JP3800355B2 - シール装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧の作用の下で使用されるシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に用いられる自動変速装置にはクラッチ機構やブレーキ機構を作動させるための油圧通路が組込まれており、該油圧通路に供給される油の漏れを防止するためのシールリングおよびシール装置が多用されている。その一例を図5に示す。
【0003】
図5において、シール装置1は、軸2に設けられた油圧通路3、該軸2の外周面に設けられた対のシールリング溝4、4、該シールリング溝4、4に装着された合成樹脂製のシールリング5、5を有し、シールリング5、5の外周面は駆動側である回転ハウジング6の内周面16に対接する。
軸2の油圧通路3は、軸2の外周面に形成された環状溝7、ハウジング6の内周面に設けられた入口8を介して、ハウジング6内の作動室9に連通しており、油圧通路3から作動室9内への油圧供給が作動室9を画定するピストン10を移動させてクラッチを係合し、ハウジング6の回転運動を出力軸12に伝達させる。作動室9への油圧供給解除が、クラッチを開放し出力軸への回転運動の伝達が停止される。
【0004】
ここで、軸2の外周面の環状溝7は、各シールリング溝4、4に連通し、シールリング溝4、4に導入された油圧は、シールリング5、5をリング溝側壁面とハウジング6の内周面とに押圧し、その間の油の漏れを防止させる。
【0005】
図5に示すような従来のシールリング5、5を使用する場合、シールリング5、5の側面に作用する油圧の総和が、シールリング5、5の内周面側に作用する油圧の総和より大であるために、シールリング5、5はシールリング溝4、4の側壁面18に対してより強く押し付けられ、シールリング5、5の側面とシールリング溝4、4の側壁面18との間の摩擦力により軸2側に保持され、ハウジング6の内周面に対して摺接することになる。
【0006】
しかし、この場合、該摺接による損失トルクが大であることから、シールリング5、5の側面とリング溝側壁面18との間で摺接がなされるようにしたシールリングも提案されている。その例を図6に示す。
【0007】
図6において、シールリング5′、5′は、その両側面に周方向に延びる環状溝14、14と、周方向に離間して設けられていて該環状溝14、14をリング内周側に連通させる複数の径方向溝15、15を有し、該溝14、15に油圧を導くことによりシールリング5′をシールリング溝側壁面18に押圧する力を緩和し、シールリング5′の側面がシールリング溝側壁面18に対して摺動し易くする。
【0008】
上記構成のシールリング5′を使用する場合、シールリング溝加工の精度のバラツキにより溝が外開きに形成されている場合や、ハウジング6の回転軸心と軸2の軸心との間に傾き等がある場合には、シールリング溝側壁面18に対接してその間をシールするシールリング5′の外周側対接面部l1 とリング溝側壁面18との間が離されて側面シール特性が損われる難がある。
【0009】
上記難点の解消を目的とするシールリングとして図8に示す如く、側面をテーパ面とし、外周面を円弧面にしたシールリング5″が提案されている。
この種のシールリング5″は、側面のテーパ面の一部28でシールリング溝4の側壁面とのシール面を確保し、シールリング側面のテーパ面とリング溝側壁面18との間に形成されるクサビ状間隙26aに導かれる油圧によりシールリング5″をリング溝側壁面18に押し付ける力を緩和し、トルク損失を低減させるとともに、外周面を円弧面とすることで、ハウジング6や軸2の振れを吸収し外周面とハウジング内周面との対接を確保し、シール特性の劣化を防止することを目的とするシールリングである。
【0010】
しかしながら、外周面が断面円弧状をなしているために、図9の(a)に示すように、シールリング外周面の半分の部分に作用する油圧とシールリングの内周面の半分部分に作用する油が相殺し、シールリング内周面の残りの部分に作用する油圧により、シールリング5″を矢印A方向に回転させるモーメント力を生じ、このモーメント力により図9の(b)に示す如く、シールリングの側面がシールリング溝18に全面で対接する状態となり、本来の側面テーパの効果が得られず、損失トルクや溝摩耗が大きくなる難点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、シールリングとリング溝側面およびシールリングとハウジング内周面との摺接関係を適正にすることにより、前記従来技術の不具合を解消させ、トルク損失や摩耗の発生を低減させることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するために、シールリングの径方向内方に向けてリングの幅を減するように傾斜したテーパ面を有する側面と、一方の側面側の外径が、他方の側面側の外径より大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面とを有するシールリングを、ハウジングに収容された軸の外周面に設けられていて一方側から油圧が導かれるシールリング溝に、前記テーパ状側面と該シールリング溝の側壁面との間に断面クサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径の大なる側面側を油圧導入側の反対側に位置させてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧導入側に開口された間隙が形成されるように装着するシール装置を提供する。
【0013】
また、本発明では、油圧を受ける環状溝と該環状溝の両側に配されていて該環状溝に連通するシールリング溝を外周面に有する軸と、前記環状溝に通じる窓を備えた作動室および該作動室内の油圧を受けて往復動するピストンを有するハウジングと、前記シールリング溝に装着されたシールリングとを有するシール装置において、該シールリングが、シールリングの径方向内方に向けてリングの幅を減するように傾斜したテーパ面でなる側面と、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径より大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面を有するシールリングであって、前記テーパ状側面と該シールリング側壁面との間に断面クサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径の大なる側面側を油圧作用側の反対側に位置させてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧作用側に開放された間隙を形成して装着されている構成のシール装置を提供する。
【0014】
上記の本発明のシール装置による場合、シールリング側面とリング溝側壁面との間には内方に開放されたクサビ状の間隙が形成され、また、シールリング外周側とハウジング内周面との間には、油圧作用側に開放された間隙がシールリング外周面幅の広い範囲(半分以上)にわたって形状されているので、両側面および内外周面に作用する油圧がそれぞれ打ち消し合い、シールリング外周面とハウジング内周面との間、シールリング側面とリング溝側壁面との間のいずれにおいても摺動し易い状態で対接しているので、トルク損失や異常摩耗の発生が防止される。更に、本発明による場合、シールリングは、外径の大なる側面側を油圧作用側とは反対側(低圧側)に位置させ、即ち、シールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧作用側に向けて開放された間隙がシールリング外周面幅の広い範囲にわたって形成される状態で装着されるので、シールリング側面とリング溝側壁面との間のクサビ状間隙を消失させるようにシールリングを回転させる、図9に示すようなモーメント力が緩和され、リング溝内でのシールリングの姿勢が安定に保たれ、トルク損失や摩耗発生等の従来の問題が解消される。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のシールリングの使用方法を採用するシール装置を示す。
なお、本装置は、シールリングおよびその装着状態を除くほかは、図5に示すシール装置におけるものと同一であるので、同一部品に同一符号を記しその説明を省略する。
図1の本発明のシール装置におけるシールリングとその装着状態の例を図2、図3、及び図4に基づき説明する。
【0016】
軸2とハウジング6はアルミ合金(JIS ADC12)製又はスチール(JIS S25C)製で、シールリング20、20はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド等の耐熱性合成樹脂材又は鋳鉄材から作られる。
軸2の油圧通路3からの油圧は環状溝7を介してシールリング溝4、4に導かれている。シールリング20、20は、径方向内方に向けてリングの幅を減ずるように傾斜するテーパ状側面20a、20aと、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径より大である断面テーパ状の外周面22、22を有していて、該テーパ状側面20aとリング溝側壁面18の間に内径方向に向けて開口するクサビ状の間隙30が形成されるように、また、外周面22、22の大径部が油圧作用側、即ち環状溝7に面する側とは反対側に位置して油圧作用側に向けて断面クサビ状の間隙31をシールリング外周面22とハウジング内周面16との間に形状するように装置されている。
【0017】
上記構成としたシール装置においては、油圧作用側からシールリング20の外周面22とハウジング6の内周面16との間に、外周面22の幅の広い範囲にわたって形成される断面クサビ状間隙31に作用する油圧によって、シールリング20がハウジング6の内周面16に押し付けられる力が緩和され、また、シールリング20の側面20aとシールリング溝18との間に形成される間隙に作用する油圧により、シールリング20がリング側面18に押し付けられる押圧力が緩和される。従って、シールリング20とハウジング内周面との間、およびシールリング20とリング溝壁面16との間の摺接が容易になされ、損失トルクの発生を低減させることができる。また、シールリング20の外周面幅の広い範囲に油圧が作用するために、シールリング側面20aとリング溝側壁面18との間のクサビ状間隙を消滅させるようにシールリング20を回転されるモーメント力の発生が低減されるので、シールリング20がリング溝側壁面に固定保持されてトルク損失を増大させるといった従来技術において経験される問題が除去される。
【0018】
図2に示す例では、シールリング20の外周面を、その全幅にわたってテーパ面とした例を示したが、図3に示すように、テーパ状外周面22の油圧作用側の反対側に位置する一部分に、ハウジング内周面16に平行な狭幅の平行面32を形成することもできる。この場合、平行面32は外周面22の半分の幅よりもっと小さいものとさせる。
【0019】
また、図4に示すように、シールリング外周面22をテーパ面とする代りに、油圧作用側の反対側に位置する一部分を小さな幅で突出させて階段状に形成することもできる。
【0020】
以上の本発明のシールリングの例を示す各図では、シールリングの側面の前面をテーパ状に示したが、本発明ではシールリング側面の外周端縁部にリング溝側壁面の外周端縁部に平面で対接する狭い幅の平面部を残しておくこともできる。
【0021】
【実施例】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にカーボン繊細を添加分散させた合成樹脂を材料とし、外径φ58、幅2mm、厚み2mm、外周面テーパ(テーパ角2度)、側面テーパ(テーパ角4度)の本発明に係るシールリング▲3▼、および上記外周面テーパに代えて外周面を端部に0.07mmの突出部を有する階段状にした本発明に係るシールリング▲4▼を作成した。
比較用シールリングとして、基本寸法を前記シールリングと同一とし、図6および図7に示す形状の従来のシールリング▲1▼および図8に示す形状の従来のシールリング▲2▼(外周円弧凸量:20μ)を作成し比較テストを実施した。
上記各シールリングを装着した図5と図1に示すシール装置において、ハウジング6の回転速度:4000rpm 、油圧:1MPa 、油温:120℃の条件下で引き擦りトルクテストおよび油漏れ量テストを実施した結果および耐久テストでの軸溝摩耗量を図10に示す。図10より本発明の実施例に係るシールリングを使用する場合には、いずれも従来タイプのシールリングを使用する場合に比較して20%以上の引き擦りトルクの低減が得られ、油漏れ量についても顕著な改善効果が得られることがわかる。
なお、本テストにおいては、シールリングの合い口構造として段付合い口構造を採用したが、他の合い口形状の場合でも油漏れ量の絶対値に差が生ずるのみで低摩擦の効果に影響はない。
【0022】
【発明の効果】
本発明のシール装置では、シールリングの外周面とハウジング内周面との間に、油圧作用側に開口するシールリング外周面の幅の広い範囲にわたる間隙が形成され、又、シールリングの側面とシールリング側壁面との間に径方向内方に開口するクサビ状間隙が形成されるようにシールリング溝に装着されているので、該間隙に作用する油圧によりシールリングのリング溝側壁面およびハウジング内周面に対する圧接力が低減され、その対接面間での摺動が容易になり、トルク損失や摩耗発生を低減される。
また、シールリング外周面の広い範囲に油圧が作用するので、シールリングの姿勢を傾かせてシールリング側面とリング溝側壁面との間のクサビ状間隙を消失させるような力のモーメントの発生が避けられ、シールリングとリング溝側壁面との摺接関係が安定に維持され、損失トルクの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシール装置の例を示す断面図である。
【図2】本発明のシールリングの使用方法の例を示す図である。
【図3】本発明のシールリングの使用方法の他の例を示す図である。
【図4】本発明のシールリングの使用方法の他の例を示す図である。
【図5】従来のシール装置を示す断面図である。
【図6】従来のシールリングの使用例を示す断面図である。
【図7】図6に示すシールリングの一部断面平面図である。
【図8】従来のシールリングとその使用方法を示す断面図である。
【図9】図8に示すシールリングの装着状態を説明する断面図である。
【図10】本発明に係るシール装置と従来のシール装置での比較テスト結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 シール装置
2 軸
3 油圧通路
4 シールリング溝
5、5′、5″ シールリング(従来技術)
6 ハウジング
9 作動室
10 ピストン
12 出力軸
16 ハウジング内周面
18 シールリング側壁面
20 シールリング
20a シールリング側面(テーパ面)
22 シールリング外周面
30 シールリング側面とリング側壁面との間の間隙
31 シールリング外周面とハウジング内周面との間の間隙
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧の作用の下で使用されるシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に用いられる自動変速装置にはクラッチ機構やブレーキ機構を作動させるための油圧通路が組込まれており、該油圧通路に供給される油の漏れを防止するためのシールリングおよびシール装置が多用されている。その一例を図5に示す。
【0003】
図5において、シール装置1は、軸2に設けられた油圧通路3、該軸2の外周面に設けられた対のシールリング溝4、4、該シールリング溝4、4に装着された合成樹脂製のシールリング5、5を有し、シールリング5、5の外周面は駆動側である回転ハウジング6の内周面16に対接する。
軸2の油圧通路3は、軸2の外周面に形成された環状溝7、ハウジング6の内周面に設けられた入口8を介して、ハウジング6内の作動室9に連通しており、油圧通路3から作動室9内への油圧供給が作動室9を画定するピストン10を移動させてクラッチを係合し、ハウジング6の回転運動を出力軸12に伝達させる。作動室9への油圧供給解除が、クラッチを開放し出力軸への回転運動の伝達が停止される。
【0004】
ここで、軸2の外周面の環状溝7は、各シールリング溝4、4に連通し、シールリング溝4、4に導入された油圧は、シールリング5、5をリング溝側壁面とハウジング6の内周面とに押圧し、その間の油の漏れを防止させる。
【0005】
図5に示すような従来のシールリング5、5を使用する場合、シールリング5、5の側面に作用する油圧の総和が、シールリング5、5の内周面側に作用する油圧の総和より大であるために、シールリング5、5はシールリング溝4、4の側壁面18に対してより強く押し付けられ、シールリング5、5の側面とシールリング溝4、4の側壁面18との間の摩擦力により軸2側に保持され、ハウジング6の内周面に対して摺接することになる。
【0006】
しかし、この場合、該摺接による損失トルクが大であることから、シールリング5、5の側面とリング溝側壁面18との間で摺接がなされるようにしたシールリングも提案されている。その例を図6に示す。
【0007】
図6において、シールリング5′、5′は、その両側面に周方向に延びる環状溝14、14と、周方向に離間して設けられていて該環状溝14、14をリング内周側に連通させる複数の径方向溝15、15を有し、該溝14、15に油圧を導くことによりシールリング5′をシールリング溝側壁面18に押圧する力を緩和し、シールリング5′の側面がシールリング溝側壁面18に対して摺動し易くする。
【0008】
上記構成のシールリング5′を使用する場合、シールリング溝加工の精度のバラツキにより溝が外開きに形成されている場合や、ハウジング6の回転軸心と軸2の軸心との間に傾き等がある場合には、シールリング溝側壁面18に対接してその間をシールするシールリング5′の外周側対接面部l1 とリング溝側壁面18との間が離されて側面シール特性が損われる難がある。
【0009】
上記難点の解消を目的とするシールリングとして図8に示す如く、側面をテーパ面とし、外周面を円弧面にしたシールリング5″が提案されている。
この種のシールリング5″は、側面のテーパ面の一部28でシールリング溝4の側壁面とのシール面を確保し、シールリング側面のテーパ面とリング溝側壁面18との間に形成されるクサビ状間隙26aに導かれる油圧によりシールリング5″をリング溝側壁面18に押し付ける力を緩和し、トルク損失を低減させるとともに、外周面を円弧面とすることで、ハウジング6や軸2の振れを吸収し外周面とハウジング内周面との対接を確保し、シール特性の劣化を防止することを目的とするシールリングである。
【0010】
しかしながら、外周面が断面円弧状をなしているために、図9の(a)に示すように、シールリング外周面の半分の部分に作用する油圧とシールリングの内周面の半分部分に作用する油が相殺し、シールリング内周面の残りの部分に作用する油圧により、シールリング5″を矢印A方向に回転させるモーメント力を生じ、このモーメント力により図9の(b)に示す如く、シールリングの側面がシールリング溝18に全面で対接する状態となり、本来の側面テーパの効果が得られず、損失トルクや溝摩耗が大きくなる難点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、シールリングとリング溝側面およびシールリングとハウジング内周面との摺接関係を適正にすることにより、前記従来技術の不具合を解消させ、トルク損失や摩耗の発生を低減させることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するために、シールリングの径方向内方に向けてリングの幅を減するように傾斜したテーパ面を有する側面と、一方の側面側の外径が、他方の側面側の外径より大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面とを有するシールリングを、ハウジングに収容された軸の外周面に設けられていて一方側から油圧が導かれるシールリング溝に、前記テーパ状側面と該シールリング溝の側壁面との間に断面クサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径の大なる側面側を油圧導入側の反対側に位置させてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧導入側に開口された間隙が形成されるように装着するシール装置を提供する。
【0013】
また、本発明では、油圧を受ける環状溝と該環状溝の両側に配されていて該環状溝に連通するシールリング溝を外周面に有する軸と、前記環状溝に通じる窓を備えた作動室および該作動室内の油圧を受けて往復動するピストンを有するハウジングと、前記シールリング溝に装着されたシールリングとを有するシール装置において、該シールリングが、シールリングの径方向内方に向けてリングの幅を減するように傾斜したテーパ面でなる側面と、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径より大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面を有するシールリングであって、前記テーパ状側面と該シールリング側壁面との間に断面クサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径の大なる側面側を油圧作用側の反対側に位置させてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧作用側に開放された間隙を形成して装着されている構成のシール装置を提供する。
【0014】
上記の本発明のシール装置による場合、シールリング側面とリング溝側壁面との間には内方に開放されたクサビ状の間隙が形成され、また、シールリング外周側とハウジング内周面との間には、油圧作用側に開放された間隙がシールリング外周面幅の広い範囲(半分以上)にわたって形状されているので、両側面および内外周面に作用する油圧がそれぞれ打ち消し合い、シールリング外周面とハウジング内周面との間、シールリング側面とリング溝側壁面との間のいずれにおいても摺動し易い状態で対接しているので、トルク損失や異常摩耗の発生が防止される。更に、本発明による場合、シールリングは、外径の大なる側面側を油圧作用側とは反対側(低圧側)に位置させ、即ち、シールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧作用側に向けて開放された間隙がシールリング外周面幅の広い範囲にわたって形成される状態で装着されるので、シールリング側面とリング溝側壁面との間のクサビ状間隙を消失させるようにシールリングを回転させる、図9に示すようなモーメント力が緩和され、リング溝内でのシールリングの姿勢が安定に保たれ、トルク損失や摩耗発生等の従来の問題が解消される。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のシールリングの使用方法を採用するシール装置を示す。
なお、本装置は、シールリングおよびその装着状態を除くほかは、図5に示すシール装置におけるものと同一であるので、同一部品に同一符号を記しその説明を省略する。
図1の本発明のシール装置におけるシールリングとその装着状態の例を図2、図3、及び図4に基づき説明する。
【0016】
軸2とハウジング6はアルミ合金(JIS ADC12)製又はスチール(JIS S25C)製で、シールリング20、20はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド等の耐熱性合成樹脂材又は鋳鉄材から作られる。
軸2の油圧通路3からの油圧は環状溝7を介してシールリング溝4、4に導かれている。シールリング20、20は、径方向内方に向けてリングの幅を減ずるように傾斜するテーパ状側面20a、20aと、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径より大である断面テーパ状の外周面22、22を有していて、該テーパ状側面20aとリング溝側壁面18の間に内径方向に向けて開口するクサビ状の間隙30が形成されるように、また、外周面22、22の大径部が油圧作用側、即ち環状溝7に面する側とは反対側に位置して油圧作用側に向けて断面クサビ状の間隙31をシールリング外周面22とハウジング内周面16との間に形状するように装置されている。
【0017】
上記構成としたシール装置においては、油圧作用側からシールリング20の外周面22とハウジング6の内周面16との間に、外周面22の幅の広い範囲にわたって形成される断面クサビ状間隙31に作用する油圧によって、シールリング20がハウジング6の内周面16に押し付けられる力が緩和され、また、シールリング20の側面20aとシールリング溝18との間に形成される間隙に作用する油圧により、シールリング20がリング側面18に押し付けられる押圧力が緩和される。従って、シールリング20とハウジング内周面との間、およびシールリング20とリング溝壁面16との間の摺接が容易になされ、損失トルクの発生を低減させることができる。また、シールリング20の外周面幅の広い範囲に油圧が作用するために、シールリング側面20aとリング溝側壁面18との間のクサビ状間隙を消滅させるようにシールリング20を回転されるモーメント力の発生が低減されるので、シールリング20がリング溝側壁面に固定保持されてトルク損失を増大させるといった従来技術において経験される問題が除去される。
【0018】
図2に示す例では、シールリング20の外周面を、その全幅にわたってテーパ面とした例を示したが、図3に示すように、テーパ状外周面22の油圧作用側の反対側に位置する一部分に、ハウジング内周面16に平行な狭幅の平行面32を形成することもできる。この場合、平行面32は外周面22の半分の幅よりもっと小さいものとさせる。
【0019】
また、図4に示すように、シールリング外周面22をテーパ面とする代りに、油圧作用側の反対側に位置する一部分を小さな幅で突出させて階段状に形成することもできる。
【0020】
以上の本発明のシールリングの例を示す各図では、シールリングの側面の前面をテーパ状に示したが、本発明ではシールリング側面の外周端縁部にリング溝側壁面の外周端縁部に平面で対接する狭い幅の平面部を残しておくこともできる。
【0021】
【実施例】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にカーボン繊細を添加分散させた合成樹脂を材料とし、外径φ58、幅2mm、厚み2mm、外周面テーパ(テーパ角2度)、側面テーパ(テーパ角4度)の本発明に係るシールリング▲3▼、および上記外周面テーパに代えて外周面を端部に0.07mmの突出部を有する階段状にした本発明に係るシールリング▲4▼を作成した。
比較用シールリングとして、基本寸法を前記シールリングと同一とし、図6および図7に示す形状の従来のシールリング▲1▼および図8に示す形状の従来のシールリング▲2▼(外周円弧凸量:20μ)を作成し比較テストを実施した。
上記各シールリングを装着した図5と図1に示すシール装置において、ハウジング6の回転速度:4000rpm 、油圧:1MPa 、油温:120℃の条件下で引き擦りトルクテストおよび油漏れ量テストを実施した結果および耐久テストでの軸溝摩耗量を図10に示す。図10より本発明の実施例に係るシールリングを使用する場合には、いずれも従来タイプのシールリングを使用する場合に比較して20%以上の引き擦りトルクの低減が得られ、油漏れ量についても顕著な改善効果が得られることがわかる。
なお、本テストにおいては、シールリングの合い口構造として段付合い口構造を採用したが、他の合い口形状の場合でも油漏れ量の絶対値に差が生ずるのみで低摩擦の効果に影響はない。
【0022】
【発明の効果】
本発明のシール装置では、シールリングの外周面とハウジング内周面との間に、油圧作用側に開口するシールリング外周面の幅の広い範囲にわたる間隙が形成され、又、シールリングの側面とシールリング側壁面との間に径方向内方に開口するクサビ状間隙が形成されるようにシールリング溝に装着されているので、該間隙に作用する油圧によりシールリングのリング溝側壁面およびハウジング内周面に対する圧接力が低減され、その対接面間での摺動が容易になり、トルク損失や摩耗発生を低減される。
また、シールリング外周面の広い範囲に油圧が作用するので、シールリングの姿勢を傾かせてシールリング側面とリング溝側壁面との間のクサビ状間隙を消失させるような力のモーメントの発生が避けられ、シールリングとリング溝側壁面との摺接関係が安定に維持され、損失トルクの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシール装置の例を示す断面図である。
【図2】本発明のシールリングの使用方法の例を示す図である。
【図3】本発明のシールリングの使用方法の他の例を示す図である。
【図4】本発明のシールリングの使用方法の他の例を示す図である。
【図5】従来のシール装置を示す断面図である。
【図6】従来のシールリングの使用例を示す断面図である。
【図7】図6に示すシールリングの一部断面平面図である。
【図8】従来のシールリングとその使用方法を示す断面図である。
【図9】図8に示すシールリングの装着状態を説明する断面図である。
【図10】本発明に係るシール装置と従来のシール装置での比較テスト結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 シール装置
2 軸
3 油圧通路
4 シールリング溝
5、5′、5″ シールリング(従来技術)
6 ハウジング
9 作動室
10 ピストン
12 出力軸
16 ハウジング内周面
18 シールリング側壁面
20 シールリング
20a シールリング側面(テーパ面)
22 シールリング外周面
30 シールリング側面とリング側壁面との間の間隙
31 シールリング外周面とハウジング内周面との間の間隙
Claims (6)
- シールリングの径方向内方に向けてリング幅を減ずるように傾斜したテーパ面でなる側面と、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径より大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面を有するシールリングを、
ハウジングに収容された軸の外周面に設けられていて一方側から油圧が導かれるシールリング溝に、
前記テーパ面でなる側面と該シールリング溝の側壁面との間に内径方向に開口するクサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径が大なる側面側を油圧導入側の反対側に位置させてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧導入側に開口する間隙が形成される状態で装着するシール装置。 - シールリングの外周面の縦断面形状がテーパ状をなしている請求項1記載のシール装置。
- シールリングの外周面の縦断面形状が階段状をなしている請求項1記載のシール装置。
- 油圧を受ける環状溝と該環状溝の両側に設けられていて該環状溝に連通するシールリング溝を外周面に有する軸と、
前記環状溝に通じる入口を有する作動室および該作動室の一壁を構成し作動室内の油圧を受けて往復動するピストンを有するハウジングと、
前記シールリング溝に装着されたシールリングとを有するシール装置において、 該シールリングが、シールリングの径方向内方に向けてリングの幅を減するように傾斜したテーパ面でなる側面と、一方の側面側の外径が他方の側面側の外径よりも大となるように一部又は全面テーパあるいは階段状の断面形状をなす外周面を有するシールリングであって、前記テーパ面でなる側面と該シールリング溝の側壁面との間に内径方向に向けて開口するクサビ状の間隙が形成され、且つ、前記外径が大なる側面側が油圧導入側の反対側に位置されてシールリング外周面とハウジング内周面との間に油圧導入側に向けて開口する間隙を形成して装着されていることを特徴とするシール装置。 - シールリングの外周面の全部又は一部がテーパ面である請求項4記載のシール装置。
- シールリングの外周面が軸方向に階段状に形成されている請求項4記載のシール装置。
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