JP3793953B2 - 鍛造成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒状素材から鍛造素材を切断して成形型に自動供給し、温間または熱間で鍛造成形する鍛造成形装置に係り、特にねじやボルトなどの頭部の鍛造成形に向けて好適な鍛造成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ねじやボルトなどの頭部を温間または熱間で鍛造成形するには、図5および図6に示すように、製造しようとするねじやボルトの軸径とほぼ等しい直径を有する棒状素材(バー材または線材)Wを用意し、この棒状素材Wを送りローラ1によりその軸方向へ搬送し(A)、その搬送途中で鍛造成形装置の本体部2内に配設した加熱素子(通常は高周波誘導加熱コイル)3により棒状素材Wを所定温度に加熱し、棒状素材Wの搬送方向前側に配置した支持部材4の先端に棒状素材Wを当接させて、その移動を停止する(B)。その後、切断・移送装置5を移動させて棒状素材Wを所定長さに切断し、この切断された鍛造素材Bをそのまま成形位置まで移送して(C)、鍛造成形装置の機構部(図示略)に設けたパンチ6の前進により鍛造素材Bを本体部2内に配置したダイス7に挿入叩打し、これと同時に切断・移送装置5を移動させて、鍛造素材Bの一端部を一気に据込み、頭部(ここでは皿状の頭部)Hを有する成形体Pとする(D)。なお、必要に応じて、前記パンチ6と仕上パンチ(図示略)とを瞬時に切り換えて、仕上成形を行うこともある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の鍛造成形装置による鍛造成形によれば、本体部2に配置した加熱素子3により棒状素材Wの加熱を行っているため、この加熱から、支持部材4による棒状素材Wの移動停止までにかなりの時間を要し、この間、棒状素材Wの温度が下がってしまうことになる。この結果、パンチ6とダイス7による鍛造成形時に成形体Pの頭部Hに割れが発生したり、パンチ6に破損が生じて早期に寿命に達したりすることがしばしば起こり、生産性の悪化や製造コストの上昇を招くという問題があった。
【0004】
特に、上記した問題は、細径(2〜4mm)の棒状素材Wや高強度材からなる棒状素材Wを用いる場合に顕著となり、例えば、チタン合金からなる細径(2〜4mm)の棒状素材W(鍛造素材B)を用いた場合は、圧造倍率α=2.5程度が限界となり、それ以上に圧造倍率を高めようとすると、前記した頭部Hの割れやパンチ6破損が避けられず、大きな塑性変形を伴うねじやボルトの頭部成形は、実質、断念せざるを得ない状況にあった。なお、この圧造倍率αは、図7に示すように、成形前の鍛造素材Bの直径をD、その長さをL1、成形後の成形体Pの軸部の長さをL2とすると、α=[L1−L2]/Dで表わされる値である。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決することを課題としてなされたもので、鍛造素材の加熱後の温度低下を可及的に抑制し、もって成形体の割れや成形型の損傷を招くことなく所望の塑性変形量を確保できる鍛造成形装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、搬送手段により搬送された棒状素材を受止める支持部材と、前記棒状素材を加熱する加熱素子と、前記支持部材により受止められた棒状素材を所定長さに切断して成形位置まで移送する切断・移送手段と、前記切断・移送手段により成形位置に移送された鍛造素材を鍛造成形する成形型とを備えた鍛造成形装置において、前記加熱素子は、前記支持部材により受止められた棒状素材の少なくとも先端部を加熱可能な加熱位置と、前記切断・移送手段による前記鍛造素材の移送範囲から退避した退避位置との間で移動可能に配設され、かつ前記加熱素子が高周波誘導加熱コイルからなり、前記支持部材が棒状素材の搬送方向に延設した棒状体からなり、前記高周波誘導加熱コイルが、前記棒状体を挿通させた状態で該棒状体に沿って移動するようになっている構成としたことを特徴とする。
【0007】
このように構成した鍛造成形装置においては、搬送手段により搬送された棒状素材が支持部材に到達する前後の時点で加熱素子により棒状素材を加熱し、その後、加熱素子を退避位置に後退させると同時に、切断・移送手段により棒状素材を切断して成形位置へ移送することができ、加熱から成形までに要する時間を可及的に短縮することが可能になる。また、前記加熱素子として高周波誘導加熱コイルを用いることで、棒状素材を効率良く加熱することができ、その上、加熱後、棒状体に沿って簡単に退避位置に退避させることができる。
【0008】
本発明において、前記棒状体としては、高周波誘導加熱の影響を受けにくいセラミックス、例えば窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等を用いるのが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る鍛造成形装置を示したものである。なお、本鍛造成形装置は、前出図5および図6に示したものと全体的構造が同じであるので、ここでは、前出図5および図6に示したものと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略することとする。本実施の形態において、送りローラ1により搬送された棒状素材(バー材または線材)Wを加熱するための加熱素子3は、鍛造成形装置の本体部2から切り離して設置され、かつ棒状素材Wの搬送方向へ移動可能となっている。
【0011】
より詳しくは、上記加熱素子3は、高周波誘導加熱コイルからなっており、レール10上に車輪11を介して走行可能に載置した高周波誘導加熱装置の出力変圧器12から延ばしたリード13に接続されている。レール10は、前記切断・移送装置5と干渉しない位置に立設した架台14上に、棒状素材Wの搬送方向と平行に延ばされており、これにより出力変圧器12と高周波誘導加熱コイル3とは、棒状素材Wの搬送方向へ一体的に移動するものとなっている。高周波誘導加熱コイル3は、棒状素材Wはもとより、棒状体からなる支持部材4をも遊挿できる十分なるコイル内径を有しており、したがって高周波誘導加熱コイル3は、支持部材4により移動停止させられた棒状素材W上から支持部材4上へ、またはその逆へ自由に移動できるようになっている。なお、支持部材4は、ここでは窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックスからなっている。
【0012】
ここで、高周波誘導加熱装置の出力変圧器12は、パンチ6を組込んだ機構部8に設けたフライホイール(図示略)にリンクを介して作動連結されている。前記フライホイールは、パンチ6を駆動する役割をなすもので、出力変圧器12はこのフライホイールと連動してレール10上を往復動するようになる。
【0013】
本実施の形態においてはさらに、上記機構部8に、パンチ6およびこれと切換え使用される仕上パンチ(図示略)とを加熱するためのヒータ16が配設されると共に、本体部2に、ダイス7を加熱するためのヒータ17が配設されている。これらヒータ16、17の出力はコントローラ(図示略)により制御されるようになっており、通常は、前記パンチ6、仕上パンチ、ダイス7の温度が70〜120℃となるように前記出力が制御される。
【0014】
以下、上記のように構成した鍛造成形装置によるねじ頭の鍛造成形について、図2および図3に基いて説明する。
【0015】
鍛造成形に際しては、棒状素材(バー材または線材)Wを送りローラ1によりその軸方向へ搬送し、その先端を支持部材4に当接させる(A)。この時、高周波誘導加熱コイル3は、支持部材4とこれに当接する棒状素材Wとを跨ぐ位置(境界位置)に位置決めされており、前記送りローラ1の回転開始信号により出力変圧器12から高周波誘導加熱コイル3に高周波電流が供給される。これにより、棒状素材Wが支持部材4に到達する直前から直後にかけて、棒状素材Wの先端部と支持部材4の先端部とが共に局部的に加熱される。そして、棒状素材Wの先端部が所定温度に加熱されると、出力変圧器12が、図示を略すフライホイールと連動して走行し、高周波誘導加熱コイル3が支持部材4の基端側へ所定距離だけ後退し、これと同時に高周波誘導加熱コイル3への高周波電流の供給が遮断される(B)。
【0016】
その後、切断・移送装置5が移動し、棒状素材Wが所定長さに切断され、切断された鍛造素材Bが、そのままダイス7の入口に対向する成形位置まで移送される(C)。そして、その移送完了信号により、機構部8に設けたパンチ6が前進し、前記鍛造素材Bを本体部2内のダイス7に挿入叩打し、続いてパンチ6と図示を略す仕上パンチとが瞬時に切り換えられて、仕上パンチが鍛造素材Bをダイス7に再び挿入叩打し、これにより、頭部Hを有する成形体(ねじ素形材)Pが成形される(D)。一方、切断・移送装置5は、前記パンチ6が鍛造素材Bをダイス7に挿入叩打した直後に上昇し、元の位置に復帰する。すると、その復帰信号により送りローラ1が回転して、再び棒状素材Wが搬送され、これと同時に、出力変圧器12から高周波誘導加熱コイル3に高周波電流が供給されると共に、出力変圧器12が走行駆動され、高周波誘導加熱コイル3が、図2(A)に示す元の位置に復帰し、棒状素材Wが支持部材4に当接すると同時にその先端部が加熱され、以降、上記工程が繰り返される。
【0017】
このようにして、皿状の頭部Hを有する成形体(ねじ素形材)Pが鍛造成形されるが、本鍛造成形装置によれば、高周波誘導加熱コイル3により棒状素材Wの先端部を加熱してから、直ちに切断・移送装置5により棒状素材Wを切断して、鍛造素材Bを成形位置まで移送するので、その間における鍛造素材B先端部の温度低下はわずかとなり、パンチ6とダイス7による鍛造成形に際して、成形体Pの頭部Hに割れが発生することはなくなる。しかも、鍛造成形に際してパンチ6に加わる衝撃は和らげられるので、パンチ6が破損することもない。
【0018】
本実施の形態では特に、支持部材4として、高周波の影響を受けにくいセラミックスを用いているので、その過熱は防止され、支持部材4の寿命は可及的に延長される。また、ヒータ16、17によりパンチ6や仕上パンチ、およびダイス7を予熱しているので、これらとの接触による鍛造素材Bの温度低下が抑制され、この面からも鍛造成形性は向上する。
【0019】
なお、上記実施の形態において、高周波誘導加熱コイル3用の出力変圧器12をフライホイールに対してリンクにより連結して、機械的に走行させるようにしたが、本発明は、この出力変圧器12を自走式としても良いものである。この場合は、別途、制御装置(図示略)を設けて、この制御装置にフライホイールの回転角度信号を取込み、自走用駆動源を制御して出力変圧器12を走行させるようにする。さらに、上記実施の形態において、ねじ素形材Pを鍛造成形する場合を示したが、本発明は、これ以外にもボルトやナット素形材の鍛造成形にも適用できる。もちろん、この場合は、成形型を構成するパンチおよびダイスの交換が必要になる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
棒状素材Wとして、チタン合金(AMS 4967)からなる直径D=2.4 mmの線材を用い、高周波誘導加熱コイル3によりその先端部を750 〜800 ℃に加熱した後、切断・移送装置5により切断して、図4に示すように、長さL1=20.5mmの鍛造素材Bを得、これを成形位置まで移送してパンチ6とダイス7により、軸部長さL2=12.3mmとなるように皿状頭部Hを鍛造成形し、ねじ素形材Pを得た。
この時の圧造倍率αは、図4にも示すように、α=[L1−L2]/D=[20.5−12.3]/2.4 ≒3.4となるが、得られたねじ素形材Pの頭部Hには全く割れが認められず、従来の鍛造成形装置では成形不能であった高圧造倍率を必要とするねじやボルト素形材を安全に製造できることが明らかとなった。
【0021】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る鍛造成形装置によれば、鍛造素材の加熱後の温度低下を大幅に抑制することができるので、成形体の割れや成形型の損傷を招くことなく大きな塑性変形量を確保することができ、高圧造倍率を必要とするねじやボルトなどを高能率にかつ低コストで製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鍛造成形装置の要部構造を概略的に示す模式的である。
【図2】本鍛造成形装置による鍛造成形の態様を順を追って示す模式図である。
【図3】本鍛造成形装置による鍛造成形の最終工程を示す模式図である。
【図4】本鍛造成形装置による一実施例の圧造倍率の算定基準を示す説明図である。
【図5】従来の鍛造成形装置の構造とこれによる鍛造成形の態様を順を追って示す模式図である。
【図6】従来の鍛造成形装置による鍛造成形の最終工程を示す模式図である。
【図7】圧造倍率の一般的算定基準を示す説明図である。
【符号の説明】
1 送りローラ(搬送手段)
3 高周波誘導加熱コイル(加熱素子)
4 支持部材
5 切断・移送装置
6 パンチ
7 ダイス
10 レール
12 高周波誘導加熱装置の出力変圧器
W 棒状素材
B 鍛造素材
P 成形体
H 頭部
Claims (2)
- 搬送手段により搬送された棒状素材を受止める支持部材と、前記棒状素材を加熱する加熱素子と、前記支持部材により受止められた棒状素材を所定長さに切断して成形位置まで移送する切断・移送手段と、前記切断・移送手段により成形位置に移送された鍛造素材の先端部を成形する成形型とを備えた鍛造成形装置において、前記加熱素子は、前記支持部材により受止められた棒状素材の少なくとも先端部を加熱可能な加熱位置と、前記切断・移送手段による前記鍛造素材の移送範囲から退避した退避位置との間で移動可能に配設され、かつ前記加熱素子が高周波誘導加熱コイルからなり、前記支持部材が棒状素材の搬送方向に延設した棒状体からなり、前記高周波誘導加熱コイルが、前記棒状体を挿通させた状態で該棒状体に沿って移動するようになっていることを特徴とする鍛造成形装置。
- 棒状体が、セラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載の鍛造成形装置。
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