JP3804689B2 - ポリイソシアナート化合物の処理法 - Google Patents

ポリイソシアナート化合物の処理法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリイソシアナート化合物を用い、系中にウレタンまたはチオウレタン構造を有する、着色の少ないウレタン系樹脂を得る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウレタン樹脂は重合時の熱、光、酸化成分などにより黄変ないしは褐色に着色する。このような着色を防止するため、様々な方法が提案されてきた。一般には、得られたウレタン重合体に各種の安定剤を配合した後、目的とする樹脂成型物を得る方法がある。例えば、高分子量ヒンダードフェノール化合物(特開昭61ー47819、特開昭62ー96560)、ヒンダードフェノール化合物とベンゾトリアゾール化合物の併用(特公昭60ー21187、特開昭56ー11948)、フェノール化合物と乳酸のアルカリ土類金属塩の併用(特公昭58ー45983)高分子量ヒンダードフェノール化合物とベンゾフェノン化合物の併用(特開平2ー43257)等が安定剤として有効であることが知られている。また、あらかじめ添加剤を配合し重合反応させた後、目的とする樹脂成型物を得る方法がある。例えば、リン化合物(特公昭45ー33438)等が添加剤として有効であることが知られている。
【0003】
一方、イソシアナート類は反応性の高いイソシアナート基を有し、それ故に不安定であり、保存、貯蔵および輸送中に変質し易い欠点を有する。このため、メーカーではイソシアナートの高い反応性を維持したままで、樹脂成型物の性能を損なわないための処方が施されている。例えば、製品に各種の安定剤を添加したり、保存雰囲気に留意し、製品の容器充填時に移送ポンプによる製品への湿気や空気の巻き込み、容器の機密性に十分注意を払い、容器の気相部を窒素等の不活性ガスで十分置換する等の処理を行っている。例えば、安定剤に関しては、アルキルフェノール類(特公昭46−27594、US 3682902、US 3715381、Ger 1952396)、有機アミン類(特開昭50−101344)アシルイソシアナート化合物(特公昭48−3825)、燐酸エステル類(Brit 1315520,Fr 1478664)、亜燐酸エステル類(特公昭45−33438、特開昭51−48619特開昭57−82358、特開昭59−98050、)等多数の安定剤が知られている。また、保存雰囲気に関しては、酸素量20ppm以下でのキシリレンジイソシアナートの貯蔵及び輸送法(特開平5−178811)等の保存雰囲気の酸素量の低減化が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、各種安定剤はほとんどが固体または液体でこれらを配合するためにはウレタン重合体と混合する作業を必要とするばかりでなく、ウレタン重合体との相溶性も考慮に入れなければならない。また、重合反応時に添加剤を配合すると反応性に影響を与えることになり、商品性を損なうことがある。
【0005】
また、イソシアナートの変質を抑制するための安定剤の添加や、処理を施されたイソシアナート化合物、特にポリイソシアナートを用いてウレタン結合を有する樹脂を製造すると着色することがあり、商品性を損なうことがある。これらイソシアナートの安定化技術は樹脂の着色を抑制する目的で用いられるには不十分である。このように、ウレタン樹脂の着色を抑える技術は未だ十分に満足できる段階に至っていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは着色の少ないウレタン構造を有する樹脂を得るために、鋭意検討した結果、驚くべきことに酸素存在下で処理したポリイソシアナート化合物、特にジイソシアナート化合物を用いて、ポリオール、ポリチオール、アルコール、チオール類等と反応させることにより着色の少ないウレタン樹脂が得られる事を見いだした。
【0007】
即ち、本発明はポリイソシアナート化合物1molに対し酸素2.5〜2000ml好ましくは3.5〜1000mlの存在下、温度0〜70℃好ましくは5〜60℃で、1〜100日好ましくは1〜60日保存処理する事を特徴とするポリイソシアナート化合物の処理方法である。酸素が2.5ml未満、温度が0℃未満でかつ、保存処理時間が1日未満では処理は進み難く実用的でない。一方、酸素が2000mlより多く、温度が70℃より高くかつ、保存処理時間が100日より長くても効果は上がらない。更には得られたウレタン構造を有する樹脂が着色し実用的でない。
【0008】
本発明で言うところの酸素とは容器空間部に存在する酸素およびポリイソシアナート中に溶存する酸素の事である。
【0009】
ポリイソシアナートの酸素による処理は、酸素、空気または酸素と不活性ガスの混合気体等による容器空間の置換もしくはポリイソシアナートへの通気等を行った後、撹拌または静置を行うことである。酸素、空気または酸素と不活性ガスの混合気体等による容器空間の置換もしくはポリイソシアナートへの通気等を行いつつ撹拌を行ってもよい。ポリイソシアナートへの通気に関して該ポリイソシアナートが固体の場合、該ポリイソシアナートに対し不活性な溶剤または該ポリイソシアナートを溶解し得る液体のポリイソシアナート溶液として処理可能である。
【0010】
イソシアナート化合物は水分と容易に反応するため、使用される酸素、空気もしくは酸素と不活性ガスの混合気体は十分に乾燥したものでなければならない。
【0011】
本発明が適用しうるポリイソシアナート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、1,3,5−トリイソシアナートメチルベンゼン、ナフタレンジイソシアナート、メチルナフタレンジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ビベンジル−4,4’−ジイソシアナート、ビス(イソシアナートフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、等の芳香環を有するポリイソシアナート、
【0012】
エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナート−5−イソシアナートメチルオクタン、ビス(イソシアナートエチル)カーボネート、ビス(イソシアナートエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−α,α’−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステル、リジントリイソシアナート、2−イソシアナートエチル−2,6−ジイソシアナートヘキサノエート、2−イソシアナートプロピル−2,6−ジイソシアナートヘキサノエート、2,6−ジ(イソシアナートメチル)フラン、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、,2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート,2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−5−イソシアナートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−6−イソシアナートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−5−イソシアナートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−6−イソシアナートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−5−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−6−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−5−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−6−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2,5−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、 2,5−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、等の脂肪族ポリイソシアナートが挙げられる。
【0013】
しかし、これらに限定されるものではない。
【0014】
これらは単独でも、また2種類以上の混合物にしても適用できる。
【0015】
本発明の、着色の少ない系中にウレタンまたはチオウレタン構造を有する樹脂の製造法としては、通常の水酸基とイソシアナート基によるウレタン結合形成反応およびチオール基とイソシアナート基によるチオウレタン結合形成反応を利用しうるが、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオールの反応(特開平1−295201)、ポリイソシアナート化合物とポリチオールの反応(特公平4−58489)、不飽和アルコールとポリイソシアネートで不飽和ウレタンを合成した後ラジカル重合を行う方法(特開昭57−136602)等の方法が挙げられる。
【0016】
しかし、これらに限定されるものではない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の略語は以下の通りとする。
キシリレンジイソシアナート XDI
ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン BIC
イソホロンジイソシアナート IPDI
ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート H12MDI
【0018】
【実施例1】
XDI、20gを容器空間部が5mlとなるような硝子容器にいれ、空間を空気で置換後密閉し、50℃で3日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールをNCO基/OH基のモル比1.0で混合し、ラジカル開始剤t−ブチルパーオキシネオデカノエート(日本油脂:商品名パーブチルND)0.6重量%を加えて混合し、減圧下で脱気操作を行い、硝子モールドとガスケットよりなる厚さ2.5mm直径80mmのモールド中に注入し、30℃から140℃まで徐々に昇温加熱し18時間で硬化させた。重合後、モールドから離型し得られた厚さ2.5mmの平板樹脂の黄色度を測定した。黄色度の測定はJIS K−7105に準じて行ったが測定面積は直径31mmの面積とした。結果を表に示す。
【0019】
【実施例2】
XDI、1kgを容器空間部が100mlとなるような内壁コート処理を施したスチール容器にいれ、液中に導入管を投入し酸素を通気して空間部を酸素で置換した後密閉し、50℃で3日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0020】
【実施例3】
XDI、1kgを容器空間部が100mlとなるような内壁コート処理を施したスチール容器にいれ、空間を酸素で置換後密閉し、60℃で2日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0021】
【実施例4】
XDI、1kgを容器空間部が100mlとなるような内壁コート処理を施したスチール容器にいれ、空間を酸素で置換後密閉し、30℃で15日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0022】
【実施例5】
XDI、1kgを容器空間部が100mlとなるような内壁コート処理を施したスチール容器にいれ、空間を酸素で置換後密閉し、5℃で50日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0023】
【実施例6】
BIC、20gを容器空間部が5mlとなるような硝子容器に入れ、空間を酸素で置換後密閉し、50℃で7日保存した。このBICとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0024】
【実施例7】
IPDI、20gを容器空間部が5mlとなるようなガラス容器に入れ、空間を空気で置換後密閉し、23℃で30日保存した。このIPDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0025】
【実施例8】
H12MDI、20gを容器空間部が5mlとなるようなガラス容器に入れ、空間を空気で置換後密閉し、23℃で30日保存した。このH12MDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0026】
【比較例1】
XDI、20gを容器空間部が5mlとなるような硝子容器にいれ、空間を窒素で置換後密閉し、50℃で3日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す
【0027】
【比較例2】
BIC、20gを容器空間部が5mlとなるような硝子容器に入れ、空間を窒素で置換後密閉し、50℃で7日保存した。このBICとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0028】
【比較例3】
IPDI、20gを容器空間部が5mlとなるようなガラス容器に入れ、空間を窒素で置換後密閉し、50℃で5日保存した。このIPDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0029】
【比較例4】
H12MDI、20gを容器空間部が5mlとなるようなガラス容器に入れ、空間を窒素で置換後密閉し、50℃で7日保存した。このH12MDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0030】
【比較例5】
XDI、20gを容器空間部が5mlとなるような硝子容器にいれ、空間を空気で置換後密閉し、5℃で100日保存した。このXDIとビニルベンジルチオエタノールを用いて実施例1と同様の検討を行った。結果を表に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003804689
Figure 0003804689
【0032】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によれば、ポリイソシアナート化合物を酸素存在下でかつ、室温付近で処理することにより、添加剤を必要とせず低コストで容易に着色の少ないウレタンまたはチオウレタン樹脂を製造することができる。

Claims (4)

  1. ポリイソシアナート化合物を容器にいれ、酸素を通気して空間部を酸素で置換した後密封し、温度0〜70℃で1〜100日保存処理する事を特徴とするポリイソシアナート化合物の処理法。
  2. 温度5〜60℃で処理する事を特徴とする請求項1記載のポリイソシアナート化合物の処理法。
  3. ポリイソシアナート化合物がジイソシアナート化合物である請求項1記載の処理法。
  4. 着色の少ないウレタンまたはチオウレタン構造を有する樹脂を製造するための請求項1記載のポリイソシアナート化合物の処理方法。
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