JP3800489B2 - 水循環系の腐食防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気に開放された水槽内の水を利用側に供給し再び水槽に循環させる水循環系において、金属配管、機器等の腐食を防止するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記水循環系においては、水中に溶存する酸素により金属配管、ポンプ、その他の機器が腐食してしまうという問題があり、この問題を解決するために、従来、特開平8−193284号公報により、水槽内の水を窒素置換ポンプにより循環させると共に、前記ポンプの吸い込み側に窒素ガスを供給し、前記ポンプによる攪拌加圧により水中の溶存酸素を窒素ガスに置換する方法が提案されている。
【0003】
ところで、例えば蓄熱式空調装置においては、蓄熱槽は多数の水槽から構成され、各水槽は定期的に順番に清掃を行う必要があり、そのためにはその水槽の水を入れ替える必要が生じる。その場合、溶存酸素量の多い水槽が溶存酸素量の少ない水槽に接続されるため、全体の溶存酸素量が多くなり、配管等の腐食に対して悪影響を与えてしまうという問題を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この問題を解決するために、清掃作業終了後の水槽内の水を窒素置換装置に接続し窒素で置換することが考えられる。図4は、そのための窒素置換装置を示す配管図である。蓄熱槽を形成する水槽1は、多数の水槽1aが接続されて構築され、内部に熱媒用の循環水2が貯留されている。水槽1内の循環水2は、配管3、熱源装置4、配管5の順に循環される。熱源装置4は周知のヒートポンプ装置または冷凍機とボイラーを組み合わせた装置であり、循環水2を冷却または加熱する。冷却または加熱された循環水2は、ヘッダー部6、利用側ポンプ7、配管9により空調機10に循環される。空調機10は熱交換器であり、循環水2と熱交換された冷温水を建物の負荷側に供給するように構成されている。
【0005】
そして、ヘッダー部6には利用側ポンプ7に並列にバイパス管11が接続される。バイパス管11には、切換弁12、13および窒素置換ポンプ14が設けられ、窒素置換ポンプ14の吸い込み側に、窒素ガスボンベ(又は窒素ガス発生装置)15、減圧弁16、ガス流量計17、電磁弁19、流量調整弁20からなる窒素ガス供給装置21が接続されている。また、窒素置換ポンプ14の吸込側および吐出側には、切替弁22、23を介して配管24、25からなる強制置換ライン26が接続され、配管24、25は清掃作業終了後の水槽1aに接続されている。
【0006】
その作用について説明する。窒素置換ポンプ14を運転し循環水2をバイパス管11に循環させ、窒素ガス供給装置21から窒素ガスをポンプ14の吸い込み側に供給すると、水はポンプでかき混ぜられると共にポンプの羽で加圧されるために、気体飽和量を増大させる側に作用し、周囲が細かな窒素ガス粒子で満たされていると、この加圧攪拌作用により窒素の溶存量が増加する。このようにして、水槽1内の循環水2は、しだいに酸素が窒素に置換され溶存酸素の割合が低減されていく。脱気された酸素および余剰の窒素ガスは水槽1の水面から大気中に放出される。
【0007】
ある特定の水槽1aの清掃作業終了時には、水槽1aに新規の水を充填した後、切換弁12、13を閉じて切換弁22、23を開けて窒素置換ポンプ14を運転すると、水槽1a内の水は、強制置換ライン26を介して窒素置換ポンプ14を循環し、しだいに酸素が窒素に置換され溶存酸素量が低減されていく。
【0008】
上記窒素置換装置においては、通常時にヘッダー部6、空調機10に窒素を送り込んでいる間は、ヘッダー部6において、ある程度の静圧を確保することができるため、溶存酸素量を比較的多く低減させることができる。しかしながら、上記強制置換ライン26を介する場合には、配管24、25中の流速が早く窒素が充分に溶け込む時間が取れないという問題や、配管内は全圧のうち多くの部分が動圧となってしまい、窒素を過飽和状態にまで持っていく圧力(静圧)を維持できないという問題や、配管内は乱流になっているものの窒素が過飽和となる要件を満たしていないという問題があり、溶存酸素を十分に低減させることができないという欠点を有している。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、簡単な構成で溶存酸素量を大幅に低減させることができ、とくに清掃作業等の終了後の水交換時における溶存酸素量の増大を防止することができる水循環系の腐食防止装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の水循環系の腐食防止装置は、大気に開放された水槽内の水を利用側に供給し再び水槽に循環させる水循環系において、前記水槽内の水を循環させるバイパス管と、窒素置換ポンプと、前記ポンプの吸い込み側に接続される窒素ガス供給装置と、前記ポンプの吐出側に接続される窒素置換促進タンクとを備え、前記窒素置換促進タンクは、前記バイパス管より大径でかつ上下方向に筒状であって、前記窒素置換促進タンクの上部に流入管が配置され、前記流入管に循環水を窒素置換促進タンク内に放射状に噴射するディストリビュータを配設し、前記窒素置換促進タンクの下部に流出管を接続したことを特徴とし、請求項2記載の発明は、請求項1において、多数の水槽が連結された水循環系において、前記ポンプの吸込側および前記窒素置換促進タンクの下流側を強制置換ラインを介して清掃終了後の水槽に接続することを特徴とする。
以上
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の水循環系の腐食防止装置の1実施形態を示す全体構成図である。なお、本実施形態は、蓄熱式空調装置に適用したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、大気に開放された水槽内の水を配管を経て再び水槽に循環させる方式の全ての水循環系への適用が可能である。
【0012】
図1において、蓄熱槽を形成する水槽1は、多数の水槽1aが接続されて構築され、内部に熱媒用の循環水2が貯留されている。水槽1内の循環水2は、配管3、熱源装置4、配管5の順に循環される。熱源装置4は周知のヒートポンプ装置または冷凍機とボイラーを組み合わせた装置であり、循環水2を冷却または加熱する。冷却または加熱された循環水2は、ヘッダー部6、利用側ポンプ7、配管9により空調機10に循環される。空調機10は熱交換器であり、循環水2と熱交換された冷温水を建物の負荷側に供給するように構成されている。
【0013】
そして、ヘッダー部6には利用側ポンプ7に並列にバイパス管11が接続される。バイパス管11には、切換弁12、13および窒素置換ポンプ14が設けられ、窒素置換ポンプ14の吸い込み側に、窒素ガスボンベ(又は窒素ガス発生装置)15、減圧弁16、ガス流量計17、電磁弁19、流量調整弁20からなる窒素ガス供給装置21が接続され、窒素置換ポンプ14の吐出側に窒素置換促進タンク27が接続されている。また、窒素置換ポンプ14の吸込側および窒素置換促進タンク27の下流側には、切替弁22、23を介して配管24、25からなる強制置換ライン26が接続され、配管24、25は清掃作業終了後の水槽1aに接続されている。なお、27aはエア抜き弁、27bはドレン抜き弁である。
【0014】
その作用について説明する。窒素置換ポンプ14を運転し循環水2をバイパス管11に循環させ、窒素ガス供給装置21から窒素ガスをポンプ14の吸い込み側に供給すると、水はポンプでかき混ぜられると共にポンプの羽で加圧されるために、気体飽和量を増大させる側に作用し、周囲が細かな窒素ガス粒子で満たされていると、この加圧攪拌作用により窒素の溶存量が増加する。さらに、循環水2は、窒素置換促進タンク27に送られ、ここで流速が抑えられ静圧のみの圧力下で滞留時間が長くなるため、窒素の置換が促進される。このようにして、水槽1内の循環水2は、しだいに酸素が窒素に置換され溶存酸素の割合が低減されていく。脱気された酸素および余剰の窒素ガスは水槽1の水面から大気中に放出される。
【0015】
ある水槽1aの清掃作業終了時には、水槽1aに新規の水を充填した後、切換弁12、13を閉じて切換弁22、23を開けて窒素置換ポンプ14を運転すると、水槽1a内の水は、強制置換ライン26を介して窒素置換ポンプ14および窒素置換促進タンク27を循環し、しだいに酸素が窒素に置換され溶存酸素量が低減されていく。
【0016】
図2は、図1の窒素置換促進タンク27の1例を示し、図2(A)は縦断面図、図2(B)は図2(A)のB−B線で切断し矢印方向に見た断面図、図2(C)は図2(A)のC−C線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【0017】
窒素置換促進タンク27は、タンク本体30と、タンク本体30の上部に配置された流入管31と、流入管31の先端に連結されたディストリビュータ(分配器)32と、ディストリビュータ32の周囲に設けられた噴射口33と、タンク本体30の下部に配置された流出管34と、流出管34の入口に設けられた邪魔板35から構成され、流入管31、ディストリビュータ32に流入した循環水2は、噴射口33から図2(B)の点線で示すように、タンク本体30内に径方向に噴射される。この構成により、高静圧下に長時間曝し、しかも乱流域を作ることが可能となり、窒素の溶け込む量をより一層多くすることができる。
【0018】
図3(A)は、従来装置の実験装置を示す模式図、図3(B)は本発明に係わる実験装置を示す模式図である。なお、図3(B)におけるバッファータンクが窒素置換促進タンク27に相当するものである。図3(A)に示す実験水槽で行った溶存酸素低減実験では、溶存酸素量DO値の最低値は0.25mg/lであったが、図3(B)に示す実験水槽で行った溶存酸素低減実験では、溶存酸素量DO値の最低値は0.05mg/lと約1/5にまで低減することができた。このことは、バッファータンクの有効性を示すものと判断される。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、簡単な構成で溶存酸素量を大幅に低減させることができ、とくに清掃作業等の終了後の水交換時における溶存酸素量の増大を防止することができる。また、比較的少量の窒素ガスで短時間に溶存酸素量を腐食の影響がなくなるレベルまで低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水循環系の腐食防止装置の1実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の窒素置換促進タンク27の1例を示し、図2(A)は縦断面図、図2(B)は図2(A)のB−B線で切断し矢印方向に見た断面図、図2(C)は図2(A)のC−C線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図3】図3(A)は、従来装置の実験装置を示す模式図、図3(B)は本発明に係わる実験装置を示す模式図である。
【図4】本発明の課題を説明するための腐食防止装置の配管図である。
【符号の説明】
1…水槽
14…窒素置換ポンプ
26…強制置換ライン
27…窒素置換促進タンク
Claims (2)
- 大気に開放された水槽内の水を利用側に供給し再び水槽に循環させる水循環系において、前記水槽内の水を循環させるバイパス管と、窒素置換ポンプと、前記ポンプの吸い込み側に接続される窒素ガス供給装置と、前記ポンプの吐出側に接続される窒素置換促進タンクとを備え、前記窒素置換促進タンクは、前記バイパス管より大径でかつ上下方向に筒状であって、前記窒素置換促進タンクの上部に流入管が配置され、前記流入管に循環水を窒素置換促進タンク内に放射状に噴射するディストリビュータを配設し、前記窒素置換促進タンクの下部に流出管を接続したことを特徴とする水循環系の腐食防止装置。
- 多数の水槽が連結された水循環系において、前記ポンプの吸込側および前記窒素置換促進タンクの下流側を強制置換ラインを介して清掃終了後の水槽に接続することを特徴とする請求項1記載の水循環系の腐食防止装置。
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