JP3805340B2 - 自転車用クランクおよびクランク軸 - Google Patents

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Description

本発明は、自転車用クランクおよびクランク軸に関し、特に取付精度および取付強度が高く軽量化に寄与する自転車用クランクおよびクランク軸に関するものである。
自転車におけるクランクとクランク軸との取付構造は、クランク軸の両端部をほぼ四角柱状に形成し、クランクに四角柱状の穴を設け、両者を嵌合して固定していた。
従来のクランクとクランク軸の嵌合構造では、芯出し精度が十分でなく、また、回転方向の結合強度も十分ではなかった。特に、軽量化のためにクランク軸をアルミ合金の中空パイプ構造のものにしたり、クランクをアルミ合金の中空構造のものを採用した場合に、結合強度が不足するという欠点があった。
そこで、本発明は、取付精度および取付強度を向上させるとともに軽量化に寄与する自転車用クランクおよびクランク軸を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の自転車用クランクは、アルミ合金からなる中空パイプ状のクランク軸に取り付けるためのクランク軸取付穴が設けられたアルミ合金からなる自転車用クランクであって、前記クランク軸取付穴の内面には、前記クランク軸の端部の雄セレーションと互いに係合して、前記クランク軸とクランクとを回転方向に結合するための、歯数が8の雌セレーションと、前記雌セレーションに対して前記クランク軸軸方向中央側に位置し、前記クランク軸と前記クランクとを内周方向全周で芯出しするための内周芯出し部とが形成されているものである。
また、上記の自転車用クランクにおいて、前記雌セレーションおよび前記内周芯出し部は、前記クランク軸軸方向中央側の内径が大きくなるテーパ形状であることが好ましい。
また、上記の自転車用クランクにおいて、前記クランクの長手方向両端部は前記クランク本体と同一部材による中実構造とし、前記クランクの長手方向中央部は中空構造としたものであることが好ましい。
また、上記の自転車用クランクにおいて、前記中空構造は、前記クランクの裏面に長手方向に延びる凹溝を形成し、該凹溝の開放面に蓋部材を固着した構造であり、前記凹溝は、その両端部付近における溝の深さを前記凹溝の両端部に向かって小さくし、かつ前記凹溝の底面の形状を船底型としたものであることが好ましい。
また、本発明の自転車用クランク軸は、上記の自転車用クランクを取り付けるためのアルミ合金からなる中空パイプ状の自転車用クランク軸であって、前記クランク軸の端部外周に位置し、前記クランクの前記雌セレーションと互いに係合して前記クランクを回転方向に結合するための、歯数が8の雄セレーションと、前記クランク軸の前記雄セレーションに対して前記クランク軸軸方向中央側の外周に位置し、前記クランクを前記クランク軸の外周方向全周で芯出しするための外周芯出し部と、前記クランク軸を中心軸線方向に貫通する中空部と、前記クランク軸の両端部内周面に形成された雌ねじとを有するものである。
また、上記の自転車用クランク軸において、前記雄セレーションおよび前記外周芯出し部は、端部側の直径が小さくなるテーパ形状であることが好ましい。
本発明は、以上に説明したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
クランクとクランク軸との芯出し精度が高精度となり、回転方向の結合強度も強くなる。特に、軽量化のためにクランク軸をアルミ合金の中空パイプ構造のものにしたり、クランクをアルミ合金の中空構造のものを採用した場合にも、取付精度および結合強度が十分なものとなる。
回転結合部と芯出し部が分離しているので、セレーションの嵌合部の長さが短くて済み、加工コストが安くなる。
セレーションの歯は、角形歯であるので、使用しているうちにガタが出てくるということが少ない。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に本発明のクランク1の正面図を示す。クランク1はアルミ合金で作られており、図1のように、ペダル取付側クランク端部4側が細く、クランク軸取付側クランク端部2側が太く形成されている。クランク1の太さをこのように、位置により変化させることによって、クランクに加わる応力をどの点においてもほぼ一定にすることができる。クランク1の表側表面にはレーザーマーキング等により、製造メーカーのロゴマークや製品名を表す商標等を刻印することができる。また、クランク1の表側角部には面取部11が形成され、その面取りの大きさは、クランク軸取付側クランク端部2付近では大きく、ペダル取付側クランク端部4に向かって連続的に小さくなっている。
クランク1のクランク軸取付側クランク端部2には、クランク1をクランク軸5に取り付けるためのクランク軸取付穴21が形成されている。図7に示すように、このクランク軸取付穴21によって、クランク軸5にクランク1が取り付けられる。また、クランク1のペダル取付側クランク端部4には、ペダル取付穴41が形成されている。このペダル取付穴41に図示しないペダルが取り付けられる。
図2は、クランク1の側面図である。図3は、クランク1を側面から見た断面図である。クランク中央部3の裏面側には、長手方向に延びる凹溝31が形成されている。凹溝31の形状は、凹溝31の両端部付近では、溝の深さが両端部に向かって連続的に小さくなり、両端部では溝の深さが最小になっている。すなわち、凹溝31の底面形状はいわゆる船底型と言われるものである。凹溝31の中央部の底面は、クランク中央部3の表側表面とほぼ平行である。
この凹溝31の開放面側は段部32が形成され、この段部32に蓋部材33をはめ込み、蓋部材33の周囲とクランク1本体をアルゴンガスを使用したイナートガスアーク溶接により固着している。クランク1本体の裏側表面と、蓋部材33の表面は面一となるように配置されている。また、溶接による肉盛り部も切削加工等により削り取り、面一とすることが好ましい。
クランク軸取付側クランク端部2には、クランク軸取付穴21が設けられている。クランク軸取付穴21の内面にはフランジ22が内面側に突出して設けられ、そのフランジ22の裏面側に連接して、雌のセレーション23が設けられている。クランク軸取付穴21のセレーション23より裏面側の部分は、芯出し部24として構成されている。芯出し部24は、内径が変化しないストレート形状であってもよいが、通常は内径が裏面側に広がるテーパ穴形状であり、テーパ角は2〜3°である。
クランク軸取付側クランク端部2の裏面突出部の外周根元部には、ギヤ板6回り止め用の雄のセレーション25が形成されており、裏面突出部の外周部には、ギヤ板6固定用の雄ネジ26が形成されている。
図4は、クランク1を裏面から見た図である。セレーション23、25は、図4のように8歯のものが適当である。歯の数が少ないと、回転結合の結合強度が不足し、歯の数が多すぎると、加工が困難でコスト上昇につながり、また、回転方向の割り出し位置決め作業もミスが出易くなる。
図5は、図1におけるA−A,B−B,C−C切断線での矢視断面図である。(A)はA−A矢視断面図、(B)はB−B矢視断面図、(C)はC−C矢視断面図である。クランク中央部3の断面内部は、ほとんどの部分がこのように凹溝31として形成され、軽量化が図られている。
図6は、クランク軸5の外観を示す図である。クランク軸5の両端部には、芯出し部52が形成されている。芯出し部52は、直径が変化しないストレート形状でもよいが、通常は端部側が細くなるテーパ形状であり、テーパ角は2〜3°である。芯出し部52よりさらに端部側には、雄のセレーション51が設けられている。セレーション51は8歯構成であり、歯の外周面は芯出し部52の外周面と連続した表面となっている。セレーション51の歯の形状は、両側面がほぼ平行平面の角形歯である。回転方向の結合力を、力とほぼ直交する平面で受けるため、ガタが出にくくなる。
クランク軸5の端面には、クランク1固定用の雌ネジ53が設けられている。クランク軸5は中空パイプ形状であり、図7に示すように中央部では両端部よりもさらに肉厚が薄くなるように形成されている。クランク軸5の材質はアルミ合金であり、中空であることと相まって軽量化に貢献している。
図7は、クランク軸5とクランク1とギヤ板6とを組み立てた組立体を表す。一方のクランク1にはギヤ板6が取り付けられ、セレーション25により回り止めされてナット61により固定されている。そのギヤ板6が固定されたクランク1がクランク軸5の一方の端部に取り付けられ、ボルト54により固定されている。クランク軸5の他端には、ギヤ板の無いクランク1が取り付け固定されている。クランク1の芯出し部24とクランク軸5の芯出し部52は密嵌合し、両者の芯出しを高精度に行う。また、クランク1の雌セレーション23とクランク軸5の雄セレーション51は互いに噛み合い、回転方向の高強度の結合を行う。
[他の実施の形態]
前記したクランク軸5の芯出し部52とクランク1の芯出し部24とはテーパ接合されているので強力に両テーパ面は密着している。このためクランク1をクランク軸5から取り外すときは、取り外し治具を用いる必要がある。図8に示す他の実施の形態は、クランク軸5とクランク1とを固定するボルト54を用いて前記密着を離脱させる構造を有するものである。
ボルト54の頭部にフランジ55が一体に形成されている。クランク軸5とクランク1とを一体に固定するときは、ワッシャ56を介してボルト54を締め付ける。クランク軸取付穴21の内周溝57には、Eリング58が挿入固定されている。クランク軸5とクランク1とを取り外すときは、ボルト54の6角穴59に6角のアレンキーを挿入して逆方向に回す。ボルト54のフランジ55は、Eリング58の側面を押すことになる。
このため、フランジ55は、クランク1を軸線方向に駆動してクランク軸5の芯出し部52とクランク1の芯出し部24とのテーパ結合による密着を簡単に外すことができる。この構造によると抜き工具等の特殊な工具を必要としない。
なお、本実施の形態では、Eリング58を配置したが、Eリング58ではなくクランク1を一体にEリング58に相当するものを形成しても良いし、他の部材を溶接して形成しても良い。
図9は、別の形態のボルト54の構造を示す断面図であり、図10がボルト54の斜視図である。図8のボルト54ではネジ部の直径と頭部の直径とが同程度であったが、図9および図10のボルト54は、ネジ部542の直径が頭部541の直径より大きく、フランジ55の直径がネジ部542の直径よりも大きく形成されている。このようにネジ部542の直径を大きくすることにより、ボルト54をアルミ合金等の軽合金で製造してもネジ部の強度が十分に確保でき、ボルト54による締付力も十分な値に設定することができる。
また、6角穴59が頭部541の端面中央からボルトの軸方向に形成されており、その6角穴59の底面部は、ほぼボルト54の先端側の端面付近まで到達している。6角穴59の長さが長いほど、締め付け工具(アレンキー)と6角穴59との当たり面積が大きくなり、軽合金製のボルトでも十分な締め付けを行うことができる。6角穴59の長さは、必要な締付力に応じて設定することができるが、少なくとも6角穴59の底面部がネジ部542の内面に達する程度の長さが必要である。ネジ部542の直径が太いので、内部に6角穴59を設けることが可能であり、内部に6角穴59を設けても十分な強度を有している。このボルト54をアルミ合金によって製造することによって、軽量でしかも十分な強度を有するものとなる。
図11に、本発明のクランク軸5を自転車のフレーム10に組み付ける状態を示す。ただし、この実施の形態のクランク軸5には、ベアリングを係止する係止部50が中央部外面に突出して設けられている。クランク軸5をフレーム10に組み付けるには、フレーム10とクランク軸5との間に左取付アダプタ101と右取付アダプタ102をねじ込み、ベアリングを係止部50に係止させる。左取付アダプタ101と右取付アダプタ102の外側端部には雄セレーションが設けられており、その雄セレーションと係合する雌セレーションを有する組立工具7により、各取付アダプタをねじ込む。
図13に、組立工具7の構造を示す。手前側の端部には、ほぼ正6角柱状のスパナかけ部71が設けられている。このスパナかけ部71にスパナ等の工具をかけ、組立工具7全体を軸線回りに回転させる。スパナかけ部71に隣接して中間部72が設けられている。中間部72の外周は円柱の対向する面を削り取って平面とした形状となっており、この中間部72の平面部にも異なったサイズのスパナ等の工具をかけることができる。組立工具7の他端部には、大径部73が設けられている。
図14は、組立工具7を大径部73側の端面から見た図である。大径部73の内側は端面が開放された空洞になっており、図14のように内部にセレーション歯が設けられて雌セレーション74を構成している。この雌セレーション74が、左取付アダプタ101および右取付アダプタ102の各雄セレーションと係合する。組立工具7の中心部には軸線方向の貫通孔75が設けられており、貫通孔75の直径はクランク軸5の端部が挿通できる大きさとなっている。左右の取り付けアダプタをねじ込む際に、この貫通孔75にクランク軸5の端部が挿通され、クランク軸5が組立工具7を回転させるためのガイドとなって作業が行いやすくなる。
図12は、クランク1にギヤ板6を取り付ける状態を示す図である。クランク1のクランク軸取付側クランク端部2には、図12のようにギヤ板6を取り付け、ナット61により固定する。ナット61の外周には、図11の左取付アダプタ101および右取付アダプタ102の雄セレーションと同一のピッチの雄セレーションが形成されている。そのため、図11に示したものと同じ組立工具7によってナット61の締め付け作業を行うことができる。この締め付け作業には、締め付け中に組立工具7が外れないように、補助組立工具8を用いる。
図15に補助組立工具8の構造を示す。略円柱状の補助組立工具8の一端には、外周面に滑り止めのためのローレット加工を施したつまみ部81が設けられている。つまみ部81の直径は組立工具7の貫通孔75の直径より大きく、組立工具7を係止できるように構成されている。つまみ部81に隣接して内面支持部82が設けられている。内面支持部82の直径はクランク軸5の端部の直径とほぼ同じであり、内面支持部82により組立工具7の貫通孔75の内面を回転自在に支持する。補助組立工具8の他端側には、端面からボルト54と螺合する雌ネジ部83が設けられている。
補助組立工具8をボルト54によりクランク1に固定したときに、つまみ部81と組立工具7との間に僅かな隙間(0.5mm程度)が生じるように、補助組立工具8の長さが設定されている。したがって、組立工具7は、回転可能かつナット61から外れないように、補助組立工具8により支持される。このように、補助組立工具8により組立工具7を支持しつつ、スパナ等の工具をスパナかけ部71にかけて、ナット61を締め付けてギヤ板6をクランク1に固定する。組立工具7がナット61から外れることが無いので、作業が容易かつ能率的に行える。
本発明の第1の実施の形態のクランク1の正面図である。 クランク1の側面図である。 クランク1の側面から見た断面図である。 クランク1を裏面から見た図である。 図1のA−A,B−B,C−C切断線での断面図である。 本発明のクランク軸5の外観を表す図である。 クランク1をクランク軸5に取り付けた、本発明のクランク組立体を表す図である。 クランク軸5とクランク1との結合の他の実施の形態を示す断面図である。 クランク軸5とクランク1を結合するためのボルト54の断面図である。 クランク軸5とクランク1を結合するためのボルト54の斜視図である。 クランク軸5を自転車のフレーム10に組み付ける状態を示す図である。 ギヤ板6をクランク1に取り付ける状態を示す図である。 組立工具7の斜視図である。 組立工具7の他端側から見た図である。 補助組立工具8の構造を示す図である。
符号の説明
1 クランク
2 クランク軸取付側クランク端部
3 クランク中央部
4 ペダル取付側クランク端部
5 クランク軸
6 ギヤ板
7 組立工具
8 補助組立工具

Claims (6)

  1. アルミ合金からなる中空パイプ状のクランク軸(5)に取り付けるためのクランク軸取付穴(21)が設けられたアルミ合金からなる自転車用クランクであって、
    前記クランク軸取付穴(21)の内面には、
    前記クランク軸(5)の端部の雄セレーション(51)と互いに係合して、前記クランク軸(5)とクランク(1)とを回転方向に結合するための、歯数が8の雌セレーション(23)と、
    前記雌セレーション(23)に対して前記クランク軸(5)軸方向中央側に位置し、前記クランク軸(5)と前記クランク(1)とを内周方向全周で芯出しするための内周芯出し部(24)とが形成されている自転車用クランク。
  2. 請求項1に記載した自転車用クランクであって、
    前記雌セレーション(23)および前記内周芯出し部(24)は、前記クランク軸(5)軸方向中央側の内径が大きくなるテーパ形状である自転車用クランク。
  3. 請求項1,2のいずれか1項に記載した自転車用クランクであって、
    前記クランク(1)の長手方向両端部(2,4)は前記クランク(1)本体と同一部材による中実構造とし、
    前記クランク(1)の長手方向中央部(3)は中空構造としたものである自転車用クランク。
  4. 請求項3に記載した自転車用クランクであって、
    前記中空構造は、前記クランク(1)の裏面に長手方向に延びる凹溝(31)を形成し、該凹溝の開放面に蓋部材(33)を固着した構造であり、
    前記凹溝(31)は、その両端部付近における溝の深さを前記凹溝(31)の両端部に向かって小さくし、かつ前記凹溝(31)の底面の形状を船底型としたものである自転車用クランク。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載した自転車用クランクを取り付けるためのアルミ合金からなる中空パイプ状の自転車用クランク軸であって、
    前記クランク軸(5)の端部外周に位置し、前記クランク(1)の前記雌セレーション(23)と互いに係合して前記クランク(1)を回転方向に結合するための、歯数が8の雄セレーション(51)と、
    前記クランク軸(5)の前記雄セレーション(51)に対して前記クランク軸(5)軸方向中央側の外周に位置し、前記クランク(1)を前記クランク軸(5)の外周方向全周で芯出しするための外周芯出し部(52)と
    前記クランク軸(5)を中心軸線方向に貫通する中空部と、
    前記クランク軸(5)の両端部内周面に形成された雌ねじ(53)とを有する自転車用クランク軸。
  6. 請求項5に記載した自転車用クランク軸であって、
    前記雄セレーション(51)および前記外周芯出し部(52)は、端部側の直径が小さくなるテーパ形状である自転車用クランク軸。
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