JP3794309B2 - 基板加熱構造体および基板処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、基板加熱構造体および基板処理装置に関し、より特定的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、プラズマCVD装置およびエッチング装置などの半導体装置を製造する装置に用いられる基板加熱構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造プロセスにおいて、半導体基板の表面上にCVD法を用いて成膜処理を行なう場合や、プラズマエッチングなどの処理を行なう場合、処理対象物である半導体基板を所定の温度に加熱する必要がある。このため、半導体基板をその上に配置して半導体基板を加熱するための基板加熱構造体が用いられる。
【0003】
図6は、従来の基板加熱構造体を備えた基板処理装置の模式的な断面図である。図6を参照して、基板処理装置200は、チャンバ101と、このチャンバ101内に設置されて、基板146が搭載される保持体143とを備える。チャンバ101内には、ガス供給口140と、真空ポンプに接続された排気口141とが形成されている。保持体143はセラミックスからなり、その内部に抵抗発熱体115が埋設されている。
【0004】
保持体143には、基板146を搭載する面とは反対側に円柱状の支持部としてのシャフト144が設置されている。このシャフト144はセラミックス製であり、チャンバ101を構成する壁を貫通するように配置されている。また、このシャフト144とチャンバ101の壁との間には、Oリング145が設置されている。このOリング145により、チャンバ内部142の気密性が保たれている。また、シャフト144には、抵抗発熱体115に電力を供給するための電極線110aおよび110bが設けられている。さらに、シャフト144には、保持体143の温度を測定するための熱電対112が設けられている。
【0005】
シャフト144内がチャンバ内部142内に存在する腐食性の高いハロゲン系ガスなどの反応ガスに晒されないようにするために、シャフト144と保持体143との接合部には、気密性の高い接合を必要とする。
【0006】
また、シャフト144内部は大気雰囲気とされることが多い。保持体143内に埋込んだヒータ回路またはRF(Radio Frequency)電極は、タングステンまたはモリブデン製のメタライズ、コイル、またはメッシュにより構成される。これらのヒータ回路またはRF電極から電極端子を取出す部分に耐酸化性を向上させるための気密構造を工夫する必要がある。さらに、熱膨張係数の異なる材料間の気密封止などの問題が多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のシャフト144と保持体143との接合構造では、保持体143とシャフト144の接合応力を考慮すると、保持体143とシャフト144は同じ材質であることが好ましい。保持体143には、均熱性が要求されるため、熱伝導率の高い材質が用いられる。このため、シャフト144の熱伝導率も高くなり、熱伝達により、保持体143の熱はシャフト144を通じてシャフト144端部に伝わる。シャフト144から熱が逃げるため、保持体143の裏面において、シャフト144と接合されている部分と、シャフト144と接合されていない部分で均熱性が保てなくなり、基板146を均一に加熱することが難しかった。
【0008】
保持体143にシャフト144を接合すると、直径が350mmの保持体143の面上で±1%以上の温度のばらつきが存在していたが、基板146上の均一な反応を起こさせるためには、保持体143の表面での温度のばらつきは±1%未満であることが必要であり、さらに好ましくは、ばらつきは±0.5%以下とされる。
【0009】
また、シャフト144の端部は、耐熱性が200℃以下のOリング145を用いて封止する。その劣化を防ぐためには、保持体143を温度500℃〜800℃の高温に加熱しながら、一方でシャフト144端部を水冷して温度を150℃程度に抑える必要がある。保持体143とシャフト144の端部に熱勾配をつけ過ぎると、シャフト144が熱応力によって割れてしまう。そのため、シャフト144の長さを、たとえば300mm等の長さにして保持体143裏面に接合する必要がある。これにより、チャンバ101の寸法を小さく抑えることが困難であった。
【0010】
また一方では、保持体143を発熱させ、シャフト144端部に伝わってきた熱を水冷するため、エネルギロスが非常に大きく熱効率が悪い。具体的には、熱効率は50%未満であった。ランニングコストの観点から熱効率を50%以上とすることが望まれており、さらに好ましくは、熱効率は70%以上である。熱効率は投入電力に対する昇温に寄与したエネルギの割合であり、以下の式で算出される。
【0011】
((基板146の質量)×(昇温温度差)×(比熱))/(投入電力量)
保持体143を構成する絶縁性のセラミックスに耐酸化性の高いニッケルなどの引出し線を直接接合すると、セラミックスと引出し線との熱膨張率の差により、セラミックスが熱応力で割れる。したがって、セラミックスと引出し電極との間に電極端子を介在させて、これらを接合する必要がある。シャフト144で高気密に仕切って、シャフト144内部がハロゲンなどの腐食性の高い反応ガスに侵されないようにしている。しかし、通常、シャフト144内部は大気雰囲気に晒される。保持体143に埋込まれた抵抗発熱体115を、電極端子を通じて系外に通じる電極線110aおよび110bに接続する必要がある。そのため、電極端子または引出し線は耐酸化性材料にするか、または耐酸化被膜を施す必要がある。電極端子に求められる特性は以下のとおりである。
【0012】
(1)熱膨張率がセラミックスに近い。なお、窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10-6/Kである。窒化ケイ素の熱膨張率は3.0×10-6/Kである。酸化アルミニウムの熱膨張率は6.7×10-6/Kである。
【0013】
(2)温度800℃以下の大気中で耐酸化性がある
(3)電気抵抗が低い(10-5Ωcm以下)。
【0014】
そのすべてを満足する材料はなかなかないため、上述の項目のうち1または2項目を満たした材料を組合わせて電極構造を形成する必要がある。
【0015】
保持体143内に埋込まれた金属がタングステンやモリブデンのような耐酸化性に劣る材料の場合、電極部分から酸素が入り込まないようにするために複雑な構造にならざるを得ない。
【0016】
また、保持体143の裏面に長いシャフトが設けられているため、それをチャンバ101内に入れるためにはシャフト長に応じたチャンバ高さを必要とするため、装置をコンパクトにすることが難しかった。
【0017】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、構造が簡素化された基板加熱構造体および基板処理装置を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明の1つの曲面に従った基板加熱構造体は、チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、セラミックス基体に埋込まれた導体層と、電磁誘導によりセラミックス基体中の導体層を加熱する加熱手段とを備え、チャンバに接触するセラミックス基体の表面の平均粗さRaが1.0μm以上である。
このように構成された基板加熱構造体では、導体層は、加熱手段により電磁誘導で加熱される。そのため、従来のように導体層に引出し電極を接続する必要がない。さらに、この引出し電極をチャンバ内に導くためのシャフトも必要ない。その結果、構造が簡素化された基板加熱構造体を提供することができる。また、チャンバに接触するセラミックス基体の表面粗さが大きくなるため、チャンバとセラミックス基体との接触面積を小さくすることができる。その結果、熱の放散をさらに抑えることができる。
この発明の別の局面に従った基板加熱構造体は、チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、セラミックス基体に埋込まれた導体層と、電磁誘導によりセラミックス基体中の導体層を加熱する加熱手段とを備え、チャンバとセラミックス基体との間に介在する、円錐状、角錐状、円柱状および角柱状のいずれかの形状の突起部材をさらに備える。
このように構成された基板加熱構造体では構造が簡素化された基板加熱構造体を提供することができる。さらに、突起部材がチャンバとセラミックス基体との間に介在するため、チャンバとセラミックス基体との接触面積が少なくなる。その結果、さらにセラミックス基体からの熱の放散を抑えることができる。
この発明のさらに別の局面に従った基板加熱構造体は、チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、セラミックス基体に埋込まれた導体層と、電磁誘導によりセラミックス基体中の導体層を加熱する加熱手段とを備え、チャンバに取付けられた第1の磁石と、第1の磁石に向かい合うようにセラミックス基体に取付けられた第2の磁石とをさらに備える。第1の磁石と第2の磁石との間に作用する反発力により、セラミックス基体はチャンバから磁気浮上する。
この場合、構造が簡素化された基板加熱構造体を提供することができる。さらに、セラミックス基体がチャンバから磁気浮上するため、セラミックス基体とチャンバは直接接触しない。その結果、セラミックス基体からチャンバへの熱の放散を抑えることができる。
【0020】
また好ましくは、セラミックス基体は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および酸化アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を主成分として含む。
【0021】
また好ましくは、セラミックス基体は、熱伝導率が100W/mK以上の窒化アルミニウムを主成分として含む。
【0022】
また好ましくは、導体層は、タングステン、モリブデン、白金、金、銀、パラジウム、ニッケルおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む。
【0023】
また好ましくは、加熱手段は、周波数が500Hz以上の高周波で導体層を加熱する。
【0024】
また好ましくは、セラミックス基体は、基板を載置する第1の面と、第1の面と反対側に位置する第2の面とを含む。第1の面側に導体層が埋込まれている。第2の面側のセラミックス基体の部分に空孔が形成されている。空孔内の圧力は大気圧より低い。
【0025】
また好ましくは、空孔内の圧力は133Pa以下である。
また好ましくは、空孔は、第1の面に近い側の第1の内表面と、第1の面から遠い側の第2の内表面とにより規定される。第2の内表面は、平均粗さRaが0.1μm以下の部分を含む。この場合、第2の内表面の平均表面粗さRaが0.1μm以下の部分を含むため、この部分で熱が反射する。これにより、熱の放散を抑えることができる。
【0029】
この発明に従った基板処理装置は、上述のいずれかの基板加熱構造体と、基板加熱構造体のセラミックス基体が内部に配置されたチャンバとを備える。
【0030】
上述の基板処理装置は、化学気相蒸着装置である。
本発明者らは、複雑な電極構造を必要としない基板加熱構造体についてさまざまに検討した。引出し線を用いて直接セラミックス基体内のヒータ回路を系外の電源と接続しようとすると、引出し線をチャンバ内に導入するシャフトが必要となる。このシャフトは、ハロゲン等の腐食性の高いガスから引出し線を保護する。しかしながら、このシャフトを用いると上述のような問題が生じる。
【0031】
そこで、引出し線でなく、チャンバ壁、チャンバ壁内またはチャンバ壁外に組み込んだ加熱手段(たとえばコイル)に交流電流を流し、セラミックス基体に埋込んだ導体層に磁力線を送り込み、この導体層に渦電流を流すことによりヒータ回路として作用させて発熱させる。このように電磁誘導加熱により発熱した熱を、伝熱により基板に伝えて加熱する。
【0032】
セラミックスは、耐熱性、耐食性および熱伝導性を鑑みて、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および酸化アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を主成分として用いることが好ましい。
【0033】
上述のセラミックスの中でも、熱伝導率が高い焼結体が得られる窒化アルミニウムを用いることが好ましく、さらにその熱伝導率は100W/mK以上とすることが望ましい。
【0034】
セラミックス中に埋込まれてヒータ回路を構成する導体層は、抵抗の高い金属であればよいが、ヒータ回路の厚みを薄くするなどにより抵抗を上げることが可能である。耐熱性も鑑みると、タングステン、モリブデン、白金、金、パラジウム、ニッケルおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0035】
その際、電磁誘導加熱に用いる電流の周波数は、家庭用電源の周波数の50Hzまたは60Hzよりも、500Hz以上の高周波を用いる方が発熱効率が良い。また、騒音も発生しない。
【0036】
この発明では、電磁誘導加熱を用いてセラミックス基体中の導体層が加熱されるため、ウェハ保持体をシャフトで保持する必要がない。
【0037】
したがって、チャンバ壁に熱を逃がして加熱効率を落とすことがなく、また、チャンバ壁を熱変形させることがないため、チャンバへの熱の伝わりを防げばセラミックス基体をチャンバ内壁に直接置くことが可能となる。基板を搭載する面と反対側の面に空孔を設け、空孔内部の圧力を大気圧より低くすることで断熱層としての機能を持たせることができる。真空にすればその効果はさらに向上する。
【0038】
空孔内壁の少なくとも基板を保持する面に対面した面の一部あるいは全面が、平均粗さRaが0.1μm以下の鏡面に仕上げられていることが好ましい。このように構成すれば、セラミックス基体上部から輻射で放射された熱がその面で反射されてセラミックス基体に戻すことができる。これにより、熱がチャンバの壁面へ逃げることを防止することができ、空孔での断熱効率を上げることができる。
【0039】
また、セラミックス基体を、円錐状、角錐状、円柱状または角柱状の突起部材で支持するか、またはチャンバと接触するセラミックス基体の表面の平均粗さRaを1.0μm以上としてもよい。この場合、微細な突起がチャンバの壁面と接触することにより、チャンバ壁面への熱伝達を抑えることができる。さらに、突起部材を用いることにより、チャンバとセラミックス基体との接触面積を小さくすることができる。これによりチャンバ壁への熱伝達を防止することができる。
【0040】
セラミックス基体およびチャンバのそれぞれの対向する箇所に磁石を取付け、セラミックス基体を磁気浮上させることができる。これにより、発生した熱がチャンバ側へ逃げない。そのため基板の加熱効率が良く、かつ均一加熱性に優れる。
【0041】
電磁誘導加熱を用いることにより、シャフトとセラミックス基体とを接合する必要がないため、シャフトが接合されるセラミックス基体の面での温度低下がなくなる。これにより、基板を保持する面での均熱性を±1%未満とすることができる。さらに、熱伝導率が100W/mK以上の窒化アルミニウムをセラミックス基体として用いることにより、均熱性を±0.5%以下とすることができる。
【0042】
電磁誘導加熱を用いることによりシャフト接合を必要としないため、シャフトを通じて熱が逃げることがない。これにより、熱効率を50%以上にすることができる。さらに、電磁誘導加熱と上述の断熱手法を組合わせることにより、70%以上の熱効率を得ることが可能となる。
【0043】
またシャフトを必要としないため、チャンバをコンパクトにすることができる。
【0044】
さらに、ヒータを構成する導体層に電磁誘導を用いて電力を供給するため、引出し線を接続するための電極構造を必要としない。その結果、接続不良が存在しなくなる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1に従った基板処理装置100は、チャンバ101と、基板加熱構造体110とを備える。基板加熱構造体110は、チャンバ101内部で基板146を加熱する。基板加熱構造体110は、チャンバ101内に配置されて基板146を保持するセラミックス基体としての保持体143と、保持体143に埋込まれた導体層150と、電磁誘導により保持体143中の導体層150を加熱する加熱手段としてのコイル151とを備える。
【0047】
保持体143は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および酸化アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を主成分として含む。
【0048】
保持体143は、熱伝導率が100W/mK以上の窒化アルミニウムを主成分として含む。導体層150は、タングステン、モリブデン、白金、金、銀、パラジウム、ニッケルおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む。
【0049】
コイル151は、周波数が500Hz以上の高周波で導体層150を加熱する。
【0050】
チャンバ101は箱状であり、チャンバ101には、ガス供給口140と、真空ポンプに接続された排気口141とが形成されている。チャンバ101は断熱容器により構成される。
【0051】
セラミックス基体としての保持体143がチャンバ101内に配置されている。保持体143は、基板146を載置する第1の面143sと、第1の面143sと反対側に位置してチャンバ101と接触する第2の面143tとを有する。第1の面143sと第2の面143tとはほぼ平行に形成されている。
【0052】
導体層150が保持体143の第1の面143s側に埋込まれている。導体層150は金属により構成され、電磁誘導で加熱される。導体層150で発生した熱が基板146へ伝えられるため、導体層150と基板146との距離は小さい方が好ましい。
【0053】
熱電対112はチャンバ101の壁面を貫通して保持体143に差し込まれるように形成されている。熱電対112の先端が基板146の温度を測定する。そのため、熱電対112の先端は基板146の近傍に位置することが望ましい。また、熱電対112は導体層150と直接接触しないように配置される。
【0054】
チャンバ101外部には、加熱手段としてのコイル151が設けられている。コイル151はチャンバ101内に設けられてもよい。さらに、チャンバ101の壁面にコイル151が埋込まれてもよい。コイル151に高周波電流を印加することにより、電磁誘導の原理で導体層150を加熱することができる。
【0055】
このように構成された基板加熱構造体110およびそれを用いた基板処理装置100では、発熱体としての導体層150は、コイル151により、電磁誘導で加熱される。そのため、発熱体に引出し線等を接続する必要がない。その結果、引出し線を設けるためのさまざまな複雑な構造を必要とせず、構造が簡素化された基板加熱構造体110を提供することができる。このように、構造が簡素化されているため、基板加熱構造体110の製造コストを低下させることができ、さらに故障を防止することができる。
【0056】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。図2を参照して、この発明の実施の形態2に従った基板処理装置100および基板加熱構造体110では、保持体143内に空孔161が設けられている点で、実施の形態1に従った基板処理装置100および基板加熱構造体110と異なる。セラミックス基体としての保持体143は、基板146を載置する第1の面143sと、第1の面143sと反対側に位置する第2の面143tとを含む。第1の面143s側に導体層150が埋込まれている。第2の面143t側のセラミックス基体の部分に空孔161が形成されている。空孔161内の圧力は大気圧より低い。より好ましくは、空孔161内の圧力は133Pa以下である。空孔161は、第1の面143sに近い側の第1の内表面161sと、第1の面143sから遠い側の第2の内表面161tとにより規定される。第2の内表面161tが平均粗さRaが0.1μm以下の部分を含む。
【0057】
このように構成された、この発明の実施の形態2に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100では、実施の形態1で示した基板加熱構造体110および基板処理装置100と同様の効果がある。さらに、保持体143に空孔161が形成されている。この空孔内の圧力は大気圧より低いため、空孔161により断熱効果が生じる。また、第2の内表面161tの表面粗さRaが0.1μm以下であり、この部分が鏡面研磨されているため、第1の内表面161sから輻射された熱が第2の内表面161tで反射する。これによりさらに断熱効果を上げることができる。その結果、熱効率をさらに向上させることができる。
【0058】
(実施の形態3)
図3は、この発明の実施の形態3に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。図3を参照して、この発明の実施の形態3に従った基板加熱構造体110およびそれを備えた基板処理装置100では、第2の面143tに突起143uが形成されている点で、実施の形態1に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100と異なる。すなわち、チャンバ101に接触する保持体143の第2の面143tの平均粗さRaが1.0μm以上とされる。
【0059】
このように構成された、この発明の実施の形態3に従った基板加熱構造体110およびそれを用いた基板処理装置100では、まず、実施の形態1に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100と同様の効果がある。
【0060】
さらに、第2の面143tの表面粗さが大きいため、第2の面143tとチャンバ101との接触面積が小さくなる。これにより、保持体143からチャンバ101へ熱が伝達するのを防止することができ、熱効率をさらに向上させることができる。
【0061】
(実施の形態4)
図4は、この発明の実施の形態4に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。図4を参照して、この発明の実施の形態4に従った基板加熱構造体110およびそれを用いた基板処理装置100では、チャンバ101と保持体143との間に円錐形状の突起部材149が設けられている点で、実施の形態1に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100と異なる。突起部材149は、円錐形状に限られるものではなく、角錐状、円柱状および角柱状のいずれかとしてもよい。
【0062】
このように構成された、この発明の実施の形態4に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100では、実施の形態3に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100と同様の効果がある。
【0063】
(実施の形態5)
図5は、この発明の実施の形態5に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。図5を参照して、この発明の実施の形態5に従った基板加熱構造体110およびそれを用いた基板処理装置100では、保持体143に磁石172が設けられ、チャンバ101に磁石171が設けられている点で、これらが設けられていない実施の形態1に従った基板加熱構造体110および基板処理装置100と異なる。
【0064】
磁石171および172はそれぞれ円盤形状であり、中央に孔が設けられている。この孔を熱電対112が貫通する。磁石171と磁石172との間に反発力が生じるように互いの磁石が位置決めされる。すなわち、基板加熱構造体110は、チャンバ101に取付けられた第1の磁石としての磁石171と、磁石171に向かい合うようにセラミックス基体としての保持体143に取付けられた第2の磁石としての磁石172とをさらに備える。磁石171と磁石172との間に作用する反発力により、保持体143はチャンバ101から磁気浮上する。
【0065】
このように構成された、この発明の実施の形態5に従った基板加熱構造体110およびそれを用いた基板処理装置100に従えば、まず、実施の形態1に示した基板加熱構造体110および基板処理装置100と同様の効果がある。
【0066】
さらに、保持体143は、チャンバ101から浮上するため、直接チャンバ101に接触することがない。その結果、保持体143からチャンバ101への熱の伝達が少なくなるため、熱効率をさらに向上させることができる。
【0067】
【実施例】
(実施例1)
窒化アルミニウム粉末に、焼結助剤としてイットリア(Y2O3)を5.0質量%と、バインダとを添加した。これらを分散混合した後、乾燥させて粉末を得た。この粉末を焼結加工した後に直径φが350mmで厚みが5.0mmとなる寸法でプレスすることにより成形体1を得た。また、直径φが350mmで厚みが2.0mmとなるようにプレスして成形体2を得た。成形体1にタングステンぺーストを用いて発熱回路を印刷した後乾燥した。タングステン発熱回路を挟み込むように成形体2と成形体1を重ね合わせた。温度900℃の窒素ガス気流中で脱脂し、カーボンの型内にセットした。これを荷重9.8MPa、温度1850℃で4時間ホットプレス焼結した。得られた焼結体の上面と下面とをダイヤモンド砥粒で研磨して保持体143を得た。研磨面の平均粗さRaは0.8μmであった。窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/mKであった。
【0068】
これを、直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のアルミナ(Al2O3)で5点支持して図4で示すようにCVD装置のチャンバ101内にセットした。対向面するチャンバの壁面にコイル151を埋込んで周波数が30kHzで1000Wの電力で電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度(加熱温度)は550℃であり、基板146を搭載する第1の面143sでの均熱性(温度のばらつき)は±0.45%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。また、熱効率は78%であった。
【0069】
(比較例1)
比較例1では、上述の成形体1にタングステンぺーストで発熱回路を印刷した後乾燥した。成形体2に、成形体1の発熱回路の両端部に相当する箇所に孔をあけて、発熱回路を挟み込むように重ね合わせて温度900℃の窒素ガス気流中で脱脂した。その後カーボンの型にセットして9.8MPaの荷重で温度1850℃で4時間ホットプレス焼結した。得られた焼結体の上面と下面とをダイヤモンド砥粒を用いて研磨した。研磨面の平均粗さRaは0.8μmであった。窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/mKであった。
【0070】
外径φが50mmで長さが300mmの形状の窒化アルミニウム焼結体で作製したシャフトの端部に9.8MPaの荷重をかけて温度1800℃で2時間ホットプレスすることによりシャフトと焼結体とを接合した。タングステンの回路パターンの両端部にタングステンねじをろう付けにて接合した。さらに、引出し線としてニッケルロッドをタングステンねじにねじ込んで接合した。これをCVD装置のチャンバ内に配置し、直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のAl2O3の突起部材で5点支持してセットした。ニッケルの引出し線端部を系外の電源に電気的に接続した。電源から1000Wの電力を供給した。熱電対で測定した温度は550℃であった。ヒータの表面の均熱性は±1.1%であった。このとき、シャフト接合部の反対側の基板で搭載面の温度が特に低下した。熱効率は40%となった。
【0071】
(実施例2)
実施例1と同じ装置を用いて周波数が60Hz、電力が1000Wで誘導加熱した。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.45%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。加熱時に微小な振動が発生し、エネルギロスが生じた。実施例1に比べ熱効率は低くなり、熱効率は65%であった。
【0072】
(実施例3)
実施例1の成形体1に溝を加工してモリブデンコイルを埋込んだ。成形体1および2とも、温度900℃で脱脂して2枚を重ねて荷重9.8MPaで加圧しながら温度1850℃で4時間加熱してホットプレス焼結した。窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/mKであった。得られた焼結体で保持体143を構成し、図4で示すように、直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のアルミナで保持体143を5点支持してチャンバ101壁上に置いた。対向するチャンバ壁にコイル151を埋込んで周波数30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.5%であった。熱効率は70%であった。
【0073】
(実施例4〜6)
実施例1の成形体1を温度900℃の窒素ガス気流中で脱脂しカーボンの型内にセットした。荷重が9.8MPa、温度1850℃で4時間ホットプレス焼結した。窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/mKであった。
【0074】
実施例4では白金−金(Pt−Au)ペーストを成形体1に塗布した。実施例5では、銀−パラジウム(Ag−Pd)ペーストを塗布した。実施例6ではニッケル−クロム(Ni−Cr)ペーストを塗布した。温度150℃で乾燥した後温度800℃で脱脂して温度750℃〜900℃で焼成した。
【0075】
実施例1の成形体2に低融点ガラスを塗布した。成形体1と成形体2を重ねて4.9kPaの荷重を加えて温度750℃で接合した。これにより保持体143を形成した。直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のアルミナで保持体143を5点支持し、チャンバ101の壁上に置いた。対向するチャンバ壁にコイルを埋込んで周波数が30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。それぞれの実施例4から6で熱電対112の温度(加熱温度)は550℃であった。それぞれの実施例での均熱性は、実施例4では±0.45%、実施例5では±0.45%および実施例6では±0.44%であった。このとき、温度分布はすべて同心円上で均一であり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱効率は、実施例4では75%、実施例5では74%、実施例6では75%であった。
【0076】
(実施例7)
窒化ケイ素粉末に焼結助剤としてイットリア(Y2O3)とアルミナ(Al2O3)をそれぞれ0.5質量%ずつ添加し、さらにバインダを添加して分散混合した。その後乾燥した粉末を焼結加工して、直径φが350mmで厚みが5.0mmの寸法の成形体1をプレスして得た。また、直径φが350mmで厚みが2.0mmの成形体2をプレスで得た。この成形体1上にタングステンぺーストを塗布して発熱回路を形成し、温度900℃の窒素ガス気流中で脱脂した後、成形体1と成形体2を重ね合わせ、9.8kPaの荷重をかけながら温度1600℃で4時間焼結した。窒化ケイ素の熱伝導率は30W/mKであった。得られた焼結体の上下面をダイヤモンド砥粒で研磨した。これにより保持体143を形成した。
【0077】
直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のアルミナで保持体143を5点支持してチャンバ101壁上に置いた。対向するチャンバの壁面にコイルを埋込んで周波数が30kHz、電力が1000Wの条件で電磁誘導加熱を行なった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱電対112で測定した温度は550℃であった。均熱性は±0.7%であった。熱効率は65%であった。
【0078】
(実施例8)
酸化アルミニウム粉末に焼結助剤としてマグネシア(MgO)を1質量%添加し、さらにバインダを添加して分散混合した。得られた粉末を乾燥して焼結した後に実施例7の成形体1および成形体2と同一の寸法となるようにプレスした。この成形体1上にタングステンペーストを塗布して発熱回路を形成し、温度700℃の大気ガス気流中で脱脂した。さらに温度1600℃で3時間焼結した。酸化アルミニウムの熱伝導率は20W/mKであった。得られた焼結体の上面と下面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨して図4で示す保持体143を得た。
【0079】
直径φが5mmで高さが5mmの円錐状のアルミナで保持体143を5点支持してチャンバ101壁上に置いた。対向するチャンバ壁にコイル151を埋込んで周波数が30kHz、電力が1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.9%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱効率は60%であった。
【0080】
(実施例9)
実施例1と同じ製法で、窒化アルミニウムを焼結後ダイヤモンド砥粒で上下面を研磨して、直径φが350mmで厚みが5.0mmの成形体1、直径φが350mmで厚みが2.0mmの成形体2および直径φが350mmで厚みが1.0mmの成形体3を得た。窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/mKであった。成形体1にタングステンペーストを塗布して発熱回路を形成した後、乾燥した。温度900℃で脱脂した後、温度1900℃で5時間焼成した。成形体2の中央部を、直径φが330mmで深さが0.5mmの座繰り加工して外周の縁部を5mmの幅で残した。座繰り面の面精度はRa=0.8μmであった。
【0081】
成形体3の片面と、成形体2の座繰り外周の縁上に接合用ペーストを塗布し、乾燥後、温度900℃で脱脂した。成形体1のタングステンメタライズ図面と成形体3の接合ペースト面とを重ね合わせた。成形体3の接合ペーストがない面と成形体2の座繰り面を重ね合わせた。窒素の圧力が98kPa中で、3枚の成形体1から3を9.8kPaの荷重で加圧しながら温度1750℃で1時間加熱して接合した。これにより、図2で示す空孔161を有する保持体143を得た。温度550℃で空孔161の内圧は40kPaとなった。接合体の上下面をダイヤモンド砥粒で研磨して仕上げた。この成形体2を下にしてチャンバ壁上に直に保持体143を図2で示すように設置した。対向するチャンバ壁にコイル151を埋込んで周波数が30kHz、電力が1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であった。均熱性は0.35%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。冷却水として、全実施例とも25℃の水を流しているが、実施例1の場合、ヒータが搭載されるチャンバ101の平均表面の温度が120℃であったのに比べ、本実施例では50℃であり、温度が低くなった。これは、チャンバへの熱の逃げが抑えられたためと考えられる。熱効率は81%であった。
【0082】
(実施例10)
接合時の窒素圧力を33.3Paで行なった以外は、実施例9と同じ方法で保持体143を作製した。温度550℃における空孔161内の圧力は13.3Paとなった。成形体2を下にして図2で示すように保持体143をチャンバ壁に直に設置した。対向するチャンバ壁にコイル151を埋込んで、周波数が30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であった。均熱性は±0.28%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。チャンバ101の壁面の温度は40℃まで低くなった。チャンバへの熱の逃げが実施例9よりさらに抑えられたと考えられる。熱効率は83%であった。
【0083】
(実施例11)
実施例10と同じ製法で成形体1〜3を作製した。成形体2の座繰り面をさらに遊離砥粒を用いて平均粗さRaが0.05μmになるまで磨いて実施例10と同じ条件で接合した。成形体2を下にしてチャンバ101の壁に直に設置した。対向するチャンバ101の壁にコイル151を埋込んで、周波数が30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.25%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。チャンバ101壁面の温度は30℃まで低くなった。チャンバ101への熱の逃げが実施例10よりさらに抑えられたと考えられる。熱効率は85%であった。
【0084】
(実施例12)
実施例1では、保持体143の第2の面143tの平均粗さRaは0.8μmであったが、実施例12では、この第2の面143tを粗粒の固定砥粒で荒らして平均粗さRaを1.5μmにして、チャンバ101上に図3で示すように直接設置した。対向するチャンバ壁にコイル151を埋込んで、周波数が30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.45%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱効率は76%であった。微視的な突起によって保持体143とチャンバ101との接触面積が減少した効果があったと考えられる。
【0085】
(実施例13)
図5で示すように、保持体143の第2の面143tに磁石172をN極が下になるように埋込んだ。この磁石172は永久磁石コイルにより構成される。チャンバ101の対向面には、N極が上になるように永久磁石コイルからなる磁石171を埋込んだ。この上に保持体143を設置した。磁石171および172の反発力により、保持体143は0.1mm程度浮いていた。チャンバ101内で保持体143が移動しないように、側面の4箇所をストッパで固定した。この状態で周波数30kHz、電力1000Wで電磁誘導加熱を行なった。熱電対112で測定した温度は550℃であり、均熱性は±0.3%であった。このとき、温度分布は同心円上で均一となり、特に温度差の大きい特異点は発生しなかった。熱効率は80%であった。
【0086】
なお、上述の実施例1〜13での実験条件を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例14)
比較例1のサセプタは高さが300mmであり、チャンバ101上部には反応ガス供給用のシャワーヘッドがあるため、CVDのチャンバ101の内寸の高さは350mmのものを用いた。実施例1のサセプタ(基板加熱構造体110)を用いたCVDのチャンバを新たに設計したところ、内寸の高さは50mmであり、大幅にコンパクト化することが可能となった。
【0089】
(実施例15)
比較例1のサセプタでは、ホットプレス接合後に、保持体の中央付近にヒータ回路の両端部を露出させる必要がある。そのため、もう1枚の成形体に、電極に対応した部分に孔を開けて位置合わせをして接合する。直径φが50mmで長さが300mmのシャフトをホットプレス接合した後、電極部にニッケル引出し線を接合して系外に接続し、電力供給できるようした。窒化アルミニウムとニッケルは熱膨張率が異なる。そのため、直接接合すると、熱応力により脆性材料である窒化アルミニウムにクラックが入る。これは、基板の保持体が窒化ケイ素またはアルミナでも同様である。そこで、窒化アルミニウムおよびタングステンのヒータ回路とニッケル引出し線の間に応力緩和用の電極端子を必要とする。電極端子は、大気中、温度750℃の雰囲気まで晒される可能性があるため、この温度までの耐酸化性を必要とする。また、電極端子部の抵抗が高いと、この部分で発熱が起こるため、電気抵抗は低い方がよい。ヒータ回路の抵抗から鑑みて、電極端子の電気抵抗は10-5Ωcm以下である必要がある。保持体が窒化アルミニウムの場合、電極端子に要求される特性は以下の3項目にまとめられる。
【0090】
(1) 熱膨張率が窒化アルミニウムと同じ4.5×10-6/K。
(2) 大気中温度800℃までの耐酸化性に優れる。
【0091】
(3) 電気抵抗率が10-5Ωcm以下。
この3条件を同時に満たす材料はなかなか存在しない。たとえばタングステンは(1)において熱膨張率が4.5×10-6/Kであり、(3)において電気抵抗率が5.6×10-6Ωcmと2つの条件を満たすが、大気中での耐酸化性に乏しい。具体的には、温度400℃以上で酸化タングステンとして昇華してしまう。モリブデンは(1)において熱膨張率が5.5×10-6で窒化アルミニウムにやや近い。(3)において電気抵抗率は5.2×10-6Ωcmであり、2つの条件を満たす。しかし、大気中での耐酸化性に乏しく、温度400℃以上で酸化モリブデンとして昇華する。
【0092】
たとえば、コバールは(2)おいて大気中温度800℃では変色はするが比較的耐久性を有する。(1)において室温では熱膨張率は4.5×10-6/Kに近いが、温度400℃以上での熱膨張率が4.5×10-6/Kから大きく外れ、10×10-6/K程度になる。また、電気抵抗率も目標値に対して1桁高く、電極端子部での発熱が懸念される。
【0093】
さらに、金、白金またはニッケルは(2)の耐酸化性と(3)の電気導電性は全く問題がないが、(1)の熱膨張率が窒化アルミニウムやタングステンヒータ回路と合わないため、電極端子材料としては不適格である。
【0094】
したがって、上述の条件の1または2条件を満たす材料をうまく組合せて電極端子構造を形成する必要がある。さらに、タングステンヒータ回路端部も剥き出しにならないようにし、この部分も耐酸化性被膜処理構造が必要となる。さらに、電極端子の接合作業は狭いシャフト内で行なうことから、どうしても接合不良が生じる。
【0095】
実施例1〜13のサセプタでは、引出し線を形成する必要がなく、サセプタでの電極構造は全く不要となった。チャンバ側に電磁誘導コイルを必要とするが、一度チャンバにコイルを設置すると、サセプタが高温での長期使用や熱サイクルで寿命になったとしても、電磁誘導コイルは常温近傍で使用されるため、半永久的に使用できる。
【0096】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0097】
【発明の効果】
この発明に従えば半導体の製造装置において、ウェハを保持しながら加熱するサセプタヒータに高抵抗の金属を埋込む。対向するチャンバの壁上、壁内または壁外にコイルを埋込んで交流電流を流し、サセプタヒータ内の金属を電磁誘導で加熱する。これにより引出し線を保護するためのシャフト接合が不要となり、系外に引出し線を引出すための耐酸化の電極構造も必要ない。完全にセラミックス中に金属を埋込んでしまえばよい。したがって、サセプタヒータが非常に単純形状となるため安価に製造できる。また、熱の逃げの原因となるシャフトがなくなるため、保持方法を熱の逃げの少なくなるように接触断面積を小さくしたり、磁気浮上させることにより基板の載置面の裏面への熱の逃げを抑えられ、基板の均一加熱が可能となり、CVDの膜厚や膜質の均一化が図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態3に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態4に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態5に従った基板加熱構造体と基板処理装置の模式的な断面図である。
【図6】 従来の基板処理装置の模式的な断面図である。
【符号の説明】
100 基板加熱構造体、101 チャンバ、110 基板加熱構造体、143 保持体、143s 第1の面、143t 第2の面、146 基板、149突出部材、150 導体層、151 コイル、161 空孔、161s 第1の内表面、161t 第2の内表面。
Claims (12)
- チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、
チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、
前記セラミックス基体に埋込まれた導体層と、
電磁誘導により前記セラミックス基体中の前記導体層を加熱する加熱手段とを備え、
チャンバに接触する前記セラミックス基体の表面の平均粗さRaが1.0μm以上である、基板加熱構造体。 - チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、
チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、
前記セラミックス基体に埋込まれた導体層と、
電磁誘導により前記セラミックス基体中の前記導体層を加熱する加熱手段とを備え、
チャンバと前記セラミックス基体との間に介在する、円錐状、角錐状、円柱状および角柱状のいずれかの形状の突起部材をさらに備えた、基板加熱構造体。 - チャンバ内部で基板を加熱する基板加熱構造体であって、
チャンバ内に配置されて基板を保持するセラミックス基体と、
前記セラミックス基体に埋込まれた導体層と、
電磁誘導により前記セラミックス基体中の前記導体層を加熱する加熱手段とを備え、
チャンバに取付けられた第1の磁石と、
前記第1の磁石に向かい合うように前記セラミックス基体に取付けられた第2の磁石とをさらに備え、
前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に作用する反発力により、前記セラミックス基体はチャンバから磁気浮上する、基板加熱構造体。 - 前記セラミックス基体は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および酸化アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を主成分として含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板加熱構造体。
- 前記セラミックス基体は、熱伝導率が100W/mK以上の窒化アルミニウムを主成分として含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板加熱構造体。
- 前記導体層は、タングステン、モリブデン、白金、金、銀、パラジウム、ニッケルおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の基板加熱構造体。
- 前記加熱手段は、周波数が500Hz以上の高周波で前記導体層を加熱する、請求項1から6のいずれか1項に記載の基板加熱構造体。
- 前記セラミックス基体は、基板を載置する第1の面と、前記第1の面と反対側に位置する第2の面とを含み、前記第1の面側に前記導体層が埋込まれており、前記第2の面側の前記セラミックス基体の部分に空孔が形成されており、前記空孔内の圧力は大気圧より低い、請求項1から7のいずれか1項に記載の基板加熱構造体。
- 前記空孔内の圧力が133Pa以下である、請求項8に記載の基板加熱構造体。
- 前記空孔は、前記第1の面に近い側の第1の内表面と、前記第1の面から遠い側の第2の内表面とにより規定され、前記第2の内表面は、平均粗さRaが0.1μm以下の部分を含む、請求項8または9に記載の基板加熱構造体。
- 請求項1から10のいずれか1項に記載の前記基板加熱構造体と、
前記基板加熱構造体の前記セラミックス基体が内部に配置されたチャンバとを備えた、基板処理装置。 - 前記基板処理装置は化学気相蒸着装置である、請求項11に記載の基板処理装置。
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