JP3799833B2 - 可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、開閉時期を任意に制御可能な可変動弁式の吸気弁及び排気弁を備え、吸気弁の閉時期を制御して吸入空気量を制御する可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量(シリンダ内新気量)検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置としては、特開平9−303242号公報に記載されているように、吸気通路にてエアフローメータにより吸入空気量を検出し、吸気弁開時期及び吸気弁閉時期における吸入空気量の平均値、又は吸気弁開期間の中間時点における吸入空気量を、シリンダ吸入空気量(吸入空気量代表値)とするものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなシリンダ吸入空気量検出装置にあっては、エアフローメータを必要とする一方、可変動弁機構によりシリンダ吸入空気流速が大きいときに吸気弁を閉じる等して、吸入空気流速が急変する場合には、エアフローメータ出力値に誤差を生じ、シリンダ吸入空気量を正確に検出できないという問題点があった。
【0004】
また、エンジンの運転条件と吸気管圧力(更には吸気温度)とから、シリンダ吸入空気量を算出する方法もあるが、可変動弁エンジンでは、同一吸気管圧力での吸気弁閉時期のシリンダ容積が大きく異なるため、シリンダ吸入空気量は変動してしまい、やはり正確に検出できない。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、可変動弁式の吸気弁及び排気弁を備え、吸気弁の閉時期を制御して吸入空気量を制御する可変動弁エンジンにおいて、エアフローメータを用いることなく、シリンダ吸入空気量(シリンダ内新気量)を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明では、図1に示すように構成する。
すなわち、吸気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する吸気弁閉時シリンダ容積算出手段と、吸気弁の閉時期のシリンダ内ガス密度を算出するシリンダ内ガス密度算出手段と、吸気弁の閉時期のシリンダ容積とシリンダ内ガス密度とからシリンダ内総ガス量を算出するシリンダ内総ガス量算出手段と、を設ける。
【0006】
また、排気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する排気弁閉時シリンダ容積算出手段と、エンジン回転数と負荷とに基づいて、エンジン回転数が高く、負荷が高いほど、排気密度を大きくするように、排気密度を算出する排気密度算出手段と、排気弁の閉時期のシリンダ容積と排気密度とからシリンダ内残ガス量を算出するシリンダ内残ガス量算出手段と、を設ける。
そして、シリンダ内総ガス量からシリンダ内残ガス量を減算して、シリンダ内新気量を算出するシリンダ内新気量算出手段を設ける。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記シリンダ内ガス密度算出手段は、吸気弁の閉時期の吸気圧力に基づいて、シリンダ内ガス密度を算出することを特徴とする。
請求項3に係る発明では、前記シリンダ内ガス密度算出手段は、吸気弁の閉時期の吸気圧力と、吸気温度とに基づいて、シリンダ内ガス密度を算出することを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明では、可変動弁式の吸気弁及び排気弁は、電磁駆動式であることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、吸気弁の閉時期のシリンダ容積に基づいて、シリンダ内総ガス量を算出する一方、排気弁の閉時期のシリンダ容積に基づいて、シリンダ内残ガス量を算出し、シリンダ内総ガス量からシリンダ内残ガス量を減算して、シリンダ内新気量を算出することで、シリンダ吸入空気量(シリンダ内新気量)を正確に求めることができるという効果が得られる。
また、シリンダ内残ガス量を正確に求めるための排気密度を、エンジン回転数と負荷とに基づいて、精度良く推定できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、シリンダ内総ガス量を正確に求めるためのシリンダ内ガス密度を、吸気弁の閉時期の吸気圧力に基づいて、的確に算出できる。請求項3に係る発明によれば、シリンダ内総ガス量を正確に求めるためのシリンダ内ガス密度を、吸気弁の閉時期の吸気圧力と、吸気温度とに基づいて、より正確に算出できる。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、電磁駆動式の吸気弁及び排気弁を用いることで、制御性が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図2は本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンのシステム図である。
エンジン1の各気筒のピストン2により画成される燃焼室3には、点火栓4を囲むように、電磁駆動式の吸気弁5及び排気弁6を備えている。7は吸気通路、8は排気通路である。
【0013】
吸気弁5及び排気弁6の電磁駆動装置(可変動弁装置)の基本構造を図3に示す。弁体20の弁軸21にプレート状の可動子22が取付けられており、この可動子22はスプリング23,24により中立位置に付勢されている。そして、この可動子22の下側に開弁用電磁コイル25が配置され、上側に閉弁用電磁コイル26が配置されている。
【0014】
従って、開弁させる際は、上側の閉弁用電磁コイル26への通電を停止した後、下側の開弁用電磁コイル25に通電して、可動子22を下側へ吸着することにより、弁体20をリフトさせて開弁させる。逆に、閉弁させる際は、下側の開弁用電磁コイル25への通電を停止した後、上側の閉弁用電磁コイル26に通電して、可動子22を上側へ吸着することにより、弁体20をシート部に着座させて閉弁させる。
【0015】
図2に戻って、吸気通路7には、各気筒毎の吸気ポート部分に、電磁式の燃料噴射弁9が設けられている。
ここにおいて、吸気弁5、排気弁6、燃料噴射弁9及び点火栓4の作動は、コントロールユニット10により制御され、このコントロールユニット10には、エンジン回転に同期してクランク角信号を出力しこれによりエンジン回転数を検出可能なクランク角センサ11、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)を検出するアクセルペダルセンサ12、吸気通路7にて吸気圧力を検出する吸気圧センサ13、吸気通路7にて吸気温度を検出する吸気温センサ14等から、信号が入力されている。
【0016】
このエンジン1では、ポンプロスの低減による燃費向上を目的として、電磁駆動式の吸気弁5の閉時期を制御(早閉じ制御)することにより吸入空気量を制御して、ノンスロットル運転を行う。
すなわち、吸気弁5の開タイミング(IVO)は上死点(TDC)付近の一定タイミングとし、吸気弁5の閉タイミング(IVC)はエンジン運転条件により決定する。
【0017】
排気弁6の開タイミング(EVO)及び閉タイミング(EVC)は、最も熱効率の良いタイミングとなるように制御する。
燃料噴射弁9による燃料噴射量は、後述する図4のシリンダ吸入空気量検出ルーチンにより検出されるシリンダ吸入空気量(シリンダ内新気量)に基づいて、所望の空燃比となるように、制御する。
【0018】
点火栓4による点火時期は、エンジン運転条件に基づいて、MBT又はノック限界に制御する。
図4はシリンダ吸入空気量検出ルーチンのフローチャートであり、所定時間毎に実行される。
ステップ1(図にはS1と記す。以下同様)では、吸気弁の閉時期か否かを判定し、吸気弁の閉時期でない場合は、ステップ2で、排気弁の閉時期か否かを判定し、排気弁の閉時期でない場合は、本ルーチンを終了する。
【0019】
排気弁の閉時期の場合は、ステップ3〜6を実行する。
ステップ3では、そのときのクランク角を計測する。
ステップ4では、排気弁の閉時期のクランク角より、予め定めたテーブルを参照するなどして、排気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する。この部分が排気弁閉時シリンダ容積算出手段に相当する。
【0020】
ステップ5では、エンジン回転数と負荷(アクセル開度に基づく目標トルク又は基本燃料噴射量)とから、予め定めた例えば図5に示すようなマップを参照して、排気密度を算出する。この部分が排気密度算出手段に相当する。
ステップ6では、次式のごとく、排気弁の閉時期のシリンダ容積と、排気密度とから、シリンダ内残ガス量を算出する。
【0021】
シリンダ内残ガス量=排気弁の閉時期のシリンダ容積×排気密度
この部分がシリンダ内残ガス量算出手段に相当する。
一方、吸気弁の閉時期の場合は、ステップ7〜ステップ12を実行する。
ステップ7では、そのときのクランク角を計測する。
ステップ8では、吸気弁の閉時期のクランク角より、予め定めたテーブルを参照するなどして、吸気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する。この部分が吸気弁閉時シリンダ容積算出手段に相当する。
【0022】
ステップ9では、吸気弁の閉時期の吸気圧力及び吸気温度を計測する。
ステップ10では、計測された吸気弁の閉時期の吸気圧力と吸気温度とに基づいて、次式のごとく、吸気弁の閉時期のシリンダ内ガス密度を算出する。
吸気弁の閉時期のシリンダ内ガス密度=吸気圧力/吸気温度/ガス定数
この部分がシリンダ内ガス密度算出手段に相当する。
【0023】
ステップ11では、次式のごとく、吸気弁の閉時期のシリンダ容積と、シリンダ内ガス密度とから、シリンダ内総ガス量を算出する。
シリンダ内総ガス量=吸気弁の閉時期のシリンダ容積×シリンダ内ガス密度
この部分がシリンダ内総ガス量算出手段に相当する。
最後に、ステップ12では、次式のごとく、ステップ11で求めたシリンダ内総ガス量から、ステップ6で求めてあるシリンダ内残ガス量を減算して、シリンダ内新気量を求める。
【0024】
シリンダ内新気量=シリンダ内総ガス量−シリンダ内残ガス量
この部分がシリンダ内新気量算出手段に相当する。
このような手法により、シリンダ内新気量、すなわちシリンダ吸入空気量を正確に求めることができる。
また、スロットル弁を併用する場合も、吸気圧力に対応して変化するシリンダ内ガス密度を考慮しているので、対応可能である。この場合、吸気圧センサとは別に大気圧センサを設けて、大気圧が高いときにシリンダ内ガス密度を高い側に補正すると更によい。
【0025】
尚、本実施形態では、排気弁と吸気弁とのオーバーラップがないものと仮定しているが、オーバーラップがある場合は、そのオーバーラップ量に応じて補正を行えばよい。
また、可変動弁装置として、電磁駆動式のものを用いたが、油圧駆動式のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構成を示す機能ブロック図
【図2】 本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンのシステム図
【図3】 吸排気弁の電磁駆動装置の基本構造図
【図4】 シリンダ吸入空気量検出ルーチンのフローチャート
【図5】 排気密度算出用マップを示す図
【符号の説明】
1 エンジン
2 ピストン
3 燃焼室
4 点火栓
5 電磁駆動式の吸気弁
6 電磁駆動式の排気弁
7 吸気通路
8 排気通路
9 燃料噴射弁
10 コントロールユニット
11 クランク角センサ
12 アクセルペダルセンサ
13 吸気圧センサ
14 吸気温センサ
Claims (6)
- 可変動弁式の吸気弁及び排気弁を備え、吸気弁の閉時期を制御して吸入空気量を制御する可変動弁エンジンにおいて、
吸気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する吸気弁閉時シリンダ容積算出手段と、
吸気弁の閉時期のシリンダ内ガス密度を算出するシリンダ内ガス密度算出手段と、
吸気弁の閉時期のシリンダ容積とシリンダ内ガス密度とからシリンダ内総ガス量を算出するシリンダ内総ガス量算出手段と、
排気弁の閉時期のシリンダ容積を算出する排気弁閉時シリンダ容積算出手段と、
エンジン回転数と負荷とに基づいて、エンジン回転数が高く、負荷が高いほど、排気密度を大きくするように、排気密度を算出する排気密度算出手段と、
排気弁の閉時期のシリンダ容積と排気密度とからシリンダ内残ガス量を算出するシリンダ内残ガス量算出手段と、
シリンダ内総ガス量からシリンダ内残ガス量を減算して、シリンダ内新気量を算出するシリンダ内新気量算出手段と、
を含んで構成される可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。 - 前記シリンダ内ガス密度算出手段は、吸気弁の閉時期の吸気圧力に基づいて、シリンダ内ガス密度を算出することを特徴とする請求項1記載の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。
- 前記シリンダ内ガス密度算出手段は、吸気弁の閉時期の吸気圧力と、吸気温度とに基づいて、シリンダ内ガス密度を算出することを特徴とする請求項1記載の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。
- 前記可変動弁式の吸気弁及び排気弁は、電磁駆動式であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。
- スロットル弁を併用して吸入空気量を制御する場合、大気圧センサを設けて、大気圧が高いときにシリンダ内ガス密度を高い側に補正することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。
- 排気弁と吸気弁とのオーバーラップがある場合、そのオーバーラップ量に応じて、シリンダ内新気量を補正することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の可変動弁エンジンのシリンダ吸入空気量検出装置。
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