JP3799389B2 - シートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートベルトリトラクタに関し、特に、そのベルト巻取り力を軽減する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にシートベルトリトラクタは、ベルトを巻き掛けたスプールをベルト巻取り方向に付勢する巻取りスプリングにより常時リトラクタにベルトを引き込む構成とされている。このような巻取りスプリングの作用によりベルトにかかる張力は、ベルトを装着した乗員に常に胴体への圧迫を感じさせることになる。こうした圧迫感を軽減するため、従来、リトラクタにはテンションレデューサ等の技術が適用されている。テンションレデューサは、一般に強さの異なる2つの巻取りスプリングと、それらの一方の強さの強いスプリングをベルトの所定引出し位置において作用しないようにするロック機構とからなり、その状態からの一定のベルト巻き込み範囲では、ロック機構によりそのままの巻取り力軽減状態が保たれるようにするものである。こうした機構の一例として特公平7−47382号公報に開示の技術がある。
【0003】
ところで、上記のような2本の巻取りスプリングを用いるテンションレデューサでは、巻取りスプリング2本分のスペースが必要になり、これがリトラクタのコンパクト化の妨げとなる。しかも、これに用いられる複雑なロック機構は、部品点数の減少の妨げとなる。そこで、単一の巻取りスプリングと、比較的簡単なロック機構によりベルト装着時のみ巻取り力を軽減する種々の提案がなされている。こうした技術の一例として、実公昭62−18526号公報に開示の技術がある。この技術では、巻取り軸をロックしたまま一定の角度範囲で移動可能なロック部材が、バックルスイッチと連動してソレノイド作動する構成が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした技術は、従来のテンションレデューサと同様の巻取り軸のロックという考え方を踏襲しており、ベルトの装着時の緩みや装着中の引出し量が大きすぎて、緩みを解消するためのベルトの巻取り量が一定の範囲を超えるとロックが解除されてしまうという問題点の解決には至っていない。
【0005】
そこで本発明は、ベルトの引出し量の如何に関わらず装着中に確実にベルトにかかる張力を軽減することができるシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置を提供することを第1の目的とする。次に、本発明は、上記巻取り力軽減装置において、該装置を設けたことによるベルト装着のための引出し時の引出し抵抗の発生を防ぐことを第2の目的とする。更に、本発明は、上記巻取り力軽減装置自体を簡単な構成とすることを第3の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述の改題を解決するために、請求項1に係る発明のシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置は、フレームに回転可能に支持され、ベルトを巻き掛けられたスプールと、該スプールをベルト巻取り方向に付勢可能にフレームとスプールに支持された巻取りスプリングとを備えるシートベルトリトラクタにおいて、前記スプールに固定された被制動部材と、該被制動部材の制動手段と、該制動手段をベルト装着時に被制動部材に連携させる操作手段とを有し、前記制動手段はロータリ型ダンパで構成され、該制動手段と被制動部材との間に、スプールのベルト引出し方向への回転時に解放される一方向係合手段が設けられ、前記操作手段が、ロータリ型ダンパをフレームに対して可動に支持する支持手段と、フレームに支持され、ベルトの装着により支持手段を回転させて前記一方向係合手段を係合させる駆動手段を備え、前記支持手段がその一端にロータリ型ダンパを支持したレバーとされ、被制動部材が外歯歯車とされ、ロータリ型ダンパが該外歯歯車に噛み合う外歯歯車を備え、前記一方向係合手段がレバーと前記両外歯歯車とで構成され、該レバーが、フレームに第1の回転支点を中心として回転可能に支持されるとともに、駆動手段の作動端に第2の回転支点で連結され、駆動手段による連携操作時に、第1の回転支点回りに回転して一方向係合手段を係合させ、スプールのベルト引出し方向への回転時に、第2の回転支点回りに回転して一方向係合を解放されることを特徴としている。
【0007】
また、請求項1に係る発明のシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置は、前記第1の回転支点が前記フレームに設けられた支持ピンであり、前記レバーにカム孔が形成されているとともに、このカム孔に前記支持ピンが挿入されて前記レバーが前記支持ピンに回転可能に支持されており、前記レバーは、前記駆動手段による前記一方向係合手段の係合状態で、前記スプールのベルト引出し方向への回転時には、前記カム孔により前記第2の連結点を回転中心として前記一方向係合手段の係合を解放する方向へ回転可能になっていることを特徴としている。
【0009】
【作用】
このような構成を採る本発明のシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置では、ベルト装着時に操作手段により制動手段と被制動部材とを連携させた位置からのベルトの引出し時には、一方向係合手段の作動によりロータリ型ダンパによる制動が解放されて、ベルトの円滑な引出しが可能となり、ベルト巻取り時には、一方向係合手段が係合してロータリ型ダンパによる制動が行われ、巻取り力が軽減される。そして、この巻取り力の軽減動作は、ベルトの引出し量に関係なく生じる。
【0010】
また、ロータリ型ダンパを支持する支持手段を駆動手段によりフレームに対して回転させることで、上記の作動を生じさせる制動手段と被制動部材との連携状態が、一方向係合手段を介して得られるようになる。
【0011】
更に、ベルト巻取り時には、ロータリ型ダンパが外歯歯車の噛み合いでスプールに係合してスプールの巻取り力を抑え、ベルト引出し時は、ロータリ型ダンパとスプールとを係合させていた外歯歯車が圧力角の作用により噛み合いから外れて反対の方向に逃げることで、ロータリ型ダンパによる制動状態を解除する作動が生じる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態について説明する。図1及び図2は実施形態に係るシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置の構成を模式化して示す。この装置において、リトラクタは、フレーム1に回転可能に支持され、ベルト2を巻き掛けられたスプール3と、スプール3をベルト巻取り方向に付勢可能にフレーム1とスプール3に支持された巻取りスプリング4とを備える。巻取り力軽減装置は、スプール3に固定された被制動部材5と、被制動部材5の制動手段6と、制動手段6をベルト装着時に被制動部材5に連携させる操作手段7とを有する。制動手段6は、ロータリ型ダンパで構成され、ダンパ6と被制動部材5との間に、スプール3のベルト引出し方向への回転時に解放される一方向係合手段C(この手段については後に詳記する)が設けられている。操作手段7は、ロータリ型ダンパ6をフレーム1に対して可動に支持する支持手段7aと、フレーム1に支持され、ベルト2の装着により支持手段7aを回転させて一方向係合手段Cを係合させる駆動手段7bを備える。
【0013】
以下、上記の各部について詳説する。まず、スプール3に固定された被制動部材5は、具体的には外歯歯車で構成されている。この歯車5は、スプール3の縮径部に角軸、セレイションによる嵌合等の適宜の手段で回り止め固定され、スプール3と一体回転するように構成されている(以下、実施形態の説明において、この歯車をスプールギヤという)。
【0014】
制動手段を構成するロータリ型ダンパ6は、カセットデッキのイジェクト装置や高級車の灰皿のイジェクト装置等に使われている粘度の高い流体の粘性抵抗を利用したダンパで構成されている。ロータリ型ダンパ6は、その回転軸にスプールギヤ5に噛み合う小径の外歯歯車61を備えている(以下、実施形態の説明において、この歯車をダンパギヤという)。
【0015】
ロータリ型ダンパ6を支持する支持手段7aは、2つのアーム71a,72aを有するL字状のレバーとされている。レバー7aの一方のアーム71aの一端には、ロータリ型ダンパ6が支持されている。レバー7aの2つのアームをつなぐ折曲部には、カム孔73aが形成され、このカム孔73aには、フレーム1に植え込まれた支持ピン10が挿入されている。これによりレバー7aは、支持ピン10を第1の回転支点P1とし、それを中心として回転可能に支持されている。
【0016】
レバー7aの他方のアーム72aの端部には、駆動手段7bの作動端に連結するための孔74aがアーム72aを貫通して形成されている。レバー7aを作動させてロータリ型ダンパ6のダンパギヤ61をスプールギヤ5に係脱させる駆動手段7bは、ソレノイドとその駆動回路から構成されている。ソレノイドは、そのコイル70bと、コイル70bの励磁により引き込まれる鍔付きのプランジャ71bと、消磁時にプランジャ71bを押し戻すリリーススプリング72bとから構成されている。プランジャ71bは、駆動手段7bの作動端を構成する軸部を孔74aに挿通され、鍔とリリーススプリング72bの間にレバー7aの一方のアーム72aを挟持している。駆動回路は、ソレノイド駆動用の電源8と、それに直列に介挿されたバックルスイッチ9から構成されている。
【0017】
図3は、レバー7aの2つの回転支点の関係を示す。図に示すように、カム孔73aの外側面は、レバーアーム72aとプランジャ71bとの連結点を中心とする円弧面とされている。したがって、レバー7aは、連結点P2でプランジャ軸線方向の移動を拘束された状態でも、ピン10に拘束されることなく連結点P2を回転中心として反時計回りに回転することができる。かくして、レバー7aは、プランジャ71bの引き込み時には、ピン10を回転支点P1として時計回り方向に回転し、それによりダンパギヤ61がスプールギヤ5に噛み合う。そして、その状態で、ダンパギヤ61にかかるギヤ外れ方向の力によりレバー7aのプランジャ71bとの連結点を第2の回転支点P2として反時計回り方向にも回転する。このように、駆動手段7bによる連携操作時、すなわちレバー7aが第1の回転支点P1回りに回転して、両ギヤ5,61が係合した状態で、スプール3のベルト引出し方向への回転時には、両ギヤ5,61の圧力角による力でレバー7aは第2の回転支点P2回りに回転して両ギヤ5,61の噛み合いを解放する作動が生じる。このときのレバー7aの位置を図に破線で示す。この結果、レバー7a、スプールギヤ5及びダンパギヤ6で一方向係合手段Cが構成されることになる。
【0018】
こうした構成からなる装置では、図2に示すようにトングのバックルへの装着により、コイル70bはバックルスイッチ9のオンで励磁され、リリーススプリング72bの荷重に抗してプランジャ71bがコイル70b内に引き込まれる。これによりレバー7aは図示時計回り方向に支点P1回りに回転し、図3に示すようにダンパギヤ61がスプールギヤ5に噛み合う。これにより、スプール3には、巻取りスプリング4の巻取り力に抗するダンパ6による制動力が常時作用した状態となる。
【0019】
この状態で、乗員の操作又は体の動きでベルト2が引出し方向に引っ張られると、スプールギヤ5は図示時計回り方向に回転する。このとき、ダンパギヤ61は歯車の圧力角の作用により、噛み合いから逃げる方向の力を受け、レバー7bをリリーススプリング72bと鍔とで挟持された連結部を支点P2として反時計回り方向に回転させながら離脱方向に移動する。このとき、リリーススプリング72bはアーム72aのプランジャ軸線に対する傾きによる若干の圧縮荷重を受けた状態となるが、この荷重は微小であるので、スプール3は制動力から解放されて実質上巻取りスプリング4の荷重に抗する力のみで円滑に引き出される。
【0020】
このように引き出された状態から、乗員がベルト2の引出しをやめ、あるいは体を戻すと、巻取りスプリング4の荷重によりスプールギヤ5は逆向きの反時計回り方向に回転しようとする。この動作で、押し退けられていたダンパギヤ61は、リリーススプリング72bの荷重を受けるレバー7aの支点P2回りの戻り回転で噛み合い位置に戻り、その後は歯車の圧力角の作用により噛み合い状態に維持され、スプールギヤ5の戻り回転を制動する。このときの制動力はダンパ6内の流体の粘性抵抗により生じる。したがって、ベルト2の巻取りは急激には生じず、緩衝された鈍い戻りとなる。そして、最終的に粘性抵抗と巻取りスプリング4の荷重とが釣り合った位置で安定する。この場合、ベルト2が乗員の体に沿った状態でも巻取りスプリング4の荷重がダンパ6の制動荷重を上回っていれば、その分の力が張力として乗員の体にかかることになるが、ベルト2が乗員の体に沿った状態になる前に巻取りスプリング4の荷重がダンパ6の制動荷重と釣り合えば、ベルト2は緩んだ状態で制止される。この巻取り荷重と制動荷重との関係は、ダンパ6の制動荷重の設定により任意に調整することができる。
【0021】
こうして上記実施形態の装置によれば、従来のこの種の巻取り力軽減装置のように、一定の回転角度範囲でスプールの回転を拘束するものとは異なり、制動力を連続回転可能なロータリ型ダンパ6により生じさせているので、ベルト2の引出しストロークの大小、すなわちスプール3の回転量に関係なく、しかもスプール3の如何なる回転位置においても同様の制動力を生じさせることができる。その結果、安定した巻取り力の軽減効果を得ることができる。そして、機構的にも、2つの外歯歯車5,61とレバー7aを用いた部品点数の少ない構成とされているので、製造コスト的にも、作動の安定性においても有利なものとなる。
【0022】
以上、本発明を一実施形態に基づき詳説したが、本発明は上記実施形態の開示内容のみに限定されることなく、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で種々に細部の具体的構成を変更して実施可能なものであることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】
本発明のシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置によれば、ロータリ型ダンパによる制動力が、ベルト巻取り時のみ、スプールの回転に対する連続した抵抗となるため、ベルトの巻き込み量の大小に関係なく巻取りスプリングによる巻取り力を制動し、ベルトの装着による乗員への圧迫感を軽減することができる。
【0024】
また、一方向係合手段を設けたことによる引きずり抵抗の発生を防いで、特に装着時のベルトの引出しをスムーズにすることができる。
【0025】
更に、一方向係合手段を加工の簡単な外歯歯車で構成することができるので、工程の簡素化によるコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の巻取り力軽減装置を適用したシートベルトリトラクタの実施形態を模式化して示す部分断面図である。
【図2】上記巻取り力軽減のシステム構成図である。
【図3】上記巻取り力軽減装置の作動を示す作動説明図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 ベルト
3 スプール
4 巻取りスプリング
5 スプールギヤ(被制動部材)
6 ロータリ型ダンパ(制動手段)
7 操作手段
7a レバー(支持手段)
7b ソレノイド(駆動手段)
61 ダンパギヤ(歯車)
C 一方向係合手段
P1 第1の回転支点
P2 第2の回転支点
Claims (2)
- フレームに回転可能に支持され、ベルトを巻き掛けられたスプールと、該スプールをベルト巻取り方向に付勢可能にフレームとスプールに支持された巻取りスプリングとを備えるシートベルトリトラクタにおいて、
前記スプールに固定された被制動部材と、該被制動部材の制動手段と、該制動手段をベルト装着時に被制動部材に連携させる操作手段とを有し、
前記制動手段はロータリ型ダンパで構成され、該制動手段と被制動部材との間に、スプールのベルト引出し方向への回転時に解放される一方向係合手段が設けられ、
前記操作手段は、ロータリ型ダンパをフレームに対して可動に支持する支持手段と、フレームに支持され、ベルトの装着により支持手段を回転させて前記一方向係合手段を係合させる駆動手段を備え、
前記支持手段はその一端にロータリ型ダンパを支持したレバーとされ、被制動部材は外歯歯車とされ、ロータリ型ダンパは該外歯歯車に噛み合う外歯歯車を備え、前記一方向係合手段はレバーと前記両外歯歯車とで構成され、該レバーは、フレームに第1の回転支点を中心として回転可能に支持されるとともに、駆動手段の作動端に第2の回転支点で連結され、駆動手段による連携操作時に、第1の回転支点回りに回転して一方向係合手段を係合させ、スプールのベルト引出し方向への回転時に、第2の回転支点回りに回転して一方向係合を解放されることを特徴とする、シートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置。 - 前記第1の回転支点は前記フレームに設けられた支持ピンであり、前記レバーにカム孔が形成されているとともに、このカム孔に前記支持ピンが挿入されて前記レバーが前記支持ピンに回転可能に支持されており、
前記レバーは、前記駆動手段による前記一方向係合手段の係合状態で、前記スプールのベルト引出し方向への回転時には、前記カム孔により前記第2の連結点を回転中心として前記一方向係合手段の係合を解放する方向へ回転可能になっていることを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタの巻取り力軽減装置。
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