ、それ故、導波管1と誘電体フィーダ2を含む一次放射器の全長を大幅に小型化することができる。
【0015】
なお、本発明による一次放射器は上記実施形態例に限定されず、種々の変形例を採用することができ、例えば、誘電体フィーダの全長は若干長くなるが、放射部をラッパ状形状に代えて円錐や角錐形状にしても良い。また、誘電体フィーダの保持部の形状も上記実施形態例に限定されず、例えば、保持部に導波管の内部に向かって収束する複数の面を段付き状に連続形成し、この段付き面によって湾曲面に近似した形状を実現することも可能であり、要は、導波管の内部に向かって先窄まり形状にした保持部の中心部の板厚が両縁部よりも薄くなっていれば良い。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0017】
断面方形の導波管に放射部と保持部を有する誘電体フィーダを保持し、この保持部を導波管の内部に向かって収束する先窄まり形状にすると共に、該保持部に導波管の対角線を含む平面に関して対称形な一対の切欠きを形成することにより、その板厚を導波管の対角線方向における中心部が両縁部よりも薄くなるように形成すると、保持部が位相変換部とインピーダンス変換部の両機能を持ち、かつ、電界の強度分布に沿った形状となるため、保持部の長さを短縮しても直交偏波に対する位相差が大きくなり、それ故、一次放射器の全長を大幅に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例に係る一次放射器の構成図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】該一次放射器に備えられる誘電体フィーダの斜視図である。
【図4】該誘電体フィーダを図3のV−V線方向に沿って見た説明図である。
【図5】該誘電体フィーダを図3のH−H線方向に沿って見た説明図である。
【図6】該誘電体フィーダと電界の分布状態を示す説明図である。
【図7】従来例に係る一次放射器の構成図である。
【図8】該誘電体フィーダに備えられる90度位相板と電界の分布状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 導波管
2 誘電体フィーダ
2a 保持部
2b 放射部
3,4 プローブ
5 湾曲面
Claims (3)
- 一端を開口した断面方形の導波管と、この導波管に保持された誘電体フィーダとを備え、前記誘電体フィーダに前記導波管の開口端から突出する放射部と前記導波管の内部に固定される保持部とを設け、前記保持部を前記導波管の内部に向かって収束する先窄まり形状にすると共に、この保持部に前記導波管の対角線を含む平面に関して対称形な一対の切欠きを形成することにより、該保持部の板厚を前記導波管の対角線方向における中心部が両縁部よりも薄くなるように形成したことを特徴とする一次放射器。
- 請求項1の記載において、前記各切欠きが断面円弧状で前記導波管の内部に向かって収束する1つの湾曲面によって構成されていることを特徴とする一次放射器。
- 請求項1の記載において、前記各切欠きが複数の面を前記導波管の内部に向かって連続させた段付き面によって構成されていることを特徴とする一次放射器。
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