JP3802346B2 - ジャコウ香気を有するエステル及び香料でのその使用 - Google Patents

ジャコウ香気を有するエステル及び香料でのその使用 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は香料分野に関する。さらに詳しくは本発明は顕著な香気特性を有する1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノールから誘導されたエステルに関する。
【0002】
下記の式(I)で定義されるような本発明によるエステルは評価される有用な香気特性を示しかつ結果として香料、付香配合物及び付香製品の製造に使用することができることが判明した。該エステルはジャコウタイプの香気効果を与えるために使用される。
【0003】
ジャコウ香気を有する化合物の分野においては、過去10年間、香料分野で広く使用される若干の化合物に取って代わることができ、しかも毒物学的及び生態学的な理由によりその使用がますます制限されてきている新規のジャコウ香気化合物を見いだすという必要から生じる大きな活動があった。本発明によるエステルは、付香化合物に対する諸要求を満足させる生成物であり、該エステルは上記の公知化合物に取って代わることができる。
【0004】
先行技術、特にドイツ国特許出願公開第1923223号明細書は、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−エタノールから誘導された若干のエステルを開示している。しかし、開示された化合物からのジャコウ香気は記載されていない。この公知化合物の嗅覚的特性は一般にフローラル−ウッデイ(floral−woody)タイプであると記載されている。
【0005】
他方米国特許第5,166,412号明細書は、次ぎのタイプの化合物:
【0006】
【化9】
Figure 0003802346
【0007】
〔式中RはC1〜C2のアルキル基である〕を開示しており、同化合物はアンブレット・シ−ド(ambrette seeds)タイプ、すなわちウイリアムズピア(Williams pears)の香気を想起させるフル−テイ−ピア(fruity−pear)の強いノートを特徴とするジャコウタイプの香気を示す。
【0008】
ところで意外にも、下記に定義される式(I)によって記載される化合物が、上記式 (II)の化合物のジャコウ香気とは全く異なっておりかつ香料調合で極めて大きく評価されるジャコウ香気を有することが判明した。
【0009】
したがって本発明の目的は、ジャコウタイプの香気を与えるために、香料成分として有用な新規化合物を提供することである。
【0010】
この目的は、式(I):
【0011】
【化10】
Figure 0003802346
【0012】
〔式中記号R1、R2、R3及びR4は相互に独立的に水素原子又はメチル基又はエチル基を表し、記号Xは酸素原子又は式:
【0013】
【化11】
Figure 0003802346
【0014】
(式中nは1〜3の整数であり、記号R6及びR7は水素原子又はメチル基又はエチル基を表す)で示されるアルキレン基を表し、R5はC1〜C4の線状又は枝分れアルキル基又はアルコキシ基C2〜C4の線状又は枝分れアルケニル基又は式:
−(O)C−Y−R8
(式中YはXと同じものを表し、R8はC1〜C4の線状又は枝分れアルキル基又はC2〜C4の線状又は枝分れアルケニル基である)で示される基を表す〕で示される化合物によって達成される。
【0015】
本発明の有利な実施態様によれば、一般式式(III):
【0016】
【化12】
Figure 0003802346
【0017】
〔式中Xは酸素原子又は未置換のメチレン基又はエチレン基であり、R5は炭素原子1〜3個を有する式1で定義したような基である〕で示される化合物を使用する。
【0018】
上記式(I)及び(III)のエステルは新規化合物である。
【0019】
本発明の他の目的は、該化合物を含有する香料、付香配合物及び付香製品のみならず香料分野で上式の化合物を使用することである。
【0020】
本発明の化合物は、その中に僅かなフルーテイなアンブレット(fruity−ambrette)な連想的匂い(connotation)が見いだせるジャコウ香気ノートを示すが、この香気ノートは先行技術の化合物、つまり式(II)による化合物におけるよりも明らかに顕著ではない。本発明の化合物の全体的な嗅覚的印象は一般に甘く重い連想的匂いを有するジャコウ香気化合物の印象であり、これは所謂多環式ジャコウ(polycyclic musk)に近いが、より軽く、ねばり強さのよりとぼしい嗅覚的ノートを示す式(II)の化合物の印象とは全く異なる。
【0021】
本発明の化合物は、純粋状態の4種の立体異性体の形で又は立体異性体の混合物として存在していてよい。したがって本発明はこれらの可能なすべての化合物及び可能なすべての個々の異性体を包含する。これらの異性体のそれぞれの嗅覚的ノートは他の異性体の嗅覚的ノートとは異なっているので、また可能なすべての異性体混合物の香気は所与の任意のジアステレオマー又は鏡像異性体の含量の関数として変化しうる。
【0022】
さらに、式(III)による本発明の上に確認された有利な化合物内では、最良の嗅覚的特徴は、本発明の若干の化合物の合成のための出発生成物として使用されるアルコール(+)−(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)−1−エタノールから誘導された本発明のエステルの異性体において表されることも確証することができた。
【0023】
本発明の最高に有利な化合物としては、特に1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエートが挙げられる。この化合物は、ガラクソライド(Galaxolide:登録商標)(7,8−ジヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−6H−シクロペンタ[9]−2−ベンゾピラン;USA在International Flavors and Fragrancesの商標)の香気を連想する古典的ジャコウタイプの香気を有しかつ柔らかい連想的匂い(connotation)を有する天然の甘いジャコウ香気の印象であって、十分なボリュームを与える嗅覚的印象を与える。また、グリーンフルート(green fruit)の香気を連想させるアンダーノート(undernote)を伴う明るいアンブレットのニュアンス(ambrette nuance)も判明している。本発明の化合物は、先行技術による化合物の香気と比較すると、公知化合物のジャコウ香気よりも明瞭にねばり強く(tenacious)かつ重くて、該化合物を特に、ジャコウ香気の香料及び付香配合物におけるベースノートを創作するために有用にするジャコウ香気を発生する。
【0024】
上記の香気特性は、(1S,1´R)の配置の異性体、すなわち(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエートにおいて最良に表され、この異性体が本発明の化合物を本発明の特上成分にする。
【0025】
さらに、多量の該異性体ならびにその鏡像異性体又は他の立体異性体も含有する混合物は評価される香気効果を与える。したがってまた、本発明の最も有利なこの異性体を多量に含有する混合物も本発明の有利な実施態様である。
【0026】
本発明の化合物は特に現代の香料のすべての分野で実際に使用することができる。ここでは精香料(fine perfumery)での使用、すなわち原嗅覚的効果がそれで得られる香料及びコロンの製造のための使用が挙げられる。
【0027】
また該化合物は機能香料(functional perfumery)でも使用することができる。この種の用途の非限定的例は、セッケン、バス及びシャワー用ゲル、シャンプー、消臭剤及び発汗防止剤、空気清浄剤(air freshener)、繊維処理用の液体及び固体洗浄剤及び織物柔軟剤を包含する。
【0028】
これらの用途において、化合物(I)及び(III)は単独で又は他の付香成分、香料分野で現在使用されている溶剤又は補助剤との混合物で使用することができる。これらの共通成分の性質及び種類はここではさらに詳細な説明を要せず、それはまた網羅できないが、当業者はその一般的知識によって及び付香すべき製品の性質及び所望の嗅覚的効果の相関要素(function)として前記共通成分を選択できるであろう。これらの付香成分は、天然又は合成起源の精油の他に、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、硫黄及び窒素を有する複素環式化合物のような種々の化学種に属する。さらに多数のこれらの成分は、参考教科書(例えばthe book of S.Arctander,Perfume and Flavor Chemicals,1969,Montclair,New Jersey,USA、又はそのさらに最新の版)、又は同種類の他の著作に記載されている。
【0029】
本発明による化合物が前述の種々の製品中に混入されうる割合は、広い値の範囲内で変化する。これらの値は、本発明の化合物が当業界で現在使用されている付香共通成分、溶剤又は補助剤との混合物で使用される場合には、所与の配合物中の共通成分の性質に依存するのみならず、付香することを望む物品又は製品の性質及び探求された嗅覚的効果に依存する。
【0030】
例としては、該化合物がその中に混入される付香配合物の質量に対して該化合物5〜10質量%のオーダーの代表的な濃度、又は20質量%の濃度すら挙げることができる。前記濃度よりもはるかに低い濃度は、化合物(I)又は(III)を前述の種々の消費者製品の付香のために直接使用する場合に、用いることができる。
【0031】
本発明の化合物は、一般に下記の式(IV)のアルコールを式(V)の各酸又はその適当な誘導体でエステル化することによって製造する。この反応は次ぎの図式Iで説明するが、図式中記号R1〜R5及びXは式(I)で示したものを表す。
【0032】
図式I:
【0033】
【化13】
Figure 0003802346
【0034】
酸(V)の適当な誘導体としては、例えば塩化物のような酸ハロゲン化物を挙げることができる。他の適当な誘導体は当業者に周知である。式(I)の光学活性化合物を合成することを所望する場合には、エステル化反応で式(IV)の相応の光学活性アルコールを使用する。本発明の有利な実施態様によれば、本発明の有利な化合物の製造のための出発アルコールとして1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノール又はその鏡像異性体の一つを使用する。
【0035】
式(V)の酸、それぞれそれらの適当な誘導体が得られないか又は所望のように反応しない場合には、下記の式(VI)〔式中Hは酸素原子であり、記号R1〜R4は式(I)で示したものを表す〕のアルコールを、式(VII)〔式中R5は式(I)で記載したものを表す〕の酸又はそれぞれこの酸の適当な誘導体、例えばハロゲン化物とのエステル化反応で使用する。
【0036】
図式II:
【0037】
【化14】
Figure 0003802346
【0038】
式(VI)のアルコールは、Xが酸素原子である場合の式(I)の本発明の若干の化合物のケン化によって得ることができる。
【0039】
本発明の化合物を製造するための上記の方法では、アルコール(IV)及び(VI)の立体化学作用(stereochemistry)は保持される。したがって本発明の化合物の立体化学作用は出発生成物として使用されるアルコールのそれである。
【0040】
さて、特定の反応条件は次ぎの実施例で記載するが、例中略語は技術上の通常の意味を表し、温度は摂氏温度(℃)で記載する;NMRスペクトルデータ(化学シフトδ)は内部標準としてのTMSに相対するppmで記載する。本発明はまた香料における本発明の化合物の使用を記載する例によっても説明する。
【0041】
本発明の実施態様
例1
式(I)の化合物の製造
a)(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート
(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)−1−エタノール(H.R.Ansari、Tetrahedron 29、1559(1973)によって記載された方法により(+)−β−シトロネレン(Fluka)から製造、[α]D 20=+11.6°、他の立体異性体約17%を含有する、又はDRT(フランス)から購入)3g及びピリジン1.52gをジエチルエーテル50ml中に溶かした。次ぎにジエチルエーテル20ml中に溶かした2−クロロ−2−オキソエチルプロパノエート (F.K.Thayer,Organic Synthesis Col.Vol.1 (1932),p.12により製造)2.9gを10分間加えた。次ぎに反応混合物を30分間撹拌し、その後2−クロロ−2−オキソエチルプロパノエートの他の部分を加えた。1時間の反応時間後に水性HCl(1M)5mlを加えて反応を抑え、エーテルで混合物から抽出を行った。抽出物のフラッシュカラムクロマトグラフィー及び溶液の濃縮後に、このようにして得られた粗生成物を、120°/9x102Paで蒸留して(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシ−カルボニル]メチルプロパノエートが得られた。収量は4.12g(79.5%)であった。
【0042】
【数1】
Figure 0003802346
【0043】
a)で記載した製造方法で(1R,1´S)−1−(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノール[《(−)−シクラデモール(cyclademol)》;出所:フランス国DRT;[α]D 20=−10.4°、他の立体異性体約18%を含有する]を使用する場合には、(1R,1´S)−1−[(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエートが得られた。このものの分析データ(NMR、MS)はa)で記載したものと同一であった。
【0044】
b)(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルブタノエート
反応は、2−クロロ−2−オキソエチルブタノエート(上記文献により製造)4.78gを用いてa)で上記したように行った。収量は沸点120°/6x102Paを有する生成物5.22g(95.8%)であった。
【0045】
【数2】
Figure 0003802346
【0046】
c)(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エチル 4−オキソヘキサノエート
4−オキソ−ヘキサン酸(G.L.Hommet et al.,Synth.Commun,26,3897(1996)により製造)1.09g(8.4mモル)を、(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノール1.25g(8mモル)及びトルエン70ml中のp−トルエンスルホン酸(0.012g)と混合した。反応混合物をデイーン・スターク型分離器(Dean−Stark typ separator)で還流下に15時間加熱した。これによって得られた溶液を水、飽和NaHCO3溶液で洗浄し、再び水で洗浄し、その後減圧下で溶剤を除去した。球管対球管(bulb−to−bulb)装置で140°/5x102Paで蒸留した後、生成物0.84g(39%)が得られた。
【0047】
【数3】
Figure 0003802346
【0048】
d)(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)エチル 5−オキソヘキサノエート
ジクロロメタン20ml中の(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノール2.00g(12.8mモル)、5−オキソ−ヘキサン酸1.66g(12.8mモル)及び4−ジメチル−アミノピリジン0.26gの溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.06g(14.1mモル)を加えた。この溶液を90分間撹拌し、セライト(登録商標)により濾過し、MgSO4により脱水しかつ濾過する。溶剤の蒸発後黄色油状物(3.0g)が得られたが、このものを球管対球管(bulb−to−bulb)装置で160°/1x103Paで蒸留して所望の生成物2.12g(62%)が得られた。
【0049】
【数4】
Figure 0003802346
【0050】
e)(1S,1´R)−[1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルメチルオキサレート
i)(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エチルヒドロキシアセテート
このアルコールは(1S,1´R)−[1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエートのケン化によって製造した。この目的のために同化合物50.0g(185mモル)を500mlのフラスコ中のメタノール250ml中に溶かした。この混合物を−78°に冷却した後、メタノール(34.3ml、185mモル)中にナトリウムメトキシド約5.4Mを含有する溶液を30分間加え、次ぎに−50°で撹拌を90分間続け、次いで反応混合物をこの温度で水性HCl(2M)100mlで中和した。同混合物にジエチルエーテルで抽出を施し、これを飽和NaHCO3溶液、次ぎに水で洗浄して中性にした。乾燥及び有機相の濃縮後に、粗生成物をビグロ(Vigreux)型塔により62°/5x102Paで蒸留して所望の生成物23.65g(60%)を得た。
【0051】
【数5】
Figure 0003802346
【0052】
次いで該化合物をii)で下記のようにエステル化した。
【0053】
ii)i)で得られた生成物2g(9.4mモル)をジエチルエーテル25ml中のピリジン1.1g(14mモル)と混合し、メチルクロロオキサレート1.7g(14mモル)を落下的に10分間加えてエステル化した。温度を氷浴で30℃に保ち、混合物を30分間撹拌し、水性HCl(2M)3mlで加水分解した。エーテル相を飽和NaHCO3溶液で、次いで水で洗浄した。乾燥及び濾過後に、溶液を濃縮しかつ球管対球管(bulb−to−bulb)装置で140°/3x102Paで蒸留して生成物2.59g(92%)を得た。
【0054】
【数6】
Figure 0003802346
【0055】
f)(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチル 2−プロペノエート
この化合物をアルコール(1S,1´R)−1−(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)エチルヒドロキシアセテート(1)e)i)で記載したようにして得られる)から製造した。このアルコール1g(4.67ml)を0℃で10分間にわたって、鉱油中のNaHの60%懸濁液0.21g(5.14mモル)及びTHF20mlから製造した懸濁液に加えた。この懸濁液を室温で30分間撹拌し、次ぎに混合物を−20°に冷却した後塩化アクリロイル0.47g(5.14mモル)を加えた。この混合物を室温に加温し、この温度で5時間撹拌し、その後塩化アクリロイルの他の0.47g(5.14mモル)及び鉱油中のNaHの60%懸濁液0.21gを加えた。2時間撹拌を続け、次ぎに反応を水で抑え、溶液からエーテルで抽出を行った。有機抽出液を水性HCl(1M)、飽和NaHCO3溶液及び水で洗浄し、MgSO4により脱水した。溶剤の蒸発後に粗製生成物を球管対球管(bulb−to−bulb)装置で120°/4x102Paで蒸留して所望の生成物1.13g(90%)を得た。
【0056】
【数7】
Figure 0003802346
【0057】
g)(1S,1´R)−1−[(3´,3´−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチル 2−ブテノエート
この化合物をf)で上記したように製造したが、塩化アクリロイルを塩化クロトノイル(0.49g、4.67mモル)に代え、これを室温で加えた。乾燥及び溶剤の蒸発後に油状物1.43gが得られ、これをシリカによりクロマトグラフィーし、次ぎに球管対球管(bulb−to−bulb)装置で120°/4x102Paで蒸留して所望の生成物0.83g(71%)を得た。
【0058】
【数8】
Figure 0003802346
【0059】
例2
付香配合物の製造
ベース付香配合物を次ぎの成分から製造した:
Figure 0003802346
アプルタイプのこのベース配合物に、1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート2000質量部を加えた。これによってフルーテイな匂い(aspect)がベース配合物に関して明瞭に強くなっている新規の配合物が得られた。さらに本発明の化合物を含有する配合物は極めて自然な,評価されるなめらかな(velvety)ジャコウの連想的匂い(connotation)を有しており、また該化合物はベース配合物の香気にはるかに大きいボリュームも与えた。さらに調香師たちは、該配合物の拡散がそのトップノート及びハートノート(heart note)の両方に関して優秀になり、特にこのジャコウ化合物のねばり強さ(tenaciousness)及び重いキャラクターのためにボトムノート(bottom note)に関してすばらしくなることを見出だした。
【0060】
上記の香気効果は配置(1S,1´R)の異性体を使用する場合には、特に顕著であり、豊かであった。
【0061】
本発明の化合物を(1S,1´R)−2−[1−(3´,3´−ジメチル−1´−シクロヘキシル)エトキシ]−2−メチルプロピルプロパノエート(EP472966明細書に記載)と代えると、異なる効果が観察され、生じる配合物は重さとなめらかさが減り、したがってフルーテイアプル(fruity−apple)の匂い(aspect)をより少なくし、明白さ及びボリュームの少ないボトムノートの拡散を示した。この公知配合物は一般には本発明の化合物を含有する配合物よりも軽く、ねばり強さが少なくかつジャコウ臭が重くなかった(less musky−heavy)。
【0062】
例3
付香配合物の製造
ベース付香配合物を次ぎの成分から製造した:
Figure 0003802346
Figure 0003802346
フルーテイなピアタイプ(pear type)の香気を有する前記ベース配合物に1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート2000質量部を加えると、新規の配合物が得られたが、この香気はベース配合物のノートに関しては相当に変調された。この変調は主としてフルーテイピアの連想的匂い(fruity−pear connotation)において明白であり、この匂いは豊かでまろやかなキャラクター(rich and full character)及び顕著で優雅なボリュームを獲得しており、熟したナシの香気を想起させる。このボリュームのある印象は配合物の遅い蒸発の間ずっと持続し、該配合物のフルーテイで優雅な主調(tonality)を延長した。この香気効果は、(1S,1´R)の配置を有する異性体をベース配合物に加える場合に特に顕著で豊かであった。
【0063】
例4
粉末洗浄剤用の付香配合物の製造
粉末洗浄剤用ベース付香配合物を次ぎの成分を混合することによって製造した:
Figure 0003802346
Figure 0003802346
粉末洗浄剤用に指定されたこのベース付香配合物に、1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート1000質量部を加えると、新規の配合物が得られ、このものの嗅覚的ノートは極めて顕著なボリューム及びねばり強さ(tenaciousness)を獲得した。ベース配合物中のアルデヒドによって与えられる代表的な香気印象は本発明の化合物のジャコウの重いノート(musky−heavy note)によって十分に維持された。また調香師たちは、該配合物の拡散がより強くなって、同配合物のフルーテイでローズ様の主調(tonality)にアクセントを与えることも見出だした。
【0064】
上記の香気効果は、新規の配合物からも、前記配合物で付香された粉末洗浄剤で洗浄したリネン上からも知覚できる。本発明による配合物の芳香ノートのジャコウ臭(これはまたこのように処理したリネン上でも匂いを出すことができるであろう)は、インダンタイプの多環式ジャコウ香気化合物によって代表的に与えられるノート、すなわち魅惑的で、温かく、パウダー様で、僅かに動物臭のなめらかな連想的匂い(connotation)に類似していた。最高の嗅覚的効果は本発明の有利な化合物、すなわち上記化合物の(1S,1´R)−異性体で得られた。調香師たちによって観察されたジャコウ効果は、同様な適用条件下でガラクソライド(Galaxolide:登録商標)によって代表的に与えられるジャコウ効果に嗅覚的に極めて近かった。

Claims (10)

  1. 式(III):
    Figure 0003802346
    〔式中Xは酸素原子又は未置換のメチレン基又はエチレン基であり、Rは炭素原子1〜3個を有する線状又は枝分れアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基または式:
    −(O)C−Y−R
    (式中YはXと同じものを表し、R は線状又は枝分れアルキル基又はアルケニル基である)で示される基を表す〕で示される化合物。
  2. 1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート、1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルブタノエート、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エチル4−オキソヘキサノエート、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エチル5−オキソヘキサノエート、1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルメチルオキサレート、1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチル2−プロペノエート及び1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチル2−ブテノエートから成る群から選択された化合物。
  3. 1−[(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート。
  4. 配置(1S,1´R)の立体異性体又は多量の該異性体ならびに少なくとも1種のその他の立体異性体を含有する混合物の形での請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物。
  5. 請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を付香成分として含有する付香配合物又は付香製品。
  6. 香料又はコロン、セッケン、バス又はシャワー用ゲル、シャンプー又は他のヘアケアー製品、化粧製剤、消臭剤又は発汗防止剤、空気清浄剤、洗剤又は織物柔軟剤、又は万能クリーナーの形の請求項記載の付香製品。
  7. 付香配合物又は付香製品に請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を加えることを特徴とする、付香配合物又は付香製品の製造方法。
  8. 請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を製造するに当たり、式IV:
    Figure 0003802346
    [式中、R およびR はメチル基を表す]で示されるアルコールを、式(V):
    Figure 0003802346
    [式中、R およびR は水素原子を表し、XおよびR はそれぞれ請求項1に記載したものを表す]で示される酸又はこのものの適当な誘導体でエステル化することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を製造する方法。
  9. 請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を製造するに当たり、式VI:
    Figure 0003802346
    [式中、R およびR はメチル基を表し、R およびR は水素原子を表す]で示されるアルコールを、式(VII):
    Figure 0003802346
    [式中、Rは請求項1に記載したものを表す]で示される酸又は後者の適当な誘導体でエステル化することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の化合物を製造する方法。
  10. (1S、1’R)−1−(3’ , 3’−ジメチル−1’−シクロヘキシル)−1−エタノール
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