JP3796748B2 - 埋立工事施工管理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として海上において大規模な埋立工事を行う際に使用される埋立工事施工管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
海上に人工島を建設する場合、その施工領域は一般的には広範囲に及ぶとともに、作業の内容についても、土源での埋立用土砂の積み込みから始まって、土運船による埋立工区への埋立用土砂の運搬、埋立工区内への土砂投入、測量船による水深の測量といった具合に多数の作業が交錯する。そのため、このような海上埋立工事においては、各作業船が自分の位置を正確に知ることが施工精度の面できわめて重要となり、最近では、このような位置測量を行う方法としてGPSが広く採用されるようになってきた。
【0003】
GPSは、GPS衛星からの電波信号を受信することによって自分自身の位置を求めることができる測位システムであり、航空機等の動体のナビゲーション(航法支援)や時刻情報の提供を目的として当初開発されたものの、現在では、単独測位方式、干渉測位方式、ディファレンシャル方式(DGPS)といったさまざまな測位方式が開発され、測量分野でも広く使用されている。
【0004】
ここで、GPSを用いた広域施工においては、各作業船が自分自身の位置をGPS測量で計測し、他の作業船との相対位置関係、作業の順序、土砂積み込み情報等については、無線による音声を介して他の作業船や土源と連絡をとりあうことで衝突や作業の相互干渉を回避していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、音声連絡を主体とするこのような方法では、情報伝達に時間差が生じたり正確性に欠けたりするのを避けることはできず、特に作業船の数が多い場合や作業工程に余裕がない場合には、作業船間で作業が干渉し合って作業効率が低下したり、最悪の場合、接触事故を回避できないおそれがあるという問題を生じていた。
【0006】
また、土源側においても、土運船の着岸及び離岸が錯綜したり各土運船への積み込み作業が干渉し合ったりという事態を招き、全体の埋立効率がかえって低下してしまうという問題を生じていた。
【0007】
このような問題は、各作業船の運行状況並びに工事全体の進捗状況を音声連絡によって管理する場合においても同様に生じ、管理側での情報把握ひいては管理側からの作業指示や運行指示が遅れたり、管理側で判断が不正確になったりといった事態を招いていた。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、多数の土運船や測量船が航行している状況であっても各作業船の航行安全を確保するとともに埋立用土砂の積み込みから投入に至る一連の埋立作業をスムーズに行うことが可能な埋立工事施工管理システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る埋立工事施工管理システムは請求項1に記載したように、土源に設置され該土源の土砂供給を管理する土源管理装置が接続された土源側コンピュータと、土運船に搭載され該土運船の位置を計測するGPS測量装置が接続された土運船側コンピュータと、測量船に搭載され該測量船の位置を計測するGPS測量装置及び該測量船下方の水深を計測する超音波測深機が接続された測量船側コンピュータと、前記土運船及び前記測量船と離間して設置される管理側コンピュータとを備えるとともに、該管理側コンピュータと前記土源側コンピュータ、前記土運船側コンピュータ及び前記測量船側コンピュータとを相互にデータ通信可能に構成し、土運船側情報及び土源側情報を前記土運船側コンピュータ及び前記土源側コンピュータから前記管理側コンピュータにそれぞれデータ送信して該土運船側情報及び土源側情報を管理側データとして前記管理側コンピュータに保存するとともに該管理側データを前記土運船側コンピュータ及び前記土源側コンピュータにデータ送信し、前記超音波測深機による水深データを含む測量船側情報を前記測量船側コンピュータから前記管理側コンピュータに送信し該水深データに基づいて所定の水深マップを前記管理側コンピュータで作成するとともに該水深マップを前記管理側コンピュータから前記土運船側コンピュータにデータ送信して自船位置とともに前記土運船側コンピュータに画像表示するようになっている埋立工事施工管理システムであって、
前記管理側コンピュータは、前記土運船側情報と前記土源側情報とを照合し、特定の土源の特定の時間帯で土運船が集中すると判断できる場合には、土運船と土源との距離、土源への到着順序及び土源での土砂供給能力を勘案しつつ、土源、積み出し予定土量、入港予定時刻若しくは航行速度を変更すべき旨の指示情報、又は沖合にて一時待機すべき旨の指示情報を土運船ごとに作成し、これを対応する土運船に送信するものである。
【0010】
本発明に係る埋立工事施工管理システムにおいては、土源側コンピュータ、土運船側コンピュータ及び測量船側コンピュータが管理側コンピュータとそれぞれ相互にデータ通信可能に構成してあり、土運船側からは、その位置情報、積み込み予定土源、積み込み予定土量、入港予定時刻といった土運船側情報を管理側コンピュータにデータ送信し、土源側からは、土源管理装置から出力される土砂供給状況や各土運船が入出港した時刻をはじめとした土源側情報を管理側コンピュータにデータ送信する。一方、管理側コンピュータは、土運船側から送信されてきた土運船側情報や土源側から送信されてきた土源側情報を管理側データとして保存するとともに、該管理側データを土運船側コンピュータや土源側コンピュータの要求に応じて又は要求とは無関係に土運船や土源にデータ送信する。
【0011】
このようにすると、土源側では、土運船の入港予定時刻、積み込み予定土量、各土運船の入港順序等を事前に知ることが可能となり、各土運船に対する土砂積み出し準備を予め行うことができるため、土源からの埋立用土砂の積み出し、土運船への積み込み及び土運船による運搬をよりスムーズに行うことが可能となるとともに、土運船側では、自らの位置を他船との相対位置関係において把握することができるため、他船と干渉しない適切な経路に沿って自船を航行させることができるのみならず、土源側情報に基づいて目的地である土源での混雑状況を自ら判断し、場合によっては、航行速度の変更あるいは一時的な待機によって入港予定時刻をシフトさせる、土源を変更するといった作業変更を自ら行って土源での混雑を自ら回避することも可能となる。さらに、管理側では、土運船側から送信されてきた土運船側情報や土源側から送信されてきた土源側情報を管理側データとして一元的に集中管理することが可能となる。
【0012】
一方、測量船側では、超音波測深機を用いた水深計測を行い、測量結果である水深データをGPS測量データとともに測量船側情報として管理側コンピュータに送信する。そして、管理側コンピュータは、測量船側コンピュータから受信した水深データ及びGPS測量データを管理側データとして適宜保存するとともにこれらのデータに基づいて水深マップを作成する。水深マップは、いわゆる等深線図として表現することができる。次に、作成された水深マップを管理側データとして適宜保存するとともにこれを管理側コンピュータから土運船側コンピュータや場合によっては測量船側コンピュータにもデータ送信し、該水深マップを自船位置とともに画像表示する。
【0013】
水深マップと自船位置とを重ね合わせる態様は任意であり、管理側コンピュータでは水深マップの作成のみを行い、かかる水深マップに自船位置を重ね合わせる処理については各船ごとに個別に行う方法や、かかる重ね合わせも管理側コンピュータで行い、各船では自船位置の特定だけを行う方法が考えられる。
【0014】
このように水深マップを画像表示すると、土運船や測量船の側では、現在位置と周辺の水深との関係が一目瞭然となり、どの方向に進入すべきかあるいは進入すべきでないかを瞬時に判断することが可能となる。また、管理側では、埋立土砂の投入による水深の変化を一元的に集中管理することが可能となる。
【0015】
各コンピュータをどのように構成するかは任意であり、土運船側コンピュータ及び測量船側コンピュータは例えばノートパソコン、ペン入力対応のモバイルパソコン、携帯情報端末等で、土源側コンピュータはデスクトップパソコンで、管理側コンピュータはLANを介して相互接続されたパソコン群でそれぞれ構成することが可能である。
【0016】
管理側コンピュータと他の各コンピュータとを相互にデータ通信するための構成についても任意であるが、例えば上述した土運船側コンピュータ及び測量船側コンピュータのそれぞれにパケット通信専用端末を接続するとともに、該パケット通信専用端末を介して管理側コンピュータとのデータ通信を行うように構成することが考えられる。
【0017】
かかる構成においては、NTT移動通信網株式会社が提供する通信サービスネットワークであるDoPa網を利用することができる。
【0018】
なお、かかる構成においては、パケット通信専用端末から無線送信されてきたパケットデータを受信するパケット通信ネットワークが管理側コンピュータとの間に介在する必要があるが、パケット通信ネットワークと管理側コンピュータとの間については、専用線やISDNを用いたLANで接続してもよいし、所定のプロバイダを介したインターネット経由で接続してもよい。
【0019】
GPS測量装置の測位方式は任意であるが、精度とリアルタイム性の面では、単独測位方式よりも相対測位方式であるDGPS方式を採用するのが望ましいし、さらなる精度向上という意味では、干渉測位方式の一種であるRTK―GPS(リアルタイムキネマティックGPS)方式の採用が望ましい。
【0020】
なお、DPGS方式やRTK―GPS方式を採用する場合には、GPS測量装置のほかに、座標位置が既知の固定局が別途必要となるとともに、該固定局からの補正データを受信するための無線機を土運船及び測量船の各船に搭載しておく必要があることは言うまでもない。これらの測位方式の場合には、固定局からの補正データを移動局である各船の無線機で受信し、これをGPS測量装置で受信されたGPS信号と組み合わせることによって各船の位置を演算処理し、測量データとして出力することとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る埋立工事施工管理システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る埋立工事施工管理システムを示した全体図、図2は該システムを用いて海上埋立工事を行っている様子を示した作業領域全体の斜視図である。
【0023】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1は、土源2に設置された土源側コンピュータ3と、土運船4に搭載された土運船側コンピュータ5と、測量船6に搭載された測量船側コンピュータ7と、土運船4及び測量船6と離間した管理センター8内に設置される管理側コンピュータ9とから概ね構成してある。
【0024】
土運船4は、土砂を積み込んで運搬し所定の位置にて海中に投入する役目を果たす埋立用船舶であり、底開パージ、ボックスパージなどさまざまなタイプのものが存在する。そして、図2でよくわかるように、埋立範囲10が広域になればなるほど、多くの台数が同時に海上を行き来することとなる。
【0025】
土源側コンピュータ3には、土源2の土砂供給を管理するシーケンサと呼ばれる土源管理装置11を接続してあり、該土源管理装置から、船名、管理番号といった土運船4の識別情報、該土運船の着岸及び離岸日時、積載土量、積載状態等の土源側情報を自動取得できるようになっている。かかる土源側コンピュータ3は、図1に示すように例えばデスクトップパソコンで構成することが可能であり、必要であればプリンタ等の周辺機器を適宜接続すればよい。
【0026】
土運船側コンピュータ5には、干渉測位方式の一種であるRTK―GPS(リアルタイムキネマティックGPS)方式で作動するGPS測量装置13を接続してあり、GPSアンテナ14で受信されたGPS信号と固定局15から送信され図示しない無線機で受信されたRTK補正データとを用いて土運船4の位置を高精度に計測できるようになっている。固定局としては、例えば航行安全センタが設置したものを利用すればよい。かかる土運船側コンピュータ5は、図1に示すようにノートパソコンやモバイルパソコンで構成することが可能であり、必要であればプリンタ等の周辺機器を適宜接続すればよい。
【0027】
ここで、土運船側コンピュータ5にはパケット通信専用端末15を接続してあり、計測されたGPS測量データをはじめとした土運船側情報を土運船側コンピュータ5からパケット通信専用端末15を介してデータ送信できるようになっている。
【0028】
パケット通信専用端末15は、例えばNTT移動通信網株式会社から市販されているDoPa対応端末(「DoPa」は登録商標)を用いることが可能である。なお、その場合、後述するパケット通信ネットワークは、やはりNTT移動通信網株式会社が提供する通信サービスネットワークであるDoPa網となる。
【0029】
測量船側コンピュータ7も土運船側コンピュータ5と同様、測量船6の位置を高精度に計測可能なGPS測量装置13及びパケット通信専用端末15を接続してあるが、測量船側コンピュータ7にはさらに、測量船6下方の水深を計測する超音波測深機12を接続してあり、計測した水深データを測量船側コンピュータ7に出力するとともに、該水深データをGPS測量データとともに測量船側情報としてパケット通信専用端末15を介してデータ送信できるようになっている。超音波測深機12は、例えばナローマルチビーム測深ソナーと呼ばれるものを使用することができる。かかる測量船側コンピュータ7についても、図1に示すように、ノートパソコンやモバイルパソコンで構成することが可能である。
【0030】
なお、土運船4や測量船6の方位を計測する必要があるのであれば、電子磁気コンパスを設置したり、あるいは第2のGPS測量装置を該装置に接続されたGPSアンテナが上述のGPSアンテナ14とは別の位置に立設されるように別途設置するようにすればよい。かかる構成によれば、電子磁気コンパスの計測結果から直接的に、あるいは相異なる二点で計測されたGPS測量データを用いて間接的に土運船4や測量船6の方位を求めることができる。
【0031】
また、土運船4や測量船6の位置をGPS計測するにあたって船体の動揺を考慮した高精度な計測を行いたい場合には、動揺センサを各船に別途搭載し、該動揺センサによって船体の動揺をピッチング(前後の動揺)、ローリング(左右の動揺)及びヒービング(上下動)の3成分で計測し、かかる計測結果を用いてGPS測量データを補正するようにすればよい。
【0032】
一方、管理側コンピュータ9は、ルータ19、通信回線20及びルータ18を介してパケット通信ネットワーク16に接続された管理側ネットワーク21の一部として構成してあるが、パケット通信ネットワーク16がその一部を構成する基地局17を介してパケット通信専用端末15とデータ送受信を行うことができるようになっているため、管理側コンピュータ9は、土運船側コンピュータ5及び測量船側コンピュータ7と相互にデータ通信可能な状態となる。
【0033】
また、管理側ネットワーク21には、ルータ19及び専用回線22を介して土源側コンピュータ3を接続してあり、管理側コンピュータ9は、土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7と同様、土源側コンピュータ3とも相互にデータ通信可能に構成してある。
【0034】
かかる管理側コンピュータ9は、図1に示すように例えばデスクトップパソコンで構成することが可能であり、必要であればプリンタ等の周辺機器を適宜接続すればよい。なお、管理側ネットワーク21内に図示しないデータベースサーバを設けておき、該データベースサーバにさまざまなデータを適宜記憶させておくことができることや、管理側ネットワーク21が設けられる管理センター8の設置場所については、埋立範囲10の沿岸付近に設けてもよいし、遠隔地であってもかまわないことは言うまでもない。
【0035】
このように、土運船側コンピュータ5は、土運船側情報をパケット通信専用端末15及びパケット通信ネットワーク16を介して、土源側コンピュータ3は、通信回線22を介して管理側ネットワーク21の管理側コンピュータ9にそれぞれデータ送信し、管理側コンピュータ9は、かかる土運船側情報及び土源側情報を管理側データとして適宜処理保存するとともに、該管理側データを逆経路で土運船側コンピュータ5及び土源側コンピュータ3にデータ送信するようになっている。また、測量船側コンピュータ7は、超音波測深機12による水深データやGPS測量データを含む測量船側情報をパケット通信専用端末15及びパケット通信ネットワーク16を介して管理側ネットワーク21の管理側コンピュータ9に送信し、管理側コンピュータ9は、送信された水深データ及びGPS測量データに基づいて所定の水深マップを作成するとともに該水深マップを逆経路で土運船側コンピュータ5及び必要に応じて測量船側コンピュータ7にデータ送信し、かかる水深マップを受信した土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7では、該水深マップを自船位置とともに画像表示するようになっている。
【0036】
本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1においては、土運船4や測量船6に搭載されたGPS測量装置13で各船の位置をGPS計測するにとどまるのではなく、土運船4ごとに計測された各GPS測量データを土運船側情報としてパケット通信専用端末15から送信して管理側コンピュータ9にて個別に受信し、該管理側コンピュータでは、かかる土運船側情報を管理側データとして処理するとともに、該管理側データに含まれるGPS測量データを土運船4及び測量船6の相対位置関係がわかるように管理側コンピュータ9のCRTディスプレイに出力する。また、土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7では、かかる管理側データを逆経路にて受信するとともに、受信した管理側データに含まれるGPS測量データを他の土運船4や測量船6との相対位置関係がわかるように土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の液晶ディスプレイに出力する。
【0037】
図3(a)、(b)は、管理側コンピュータ9のCRTディスプレイと、土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の液晶ディスプレイに映し出された画面の一例をそれぞれ示したものであり、同図でわかるように、これらのディスプレイには、土運船4や測量船6の相対位置関係がリアルタイムに表示される。
【0038】
また、土運船側においては、このようなGPS測量データのほかに、投入終了の連絡、積み込み予定土源、積み込み予定土量、入港予定時刻といった他の土運船側情報を管理側コンピュータ9にデータ送信し、土源側においては、土砂供給状況、各土運船が入出港した時刻、現在の土運船4の停泊状況といった土源側情報を土源管理装置11から読み出し、これを管理側コンピュータ9にデータ送信する。
【0039】
一方、管理側コンピュータ9は、土運船側から送信されてきた土運船側情報や土源側から送信されてきた土源側情報を管理側データとして保存するとともに、該管理側データを土運船側コンピュータ5や土源側コンピュータ3の要求に応じて又は要求とは無関係に土運船4や土源2にデータ送信する。
【0040】
管理側データを土運船側コンピュータ5や土源側コンピュータ3の要求に応じて土運船4や土源2にデータ送信するにあたっては、例えば管理側ネットワーク21にWebサーバーを設けるとともに該Webサーバーへのアクセス要求に対してホームページの閲覧を許可することにより、土運船側コンピュータ5や土源側コンピュータ3から随時情報閲覧できるようにしておくことが考えられる。
【0041】
図4は、土源2付近の海域を土運船側コンピュータ5の液晶ディスプレイに映し出した様子を示したものであり、かかる画面を見ることにより、土源2に停泊しあるいはその近傍を航行する土運船の分布状況を容易に把握することができる。
【0042】
さらに、管理側コンピュータ9は、土源側コンピュータ3からの土源側情報又は土運船側コンピュータ5からの土運船側情報に基づく指示情報を管理側コンピュータ9にて作成するとともに、作成された指示情報を土運船側コンピュータ5又は土源側コンピュータ3にデータ送信する。
【0043】
具体的には、土運船側情報と土源側情報とを照合することによって、特定の土源の特定の時間帯で土運船が集中するであろうと管理側で判断できる場合には、土運船4と土源2との距離、土源2への到着順序、土源2での土砂供給能力等を適宜勘案しながら、土源、積み出し予定土量、入港予定時刻、航行速度等を変更すべき旨の指示情報や、沖合にて一時待機すべき旨の指示情報を土運船ごとに管理側コンピュータ9で作成し、これを対応する土運船4に送信するとともに、土運船側では、受信した指示情報に基づいて、土源、積み出し予定土量、入港予定時刻、航行速度等を変更し、又は一時待機する。
【0044】
また、測量船4においては、まず、超音波測深機12を用いた水深計測を行い、測量結果である水深データをGPS測量データとともに管理側コンピュータ9に送信する。
【0045】
次に、管理側コンピュータ9は、測量船側コンピュータ7から受信した水深データ及びGPS測量データに基づいて水深マップを作成する。受信された水深データ及びGPS測量データ並びにそれらから作成された水深マップについては、管理側ネットワーク21に設置されたデータベースサーバーに随時保存するようにすればよい。
【0046】
次に、作成された水深マップを管理側データとして管理側コンピュータ9から土運船側コンピュータ5及び必要に応じて測量船側コンピュータ7にデータ送信する。
【0047】
次に、土運船側コンピュータ5及び測量船側コンピュータ7では、かかる水深マップを自船位置とともにそれらの液晶ディスプレイに画像表示する。液晶ディスプレイに水深マップを画像表示するにあたっては、いわゆる等深線図や海底鳥瞰図として表示することができるし、深さに応じて適宜色分けすることも可能である。
【0048】
図5は、これら水深マップ及び自船位置が土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の液晶ディスプレイに画像表示された様子を示したものである。なお、同図では、自船位置のみならず、他船位置についても自船との相対位置関係がわかるように併せて画像表示してあるとともに、等深線には深度を付記してある。
【0049】
このようにすると、土運船4や測量船6の側では、液晶ディスプレイを見るだけで現在位置と周辺の水深との関係が一目で把握される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1によれば、土運船側や測量船側においては、他の土運船4や測量船6との相対位置関係がわかるような形で土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の液晶ディスプレイにリアルタイムに出力されるので、音声連絡のための無線設備を土運船4や測量船6に搭載せずとも、他船と干渉しない適切な経路に沿って自船を航行させたり、他の土運船4や測量船6との衝突回避や作業干渉回避などの項目に関して移動側での自主的管理が可能となる。また、土源側情報に基づいて目的地である土源2での混雑状況を自ら判断し、場合によっては、航行速度の変更あるいは一時的な待機によって入港予定時刻をシフトさせる、土源2を変更するといった作業変更を自主的に行って土源2での混雑を自ら回避し、その結果として土砂運搬効率を向上させるとともに、他の土運船4との接触事故を未然に回避することも可能となる。
【0051】
また、管理側においては、複数の土運船4や測量船6の相対位置関係が管理側コンピュータ9のCRTディスプレイにリアルタイムに出力されることとなり、各土運船4や測量船6の航行予測、それに基づく衝突回避や作業干渉回避などの項目に関して管理側で集中的に管理又は監視することが可能となるとともに、土運船側から送信されてきた土運船側情報や土源側から送信されてきた土源側情報を管理側データとして管理側コンピュータ9で取り扱うことにより、土源2での土砂の積み出し、土運船4への積み込み及び土運船4による運搬といった土砂運搬に関する一連の流れを一元的に集中管理することが可能となる。
【0052】
また、土源側では、土運船4の入港予定時刻、積み込み予定土量、各土運船4の入港順序等を事前かつリアルタイムに知ることが可能となり、各土運船4に対する土砂積み出し準備を予め行うことができる。そのため、土源2からの埋立用土砂の積み出し、土運船4への積み込み及び土運船4による運搬をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1によれば、土源側コンピュータ3からの土源側情報又は土運船側コンピュータ5からの土運船側情報に基づく指示情報を管理側コンピュータ9にて作成するとともに、作成された指示情報を土運船側コンピュータ5又は土源側コンピュータ3にデータ送信するように構成したので、各土源2への土運船4のアクセスが管理側にて集中管理され、特定の土源2への土運船4の集中を未然に回避するとともに、土源2からの埋立用土砂の積み出し、土運船4への積み込み及び土運船4による運搬をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1によれば、土運船側コンピュータ5及び測量船側コンピュータ7にパケット通信専用端末15を接続するとともに、該パケット通信専用端末を介して管理側コンピュータ9とのデータ通信を行うように構成したので、送受信されたデータ量(バイト量)に応じて課金される通信サービスを利用することが可能となり、通信サービス料金に対する費用負担を軽減することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係る埋立工事施工管理システム1によれば、測量船側コンピュータ7から送信されてきた水深データ及びGPS測量データに基づいて水深マップを管理側コンピュータ9にて作成するとともに、かかる水深マップを土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7に自船位置とともに画像表示するようにしたので、土運船4や測量船6の側では、現在位置と周辺の水深との関係が一目瞭然となる。
【0056】
そのため、従来のように旗やブイを設置せずとも、どの方向に進入すべきかあるいは進入すべきでないかを瞬時に判断することが可能となり、埋立効率を低下させることなく航行安全性を確保することができる。また、管理側では、埋立土砂の投入による水深の変化を一元的かつリアルタイムに集中管理することが可能となる。
【0057】
本実施形態では、管理側ネットワーク21にWebサーバーを設けるとともに該Webサーバーへのアクセス要求に対してホームページの閲覧を許可することにより、土運船側コンピュータ5及び土源側コンピュータ3から随時管理側データの情報を閲覧できるように構成したが、気海象情報、天気予報、連絡用掲示板等の情報を管理側データの一部としてWebサーバーに加えるようにすれば、これらの情報についても土運船側コンピュータ5や土源側コンピュータ3あるいは測量船側コンピュータ7からも自由に閲覧することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、管理側ネットワーク21に設けたデータベースサーバーに工事進捗図、週間工程表、月間工程表、出来形図、材料搬入実績一覧、作業船情報一覧などの諸情報を格納しておけば、これらの情報を管理側コンピュータ9から自由に閲覧することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、管理側コンピュータ9で水深マップを作成し、これを土運船4や測量船6にデータ送信するようにしたが、水深マップの作成のみならず、所定水深より浅い水域を進入禁止水域として管理側コンピュータ9で評価するとともに評価された進入禁止水域を管理側データの一部として水深マップとともにデータ送信し、該進入禁止水域が水深マップに重ねて画像表示されるように土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7を構成するようにしてもよい。
【0060】
図6は、図5と同様の水深マップに重ねて、管理側コンピュータ9で評価された進入禁止区域を、ハッチング領域31として土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の液晶ディスプレイに画像表示した様子を示したものである。
【0061】
かかる構成によれば、進入の可否に関する判断が土運船4や測量船6の側でばらつく余地がなくなり、座礁の危険を管理側にて一元かつ集中的に防止することが可能となる。
【0062】
なお、かかる構成において、進入禁止水域31内に進入した船を管理側コンピュータ9にて検出して該船に対する警告情報を作成するとともに該警告情報を管理側データの一部としてデータ送信し、該警告情報が画像表示されるように土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7を構成することができる。かかる構成によれば、座礁防止をさらに確実化することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、管理側コンピュータ9で作成された管理側データを測量船側コンピュータ7にもデータ送信するようにしたが、場合によっては測量船側コンピュータ7への管理側データの送信を省略するようにしてもよい。
【0064】
かかる構成においては、測量船6は、管理側コンピュータ9からの水深マップや進入禁止水域あるいは警告情報がデータ送信されないため、自ら搭載している超音波測深機12を用いて自主的に座礁回避することになる。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に係る本発明の埋立工事施工管理システムによれば、多数の土運船や測量船が航行している状況であっても各作業船の航行安全を確保するとともに、埋立用土砂の積み込みから投入に至る一連の埋立作業をスムーズに行うことができる。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る埋立工事施工管理システムの全体図。
【図2】本実施形態に係る埋立工事施工管理システムを用いて海上埋立造成を行っている様子を示した作業領域全体の斜視図。
【図3】管理側コンピュータ9や、土運船側コンピュータ5及び測量船側コンピュータ7の各ディスプレイに土運船4や測量船6の現在位置が表示されている様子をそれぞれ示した図。
【図4】土運船側コンピュータ3のディスプレイに土源2近傍の土運船4の分布状況が表示されている様子をそれぞれ示した図。
【図5】土運船側コンピュータ5や測量船側コンピュータ7の各ディスプレイに水深マップを自船及び他船位置とともに表示した様子を示した図。
【図6】さらに進入禁止水域を重ね合わせて表示した様子を示した図。
【符号の説明】
1 埋立工事施工管理システム
2 土源
3 土源側コンピュータ
4 土運船
5 土運船側コンピュータ
6 測量船
7 測量船側コンピュータ
9 管理側コンピュータ
11 土源管理装置
12 超音波測深機
13 GPS測量装置
15 パケット通信専用端末
Claims (1)
- 土源に設置され該土源の土砂供給を管理する土源管理装置が接続された土源側コンピュータと、土運船に搭載され該土運船の位置を計測するGPS測量装置が接続された土運船側コンピュータと、測量船に搭載され該測量船の位置を計測するGPS測量装置及び該測量船下方の水深を計測する超音波測深機が接続された測量船側コンピュータと、前記土運船及び前記測量船と離間して設置される管理側コンピュータとを備えるとともに、該管理側コンピュータと前記土源側コンピュータ、前記土運船側コンピュータ及び前記測量船側コンピュータとを相互にデータ通信可能に構成し、土運船側情報及び土源側情報を前記土運船側コンピュータ及び前記土源側コンピュータから前記管理側コンピュータにそれぞれデータ送信して該土運船側情報及び土源側情報を管理側データとして前記管理側コンピュータに保存するとともに該管理側データを前記土運船側コンピュータ及び前記土源側コンピュータにデータ送信し、前記超音波測深機による水深データを含む測量船側情報を前記測量船側コンピュータから前記管理側コンピュータに送信し該水深データに基づいて所定の水深マップを前記管理側コンピュータで作成するとともに該水深マップを前記管理側コンピュータから前記土運船側コンピュータにデータ送信して自船位置とともに前記土運船側コンピュータに画像表示するようになっている埋立工事施工管理システムであって、
前記管理側コンピュータは、前記土運船側情報と前記土源側情報とを照合し、特定の土源の特定の時間帯で土運船が集中すると判断できる場合には、土運船と土源との距離、土源への到着順序及び土源での土砂供給能力を勘案しつつ、土源、積み出し予定土量、入港予定時刻若しくは航行速度を変更すべき旨の指示情報、又は沖合にて一時待機すべき旨の指示情報を土運船ごとに作成し、これを対応する土運船に送信することを特徴とする埋立工事施工管理システム。
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