JP2004098787A - タイヤ空気圧低下検出方法および装置、ならびにタイヤ減圧判定のプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出方法であって、前記各タイヤの回転角速度Fiを検出する工程S1と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数K1,K2を算出する工程S2と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう工程S4と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数K3の算出を行なう工程と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう工程S7とを含んでいる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ空気圧低下検出方法および装置、ならびにタイヤ減圧判定のプログラムに関する。さらに詳しくは、初期化中の減圧検出を早期に、かつ高精度に行なうことができるタイヤ空気圧低下検出方法および装置、ならびにタイヤ減圧判定のプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両に装着された4輪タイヤの回転情報からタイヤの減圧を検出するタイヤ空気圧低下検出装置(DWS)がある。この装置は、タイヤが減圧すると正常内圧のタイヤより外径(タイヤの動荷重半径)が減少するため、他の正常なタイヤに比べると回転角速度が増加するという原理を用いている。たとえばタイヤの回転角速度の相対的な差から内圧低下を検出する方法では、判定値DELとして、
DEL={(F1+F4)/2−(F2+F3)/2}/{(F1+F2+F3+F4)/4}×100(%)
を用いている(特許文献1参照)。ここで、F1〜F4は、それぞれ前左タイヤ、前右タイヤ、後左タイヤおよび後右タイヤの回転角速度である。
【0003】
この判定値DELを計算し、さらにコーナリング補正など必要な補正や不要なデータのリジェクトを施し、予め設定したしきい値をこえたときにタイヤの減圧が発生していると判定している。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−305011号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる検出方法では、タイヤの製造ばらつきなどによる回転角速度の差を補償するため、正常な空気圧の状態で初期化を行ない、初期の回転角速度の違いを学習する必要がある。現状の初期化は、たとえば最低1.5時間程度の時間が必要である。この初期化終了までにパンクなどで減圧する可能性があるが、この初期化中は、タイヤの減圧を検出することができない。
【0006】
そこで、通常よりも大きなしきい値を設定して、初期化中でもある程度、タイヤの減圧を検出し、警報することができるようにすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、パンクの中でも、減圧が急激で、かつ大きければ初期化中でも減圧を検出することはできるが、減圧速度が遅い場合は警報が発せられないまま初期化が終了するという問題がある。
【0008】
本発明は、叙上の事情に鑑み、初期化中の減圧検出を早期に、かつ高精度に行なうことができるタイヤ空気圧低下検出方法および装置、ならびにタイヤ減圧判定のプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のタイヤ空気圧低下検出方法は、4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出方法であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する工程と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する工程と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう工程と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう工程と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のタイヤ空気圧低下検出方法は、4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出方法であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する工程と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう工程と、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう工程と、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のタイヤ空気圧低下検出装置は、4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出装置であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する回転情報検出手段と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のタイヤ空気圧低下検出装置は、4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出装置であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する回転情報検出手段と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段と、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とを備えてなることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明のタイヤ減圧判定のプログラムは、タイヤの空気圧低下を判定するためにコンピュータを、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のタイヤ減圧判定のプログラムは、タイヤの空気圧低下を判定するためにコンピュータを、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明のタイヤ空気圧低下検出方法および装置、ならびにタイヤ減圧判定のプログラムを説明する。
【0016】
実施の形態1
図1に示されるように、本実施の形態のタイヤ空気圧低下検出装置は、4輪車両に備えられた4つのタイヤFL、FR、RLおよびRR(以下、総称してWiという。ここで、i=1〜4、1:前左タイヤ、2:前右タイヤ、3:後左タイヤ、4:後右タイヤ)の空気圧が低下しているか否かを検出するもので、前記タイヤWiにそれぞれ関連して設けられた通常の回転情報検出手段1を備えている。
【0017】
前記回転情報検出手段1としては、電磁ピックアップなどを用いて回転パルスを発生させてパルスの数から回転情報である回転角速度を測定する車輪速センサまたはダイナモのように回転を利用して発電を行ない、この電圧から回転角速度を測定するものを含む角速度センサなどを用いることができる。前記回転情報検出手段1の出力はABSなどのコンピュータである制御ユニット2に与えられる。制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWiを知らせるための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された表示器3、およびドライバーによって操作することができる初期化スイッチ4が接続されている。
【0018】
この制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWiを知らせるための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された表示器3、ドライバーなどによって操作することができる初期化スイッチ4および警報器5が接続されている。
【0019】
前記制御ユニット2は、図2に示すように、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェイス2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、該CPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行なう際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータなどが読み出されるRAM2dとから構成されている。また、以下の説明では、対象車両がFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車であることを前提とする。
【0020】
前記回転情報検出手段1では、タイヤWiの回転数に対応したパルス信号(以下、車輪速パルスという)が出力される。またCPU2bでは、回転情報検出手段1から出力された車輪速パルスに基づき、所定のサンプリング周期ΔT(sec)、たとえばΔT=1秒ごとに各タイヤWiの回転角速度Fiが算出される。
【0021】
ここで、タイヤWiは、規格内でのばらつき(初期差異)が含まれて製造されるため、各タイヤWiの有効転がり半径(一回転により進んだ距離を2πで割った値)は、すべてのタイヤWiがたとえ正常空気圧であっても、同一とは限らない。そのため、各タイヤWiの回転角速度Fiはばらつくことになる。そこで、初期差異によるばらつきを打ち消すために補正した回転角速度F1iを算出する。具体的には、
F11=F1 ・・・(1)
F12=K1×F2 ・・・(2)
F13=K3×F3 ・・・(3)
F14=K2×K3×F4 ・・・(4)
と補正される。前記初期補正係数K1、K2は、車両が直線走行していることを条件として回転角速度Fiを算出し、この算出された回転角速度Fiに基づいて、左右輪比からK1=F1/F2(前輪左右タイヤFL、FR間の初期差異による有効ころがり半径の差を補正するための初期補正係数)、K2=F3/F4(K2は後輪左右タイヤRL、RR間の初期差異による有効ころがり半径の差を補正するための初期補正係数)として得られる。また、前記初期補正係数K3は、車両が駆動トルクおよび制動トルクが作用していないニュートラル走行(非駆動時走行)しているときには、駆動タイヤの各回転角速度にスリップの影響が及んでいないと考えることができるため、前後輪比からK3=(F1+F2)/(F3+F4)(前輪左右タイヤFL、FRと後輪左右タイヤRL、RRとのあいだの初期差異による有効ころがり半径の差を補正するための初期補正係数)として得られる。
【0022】
また、タイヤWiの空気圧低下の検出のための判定値DELは、たとえば前輪タイヤと後輪タイヤとの2つの対角和の差を比較するものであって、対角線上にある一対の車輪からの信号の合計から対角線上にある他の一対の車輪からの信号の合計を引算し、その結果と2つの合計の平均値との比率として求められる。
【0023】
DEL={(F11+F14)/2−(F12+F13)/2}/{(F11+F12+F13+F14)/4}×100(%) ・・・(5)
【0024】
通常、タイヤ空気圧低下検出装置の初期化では、車両が直進走行しているときの2つの左右輪比から初期補正係数K1、K2を求めるととともに、車両が非駆動時の1つの前後輪比から初期補正係数K3を求めている。前記初期補正係数K1、K2は、正常な空気圧の場合の判定値DELをゼロにするためのものであり、車輪速度から旋回半径や横方向加速度を精度よく計算するためのものでもある。一方、前記初期補正係数K3は、判定値DELをゼロにするためには不要であるが、判定値DELのコーナリング補正を行なうときに必要なスリップ率を計算するのに必要である。この初期補正係数K3は、非駆動時のデータが必要なので、限られた条件でしかデータを集められないため、求めるのに時間がかかる。
【0025】
そこで、本実施の形態では、図3に示されるように、回転角速度Fiを算出したのち、初期化で求めているファクターのうち、左右輪比から初期補正係数K1、K2の算出を行なう(ステップS1、S2)。そして、かかる初期補正係数K1、K2を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう(ステップS3、S4)。これにより、直進状態での減圧の検出を行ない、判定値DELが所定のしきい値をこえると、減圧と判定して警報を発する(ステップS8)。さらに前後輪比から初期補正係数K3の算出を行なう(ステップS5)。そして、かかる初期補正係数K3を算出した時点で、第2段階の初期化を終了する(ステップS6)。これにより、直進状態とともに、旋回時の減圧判定ができるようになる。
【0026】
そして、前記初期補正係数K1、K2、K3を用いて、通常の減圧判定を行ない(ステップS7)、判定値DELが所定のしきい値をこえると、減圧と判定して警報を発する(ステップS8)。
【0027】
このように、比較的、短時間(10〜15分程度)の走行で求まる初期補正係数K1、K2で、減圧の検出(ただし、初期補正係数K3が求まっていないので、旋回補正ができないから、直進のときだけ検出可能)をすれば、空気圧低下検出装置のシステムが機能していない時間が短くて済む。また、暫定的な減圧判定のときに用いられる初期補正係数K1、K2は、通常の減圧判定のときに用いられるため、暫定的な減圧判定に用いられるしきい値は、通常の減圧判定に用いられるしきい値と同じものを使うことができる。したがって、2段階の初期化処理を設けることにより、初期化中の減圧検出を早期に、かつ高精度に行なうことができる。
【0028】
本実施の形態は、前記各タイヤの回転角速度を検出する回転情報検出手段1と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とから構成されている。
【0029】
また、本実施の形態は、前記制御ユニット2を、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させる。
【0030】
なお、前記回転角速度Fiは、車両の速度(以下、車速という)、各タイヤWiの前後方向加速度、車両の旋回半径および車両の横方向加速度の大きさによっては誤差を含むことがあり、またフットブレーキが踏まれているときにも誤差を含むことがある。このため、算出された回転角速度Fiに誤差が含まれている可能性が高いか否かに基づいて、回転角速度Fiをリジェクトするか否かの判別処理を行ない、判定精度を向上させるのが好ましい。
【0031】
すなわち、車速が極低速である場合には、回転情報検出手段1の検出精度が著しくわるくなるので、算出される回転角速度Fiに誤差が含まれる可能性が高い。また、各タイヤWiの前後方向加速度が相対的に大きい場合およびフットブレーキが踏まれている場合には、たとえば車両が急加速/急減速することによるタイヤWiのスリップの影響が考えられるので、算出される回転角速度Fiに誤差が含まれる可能性が高い。さらに、車両の旋回半径が比較的小さい場合や車両の横方向加速度が比較的大きい場合には、タイヤWiが横すべりするおそれがあるから、算出される回転角速度Fiに誤差が含まれる可能性が高い。
【0032】
このように、回転角速度Fiに誤差が含まれている可能性が高い場合には、その回転角速度Fiを空気圧低下の検出に採用せずにリジェクトする方が好ましい。
【0033】
以下、本実施の形態のタイヤ空気圧低下検出装置の動作の一例として手順(1)〜(9)に沿って説明する。
【0034】
(1)回転情報検出手段1から出力される車輪速パルスに基づいて、各タイヤWiの回転角速度Fiを算出する。
【0035】
(2)ついで各タイヤWiの車輪速度Viに基づいて車速Vを算出する。各タイヤWiの車輪速度Viは、つぎの式(6)にしたがって算出する。ここに、rは、直線走行時における有効ころがり半径に相当する定数であり、ROM2cに記憶されている。
Vi=r×Fi ・・・(6)
この算出された各タイヤWiの車輪速度Viに基づき、車速Vがつぎの式(7)によって算出される。
V=(V1+V2+V3+V4)/4 ・・・(7)
【0036】
(3)ついで各タイヤWiの前後方向加速度FRAiを1周期前のサンプリング周期に算出された各タイヤWiの車輪速度をBViとすると、つぎの式(8)によって算出する。
FRAi=(Vi−BVi)/(ΔT×9.8) ・・・(8)
CPU2bは、これら算出された車速Vおよび各タイヤWiの前後方向加速度FRAiに基づいて、今回のサンプリング周期ΔTにおいて検出された回転角速度Fiをリジェクトするか否かを判別する。具体的には、つぎに示す▲1▼〜▲2▼の2つの条件のうち、いずれか1つでも満たされた場合には、回転角速度Fiをリジェクトする。
▲1▼V<Vth(たとえばVth=10(km/h))
▲2▼MAX{|FRAi|}>Ath(たとえばAth=0.1G)
【0037】
(4)回転角速度Fiをリジェクトしない場合、CPU2bは、さらに初期化処理を進めるが、該回転角速度Fiが初期差異以外の要因によってばらつくのは、前述した車速Vおよび各タイヤWiの前後方向加速度FRAiだけではなく、車両がコーナーを走行する際に車両に作用する横方向加速度もまた、一つの原因である。したがって、車両がコーナーを走行している場合には、今回のサンプリング周期ΔTにおいて検出された回転角速度Fiをリジェクトする必要がある。
【0038】
そこで、CPU2bは、車両が直線走行をしているか否かを判別する。さらに具体的には、まず、車速Vおよび車両の旋回半径Rrに基づいて車両の横方向加速度LAをつぎの式(9)に基づいて算出する。
【0039】
LA=V2/(Rr×9.8) ・・・(9)
【0040】
(5)ついでこの算出された車両の横方向加速度LAが予め定める許容範囲ΔGに収まるか否かを判別する。車両の横方向加速度LAが許容範囲ΔGに収まらなければ、車両は直線走行をしていないと考えることができるから、この初期化処理を一旦終了させる。車両の横方向加速度LAが許容範囲ΔGに収まれば、車両は直線走行をしていると考えられるから、初期補正係数K1、K2の演算を開始する。
【0041】
なお、ここで、初期補正係数K3の演算を開始しないのは、初期補正係数K3は、初期補正係数K1、K2と異なり、前後のタイヤ間の回転角速度比に基づいて求められるからである。すなわち、車両が直線走行をしている場合であっても、車両の駆動時および制動時には、駆動タイヤがスリップするおそれがあり、この場合にはそのスリップの影響が前後のタイヤの回転角速度比に及ぶからである。
【0042】
(6)ついでCPU2bは、今回のサンプリング周期ΔTにおいて検出された前左右タイヤFL、FRの回転角速度F1、F2を、つぎの式(10)および(11)に示すように、制御ユニット2のバッファに記憶されている従前の初期化処理において得られた累積加算値BF1、BF2に加算し、新たな累積加算値BF1、BF2を得る。同様に、後左右タイヤRL、RRの回転角速度F3、F4をつぎの式(12)および式(14)に示すように、制御ユニット2の他のバッファに記憶されている従前の初期化処理において得られた累積加算値BF3、BF4に加算し、新たな累積加算値BF3、BF4を得る。
【0043】
BF1=BF1+F1 ・・・(10)
BF2=BF2+F2 ・・・(11)
BF3=BF3+F3 ・・・(12)
BF4=BF4+F4 ・・・(13)
【0044】
そして、求められた累積加算値BF1、BF2およびBF3、BF4に基づいて、初期補正係数K1、K2をつぎの式(14)および式(15)から求める。この初期補正係数K1、K2は不揮発性メモリ(EEPROM)に格納する。
【0045】
K1=BF1/BF2 ・・・(14)
K2=BF3/BF4 ・・・(15)
【0046】
(7)前記手順(6)により初期補正係数K1、K2が求められた時点で、第1段階の初期化を終了する。そして、かかる初期補正係数K1、K2を用いて、初期化中の暫定的な減圧判定を行なう。
【0047】
具体的には、初期補正係数K1、K2を用いて、補正後の車輪速度Vr1、Vr2、Vr3、Vr4は、補正前の車輪速度をVr1´、Vr2´、Vr3´、Vr4´とすると、
V11=Vr1´
V12=K1×Vr2´
V13=Vr3´
V14=K2×Vr4´
で表される。
【0048】
ついで加減速度や、旋回半径、横方向加速度などで可能なリジェクトを行なう。なお、旋回半径Rrおよび横方向加速度LGは後述する式(23)および式(24)から計算される。とくに横方向加速度LGについては、−0.05G<LG<+0.05Gのようにきびしいリジェクトを行ない旋回中のデータを取り除く。ついで前記式(5)を用いて判定値DELを計算し、該判定値DELがしきい値をこえたときに減圧したと判断する。
【0049】
(8)ついでさらに初期化処理を進めてCPU2bは、初期補正係数K3を求めるために、車両が非駆動時の走行であるか否かを判別する。具体的には、各タイヤWiの前後方向加速度FRAiに基づいて、つぎの式(16)にしたがって車両の前後方向加速度FRAを求め、この求められた車両の前後方向加速度FRAが予め定めるニュートラル範囲ΔA(たとえばΔA=−0.01〜−0.05)に収まるか否かを判別する。
【0050】
FRA=(FRA1+FRA2+FRA3+FRA4) ・・・(16)
車両が非駆動時の走行をしていなければ、駆動タイヤFL、FRの各回転角速度F1、F2にスリップの影響が及んでいると考えることができるから、この処理化処理を一旦終了させる。逆に、車両が非駆動時の走行をしていれば、駆動タイヤFL、FRの各回転角速度F1、F2にスリップの影響が及んでいないと考えることができるから、初期補正係数K3の演算を開始する。
【0051】
すなわち、CPU2bは、前左右タイヤFL、FRの各回転角速度F1、F2の合計値(F1+F2)をつぎの式(17)に示されるように、バッファに記憶されている従前からの累積加算値BFfに加算し、新たな累積加算値BFfを得る。また、後左右タイヤRL、RRの各回転角速度F3、F4の合計値(F3+F4)をつぎの式(18)に示されるように、バッファに記憶されている累積加算値BFbに加算し、新たな累積加算値BFbを得る。
BFf=BEf+(F1+F2) ・・・(17)
BFb=BFb+(F3+F4) ・・・(18)
【0052】
そして、つぎの式(19)に示されるように、各累積加算値BFfおよびBFbの比を求める。これにより、初期補正係数K3が得られる。
K3=BFf/BFb ・・・(19)
【0053】
なお、そののち、初期補正係数K1〜K3の演算回数を記録するための初期化カウンタのカウント値を1だけインクリメントし、当該カウント値が上限値に達したか否かを判別したのち、カウント値が上限値に達すれば、最終的な初期補正係数K1〜K3が求められたとすることもできる。そして、イグニッションスイッチオフ後も当該初期補正係数K1〜K3を残しておくために、当該初期補正係数K1〜K3を不揮発生メモリ(EEPROM2e)に格納する。
【0054】
(9)つぎに通常の減圧判定を行なう。
【0055】
これまでの手順により初期化処理において求められる初期補正係数K1〜K3を用いて回転角速度Fiを前記式(1)〜(4)にしたがって補正し、新たな回転角速度F1iを求める。
【0056】
ところで、車両の速度が極低速である場合、各タイヤWiの前後方向加速度が比較的大きい場合、車両の旋回半径が比較的小さい場合、および車両の横方向加速度が比較的大きい場合には、回転角速度F1iに誤差が含まれる。この場合、当該回転角速度F1iは、各タイヤWiの空気圧を忠実に表していないから、空気圧低下判定に用いずに、リジェクトする必要がある。
【0057】
CPU2bは、補正後の回転角速度F1iに基づいて、つぎの式(20)にしたがって各タイヤWiの車輪速度Vriを算出し、この算出された車輪速度Vriに基づいて、つぎの式(21)にしたがって車速Vrを算出する。
Vri=r×F1i ・・・(20)
Vr=(F11+F12+F13+F14)/4 ・・・(21)
【0058】
また、CPU2bは、車速Vrおよび1回前のサンプリング周期ΔTにおいて算出された車速BVriに基づいて、つぎの式(22)にしたがって各タイヤWiの前後方向加速度FRAriを算出する。
FRAri=(Vri―BVri)/(ΔT×9.8) ・・・(22)
【0059】
さらに、CPU2bは、車速Vrに基づいて、つぎの式(23)にしたがって車両の旋回半径Rrを算出する。式(23)において、Twはトレッド幅(左右輪間の距離)である。
Rr=(Tw/2)×(Vr4+Vr3)/(Vr4−Vr3)・・・(23)
【0060】
また、CPU2bは、車速Vrに基づいて、つぎの式(24)にしたがって車両の横方向加速度LArを算出する。
LAr=Vr2/(Rr×9.8) ・・・(24)
【0061】
CPU2bは、これら算出された車両の速度Vr、各タイヤWiの前後方向加速度FRAri、車両の旋回半径Rrおよび車両の横方向加速度LArに基づいて、今回のサンプリング周期ΔTにおいて算出された回転角速度F1iをリジェクトするか否かを判別する。すなわちつぎの▲1▼〜▲4▼の4つの条件のうち、いずれか1つでも該当した場合には、回転角速度F1iをリジェクトする。
▲1▼Vr<Vth
▲2▼MAX{|FRAri|}>Ath
▲3▼|Rr|<Rth(たとえばRth=30(m))
▲4▼|LAr|>Gth(たとえばGth=0.4(g))
【0062】
回転角速度F1iをリジェクトしない場合には、当該回転角速度F1iに基づいて、判定値DELを前記式(5)にしたがって算出する。
【0063】
ついでこの算出された判定値DELに基づいて、空気圧が低下しているタイヤWiがあるか否かを判別する。具体的には、判定値DELがつぎの式(25)を満足するか否かを判別する。ただし、つぎの式(25)において、Dth1=Dth2=0.1である。
DEL<−Dth1またはDEL>Dth2 ・・・(25)
【0064】
判定値DELがこの式を満足する場合には、いずれかのタイヤの空気圧が低下していると判定し、警報を発生する。また、判定値DELがこの式を満足しない場合には、タイヤWiの空気圧はすべて正常内圧であると判定し、減圧判定処理を終了する。
【0065】
実施の形態2
前記実施の形態では、初期補正係数K3は、初期補正係数K1、K2を求めたのちに続いて計算しているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、減圧判定までの時間を短縮するために、初期補正係数K1、K2を求めている最中でも条件に適合したデータが得られれば、初期補正係数K3を計算することができる。したがって、走行中に従来の初期化と初期補正係数K1、K2のみを求める初期化を並行することもできる。
【0066】
このため、本実施の形態は、前記回転情報検出手段1と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段と、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とから構成することができる。そして、前記制御ユニット2を、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、暫定減圧判定により、直進状態の減圧判定を行なうことができるため、市街地のように直進を多く含んだ走行での減圧の検出を早期に、かつ高精度に行なうことができるとともに、システムの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ空気圧低下検出装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1のタイヤ空気圧低下検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明のフローチャートの一例である。
【符号の説明】
1 回転情報検出手段
2 制御ユニット
3 報表示器
4 初期化スイッチ
5 警報器
Claims (6)
- 4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出方法であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する工程と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する工程と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう工程と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう工程と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう工程とを含むタイヤ空気圧低下検出方法。
- 4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出方法であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する工程と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう工程と、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう工程と、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう工程とを含むタイヤ空気圧低下検出方法。
- 4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出装置であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する回転情報検出手段と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段と、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とを備えてなるタイヤ空気圧低下検出装置。
- 4輪車両に装着したタイヤから得られる回転情報に基づいてタイヤ空気圧の低下を検出するタイヤ空気圧低下検出装置であって、前記各タイヤの回転角速度を検出する回転情報検出手段と、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段と、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段と、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段とを備えてなるタイヤ空気圧低下検出装置。
- タイヤの空気圧低下を判定するためにコンピュータを、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数を算出する第1演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第1段階の初期化を終了し、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記各タイヤの回転角速度のうち、前後輪比の初期補正係数の算出を行なう第2演算手段、該初期補正係数を算出した時点で、第2段階の初期化を終了し、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させるためのタイヤ減圧判定のプログラム。
- タイヤの空気圧低下を判定するためにコンピュータを、各タイヤの回転角速度のうち、左右輪比の初期補正係数の算出と前後輪比の初期補正係数の算出を行なう演算手段、前記左右輪比の初期補正係数を算出した時点で、暫定的な減圧判定を行なう暫定減圧判定手段、前記左右輪比の初期補正係数と前後輪比の初期補正係数を用いて、通常の減圧判定を行なう通常減圧判定手段として機能させるためのタイヤ減圧判定のプログラム。
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