以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用された記録装置の全体構成を上面図によって示したものである。図1において符号1はキャリッジであり、キャリッジモータ3により駆動されるタイミングベルト2を介し、ガイド部材4に案内されて紙案内部材5の長手方向に往復移動されるように構成されている。キャリッジ1の記録用紙に対向する面には、第1の記録ヘッド7と第2の記録ヘッド8がキャリッジ1の移動方向に並べて搭載されている。
また、キャリッジ1の上面には第1および第2の記録ヘッド7,8にインクを供給するダンパー機能を備えたサブタンクユニット10,11が搭載されており、このサブタンクユニット10,11に対して図示しないインクカートリッジからインク供給チューブ9,9,9,……を介して各インクが供給されるように構成されている。
また、前記記録ヘッド7,8の移動経路上の非印字領域には、記録ヘッド7,8のノズル形成面、すなわちノズルプレートを封止するキャッピング手段としてのキャッピング装置12が配置されている。
このキャッピング装置12には、図2に示したようにキャリッジ1が非印刷領域に移動したときに、キャリッジ1の移動に追従して基台13に形成されたガイド面14を移動しながら上下方向に移動するスライダ15が具備され、このスライダ15に各記録ヘッド7,8を封止するキャップユニット16,17が配置されている。
キャップユニット16,17には、後述する吸引ポンプ(ポンプユニット)30におけるチューブ32,33の一端32a,33aにそれぞれ接続される吸引口18,19が形成されている。またキャップユニット16,17には、弁座部材20の大気連通口21,22に対してそれぞれ一端が接続されたチューブ25,26の他端が接続されている。
キャップユニット16,17が記録ヘッド7,8を封止できる位置まで移動したとき、弁座部材20が位置する領域には、バネ23により弁座部材側に常時付勢されて弁座部材20に弾接する弁部材24が配置されていて、弁座部材20と弁部材24とによりエアーバルブを構成している。
さらにキャッピング装置12の印刷領域側には、キャリッジ1の駆動に伴って移動する記録ヘッド7,8のノズルプレートに弾接してノズルプレートを払拭するワイピングブレード66を備えたクリーニングユニット65が配置されている。なお、このクリーニングユニット65におけるワイピングブレード66は、後述するポンプユニット30を駆動する駆動源の動力によって、記録ヘッド7,8の移動経路上に水平方向に進退可能となるように配置されている。
図3はポンプユニットの一実施例を分解斜視図で示したものである。基体を兼ねるポンプフレーム31は、この実施例では2つのキャップユニット16,17に負圧を同時に供給する関係上、2つのチューブポンプを構成するようにチューブ32,33の中央部をほぼ半円形状に形作らせるように支持するチューブ支持面34,35が形成されており、これらは互いに背中合わせにして一体に構成されている。
図示しない動力源としての紙送りモータによって駆動される輪列と噛み合う円筒外歯車を備えたポンプホイール40および41には、それぞれ中心部側から外周方向に向かって傾斜した支持溝42,43および44,45が形成されており、これら支持溝にそれぞれローラ36,37および38,39がそれぞれ回転可能に支持されている。そして、ポンプホイール40および41がポンプフレーム31内に配設されることにより、チューブ32,33の内側部に各ローラ36,37,38,39が配置された構成とされている。
この構成により、ポンプホイール40,41が一方向に回転された時、前記各ローラ36,37および38,39は、支持溝42,43および44,45を外側方向に移動してチューブ32,33をチューブ支持面34,35との間で圧接し、チューブに対してしごき作用を与える。したがって、各ローラ36,37および38,39の回転移動に伴って各チューブ32,33は吸引ポンプの機能を果たし、キャップユニット16,17に形成された吸引口18,19を介してキャップユニット16,17の内部空間に対して負圧を与えるように作用する。
また一方、ポンプホイール40,41が他方向に回転された場合には、各ローラ36,37および38,39はポンプホイール40,41に形成された支持溝42,43および44,45を内側方向に移動して各ローラ36,37および38,39によるチューブ32,33に対する圧接状態が解除され、リリース状態となる。
そして、前記各ポンプホイール40,41の中央軸の対向部分には、図4に示したようにポンプフレーム内で接合して回転方向に係合する係合部46,47が形成されている。
この場合、図5(A),(B)に示すように、各ポンプホイール40,41に具備されたローラ36,37および38,39による各チューブ32,33に対するしごき作用(圧接作用)が、各ポンプ毎にポンプホイールの回転方向に対して位相が約90度異なるように、前記係合部46,47による係合角度が調整されている。
そして、図3に示すように両側の支持板48,49に取り付けられた筒状のホルダ50,51により、各ポンプホイール40,41に回動可能となるように支持されている。これら支持板48,49は、前記ポンプフレーム31を中央にして図示しないねじにより一体に固定されてポンプユニット30を構成している。
このように構成されたポンプユニット30を構成するチューブ32,33の吐出口側は、図1に示すようにそれぞれ廃液吸収材60,62を収容した廃インクタンク61,63に連通されている。
以上のように構成された実施の形態において、記録装置への電源が投入されたり、また図示しないインクカートリッジが交換されて記録ヘッド7,8からのインクの強制的な排出や、インクの充填が必要となった場合には、キャリッジモータ3を駆動させて、記録ヘッド7,8をキャッピング装置12で封止可能な位置にキャリッジ1を移動させる。これによりキャップユニット16,17は記録ヘッド10,11に伴われながら基台13を移動して上昇し、記録ヘッド10,11を封止する。また、各キャップユニット16,17の大気連通口21,22が弁座部材20と共に移動して弁部材24に弾接して封止される。
この状態で前記紙送りモータを逆転駆動すると、ポンプユニット30のポンプホイール40,41の少なくとも一方が紙送りモータからの駆動力を受けて回転する。これにより、各ポンプホイール40,41に回転可能に取り付けられた前記ローラ36,37および38,39が90度の位相差を維持しながらチューブ32,33を圧接し、2つのキャップユニット16,17に同時に負圧を印加する。
これにより各記録ヘッド7,8は、負圧の作用を受けてノズル開口からインクをキャップユニット16,17内に排出する。所定量の吸引が終了した段階で、キャリッジ1を若干記録領域側に移動させて、記録ヘッド7,8をキャップユニット16,17で封止した状態を維持しながら、大気連通孔21,22を弁部材24から離れさせ、キャップユニット16,17を大気に開放する。
この状態で再びポンプユニット30を作動させると、記録ヘッド7,8からのインクの流出を伴うことなく、キャップユニット16,17に排出されたインクだけがそれぞれチューブ32,33に吸引され、個々の廃インクタンク61,63に排出される。
このように各チューブ32,33からのインクを独立の廃インクタンク61,63に排出するため、廃インクタンク61,63の廃液吸収材60,62の吸収能力を最大限に生かして、収容能力の向上を図ることができるばかりでなく、函体が傾けられた場合にでも水頭を小さく保って、廃液(インク)の漏れ出しを防止することができる。
前記した2本のチューブ32,33に対して負圧を作用させるローラ36,37および38,39は、圧接の開始および終了の位相差がほぼ90度の関係を維持するように作用するので、負荷が平均化され、駆動源としてのモータに大きな出力定格のものを必要とすることなく、かつ同時に吸引動作を実行して吸引時間を短縮させることができる。
ところで、記録ヘッド7,8に目詰まりが生じた場合などには、紙送りモータを逆転駆動させることにより、ワイピングブレード66を記録ヘッド7,8の走行領域に進出させることができる。この状態で図6(A)に示すように記録ヘッド7,8を一方の方向に移動させると、図6(B)に示すように、まず第1の記録ヘッド7に対してワイピングブレード66が弾接して、ノズル形成面に付着したインクカスや紙粉をインクKと共に掻取ることができる。
第1の記録ヘッド7のクリーニングが終了して、ワイピングブレード66が第1および第2の記録ヘッド7,8の間に位置した時点で、キャリッジモータ3を停止させることで、図6(C)に示す状態となる。これにより、図6(D)に示すように、弾性変形していたワイピングブレード66が元の状態に復帰する。
このように自己の弾性により復帰するに必要な時間、例えば0.5秒程度が経過した段階で、再びキャリッジモータ3を駆動してキャリッジ1を移動させると、図6(E)に示すように、ワイピングブレード66の先端領域のインクKが第2の記録ヘッド8の側面に当接して、ここでインクが掻取られ、続いて図6(F)に示すように、第2の記録ヘッド8のノズル形成面をワイピングする。これにより第1の記録ヘッド7のインクが第2の記録ヘッド8に付着させることなく、第2の記録ヘッド8のインクK′を確実に掻取ることができる。
なお、キャリッジ1を途中で停止させることなく、2つの記録ヘッド7,8を連続してクリーニング動作を実行させた場合には、第1の記録ヘッド7により弾性変形していたワイピングブレード66のインクKと、第2の記録ヘッド8の側面との接触面積が少なく、したがってワイピングブレード66に大量のインクが残留し、第2の記録ヘッド8に対するクリーニング効果が低下するのみならず、ワイピングブレード66の反発力により記録ヘッド8に対して大きな衝撃を与えるという問題を残すことになる。
したがって、前記したクリーニング方法を実行することで、第1および第2の記録ヘッド7,8に対する十分なクリーニング効果を与えることができ、また第2の記録ヘッド8に対して衝撃を与えることにより、例えばノズル開口に形成されたメニスカスを破壊するなどの問題を回避させることができる。
次に図7は、図3乃至図5に示された吸引ポンプ30を用いて、キャップユニット内に負圧を与える他の実施の形態を示したものである。図7に示す符号16は、1つのキャップユニットを断面状態で模式的に示したものであり、このキャップユニット16は、上面が開放された方形状のキャップケース16aと、キャップケース16a内に収納されたゴム素材などの可撓性物質よりなるキャップ部材16bとが具備され、キャップ部材16bはその上側縁がキャップケース16aよりも若干突出した状態に形成されている。
そして、キャップ部材16bの内底部には多孔質材料により形成されたインク吸収材16cが収納されており、このインク吸収材16cはキャップ部材16bに一体に形成された保持体16dにより保持されている。また、キャップケース16aの下底部には、キャップケース16aおよびキャップ部材16bをそれぞれ貫通するようにして2つの吸引口18A,18B並びに大気開放口16eが形成されている。
なお、図7に示す形態においては、2つの吸引口18A,18Bがキャップユニット16の長手方向に沿って併設された状態に描かれているが、この吸引口18A,18Bはキャップユニットの内底部における長手方向の一端部に、それぞれ紙面と垂直方向に重複する位置に形成されることが好ましく、しかも各吸引口18A,18Bは互いにできる限り近接して配置されることが望ましい。また前記大気開放口16eは、前記吸引口18A,18Bが形成されたキャップユニットの長手方向の一端部に対向するなるべく他端部に形成することが好ましい。
このように各吸引口および大気開放口を配置することで、キャップユニット内からインクを排出する場合において、キャップユニット内でのインクを一方向に整然と流すことができ、これにより、キャップユニット内からのインクの掃けを良好とすることができる。
一方、図7における符号7は、前記キャップユニット16によってノズル形成面が封止される一方の記録ヘッドを断面状態で示しており、前記したようにこの記録ヘット7は、キャップユニット16が上部に移動した時、ノズル形成面、すなわちノズルプレート7aが前記キャップユニット16によってキャッピングされるように構成されている。ノズルプレート7aにはノズル開口7bが形成されており、各ノズル開口7bに対応して配置された圧電振動子7cの作用によって各インクがノズル開口7bより吐出できるように構成されている。
前記キャップケース16aに形成された2つの吸引口18A,18Bには、それぞれチューブ32,33が接続されており、このチューブ32,33は、図3に示すように、そのままポンプユニット(チューブポンプ)の一部を構成している。そして一方のチューブ32によって構成されたポンプユニット30Aの排出側は、廃液吸収材60を収容した廃インクタンク61に連通されており、また、他方のチューブ33によって構成されたポンプユニット30Bの排出側は、廃液吸収材62を収容した廃インクタンク63に連通されている。
一方、前記キャップケース16aに形成された大気開放口16eにはチューブ25が接続されて、図2に示したように弁座部材20の大気連通口21に接続されてエアーバルブを構成している。
図7に示した構成によると、キャップケース16aに形成された2つの吸引口18A,18Bより、同一の駆動源からの動力を受けて同時に吸引動作を行なう2台の吸引ポンプ30A,30Bによってキャップユニット16の内部空間を負圧に吸引するようになされる。
これにより、記録ヘッド7における各ノズル開口7bからのインク吸引の立上がり特性を大幅に改善することができる。したがって、ポンプ駆動の直後において記録ヘッドからのインクの吸引流速を所定の速度とすることが可能であり、記録ヘッド内に侵入した気泡を素早く排出させることが可能となる。
このような作用により、結果としてインクの吸引処理に要する時間を短縮し、また少ないインクの吸引量により、記録ヘッド内から確実に気泡を排出させる効果を得ることができる。
なお、図7に示した実施の形態においては、1つのキャップユニットに対応して2台のチューブポンプを具備させているが、この場合、図1に示したように2つのキャップユニットを具備した構成においては、4台のチューブポンプが必要となる。しかしながら各チューブポンプの駆動軸を直列に接続構成することにより、比較的占有体積を増大させることなくこれを実現することができる。すなわち、チューブポンプの能力を高めるためにチューブの円弧状半径を増大させる場合に比較すると、ポンプ配置上の設計は遥かに楽であり、ポンプの吸引能力を高めつつ、装置全体の小形化に寄与することができる。
次に図8は、同様のポンプユニットを用いて、キャップユニット内に負圧を与える他の実施の形態を示したものである。なお、図8において図7に相当する部分は同一符号で示しており、したがって重複する説明は適宜省略する。
図8に示す実施の形態においては、キャップユニット16に形成された1つの吸引口18に対してチューブ71が接続され、このチューブ71の他端で吸引ポンプ30A,30Bを構成する各チューブ32,33に分岐するように構成されている。
なお、図8に示す構成においては、チューブ71より分岐された各チューブ32,33における吸引ポンプ30A,30Bの吸引側の長さは図面上においてほぼ同一に描かれている。この各長さの長短は吸引ポンプ30A,30Bの吸引能力を制御する手段として有効に利用することができる。すなわち、各長さが同一である場合においては、各吸引ポンプ30A,30Bの吸引能力は、ほぼ同程度に制御でき、この場合においては、それぞれの廃インクタンク61,63に収容される廃液吸収材60,62の大きさをほぼ同程度のものに設定することが望ましい。
また、前記各長さが異なるように設定した場合、例えば吸引側の一方のチューブ32の長さに対して、他方のチューブ33が長くなるように設定した場合には、チューブ32を用いる吸引ポンプ30Aの吸引能力を高く、チューブ33を用いる吸引ポンプ30Bの吸引能力を低く設定することができる。これに応じて廃インクタンク61並びにこれにに収容される廃液吸収材60の大きさを比較的大きく、また廃インクタンク63並びにこれに収容される廃液吸収材62の大きさを比較的小さく設定させることができ、各廃インクタンク61,63の配置設計の自由度を向上させることが可能である。
なお、前記各吸引ポンプ30A,30Bの吸引能力を制御手段する手段として、チューブ71より分岐された各チューブ32,33における互いの内径を異ならせるように構成する手段も採用し得る。この場合、内径が太い側の吸引ポンプにおいては、吸引時の抵抗を低下させることが可能であり、したがってそれに応じてポンプの吸引能力を高めることが可能となる。
次に図9は同様のポンプユニットを用いて、キャップユニット内に負圧を与える他の実施の形態を示したものである。この図9に示す構成においては、キャップユニット16に形成された吸引口18に対してチューブ72が接続され、またキャップユニット17に形成された吸引口19に対してチューブ73が接続されており、これらのチューブ72,73は吸引路を構成するチューブ74において1つに統合された統合部を構成している。そしてチューブ74の他端において吸引ポンプ30A,30Bを構成する各チューブ32,33に分岐するように構成されている。
この構成によると、図8に示した形態と同様に各チューブ32,33の長さ、または内径を互いに異ならせることで、各ポンプ30A,30Bの吸引能力を制御することができる。したがって、前記と同様に廃インクタンク61並びにこれに収容される廃液吸収材60の大きさ、また廃インクタンク63並びにこれに収容される廃液吸収材62の大きさをそれぞれ適切に設定することができる。
加えて、図9に示した構成によると、キャップユニット16に形成された吸引口18からチューブ74に至る接続チューブ72と、キャップユニット17に形成された吸引口19から同じくチューブ74に至る接続チューブ73とにおけるそれぞれの長さまたは内径を互いに異ならせることで、各キャップユニット16,17に対する吸引効率を制御することができる。
したがって、キャップユニット16または17において扱われる排インクの性質に応じて、キャップユニット16または17に対する吸引効率を設定することが可能となり、扱われるインクの性質に応じて、または記録ヘッドのノズル数に応じて、それぞれの吸引効率を合理的に設定することが可能となる。
例えば、増粘し易いインクを扱うキャップユニットにおいては、増粘し難いインクを扱うキャップユニットに比較して吸引効率を高めることが望ましく、この場合においては、増粘し易いインクを扱うキャップユニットに接続されるチューブをより短く構成するか、またはその内径がより太いチューブを用いることで、両者の吸引効率のバランスを適切にとることができる。
また、それぞれのキャップユニットによって、そのノズルプレートが封止される各記録ヘッドにおいて、ノズル数がより多い側の記録ヘッドに対して吸引効率を高めることが望ましく、ノズル数がより多い側の記録ヘッドを扱うキャップユニットに接続されるチューブをより短く構成するか、またはその内径がより太いチューブを用いることで、両者の吸引効率を適切に制御することができる。
次に図10は、図3乃至図5に示された吸引ポンプ30を用いて、キャップユニット内に負圧を与える他の実施の形態を示したものである。この図10に示す実施の形態は、前述した図8に示す実施の形態を基本構成としており、したがってそれぞれ同一部分は同一符号で示している。この図10に示す実施の形態においては、接続チューブの分岐部分から各吸引ポンプに至る間の少なくとも1つの吸引路に、当該吸引路を開閉することができるバルブ手段を配置したものである。
図に示すように、キャップユニット16に形成された1つの吸引口18に対して接続チューブ71が接続され、このチューブ71の他端で吸引ポンプ30A,30Bに接続される各チューブ32,33に分岐するように構成されている。この場合、接続チューブ71の分岐部分から各吸引ポンプ30A,30Bに至る間の吸引路、すなわち各チューブ32,33の中間部に、当該吸引路を開閉することができる後述するバルブ手段76Aがそれぞれ配置されている。なお、このバルブ手段に代えて当該吸引路の流路抵抗を可変することができる後述する流路抵抗可変手段76Bを配置してもよい。
このような構成とすることで、記録ヘッドから大量のインクを吸引する必要のない吸引動作モード(例えば後述するように、ユーザの操作により実行されるマニュアルクリーニング動作、または記録装置の休止期間に基づいて自動的になされるタイマークリーニング動作)においては、適宜バルブ手段76Aを閉弁させるか、または流路抵抗可変手段76Bにより、流路の絞り動作を実行させることにより、インクの排出量を制御することができる。これにより、廃インクタンクに送るインク量を抑制することができ、廃インクタンクのメンテナンスの期間を延ばすことができると共に、インクカートリッジのインクの浪費を低減させることに寄与できる。
したがって、図10に示す実施の形態のように、チューブ71の分岐部分から各吸引ポンプ30A,30Bに至る間の吸引路のそれぞれに、バルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bを必ずしも備える必要はなく、一方の吸引路のみにこれを配置するようにしてもよい。
図11は、同様の作用効果を得ることができる他の実施の形態を示したものである。この図11に示す実施の形態は、前述した図9に示す実施の形態を基本構成としており、したがってそれぞれ同一部分は同一符号で示している。この図11に示す実施の形態においても、同様に接続チューブ74の分岐部分から各吸引ポンプ30A,30Bに至る間の吸引路を構成する各チューブ32,33間に、当該吸引路を開閉することができるバルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bが配置されている。
この図11に示した実施の形態においても、前記した理由によりチューブ71の分岐部分から各吸引ポンプ30A,30Bに至る間の吸引路のそれぞれに、バルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bを必ずしも備える必要はなく、一方の吸引路のみにこれを配置するようにしてもよい。
図12および図13は、前記したバルブ手段76Aおよび流路抵抗可変手段76Bの基本構成の一例を示したものである。先ず図12に断面状態で示したバルブ手段76Aは、吸引路を構成するチューブ間に接続されており、両チューブに連通する通孔76bを備えたベース部材76aと、このベース部材76aに形成された軸孔に回動可能となるように配置された軸部材76cより構成されている。そして、軸部材76cにも通孔76dが形成されている。
したがって、軸部材76cを図示せぬアクチェータによりほぼ90度の範囲で回転駆動させることにより、図に示した閉弁状態、または通孔を一直線状に形成する開弁状態を選択することができる。
一方、図13に断面状態で示した流路抵抗可変手段76Bは、ベース部材76gに断面半円形状にくりぬかれた通孔76hが形成されており、この通孔76hの開口部には伸縮可能な弾性部材76iが、通孔76hに気密状態となるように取り付けられている。そして、前記弾性部材76iのほぼ中央部に、先端が半円柱状または半球状に形成された作動体76jが当接されるように構成されている。
したがって、前記した構成によると、流路抵抗可変手段76Bは弾性部材76iに対して作動体76jが図示せぬアクチェータの駆動力により当接し、その当接度合いによって弾性部材76iが通孔76h側に変形し、これにより吸引路の流路抵抗を可変することができる。
なお、前記ベース部材76gに形成された通孔76hの曲率と、作動体76jの先端部の曲率をほぼ同一(厳密には作動体76jの先端部の曲率を、変形した弾性部材76iの厚みに相当する寸法分減じた構成)とすることで、作動体76jが最も通孔76hに進入した状態で、吸引路を閉鎖状態とすることができる。
したがって、前記した構成によると、図12に示したバルブ手段76Aと同様な開閉弁作用をもたらすことができる。
次に、図14は前記したバルブ手段76Aまたは流路抵抗可変手段76Bを用いたさらに他の実施の形態を示したものである。この図14に示す実施の形態は、前述した図7に示す実施の形態を基本構成としており、したがってそれぞれ同一部分は同一符号で示している。この図14に示す実施の形態は、キャップユニットに形成された各吸引口から各吸引ポンプに至る少なくとも1つの吸引路に、当該吸引路を開閉することができるバルブ手段を配置したものである。
すなわち、図14に示す形態においては、キャップユニット16に形成された2つの吸引口18A,18Bと各ポンプユニット30A,30Bとを連結するチューブ32,33の間に、前記したバルブ手段76A(図12参照)がそれぞれ配置されている。またバルブ手段76Aに代えて、前記した流路抵抗可変手段76B(図13参照)を採用することもできる。
この構成によると、記録ヘッドから大量のインクを吸引する必要のない吸引動作モードにおいては、適宜バルブ手段76Aを閉弁させるか、または流路抵抗可変手段76Bにより、流路の絞り動作を実行させることにより、インクの排出量を制御することができる。これにより、廃インクタンクに送るインク量を抑制することができ、廃インクタンクのメンテナンスの期間を延ばすことができると共に、インクカートリッジのインクの浪費を低減させることに寄与できる。
したがって、図14に示す実施の形態のように、吸引路を構成するチューブ32,33の両者にそれぞれバルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bを必ずしも備える必要はなく、一方の吸引路のみにこれを配置するようにしてもよい。
また、図15は前記したバルブ手段76Aまたは流路抵抗可変手段76Bを用いたさらに他の実施の形態を示したものである。この図15に示す実施の形態は、前述した図9に示す実施の形態を基本構成としており、したがってそれぞれ同一部分は同一符号で示している。この図15に示す実施の形態は、第1および第2のキャップユニットに形成された各吸引口から統合部に至る少なくとも1つの吸引路に、当該吸引路を開閉することができるバルブ手段またはこれに代わる流路抵抗可変手段を配置したものである。
すなわち、図15に示す形態においては、第1のキャップユニット16の吸引口18からチューブ74により構成された統合部に至る間の吸引路(チューブ72)、および第2のキャップユニット17の吸引口19からチューブ74により構成された統合部に至る間の吸引路(チューブ73)に、それぞれそれぞれバルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bが配置されている。
この構成によると、第1と第2のキャップユニット16,17によって封止される各記録ヘッド7,8に与える負圧を、前記バルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bによって調整することができる。したがって、図15に示す実施の形態のように、吸引路を構成するチューブ72,73の両者にそれぞれバルブ手段76Aまたはこれに代わる流路抵抗可変手段76Bを必ずしも備える必要はなく、一方の吸引路のみにこれを配置するようにしてもよい。
この図15に示す構成によると、前記バルブ手段76Aまたは流路抵抗可変手段76Bは、ノズル数が少ないまたは増粘しにくいインクを扱う記録ヘッドを封止するキャップユニットの吸引路に配置させることで、他方のノズル数が多いまたは増粘し易いインクを扱う記録ヘッドに対して、大きな吸引流速を作用させることが可能となる。
図16は、前記した各吸引ポンプの吸引動作により、廃インクタンクに流入するインク量を計数して管理するようになした管理システムの一例をブロック図によって示したものである。なお図16において、すでに説明した記録ヘッド7,8、サブタンクユニット10,11、キャップユニット16,17、吸引ポンプ30A,30Bについては同一符号で示しており、したがってその説明は省略する。
図16において、符号80は印刷制御手段であり、この印刷制御手段80は図示せぬ記録装置のホストコンピュータからの印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段81により駆動信号を発生させて、記録ヘッド7,8からインク滴を吐出させるように機能する。ヘッド駆動手段81は、印刷データに基づく駆動信号の他に、フラッシング制御手段82からのフラッシング指令信号を受けてフラッシング操作のための駆動信号を記録ヘッド7,8に出力するようにも構成されている。
符号83はクリーニング制御手段であり、このクリーニング制御手段83からの指令によりポンプ駆動手段84が動作して、各吸引ポンプ30A,30Bが駆動制御されるように構成されている。またクリーニング制御手段83には印刷制御手段80、クリーニング指令検知手段(CL指令検知手段)85、およびクリーニングモード設定手段(CLモード設定手段)87よりクリーニング指令信号が供給されるように構成されている。
なお、クリーニング指令検知手段85には指令スイッチ86が接続されており、このスイッチ86をユーザが例えばプッシュオン操作することにより、前記指令検知手段85を動作させて、マニュアルによるヘッドクリーニング操作が実行されるように構成されている。
前記クリーニングモード設定手段87は、図示せぬ記録装置のホストコンピュータからの指令を受けてクリーニングモードが設定され、クリーニングモードに応じたクリーニング指令をクリーニング制御手段83に与えるように構成されている。このクリーニングモードは、例えば前記したタイマークリーニング動作の他に、記録装置に初めてインクを導入する初期充填動作、インクカートリッジが交換された場合に実行される交換クリーニング動作等が用意されている。
したがって、クリーニングモード設定手段87より、これらのクリーニングモードに応じて予め設定されたインクの吸引プログラムに基づく吸引指令がクリーニング制御手段83に与えられ、このクリーニング制御手段83は、前記ポンプ駆動手段84が動作させて、各吸引ポンプ30A,30Bによる吸引動作が実行されるようになされる。
符号88および89は第1と第2のバルブ制御手段であり、このバルブ制御手段88,89は、クリーニングモード設定手段87からの指令信号を受けて図12に示したバルブ手段76Aの図示せぬアクチェータを駆動して、これを開閉制御するように構成されている。またバルブ手段76Aに代えて図13に示した流路抵抗可変手段76Bの図示せぬアクチェータを駆動して、流路抵抗を制御するようにもなされる。
この2つのバルブ制御手段88,89は、図10または図11、および図14または図15に示されたそれぞれ一対のバルブ手段76Aまたは流路抵抗可変手段76Bを個別に開閉制御するように構成されており、したがって、バルブ手段76Aまたは流路抵抗可変手段76Bは、クリーニングモードに応じて予め設定されたプログラムに基づいて開閉制御がなされるように動作する。
一方、符号90および91は第1と第2のカウンタを示しており、前記した第1および第2のバルブ制御手段88,89の開閉動作に連動した吸引ポンプ30A,30Bによるインクの吸引量、すなわち各廃インクタンク61,63に流入するインク量を計数する動作がなされる。
そして、それぞれのカウンタ90および91は、各廃インクタンク61,63に流入する個別のインク量を、インクの吸引動作モードに応じて規定されたパラメータに応じて積算計数するように構成されている。
例えば、ユーザの操作により実行される前記したマニュアルクリーニング動作においては、インクの大量吸引、小量吸引1および小量吸引2などが順を追って実行されるが、前記大量吸引、小量吸引1および小量吸引2に応じて予め設定された計数値(パラメータ)がROM93より呼び出され、バルブ制御手段88,89の開閉動作に連動してそれぞれのカウンタ90および91において積算計数される。
この場合、図13に示したような流路抵抗可変手段76Bが用いられる場合には、バルブ制御手段88,89により設定される流路抵抗に対応した係数が、係数設定手段92より各カウンタ90,91にもたらされ、これにより各カウンタ90,91による計数値が補正されて積算計数される。したがって、各カウンタ90,91による計数値は、それぞれのクリーニングモードに応じて、またバルブ制御手段88,89の制御に応じて、各廃インクタンク61,63に流入する個別のインク量が積算管理される。
前記カウンタ90,91より、報知手段94に対してそれぞれの計数値が出力されるように構成されており、報知手段94は当該計数値が、それぞれの廃インクタンク61,63において管理される所定の閾値に達した場合には、その状態を表示するように構成されている。これによりユーザはいずれかの廃インクタンク61,63における廃液量が、所定値を越えていることを認識することができる。
また、カウンタ90,91より、駆動停止手段95に対してそれぞれの計数値が出力されるように構成されており、駆動停止手段95は当該計数値がそれぞれの廃インクタンク61,63において管理される所定の閾値に達した場合には、指令信号を発生して記録装置の使用が強制的に停止されるように動作する。これにより、廃インクタンク61または63における廃液がオーバフローして故障を誘発させるのを防止するように構成されている。
次に図17は、前記した構成によってなされる記録ヘッドからのインクの吸引排出処理の後にワイピングブレードにより第1および第2の記録ヘッドのノズル形成面に付着したインクを払拭する場合の好ましい形態を示したものである。すなわち、図17(a)に示すように、キャリッジ1に搭載された第1および第2の記録ヘッド7,8の間に、ワイピングブレード66が接触し得るスペース部材97が配置された構成とされる。
このスペース部材97は、好ましくは第1および第2の記録ヘッド7,8の各ノズル形成面と面一となるように両者の間に配置される。このように構成することにより、図17(a)に示すように、キャリッジ1が矢印方向に移動した場合に、ワイピングブレード66の先端部は、第1の記録ヘッド7のノズル形成面を払拭した後、スペース部材97に当接しつつ、第2の記録ヘッド8のノズル形成面を払拭するように作用する。したがって、この払拭の過程においては、ワイピングブレード66の変形状態は殆ど変化することはなく、安定したワイピング動作を可能とすることができる。
この場合、前記スペース部材97は、吸水性を有する素材により形成されていることが望ましい。スペース部材97として吸水性を有する素材により形成されることにより、第1の記録ヘッド7のノズル形成面より掻き取ったインクは、ワイピングブレード66からスペース部材97に吸収され、続くワイピングブレード66による第2の記録ヘッド8のノズル形成面からのインクの掻き取り作用を良好に成し得ることができる。
加えて、図17(b)に示すように第1および第2の記録ヘッド7,8のノズル形成面を封止するキャップユニット16,17の間に、記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において、キャリッジ1側の前記スペース部材97に接する吸水性を有する素材により形成された吸収部材98を配置することが望ましい。
このように構成することにより、ワイピングブレード66の変形状態は殆ど変化することはなく、安定したワイピング動作を可能とすることができる。また、キャリッジ1側に配置された前記スペース部材97によって吸引されたインクは、キャッピング装置12によるキャッピング状態において、スペース部材97からキャッピング装置12に配置された吸収部材98に逐次吸引される。したがって、キャリッジ1側に配置されたスペース部材97におけるインクの吸引蓄積量は適度の値に保つことができ、ワイピングブレード66からの安定したインクの吸引作用を保持させることができる。
なお、以上説明した実施の形態においては、同一の駆動源からの動力を受けて同時に吸引動作を行なう2台の吸引ポンプによって、キャップユニットに対して負圧を与えるように構成した場合を示しているが、これは同時に吸引動作を行なう3台以上の吸引ポンプを用いることもできる。