JP3798088B2 - パネル補強用積層シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、パネル補強用積層シートに関し、例えば、車体パネルの裏面に貼り付けられてそのパネルを補強するとともに、断熱性、遮音性等を高めるパネル補強用積層シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パネルに対し、発泡性材料よりなる基材を、その一側面のパネル貼付面において貼り付け、その基材を外部加熱により発泡させて発泡層を形成することで、パネルを補強するとともに、断熱性、遮音性等を高めることが知られている。
また、前記基材を略均一な肉厚において発泡させて発泡層を得るために、図9に示すように、発泡性材料よりなる基材層112と、その基材層112のパネル貼付面114と反対側の接合面115に一体状に接合され前記基材層112の発泡を制限する拘束層121とを備えたパネル補強用積層シート111が知られている。
前記パネル補強用積層シート111において、その基材層112のパネル貼付面114には、接着剤の塗布や粘着テープの貼り付け等によって接着層131が設けられる。そして、パネル補強用積層シート111は、その接着層131によって、パネル110の裏面に貼り付けられる。
その後、図10に示すように、外部加熱によって基材層112が発泡し、発泡層113となることで、パネル110が補強されるとともに、断熱性、遮音性等が高められるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来のパネル補強用積層シート111においては、図10に示すように、外部加熱によって基材層112が発泡して発泡層113となる際、その基材層112の発泡に基づく引張力が接着層131に作用し、その引張力によって接着層131が寸断されることがある。そして、接着層131の寸断によって、パネル110に対する発泡層113の接着力が低下し、発泡層113が部分的に剥がれる場合があった。
また、前記従来のパネル補強用積層シート111において、押出成形等によって基材層112が成形され、その基材層112が冷却する前に、基材層112の接合面115に拘束層121が一体状に接合されると、基材層112と拘束層121との収縮率の差によって、図11に示すように、パネル補強用積層シート111が湾曲状に変形されることがある。
前記湾曲状に変形されたパネル補強用積層シート111は、平坦なパネル110に貼り付けることが困難となり、その貼り付けに多くの手間を必要とする。さらに、反対側に湾曲したパネル(図示しない)に対しは、その貼り付けが一層困難となるという問題点があった。
【0004】
この発明の目的は、前記従来の問題点に鑑み、パネルが平坦であったり、あるいは湾曲している場合においても、そのパネルに対し容易に貼り付けることができるとともに、基材層の発泡に基づく発泡層の一部がパネルに対し直接に接着することで、パネルに対する発泡層の接着不良を防止することができるパネル補強用積層シートを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るパネル補強用積層シートは、パネルに対し、パネル貼付面において貼り付けられかつ外部加熱によって発泡し発泡層となることで前記パネルを補強する発泡性材料よりなる基材層と、その基材層のパネル貼付面と反対側の接合面に一体状に接合され前記基材層の発泡を制限する拘束層とを備え、
前記基材層のパネル貼付面には、所要数の割溝が凹設されていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明に係るパネル補強用積層シートは、請求項1に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面には、その一端から他端にわたって複数条の割溝が略平行状に凹設されていることを特徴とする。
したがって、請求項1及び2の発明に係るパネル補強用積層シートによれば、パネルが湾曲している場合においても、そのパネルの湾曲面に対応してパネル補強用積層シートが、その基材層のパネル貼付面に凹設された割溝において容易に湾曲されるとともに、前記パネル貼付面において接着層を介して確実に貼り付けられる。
その後、外部加熱によって基材層が発泡し発泡層となる際、その基材層をなす発泡性材料の一部が割溝を埋め尽くすようにして発泡しパネルに直接接着するため、パネルに対する発泡層の接着不良が防止される。
【0007】
請求項3の発明に係るパネル補強用積層シートは、請求項1に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面には、複数条の割溝が互いに交差してそれぞれ凹設されていることを特徴とする。
したがって、請求項3の発明に係るパネル補強用積層シートによれば、パネルが3次元に湾曲している場合においても、そのパネルの3次元の湾曲面に対しパネル補強用積層シートが、その基材層の複数条の割溝及び割溝交差部において容易に湾曲され、接着層を介して確実に貼り付けられるとともに、基材層をなす発泡性材料の一部が複数条の割溝及び割溝交差部をそれぞれ埋め尽くすようにして発泡しパネルに直接接着するため、パネルに対する発泡層の接着不良がより一層確実に防止される。
【0008】
請求項4の発明に係るパネル補強用積層シートは、請求項2又は3に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面に凹設された割溝の溝幅は、その底面側よりもパネル貼付面に開口する側が広く形成されていることを特徴とする。
したがって、請求項4の発明に係るパネル補強用積層シートによれば、基材層のパネル貼付面に凹設された割溝の溝幅が、その底面側よりもパネル貼付面に開口する側が広く形成されることで、パネルに対する発泡層の直接的な接着面積が拡大されるため、パネルに対する発泡層の接着強度が高められる。
また、パネルを焼き付け塗装するに先立って、そのパネルが塗料槽に浸漬される際、その塗料が基材層の割溝に流入しその割溝の開口部において、パネル面に付着する。これによって、パネルに対し、パネル補強用積層シートが貼り付けられる側においても塗装面が設けられる。そして、前記割溝の溝幅が、その底面側よりもパネル貼付面に開口する側が広く形成されることで、前記塗装面の面積が拡大され、パネルの非塗装面が縮小される。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1を図1〜図4にしたがって説明する。
図1と図2において、車体パネルのような鋼板製のパネル10の裏面に貼り付けられるパネル補強用積層シート11は、外部加熱によって発泡し発泡層13となることで前記パネル10を補強する発泡性材料よりなる基材層12と、その基材層12のパネル貼付面14と反対側の接合面15に一体状に接合され前記基材層12の発泡を制限する拘束層21とを備えている。
前記基材層12は、外部加熱、例えば、110℃〜190℃前後の温度で発泡して発泡層13となりかつ金属面や塗装面に対し強固に接着する発泡剤混入の合成樹脂、ゴム等の発泡性材料よりなり、押出成形等によって平板状に成形されている。
【0010】
この実施の形態1において、前記基材層12をなす発泡性材料として、例えば、特開平2−276836号公報に開示されている配合をもつ発泡性材料が用いられる。
ちなみに、この発泡性材料の配合は、エチレンとメチルアクリレートのコポリマーMIO.7,MA15重量%63.55,LDPE(融点1.5℃、密度0.919)27.15,4,4−ジ−tertブチルぺルオキシn−ブチルバレレート(トリゴノックス(Trigonox)29/40)0.63,ビス(tert−ブチルぺルオキシイソプロピル)ベンゼン(パーカドックス(Perkadox)14/40)1.63,ベンゼンスルホニルヒドラジド(セローゲン(Cellogen)OT)3.62,アゾジカーボンアミド(ポロフォー(Porofor)ADC−K)1.81,及びジ−エチレングリコール(DEG)1.81(全比率は重量基準)である。ポロフォー成分は発泡活性を活性化する亜鉛を含む。そして、前記発泡性材料が押出成形や射出成形によって必要とされる特定形状、すなわち、平板状に成形されることで基材層12が構成される。前記した発泡性材料よりなる基材層12は、110℃〜190℃の温度で発泡、硬化され、金属面や塗装面に対し強固に接着する独立気泡の発泡層13となる。
【0011】
前記基材層12の一側面のパネル貼付面14には、その一端から他端にわたって、複数条の割溝16が所定間隔を隔てて略平行状に凹設されている。そして、基材層12は、その各割溝16が形成される部分において薄肉状をなし湾曲状に変形されやすくなっている。
また、この実施の形態1において、基材層12のパネル貼付面14に凹設された複数条の割溝16は、その底面側の溝幅が狭く、パネル貼付面14に開口する側の溝幅が広い段差溝に形成されている。
【0012】
前記基材層12のパネル貼付面14と反対側の接合面15に一体状に貼り付けられた拘束層21は、ガラス繊維シート、耐熱性合成樹脂シート等の可撓性、強靱性及び耐熱性を有するシート材より形成されており、基材層12を略均一な肉厚に発泡させるとともに、基材層12の発泡に基づく発泡層13の表面を保護する機能を有する。
【0013】
この実施の形態1において、図4に示すように、押出成形機50の成形ダイから発泡性材料が押出され、これによって平板状の基材層12が成形される。その基材層12の押出成形の直後でその基材層12が冷却固化される前において、保持ローラ60にロール状に巻回保持された拘束層21が前記基材層12の接合面15に向けて引き出される。そして、上下一対の圧着ローラ71、72によって、前記基材層12と拘束層21とが圧着されながら移送されることで、基材層12の接合面15に拘束層21が一体状に接合される。
さらに、一方の圧着ローラ71には、基材層12のパネル貼付面14に割溝16を形成するための成形凸部が突設されており、前記基材層12の接合面15に拘束層21が一体状に接合されると同時に、その基材層12のパネル貼付面14には、複数条の割溝16が凹設される。
その後、前記拘束層21を一体状に備えた基材層12が所定長さで切断されることで、パネル補強用積層シート11が製造される。
【0014】
この実施の形態1のパネル補強用積層シート11は上述したように構成される。したがって、車体パネルのような鋼板製のパネル10の裏面に対し、パネル補強用積層シート11が貼り付けられる際、図2に示すように、予め、パネル補強用積層シート11の基材層12のパネル貼付面14には、その複数条の割溝16の部分を除いて接着剤が塗布されたり、あるいは、粘着テープが貼り付けられることで接着層31が設けられる。そして、パネル10の裏面に対し、パネル補強用積層シート11は、その基材層12の接着層31を介して貼り付けられる。
図2に示すように、前記パネル10が湾曲している場合、そのパネル10の湾曲面に対応してパネル補強用積層シート11が、その基材層12のパネル貼付面14に凹設された複数条の割溝16においてそれぞれ容易に湾曲されるため、そのパネル10の裏面に対しパネル貼付面14において接着層31を介して確実に貼り付けられる。
【0015】
その後、前記パネル補強用積層シート11を備えたパネル10は、塗料槽に浸漬された後、焼き付け塗装される。パネル10が塗料槽に浸漬される際、その塗料が基材層12の割溝16に流入しその割溝16の開口部において、パネル10の裏面に付着する。これによって、パネル10の裏面においても塗装面が設けられる。さらに、前記割溝16の溝幅は、その底面側よりもパネル貼付面14に開口する側が広く形成されることで、パネル10の裏面の塗装面の面積が拡大され、パネル10の非塗装面が縮小される。
【0016】
また、前記パネル10が焼き付け塗装される際の外部加熱によって基材層12が発泡し発泡層13となる際、図3に示すように、その基材層12をなす発泡性材料の一部が複数条の割溝16をそれぞれ埋め尽くすようにして発泡し、パネル10の裏面に直接に接着するため、パネル10の裏面に対する発泡層13の接着不良が防止される。
さらに、前記割溝16の溝幅は、その底面側よりもパネル貼付面14に開口する側が広く形成されることで、パネル10の裏面に対する発泡層13の直接的な接着面積が拡大されるため、パネル10の裏面に対する発泡層13の接着強度が高められる。
【0017】
(実施の形態2)
次に、この発明の実施の形態2を図5〜図8にしたがって説明すると、この実施の形態2においては、図5に示すように、パネル補強用積層シート11の基材層12のパネル貼付面14には、各複数条の縦方向割溝17と横方向割溝18とが互いに直角状に交差してそれぞれ凹設されている。
また、前記基材層12は、実施の形態1と同材質の発泡性材料によって形成され、その基材層12の接合面15に一体状に接合される拘束層21も実施の形態1と同材質の可撓性、強靱性及び耐熱性を有するシート材より形成されている。
【0018】
したがって、この実施の形態2においては、図6に示すように、パネル10が3次元に湾曲している場合においても、そのパネル10の3次元の湾曲面をなす裏面に対しパネル補強用積層シート11が、その基材層12の各複数条の縦方向割溝17、横方向割溝18及びこれら割溝の交差部において容易に湾曲され、接着層31を介して確実に貼り付けられる。しかも、基材層12が発泡する際、図7に示すように、基材層12をなす発泡性材料の一部が各複数条の縦方向割溝17、横方向割溝18及びこれら割溝の交差部をそれぞれ埋め尽くすようにして発泡しパネル10に直接接着するため、パネル10に対する発泡層13の接着不良がより一層確実に防止される。
【0019】
また、前記実施の形態2のパネル補強用積層シート11において、基材層12のパネル貼付面14に凹設される縦方向割溝17と横方向割溝18の溝幅は、図5と図6に示すように、その溝底面側とパネル貼付面14に開口する側とが略同じ溝幅に形成されてもよく、図8の(A)に示すように、基材層12のパネル貼付面14に凹設される縦方向割溝17と横方向割溝18の溝幅は、底面側よりもパネル貼付面14に開口する側が広く形成された断面段差溝に形成されてもよく、図8の(B)に示すように、断面台形溝に形成されてもよく、図8の(C)に示すように、断面U字溝、V字溝等に形成されてもよい。
【0020】
なお、この発明は前記実施の形態1及び2に限定するものではない。例えば、基材層12のパネル貼付面14に対し一つ又は複数の割溝16をジグザグ状、波打ち状等に凹設してもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1及び2に記載の発明によれば、パネルが平坦であったり、あるいは湾曲している場合においても、そのパネルに対しパネル補強用積層シートを容易に貼り付けることができる、貼り付けコストの低減を図ることができる。さらに、基材層の発泡に基づく発泡層の一部がパネルに対し直接に接着することで、パネルに対する発泡層の接着不良を防止することができ、パネルを良好に補強することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、パネルが3次元に湾曲している場合においても、パネル補強用積層シートを容易にかつ確実に貼り付けることができるとともに、パネルに対する発泡層の接着不良をより一層確実に防止することができる。
請求項4に記載の発明によれば、パネルに対する発泡層の直接的な接着面積が拡大されるため、パネルに対する発泡層の接着強度が高められる剥がれによる不具合を確実に防止することができるとともに、パネルの塗装面の面積を拡大し、パネルの非塗装面を縮小することもでき、耐腐食性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1のパネル補強用積層シートを示す斜視図である。
【図2】同じく湾曲したパネルの裏面にパネル補強用積層シートを貼り付けた状態を示す断面図である。
【図3】同じく基材層が発泡して発泡層となった状態を示す断面図である。
【図4】同じく基材層が押出成形された後その基材層の接合面に拘束層を接合すると同時にその基材層のパネル貼付面に割溝を形成する工程を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2のパネル補強用積層シートを示す斜視図である。
【図6】同じく湾曲したパネルの裏面にパネル補強用積層シートを貼り付けた状態を示す断面図である。
【図7】同じく基材層が発泡して発泡層となった状態を示す断面図である。
【図8】同じく基材層のパネル貼付面に凹設された縦方向割溝、横方向割溝の断面形状変更例をそれぞれ示す断面図である。
【図9】従来のパネル補強用積層シートを示す断面図である。
【図10】同じく基材層が発泡して発泡層となった状態を示す断面図である。
【図11】同じく従来のパネル補強用積層シートが湾曲状に変形された状態示す断面図である。
【符号の説明】
10 パネル
11 パネル補強用積層シート
12 基材層
13 発泡層
14 パネル貼付面
15 接合面
16 割溝
17 縦方向割溝
18 横方向割溝
21 拘束層
31 接着層

Claims (4)

  1. パネルに対し、パネル貼付面において貼り付けられかつ外部加熱によって発泡し発泡層となることで前記パネルを補強する発泡性材料よりなる基材層と、その基材層のパネル貼付面と反対側の接合面に一体状に接合され前記基材層の発泡を制限する拘束層とを備え、
    前記基材層のパネル貼付面には、所要数の割溝が凹設されていることを特徴とするパネル補強用積層シート。
  2. 請求項1に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面には、その一端から他端にわたって複数条の割溝が略平行状に凹設されていることを特徴とするパネル補強用積層シート。
  3. 請求項1に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面には、複数条の割溝が互いに交差してそれぞれ凹設されていることを特徴とするパネル補強用積層シート。
  4. 請求項2又は3に記載のパネル補強用積層シートにおいて、基材層のパネル貼付面に凹設された割溝の溝幅は、その底面側よりもパネル貼付面に開口する側が広く形成されていることを特徴とするパネル補強用積層シート。
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