JP3800045B2 - ウエザーストリップ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のドア開口周縁に設けられるウエザーストリップ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両のドア開口周縁にはウエザーストリップが設けられる。ウエザーストリップは、ドア開口周縁のフランジに対し嵌め込まれることによって保持される断面略U字形のトリム部と、前記トリム部から突出するよう設けられた中空状のシール部とを備えている。トリム部の内部には金属製のインサートが埋設されている。また、トリム部の側壁の内面には、内側に向かって延びる保持リップ部が一体形成されている。ウエザーストリップの取付に際しては、トリム部がフランジに嵌め込まれ、基本的には前記保持リップ部による弾性力に基づいて取付状態が維持されるようになっている。そして、ドア閉時には、ドアの縁部が前記シール部と当接し、前記シール部が潰れ変形することによって、ドアとボディとの間がシールされる。かかるウエザーストリップのうち、長手方向の多くの部分、或いは、全部が、所謂押出成形法によって成形される。
【0003】
ところで、取付けられる側のフランジの厚みは、部位によって相違することがある。この場合、前記保持リップ部の大きさ(長さ)が常に一定だとすると、フランジの厚みが大きい部位においては、嵌め込み時の応力(挿入荷重)が大きくなり、取付に際しての作業性の悪化を招いてしまうという不具合が生じうる。
【0004】
このような不具合を抑制するべく、押出成形に際し、フランジの厚みの変化に追従させて、保持リップ部の長さを連続的に可変とすることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ウエザーストリップの製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じてしまうことがある。このようなばらつきが生じると、折角上記のようなシビアにリップ長さを変化させたとしても、その意義が没却されてしまうおそれがある。すなわち、上記ばらつきが生じた場合、フランジの厚みの小さい部位から段差部を経て厚みの大きい部位に沿ってウエザーストリップを取り付けようとするとき、段差部を過ぎても依然として保持リップ部の長さが長い部位が存在する場合があり、かかる場合、挿入荷重が大きくなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じたとしても、取付作業性の悪化を防止することのできるウエザーストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0012】
手段1.車両のドア開口周縁のフランジに嵌め込まれ、車内側側壁部、車外側側壁部及び両側壁部を連結する連結部を有する断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記車内側側壁部及び車外側側壁部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップであって、
前記車外側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部は一定の長さを有し、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みが、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分された上で、
前記車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部が、前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられており、
前記車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部のうち、少なくとも前記フランジの厚みが最も大きい区間に対応する前記保持リップ部の長さは最も短く、
かつ、当該最も短い保持リップ部が存在する区間は前記フランジの厚みが最も大きい区間よりもウエザーストリップの長手方向に所定長だけ長く設定されていることを特徴とするウエザーストリップ。
【0013】
手段1によれば、車外側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部の長さが一定であり、車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部のうち、少なくともフランジの厚みが最も大きい区間に対応する保持リップ部の長さは最も短い。このため、基本的には、フランジの厚みが最も大きい区間であっても、対応する保持リップ部の長さが最も短くなっていないことに起因して挿入荷重が大きくなってしまうことが起こりにくい。しかも、車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部(一方の保持リップ部)の長さを考慮すればよいため、双方の保持リップ部の長さを異ならせる場合に比べ、前記挿入荷重等の調整を行いやすい。また、製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じた場合であっても、当該最も短い保持リップ部が存在する区間は、フランジの厚みが最も大きい区間よりも長手方向に所定長だけ長く設定されている。このため、ばらつきがあったとしても、対応する保持リップ部の長さが予定よりも長いことによって挿入荷重が大きくなってしまうという事態が抑制される。従って、取付作業性の悪化を防止することができる。
また、保持リップ部の長さが前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられるため、ウエザーストリップの製造に際し、連続的な可変制御を行う場合に比べて長さを切り換える際の制御が複雑となってしまうことがなく、コストが増大してしまうこともない。また、フランジの厚みの変化が多い場合であっても、長さの変更が間に合わず、所望とするリップ長さを得られないという事態も起こりにくい。さらには、連続的に変化させるシビアな制御を行う必要もないことから、押出速度の増大を図ることができ、もって生産性の向上を図ることができる。なお、具体的には、「前記所定段階は、5段階以下であること」が望ましく、「4段階以下であること」がより望ましい。また、「3段階」或いは「2段階」としてもよい。
【0014】
手段2.前記所定長は、製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて設定されていることを特徴とする手段1に記載のウエザーストリップ。
【0015】
手段2によれば、製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて、前記所定長が設定されるため、保持リップ部の長さが短い区間(又は最も短い区間)が長すぎること、或いは、短すぎることによる不具合が起こりにくい。尚、「製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて」に代えて、「製造時及び取付時において起こりうる最大ばらつきに準じて又はほぼ準じて」としてもよい。
【0018】
手段3.長手方向における前記保持リップ部の長さの切換区間の長さが、40mm以下であることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザーストリップ。
手段4.車両のドア開口周縁における、段差部を境として厚肉部と薄肉部とを有するフランジに保持される断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記トリム部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップであって、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みが、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分された上で、
前記保持リップ部の長さが、前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられており、
前記保持リップ部は、前記フランジの厚みに応じて長手方向に沿って長さの相違する長リップ部及び短リップ部を有し、少なくとも前記厚肉部には短リップ部が対応するよう構成され、該短リップ部は、段差部を跨いで薄肉部の一部にまで延びていることを特徴とするウエザーストリップ。
【0019】
手段4によれば、保持リップ部は、段差部を境として厚肉部と薄肉部とを有するフランジの厚みに応じて長手方向に沿って長さの相違する長リップ部及び短リップ部を有し、少なくとも前記厚肉部には短リップ部が対応するよう構成されている。このため、基本的には、厚肉部区間であっても、対応する保持リップ部が短リップ部となっていないことに起因して嵌め込み時の応力(挿入荷重)が大きくなってしまうことが起こりにくい。また、製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じた場合であっても、当該短リップ部の存在する区間が段差部を跨いで薄肉部の一部にまで延びている。このため、ばらつきがあったとしても、厚肉部に長リップ部が対応してしまうことによって挿入荷重が大きくなってしまうという事態が抑制される。従って、取付作業性の悪化を防止することができる。
また、保持リップ部の長さが前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられるため、ウエザーストリップの製造に際し、連続的な可変制御を行う場合に比べて長さを切り換える際の制御が複雑となってしまうことがなく、コストが増大してしまうこともない。また、フランジの厚みの変化が多い場合であっても、長さの変更が間に合わず、所望とするリップ長さを得られないという事態も起こりにくい。さらには、連続的に変化させるシビアな制御を行う必要もないことから、押出速度の増大を図ることができ、もって生産性の向上を図ることができる。
【0022】
手段5.前記保持リップ部の先端部分の形状が常に一定であることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のウエザーストリップ。
【0023】
手段5によれば、保持リップ部の先端部分の形状が常に一定であるため、ウエザーストリップの製造に際しては、主として保持リップ部の長さによってのみ挿入荷重等を考慮すればよく、先端部分の形状が部位によって相違する場合に比べて、挿入荷重等の調整を行いやすくなる。
【0024】
手段6.車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記トリム部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップの製造方法であって、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みを、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分し、
前記保持リップ部に関し、前記区分に応じて、複数の所定段階用意された中から1つの目標長さを前記長手方向に沿って設定し、
ウエザーストリップの押出成形に際しては、
前記保持リップ部の長さが前記目標長さとなるように制御するとともに、前記目標長さの切換に伴って前記保持リップ部の長さを切換え、
少なくとも前記フランジの厚みが最も大きい区間に対応する前記保持リップ部の長さが最も短くなるようにし、
かつ、当該最も短い保持リップ部が存在する区間が、前記フランジの厚みの最も大きい区間よりもウエザーストリップの長手方向に製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて設定された所定長だけ長くなるようにして成形することを特徴とするウエザーストリップの製造方法。
【0025】
手段6によれば、押出成形に際し、少なくともフランジの厚みが大きい区間に対応する保持リップ部の長さは、厚みが小さい区間に比べて短くされる。このため、得られるウエザーストリップに関し、基本的には、フランジの厚みが大きい区間であっても、対応する保持リップ部の長さが長いことに起因して嵌め込み時の応力(挿入荷重)が大きくなってしまうことが起こりにくい。また、製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じた場合であっても、短い保持リップ部が存在する区間が、長手方向に所定長だけ長く設定される。このため、ばらつきがあったとしても、対応する保持リップ部の長さが予定よりも長いことによって挿入荷重が大きくなってしまうという事態が抑制される。従って、取付作業性の悪化を防止することができる。
また、製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて、前記所定長が設定されるため、保持リップ部の長さが短い区間(又は最も短い区間)が長すぎること、或いは、短すぎることによる不具合が起こりにくい。尚、「製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて」に代えて、「製造時及び取付時において起こりうる最大ばらつきに準じて又はほぼ準じて」としてもよい。
また、保持リップ部の長さが前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられるため、ウエザーストリップの製造に際し、連続的な可変制御を行う場合に比べて長さを切り換える際の制御が複雑となってしまうことがなく、コストが増大してしまうこともない。また、フランジの厚みの変化が多い場合であっても、長さの変更が間に合わず、所望とするリップ長さを得られないという事態も起こりにくい。さらには、連続的に変化させるシビアな制御を行う必要もないことから、押出速度の増大を図ることができ、もって生産性の向上を図ることができる。
手段7.長手方向における前記保持リップ部の長さの切換区間の長さを40mm以下としたことを特徴とする手段6に記載のウエザーストリップの製造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図2に示すように、自動車1の側方のドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁には、ウエザーストリップ4が設けられる。本実施の形態のウエザーストリップ4は、ドア開口3のうち、下部を除く周縁にわたって取付けられ、全て押出成形法によって成形されている。
【0030】
図1,3に示すように、ウエザーストリップ4は、トリム部5及びシール部6を備えている。トリム部5は、車内側側壁11、車外側側壁12及び両側壁11,12を連結する断面湾曲形状をなす連結部13を備えており、全体として略U字形をなしている。トリム部5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)ソリッドゴムによって構成されており、その内部には、金属製のインサート14が埋設されている。
【0031】
車外側側壁12の内面には、トリム部5の内側(車両幅方向車内側)に向かって延びる複数の保持リップ部15が一体形成されている。当該保持リップ部15は、いずれの部位においても一定の大きさ(長さ)を有している。また、車内側側壁11の内面には、トリム部5の内側(車両幅方向車外側)に向かって延びる可変保持リップ部16が一体形成されている。なお、前記連結部13には図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆うためのカバーリップ17が一体形成されている。
【0032】
さらに、シール部6は前記車外側側壁12に対し車外側に突出して設けられており、中空状をなしている。該シール部6は、EPDMスポンジゴムによって構成されている。そして、ドア2閉時には、シール部6が潰れ変形することで、ドア2と自動車1のボディとの間がシールされるようになっている。
【0033】
さて、上記ウエザーストリップ4は、トリム部5がボディ側のドア開口3周縁に嵌め込まれることによって取付けられている。より詳しく説明すると、ボディは、インナパネル21及びアウタパネル22を備えており、基本的にはこれら両パネル21,22の周縁部分が接合されることにより、フランジ23が形成されている。但し、本実施の形態では、各部位によってフランジ23の厚みが相違するようになっている。例えば、図3(a)に示すように、インナパネル21及びアウタパネル22のみが相互に接合されることによってフランジ23が構成されている部位もあれば、図3(b),(c)に示すように、強度を高めるべく板状のリーンフォース24,25が両パネル21,22間に設けられることによってフランジ23が構成されている部位もある。また、1枚のリーンフォース24又は25のみが設置されている部位もあれば、2枚のリーンフォース24,25が重ね合わされて設置されている部位(厚肉部)もある。
【0034】
これに対し、本実施の形態では、基本的には、フランジ23の厚みに応じて、前記可変保持リップ部16の長さがウエザーストリップ4の長手方向に相違するようになっている。但し、フランジの厚みに応じて連続的にリップ長さが徐変させられている訳ではなく、本実施の形態における可変保持リップ部16の長さは3段階に切り換えられている。
【0035】
図4は、上述したウエザーストリップ4の押出成形に際し用いられるダイス31等を模式的に示す図である。ダイス31は、前記ウエザーストリップ4を成形するための成形孔32を有しており、この成形孔32から未加硫のゴム材料が押し出されるようになっている。また、前記トリム部5に対応する部位は、当初開いた状態で押し出されるよう略扁平状をなしており(後に湾曲させられる)、当該部位には、未加硫ゴムとともにインサート14が連続的に供給されるようになっている。
【0036】
また、可変保持リップ部16の長さを切り換えるための機構として、シャッタ33及びアクチュエータ34が設けられている。シャッタ33の両側にはガイドレール35が設けられ、シャッタ33は、ガイドレール35に沿ってスライド可能となっている。このスライドにより、前記成形孔32のうち、可変保持リップ部16に対応する部位の開口長が切り換えられるようになっている。但し、シャッタ33は、可変保持リップ部16の先端がいずれも一定の形状を有するような構造を有し、かつ、そのようにスライドさせられる。また、アクチュエータ34は、シャッタ33をスライドさせるためのものであって、シリンダ、カム機構、或いはモータといった公知のものを適宜採用することができる。さらに、アクチュエータ34は、制御装置41によって駆動制御される。
【0037】
次に、上記のように構成されてなるウエザーストリップ4の製造方法のうち、主要な押出成形工程について説明する。
【0038】
なお、制御装置41には、ウエザーストリップ4の長手方向に沿って変動するフランジ23の厚みに関するデータ(図5(a),(b)参照)、つまり、一方の端面αから他方の端面βに至るまでの間における対応するフランジ23の厚みに関する情報が予め入力されており、制御装置41は、かかるデータに基づいてアクチュエータ34を制御する。
【0039】
より詳しくは、図5(b),(c)に示すように、フランジ23の厚みが比較的大きいc〜dの範囲内にあるときには、「厚み大」に属するものとして区分され、可変保持リップ部16の目標長さが短いものとされ、シャッタ33が図4の上方に位置するようアクチュエータ34が制御される。これにより、少なくともフランジ23の厚みが比較的大きい区間においては、実際の可変保持リップ部16の長さが短いものとなる。
【0040】
また、フランジ23の厚みが中程度のb〜cの範囲内にあるときには、「厚み中」に属するものとして区分され、目標長さが中程度とされ、シャッタ33が図4の中間に位置するようアクチュエータ34が制御される。これにより、フランジ23の厚みが中程度の区間においては、実際の可変保持リップ部16の長さが中程度のものとなる。さらに、フランジ23の厚みが比較的小さいa〜bの範囲内にあるときには、「厚み小」に属するものとして区分され、目標長さが長いものとされ、シャッタ33が図4の下方に位置するようアクチュエータ34が制御される。これにより、フランジ23の厚みが比較的小さい区間においては、実際の可変保持リップ部16の長さが長いものとなる。
【0041】
但し、フランジ23の厚みが比較的大きい部位(厚肉部)の両側又は一方の側には、段差部を境にして厚みが中程度の部位(ここでは便宜上「薄肉部」と称する)が存在している。本実施の形態では、少なくとも前記厚肉部に対応する部位の可変保持リップ部16が短くなっているのは勿論のこと、該短い可変保持リップ部16は、段差部を跨いで薄肉部の一部にまで延びている。
【0042】
例えば、図6に示すように、フランジ23が、4枚のパネル(インナパネル21、アウタパネル22及び2枚のリーンフォース23,24)によって構成されている区間(厚肉部)の両側には、それぞれ段差部を境に、3枚のパネル(インナパネル21、アウタパネル22及び1枚のリーンフォース23又は24)によって構成されている区間(薄肉部)が存在するとする。本実施の形態では、厚肉部に対応する区間は、目標長さが短いものとされるのみならず、その両側にさらに所定長だけ目標長さが短い領域が設定される。これにより、可変保持リップ部16の長さの短い区間が、厚肉部の存在している区間よりも所定長だけ長いウエザーストリップ4が得られる。
【0043】
ここで、前記所定長は次のように設定される。すなわち、本実施の形態においては、ウエザーストリップ4の製造時における製造ばらつきが、その長手方向にプラスマイナス15mm程度であることが経験上明らかとなっており、取付時における取付ばらつきがプラスマイナス5mm程度であることが経験上明らかとなっている。従って、製造、取付双方のばらつきを考慮すると、最大でプラスマイナス20mmの範囲内でばらつきが起こりうる。そして、このようなばらつきが最大限に起こってしまった場合であっても、厚肉部に対しては、確実に可変保持リップ部16の長さの短い部分が対応するよう、前記所定長は両側方に20mmずつ、合計40mmに設定されている。
【0044】
なお、ウエザーストリップ4の長手方向において、目標長さの切換に伴い可変保持リップ部16の長さが切換えられる箇所があるが、当該可変保持リップ部16の長さの切換は、徐々にではなく比較的速やかに(短期間の間に)行われる。すなわち、本実施の形態においては、上記のようにウエザーストリップ4の製造時における製造、取付ばらつきを考慮して、可変保持リップ部16の長さの短い部分がウエザーストリップ4の長手方向に長めに設定されている。このため、ばらつきがなかった場合等には、フランジ23の厚みが中程度であっても、対応する可変保持リップ部16の長さが中程度となる区間が生じうるのであるが、このような区間を極力短くするべく、可変保持リップ部16の長さの切換が速やかに行われるように、具体的には、切換区間の長さがウエザーストリップ4の長手方向に例えば35mmとされる。従って、可変保持リップ部16による保持力が幾分弱い区間が極力短いものとされ、もって、抜け等の不具合が抑制される。
【0045】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、フランジ23の厚みが大きいc〜dの範囲内にあるとき、「厚み大」に属するものとして区分され、可変保持リップ部16の目標長さが短いものとされる。このため、基本的には、挿入荷重が増大してしまうといった事態が起こりにくくなり、取付作業性の悪化を防止することができる。また、逆に、フランジ23の厚みが小さいa〜bの範囲内にあるときには、「厚み小」に属するものとして区分され、目標長さが長いものとされる。そして、フランジ23の厚みが小さい区間では、実際の可変保持リップ部16が長いものとなる。このため、十分な弾性力を確保することができ、抜けを起こりにくくし、取付状態の安定化を図ることができる。
【0046】
また、フランジ23の厚みが比較的大きい部位の両側又は一方の側には、段差部を境にして薄肉部が存在しており、少なくとも厚肉部に対応する部位の可変保持リップ部16は短いのは勿論のこと、該短い区間が段差部を跨いで薄肉部の一部にまで延びている。特に、前記可変保持リップ部16の長さが短い区間は、厚肉部区間よりも長手方向に長く設定されている。このため、ウエザーストリップ4の製造や取付に際して、長手方向に多少のばらつきが生じた場合であっても、対応する保持リップ部16の長さが予定よりも長いことによって挿入荷重が大きくなってしまうという事態が抑制される。その結果、取付作業性の悪化を防止することができる。
【0047】
しかも、保持リップ部16の長さが段階的に切換えられため、製造に際し、制御が複雑となってしまうことがなく、制御の複雑化に伴うコストの増大を抑制することができる。また、フランジ23の厚みの変化が多い場合であっても、長さの変更が間に合わず、所望とするリップ長さを得られないという事態も起こりにくい。さらに、押出速度の増大を図ることができ、もって生産性の向上を図ることができる。
【0048】
さらにまた、本実施の形態では、車外側側壁12に設けられる保持リップ部15については、いずれの部位においても一定の長さとし、車内側側壁11に設けられる可変保持リップ部16の長さを切換えることとしている。このため、フランジ23の厚みに応じた可変保持リップ部16の目標長さ等の設定を行いやすく、挿入荷重や保持力の調整を図りやすい。しかも双方の保持リップ部の長さを異ならせる場合に比べ、制御の簡素化を図ることができる。
【0049】
尚、上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0050】
(a)一方の側壁部(例えば車内側側壁部11)から複数の可変保持リップ部が延びるような構成であってもよい。
【0051】
(b)上記実施の形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザーストリップ4の製造方法について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(ラッゲージリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドアの開口周縁に設けられるウエザーストリップについて適用することも可能である。
【0052】
(c)上記実施の形態では、可変保持リップ部16の長さを3段階に切換えることとしているが、2段階であってもよいし、4段階以上に切換えることとしてもよい。但し、制御の簡素化を図ること等を考慮すると、5段階以下であることが望ましく、4段階以下であることがより望ましい。また、上記のような段階的な切換なくして、可変保持リップ部16の長さが連続的に徐変される区間があっても差し支えない。
【0053】
(d)上記実施の形態では、トリム部5をソリッドゴムにより構成し、シール部6をスポンジゴムにより構成することとしているが、両者を同一材料により構成することとしてもよい。また、ウエザーストリップ4を構成する素材としてEPDMを例示しているが、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の他のゴム材料を用いてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、或いは軟質のポリ塩化ビニル等のゴム状弾性を有する他の弾性材料により構成してもよい。
【0054】
(e)上記実施の形態では、ウエザーストリップ4が、ドア開口3の周縁の下部を除くほぼ全周にわたって取付けられることとしているが、完全に全周にわたって取付けられることとしてもよい。また、必ずしも全周或いはほぼ全周でなくてもよく、例えば部分的に取付けられるウエザーストリップであってもよい。また、型接続部されることで構成されるウエザーストリップの押出成形部にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b),(c)は、一実施の形態におけるウエザーストリップを示す断面図である。
【図2】自動車を示す斜視図である。
【図3】(a),(b),(c)は、部位において相違するウエザーストリップの取付構造を示す断面図である。
【図4】ウエザーストリップの押出成形に際し用いられるダイス等を模式的に示す図である。
【図5】(a)はウエザーストリップを示す側面模式図であり、(b)はウエザーストリップの長手方向に対応するフランジの厚みの関係を示すデータであり、(c)は長手方向に対応する可変保持リップ部の長さの関係を示すチャートである。
【図6】ウエザーストリップの長手方向に沿ったフランジの厚みの変化に対する可変保持リップ部の長さの関係を説明するための線図である。
【符号の説明】
1…車両としての自動車、2…ドア、3…ドア開口、4…ウエザーストリップ、5…トリム部、6…シール部、11…車内側側壁、12…車外側側壁、13…連結部、15…保持リップ部、16…可変保持リップ部、23…フランジ、31…ダイス、33…シャッタ、34…アクチュエータ、41…制御装置。
Claims (7)
- 車両のドア開口周縁のフランジに嵌め込まれ、車内側側壁部、車外側側壁部及び両側壁部を連結する連結部を有する断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記車内側側壁部及び車外側側壁部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップであって、
前記車外側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部は一定の長さを有し、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みが、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分された上で、
前記車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部が、前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられており、
前記車内側側壁部の内面から延出形成された保持リップ部のうち、少なくとも前記フランジの厚みが最も大きい区間に対応する前記保持リップ部の長さは最も短く、
かつ、当該最も短い保持リップ部が存在する区間は前記フランジの厚みが最も大きい区間よりもウエザーストリップの長手方向に所定長だけ長く設定されていることを特徴とするウエザーストリップ。 - 前記所定長は、製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて設定されていることを特徴とする請求項1に記載のウエザーストリップ。
- 長手方向における前記保持リップ部の長さの切換区間の長さが、40mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザーストリップ。
- 車両のドア開口周縁における、段差部を境として厚肉部と薄肉部とを有するフランジに保持される断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記トリム部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップであって、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みが、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分された上で、
前記保持リップ部の長さが、前記区分に応じて複数の所定段階に切換えられており、
前記保持リップ部は、前記フランジの厚みに応じて長手方向に沿って長さの相違する長リップ部及び短リップ部を有し、少なくとも前記厚肉部には短リップ部が対応するよう構成され、該短リップ部は、段差部を跨いで薄肉部の一部にまで延びていることを特徴とするウエザーストリップ。 - 前記保持リップ部の先端部分の形状が常に一定であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のウエザーストリップ。
- 車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部と、
前記トリム部の内面から前記フランジ側に向かって延出形成された保持リップ部とを備え、
前記トリム部の長手方向に沿ってインサートが埋設されたウエザーストリップの製造方法であって、
ウエザーストリップの長手方向に沿って変動している前記ドア開口周縁のフランジの厚みを、前記長手方向に対応させて、所定範囲を有する複数の所定段階に区分し、
前記保持リップ部に関し、前記区分に応じて、複数の所定段階用意された中から1つの目標長さを前記長手方向に沿って設定し、
ウエザーストリップの押出成形に際しては、
前記保持リップ部の長さが前記目標長さとなるように制御するとともに、前記目標長さの切換に伴って前記保持リップ部の長さを切換え、
少なくとも前記フランジの厚みが最も大きい区間に対応する前記保持リップ部の長さが最も短くなるようにし、
かつ、当該最も短い保持リップ部が存在する区間が、前記フランジの厚みの最も大きい区間よりもウエザーストリップの長手方向に製造時及び取付時の双方のばらつきに基づいて設定された所定長だけ長くなるようにして成形することを特徴とするウエザーストリップの製造方法。 - 長手方向における前記保持リップ部の長さの切換区間の長さを40mm以下としたことを特徴とする請求項6に記載のウエザーストリップの製造方法。
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