JP3802709B2 - 自動二輪車のブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,自動二輪車のブレーキ装置に関し,特に,同一の車輪を制動する車輪ブレーキ手段に,それぞれ油圧を供給されると該車輪ブレーキ手段を作動し得る1次ホイールシリンダ及び2次ホイールシリンダを備えたものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,この種のブレーキ装置として,例えば特公昭62−25550号公報に開示されているように,前輪の左右両側に第1及び第2ディスクブレーキを配設し,第1ディスクブレーキのホイールシリンダに操縦者により操作されて油圧を発生する1次マスタシリンダの出力ポートを接続し,第1ディスクブレーキの作動に伴いそれが前輪から受ける回転トルクにより作動される2次マスタシリンダをフロントフォークに取付け,この2次マスタシリンダの出力ポートを第2ディスクブレーキのホイールシリンダに接続したものが既に知られている。このブレーキ装置によれば,1次マスタシリンダの出力油圧による第1ディスクブレーキの作動時,前輪の回転トルクを利用して,2次マスタシリンダを作動させ,その出力油圧によって第2ディスクブレーキを作動させるので,1次マスタシリンダに対する比較的小さい操作力をもって大なる制動力を発揮することができ,制動を軽快に行うことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,従来の上記ブレーキ装置では,車輪の回転トルクにより作動される2次マスタシリンダは,その機能上,車輪の近傍に設置することを余儀なくされるため,2次マスタシリンダにより自動二輪車のばね下荷重を増加させ,その乗り心地を多少と害することになる。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,自動二輪車のばね下荷重を増加させることなく,車輪を軽快に制動し得るようにした,自動二輪車のブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,同一の車輪を制動する車輪ブレーキ手段に,それぞれ油圧を供給されると該車輪ブレーキ手段を作動し得る1次ホイールシリンダ及び2次ホイールシリンダを備えた,自動二輪車のブレーキ装置において,操縦者により操作される同一のマスタシリンダに,その出力油圧を取り出す第1及び第2油圧導管を接続し,その第1油圧導管を前記1次ホイールシリンダに接続する一方,前記第2油圧導管を比例増圧弁に接続し,この比例増圧弁は,前記第2油圧導管を通して受けるマスタシリンダの出力油圧に比例した倍力油圧を,油圧ポンプを含む油圧源から倍力油圧室に引き出すように構成され,この比例増圧弁の倍力油圧室を第3油圧導管を介して前記2次ホイールシリンダに接続したことを第1の特徴とする。
【0006】
この第1の特徴によれば,マスタシリンダの作動時には,その出力油圧が第1油圧導管を介して1次ホイールシリンダに供給されると共に,第2油圧導管を介して比例増圧弁に供給される。すると比例増圧弁では,マスタシリンダの出力油圧に比例した倍力油圧を油圧源から倍力油圧室に引き出すので,その倍力油圧が第3油圧導管を介して2次ホイールシリンダに供給される。したがって,操縦者は,同一のマスタシリンダを比較的小さい操作力をもって作動することにより,同一の車輪を強力に制動することができる。
【0007】
しかも,車輪ブレーキ手段に倍力油圧を与えるための油圧源及び比例増圧弁は,自動二輪車の懸架ばねより上方のフロントフォーク上部やボディフレームに自由に設置することが可能であるから,そのような設置により,自動二輪車のばね下荷重の増加を抑え,良好な乗り心を維持することができる。
【0008】
また,同一のマスタシリンダのみの作動中,万一,油圧源に失陥が生じて,比例増圧弁が出力不能となっても,マスタシリンダの出力油圧は,第1油圧導管を通して1次ホイールシリンダへの供給は可能であるから,車輪ブレーキ手段の通常作動を得て,フェールセーフを確保することができる。
【0009】
また,本発明は,上記特徴に加えて,車輪ブレーキ手段を,同一の車輪の少なくとも一側に配設したディスクブレーキで構成し,そのキャリパに1次及び2次ホイールシリンダを併設したことを第2の特徴とする。
【0010】
この第2の特徴によれば,車輪ブレーキ手段の構成簡素化を図ることができる。
【0011】
さらに,本発明は,第1の特徴に加えて,車輪ブレーキ手段を,同一の車輪の両側に配設した第1及び第2ディスクブレーキにより構成して,第1ディスクブレーキのホイールシリンダを1次ホイールシリンダとし,第2ディスクブレーキのホイールシリンダを2次ホイールシリンダとしたことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特徴によれば,同一の車輪の制動効果を高めることができる。
【0013】
【実施例の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施例を示す,自動二輪車のブレーキ装置の,要部を縦断した全体系統図,図2は同ブレーキ装置の制動力特性線図,図3は本発明の第2実施例を示す,図1と同様な全体系統図である。
【0015】
先ず,本発明の第1実施例の説明より始める。図1において,自動二輪車の操向ハンドルHにブレーキレバー1によって操作されるマスタシリンダMが取付けられる。また自動二輪車のフロントフォーク(図示せず)には,車輪としての前輪Wfが軸支され,それは車輪ブレーキ手段Bによって制動されるようになっている。この車輪ブレーキ手段Bは,前輪Wfの少なくとも一側に配設されるディスクブレーキで構成される。即ち,車輪ブレーキ手段Bは,前輪Wfのハブの一側に固着されるブレーキディスク2と,このブレーキディスク2の両側面に対向して配設される左右一対の摩擦パッド3a,3bと,これら摩擦パッド3a,3bを挟んでブレーキディスク2を跨ぐブレーキキャリパ4とを備えており,そのブレーキキャリパ4は,前記フロントフォークに左右方向摺動可能に取付けられ,摩擦パッド3a,3bは,このブレーキキャリパ4又はフロントフォークに固着されるブラケットに支持される。
【0016】
ブレーキキャリパ4には,一方の摩擦パッド3bの背面に対向する3本のピストン51 ,52 ,51 を摺動可能に収容する3本のホイールシリンダ61 ,62 ,61 が併設され,両側のホイールシリンダ61 ,61 は,互いに連通した1次ホイールシリンダとされ,この1次ホイールシリンダ61 ,61 には,前記マスタシリンダMの出力ポートMaが油圧導管L1 を介して接続される。
【0017】
また中央のホイールシリンダ62 は,1次ホイールシリンダ61 ,61 から独立した2次ホイールシリンダ62 とされ,この2次ホイールシリンダ62 には,前記マスタシリンダMの出力油圧に応動して,それより高い油圧を油圧源7から引き出す比例増圧弁Vが油圧導管L3 を介して接続される。
【0018】
前記油圧源7は,電動モータ8により駆動されて,リザーバ10から作動油を吸入する油圧ポンプ9と,この油圧ポンプ9の吐出油圧を蓄圧するアキュムレータ11とからなっている。このアキュムレータ11の油圧は油圧センサ12により検知され,その検知油圧が下限値以下になると油圧ポンプ9を作動し,上限値以上になると油圧ポンプ9の作動を停止するようになっている。
【0019】
前記比例増圧弁Vは,ケーシング13と,その一端に隔壁板14を挟んで接合されるキャップ15と,ケーシング13の他端に接合される蓋板16とを備える。キャップ15は,隔壁板14で開口面を閉鎖される有底のシリンダ孔17を有しており,それに摺動自在に嵌装される制御ピストン18により,該シリンダ孔17内は,隔壁板14側の大気圧室19と,それと反対側の制御油圧室20とに区画され,その制御油圧室20に前記マスタシリンダMの出力ポートMaが油圧導管L2 を介して接続される。
【0020】
ケーシング13は,隔壁板14で開口面を閉鎖される有底のシリンダ孔21を有しており,それに弁ピストン22が摺動自在に嵌装されると共に,該ピストン22を隔壁板14に向けて付勢する戻しばね23が収容される。
【0021】
隔壁板14には,その中心部に透孔24が穿設される一方,制御ピストン18には,上記透孔24を貫通して,弁ピストン22の端面に当接する小軸18sが突設され,この小軸18sを介して制御ピストン18は弁ピストン22を押動することができる。
【0022】
弁ピストン22には,その両端面間を連通する通孔25と,隔壁板14との対向面で通孔25を前記透孔24に連通する溝26とが設けられ,これらによって,ケーシング13のシリンダ孔21内各部は前記大気圧室19と連通される。このシリンダ孔21又は大気圧室19に戻し油路L6 が接続され,この戻し油路L6 の下流端は,前記リザーバ10及び油圧ポンプ9間の吸入通路L4 に接続される。
【0023】
またケーシング13には,それと一体の隔壁13wを挟んで前記シリンダ孔21と軸方向に並び且つ蓋板16で開口面を閉鎖される有底の装着孔28が設けられており,それに弁ハウジング29が固定的に装着され,それにより装着孔28の底部に倍力油圧室30が画成され,この倍力油圧室30が油圧導管L3 を介して前記2次ホイールシリンダ62 に接続される。前記弁ピストン22には,隔壁13wを油密且つ摺動自在に貫通して先端を倍力油圧室30に臨ませる反力ピストン31が一体に形成される。この反力ピストン31は,前記制御ピストン18より充分に小径とされる。
【0024】
弁ハウジング29には,アキュムレータ11及び倍力油圧室30間の油路を開閉する入口弁33が設けられる。即ち,入口弁33は,アキュムレータ11から延出する高圧油路L5 が接続される弁室35と,この弁室35を前記倍力油圧室30に連通する弁孔36と,弁室35に収容されて,弁孔36を閉じるべくばね付勢されるチェック弁37と,弁孔36を緩く貫通してチェック弁37に対向する開弁棒38とから構成され,この開弁棒38は,前記反力ピストン31により押動されるとチェック弁37を開くようになっている。
【0025】
また弁ピストン22には,倍力油圧室30と弁ピストン22の溝26との間の油路を開閉する出口弁40が設けられる。即ち,出口弁40は,反力ピストン31の通孔41を介して倍力油圧室30に連通する弁室42と,この弁室42を弁ピストン22の溝26に連通する弁孔43と,弁室42に収容されて,弁孔43を閉じるべくばね付勢されるチェック弁44と,弁孔43を緩く貫通してチェック弁44に対向する開弁棒45とから構成され,この開弁棒45は,弁ピストン22の後退時,隔壁板14により押動されるとチェック弁44を開くようになっている。
【0026】
前記油圧源7及び比例増圧弁Vは,何れも自動二輪車の,懸架ばねより上方のフロントフォーク上部もしくはボディフレームに取付けられる。
【0027】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0028】
いま,前輪Wfを制動すべく,ブレーキレバー1を操作してマスタシリンダMを作動すると,その出力油圧は,油圧導管L1 ,L2 に別れてブレーキキャリパ4の1次ホイールシリンダ61 ,61 と,比例増圧弁Vの制御油圧室20に供給される。そして1次ホイールシリンダ61 ,61 に供給された油圧は,1次ピストン51 ,51 に推力を付与するので,この1次ピストン51 ,51 の前進と,その反力によるブレーキキャリパ4の,1次ピストン51 ,51 と反対方向への移動とにより両摩擦パッド3a,3bをブレーキディスク2の両側面に圧接させるので,前輪Wfに制動力が加えられる。
【0029】
一方,比例増圧弁Vの制御油圧室20に供給された油圧は制御ピストン18に推力を与える。その推力が戻しばね23のセット荷重により規定される所定値以上になると,制御ピストン18は戻しばね23を圧縮させつゝ弁ピストン22と共に前進するので,出口弁40では,開弁棒45が隔壁板14から解放されることからチェック弁44が閉じ,続いて,弁ピストン22の前進により反力ピストン31が入口弁33の開弁棒38を押動するので,チェック弁37を開く。すると,アキュムレータ11の油圧が入口弁33を通って,倍力油圧室30に伝達する。その油圧は反力ピストン31の端面に作用して反力を及ぼし,その反力は,弁ピストン22及び制御ピストン18を後退方向へ付勢する。その結果,その反力が,制御油圧室20の油圧による制御ピストン18の押圧力より大となると,両ピストン18,22は後退して,入口弁33を閉弁すると共に,出口弁40を開弁し,これによりアキュムレータ11から倍力油圧室30への油圧の供給を遮断すると共に,倍力油圧室30から大気圧室19側へ油圧をリークさせる。そして制御油圧室20の油圧による制御ピストン18の押圧力が上記反力と釣り合うと,入口弁33及び出口40は共に閉弁して,倍力油圧室30の油圧を保持する。また制御油圧室20の油圧による制御ピストン18の押圧力が上記反力を上回ると,再び両ピストン18,22が前進して,出口弁40を閉弁すると共に,入口弁33を開弁するので,アキュムレータ11から倍力油圧室30への油圧の供給が再開される。このような作用の繰返により,倍力油圧室30の油圧は,制御油圧室20の油圧,即ちマスタシリンダMの出力油圧に比例して増圧制御される。
【0030】
このように制御される倍力油圧室30の油圧は,油圧導管L3 を経て前記ブレーキキャリパ4の2次ホイールシリンダ62 に供給され,2次ピストン52 に推力を付与するので,両摩擦パッド3a,3bのブレーキディスク2に対する圧接力,即ち前輪Wfの制動力をマスタシリンダMの出力油圧に応じて増強することができる。
【0031】
而して,倍力油圧室30の油圧は反力ピストン31に反力を与え続け,それは油圧的にマスタシリンダMを介してブレーキレバー1までフィードバックされるので,操縦者は倍力油圧室30の油圧の大きさ,即ち制動力を感知して,良好な操作フィーリングを得ることができる。
【0032】
この間のマスタシリンダMに対する操作力と,前輪Wfに対する制動力との関係を示すと,図2のようになる。同図において,特性線の屈曲点Pは比例増圧弁Vの倍力油圧の発生点であり,このように,制御ピストン18の戻しばね23のセット荷重の選定することにより倍力油圧の発生時期をマスタシリンダMの出力油圧の発生時期より適当に遅らせると,制動力の制御をきめ細かく且つ容易に行うことができる。
【0033】
かくして,操縦者は,マスタシリンダMに対する比較的小さい操作力をもって前輪Wfを強力に制動することができる。しかも,車輪ブレーキ手段Bに倍力油圧を与えるための油圧源7及び比例増圧弁Vは,自動二輪車の懸架ばねより上方のフロントフォーク上部やボディフレームに自由に設置することが可能であるから,そのように設置することにより,自動二輪車のばね下荷重の増加を抑え,良好な乗り心を維持することができる。
【0034】
また,万一,マスタシリンダMのみの作動中,油圧源7に失陥が生じて,倍力油圧室30が昇圧不能となった場合でも,マスタシリンダMの出力油圧の1次ホイールシリンダ61 ,61 への供給は可能であるから,1次ピストン51 ,51 のみの前進により車輪ブレーキ手段Bを作動して,フェールセーフを確保することができる。
【0035】
次に,ブレーキレバー1への操作力を解除して,マスタシリンダMを不作動状態に戻すと,1次ホイールシリンダ61 ,61 及び制御油圧室20は直ちに減圧する。制御油圧室20が減圧すると,弁ピストン22が戻しばね23の付勢力で制御ピストン18と共に後退し,それに伴い入口弁33が閉弁すると共に出口弁40が開弁するので,アキュムレータ11から倍力油圧室30への油圧の供給が絶たれると共に,倍力油圧室30及び2次ホイールシリンダ62 の油圧が出口弁40を通って戻し油路L6 へ,そしてリザーバ10に戻るか,再び油圧ポンプ9に吸入されていく。こうして,車輪ブレーキ手段Bは不作動状態に復帰して,前輪Wfを制動力から解放する。
【0036】
この第1実施例のように,車輪ブレーキ手段Bを,前輪Wfの一側に配設したディスクブレーキで構成し,そのキャリパ4に1次及び2次ホイールシリンダ62 を設けることは,該ブレーキ手段Bの構成簡素化を図る上に有効である。
【0037】
次に,図3により,本発明の第2実施例について説明する。
【0038】
この第2実施例では,車輪ブレーキ手段Bが,前輪Wfの両側に配設される第1及び第2ディスクブレーキB1 ,B2 によって構成される。これら第1及び第2ディスクブレーキB1 ,B2 のブレーキキャリパ4は,1本又は複数本のピストン51 ,52 を収容する1本又は互いに連通する複数本のホイールシリンダ61 ,62 をそれぞれ備えており,その他の各ディスクブレーキB1 ,B2 の構成は,前記実施例の車輪ブレーキ手段であるディスクブレーキBと基本的には同一である。
【0039】
第1ディスクブレーキB1 のホイールシリンダ61 が1次ホイールシリンダとされ,第2ディスクブレーキB2 のホイールシリンダ62 が2次ホイールシリンダ62 とされる。したがって,その1次ホイールシリンダ61 には,マスタシリンダMの出力ポートMaが油圧導管L1 を介して接続され,2次ホイールシリンダ62 には,比例増圧弁Vの倍力油圧室30が油圧導管L3 を介して接続される。その他の構成は,前実施例と同様であるので,図中,前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0040】
而して,ブレーキレバー1の操作によりマスタシリンダMを作動すれば,その出力油圧により第1ディスクブレーキB1 を作動し,比例増圧弁Vの倍力油圧室30からの出力油圧により第2ディスクブレーキB2 を倍力作動することができる。
【0041】
油圧源7の失陥時には,マスタシリンダMの出力油圧により第1ディスクブレーキB1 の通常作動が可能であるから,この第2実施例においてもフェールセーフは確保される。
【0042】
また,上記のように,車輪ブレーキ手段Bを,前輪Wfの両側に配設した第1及び第2ディスクブレーキB1 ,B2 により構成して,第1ディスクブレーキB1 のホイールシリンダ61 を1次ホイールシリンダとし,第2ディスクブレーキB2 のホイールシリンダ62 を2次ホイールシリンダとすることは,前輪Wfの制動効果を高める上に有効である。
【0043】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,第1実施例においては,1次及び2次ホイールシリンダ62 を備えたディスクブレーキBを前輪Wfの左右両側に一対配設することもできる。また,本発明のブレーキ装置は,自動二輪車の後輪用としても実施可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,車輪を制動する車輪ブレーキ手段に,それぞれ油圧を供給されると該車輪ブレーキ手段を作動し得る1次ホイールシリンダ及び2次ホイールシリンダを備えた,自動二輪車のブレーキ装置において,操縦者により操作される同一のマスタシリンダに,その出力油圧を取り出す第1及び第2油圧導管を接続し,その第1油圧導管を前記1次ホイールシリンダに接続する一方,前記第2油圧導管を比例増圧弁に接続し,この比例増圧弁は,前記第2油圧導管を通して受けるマスタシリンダの出力油圧に比例した倍力油圧を,油圧ポンプを含む油圧源から倍力油圧室に引き出すように構成され,この比例増圧弁の倍力油圧室を第3油圧導管を介して前記2次ホイールシリンダに接続したので,マスタシリンダの作動時には,その出力油圧が第1油圧導管を介して1次ホイールシリンダに供給されると共に,第2油圧導管を介して比例増圧弁に供給され,そして比例増圧弁の倍力油圧が第3油圧導管を介して2次ホイールシリンダに供給される。したがって,操縦者は,同一のマスタシリンダを比較的小さい操作力をもって作動することにより,車輪を強力に制動することができる。
【0045】
しかも,車輪ブレーキ手段に倍力油圧を与えるための油圧源及び比例増圧弁は,自動二輪車の懸架ばねより上方のフロントフォーク上部やボディフレームに自由に設置することが可能であるから,そのような設置により,自動二輪車のばね下荷重の増加を抑え,良好な乗り心を維持することができる。
【0046】
また,同一のマスタシリンダのみの作動中,万一,油圧源に失陥が生じて,比例増圧弁が出力不能となっても,マスタシリンダの出力油圧は,第1油圧導管を通して1次ホイールシリンダへの供給は可能であるから,車輪ブレーキ手段の通常作動を得て,フェールセーフを確保することができる。
【0047】
また,本発明の第2の特徴によれば,車輪ブレーキ手段を,車輪の少なくとも一側に配設したディスクブレーキで構成し,そのキャリパに1次及び2次ホイールシリンダを併設したので,車輪ブレーキ手段の構成簡素化を図ることができる。
【0048】
さらに,本発明の第3の特徴によれば,車輪ブレーキ手段を,車輪の両側に配設した第1及び第2ディスクブレーキにより構成して,第1ディスクブレーキのホイールシリンダを1次ホイールシリンダとし,第2ディスクブレーキのホイールシリンダを2次ホイールシリンダとしたので,車輪の制動効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す,自動二輪車のブレーキ装置の,要部を縦断した全体系統図。
【図2】 同ブレーキ装置の制動力特性線図。
【図3】 本発明の第2実施例を示す,図1と同様な全体系統図。
【符号の説明】
B・・・・・・車輪ブレーキ手段
1 ・・・・・第1ディスクブレーキ
2 ・・・・・第2ブレーキ
1 ・・・・・第1油圧導管
2 ・・・・・第2油圧導管
3 ・・・・・第3油圧導管
M・・・・・・マスタシリンダ
V・・・・・・比例増圧弁
Wf・・・・・車輪(前輪)
1・・・・・・ブレーキレバー
4・・・・・・ブレーキキャリパ
1 ・・・・・1次ホイールシリンダ
2 ・・・・・2次ホイールシリンダ
7・・・・・・油圧源
9・・・・・・油圧ポンプ
30・・・・・倍力油圧室

Claims (3)

  1. 同一の車輪(Wf)を制動する車輪ブレーキ手段(B)に,それぞれ油圧を供給されると該車輪ブレーキ手段(B)を作動し得る1次ホイールシリンダ(61 )及び2次ホイールシリンダ(62 )を備えた,自動二輪車のブレーキ装置において,
    操縦者により操作される同一のマスタシリンダ(M)に,その出力油圧を取り出す第1及び第2油圧導管(L 1 ,L 2 )を接続し,その第1油圧導管(L 1 )を前記1次ホイールシリンダ(6 1 )に接続する一方,前記第2油圧導管(L 2 )を比例増圧弁(V)に接続し,この比例増圧弁(V)は,前記第2油圧導管( 2 )を通して受けるマスタシリンダ(M)の出力油圧に比例した倍力油圧を,油圧ポンプ(9)を含む油圧源(7)から倍力油圧室(30)に引き出すように構成され,この比例増圧弁(V)の倍力油圧室(30)を第3油圧導管(L 3 )を介して前記2次ホイールシリンダ(6 2 )に接続したことを特徴とする,自動二輪車のブレーキ装置。
  2. 請求項1記載の自動二輪車のブレーキ装置において,
    車輪ブレーキ手段(B)を,同一の車輪(Wf)の少なくとも一側に配設したディスクブレーキで構成し,そのキャリパ(4)に1次及び2次ホイールシリンダ(61 ,62 )を並設したことを特徴とする,自動二輪車のブレーキ装置。
  3. 請求項1記載の自動二輪車のブレーキ装置において,
    車輪ブレーキ手段(B)を,同一の車輪(Wf)の両側に配設した第1及び第2ディスクブレーキ(B1 ,B2 )により構成して,第1ディスクブレーキ(B1 )のホイールシリンダを1次ホイールシリンダ(61 )とし,第2ディスクブレーキ(B2 )のホイールシリンダを2次ホイールシリンダ(62 )としたことを特徴とする,自動二輪車のブレーキ装置。
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