JP3802755B2 - タイヤ空気圧低下警報方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ空気圧低下警報方法および装置に関する。さらに詳しくは、悪路走行中においてもタイヤの空気圧の低下判定を行ない、安全走行を確保することができるタイヤ空気圧低下警報方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
雪道や砂利道などの悪路を走行中は、車輪速がスリップにより乱れるため、タイヤが正常内圧であるにもかかわらず、空気圧低下したと誤判定されてしまうことがある。それを防ぐため、従来の4輪の回転情報からタイヤの減圧を検出するタイヤ空気圧低下警報システム(DWS)では、悪路を走行中のデータをリジェクト(悪路リジェクト)するためのロジックを導入している。悪路を走行中は、スリップなどにより車輪速の変動が生じており、悪路リジェクトは、この変動率がある一定値以上になった場合に、悪路を走行中と判断してデータをリジェクトしている。
【0003】
たとえば悪路リジェクトとしては、前左タイヤ、前右タイヤ、後左タイヤおよび後右タイヤの回転速度をそれぞれV1(FL)、V2(FR)、V3(RL)およびV4(RR)とすると、
(左前後輪比)=V1(FL)/V3(RL)
(右前後輪比)=V2(FR)/V4(RR)
(前後輪比左右差)=(左前後輪比)−(右前後輪比)
悪路の判定値=|(前後輪比左右差)−(前回の前後輪比左右差)|
を1秒ごとに演算し、
(i)悪路の判定値≦良路のしきい値のとき
▲1▼普通の良路路面(悪路でない路面)カウンタを1つ増加させる。
▲2▼普通の良路路面カウンタが5になったら、普通の良路路面と判断する。
▲3▼頭打ちのため、普通の良路路面カウンタを4にし、前記手順▲1▼から始める。
(ii)良路のしきい値<悪路の判定値≦悪路のしきい値のとき
▲1▼普通の良路路面カウンタを0にする。
▲2▼悪路または良路の判定は、前回の判定を保持する。
(iii)悪路のしきい値<悪路の判定値のとき
▲1▼普通の良路路面カウンタを0にする。
▲2▼悪路と判断し、走行データをリジェクトする。
【0004】
その他のリジェクト条件としては、低速、コーナリング、横方向加速度(横G)、加速またはブレーキがある。これらのリジェクト条件に当てはまらなかった走行データのみが空気圧判定に使用される。このときの空気圧判定に用いる判定値の式は、
である。
【0005】
このように従来では、悪路走行中はデータがリジェクトされ、空気圧の判定を行なわない。
【0006】
このため、たとえば雪道や砂利道を長時間走行するような場合には、車輪速が乱れるために正しい空気圧判定ができないので、空気圧低下がかなり進行していても、警報を出すことができないため、ドライバーがパンクに気付かずにバーストに至ることが考えられる。
【0007】
本発明は、叙上の事情に鑑み、悪路走行中においてもタイヤの空気圧の低下判定を行ない、安全走行を確保することができるタイヤ空気圧低下警報方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明のタイヤ空気圧低下警報方法は、車両に装着した車輪から得られる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を検知してドライバーに警報するタイヤ空気圧低下警報方法であって、各タイヤの回転信号を検知する工程と、各タイヤの回転信号を演算して回転情報を記憶する工程と、複数の空気圧判定のしきい値を設定するとともに、該複数の空気圧判定のしきい値に合わせて悪路判定のしきい値を複数設定する工程と、各タイヤの回転情報から悪路を走行していると判定する工程と、各タイヤの回転情報から演算される判定値に基づいて、タイヤの空気圧の低下を判定する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明のタイヤ空気圧低下警報装置は、車両に装着した車輪から得られる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を検知してドライバーに警報するタイヤ空気圧低下警報装置であって、各タイヤの回転信号を検知する速度検出手段と、各タイヤの回転信号を演算して回転情報を記憶する情報記憶手段と、複数の空気圧判定のしきい値を設定するとともに、該複数の空気圧判定のしきい値に合わせて悪路判定のしきい値を複数設定するしきい値設定手段と、各タイヤの回転情報から悪路を走行していると判定する悪路判定手段と、各タイヤの回転情報から演算される判定値に基づいて、タイヤの空気圧の低下を判定する減圧判定手段とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明のタイヤ空気圧低下警報方法および装置を説明する。
【0013】
図1は本発明のタイヤ空気圧低下警報装置の一実施の形態を示すブロック図、図2は図1におけるタイヤ空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施の形態にかかわるタイヤ空気圧低下警報装置は、たとえば車両に備えられた4つのタイヤFL、FR、RLおよびRR(前左タイヤ、前右タイヤ、後左タイヤおよび後右タイヤ、以下、総称としてWiという)の空気圧が低下しているか否かを検出するもので、各タイヤWiにそれぞれ関連して設けられた通常の速度検出手段である車輪速センサ1を備えている。車輪速センサ1の出力は制御ユニット2に与えらえる。制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWiを知らせるための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された表示器3、およびドライバーによって操作することができる初期化スイッチ4が接続されている。
【0015】
制御ユニット2は、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェイス2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、該CPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行なう際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータなどが読み出されるRAM2dとから構成されている。
【0016】
本実施の形態では、各タイヤの回転信号を検知する車輪速センサ1と、各タイヤの回転信号を演算して回転情報を記憶する情報記憶手段と、複数の空気圧判定のしきい値を設定するとともに、該複数の空気圧判定のしきい値に合わせて悪路判定のしきい値を複数設定するしきい値設定手段と、各タイヤの回転情報から悪路を走行していると判定する悪路判定手段と、各タイヤの回転情報から演算される判定値に基づいて、タイヤの空気圧の低下を判定する減圧判定手段とを備えている。本実施の形態における、情報記憶手段、しきい値設定手段、悪路判定手段および減圧判定手段は、前記制御ユニット2に含まれている。なお、前記悪路とは、雪道または砂利道などの状態をいう。
【0017】
前記車輪速センサ1では、タイヤWiの回転数に対応した回転信号(以下、車輪速パルスという)が出力される。またCPU2bでは、車輪速センサ1から出力された車輪速パルスに基づき、所定のサンプリング周期ΔT(sec)、たとえばΔT=1秒ごとに各タイヤWiの回転角速度Fiが算出される。
【0018】
ここで、タイヤWiは、規格内でのばらつき(初期差異)が含まれて製造されるため、各タイヤWiの有効転がり半径(一回転により進んだ距離を2πで割った値)は、すべてのタイヤWiがたとえ正常内圧であっても、同一とは限らない。そのため、各タイヤWiの回転角速度Fiはばらつくことになる。そこで、初期差異によるばらつきを打ち消すために補正した回転角速度F1iを算出する。具体的には、
F11=F1
F12=mF2
F13=F3
F14=nF4
と補正される。前記補正係数m、nは、たとえば車両が直線走行していることを条件として回転角速度Fiを算出し、この算出された回転角速度Fiに基づいて、m=F1/F2、n=F3/F4として取得される。
【0019】
そして、前記F1iに基づき、車両の速度V(Vi/4)、スリップ率、横方向加速度(横G)などを算出する。
【0020】
前記悪路を走行していると判定する方法としては、前述の悪路の判定値=|(前後輪比左右差)−(前回の前後輪比左右差)|を用いて判定する方法や車輪速から求められる車両の左右おのおのスリップ率(前後輪比−1)の差の変化量が大きいときなどは悪路と判断する方法などがある。
【0021】
またタイヤWiの空気圧低下の検出のための減圧判定値(DEL)は、たとえば前輪タイヤと後輪タイヤとの2つの対角和の差を比較するものであって、対角線上にある一対の車輪からの信号の合計から対角線上にある他の一対の車輪からの信号の合計を引算し、その結果と2つの合計の平均値との比率として求められる。
【0022】
ここで、タイヤの内圧(空気圧)を正常内圧より30%減圧した1つのタイヤを装着した車両を通常の車両走行で走行試験を行ない、減圧判定値を算出すると、約0.18%である。この実験結果に基づいて、タイヤの部分的な減圧(8.3%)を下限値として、減圧判定値を算出すると、約0.05%であり、タイヤの完全な減圧(100%)を上限値として、減圧判定値を算出すると、約0.6%である。
【0023】
前述したようにDWSでは、基準内圧から約30%の空気圧低下を検知する性能をもっている。30%空気圧が低下したときの車輪速の変化率は、約0.18%であるため、悪路リジェクトのしきい値としては、厳しい値(リジェクトされる方向)を用いている。
【0024】
しかし、たとえば空気圧低下率50%程度で検知するようにすれば、悪路リジェクト条件を多少緩めても(リジェクトされにくい方向)、悪路走行によって多少判定値が乱れても、誤報になることはない。
【0025】
そこで、雪道や砂利道などの悪路を走行中は、悪路を走行中と判断されるときはデータを排除するが、その際のしきい値を複数の段階に設定し、通常使用する悪路判定のしきい値と、タイヤの空気圧低下率が大きいと判断されるときに使用する悪路判定のしきい値とに設定する。
【0026】
このように、空気圧判定値を複数設定(たとえば30%判定用判定値、40%判定用判定値など)し、それぞれについて悪路リジェクトのしきい値を設定することで、誤警報することなしに、空気圧判定の機会が増えるため、ドライバーの安全走行を確保することができる。すなわち、空気圧判定に使用する判定値を複数設定し、悪路判定に使用するしきい値も同数個設定する。
【0027】
したがって、悪路の走行の程度に合わせてわるいほど悪路判定のしきい値を大きくすることにより、従来、悪路と判定されてきてリジェクトされていたような路面状態でも、空気圧低下がかなり進行した場合には、リジェクトされずに空気圧判定に使用されることが高くなり、警報を出せる可能性が多くなる。
【0028】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
実施例および比較例
テスト車両として、排気量3000cm3のFF車について、車輪速をパソコンに取り込めるように設定し、表1のように設定したプログラムをパソコン上で計算できるようにした。車輪の回転速度のサンプリング時間は、1秒と設定した。
【0030】
【表1】
【0031】
ついで前記車両について、前左輪のタイヤを50%減圧し、テストコース内のアイスバーン路面を時速約30kmで走行した。
【0032】
空気圧の判定値(DEL)を用いて、n回、たとえば5回前のDEL値(DEL(n))の平均値DEL5およびこのDEL5のn回、たとえば12回前のDEL値(DEL5(n))の平均値DELAVをそれぞれつぎの式により算出したのち、このDELAVを用いて減圧判定を行なった。ここで、iは表1におけるa、b、cである。
【0033】
【0034】
また比較例として、空気圧の判定値(DEL)の1分間平均相当値(DELAV)の絶対値が0.1をこえたとき、約30%の空気圧低下が生じたと判断し、警報を発する。また、悪路判定しきい値としては、0.0035、良路判定しきい値としては0.001を設定し、前述した従来の悪路判定ロジックにより、悪路リジェクトを行なった。このときの計算式は、
である。
【0035】
実験の結果、本実施例では、走行中有効なデータが確保され、空気圧の低下による警報が出されたのに対し、比較例では、走行データがリジェクトされ、警報を発しなかった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、悪路走行中においてもタイヤの空気圧の低下判定を行ない、空気圧の低下による警報を発するので、ドライバーの安全走行を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ空気圧低下警報装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1におけるタイヤ空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 車輪速センサ
2 制御ユニット
3 表示器
4 初期化スイッチ
Claims (2)
- 車両に装着した車輪から得られる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を検知してドライバーに警報するタイヤ空気圧低下警報方法であって、各タイヤの回転信号を検知する工程と、各タイヤの回転信号を演算して回転情報を記憶する工程と、複数の空気圧判定のしきい値を設定するとともに、該複数の空気圧判定のしきい値に合わせて悪路判定のしきい値を複数設定する工程と、各タイヤの回転情報から悪路を走行していると判定する工程と、各タイヤの回転情報から演算される判定値に基づいて、タイヤの空気圧の低下を判定する工程を含むタイヤ空気圧低下警報方法。
- 車両に装着した車輪から得られる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を検知してドライバーに警報するタイヤ空気圧低下警報装置であって、各タイヤの回転信号を検知する速度検出手段と、各タイヤの回転信号を演算して回転情報を記憶する情報記憶手段と、複数の空気圧判定のしきい値を設定するとともに、該複数の空気圧判定のしきい値に合わせて悪路判定のしきい値を複数設定するしきい値設定手段と、各タイヤの回転情報から悪路を走行していると判定する悪路判定手段と、各タイヤの回転情報から演算される判定値に基づいて、タイヤの空気圧の低下を判定する減圧判定手段とを備えてなるタイヤ空気圧低下警報装置。
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