JP3794367B2 - 画像処理方法、画像処理装置、写真処理装置、画像処理プログラム、および画像処理プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、良質な画像を得るために、CCD(Charge Coupled Device,電荷結合素子)等の撮像素子によって取り込まれたデジタル画像データに対して、画像処理を施す画像処理方法、画像処理装置、写真処理装置、画像処理プログラム、および画像処理プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、写真の焼き付けは、原画像が記録されている写真フィルムに光を照射し、この写真フィルムを透過した光を印画紙上に照射するアナログ露光により行われてきた。また、近年では、写真フィルム上の画像をスキャナ等によって読み取ることによって得られるデジタル画像データや、デジタルカメラによる撮影によって得られる画像データなどに基づいて、青,緑,赤の単色光を印画紙に照射するデジタル露光が活発に行われている。
【0003】
このデジタル露光を行う構成としては、種々のものが提案されているが、その一例として、レーザー光をデジタル画像データに応じて変調させながら印画紙を走査露光する構成がある。このような構成の焼付装置は、青,緑,赤の各色成分のレーザー光を発生する光源を備えており、以下に示す手順で焼き付け動作を行う。まず、入力される色成分ごとのデジタル画像データに基づいて、各色成分のレーザー光が変調される。そして、変調されたレーザー光が、ポリゴンミラー等の偏向器によって主走査方向に偏向され、fθレンズなどの光学系を介して、印画紙上に照射される。そして、これと同時に印画紙を副走査方向に搬送移動させることによって走査露光が行われ、2次元のカラー画像が印画紙上に焼き付けられる。
【0004】
ところで、写真処理の分野において、写真フィルム上の画像をスキャナ等によって読み取ることによって得られる入力時のデジタル画像データは、出力時(モニター表示や焼き付け)のデジタル画像データよりも、階調が豊富(色が深い)に設定されていることが一般的である。例えば、12ビットの入力デジタル画像データ(以下、適宜「入力画像データ」とする)は、8ビットの出力デジタル画像データ(以下、適宜「出力画像データ」とする)にビット変換されるのが一般的である。
【0005】
このように、出力画像データの階調よりも入力画像データの階調のほうが豊富に設定されているのは、ネガフィルムの濃度の表現幅が非常に広く設計されていて、ネガフィルムの持つ幅広い濃度情報を精度よくデジタル画像データに取り込むと共に、出力画像データの階調を印画紙の発色特性に合わせているためである。また、ネガフィルムの濃度の表現幅が非常に広く設計されているのは、露出調整機能を持たないカメラ(例えば、使い捨てカメラ)でも、適正な撮影を可能にして、カメラに関しての素人でも容易に写真撮影を行えるようにするためである。
【0006】
さらに、入力画像データから出力画像データへビット変換する場合、入力画像データの階調の変化をそのまま出力画像データで再現するために、図10(a)に示すような関数を用いて、入力画像データの分布範囲内の階調を、そのまま出力画像データの階調とすることによって、12ビットのデータから8ビットのデータに変換している。
【0007】
一方、デジタル画像データに対して種々の処理を施すことにより、出力画像データから再現される画像の濃度や色深度を補正することが可能である(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。ここで、デジタル画像データに施す濃度補正の手法としては様々なものが存在するが、上記関数(以下、「補正用関数」とする)の位置をシフトさせることにより、濃度補正を行う手法が広く知られている。例えば、図10(a)に示す補正用関数から得られる出力画像を全体的に濃くしたい場合、図10(b)に示すように、上記補正用関数をシフトさせることにより上記濃度補正を行う。すなわち、上記関数の位置をシフトさせると、各入力階調から得られる出力階調を調整することができるので、1つの入力画像データから様々な濃度の出力画像データを得ることができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−331596号公報(公開日 平成11年11月30日)
【0009】
【特許文献2】
特開2002−44422号公報(公開日 平成14年2月8日)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記濃度補正を行うと、図10(b)に示すように、入力画像データの分布範囲内において、とり得る出力階調の範囲を超えた補正値に変換される入力階調が存在することもあり得る。すなわち、図10(b)に示す補正用関数において、太線の箇所に対応する入力階調からは、階調として出力できない。つまり、上記補正用関数をシフトさせることで、ある補正値が最高出力階調を超える場合、該補正値を階調として出力できず、ある補正値が最低出力階調を下回る場合、該補正値を階調として出力できない。
【0011】
したがって、出力可能な階調の範囲より大きな補正値を一律に最高出力階調(8ビットの場合は255)に変換し、出力可能な階調の範囲より小さな補正値を一律に最低出力階調(0)に一律変換(以下、カッティング処理とする)しなければ、デジタル画像データを出力することができない。ここで、上記補正用関数により入力画像データを出力画像データに変換することにより、少なくとも1の色成分のデジタル画像データで上記切り出し処理がなされた場合、各色成分の出力画像データの間でカラーバランスが崩れることがある。
【0012】
例えば、上記補正用関数が、正の比例定数の1次式であって、12ビットの入力画像データ(B,G,R)=(200,250,300)を8ビットの出力画像データへビット変換する場合について説明する。
【0013】
(a)入力階調200が最高出力階調255となるように、上記補正用関数の位置が設定されている場合
この場合、上記補正用関数によって、(b,g,r)=(255,305,355)の補正値を得る。しかし、g=305,r=355は出力可能な階調の範囲を超えているので、g=305,r=355に上記カッティング処理が施される。これにより、出力階調は(B,G,R)=(255,255,255)となる。よって、出力画像データのカラーバランスは崩れる。
【0014】
(b)入力階調250が最高出力階調255となるように、上記補正用関数の位置が設定されている場合
この場合、上記補正用関数によって、(b,g,r)=(205,255,300)の補正値を得る。しかし、r=300は出力可能な階調の範囲を超えているので、r=300に上記カッティング処理が施される。これにより、出力階調は(B,G,R)=(205,255,255)となる。よって、出力画像データのカラーバランスは崩れる。
(c)入力階調300が最高入力階調255となるように、上記補正用関数の位置が設定されている場合
この場合、上記補正用関数によって、(b,g,r)=(155,205,255)の補正値を得る。ここで、各補正値は、出力可能な階調の範囲におさまっているので、上記カッティング処理は行われず、出力階調は(B,G,R)=(155,205,255)となり、カラーバランスが維持される。
【0015】
このように、B,G,Rのうちのいずれか1色以上の入力画像データから得られる補正値について、上記カッティング処理によって最高出力階調または最低出力階調に変換されると、カラーバランスが崩れてしまうという問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明は、上記補正用関数の位置を座標上でシフトさせる濃度補正において、出力画像データのカラーバランスが崩れない画像処理方法、画像処理装置、写真処理装置、画像処理プログラム、および画像処理プログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像処理方法は、上記課題を解決するために、デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理方法であって、画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める第1ステップと、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める第2ステップと、上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する第3ステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理装置であって、画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める差分演算部と、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める色比率演算部と、上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する色保存部とを備えることを特徴とする。
【0019】
上記手順または構成によれば、デジタル画像データの入力階調に対する補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより出力画像の濃度補正を行っている。ここで、上記補正用関数を座標上でシフトさせると、上記補正用関数から得られる色成分ごとの補正値のカラーバランスは維持されるものの、出力階調のとりえる範囲を超えた補正値が得られることもある。
【0020】
そこで、上記手順によれば、画素ごとに、各色成分の補正値のうち、最大値と最小値とを定めている。そして、色成分ごとの補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めている。これにより、各色成分の補正値において、最も低い補正値からの差分を求めることができる。
【0021】
つぎに、上記最大値と最小値との差分を求め、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算している。これにより、各色成分において、最も低い補正値からの差分を比率とした値である色比率を求めることができる。
【0022】
そして、上記補正用関数の補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定する。そして、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定すれば、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。一方、上記補正用関数の補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定する。そして、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定すれば、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。これにより、カラーバランスを維持した濃度補正が可能となる。
【0023】
本発明の画像処理方法は、上記手順に加えて、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最高出力階調よりも大きい場合、最高出力階調と上記最小値との差分に色成分ごとの上記色比率を乗じた値に上記最小値を加算して得られる値を、色成分ごとの出力階調として設定することにより、第3ステップを実行することを特徴としてもよい。
【0024】
上記色比率は、上記最大値と最小値との差分を求め、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算して得られる値である。したがって、各色成分のうち、補正値が最小値に係る色成分に与えられる色比率は0になると共に、補正値が最大値に係る色成分に与えられる色比率は1になる。
【0025】
そこで、上記手順によれば、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最高出力階調よりも大きい場合、最高出力階調と上記最小値との差分に色成分ごとの上記色比率を乗じた値に上記最小値を加算して得られる値を、色成分ごとの出力階調としている。ここで、上記補正値が最大値の色成分については、色比率が1であるので、上記手順で得られる出力階調は最高出力階調と同一値になる。一方、補正値が上記最低値の色成分については、色比率が0であるので、上記手順で得られる出力階調は上記最低値と同一値になる。
【0026】
したがって、上記手順によれば、少なくとも1の色成分で、補正値が最高出力階調より大きい場合に、上記補正値が最大値の色成分については最高出力階調にできると共に、上記補正値が最小値の色成分については該最小値をそのまま出力階調にできる。よって、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による上記補正値が最高出力階調より大きい場合は、該補正値を最高出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0027】
本発明の画像処理方法は、上記手順に加えて、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最低出力階調よりも低い場合、上記最大値に色成分ごとの上記色比率を乗じて得られる値を、色成分ごとの出力階調に設定することにより、第3ステップを実行することを特徴としてもよい。
【0028】
上記色比率は、上記最大値と最小値との差分を求め、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算して得られる値である。したがって、各色成分の補正値のうち、補正値が最小値に係る色成分に与えられる色比率は0になると共に、補正値が最大値に係る色成分に与えられる色比率は1になる。
【0029】
そこで、上記手順によれば、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最低出力階調よりも低い場合に、上記最大値に色成分ごとの上記色比率を乗じた値を、色成分ごとの出力階調としている。ここで、補正値が最低値の色成分については、上記色比率が0であるので、上記手順で得られる出力階調は0、すなわち最低出力階調と同一値となる。一方、上記補正値が上記最大値の色成分については、色比率が1であるので、上記手順で得られる出力階調は上記最大値と同一値になる。
【0030】
したがって、上記手順によれば、少なくとも1の色成分で、補正値が最低出力階調より小さい場合に、上記補正値が上記最小値の色成分については最低出力階調にできると共に、上記補正値が上記最大値の色成分については該最大値をそのまま出力階調にできる。よって、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による補正値が最低出力階調より小さい場合は、該補正値を最低出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0031】
本発明の写真処理装置は、上記課題を解決するために、上記画像処理装置と、上記画像処理装置が出力するデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を再現するプリンタとを備えることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、上記画像処理装置が出力するデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を再現している。したがって、写真処理装置の個体差や経時変化に関係なく、カラーバランスの安定した画像を再現することが可能となる。
【0033】
上記画像処理プログラムは、上記課題を解決するために、上記画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0034】
上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記画像処理プログラムを記録したことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0036】
本実施の形態に係る写真処理装置は、写真フィルムに記録されている画像を、感光材料としての印画紙上に焼き付けるものであり、図2に示すように、フィルムスキャナ1と、画像処理装置2と、焼付部(プリンタ)3とを備えている。
【0037】
フィルムスキャナ1は、図3に示すように、写真フィルムに光を照射するスキャナ光源21と、上記写真フィルムを搬送するためのフィルムキャリア22と、スキャナ光源21から出射され、上記写真フィルムを透過する光を測光することによって上記写真フィルムに記録された画像を取り込むスキャナユニット23とで構成されている。なお、ここでの写真フィルムはネガフィルムであるものとする。
【0038】
スキャナ光源21は、光を出射するハロゲンランプ24と、熱線吸収フィルタ25と、調光フィルタ26と、ミラー27と、レンズボックス28とを、光の進行方向に沿ってこの順で備えている。また、スキャナユニット23は、スキャナレンズ(ズームレンズ)29と、ミラー30と、3板式のCCD(Charge Coupled Device)31とを、光の進行方向に沿ってこの順で備えている。
【0039】
ここで、フィルムスキャナ1が、上記写真フィルムに記録された画像を取り込む手順を説明する。まず、フィルムキャリア22にて、写真フィルムの任意のコマが支持されると、ハロゲンランプ24から出射された光は、熱線吸収フィルタ25にて熱線成分が除去されて調光フィルタ26に入射し、調光フィルタ26にて調光された後、ミラー27にて進行方向が変えられてレンズボックス28に入射する。レンズボックス28では、入射光がむらのない光に拡散され、この光がフィルムキャリア22にて支持されている写真フィルムの任意のコマに照射される。
【0040】
そして、写真フィルムを透過した光は、スキャナレンズ29にて、ミラー30を介してCCD31の受光面を露光するような光に変換された後、ミラー30にて進行方向を変えられてCCD31の受光面に入射する。これにより、CCD31は、写真フィルムの任意のコマにおける色成分(青、緑、赤)ごとのアナログ画像データ(アナログの電気信号)を取得できる。これにより、写真フィルムに記録されている画像のアナログ画像データが色成分ごとに得られることになる。そして、フィルムスキャナ1は、上記アナログ画像データを以下に記す画像処理装置2へ送信する。
【0041】
画像処理装置2は、上記アナログ画像データをデジタル画像データに変換し、各画素の色成分ごとのデジタル画像データに画像処理を行うものである。なお、画像処理装置2の詳細な構成については後述する。また、画像処理装置2は、写真焼付装置に組み込まれたマイクロプロセッサおよび/またはDSP(Digital Signal Processor)などによって構成されてもよいし、装置の外部に設けられたPC(Personal Computer)によって構成されてもよい。また、画像処理装置2は、フィルムスキャナ1から送られてきた画像データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等のメモリ(図示せず)を備えている。
【0042】
焼付部(プリンタ)3は、画像処理装置2にて出力された色成分ごとのデジタル画像データに基づいて光変調素子の各画素を駆動することにより、印画紙を焼き付け、画像を生成するためのものである。上記の光変調素子としては、例えばPLZT露光ヘッド、DMD(Digital Micromirror Device)、LCD(液晶表示装置)、LCS(液晶シャッタ)、LED(Light Emitting Diode)パネル、レーザー、FOCRT(Fiber Optic Cathode Ray Tube)、CRTが挙げられる。
【0043】
次に、画像処理装置2について説明する。画像処理装置2は、図4に示すように、A/D(Analog to Digital)変換部4、対数変換部5、濃度補正部6、差分・比率演算部7、色保存部8から構成される。
【0044】
A/D変換部4は、フィルムスキャナ1から送られてきた色成分ごとのアナログ画像データに対して標本化および量子化を行うことにより、色成分ごとのデジタル画像データ(デジタルの電気信号)を出力し、これを対数変換部5へ送信するブロックである。なお、本実施の形態においては、ここで出力されるデジタル画像データは、16ビットのデジタルデータ(0〜65535階調)であるが、ビット数はこれに限定されるものではない。
【0045】
対数変換部5は、A/D変換部4から送られてきた色成分ごとの16ビットのデジタル画像データに対数変換処理を施し、色成分ごとの12ビットのデジタル画像データを出力するためのブロックである。ここで、対数変換処理とは、図5に示す露光濃度特性曲線が記憶されたLUT(ルックアップテーブル,補正演算装置)を用いて、デジタル画像データのグラデーションを調整する処理をいう。また、ネガフィルムから取り込まれたデジタル画像データにあっては、上記対数変換処理により、ネガフィルム上の画像の明暗と、印画紙上の画像の明暗とを一致させることができる。なお、ここでは、16ビットのデジタル画像データが入力して、12ビットのデジタルが出力しているが、デジタル画像データのビット数はこれに限定されるものではない。
【0046】
濃度補正部6は、対数変換部5から送られてきた色成分ごとの12ビットのデジタル画像データに濃度補正処理を施し、8ビットのデジタル画像データを出力するためのブロックである。ここで、濃度補正処理とは、図6(a)に示す補正用関数を用いて、入力画像データの分布の範囲内の各入力階調(例えば、2000〜2500)に対応する出力階調の補正値を調整することにより、印画紙上に再現される画像の濃度を補正する処理をいう。具体的には、オペレータからの入力指示により、図6(b)に示すように、上記補正用関数の位置をシフトさせることにより、デジタル画像データの各入力階調に対する各出力階調の補正値を調整する。これにより、シフトした階調分だけ、各出力階調の濃度を調整することができる。なお、濃度補正部6において、デジタル画像データのビット数を8ビットにまで変換しているのは、印画紙の感光特性にあわせた濃度幅でデジタル画像データを出力するためである。ただし、出力画像データのビット数は8ビットに限定されるものではない。
【0047】
また、本実施の形態における濃度補正処理では、上記補正用関数をシフトさせ、各入力階調に対する各出力階調の補正値を調整することにより行われている。したがって、シフト後の補正用関数の位置、または入力画像データの分布範囲内における画素値によっては、出力階調のとり得る範囲(0〜255)におさまらない補正値が得られることもあり得る(図6(b)の太線参照)。そこで、本実施の形態では、濃度補正部6が、少なくとも1の色成分で上記補正用関数によってこのような補正値が得られる画素を不適正画素と判断している。
【0048】
さらに、濃度補正部6は、不適正画素において、上記補正用関数によって得られた、出力階調のとり得る範囲におさまらない補正値を最高出力階調または最低出力階調に変換する(以下、この処理を「カッティング処理」とする)。具体的には、濃度補正部6は、上記補正用関数から得られた256以上の補正値を最高出力階調である255に変換し、上記補正用関数から得られた−1以下の補正値を最低出力階調である0に変換する。なお、このようなカッティング処理が行われた場合、その画素のカラーバランスは崩れることになる。例えば、入力階調(B,G,R)=(250,150,50)に対し、上記補正用関数から得られる補正値が(b,g,r)=(300,200,100)の場合、上記カッティング処理によって得られる値は(B,G,R)=(255,200,100)となる。この場合、上記補正用関数によって得られる値のカラーバランスは崩れていないものの、カッティング処理により得られる値のカラーバランスは崩れている。なお、本実施の形態では、上記カッティング処理を行っているが、上記カッティング処理は本発明に必ずしも必要なものではない。
【0049】
差分・比率演算部(差分演算部,比率演算部)7は、濃度補正部6によって検出された不適正画素に関し、上記補正用関数によって画素ごとに得られた各色成分の補正値のうち、最大値と最小値とを定める。そして、差分・比率演算部7は、上記不適正画素に関し、上記最大値と最小値との差分および、上記補正用関数により得られた補正値と上記最小値との差分を色成分ごとに求めると共に、上記各差分から色比率を求めるブロックである。なお、上記色比率とは、色保存部8において、不適正画素に対してカラーバランスを調整する処理を行うのに用いられる比率である。また、上記各差分を求めるブロックと上記色比率を求めるブロックとを別々に構成していても構わない。
【0050】
色保存部8は、上記不適正画素に対して、カラーバランスを維持した出力階調を生成し、8ビットの出力画像データを出力するブロックである。すなわち、上記カッティング処理を行うとカラーバランスが崩れてしまう不適正画素に対し、色保存部8は、カラーバランスが維持された色成分ごとのデジタル画像データ(8ビット)を生成する。
【0051】
つぎに、画像処理装置2によって実行される本実施の形態に係る画像処理の手順を図1に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、フィルムスキャナ1は、写真フィルムから取り込んだ色成分ごとのアナログ画像データを画像処理装置2へ送信する。つぎに、A/D変換部4は、画像処理装置2に取り込まれた上記色成分ごとのアナログ画像データを、色成分ごとのデジタル画像データに変換する(S1)。そして、A/D変換部4は、上記色成分ごとのデジタル画像データ(16ビットのデータ)を対数変換部5に送信する。ここで、対数変換部5は、上記色成分ごとのデジタル画像データに対数変換処理を施す(S2)と共に、上記色成分ごとのデジタル画像データを12ビットのデータとして濃度補正部6へ送信する。
【0052】
さらに、濃度補正部6は、対数変換部5から送られてきた上記色成分ごとのデジタル画像データに上記濃度補正処理を施す(S3)。そして、濃度補正部6は、補正用関数により得られた補正値が、少なくともいずれか1の色成分で、出力階調の範囲(0〜255)におさまっていない画素を不適正画素と判断する(S4)。つぎに、濃度補正部6は、不適正画素に対して、上記カッティング処理を実行する(S5)。
【0053】
つぎに、差分・比率演算部7は、濃度補正部6により判断された不適正画素に関し、上記補正用関数から得られた各色成分の補正値の最大値と最小値との差分および、各色成分の補正値と上記最小値との差分を色成分ごとに求めると共に、これらの差分から色成分ごとの色比率を求める(S6)。そして、色保存部8は、不適正画素に関し、上記補正用関数から得られた各色成分の補正値および上記色比率を用いて、出力階調を演算し、色成分ごとのデジタル画像データを出力する(S7)。これにより、不適正画素について、カラーバランスの整ったデジタル画像データが得られることになる。なお、S4ないしS7における処理手順の詳細については、後に詳述する。
【0054】
その後、画像処理装置2は、濃度補正処理、カラーバランスの調整処理が行われた色成分ごとのデジタル画像データを写真焼付装置3に送信する。そして、写真焼付装置3は、画像処理装置2から送られてきた色成分ごとのデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を焼き付ける。以上のような一連の処理によって、本実施の形態に係る画像処理が終了する。
【0055】
つぎに、S4ないしS7における処理手順の詳細を説明する。まず、濃度補正処理後の色成分ごとのデジタル画像データから不適正画素を検出する手順(S4)を説明する。本実施の形態においては、写真フィルムが表現できる濃度幅でデジタル画像データを入力すると共に、印画紙の感光特性にあわせた濃度幅でデジタル画像データを出力するために、上記濃度補正処理においては、12ビットのデジタル画像データを8ビットのデジタル画像データに変換している。
【0056】
さらに、上記濃度補正処理において、入力画像データの階調の変化をそのまま出力画像データで再現するために、図6(a)(b)に示す補正用関数を用いて、入力画像データの階調のとり得る範囲の一部をそのまま出力することによって、12ビットのデータから8ビットのデータに変換している。したがって、本実施の形態における濃度補正処理では、8ビットのデジタル画像データを出力するので、表現可能な出力階調の幅は0〜255である。
【0057】
一方、上記濃度補正処理とは、図6(b)に示すように、上記補正用関数の位置をシフトさせることにより、各入力階調に対する各出力階調の各補正値を調整するものである。したがって、上記補正用関数の位置、または入力画像データの分布範囲内における画素値によっては、補正用関数から得られる補正値が256以上になることや、−1以下になることもある。すなわち、上記補正用関数から得られる補正値が出力階調のとりえる範囲を超えることもあり得る。そこで、濃度補正部6は、少なくともいずれか1の色成分で、上記補正用関数から得られる補正値が8ビットの出力階調の幅におさまらない画素を不適正画素として検出している。
【0058】
つぎに、上記不適正画素に対して実行されるカッティング処理(S5)の詳細について説明する。上記濃度処理部6における補正用関数から得られた補正値が出力階調のとり得る範囲におさまらない場合、その補正値をそのままデジタル画像データとして出力することができない。したがって、このような補正値を最高出力階調または最低出力階調に変換してから、デジタル画像データとして出力する必要がある。具体的には、濃度補正部6は、上記補正用関数から得られた補正値が256以上の場合、その値を最高出力階調である255に変換し、上記補正用関数から得られた補正値が−1以下の場合、その値を最低出力階調である0に変換する。
【0059】
したがって、少なくとも1の色成分において、カッティング処理がなされた不適正画素は、そのカラーバランスを崩すことになる。例えば、上記濃度補正部6における補正用関数から(b,g,r)=(200,250,300)の補正値が得られたとすると、r=300が上記濃度補正部6の出力階調の範囲を超えている。この場合、上記カッティング処理によって、(B,G,R)=(200,250,255)の値が得られ、該カッティング処理によってカラーバランスが崩れることがわかる。
【0060】
つぎに、不適正画素に関し、濃度補正処理における補正用関数から得られた、色成分ごとの値の最大値と最小値との差分および、各色成分の補正値と上記最小値との差分を求めると共に、これらの差分から色比率を求める手順(S6)を説明する。差分・比率演算部7は、各不適正画素において、以下に示す演算を実行する。
【0061】
入力階調(B,G,R)に対して、上記濃度補正処理を行うことにより、補正用関数から得られた補正値を(b,g,r)とすると共に、(b,g,r)のうちの最小値をminとして、最大値をmaxとすると、
b´=b−min
g´=g−min
r´=r−min
max´=max−min
を演算する。
【0062】
そして、各不適正画素において色成分ごとに与えられる色比率を(b´´,g´´,r´´)とすると、
b´´=b´÷max´
g´´=g´÷max´
r´´=r´÷max´
を演算する。
【0063】
つぎに、色保存部8による処理の詳細について説明する(S8)。色保存部8は、上記各不適正画素に関して、以下の演算を実行することにより、色成分ごとのデジタル画像データを算出する(以下、「色保存処理」とする)。色保存処理から得られるデジタル画像データを(B´,G´,R´)とすると、少なくとも1の色成分で、上記補正用関数から得られた補正値が最高出力階調より高い不適正画素に対しては、
B´=(255−min)×b´´+min
G´=(255−min)×g´´+min
R´=(255−min)×r´´+min
により、色成分ごとの出力階調を演算する。
【0064】
一方、少なくとも1の色成分で、上記補正用関数から得られた補正値が最低出力階調より低い不適正画素に対しては、
B´=max×b´´
G´=max×g´´
R´=max×r´´
により、色成分ごとの出力階調を演算する。
【0065】
〔実施例1〕
入力階調が(B,G,R)=(150,200,250)である画素Aに対して、上記濃度補正処理を行うことによって、上記補正用関数から得られた補正値が(b,g,r)=(200,250,300)となるものとする。ここで、濃度補正部6は8ビットのデジタル画像データを出力するので、最高出力階調は255である。したがって、補正用関数から得られた補正値におけるr=300は、出力階調のとりえる範囲を超えている。よって、濃度補正部6は、画素Aを不適正画素として検出すると共に、画素Aのr=300にカッティング処理を施して得られる値は(B,G,R)=(200,250,250)となる。
【0066】
つぎに、差分・比率演算部7は、画素Aについて、b´,g´,r´およびmax´を算出する。上記補正用関数から得られた補正値であるb,g,rのうち、最低値はb=200であり、最高値はr=300であるから、
b´=b−min=200−200=0
g´=g−min=250−200=50
r´=r−min=300−200=100
max´=max−min=300−200=100
となる。
【0067】
さらに、差分・濃度演算部7は、画素Aについて、b´´,g´´,r´´を算出する。
b´´=b´÷max´=0÷100=0
g´´=g´÷max´=50÷100=0.5
r´´=r´÷max´=100÷100=1.0
また、補正用関数から得られた補正値のうち、r=300は最高出力階調より高い値である。したがって、色保存部8は、以下の演算により、画素Aの出力階調を算出する。なお、小数点以下は四捨五入する。
B´=(255−min)×b´´+min=(255−200)×0+200=200
G´=(255−min)×g´´+min=(255−200)×0.5+200=228
R´=(255−min)×r´´+min=(255−200)×1.0+200=255となる。
【0068】
ここで、画素Aの入力階調は(B,G,R)=(150,200,250)である一方、濃度補正処理における補正用関数から得られる補正値は(b,g、r)=(200,250,300)であり、カッティング処理により得られる値は(B,G,R)=(200,250,255)である。
【0069】
ここで、濃度補正処理における補正関数から得られる値のカラーバランスは崩れていない一方で、カッティング処理によって得られる値のカラーバランスは崩れている。しかしながら、色補正部8により得られる画素Aの出力階調は(B´,G´,R´)=(200,228,255)となり、カッティング処理から得られた値よりもカラーバランスが崩れていないことがわかる。
【0070】
〔実施例2〕
入力階調が(B,G,R)=(0,50,100)である画素Cに対して、上記濃度補正処理を行うことによって、上記補正用関数から得られた補正値が(b,g,r)=(−50,0,100)となるものとする。ここで、濃度補正部6が出力するデジタル画像データの最低出力階調は0である。したがって、補正用関数から得られた補正値におけるb=−50は、出力階調のとりえる範囲を超えている。よって、濃度補正部6は、画素Cを不適正画素として検出すると共に、画素Cのb=−50にカッティング処理を施して得られる値は(B,G,R)=(0,0,100)となる。
【0071】
つぎに、差分・比率演算部7は、画素Cについて、b´,g´,r´およびmax´を算出する。上記補正用関数から得られた補正値であるb,g,rのうち、最低値はb=−50であり、最高値はr=100であるから、
b´=b−min=−50−(−50)=0
g´=g−min=0−(−50)=50
r´=r−min=100−(−50)=150
max´=max−min=100−(−50)=150
となる。
【0072】
さらに、差分・比率演算部7は、画素Cについて、b´´,g´´,r´´を算出する。
b´´=b´÷max´=0÷150=0
g´´=g´÷max´=50÷150=0.33…
r´´=r´÷max´=150÷150=1.0
また、補正用関数から得られた補正値のうち、b=−50はより低い値である。したがって、色保存部8は、以下の演算により、画素Cの出力階調を算出する。なお、小数点以下は四捨五入する。
B=max×b´´=100×0=0
G=max×g´´=100×0.33…=33
R=max×r´´=100×1.0=100
となる。
【0073】
ここで、画素Cの入力階調は(B,G,R)=(0,50,100)である一方、濃度補正処理における補正用関数から得られる補正値は(b,g、r)=(−50,0,100)であり、カッティング処理により得られる値は(B,G,R)=(0,0,100)である。ここで、濃度補正処理における補正用関数から得られる補正値のカラーバランスは崩れていない一方で、カッティング処理によって得られる値のカラーバランスは崩れている。しかしながら、色補正部8により得られる画素Cの出力階調は(B´,G´,R´)=(0,33,100)となり、カッティング処理から得られた出力階調よりもカラーバランスが崩れていないことがわかる。
【0074】
以上のように、上記画像処理によれば、デジタル画像データの入力階調に対する補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより出力画像の濃度補正を行っている。ここで、上記補正用関数を座標上でシフトさせると、上記補正用関数から得られる色成分ごとの補正値のカラーバランスは維持されるものの、出力階調のとりえる範囲を超えた補正値が得られることもある。
【0075】
そこで、上記手順によれば、画素ごとに、上記補正用関数から得られた各色成分の補正値のうち、最大値と最小値とを定めている。そして、色成分ごとの補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めている。これにより、各色成分の補正値において、最も低い補正値からの差分を求めることができる。
【0076】
つぎに、上記最大値と最小値との差分を求め、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算している。これにより、各色成分において、最も低い補正値からの差分を比率とした値である色比率を求めることができる。
【0077】
さらに、S7においては、補正用関数から得られた各色成分の補正値と上記色比率とから、各色成分のデジタル画像データを出力している(出力階調の算出)。この結果、上記補正用関数の補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定することになる。これにより、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。一方、上記補正用関数の補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定し、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定することとなる。これにより、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。よって、カラーバランスを維持した濃度補正が可能となる。
【0078】
また、上記色比率は、上記最大値と最小値との差分を求め、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算して得られる値である。したがって、各色成分のうち、補正値が最小値の色比率は0になると共に、補正値が最大値の色比率は1になる。
【0079】
そこで、上記手順によれば、補正値が、少なくとも1の色成分で、最高出力階調よりも大きい場合、最高出力階調と上記最小値との差分に色成分ごとの上記色比率を乗じた値に上記最小値を加算して得られる値を、色成分ごとの出力階調としている。ここで、上記補正値が最大値の色成分については、色比率が1であるので、上記手順で得られる出力階調は最高出力階調と同一値になる。一方、補正値が上記最低値の色成分については、色比率が0であるので、上記手順で得られる出力階調は上記最低値と同一値になる。
【0080】
したがって、上記手順によれば、少なくとも1の色成分で、補正値が最高出力階調より大きい場合に、上記補正値が最大値の色成分については最高出力階調にできると共に、上記補正値が最小値の色成分については該最小値をそのまま出力階調にできる。よって、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による上記補正値が最高出力階調より大きい場合は、該補正値を最高出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0081】
さらに、上記手順によれば、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最低出力階調よりも低い場合に、上記最大値に色成分ごとの上記色比率を乗じた値を、色成分ごとの出力階調としている。ここで、補正値が最低値の色成分については、上記色比率が0であるので、上記手順で得られる出力階調は0、すなわち最低出力階調と同一値となる。一方、上記補正値が上記最大値の色成分については、色比率が1であるので、上記手順で得られる出力階調は上記最大値と同一値になる。
【0082】
したがって、上記手順によれば、少なくとも1の色成分で、補正値が最低出力階調より小さい場合に、上記補正値が上記最小値の色成分については最低出力階調にできると共に、上記補正値が上記最大値の色成分については該最大値をそのまま出力階調にできる。よって、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による補正値が最低出力階調より小さい場合は、該補正値を最低出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0083】
ここで、上記不適正画素に関して、色保存部8によるカラーバランスを整える処理がなされた画像を図8(a)(b)(c)に示す。さらに、上記不適正画素に関して、色保存部8による処理を行わずに、上記カッティング処理がなされた画像を図9(a)(b)(c)に示す。なお、図8(a)と図9(a)とでは同一の濃度補正処理(ハイライト調)がなされたものであり、図8(b)と図9(b)とでは同一の濃度補正処理(ハーフトーン)がなされたものであり、図8(c)と図9(c)とでは同一の濃度補正処理(シャドウ調)がなされている。図9(a)(b)(c)によれば、画像が濃くなるに従って、花びらの黄色部分やディテールが薄くなるという不具合が生じることがわかる。しかし、図8(a)(b)(c)によれば、そのような不具合は生じないことがわかる。
【0084】
なお、上記補正用関数では、1次式(直線)によりデジタル画像データの入力階調を出力階調に変換しているが、1次式に限定されるものではなく、例えば図7に示すガンマカーブであっても構わない。
【0085】
ところで、以上の実施の形態で説明した処理は、プログラムで実現することが可能である。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。本発明では、この記録媒体として、画像処理装置2で処理が行われるために必要な図示していないメモリ(例えばROMそのもの)であってもよいし、また図示していないが外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであっても構わない。
【0086】
上記いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロプロセッサ(図示せず)のアクセスにより実行される構成であってもよいし、格納されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムを図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードすることにより、そのプログラムが実行される構成であってもよい。この場合、ダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0087】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリーカードを含む)/光カードのカード系、あるいはマスクROM、EPROM、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0088】
最後に、上述した実施の形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
【発明の効果】
本発明の画像処理方法は、以上のように、デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理方法であって、画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める第1ステップと、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める第2ステップと、上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する第3ステップとを備えることを特徴とする。
【0090】
また、本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理装置であって、画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める差分演算部と、色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める色比率演算部と、上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する色保存部とを備えることを特徴とする。
【0091】
これにより、上記補正用関数の補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、最低値からの差分の比が各色成分間の差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定すれば、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。一方、上記補正用関数の補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定し、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように他の色成分の出力階調を設定すれば、出力階調のとり得る範囲内で、カラーバランスを維持した出力階調を生成できる。したがって、カラーバランスを維持した濃度補正が可能となる。
【0092】
本発明の画像処理方法は、上記手順に加えて、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最高出力階調よりも大きい場合、最高出力階調と上記最小値との差分に色成分ごとの上記色比率を乗じた値に上記最小値を加算して得られる値を、色成分ごとの出力階調として設定することにより、第3ステップを実行することを特徴としてもよい。
【0093】
これにより、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による上記補正値が最高出力階調より大きい場合は、該補正値を最高出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0094】
本発明の画像処理方法は、上記手順に加えて、上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最低出力階調よりも低い場合、上記最大値に色成分ごとの上記色比率を乗じて得られる値を、色成分ごとの出力階調に設定することにより、第3ステップを実行することを特徴としてもよい。
【0095】
これにより、少なくとも1の色成分で、上記濃度補正による補正値が最低出力階調より小さい場合は、該補正値を最低出力階調に設定しつつ、上記色比率に応じたカラーバランスを維持した色成分ごとの出力階調を生成することが可能となる。
【0096】
本発明の写真処理装置は、上記課題を解決するために、上記画像処理装置と、上記画像処理装置が出力するデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を再現するプリンタとを備えることを特徴とする。
【0097】
上記構成によれば、上記画像処理装置が出力するデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を再現している。したがって、写真処理装置の個体差や経時変化に関係なく、カラーバランスの安定した画像を再現することが可能となる。
【0098】
上記画像処理プログラムは、上記課題を解決するために、上記画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0099】
上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記画像処理プログラムを記録したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像処理方法の処理の流れを示したフローチャートである。
【図2】上記画像処理方法が実現される画像出力システムの概略構成を示したブロック図である。
【図3】上記画像出力システムに構成されているフィルムスキャナの概略構成を示した説明図である。
【図4】上記画像出力システムに構成されている画像処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【図5】露光濃度特性曲線を示したグラフである。
【図6】図6(a)は、濃度補正部に設定されている補正用関数を示したグラフであり、図6(b)は、図6(a)の補正用関数の位置をシフトさせたグラフである。
【図7】ガンマカーブを示したグラフである。
【図8】図8は、フィルムスキャナが取り込んだデジタル画像データに対し、色保存部によってカラーバランスが調整された画像であって、図8(a)は、ハイライト調で濃度補正処理がなされた画像を示し、図8(b)は、ハーフトーンで濃度補正処理がなされた画像を示し、図8(c)は、シャドウ調で濃度補正処理がなされた画像を示す。
【図9】図9は、フィルムスキャナが取り込んだデジタル画像データに対し、カッティング処理を施した画像であって、図9(a)は、ハイライト調で濃度補正処理がなされた画像を示し、図9(b)は、ハーフトーンで濃度補正処理がなされた画像を示し、図9(c)は、シャドウ調で濃度補正処理がなされた画像を示す。
【図10】図10(a)は、12ビットのデジタル画像データを8ビットのデジタル画像データに変換する補正用関数を示したグラフであり、図10(b)は、図10(a)の補正用関数の位置をシフトさせたグラフである。
【符号の説明】
1 フィルムスキャナ
2 画像処理装置
3 焼付部(プリンタ)
4 A/D変換部
5 対数変換部
6 濃度補正部
7 差分・比率演算部(差分演算部,比率演算部)
8 色保存部
Claims (7)
- デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理方法であって、
画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める第1ステップと、
色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める第2ステップと、
上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する第3ステップとを備えることを特徴とする画像処理方法。 - 上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最高出力階調よりも大きい場合、最高出力階調と上記最小値との差分に色成分ごとの上記色比率を乗じた値に上記最小値を加算して得られる値を、色成分ごとの出力階調として設定することにより、第3ステップを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
- 上記補正値が、少なくとも1の色成分で、最低出力階調よりも低い場合、上記最大値に色成分ごとの上記色比率を乗じて得られる値を、色成分ごとの出力階調に設定することにより、第3ステップを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
- デジタル画像データの入力階調に対する出力階調の補正値を示した補正用関数を座標上でシフトさせることにより濃度補正を行う画像処理装置であって、
画素ごとに、各色成分の補正値のなかから、最大値と最小値とを定め、上記各色成分の補正値と上記最小値との差分をそれぞれ求めると共に、上記最大値と最小値との差分を求める差分演算部と、
色成分ごとに得られた上記補正値と最小値との差分を、上記最大値と最小値との差分で除算した値を、色成分ごとに与えられる色比率として求める色比率演算部と、
上記補正値が最高出力階調より大きい色成分については、出力画像データを最高出力階調に設定し、上記補正値が最低出力階調より小さい色成分については、出力画像データを最低出力階調に設定すると共に、最低値からの差分の比が上記色比率に合うように各色成分の出力階調を設定する色保存部とを備えることを特徴とする画像処理装置。 - 請求項4に記載の画像処理装置と、上記画像処理装置が出力するデジタル画像データに基づいて、印画紙上に画像を再現するプリンタとを備えることを特徴とする写真処理装置。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
- 請求項6に記載の画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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