JP3798736B2 - 固形化粧料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形油分、液状油分等固形油分以外の油分及び粉末を含有する固形化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、固形化粧料は固形油分、半固形油分、液状油分及び粉末等から構成されている。特に、固形油分は固形化粧料の保形性、温度安定性に、また、粉末は固形化粧料の使用時ののびやとれ等の使用感に影響を与えている。そして、前記固形化粧料の処方成分の種類と配合量のバランスによって、固形化粧料の保形性、温度安定性、使用感において優れたものとなるよう研究開発が行われている。
【0003】
しかしながら、上記特性のうち、特に保形性と使用感は背反的な特性であり、例えば、保形性の優れた固形化粧料を得るために固形油分を多量に配合すると、使用感が著しく損なわれてしまう等、両者を満足し、しかも温度安定性に優れた固形化粧料が充分開発されているとはいえない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、保持性がよく、化粧料の使用感の良好な、温度安定性に優れた固形化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、固形油分の一部としてイボタロウを配合し、イボタロウと粉末を組み合わせることにより、保形性が飛躍的に改善され、使用感の良好な固形化粧料が得られ、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、固形油分、固形油分以外の油分及び粉末を含有する固形化粧料において、前記固形油分の一部としてイボタロウを含むことを特徴とする固形化粧料である。
【0007】
本発明においては、前記粉末の粒子径が、平均粒子径で0.01〜0.1μmであるとき、特に顕著に効果を発揮する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0009】
本発明においては、固形油分の一部としてイボタロウが含有される。イボタロウは昆虫の産生する天然生物ロウ(セラリカ)の一種であり、イボタロウカイガラムシが分泌するセラリカである。
【0010】
本発明に用いられるイボタロウは、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば雪ロウ(セラリカ野田製)等が挙げられる。
【0011】
イボタロウの含有量は、固形化粧料全量中0.1〜30質量%が好ましい。この範囲であると保持性、化粧料の使用感、温度安定性の点で特に顕著な効果が得られる。さらに好ましい含有量は0.5〜20質量%である。
【0012】
本発明においては、イボタロウ以外の固形油分が含有される。本発明に用いられるイボタロウ以外の固形油分(以下、他の固形油分という。)としては、通常化粧品で使用される常温で固形の油分であれば特に限定されない。好ましい他の固形油分の軟化点は40℃以上のものである。他の固形油分の例を挙げれば、例えば、硬化油、モクロウ等の油脂、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素、ミツロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス等のロウ、ステアリン酸、ベへン酸等の高級脂肪酸、セタノール等の高級アルコール等が挙げられる。固形油分は1種又は2種以上が選択されて用いられる。
【0013】
他の固形油分とイボタロウを併せた全固形油分の含有量は、固形化粧料の硬さを適度なものとして良好な使用感を得、かつ充分な保形性を得る点から、固形化粧料全量中2.5〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%である。
【0014】
本発明においては、固形油分以外に半固形油分、液状油分等の油分(以下、他の油分という。)が含有される。他の油分は1種又は2種以上が任意に選択されて用いられる。他の油分中、液状油分としては、常温で液状の油分で通常化粧品で使用されるものであればよく、例えば炭化水素類、エステル類、油脂類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油等が挙げられる。具体的には、例えば、炭化水素類として、流動パラフィン、スクワラン、エステル類として、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、セバチン酸ジ2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット2−エチルヘキサン酸、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、油脂類として、オリーブ油、ヒマシ油、高級脂肪酸類として、イソステアリン酸、オレイン酸、高級アルコール類として、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、シリコーン油として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0015】
半固形油分としては、例えばワセリン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ジペンタエリトリット脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ロジン酸等)エステル等が挙げられる。
【0016】
液状油分等他の油分の含有量は、固形化粧料全量中5〜97.4質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜70質量%である。
【0017】
本発明において用いられる粉末としては、通常化粧品で使用される粉末であればよく、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、無水ケイ酸、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、シルクパウダー、ナイロンパウダー、ポリアクリル酸アルキルパウダー、ポリメタクリル酸アルキルパウダー等の高分子粉体、有機顔料、およびこれらの複合顔料等が挙げられる。また、金属石けん、シリコーン等で改質された粉末を用いることもできる。粉末は1種または2種以上が任意に選択されて用いられる。
【0018】
なお、粉末の中でも、特に微粒子粉末を配合した固形化粧料は、良好な保形性を得ることが困難であることが知られている。これは、微粒子粉末がワックス構造を破壊するためと考えられている。そのため充分な保形性を得るためには多量のワックス類等の固形油分を配合しなければならず、使用感が著しく損なわれてしまっていた。本発明においては、このような微粒子粉末を配合した系において特に効果を発揮し、顕著な効果が表れる。特に、平均粒子径で0.01〜0.1μmの範囲の粉末を用いたときに著しい効果が見られる。
【0019】
粉末の含有量は、固形化粧料全量中0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜40質量%である。
【0020】
本発明の固形化粧料には、上記成分の他、通常の固形化粧料に用いられる他の成分、例えば、染料、高分子化合物、香料、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、薬剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0021】
本発明の固形化粧料は固形であればよく、例えば、口紅、ファンデーション、コンシーラー、日焼け止め化粧料、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー等の固形化粧料に適しているが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
以下に、本発明を、実施例をもって詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量は全て質量%である。
【0023】
[効果試験方法]
(保形性)
固形化粧料の保形性は、該化粧料を加熱溶解したものを、直径25mm高さ10mmのステンレス製測定容器に充填し、不動工業株式会社製レオメーターを用いて、直径2.0mmの円形の断面を有する円板状のアダプターを一定速度(2.0cm/min.)で侵入した時の応力を測定し、保形性の評価とした。なお、スティック状の固形化粧料の硬度は上記の条件で測定した場合に、500〜6000g/cm2の範囲であることが望ましく、500g/cm2未満では固形化粧料としての保形性が困難であり、6000g/cm2を越えると、使用性の問題が生じる。保形成の評価基準を以下に示す。
【0024】
(保形性評価基準)
○:1000〜5000g/cm2
△:500g/cm2以上1000g/cm2未満、あるいは5000g/cm2超6000g/cm2以下
×:500g/cm2未満、あるいは6000g/cm2超
【0025】
(温度安定性)
固形化粧料の温度安定性は、−5℃、25℃、50℃に保持された恒温槽および、−5℃で8時間、20℃で4時間、40℃で8時間、20℃で4時間のサイクルで内部雰囲気が変化する恒温槽にそれぞれ1ヶ月保存し、性状の変化の有無について下記基準に従って評価した。評価基準を下記に示す。
【0026】
(温度安定性評価基準)
◎:すべての温度条件下において変化が認められない。
○:各温度条件下において、いずれか1つに変化が認められる。
△:各温度条件下において、いずれか2つに変化が認められる。
×:各温度条件下において、いずれか3つ以上に変化が認められる。
【0027】
(使用感)
固形化粧料の使用感は、塗布時の化粧料ののび、とれ、あたりについて、専門パネル10名による1〜4の4段階評価を行い、平均の評価を用いた。評価基準を下記に示す。
【0028】
(4段階評価)
4:優れている。
3:やや優れている。
2:やや、悪い。
1:悪い。
【0029】
(使用感評価基準)
◎:3.5以上4.0まで
○:2.5以上3.5未満
△:1.5以上2.5未満
×:1.0以上1.5未満
【0030】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
表1に示される配合量で基剤原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解して脱泡してから型に流し込み、急冷して固め、スティック状の固形化粧料を調製した。
【0031】
【表1】
Figure 0003798736
【0032】
表1中、
注1:雪ロウ(セラリカ野田製)
注2:MT−100T(テイカ株式会社製・平均粒子径約0.015μm)
注3:SI01−4H ZnO350(大東化成工業株式会社製・平均粒子径0.02μm)
注4:タイペークCR−50(石原工業株式会社・平均粒子径0.25μm)注5:ガンツパールGM−0800S(ガンツ工業株式会社製・平均粒子径約8μm)
注6:マイカY−2300(山口雲母工業株式会社製・平均粒子径約18μm)
【0033】
上記実施例1〜5、比較例1〜3の評価結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
Figure 0003798736
【0035】
表2から明らかなように、イボタロウを配合した固形化粧料(実施例1〜5)は、保形性が向上し、温度安定性に優れ、使用感が良好になっている。特に微粒子粉末が配合されたものについても、使用感を損なわずに良好な保形性を付与することができることが分かる。
【0036】
以下、さらに実施例を示す。
〔実施例6〕
以下のようにして口紅を製造した。成分、配合量および製法は次の通りである。
(成分) 配合量(質量%)
イボタロウ(注1) 4.0
セレシン 11.0
オゾケライト 5.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 12.0
リンゴ酸ジイソステアリル 6.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.0
メチルフェニルポリシロキサン 8.0
ワセリン 4.0
重質流動イソパラフィン 10.0
流動パラフィン 15.5
着色剤 10.0
(有機系タール色素・ベンガラ・酸化チタン(注2))
雲母チタン 4.0
酸化防止剤 0.5
【0037】
(注1)雪ロウ(セラリカ野田製)
(注2)タイペークCR−50(石原工業株式会社・平均粒子径0.25μm)
【0038】
(製法)
基剤原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解して脱泡してから所定の型に流し込み、急冷して脱型後、容器の装着、フレーム処理を行い、口紅を得た。
【0039】
〔実施例7〕
以下のようにしてファンデーションを製造した。成分、配合量および製法は次の通りである。
(成分) 配合量(質量%)
イボタロウ(注1) 1.0
セレシン 7.0
キャンデリラロウ 2.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 9.0
リンゴ酸ジイソステアリル 8.0
トリイソステアリン酸ポリグリセリル 4.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 12.0
メチルフェニルポリシクロヘキサン 14.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(注2) 6.0
スクワラン 18.5
着色剤 15.0
(黒酸化鉄(注3)・黄酸化鉄(注4)・ベンガラ・酸化チタン(注5))
マイカ 3.0
酸化防止剤 0.5
【0040】
(注1)雪ロウ(セラリカ野田製)
(注2)コスモール168AR(日清製油製)
(注3)TALOX BL−100(チタン工業株式会社製・粒子径0.2〜0.6μm)
(注4)TALOX LL−XLO(チタン工業株式会社製・針状粒子0.07×0.7μm)
(注5)タイペークCR−50(石原工業株式会社・平均粒子径0.25μm)
【0041】
(製法)
基剤原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解して脱泡してから所定の容器に流し込み、急冷してファンデーションを得た。
【0042】
〔実施例8〕
以下のようにしてコンシーラーを製造した。成分、配合量および製法は次の通りである。
(成分) 配合量(質量%)
イボタロウ(注1) 3.0
セレシン 12.0
キャンデリラロウ 4.0
ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 12.0
リンゴ酸ジイソステアリル 5.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 8.0
メチルフェニルポリシロキサン 15.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(注2) 6.0
スクワラン 14.5
着色剤 15.0
(黒酸化鉄(注3)・黄酸化鉄(注4)・ベンガラ・酸化チタン(注5))
マイカ 5.0
酸化防止剤 0.5
【0043】
(注1)雪ロウ(セラリカ野田製)
(注2)コスモール168AR(日清製油製)
(注3)TALOX BL−100(チタン工業株式会社製・粒子径0.2〜0.6μm)
(注4)TALOX LL−XLO(チタン工業株式会社製・針状粒子0.07×0.7μm)
(注5)タイペークCR−50(石原工業株式会社・平均粒子径0.25μm)
【0044】
(製法)
基剤原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解して脱泡してから所定の容器に流し込み、急冷して固めコンシーラーを得た。
【0045】
〔実施例9〕
以下のようにして日焼け止めスティックを製造した。成分、配合量および製法は次の通りである。
Figure 0003798736
【0046】
(注1)雪ロウ(セラリカ野田製)
(注2)コスモール168AR(日清製油製)
(注3)MT−100T(テイカ株式会社製・平均粒子径約0.015μm)
(注4)SI01−4H ZnO350(大東化成工業株式会社製・平均粒子径0.02μm)
【0047】
(製法)
基剤原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解して脱泡してから所定の容器に流し込み、急冷して日焼け止めスティックを得た。
【0048】
〔実施例10〕
以下のようにしてW/Oファンデーションを製造した。成分、配合量および製法は次の通りである。
Figure 0003798736
【0049】
(注1)雪ロウ(セラリカ野田製)
(注2)MT−100T(テイカ株式会社製・平均粒子径約0.015μm)(注3)TALOX BL−100(チタン工業株式会社製・粒子径0.2〜0.6μm)
(注4)TALOX LL−XLO(チタン工業株式会社製・針状粒子0.07×0.7μm)
(注5)タイペークCR−50(石原工業株式会社・平均粒子径0.25μm)
【0050】
(製法)
油相原料を加熱溶解して均一に混合し、これに粉体原料を加え、ロールミルで練ることにより均一に分散させた。再度溶解しホモミキサーで攪拌しながら水相を加え乳化し、脱泡してから所定の容器に流し込み、急冷してW/Oファンデーションを得た。
【0051】
上記実施例6〜10の口紅、ファンデーション、コンシーラー、日焼け止めスティック、W/Oファンデーションについて、実施例1〜5と同様に保形性、温度安定性、使用感について評価を行った結果、いずれも良好な結果が得られた。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、固形油分の一部としてイボタロウを配合することにより、保形性、温度安定性に優れ、使用感が良好な固形化粧料を得ることできる。

Claims (2)

  1. 固形油分、固形油分以外の油分及び粉末を含有する固形化粧料において、前記固形油分の一部として固形化粧料全量中0.1〜30質量%のイボタロウを含むことを特徴とする固形化粧料。
  2. 前記粉末の粒子径が、平均粒子径0.01〜0.1μmであることを特徴とする請求項1記載の固形化粧料。
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