JP3793649B2 - 投射用レンズ及びプロジェクションテレビ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばプロジェクションテレビ用投写レンズに配されたレンズエレメントの多層反射防止膜に関し、特に2層構成の反射防止膜において反射を抑え、プロジェクションテレビのコントラスト性能向上に係わるものである。また、投写レンズに限らず、光線の進行方向に拡大入射を受けるレンズ(平面的なものを含む)に配されるレンズエレメントの多層反射防止膜、多層反射膜を有するレンズ及び、多層反射膜を有するレンズを利用する光学機器、光学部品等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
赤、緑及び青の投射陰極線管等の映像発生源に表示された原画像をスクリーンに拡大投影するプロジェクションテレビにおける投射用レンズのレンズエレメントに施された多層反射防止膜は、従来よりレンズエレメント表面に真空蒸着法によりレンズエレメントに垂直に入射する光線に対して反射防止効果が最大となるように施されている。
【0003】
さらに反射防止膜の入射角度依存性を最小とするために特開昭60−32001号、特開昭61−121001号公報に開示されているように3層以上の膜構成とするのが最も一般的な多層反射防止膜である。
【0004】
また、反射防止膜を2層とするものについては、特開昭63−172201号公報に記載があり、前記公報には「密着性、耐熱性、耐湿性を有する2層構成の反射防止膜を提供することを目的」とし、「ガラス及びプラスチック基板側から順に、基板よりも高屈折率物質の第1層として酸化セリウム(CeO2)、基盤よりも低屈折率物質の第2層としてSiOx(1< x <2)を積層したことを特徴とする2層構成の反射防止膜」により、「経時変化がなく、反射防止効果を長時間保持することができる」ことの記載がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プロジェクションテレビの投写レンズのレンズエレメントに2層以下の構成の反射防止膜を施す場合、従来技術の反射防止膜の膜厚は、レンズエレメントに垂直に入射する光線の反射率を最小となるような膜厚となっている。この従来の投写レンズの反射防止膜によると、反射防止効果は、光線の入射角度に依存することからプロジェクションテレビのように画像表示部上の輝点からの光線が投写レンズに配置されたレンズエレメントに、ある角度範囲で入射するような光学系の場合、レンズエレメントに斜めに入射する光線の反射率が、垂直で入射する光線の反射率より高くなってしまい、光学系全体として反射防止効果を十分に得ることができないという問題が生じる。この問題は上記従来技術によっては解決されていない問題である。
【0006】
そして反射した光線は、画像表示部に戻り原画像以外を光らせることからコントラストが低下し、その結果、セットでのコントラストが低下してしまうという問題が生じる。
【0007】
また、反射防止膜の入射角度の依存性を最小にするためには、従来技術では、3層以上の膜構成が必要であり、コストも高く膜の信頼性についても膜層間の温度差が大きくなり温度変化時に膜の収縮、膨張量の違いから割れ、剥離等が生ずる問題がある。
【0008】
このため、安価で信頼性の高い2層構成の反射防止膜を用いて、レンズエレメントに角度範囲を持った光線が入射するような光学系の場合でも、レンズエレメント全体の反射率を抑え、画像表示部に戻る光線を防ぐことが課題となっている。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術による投射レンズのレンズエレメントにおける多層反射防止膜の課題を解決し、角度を持って入射する光線がある場合でもレンズエレメント全体の反射率を抑え、画像表示部に戻る光線を防ぐ2層構成の反射防止膜とこれを用いたプロジェクション用投射レンズを提供し、セットのコントラスト性能の向上を図ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、プロジェクションテレビ用の投射用レンズにおける複数のレンズエレメントのうち、映像発生源に最も近い位置に配置された凹レンズエレメントのレンズ面に反射防止膜が形成し、該反射防止膜は、互いに異なる屈折率を有する第1層及び第2層を含み、前記第1層は、 SiO (一酸化ケイ素)を用いて構成され、前記第2層は MgF2 (フッ化マグネシウム)を用いて構成されており、かつ前記反射防止膜は、前記凹レンズエレメントに入射する光線のうち、10度〜20度の角度範囲で入射される主光線に対して1.0%以下の反射率を持ち、かつ前記反射防止膜の膜厚を、前記レンズエレメントに前記角度範囲で入射する光線の主波長をλ ( nm ) としたとき、 ( λ+25 ) /4〜 ( λ+40 ) /4 ( nm ) の範囲内とすることにより、当該角度範囲で入射する光線の波長に対して反射防止効果が最大となるように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
【0026】
図1は、本発明を用いた一実施例の投写光学系を示す断面図である。2は投写管1の蛍光面、3は投写管パネル、5はブラケット、9は凹レンズエレメントであり、投写管パネル3とブラケット5及び凹レンズエレメント9により得られる空間に冷媒4が密封されている。さらに凹レンズエレメント前面にはレンズエレメント10、11、12、13、14が内鏡筒の所定の位置に保持された状態で外鏡筒を介して光軸LL'上に配置される。
【0027】
このような構成において、蛍光面上の光軸LL'上の輝点P0からの光線は、レンズエレメント9、10、11、12、13、14に上限光RAY1から下限光RAY2の範囲を通過する。
【0028】
図2は、図1の投射光学系における別の光線経路を示す断面図である。図1と同等の部分には、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図2のように光軸LL'以外の蛍光面上の輝点P3からの光線は、レンズエレメント9、10、11、12、13、14にRAY13からRAY14の範囲を通過する。
【0030】
図1、及び図2の投写光学系の投写レンズにおけるレンズエレメントには、レンズエレメント側から順番に例えば第1層目にSiO、第2層目にMgF2等の2種類の異なる屈折率を有する2層構成の多層反射防止膜を各レンズエレメントに入射する光線範囲における最大入射角度の約1/4の角度で入射する光線の波長に対して反射防止効果が最大となるように各層を(入射光線波長/4)の膜厚で形成する構成となっている。ここで、入射光線波長は、赤、青、緑の各投写管により得られるそれぞれの映像光におけるスペクトル分布のピークエネルギーを示す波長λRmax、λBmax、λGmaxに対応して決定することができ、それぞれの波長により反射防止膜の膜厚を設定することが可能である。そのレンズエレメントの構成図をレンズエレメント9を例に図16に図示する。
【0031】
図16で、24はレンズエレメント9の第1層目の反射防止膜、25は第2層目の反射防止膜、28は反射防止膜24の膜厚であり、29は反射防止膜25の膜厚である。ここで、膜厚28、29はレンズエレメント9に垂直に入射する光線26に対して最適な膜厚とするのではなく、最大入射角度の約1/4の角度θで入射する光線27に対して最適な膜厚としている。
【0032】
このような構成によれば2層構成の反射防止膜においても入射角度依存性を最小にできることからレンズエレメント全面での反射を最小限に抑えることができる。
【0033】
図1の構成における投写管1の赤、緑、青に対応した蛍光体の発光スペクトル分布について説明する。図7に緑の投写管1における蛍光体の発光スペクトル分布についての特性図を示す。縦軸には相対エネルギー(%)を横軸には波長λ(nm)をとっている。
【0034】
図7に示すように緑の蛍光体の発光スペクトルは、545nm近傍でピークエネルギーを示す主波長λGmaxに対して、短波長(青)側の波長領域に存在するスプリアス成分(サブピークλGSmax波長495nm)と長波長(赤)側の波長領域に存在するスプリアス成分(サブピークが590nmとλGLmax630nm)により成っている。
【0035】
図8に赤の投写管1における蛍光体の発光スペクトル分布についての特性図を示す。縦軸には相対エネルギー(%)を、横軸には波長λ(nm)をとっている。発光スペクトルは、612nm近傍でピークエネルギーを示す主波長成分に対して、短波長(緑)側の波長領域である580nmから600nm近傍に存在するスプリアス成分(サブピークλRSmax波長585nm)と長波長(真紅)側の波長領域である630nm近傍のスプリアス成分(サブピークλRLmax波長635nm)とによって成立している。
【0036】
同様に、青色の投写管に使用している蛍光体の発光スペクトル分布は、主波長の460nmをピークに山型のブロードな盛り上がりを示す特性となっている。
【0037】
上記の特性波長を持つ各投写管1から発光される光線において、反射防止膜の効果を最大に得られる光線の波長は、レンズエレメントに垂直に入射する光線に対して、斜めに入射する光線が短波長方向にシフトする。具体的に上記蛍光体の緑の場合を例にすると、主波長(545nm)の光線が垂直に入射した時に最適な膜厚(545/4nm)で形成した反射防止膜にある角度で光線が入射すると反射防止効果が最大になる波長が545nmより短波長となり主波長での反射効果が十分得られないことになる。そこで、上述したような例えば第1層目に SiO 、第2層目に MgF2 等の2種類の異なる屈折率を有する2層構成の多層反射防止膜を用いる場合において、各蛍光体の主波長の光線が斜めに入射した場合において最も反射防止効果を得るために波長のシフト量をあらかじめ考慮して主波長の光線が斜めに入射した時に最適になるようにシフトする分、反射防止膜の各層の膜厚を厚く設定しておく必要がある。
【0038】
図1の第1の実施の形態における投写光学系においては、各レンズエレメントへの最大入射角度が60度程度であることから、反射防止膜は、その約1/4の入射角である15度で入射する光線に対して最適な膜厚とした。ここで、最大入射角度の1/4という数値は、プロジェクションテレビの反射光設計のシミュレーション結果より得られた最適な値であるが、1/4の近傍、または1/4とは近似しない値であっても同等な効果が得られる範囲において本発明の範囲である。第1の実施の形態では最適の場合について説明する。
【0039】
ここで、15度で入射した光線の垂直入射に対するシフト量は、実験より短波長方向に約30nmであることから赤色の蛍光体の場合は、主波長(610nm)に対して15度の入射時のシフト量を考慮して各層の膜厚を640/4nmに設定した。すなわち、640nmの光線が垂直に入射した場合に反射率が最低になる特性の反射防止膜を形成する。
【0040】
同様にして緑の蛍光体の場合、主波長(545nm)に対して15度の入射時のシフト量を考慮して各層で575/4nmの膜厚に設定した。すなわち、575nmの光線が垂直に入射した場合に反射率が最低になる特性の反射防止膜を形成する。
【0041】
さらに、同様に青の蛍光体の場合、主波長(450nm)に対して15度の入射時のシフト量を考慮して各層で480/4nmの膜厚に設定した。すなわち、480nmの光線が垂直に入射した場合に反射率が最低になる特性の反射防止膜を形成する。
【0042】
このような構成の多層反射防止膜によればレンズエレメントでの反射を最低限に抑えることができる。
【0043】
その効果が最もあらわれる投写管1とそれに最も近いレンズエレメント9との関係を例にとって詳細に説明する。
【0044】
図3は、前記構成における蛍光面2の中心の輝点P0からレンズエレメント9に至る光線追跡図をしめす。
【0045】
図3示すように、蛍光面2の中心の輝度点P0の光線は、レンズエレメント19にRAY5からRAY6 の範囲で入射する。RAY1からRAY2の範囲の入射角度の光線は、レンズエレメント19で反射せずに透過し、RAY1からRAY5並びにRAY2からRAY6の範囲の入射角度の光線は、透過光(RAY3並びにRAY4)と反射光(RAY3‘とRAY4’)を生ずるが、反射光のエネルギーを小さく抑える効果がある。
【0046】
図4は、前記構成における蛍光面2の中心の輝点以外からレンズエレメント9に至る光線追跡図の第1例をしめす。
【0047】
図4は、輝点P2が蛍光面2の中心から対角の距離を1.0とした時、中心から約0.2程度に位置する場合を示している。この時、輝度点P2の光線は、レンズエレメント19にRAY11からRAY12の範囲で入射する。この時、RAY7からRAY8の範囲の光線は、レンズエレメント9で反射せずに透過し、RAY7からRAY11並びにRAY8からRAY12の範囲の光線は、透過光(RAY9並びにRAY10)と反射光(RAY9‘とRAY10’)が生じるが、反射光のエネルギーを小さく抑える効果がある。
【0048】
図5は、前記構成における蛍光面2の中心の輝点以外からレンズエレメント9に至る光線追跡図の第2例をしめす。
【0049】
図5は、輝点P3が蛍光面2の中心から対角の距離を1.0とした時、中心から約0.5程度に位置する場合を示している。この時、輝度点P3の光線は、レンズエレメント9にRAY16からRAY18の範囲で入射する。この場合のRAY13からRAY14の範囲の光線は、レンズエレメント1で反射せずに透過する。RAY13からRAY17並びにRAY14からRAY18の範囲の光線は、透過光(RAY15並びにRAY16)と反射光(RAY15‘とRAY16’)が生じるが、反射光のエネルギーを小さく抑える効果がある。
【0050】
図6は、前記構成における蛍光面2の中心の輝点以外からレンズエレメント9に至る光線追跡図の第3例をしめす。
【0051】
図6は、輝点P4が蛍光面2の中心から対角の距離を1.0とした時、中心から約0.9程度に位置する場合を示している。この時、輝度点P4の光線は、レンズエレメント9にRAY21からRAY22の範囲で入射する。この場合のRAY13からRAY14の範囲の光線は、レンズエレメント9で反射せずに透過する。RAY13からRAY17並びにRAY14からRAY18の範囲の光線は、透過光(RAY15並びにRAY16)と反射光(RAY15‘とRAY16’)が生じるが、反射光のエネルギーを抑える効果がある。
【0052】
以上の反射防止効果によれば、蛍光面2の上の全輝点でレンズエレメントでの反射光のエネルギーを抑える効果がある。つまり、蛍光面2に戻るエネルギーも減らすことができることから蛍光面2の原画像並びにセットのコントラストについても向上することができる。
【0053】
尚、第1の実施の形態では、入射角度を15度とした場合の反射防止膜の最適膜厚について説明したが、レンズエレメントへの最大入射角度の1/4の角度の近傍であれば同等の効果が得られ、また近似していない値でも同等の効果が得られる範囲であれば本願発明の範囲内である。
【0054】
次に本発明の第2の実施の形態として、反射防止膜のVコート反射防止膜とUコート反射防止膜の2種類の反射防止膜にみた場合を以下に説明する。第2の実施の形態においても、レンズエレメントへの光線の最大入射角度を60度とし、入射角度が15度である特定波長の光線に対し反射率が最適となる場合について説明する。
【0055】
図9に赤に対応したVコート反射防止膜の一実施例の特性について示す。横軸に入射光線の波長(nm)、縦軸に垂直入射の光線に対する反射率(%)を示す。
【0056】
図9に示したように、シフト前の条件における反射率特性をもつ条件(2)のグラフに対し、シフト後の条件(1)の反射率特性を持つVコートを形成することで赤の蛍光体において主波長の光線が15度で入射の場合において最適となり本発明の反射防止膜の効果を得ることができる。
【0057】
図10に緑に対応したVコート反射防止膜の一実施例の特性について示す。
【0058】
横軸に入射光線の波長(nm)、縦軸に反射率(%)を示す。
【0059】
図10に示したように、シフト前の条件における反射率特性をもつ条件(2)のグラフに対し、シフト後の条件(1)の反射率特性を持つVコートを形成することで緑の蛍光体において主波長の光線が15度で入射の場合に最適となり本発明の反射防止膜の効果を得ることができる。
【0060】
図11に赤に対応したUコート反射防止膜の一実施例の特性について示す。
【0061】
横軸に入射光線の波長(nm)、縦軸に反射率(%)を示す。
【0062】
図11に示したように、シフト前の条件における反射率特性をもつ条件(2)のグラフに対し、シフト後の条件(1)の反射率特性を持つUコートを形成することで赤の蛍光体において主波長の光線が15度で入射する場合に最適となり本発明の反射防止膜の効果を得ることができる。
【0063】
図12に緑に対応したUコート反射防止膜の一実施例の特性について示す。
【0064】
横軸に入射光線の波長(nm)、縦軸に反射率(%)を示す。
【0065】
図12に示したように、シフト前の条件における反射率特性をもつ条件(2)のグラフに対し、シフト後の条件(1)の反射率特性を持つUコートを形成することで緑の蛍光体において最適となり本発明の反射防止膜の効果を得ることができる。
【0066】
以上の、第1、第2の実施の形態の説明では、最大入射角の1/4の入射角度に対して最適な膜厚とすることについて説明したが、1/4の近傍、または1/4に近似しない範囲においても同等の反射率低減の効果を得ることができる。その詳細を図17の光線の入射角度と反射率の関係のグラフを用いて説明する。
【0067】
図17のグラフ▲1▼は、従来の垂直入射の光線に対して最適膜厚とした反射防止膜(2層)を用いた場合の、入射角度θと反射率の関係図である。それに対し、グラフ▲2▼は、入射角度15度の光線に対して最適膜厚とした反射防止膜(2層)を用いた場合の、入射角度θと反射率の関係図である。この2つのグラフの比較により、入射角度を考慮した最適膜厚とした反射防止膜を用いた方が、反射防止効果について入射角度の依存性は低くなることがわかる。また、反射防止効果の観点でみると、反射防止膜の最適膜厚の設定条件としては、1/4の場合(θ=15)に限らず、1/6〜1/3の範囲(10<θ<20)でも同等な効果が得られ、更には、1/12〜3/8の範囲(5<θ<22.5)でも上記範囲の場合と近似した反射率の効果をえることができると考えられる。
【0068】
また、第1、第2の実施の形態では、反射防止膜を最適膜厚にする場合のシフト量を30nmとして説明したが、シフト量が25nm 〜40nm の範囲で同等の反射率低減の効果が得られ、シフト量が25nm 〜55nm の範囲でも、同等の効果を得ることができる。更には、15nm 〜90nmの範囲であっても3層以上の場合と比較して、近い効果を得ることができる(図14参照)。
【0069】
次に、図13に膜構成数(2層と3層)における緑の光線が入射された場合の反射率特性を示す。横軸に入射光線の波長(nm)、縦軸に反射率(%)を示す。
【0070】
図13は、3層で反射防止膜を構成した場合(コート1)と2層で反射防止膜を構成した場合(コート2)の反射率を示したものである。コート1は膜の構成数を増やすことで、波長に対して反射率がフラットになることが分かる。これに対して、本願発明のコート2では、入射角を考慮したシフト後の波長の光線において最適な反射率を奏し、コート1より単純な膜構成でコート1の反射率効果に匹敵する効果を得ることが可能である。
【0071】
次に、2層の反射防止膜を有するレンズエレメントの反射率で比較すると、垂直入射がされる場合に最適膜厚とした反射防止膜において反射率が1%であったのに対し、以上の第1、第2の実施の形態において説明した入射角度を考慮し、ある蒸着条件のもとでの反射防止膜によれば0.67%と従来比33%軽減した。尚、本実験では、上記のような結果を得たが、反射防止膜の蒸着条件を調整することにより、更に0.5%以内の反射率とすることができる。
【0072】
また、コントラストは、垂直入射の場合に最適膜厚とした場合の2層のレンズエレメントを使用した場合が69であったのに対して、第1、第2の実施の形態のレンズエレメントを使用すると101となり、従来比30%向上した結果を得た。
【0073】
ここで、本願発明の入射角度を考慮した2層反射防止膜を有するレンズエレメントを用いたプロジェクションテレビでのコントラストの効果について、緑の場合を例に図14に示す。図14では、横軸に膜厚×4(nm)、縦軸にコントラストとする。
【0074】
図14では、シフト量を25nm〜40nmとした場合に、コントラストが100を超え、最良なコントラストの映像を得ることが可能であることがわかる。
【0075】
また、シフト量が25nm〜55nmの場合では、コントラストが100に近く、最適範囲に匹敵する効果を得ることができる。さらにシフト量が15nm〜90nmの場合においても、コントラストを90以上に保つことができる。
【0076】
評価の方法は、反射防止効果については、反射率を反射率測定器(日立自記分光光度計U−3210)で実測評価した。コントラストについては投射管に評価パターンを写し測定評価をした。
【0077】
図15にコントラストの評価パターンをしめす。図15に示すように蛍光面上に横幅wの1/5の帯を白、黒で交互に表示し、中心の白帯の中心w/25並びに両サイドの黒帯w/25の輝度を測定し、両者間の輝度比を求めることで評価した。
【0078】
膜厚の測定方法としては、膜厚測定器にて測定する方法のほか、光線の波長を変化させて光線を入射させたときの透過率を測定することにより、透過率を最適とする膜厚との相関をとることで理論的に算出する等の方法がある。
【0079】
また、本発明の反射防止膜は、2層構成であることから基材と膜との温度差における膨張、収縮差がほぼ等しいため膜にかかる応力が軽減され、その結果、割れ、剥離等を抑え、信頼性の高い反射防止膜を得ることができる。
【0080】
尚、上記の実施の形態では本願発明のレンズエレメントをプロジェクションテレビに用いた場合について説明したが、プロジェクションテレビに限らず、本願発明のレンズエレメントを他の光学機器、眼鏡、ゴーグル等に用いても反射防止の点で、同様な効果を得ることができる。
【0081】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、2層構成の反射防止膜によってもレンズの反射防止効果を改善することができ、特にプロジェクションテレビ用投射レンズに配されたレンズエレメントにレンズエレメントに上記に説明した2層構成の多層反射防止膜を施すことで、レンズエレメント全面での反射を最小限とする効果がある。またレンズエレメントから蛍光面にもどる光線も軽減されることからこれを用いた投射レンズを搭載したプロジェクションテレビにおいてもコントラスト性能向上の効果がある。
【0082】
さらにまた2種類の物質(例えばSiOとMgF2)による2層構成のため、信頼性が高く、低コストで実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いた一実施例の投写光学系と光線経路を示す断面図
【図2】本発明を用いた投射光学系における別の光線経路を示す断面図
【図3】蛍光面の中心の輝点からレンズエレメントに至る光線追跡図
【図4】蛍光面の中心の輝点以外からレンズエレメント1に至る光線追跡図の第一例
【図5】蛍光面の中心の輝点以外からレンズエレメント1に至る光線追跡図の第二例
【図6】蛍光面の中心の輝点以外からレンズエレメント1に至る光線追跡図の第三例
【図7】緑用蛍光体の発光スペクトル分布
【図8】赤用蛍光体の発光スペクトル分布
【図9】赤に対応したVコート反射防止膜の一実施例の特性図
【図10】緑に対応したVコート反射防止膜の一実施例の特性図
【図11】赤に対応したUコート反射防止膜の一実施例の特性図
【図12】緑に対応したUコート反射防止膜の一実施例の特性図
【図13】緑の場合の膜構成数における反射率特性図
【図14】緑の場合の膜厚に対するコントラストの関係図
【図15】コントラストの評価パターン図
【図16】レンズエレメントに2層の反射防止膜を設けた構成図
【図17】反射防止効果の入射角度依存性を示すグラフ
【符号の説明】
1…投写管、2…蛍光面、3…フェイスパネル、4…冷媒、
5…ブラケット、6…押え金具、7…内鏡筒
8…外鏡筒、9…レンズエレメント、10…レンズエレメント
11…レンズエレメント、12…レンズエレメント、
13…レンズエレメント、14…レンズエレメント、
P0、P1、P2、P3、P4…輝点
RAY11、RAY7、RAY13、RAY19…上限光、
RAY2、RAY8、RAY14、RAY20…下限光、
LL‘…光軸
RAY3、RAY3‘、RAY5、RAY4、RAY4’RAY6、
RAY9、RAY9‘、RAY11、RAY10、RAY10‘、RAY112、
RAY115、RAY15’、RAY17、RAY16、RAY16‘、RAY18、
RAY21、RAY22…光線経路、23…入射角度θ、
24…第1層目の反射防止膜、25…第2層目の反射防止膜、
26…垂直入射の光線、27…入射角度θの光線、
28…第1層目の膜厚、29…第2層目の膜厚

Claims (2)

  1. 映像発生源に表示された原画像を拡大投射するための、複数のレンズエレメントを含むプロジェクションテレビ用の投射用レンズにおいて、
    前記レンズエレメントのうち、映像発生源に最も近い位置に配置された凹レンズエレメントのレンズ面に反射防止膜が形成されており、
    該反射防止膜は、互いに異なる屈折率を有する第1層及び第2層を含み、前記第1層は、 SiO を用いて構成され、前記第2層は MgF2 を用いて構成されており、
    かつ前記反射防止膜は、前記レンズエレメントに入射する光線のうち、10度〜20度の角度範囲で入射される光線に対して1.0%以下の反射率を持ち、
    かつ前記反射防止膜の膜厚を、前記レンズエレメントに前記角度範囲で入射する光線の主波長をλ(nm)としたとき、(λ+25)/4〜(λ+40)/4(nm)の範囲内とすることにより、当該角度範囲で入射する光線の波長に対して反射防止効果が最大となるように構成したことを特徴とする投射用レンズ。
  2. 赤、青及び緑の映像発生源に表示された原画像をスクリーン上に拡大投射するための複数のレンズエレメントを含む投射用レンズを備えたプロジェクションテレビにおいて、
    前記投射レンズの前記レンズエレメントのうち、映像発生源に最も近い位置に配置された凹レンズエレメントのレンズ面に反射防止膜が形成されており、
    該反射防止膜は、互いに異なる屈折率を有する第1層及び第2層を含み、前記第1層は、 SiO を用いて構成され、前記第2層は MgF2 を用いて構成されており、
    かつ前記反射防止膜は、前記凹レンズエレメントに入射する光線のうち、10度〜20度の角度範囲で入射される光線に対して1.0%以下の反射率を持ち、
    かつ前記反射防止膜の膜厚を、前記レンズエレメントに前記角度範囲で入射する光線の主波長をλ ( nm ) としたとき、 ( λ+25 ) /4〜 ( λ+40 ) /4 ( nm ) の範囲内とすることにより、当該角度範囲で入射する光線の波長に対して反射防止効果が最大となるように構成したことを特徴とするプロジェクションテレビ。
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