JP3796610B2 - 熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法 - Google Patents

熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法及び有機イソシアネートの熱安定性改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な有機イソシアネートの製造方法は、対応するアミンをホスゲン化し、その後必要に応じて、抽出や蒸留により精製するという方法である。このようにして得られた有機イソシアネートは、更にプレポリマー化やイソシアヌレート化等の反応を経て、いわゆる「変性イソシアネート」の原料として、又は、高分子量の「ウレタン樹脂」の原料として用いられる。更にこの「変性イソシアネート」は、塗料・接着剤等の硬化剤、各種フォーム、二液硬化樹脂等に使用され、また、「ウレタン樹脂」は、塗料・接着剤・コーティング剤・各種結着剤・熱可塑性エラストマー等に使用されている。
【0003】
市販の有機イソシアネートは、加熱時に着色することがしばしば起こり、この問題を解決するため、様々な検討が行われている。例えば、特開平7−278087号公報には、ホスゲン化後、特定範囲の大きさで、特定範囲の表面積を持つシェル型触媒を用いて水素と接触させる方法が提案されている。特開平10−95763号公報には、ホスゲン化後、溶剤を完全に除去する前までに、水素と接触させる方法が提案されている。特開平5−65264号公報には、ビスフェノールA系亜リン酸エステル、2,6−ジ−ter−ブチル−4−メチルフェノール、トリフェニルホスファイト等の添加剤を添加する方法が提案されている。特開平2−6454号公報には、窒素ガスを通気する方法が提案されている。特開平4−211641号公報には、ホスゲン含有イソシアネート溶液に低分子量のアルカノール及び/又は多価アルコールを添加する方法が提案されている。英国公開特許公報GB−2207671には、2官能のメチレンビス(フェニルイソシアネート)(以後、MDIと略す)から着色原因となる不純物の除去方法として、このMDIと無水金属シリケート、シリカ、又は、それらの混合物を約190℃で接触させることが記載されている。この様に生成されたMDIから白色の熱可塑性ポリウレタンが得られたとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、水素を用いる方法では、水素の爆発限界が広いため、その取扱いには熟練と相当な注意を要する。また、添加剤を用いる方法では、添加剤がイソシアネート中に存在するため、反応性等の品質に影響を及ぼすことがある。窒素ガスを用いる方法では、排気設備が必要であり、不十分な排気設備では、空気中の酸素濃度低下のための窒息の危険がある。また、GB−2207671の方法は約190℃までジイソシアネートを加熱するというエネルギーが必要である。
【0005】
本発明の目的は、危険度が少なく、簡便で、さらにエネルギー消費の少ない、熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記問題を解決するために、鋭意研究検討した結果、対応するアミンを出発原料にして、アミノ基をイソシアネート基に変換した後、特定の工程を設けることにより、前記目的を達成できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、5〜50℃の温度で、原料有機イソシアネートを、酸化マグネシウム又は酸化チタンに接触させる工程を含むことを特徴とする熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法である。
【0008】
また、本発明は、5〜50℃の温度で、原料有機イソシアネートを、酸化マグネシウム又は酸化チタンに接触させることを特徴とする有機イソシアネートの熱安定性改善方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、用いることのできる有機イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、また、これらのポリメリック体、これらの混合物が挙げられる。本発明は、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどの塗料用に用いられる無黄変ジイソシアネートを得るのに好ましい方法であり、更にはヘキサメチレンジイソシアネートの製造方法として好ましい方法である。
【0010】
アミノ基をイソシアネート基に変換する方法(イソシアネート化反応)としては、例えば、(1)アミンの無機塩(塩酸塩等)とホスゲンを反応させる方法。
(2)アミンを直接ホスゲンと反応させる方法。
(3)アミンを直接一酸化炭素と反応させる方法。
(4)アミンを直接オキサイルクロライドと反応させる方法。
等公知の方法が挙げられる。
【0011】
本発明の有機イソシアネートは、対応するアミンのアミノ基をイソシアネート基に変換し、得られた反応生成物に、金属酸化物と接触させることで得られるものである。なお、必要に応じて抽出や蒸留等の精製工程を設けることができ、この工程は、イソシアネート化反応終了後であればどこでもよい。アミンとホスゲンの反応は通常溶媒中で行われ、反応終了後溶媒の除去が行われる。金属酸化物との接触は、溶媒除去前であってもよい。本発明がより効果的であるのは、溶媒除去後の有機イソシアネートで、精製蒸留が一度行われたものである。さらには、市販品として入手した有機イソシアネートを金属酸化物と接触させることでも、有機イソシアネートの熱安定性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明に用いられる金属酸化物は、マグネシウム、チタンから選択される金属の酸化物である。金属酸化物の形状は、粉末が好ましく、粒径は200メッシュ以下が、さらに好ましい。
【0013】
有機イソシアネートに金属酸化物を接触させる具体的な方法は、特に制限はなく、例えば、有機イソシアネートが充填している反応器や容器に金属酸化物を投入して接触させる方法や、カラムに金属酸化物を充填したものに有機イソシアネートを流し込む方法等が挙げられる。接触の温度については、エネルギー消費の面で加熱や冷却を必要としない温度で行うことが必要である。具体的には5〜50℃の範囲である。
【0014】
有機イソシアネートと金属酸化物との接触工程における有機イソシアネートと金属酸化物の重量比は、有機イソシアネート100重量部に対して、金属酸化物は0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。金属酸化物が少なすぎると、接触処理後のイソシアネートの熱安定性改善が不十分になりやすい。金属酸化物が多すぎると、金属酸化物の除去が困難になりやすい。
【0015】
なお、活性の低下した金属酸化物は、例えば加熱処理や洗浄処理等により再活性が可能であるので、コスト的、環境的にも従来法より有利である。
【0016】
金属酸化物との接触工程においては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤を用いることができる。この有機溶剤としては、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系有機溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系有機溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル系有機溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系有機溶剤等の単品又は混合物が挙げられる。
【0017】
本発明によって得られた有機イソシアネートは、加熱後の着色が従来のものより小さく、熱安定性に優れているものである。このため、熱履歴のかかる各種変性、例えば、ウレタン変性、ウレア変性、ビウレット変性、アロファネート変性、カルボジイミド変性、ウレトジオン変性、イソシアヌレート変性等の変性を施した場合でも、その後の着色は小さいものとなると考えられる。
【0018】
その後、必要に応じて、得られた有機ポリイソシアネートに、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等の公知の各種添加剤や助剤を添加してもよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られた有機イソシアネートは、加熱による着色が小さく、熱安定性が従来のものより向上している。また、処理工程は、従来の方法と比較すると安全で、工程手順そのものも簡略化されたものである。更に得られる有機イソシアネートは、添加剤・安定剤等の添加を省略、あるいは減量することが可能である。このため、本発明によって得られた有機イソシアネートは、各種ウレタン原料や、変性ポリイソシアネートの原料として最適である。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0021】
〔粗ヘキサメチレンジイソシアネートの合成〕
使用原料ヘキサメチレンジアミン:試薬特級モノクロロベンゼン :試薬特級乾燥塩化水素ガス :ボンベ充填品ホスゲン :ボンベ充填品酸化マグネシウム粉 :軽質、試薬特級酸化チタン粉 :試薬特級
【0022】
合成例
攪拌機、温度計、ガス流入管、ガス流出管、還流冷却器、ガス吸収管を備えた反応器に、ヘキサメチレンジアミン(HDA)300部、モノクロロベンゼン(MCB)3100部仕込み均一に攪拌した。次いで、60℃に加熱し、乾燥塩化水素ガスを流量:1690ml/分で、1時間吹き込んだところ、MCB中にHDAの塩酸塩の沈殿が生じた。その後、MCBと共沸させて、反応系中の水分を除去した(流出量:約100ml)。次いで、ホスゲンを流量:220ml/分で12時間吹き込みながら、130℃で反応させた。その後、乾燥窒素ガスで反応器内をパージして、室温まで冷却し、濾過した後、反応液からモノクロロベンゼンをロータリーエバポレーターにより除去した。その後、更に減圧蒸留にて精製して、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI−0と記号をつけて識別する)を得た。HDI−0のイソシアネート含量は50%であった。
【0023】
実施例1
攪拌機、温度計、ガス流入管、ガス流出管、還流冷却器のついた反応器に、HDI−0を100部、金属酸化物として酸化マグネシウム粉を1部仕込み、室温で15時間攪拌した。その後、濾過により酸化マグネシウム粉を除去してHDI−1を得た。HDI−1のイソシアネート含量は50%、色数は10APHAであった。HDI−1を130℃にて24時間加熱した。加熱後のHDI−1のイソシアネート含量は50%、色数は100APHAであった。
【0024】
実施例2及び4、比較例1
表1に示すように、金属酸化物の種類、量を振って、室温で24時間攪拌してHDI−2および4〜5を得た。用いた金属酸化物は全て400メッシュ以下の粉状のものを使用した。このHDI−2及び4を130℃にて24時間加熱した。イソシアネート含量は全て50%であった。比較例1は未処理のHDI−0の熱安定性を測定した。色数測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003796610
【0026】
表1に示すように、金属酸化物に接触処理されたHDIの熱安定性は、未処理のHDIより着色が小さく、熱安定性が良好なものであった。

Claims (2)

  1. 5〜50℃の温度で、原料有機イソシアネートを、酸化マグネシウム又は酸化チタンに接触させる工程を含むことを特徴とする熱安定性の優れた有機イソシアネートの製造方法。
  2. 5〜50℃の温度で、原料有機イソシアネートを、酸化マグネシウム又は酸化チタンに接触させる工程を含むことを特徴とする有機イソシアネートの熱安定性改善方法。
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