JP3792366B2 - 光磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気記録媒体及びその再生方法に関し、更に詳しくは、再生光スポットよりも極めて小さい微小記録磁区を拡大して再生することができる高密度記録に適した光磁気記録媒体及びその再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光磁気記録媒体は記録情報の書き換えが可能であり、記憶容量が大きく、しかも信頼性が高い記録媒体であるため、コンピュータメモリ等として実用化され始めている。しかし、情報量の増大と装置のコンパクト化に伴い、より一層の高密度記録再生技術が要請されている。光磁気記録媒体に情報を記録するには、レーザー光を光磁気記録媒体に照射しながら、記録信号に応じた極性の磁界を昇温した部分に印加する磁界変調記録方式が用いられている。この方式は、オーバーライト記録が可能であり、しかも、高密度な記録、例えば、0.15μmの最短マーク長での記録が達成されている。また、一定の印加磁界の下で記録信号に応じてパワー変調した光を照射して記録する光変調記録方式も実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高密度に記録された記録マークを再生するために、再生光ビームのスポット径によって決まる光学的再生分解能が問題となる。例えば、スポット径が1μmの再生光を用いて磁区長0.15μmの微小マークを識別して再生することは不可能である。このような再生光の光学的スポット径による再生分解能の制約をなくすためのの1つのアプローチとして、例えば、Journal of MagneticSociety of Japan, Vol. 17 Supplement No. S1, pp. 201 (1993)に記載されているような磁気超解像技術(MSR)が提案されている。これは、光磁気記録媒体に再生光が照射された時に再生光スポット内部の磁性膜に温度分布が生じることを利用して、スポット内に磁気的マスクを発生させ、信号の再生に寄与する実効的なスポット径を縮小させたものである。この技術を用いれば、実際の再生光スポット径を縮小させずに、再生分解能を向上させることができる。しかし、この手法では、磁気的マスクにより実効的なスポット径を小さくする為、再生出力に寄与する光量が低下し、その分、再生C/Nが低下してしまう。この結果、充分なC/Nを得ることは困難となる。
【0004】
特開平1−143041号公報には、室温で互いに磁気的に結合した第1磁性膜、第2磁性膜及び第3磁性膜を有し、第1,第2及び第3磁性膜のキュリー温度をTC1,TC2及びTC3とするとき、TC2>室温で且つTC2<TC1,TC3とされ、第1磁性膜の保磁力HC1は第2磁性膜のキュリー温度TC2近傍で充分小さく、第3磁性膜の保磁力HC3は室温からTC2より高い所要の温度TPBまでの温度範囲で所要の磁場よりも充分大きい光磁気記録媒体を用いて、第1磁性膜の記録磁区を拡大させて再生を行う光磁気記録媒体の再生方法が開示されている。この方法は、再生光照射時の媒体の温度上昇を利用し、第1及び第3磁性膜の磁気的結合を遮断させ、その状態で記録磁区に働く反磁界と外部印加磁界とにより第1磁性膜の磁区を拡大させている。なお、この技術では、再生時の読み出し部の温度よりも低くキュリー温度を設定した第2磁性膜を用いているが、本発明ではそのような磁気特性の磁性膜は用いていない。
【0005】
また、特開平8−7350号は、基板上に再生層と記録層とを有し、再生時に記録層の磁区を拡大して再生することができる光磁気記録媒体を開示している。この光磁気記録媒体を再生する際に、再生磁界として交番磁界を用い、磁区を拡大する方向の磁界と逆方向の磁界とを交互に印加することによって各磁区で磁区拡大及び縮小を行わせている。
【0006】
本発明は、特開平1−143041号及び特開平8−7350号公報に記載された方法と異なる方法で前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、微小磁区が記録された場合でも充分なC/Nで再生信号が得られる光磁気記録媒体及びその信号再生方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の別の目的は、再生時に磁区拡大が行われた場合であっても、記録磁区を再生した直後に拡大された磁区を確実に消去することができる光磁気記録媒体及びその再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明で用いる光磁気記録媒体は、光磁気記録膜と補助磁性膜とを備え、再生光を照射したときに上記光磁気記録膜の記録磁区を上記補助磁性膜に磁気的に転写させて信号再生を行う光磁気記録媒体において、上記補助磁性膜が臨界温度を超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する少なくとも一層の磁性膜であり且つ上記光磁気記録膜が室温以上の温度で垂直磁化膜であり、上記補助磁性膜の磁気特性を利用して再生時に上記補助磁性膜に上記光磁気記録膜の記録磁区よりも大きな磁区を転写させることができる光磁気記録媒体である。
【0009】
本発明で用いる光磁気記録媒体はさらに下記2つのタイプの光磁気記録媒体に分類することができる。第1のタイプの光磁気記録媒体は、図2A及図2Bに示したように、光磁気記録膜6上に第1補助磁性膜5及び第2補助磁性膜4が順次積層された構造を有し、光磁気記録膜6、第1補助磁性膜5及び第2補助磁性膜4が、光磁気記録膜、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜のキュリー温度をそれぞれTCO、TC1及びTC2とし、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜の上記臨界温度をそれぞれTCR1及びTCR2としたときに、室温<TCR2<TCR1<TCO,TC1,TC2となる関係を満たす磁気特性を有する。第1補助磁性膜5及び第2補助磁性膜4は、図3に示すように室温から室温以上のある臨界温度(TCR)までは面内磁化膜であり、TCR以上では垂直磁化膜になるという磁気特性を有している。光磁気記録膜6は室温以上で垂直磁化膜である。
【0010】
第1のタイプの光磁気記録媒体の動作(再生)原理を以下に説明する。図2Aに、光変調記録方式等により光磁気記録膜6に記録磁区を書き込んだ後、再生前の各層の磁化状態を示す。この媒体に、磁性膜の最高到達温度が、所望の温度になるような適当なパワーの再生光を照射すると、まず、第1補助磁性膜5中の温度がTCR1以上となった領域に、光磁気記録膜6中の垂直磁化の磁区22が転写される。その際に、図8に示した再生光が照射された場合の媒体内の温度プロファイルを考慮して、光磁気記録膜6中の磁区と同じ大きさかまたはそれより小さい磁区21が第1補助磁性膜5に転写されるように再生パワー及びTCR1を設定する。
【0011】
次いで第1補助磁性膜5に転写された磁区21は第2補助磁性膜4に転写される。本発明では、第1及び第2補助磁性膜はそれらの臨界温度がTCR2<TCR1となるように設定されているため、図8の媒体内の温度プロファイルに示すように、第2補助磁性膜中の垂直磁化状態となりうる領域は、第1補助磁性膜中のそれよりも径が大きくなる。このため、図2Bに示すように、第2補助磁性膜4中の転写磁区23は第2補助磁性膜中の垂直磁化状態となりうる領域内の垂直磁気異方性と第1補助磁性膜5中の垂直磁化からの交換結合力とにより拡大される。この磁区拡大は、第1補助磁性膜5中の図2BのWで示した領域の面内磁化が光磁気記録膜6の磁区Sから第2補助磁性膜4への交換結合力を弱めていることからも促進されているといえる。上記磁区拡大により、面内磁化の磁気的マスクによる再生出力に寄与する光量の低下を低減し、高C/N比の再生が可能となる。
【0012】
第2補助磁性膜4の磁区23の拡大の効果は、第2補助磁性膜4中の転写磁区が再生光スポット径以上に拡大されたときに最大になる。この状態では、光磁気記録膜6中に記録された磁区の大きさや形状に関係しない、第2補助磁性膜4の性能指数と再生ビーム光のみによって決まる極めて大きい再生出力が得られる。再生後、即ち再生レーザー光の照射部が移動した後は、読み出し部はTCR2以下に冷却され、第1と第2の各補助磁性膜は面内磁化状態となり、図2Aの状態に戻る。以上のような再生動作時の温度においても、光磁気記録膜6の保磁力は充分大きいために、磁化として記録された情報は完全に保持されている。
【0013】
本発明の第2のタイプの光磁気記録媒体は、図7に示すように、補助磁性膜8と光磁気記録膜10との間に非磁性膜9を備え、光磁気記録膜10及び補助磁性膜8が、光磁気記録膜及び補助磁性膜のキュリー温度をそれぞれTCO、Tとし、補助磁性膜の上記臨界温度をそれぞれTCRとしたときに、室温<TCR<TCO,Tとなる関係を満たす磁気特性を有することを特徴とする。
【0014】
第2のタイプの光磁気記録媒体の再生原理を説明する。図6Aに光変調記録方式等により図7に示した媒体の光磁気記録膜10に記録磁区を書き込んだ後、再生を行う前の補助磁性膜8、非磁性膜9及び光磁気記録膜10の磁化状態を概略的に示す。この光磁気記録媒体に、磁性膜の最高到達温度が、所望の温度になるような適当なパワーの再生光を照射すると、補助磁性膜8中に、TCR以上となり垂直磁化状態となりうる領域が発生する。その領域の大きさが光磁気記録膜10に記録されている磁区Mの径以上、好ましくは再生光スポット径以上となるようにTCR及び再生パワーが設定されている。また、補助磁性膜8は、その保磁力が、TCR以上の領域内の温度分布に対応して図9に示すような分布をし、最高到達温度となる領域及びその近傍でその値が充分小さくなるような磁気特性を有している。
【0015】
光磁気記録膜10はTCR以上の領域内の温度分布に対応して図9に示すような磁化の分布を有し、最高到達温度となる領域及びその近傍でその値が充分大きくなるような磁気特性を有している。各磁性膜の磁気特性を上記のように設定したため、光磁気記録膜10中の温度が高く且つ磁化が充分大きい領域の磁区Mのみが、磁区Mの領域で作用する光磁気記録膜10と補助磁性膜8間の大きな静磁結合力により、補助磁性膜8中の温度が高く且つ保磁力が充分小さい領域に転写される。これにより、まず充分な再生分解能が得られる。
【0016】
次いで、補助磁性膜8に転写された磁区63は、TCR以上の領域内の垂直磁気異方性と転写された磁区からの交換結合力により、図6Bに示したように拡大すると考えられる。この磁区拡大により第1のタイプの光磁気記録媒体と同様に再生信号が増大され、C/Nが向上する。再生後、即ち再生レーザー光が移動した後、読み出し部はTCR以下に冷却され、補助磁性膜8は面内磁化膜となり、図6Aの状態に戻る。
【0017】
本発明の第1の態様に従えば、室温以上の温度で垂直磁化膜である光磁気記録膜を有する光磁気記録媒体に再生光を照射して磁気光学効果の大きさを検出することによって記録された信号を再生する光磁気記録媒体の再生方法において、上記光磁気記録媒体として、光磁気記録膜上に第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜が順次積層され、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜は臨界温度を超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する磁性膜であって、上記光磁気記録膜、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜が、該光磁気記録膜、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜のキュリー温度をそれぞれTCO、TC1及びTC2とし、第1補助磁性膜及び第2補助磁性膜の上記臨界温度をそれぞれTCR1及びTCR2としたときに、室温<TCR2<TCR1<TCO,TC1,TC2となる関係を満たす磁気特性を有する光磁気記録媒体を用い、上記光磁気記録媒体に、再生クロックと同一周期または整数倍の周期でパワー変調された再生光を照射することによって記録信号を再生することを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第2の態様に従えば、室温以上の温度で垂直磁化膜である光磁気記録膜を有する光磁気記録媒体に再生光を照射して磁気光学効果の大きさを検出することによって記録された信号を再生する光磁気記録媒体の再生方法において、上記光磁気記録媒体として、臨界温度を超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する補助磁性膜を非磁性膜を介して光磁気記録膜上に備え、上記光磁気記録膜及び補助磁性膜が、該光磁気記録膜及び補助磁性膜のキュリー温度をそれぞれTCO、Tとし、補助磁性膜の上記臨界温度をそれぞれTCRとしたときに、室温<TCR<TCO,Tとなる関係を満たす磁気特性を有する光磁気記録媒体を用い、上記光磁気記録媒体に、再生クロックと同一周期または整数倍の周期でパワー変調された再生光を照射することによって記録信号を再生することを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法が提供される。
【0019】
上記再生光は再生クロックと同一周期または整数倍の周期で再生光パワーPr及びPrにパワー変調されており、上記Pr及びPrの一方の再生光パワーが上記補助磁性膜の磁区拡大を生じさせるパワーであることが望ましい。
【0020】
ここで、本発明の第2の態様に従う再生方法の原理説明を図11の再生方法の模式図を用いて説明する。この再生方法では図6に示した第2のタイプの光磁気記録媒体を使用する。最初に、光磁気記録媒体に第2のタイプの光磁気記録媒体に光変調記録方式等を用いて図11(a)に示したような所定の記録パターンを記録する。図中、記録マークは、最短マークピッチDPで記録し、記録マーク長DLはDL=DP/2となるように設定する。再生時には、再生用レーザー光として、2種類の再生パワーPr Pr に変調したパルスレーザー光を、図11(b)に示したように、記録マーク位置に同期した周期DPであり且つ高パワーPr の発光幅がDLとなるように照射する。低い再生パワーPr の光は常に消去状態(記録マークがない部分)に、高い再生パワーPr の光は記録状態(記録マークが存在する部分)と消去状態に照射される。
【0021】
図11(b)に示したような再生パルスレーザーを照射して得られた再生信号波形を図11(c)に示す。これに対して同トラックを一定の再生光パワーの連続光で再生したときの再生波形を図11(d)に示す。ここで、Pr Pr のうち、Pr は後述するように補助磁性膜8の磁区拡大が生じるような記録パワーとし、Pr は磁区拡大が消滅するパワーとなるように選択する。このように再生パワーを選択することにより、パルス光再生で観測される記録状態と消去状態との間の振幅Hplを、一定レーザー光再生での振幅Hdcに対して、Hpl>Hdcとすることができ、しかも、光磁気記録膜の各磁区に記録された磁化情報を隣接する磁区からの影響を受けることなく独立して拡大再生することができる。
【0022】
本発明の第3の態様に従えば、光磁気記録媒体に再生光を照射して磁気光学効果の大きさを検出することによって記録された信号を再生する光磁気記録媒体の再生方法において、上記光磁気記録媒体として、垂直磁化を有する光磁気記録膜と、臨界温度Tcrを超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する補助磁性膜とを非磁性膜を介して備え、上記光磁気記録膜のキュリー温度Tcoと、補助磁性膜のキュリー温度Tc及び補償温度Tcompとの間に、室温<Tcr<Tcomp<Tco<Tcなる関係を満たす磁気特性を有する光磁気記録媒体を用い、上記光磁気記録媒体に、DC磁界を印加しながら、再生クロックと同一周期または整数倍の周期で少なくとも2種類の光パワーPr及びPrにパワー変調された再生光を照射することによって、光磁気記録膜の記録磁区を上記補助磁性膜に転写し、該転写磁区を拡大し、そして該拡大した磁区を縮小または消滅させる工程を経て記録信号の再生を実行することを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法が提供される。
【0023】
本発明の再生方法において、上記再生光の光パワーPrが、上記補助磁性膜をTcr〜Tcompの温度に加熱して光磁気記録膜の記録磁区を補助磁性膜に転写及び磁区拡大するパワーであり、上記再生光の光パワーPrが上記補助磁性膜をTcomp〜Tcoの温度に加熱して上記拡大磁区を縮小または消滅させるパワーであることが好ましい。
【0024】
さらに、この再生方法において、光磁気記録媒体に外部磁界Hexが加わる条件において、外部磁界Hexと光磁気記録膜とから生じる転写磁界の温度曲線Aと補助磁性膜の垂直方向保磁力の温度曲線Bとが、室温と上記補助磁性膜の補償温度Tcompとの間で交差すると共に、上記温度曲線Aと上記温度曲線Bとが、上記補助磁性膜の補償温度Tcompと上記光磁気記録膜のキュリ−温度Tcoとの間で交差する光磁気記録媒体を用いることが好ましい。
【0025】
上記転写磁界は、光磁気記録膜からの静磁界Htと外部磁界Hexとの和であり、補助磁性膜の垂直方向保磁力が被転写磁区の垂直方向保磁力Hrと該被転写磁区が隣接磁区から受ける交換結合力Hwとの和で表すことができる。
【0026】
記録層に印された記録磁区を再生層へ転写し、そして高い再生信号を得るために、該再生層の転写信号を拡大して読みとる方法は”磁気増幅を行う光磁気システム(MAMMOS)”と呼ばれ、本出願人らにより外部磁界変調再生法を用いて確認されている(特願平8−182901号)。この外部磁界変調再生法では、再生時に、交番磁界を用いて再生層に転写した磁区の拡大及び縮小を実行している。本発明では、上記磁気増幅を行う光磁気システムについて、様々な側面から実験を行い、詳細な分析と検討を進めた結果、直流磁界を用いて、再生光パワーを2種類以上に変調することにより転写された磁区の拡大及び縮小を確実に実現することができる方法を開発することに成功した。
【0027】
本発明の第3の態様に従う光磁気記録媒体の再生方法の原理を説明する。この再生方法には、垂直磁化を有する光磁気記録膜と、臨界温度Tcrを超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する補助磁性膜とを非磁性膜を介して備える光磁気記録媒体を用いる。このタイプの光磁気記録媒体の構造例を図18に示す。図18に示した光磁気ディスク90は、基板1上に、誘電体膜3、補助磁性膜8、非磁性膜3、光磁気記録膜10及び保護膜7を積層して有する。補助磁性膜8は、臨界温度Tcrとそのキュリー温度Tcとの間に補償温度Tcompを持ち、この光磁気記録媒体90は、光磁気記録膜10のキュリー温度Tcoと、補助磁性膜8の臨界温度Tcr、キュリー温度Tc及び補償温度Tcompとの間で、室温<Tcr<Tcomp<Tco<Tcなる関係を満たす。
【0028】
本発明の再生方法において、上記磁気特性を有する光磁気記録媒体90に外部DC磁界を印加しながら光パワー変調された再生光を照射して再生が行われる。ここで、光磁気記録媒体90に一定のDC磁界Hexが記録方向に印加されている状態における、光磁気ディスク90の光磁気記録膜10と補助磁性膜8の磁気特性を図20に示す。図中の磁気温度曲線Aは、光磁気記録膜10(以下、単に記録層という)から補助磁性膜8(以下、単に再生層という)に対して、記録層の磁化によって生成される転写磁界(静磁界)の温度変化を示す。なお、曲線Aの転写磁界は、外部磁界Hexのオフセット分を加えた磁界の大きさを示している。従って、記録層の磁区の向きによって転写磁界全体として、(Hex−Ht)なる大きさの磁界及び(Hex+Ht)なる大きさの磁界が記録層のキュリー温度Tcoを境として存在し、それらが曲線Aを構成する。図中、下向きが記録方向であり、Hexも下向きに印加されている。ここで、外部磁界Hexは、室温における記録層の磁化から生成される初期化方向の静磁界Htの大きさに比べて小さくなるように調整してあるので、転写磁界全体としては、曲線Aで表したように記録層の記録磁区の磁化方向によって上向き(負)および下向き(正)が存在することになる。
【0029】
磁気温度曲線Bは、垂直磁化を有する状態における再生層の垂直方向の保磁力の温度変化を示す。この保磁力には、純粋な垂直方向の再生層の磁区の保磁力Hrに再生層の磁壁(magnetic wall)の生成によって印加されるとみなす仮想的磁界に相当する磁界Hw(別な言い方すると、再生層の面内方向の交換結合磁界)を含めてHr+Hwとして表すものとする。すなわち、Hr+Hwは再生層膜面に垂直な方向における磁化反転を行うに必要な磁界を示すことになる。図20に示したように、再生層の膜面に垂直な方向への磁化は再生層が垂直磁化膜となる臨界温度Tcr(図中、T0)以上で現われ、補償温度Tcompでは再生層の磁化がゼロになるために保磁力が極大を示す。
【0030】
図20の温度曲線A及びBは、同図に示すように三つのエリア(a)〜(c)に分けられる。この3つのエリア(a)〜(c)は、図21(a)に示した本発明の再生方法におけるi)記録層から再生層への磁区転写、ii)再生層での転写磁区の拡大、iii)拡大磁区の消滅の3つのステップにそれぞれ対応する。このため、図20のエリア(a)〜(c)における記録層及び再生層に要求される磁気特性について、図21を参照しながら説明する。なお、図21(a)中に示した記録層及び再生層中の矢印は、各磁区の希土類金属の磁気モーメントの向きを示すものとする。
【0031】
エリア(a)は、本発明の再生方法において記録層から再生層に磁区転写が行われる温度エリアであり、図中、T0〜T1の温度範囲に属する。T0は臨界温度Tcrを意味し、T1は、磁気温度曲線AのHex−Ht側が磁気温度曲線Bと最初に交差する温度である。この温度範囲T0〜T1は、後述するように再生光の光パワーを比較的低パワーに調整することにより達成できる。この温度領域で図21(a)の(1)に示したような磁気転写が実際に行われるためには、この温度領域内で転写磁界の大きさが再生層の垂直方向の保磁力を超えるようにしなければならない。すなわち、記録層に記録されている磁化が↓向き(記録方向)である場合、Hex+Htで表される転写磁界は、Hr+Hwまたは−(Hr+Hw)よりも大きくなるようにしなければならない(磁区転写要件)。また、記録層に記録されている磁化が↑向き(消去方向)である場合、Hex−Htで表される負の転写磁界は、再生層の垂直方向の保磁力Hr+Hwまたは−(Hr+Hw)よりも小さくなるようにしなければならない(磁区転写要件)。
【0032】
一方、図20のエリア(a)において、磁気温度曲線A及びBを比較すると、下記式(a1)〜(a3)の関係が成立することがわかる。
Hr<Hex+Ht−Hw (a1)
−Hr>Hex−Ht+Hw (a2)
Hr>Hex−Ht−Hw (a3)
【0033】
従って、エリア(a)は、上記磁区転写要件を満足し、記録層の記録磁区の磁化方向に拘らず、それを再生層に転写することができる。図21(a)の(1)には、記録層の磁区210に記録されている↓向きの磁化が、再生層の再生光スポット内の温度T0を超える領域に転写されて転写磁区201aを形成している場合を示す。
【0034】
次に、図20のエリア(b)では、図21(2)及び(3)に示したように、再生層に転写された磁区201bの磁区拡大が行われる。この温度領域は、図中、T1〜T2で示した範囲である。温度T2は、磁気温度曲線AのHex−Ht側が磁気温度曲線Bと高温側で交差する温度である。なお、図20に示した磁気特性を有する光磁気ディスクは外部磁界Hexとの関係において、T2が再生層の補償温度Tcompにほぼ一致する(補償温度Tcompと記録層のキュリー温度Tcoの間にあり、極めて補償温度Tcompに近い温度になる)ように調整してある。この温度領域では、図21(a)の(2)に示したように、再生層に転写された磁区201bの両側には、再生光スポット内でT0〜T1に加熱された結果、記録層の上向きの磁区212,212’から磁気転写を受けた磁区203,203’が存在する。再生層に転写された磁区201bが面内方向に拡大を始めるためには、その両側の磁区203、203’の磁区の向きを磁区201bと同様に記録方向(↓向き)に向かせる必要がある。ここで、磁区203,203’は外部磁界Hexに直上の記録層の磁区212からの上向きの静磁界Htを加えた転写磁界(Hex−Ht)(トータルで↑向き)を受けており、一方、磁区201bからの交換結合磁界Hw(下向き)と磁区203,203’自体の磁化を反転させるための保磁力Hrとを含めた垂直方向保磁力を有する。それゆえ、磁区203,203’の転写磁界(Hex−Ht)よりも垂直方向保磁力(Hr+Hw)を大きくすれば、磁区203、203’の磁区は反転する(磁区反転要件)。
【0035】
エリア(b)においては、磁気温度曲線A及びBの大小関係より、以下の関係式が成立することがわかる。
Hr<Hex+Ht−Hw (b1)
−Hr<Hex−Ht+Hw (b2)
Hr>Hex−Ht−Hw (b3)
そして、上式(b2)は、上記の磁区203,203’の転写磁界Hex−Ht(上向き)よりも垂直方向保磁力(Hr+Hw)が大きくなる上記磁区反転条件そのものである。従って、エリア(b)において図21(a)の(3)に示したような再生層の磁区201bの磁区拡大が生じる。(b2)の関係より、温度エリア(b)においては、記録層に記録方向の磁区がない場合には、再生層に下向きの磁区は現われないことを示す。なお、図21(a)の(3)において拡大磁区201bの両側は、T0〜T1の温度領域であるために、記録層の磁区212,212’から磁区転写された↑向きの磁区203,203’が存在する。
【0036】
次に、エリア(c)では、図21(a)の(4)に示したように、転写及び拡大された磁区が反転(消滅)し、消去方向の磁区201cが形成される。この温度領域は、再生層の補償温度を僅かに超えるT2から、記録層のキュリー温度Tcoの範囲である。拡大再生された磁区は、消去方向に再生用磁界を印加することによって、すなわち、再生用磁界として交番磁界を用いることによって消滅または縮小させることができるが、本発明の再生方法ではDC磁界を用い、磁気転写及び拡大のために用いた再生光パワーよりも高いパワーに再生光をパワー変調することによって拡大磁区を消滅させる。なお、後述の本発明の光磁気記録媒体の再生方法の実施例2に述べるように、拡大磁区消滅のために再生光パワーを一層小さく変調してもよい。
【0037】
エリア(c)にて、拡大磁区が反転(消滅)する原理を図22を用いて説明する。図22は、図21(a)の(2)に示した希土類−遷移金属の(TbFeCo合金)記録層の磁区210とそこから磁区転写された希土類−遷移金属(GdFeCo合金)の再生層の磁区201bの希土類金属と遷移金属の副格子磁化の向きと大きさの温度変化を説明する図である。再生層の温度がその補償温度Tcomp未満の場合には、図22(a)に示すように、再生層の希土類金属の磁化が優勢であり、転写元の記録層(遷移金属の磁化が優勢)の磁化方向と平行である。次いで、本発明の再生方法に従い高パワーレーザの照射により再生層が補償温度Tcompを超えると、再生層の遷移金属の磁気モーメントが優勢となる。ここで、図20に示したエリア(C)における再生層と記録層の磁気温度曲線A及びBの大小関係から下記式(C1)及び式(C2)が成立することがわかる。
【0038】
Hr<Hex+Ht−Hw (C1)
Hr<Hex−Ht−Hw (C2)
【0039】
すなわち、磁区201bの保磁力Hrは、磁区201bに作用する記録方向の全磁界(Hex+Ht−HwまたはHex−Ht−Hw)より小さい。その結果、再生層の温度がその補償温度Tcomp以上(厳密にはT2以上)では、図22(b)に示すように、優勢となった遷移金属の磁気モーメントはかかる記録方向に向くように反転する。それゆえ、図21(a)の(3)に示した拡大磁区201bの下向きの希土類金属の磁気モーメントは、エリア(c)の温度、すなわち、補償温度Tcomp以上に加熱された領域で反転して、反転磁区201cが生じる(図21(a)の(4))。なお、反転磁区201cの両側の磁区201d,201d’は、その温度はT1〜T2の間にあるため、拡大磁区201bと同じ磁化方向を有する。
【0040】
本発明に従う再生方法では、上記3つの温度エリア(a)〜(c)は、図21(b)に示すように、再生光パワーを少なくとも2段階のパワーPr及びPrに変調することによって達成することができる。すなわち、再生光の光パワーPrを、上記補助磁性層をTcr〜Tcompの温度に加熱して光磁気記録膜の記録磁区を再生層に転写及び磁区拡大することができるようなパワーとし、再生光の光パワーPrを、上記補助磁性層をTcomp〜Tcoの温度に加熱してかかる拡大された磁区を縮小または消滅させるパワーとすればよい。そして、Pr/Pr再生光パワー変調を再生クロックと同期させて再生光として使用することにより、記録層の記録磁区を、i)再生層への転写、ii)転写磁区の拡大、及びiii)拡大磁区の消滅のステップを経て再生することができる。
【0041】
本発明の第4の態様に従えば、基板上に少なくとも光磁気記録膜を有する光磁気記録媒体において、垂直磁化を有する光磁気記録膜と、臨界温度Tcrを超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する補助磁性膜とを非磁性膜を介して備え、上記光磁気記録膜のキュリー温度Tcoと上記補助磁性膜のキュリー温度Tc及び補償温度Tcompとの間に、室温<Tcr<Tcomp<Tco<Tcなる関係が成立し、上記光磁気記録媒体に外部磁界Hexが加わる条件において、外部磁界Hex及び光磁気記録膜から生じる転写磁界の温度曲線Aと補助磁性膜の垂直方向保磁力の温度曲線Bとが、室温と上記補助磁性膜の補償温度Tcompとの間で交差すると共に、上記温度曲線Aと上記温度曲線Bとが、補助磁性膜の補償温度Tcompと上記光磁気記録膜のキュリ−温度Tcoとの間で交差することを特徴とする上記光磁気記録媒体が提供される。
【0042】
上記本発明の第4の態様に従う光磁気記録媒体は、本発明の第3の態様に従う再生方法に好適な光磁気記録媒体である。この光磁気記録媒体を本発明の第3の態様の再生方法を用いて再生することにより、光スポットよりも小さい微小磁区であっても、他の磁区から独立して且つ増幅された再生信号で再生することができる。
【0043】
本発明の第5の態様に従えば、基板上に、少なくとも光磁気記録膜を有する光磁気記録媒体において、臨界温度Tcr11を超えると垂直磁化膜から面内磁化膜に転移する第1補助磁性膜と、臨界温度Tcr12を超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する第2補助磁性膜とを備えることを特徴とする光磁気記録媒体が提供される。
【0044】
本発明の第5の態様に従う光磁気記録媒体の構造の一例を図23を用いて説明する。図23に示したように、この光磁気記録媒体100は、光磁気記録膜10上に、第1補助磁性膜28、非磁性膜29、第2補助磁性膜24を順次備える。光磁気記録膜10は垂直磁化膜であり、第1補助磁性膜28は臨界温度Tcr11を超えると垂直磁化膜から面内磁化膜に転移する磁性膜であり、第2補助磁性膜24は臨界温度Tcr12を超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する磁性膜である。ここで、第1補助磁性膜の臨界温度Tcr11は、第2補助磁性膜の臨界温度Tcr12よりも高くなるように、それらの磁性膜の材料及び組成が調整されているものとする。ここで、第2補助磁性膜24は再生層として機能する。
【0045】
第5の態様に従う光磁気記録媒体の再生原理を図25(a)〜(c)により説明する。図25(a)は、図23に示した光磁気記録媒体の要部を概念的に示しており、光磁気記録膜10の磁区22に上向きの磁化が記録されているものとする。光磁気記録膜10と第1補助磁性層28とは交換結合しており、磁区22の直下の第1補助磁性層28の磁区28aには磁区22と同様の磁化が転写されている。ここで、再生光が光磁気記録媒体に照射されて温度上昇し始めたときに、第2補助磁性膜24においてその臨界温度Tcr12を超える領域では面内磁化から垂直磁化に転移する。この転移した領域は、図25(b)中の磁区24a,24bに相当する。この転移の際、磁区24aは、直上の記録層10の磁区22及び第1補助磁性膜28の磁区28aからの静磁結合力により、図25(b)に示すように、磁区22と同じ磁化方向に揃う。図25(b)は、再生光により光磁気記録媒体の温度上昇プロセスを示しており、光磁気記録媒体の温度Tが最高到達温度に達する前であって且つTcr12<T<Tcr11の範囲である磁化状態を示している。この状態においては記録層10及び第1補助磁性層28と第2補助磁性層24とが磁気的に結合(静磁結合)していずれも垂直磁化を示している。なお、磁区24aの両隣には、磁区22の両隣及びそれらの直下の第1補助磁性膜28の下向きの磁区からの静磁結合力により下向きの磁化を有する微小磁区24bが存在する。
【0046】
さらに媒体が温度上昇して加熱最高温度に達した場合に、第1補助磁性層28の高温領域が臨界温度Tcr11を超えると、第1補助磁性層28の保磁力が低下して、その高温領域内の第1補助磁性層28は垂直磁化から面内磁化に転移する。この結果、図25(c)に示すような磁区28a’が形成される。
【0047】
ここで、図25(c)に示した媒体の磁化状態と温度分布との関係を図26に示す。この光磁気記録媒体では、前述のようにTcr12<Tcr11であるために、図26に示すように、媒体の温度分布においてTcr12を超える領域はTcr11を超える領域よりも広い。ここで、第2補助磁性層24内のTcr12を超える領域では面内磁化から垂直磁化への転移が起こっており、第1補助磁性層24内のTcr11を超える領域では垂直磁化から面内磁化への転移が起こっている。それゆえ、第2補助磁性層24の垂直磁化の磁区24a’は第1補助磁性層24の面内磁化の磁区28a’よりも大きくなる。ここで、再生光パワー及びTcr12は、再生光照射時に第2補助磁性層24内のTcr12を超える領域が記録層10の磁区よりも大きくなるように調節されている。
【0048】
一方、第1補助磁性層28の磁区28a’は面内磁化を有するため、磁区22の両隣の↓向き磁化による静磁界や漏洩磁界等の光磁気記録膜10から第2補助磁性膜24に及ぼす磁気的影響を遮断することができ、それによって、磁区24a’の拡大を促進する。この磁区拡大により再生信号が増大する。また、第1補助磁性膜28の磁気的遮断機能によりC/Nが向上すると考えられる。第1補助磁性膜28の磁気的遮断機能をより有効にするためには、再生時に第1補助磁性層24内のTcr11を超える領域が記録磁区11よりも大きくなるように第1補助磁性膜28の臨界温度Tcr11及び再生光パワーが選択されるのが好ましい。また、第2補助磁性層24における磁区拡大を通じて再生信号を十分に大きくするためには、再生時に第2補助磁性層24内のTcr12を超える領域が記録磁区11よりも大きくなるように第2補助磁性膜24の臨界温度Tcr12及び再生光パワーが選択されるのが好ましい。さらには、上記磁区拡大の促進効果及び第1補助磁性膜28の磁気的遮断機能を同時に満足させるには、第1補助磁性膜28の臨界温度Tcr11と第2補助磁性膜24の臨界温度Tcr12の関係(ΔT=Tcr11−Tcr12)を適宜調節することが望ましい。
【0049】
第2補助磁性膜24の磁区拡大の効果、すなわち、再生信号強度は、第2補助磁性膜24中の転写磁区が再生光スポット径以上に拡大されたときに最大になる。この状態では、光磁気記録膜10中に記録された磁区の大きさや形状に関係しない、第2補助磁性膜24の性能指数と再生ビーム光のみによって決まる極めて大きい再生出力が得られる。再生後、即ち再生レーザー光の照射部が移動した後は、読み出し部はTcr12以下に冷却され、第2補助磁性膜は面内磁化状態となり、図25(a)の状態に戻る。以上のような再生動作時の温度においても、光磁気記録膜10の保磁力は充分大きいために、磁化として記録された情報は完全に保持されている。
【0050】
本発明の第5の態様に従う光磁気記録媒体において、図24に示すように、光磁気記録膜のキュリー温度Tcoと、上記第1補助磁性膜のキュリー温度Tc及び臨界温度Tcr11と、上記第2補助磁性膜のキュリー温度Tc及び臨界温度Tcr12との間に、室温<Tcr12<Tcr11<Tco、Tc、Tcである関係が成立することが望ましい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光磁気記録媒体及びその再生方法の実施の形態及び実施例を図面を参照しながら説明する。
【0052】
実施例1
〔第1のタイプに属する光磁気記録媒体の製造〕
本発明の第1のタイプに属する光磁気記録媒体の構造の一例を図1を参照しながら説明する。図1に示すように、第1のタイプに属する光磁気記録媒体11は片面に所望のプリフォーマットパターン2が形成された透明基板1とプリフォーマットパターン2上に形成された誘電体膜3と、誘電体膜3上に形成された第2の補助磁性膜4と、第2の補助磁性膜4上に形成された第1の補助磁性膜5と、第1の補助磁性膜5上に形成された光磁気記録膜6と、光磁気記録膜6上に形成された保護膜7とからなる。
【0053】
図1に示した構造において、透明基板1としては、例えばポリカーボネートやアモルファスポレオレフィンなどの透明樹脂材料を所望の形状に成形したものや、所望の形状に形成されたガラス板の片面に所望のプリフォーマットパターン2が転写された透明樹脂膜を密着したものなど光透過性のある任意の基板を用いることができる。誘電体膜3は、膜内で再生用光ビームを多重干渉させ、見かけ上のカー回転角を増加するために設けられるものであって、透明基板1よりも屈折率が大きい、例えばSiNからなる無機誘電体にて形成することができる。保護膜7は、基板1と保護膜7との間に積層される膜体3〜6を腐食等の化学的な悪影響から保護するためのものであって、例えば、SiN膜よりなる。光磁気記録膜6は室温以上の温度で垂直磁気異方性を示す垂直磁化膜であり、例えば、TbFeCo、DyFeCo、TbDyFeCoなどの希土類と遷移金属の非晶質合金が最も好ましいが、Pt膜とCo膜の交互積層体やガーネット系酸化物磁性体などの他の知られた光磁気記録材料を用いることもできる。
【0054】
第1補助磁性膜5及び第2補助磁性膜4は、図3に示すように、室温(R.T.)から室温以上のある臨界温度(TCR)までは面内磁化膜であり、TCR以上では垂直磁化膜に転移する磁気特性を有する。なお、本明細書において室温とは光磁気記録媒体が通常使用される雰囲気温度を示し、使用場所に応じて異なり、特に特定の温度に限定されるものではない。
【0055】
図3は、膜面に垂直な方向に外部磁界を印加した場合のカー効果のヒステリシスループから求めたθKR/θKS(θKR:残留カー回転角、θKS:飽和カー回転角)の温度依存性を示したものである。補助磁性膜の材料としては、例えばGdFeCo、GdFe、GdTbFeCo、GdDyFeCoなどの希土類と遷移金属の非晶質合金が最も好ましい。
【0056】
誘電体膜3、第2補助磁性膜4、第1の補助磁性膜5、光磁気記録膜6及び保護膜7は、例えば、マグネトロンスパッタ装置による連続スパッタリング等のドライプロセスにより形成することができる。
【0057】
以下に、図1に示した第1のタイプに属する光磁気記録媒体、即ち光磁気ディスクサンプルの作製例を示す。サンプルは、プリフォーマットパターンを有するガラス基板上に、SiN膜よりなる誘電体膜と、Gd25Fe56Co19膜(II)よりなる第2補助磁性膜と、Gd28Fe53Co19(I)膜よりなる第1補助磁性膜と、Tb21Fe66Co13膜よりなる光磁気記録膜と、SiN膜よりなる保護膜とを順次スパッタリング法により被着形成して作製した。この場合の各補助磁性膜及び光磁気記録膜の厚さ並びに磁気特性を表1に示す。表中のTはキュリー温度を表し、TCRは、補助磁性膜の面内磁化膜が垂直磁化膜に変化する臨界的な温度を表わす。
【0058】
【表1】
Figure 0003792366
【0059】
上記のように作製したディスクのデータ記録領域に、レーザービームを一定周期のパルス状に照射しながら外部磁界を記録信号に応じて変調させて記録を行う光磁界変調方式を用いて、テスト信号を記録した。記録光パルスのデューティー比は50%であった。種々の記録マーク長の記録マークが形成されるようにテスト信号を与えた。次いで、対物レンズの開口数NA=0.55、レーザー波長780nmのピックアップを用い、線速度7.5m/sec、再生パワー2.5mW、再生時外部印加磁界をゼロとして種々の長さの記録マークを再生した。再生CN比(C:キャリアレベル、N:ノイズレベル)の記録磁区長依存性の測定結果を図4に示す。
【0060】
図4中には、比較のために、2種類の従来型の光磁気記録媒体のデータも併せて示す。点線のデータは、図5Aに示した従来型の光磁気記録媒体の再生データであり、単層の光磁気記録膜16としてTbFeCoを用いている。また一点破線のデータは、図5Bに示したようなTbFeCo光磁気記録膜16とGdFeCo第1補助磁性膜15の2層磁性膜によって構成した磁気超解像(MSR)ディスクについての結果である。図4の結果より、本実施例に係るサンプルディスク(データは実線)では、記録マーク長0.2μmにおいても、2種類の従来ディスクに比べ著しく高い再生C/Nが得られることがわかる。従って、本発明を用いれば、従来の再生限界を超えた極めて微小な記録マークの再生が可能となり、記録密度を向上させることができる。
【0061】
本実施例では、光磁気記録膜6、第1補助磁性膜5及び第2補助磁性膜の3つの磁性膜の膜間を接触させて積層し各膜間を交換結合させたが、光磁気記録膜6と第1補助磁性膜5との間に、または、第1補助磁性膜5と第2補助磁性膜4との間に、若しくはその両方に非磁性膜を挿入し、磁性膜間を静磁結合させてもよい。
【0062】
また、本実施例では、2層の補助磁性膜を用いたが、各層のTCR(面内磁化膜から垂直磁化膜に変化する臨界の温度)をTCR1>TCR2>...>TCRn>室温(但し、TCRiは第i補助磁性膜のTcr)と設定したn(n≧3)層の補助磁性膜を順次積層して用いてもよい。但し、この場合、第1補助磁性膜が光磁気記録膜6側に設けられ、第n補助磁性膜が誘電体膜3側に設けられる。
【0063】
また、再生用光ビームが照射された時の媒体の温度プロファイルを所望の形状にするために、あるいは、温度プロファイルの線速度依存性を小さくするため、適当な熱伝導率の熱制御膜を光磁気記録媒体11の保護膜7上に設けてもよい。
【0064】
また、本実施例では、通常のDCレーザー光で再生を行ったが、後述する実施例2のように最短マーク長に対応する周波数のパルスレーザー光で再生を行い、さらに良好な再生C/Nを得ることも可能である。
【0065】
また、更に良好な再生CN比を得るために、再生光を照射したときの媒体の最高到達温度でカー回転角θkが第2補助磁性膜4のθk以上であり、且つ室温以上で垂直磁化膜である再生用磁性膜を誘電体膜3と第2補助磁性膜4との間に付加してもよい。
【0066】
実施例2
この実施例では、本発明の第2のタイプの光磁気記録媒体に属する媒体及びかかる媒体を用いて再生用レーザー光をパルス状に変化させながら再生を行う再生方法の具体例を示す。光磁気記録媒体として図7に示した構造の媒体を用いる。
【0067】
〔第2のタイプの光磁気記録媒体の製造〕
図7に示した光磁気記録媒体70の透明基板1としてガラス基板を用いた。ガラス基板の片面上には、プリフォーマットパターンが転写された透明樹脂膜2が形成されている。誘電体膜3はSiNからなり、再生用レーザー光を多重干渉させて見かけ上のカー回転角を増加させる膜厚で形成されている。補助磁性膜8は、希土類と遷移金属のフェリ磁性非晶質合金GdFeCoからなり、室温から室温以上のある臨界温度TCRまでは面内磁気異方性を示し、TCR以上では垂直磁気異方性を示す。非磁性膜9はSiNからなり、補助磁性膜8と光磁気記録膜10とを静磁結合させるために挿入されている。光磁気記録膜10は希土類と遷移金属のフェリ磁性非晶質合金TbFeCoからなり、室温からキュリー温度までは垂直磁気異方性を有する。保護膜7はSiNからなり、基板1と保護膜7の間に積層された薄膜を腐食等の化学的な悪影響から保護するために設けられている。
【0068】
誘電体膜3、補助磁性膜8、非磁性膜9、光磁気記録膜10及び保護膜7は、それぞれマグネトロンスパッタ装置を用いた連続スパッタリングにより下記膜厚になるように製膜した。誘電体膜3は60nm、補助磁性膜8は60nm、非磁性膜9は20nm、光磁気記録膜10は50nm、保護膜7は60nmとした。
【0069】
光磁気記録膜10を構成するTbFeCoの組成は原子%比率でTb21Fe66Co13であり、室温からそのキュリー温度TCO=270℃まで遷移金属の磁化成分が希土類の磁化成分よりも優勢な特性を示す。一方、補助磁性膜8を構成するGdFeCoの組成は原子%比率でGd28Fe53Co19であり、単層膜で図10のようなカー回転角の温度特性を示す。
【0070】
図10の横軸は温度、縦軸はカー回転角の温度に対するヒステリシスから求めたGdFeCo補助磁性膜8の残留カー回転角θKRと飽和カー回転角θ KS との比θ KR /θ KS を示す。このグラフより補助磁性膜8が面内磁化膜から垂直磁化膜になる臨界温度TCRは約200℃である。また、補助磁性膜8はキュリー温度Tcが300℃以上であり、室温Troomからキュリー温度までの間に補償温度Tcompを有し、Tcompは約230℃である。補助磁性膜8の臨界温度TCR、補償温度Tcomp及びキュリー温度Tcと光磁気記録膜10のキュリー温度TCOの関係は次のようになる。Troom<TCR<Tcomp<Tc<Tc。この条件を満たすことによって後述するパワー変調したパルス光を用いた再生が極めて容易となる。上記のような構造の光磁気記録媒体70を用いて、図11との関係で本発明の原理説明で説明したような再生方法を実行する。
【0071】
〔再生用レーザーパルス強度決定のための予備実験〕
本発明の再生方法ではレーザーパワーを高パワーPr 及び低パワーPr にパワー変調したパルス光を用いて記録磁区の拡大再生を行う。このため、最初に予備実験を行って光磁気記録媒体70に記録されたデータを再生するためのPr 及びPr の最適レーザーパワーを決定する。この予備実験では、レーザー光波長680nm、開口数0.55の光学系を有する光磁気ドライブを用い、記録及び再生レーザー光を基板1側(補助磁性膜8側)から照射する。再生レーザー光は後述するように連続光を用い、種々のパワーに変更してそれぞれ再生信号波形を観測することとする。
【0072】
予め初期化した光磁気記録媒体70の半径40mmに位置するトラックに線速5.0m/sで、記録パワー4.5mWのレーザー光を周期640ns、パルス幅213nsで変調し、記録磁界500Oeを印加しながら光変調記録を行った。これにより、トラック上に3.2μmピッチで長さ約1.6μmの記録マークを連続的に記録した。
【0073】
次いで、記録マークが記録されたトラックを種々の再生パワーPrの連続光で再生した。再生用パワーの最適変調条件を求めるために、連続光のパワーPrの値をPr=1.0mW、1.5mW、1.9mW、2.0mW及び2.1mWの5段階に変更してそれぞれ再生信号を求めた。なお、再生時には光磁気記録媒体70に磁界を積極的に印加しなかったが、光学ヘッドのアクチュエーターから漏れ磁界(約80Oe)が記録方向に発生していた。
【0074】
上記各再生パワーPrで光磁気記録媒体70の記録トラックを再生したときの再生波形を図12A〜Eに示す。このとき、再生波形自体にトリガーをかけて波形をオシロスコープで観察した。図12Aは再生光パワーPr=1.0mWのときの再生波形を示し、記録マークのパターンに応じた再生信号が立ち上がっているのがわかる。グラフ上、ベースラインが消去状態を示し、立ち上がっているピーク信号が記録状態を示す。記録状態と消去状態間の振幅は50mVであった。さらに再生光パワーをPr=1.5mWに上げると、図12Bに示すように、信号振幅が約200mVに増大した。図12Bの波形から、波形の一部の領域では隣接するピーク信号が記録状態側でつながっていることがわかる。
【0075】
図12Cは、再生パワーがPr=1.9mWの再生信号波形であり、ピーク信号が記録状態側(図の上方)で完全につながった波形を示している。これは、後述するように補助磁性膜にて磁区拡大が起こり、かかる拡大された磁区が再生光スポットによるトラックの走査とともにトラック上を移動していることを示す。さらに、再生光パワーを上げてPr=2.0mWにすると、図12Dに示すように、つながっていたピーク信号が途切れ始める。この場合、ピーク信号のつながり部とベースラインとの振幅Hploは約350mVであった。さらに、再生光パワーをPr=2.1mWまで上げると、図12Eに示すようにピーク信号が完全に途切れ、記録マークパターンに応じた波形となる。図12Eにおいて、記録状態と消去状態の振幅は200mVであった。
【0076】
ここで、図12A〜図12Eの再生波形が得られる場合の補助磁性膜8及び非磁性膜9を介して積層された光磁気記録膜10の磁化状態を図13〜15の概念図を用いて説明する。図13は、図12Aの信号波形が得られる場合(再生光パワーPr=1.0mW)における再生光スポット80と、それが照射されている補助磁性膜8及び光磁気記録膜10の磁化の向きの関係を示している。最初に、図13Aに示したように再生光スポット80が照射された補助磁性膜8はその温度がその臨界温度TCR以上に上昇する領域で垂直磁化となるとともに、光磁気記録膜10の磁化が静磁結合により補助磁性膜の領域83aに転写される。図13Bに示したように再生光スポット80が記録方向に磁化が向いた磁区(記録磁区)82の直下に来ると、記録磁区82の磁化が静磁結合により補助磁性膜8に転写される。この場合、再生光パワーPrが1.0mWと低いため、光スポット80内の補助磁性膜8の中央部、すなわち領域83bだけが臨界温度TCRを超えることになり、補助磁性膜8の転写された領域83bの記録磁区82の幅よりも拡大しない。このため、図12Aに示したように再生信号強度は小さい。再生光スポット80が記録磁区82を通り過ぎると転写領域83cは、その直上の光磁気記録膜10の磁区からの転写により直上の光磁気記録膜10の磁区と同じ磁化の向きを有する。
【0077】
図14は、図12Cの信号波形が得られる場合(再生光パワーPr=1.9mW)における再生光スポット80と、それが照射されている補助磁性膜8及び光磁気記録膜10の磁化の向きの関係を示している。この場合、再生光パワーが1.9mWと比較的大きいため、図14Aに示したように再生光スポット80が照射された補助磁性膜8のスポット内全域の領域85aが臨界温度TCR以上に上昇して垂直磁化となる。そして、光磁気記録膜10からの静磁結合により光磁気記録膜10の磁区が領域85aに転写される。再生光スポット80の走査により、図14Bに示したように再生光スポット80が記録磁区82の直下に来ると、記録磁区82の磁化が転写される。この場合、臨界温度TCR以上に上昇した補助磁性膜8の領域85bは記録磁区82よりもその幅が大きいために、記録磁区82は補助磁性膜8内で拡大されて転写されたことになる。この磁区拡大により大きな信号波形が得られる。さらに、再生光スポット80が記録磁区82を通り過ぎた後も領域85cは85bと同じ磁化状態を維持しているため、図12Cに示したような再生信号ピークがつながった波形が得られる。
【0078】
図14の場合、再生光スポット80が記録磁区82を通り過ぎた後も領域85cが領域85bと同じ磁化状態を維持しており、補助磁性層に転写され且つ磁区転写され且つ磁区拡大された記録磁区が光スポットにより引きずられている減少が生じている。この理由は以下のように考えられる。再生レーザビームが照射されることにより補助磁性層8は臨界温度以上に昇温して垂直磁化膜となり、垂直方向の保磁力Hcを有するようになる。また、再生の際に、補助磁性膜8には光ヘッドのアクチュエータ等からの漏洩磁界による外部磁界Hex(この場合、記録方向、即ち、下向きとする)と、補助磁性膜8の臨界温度以上の温度にて光磁気記録膜10の磁化が発生する静磁界Hsが印加される。その大きさは光磁気記録膜10の磁化の方向によりHex+Hs(記録磁区の磁化が下向き)、Hex−Hs(記録磁区の磁化が上向き)となる。外部磁界Hex及び静磁界Hsの合成磁界と補助磁性膜8の保磁力Hcの大きさの関係において、Hcの絶対値が(Hex+Hs)の絶対値または(Hex−Hs)の絶対値より大きい場合に、補助磁性膜8に形成された磁化はそのまま維持されて、図14Cに示したように一旦補助磁性膜に転写された磁区は光磁気記録膜10に記録磁区の存在しない領域に再生スポットが進行しても再反転をおこさない。上記Hcは補助磁性膜8が垂直磁化状態での垂直方向の保磁力であり、図13の場合には、低再生パワーにより転写を受ける補助磁性層の温度が比較的低いため補助磁性層のHcは図14の場合よりも低くなり、補助磁性膜8に転写された磁区は光磁気記録膜10に記録磁区の存在しない領域に再生スポットが進行すると再反転をおこす(図13C)。
【0079】
図15は、図12Eの信号波形が得られる場合(再生光パワーPr=2.1mW)における再生光スポット80と、それが照射されている補助磁性膜8及び光磁気記録膜10の磁化の向きの関係を示している。この場合、再生光パワーが2.1mWと大きいため、再生光スポット80が照射された補助磁性膜8のスポット内の前方部の領域87aは臨界温度TCR以上に上昇するために垂直磁化を示し、直下の磁気記録層10の磁区転写を受けるが、スポット内の中央及び後方部は前方部よりも加熱されて補助磁性膜8の補償温度Tcompを超えるために磁化が反転した状態になっていると考えられる(磁化反転する詳細な理由は第2の再生方法の具体例にて後述する)。このため、図15Aに示したように再生光スポット80内の補助磁性膜の前方部の領域87aのみが上向きの磁化を有し、中央及び後端部は下向きの磁化となる。
【0080】
次いで、再生光によるトラックの走査によりスポット80が記録磁区82の直下に来ると、記録磁区82の磁化が補助磁性膜8の前方部の比較的温度の低い領域87bにのみに転写される。従って、磁区拡大は起こらず、再生信号強度は図12Cの場合のような大きな信号は得られない。再生光スポット80が記録磁区82を通り過ぎると転写領域87cには、光磁気記録膜10からの静磁結合により直上の光磁気記録膜10の磁区と同じ向きの磁化とその反転磁区が混在する。
【0081】
図14(図12C)に示した場合には、上述のように補助磁性膜8内で磁区拡大が起こっているために、再生信号強度が増大する。そして、記録磁区82から拡大された磁区85bは再生光スポット80とともに拡大したまま移動する。しかしながら、図14Cにおいて記録磁区82と隣接する磁区84の直下に再生光スポット80の中心が来たときには、磁区84の磁化を補助磁性層8を通じて再生するためには、前記拡大磁区の光スポットによる引きずられ現象を防止しなければならない。すなわち、記録磁区82の拡大磁区85cを消去して、磁区84の磁化を補助磁性層8に転写し次いで拡大する必要がある。
【0082】
一方、図13(図12Aに対応)及び図15(図12Eに対応)にそれぞれ示したように再生パワーPrが比較的小さい場合(再生光パワーPr=1.0mW)及び比較的大きい場合(再生光パワーPr=2.1mW)には、再生光スポット80が記録磁区82を通り過ぎた後に、記録磁区82から転写された磁区83b(87b)は消滅している。すなわち、拡大磁区の引きずられ現象は生じない。従って、再生光として、磁区拡大が生じる再生光パワーPr=1.9mWと磁区拡大が生じない再生光パワーPr=2.1mW(または1.0mW)の間を再生クロック周期またはその整数倍の周期でパワー変調したパルス光を用いることによって、磁区拡大した後、再生光スポットの中心が光磁気記録膜の記録磁区から隣の記録磁区上に移動したときにかかる拡大磁区を消滅させることができる。
【0083】
上記の予備実験の結果より再生用レーザー光を、図12CでのPr=1.9mWと図12EでのPr=2.1mWとの間で強度変調したパルス光として与えれば、再生信号は図12Cと図12Eで得られた再生信号強度の差として検出されることになる。これは図12DのHpl0=350mVに相当すると考えられ、図12A及び12Eで得られた振幅に比べて一層大きな振幅での再生が可能であることを示唆している。このため以下の再生光パルスを用いた再生実験において高パワーPr Pr =2.1mW、低パワーPr Pr =1.9mWにそれぞれ設定することにする。
【0084】
〔パワー変調したパルス光による光磁気記録媒体の第1の再生方法〕
本実施例で製造した光磁気記録媒体70を初期化した後、半径40mmに位置するトラックに線速5.0m/sで、記録パワー6.3mWのレーザー光を周期320ns、パルス幅53.3nsで変調し、記録磁界500Oeで光変調記録を行った。これは3.2μmピッチで約1.6μmの記録マークを連続的に記録したことに相当する。
【0085】
こうして記録された光磁気記録媒体70の記録トラックに、上記予備実験で決定された再生光レーザーパワーPr =2.1mW、Pr =1.9mWにパワー変調されたパルスレーザーを照射して再生する。再生用レーザーパルスは図16に示すように、記録マークの前端から10nsのパルス幅でPr =2.1mW、その後150nsのパルス幅でPr =1.9mWとなるように調整した。再生時には積極的に磁界を印加しなかったが、光学ヘッドのアクチュエーターから漏れ磁界(約80Oe)が記録方向に発生していた。
【0086】
得られた再生信号波形を図17に示す。記録マークに対応して振幅約220mVの再生信号が得られた。また、同じ条件で記録したマークパターンを一定の再生パワーPr=1.0mW及びPr=2.1mWの連続光で再生したところ、それぞれ振幅100mV及び170mVであった。これらの結果より、再生光をパルス状にパワー変調して再生を行うことで、記録磁区を再生クロックに同期した形で拡大して転写するとともにその直後に消滅させることができ、拡大時にはより高いC/Nで再生を行うことができることがわかる。
【0087】
本実施例では、高パワーPr =2.1mW、低パワーPr =1.9mWの各パルスレーザー強度を選択し、低パワーパルスを拡大磁区発生用、高パワーパルスを拡大磁区消滅用にそれぞれ用いた。しかしながら、高パワーパルスを拡大磁区発生用としてPr =1.9mW、低パワーパルスを拡大磁区消滅用としてPr =1.0mWにすることも可能である。原理説明で用いた図11に示した例では後者の場合を示す。さらに、高パワーパルスと低パワーパルスのパルス幅の比、すなわち、デューティーは図11や図16に示した場合に限定されず、増大された再生信号を得るために適宜変更することができる。
【0088】
本実施例2で製造した光磁気記録媒体においても、再生用光ビームが照射された時の媒体の温度プロファイルを所望の形状にするために、あるいは、温度プロファイルの線速度依存性を小さくするため、適当な熱伝導率の熱制御層を光磁気記録媒体の保護膜上に設けてもよい。また、更に良好な再生CN比を得るために、再生光を照射したときの媒体の最高到達温度でカー回転角θkが補助磁性膜のθk以上であり、且つ室温以上で垂直磁化膜である再生用磁性膜を誘電体膜3と補助磁性膜8との間に付加してもよい。
【0089】
実施例3
〔パワー変調したパルス光による光磁気記録媒体の第2の再生方法〕
前記再生方法の実施例では、再生時に磁気ヘッドから発生した漏れ磁界が光磁気記録媒体に印加されていたが、この実施例では記録磁区の磁化方向と同方向にDC磁界を積極的に印加しながら再生を行う。なお、この実施例においても、転写磁区の拡大及び消滅を実現するためにレーザービーム強度を変調して再生を行った。
【0090】
最初に本実施例で用いた光磁気ディスクについて説明する。図18に示すように、光磁気デイスク90は、ポリカーボネート基板1上に、SiN誘電体層3、GdFeCo合金からなる再生層(補助磁性膜)8、SiN非磁性層9、TbFeCo合金からなる記録層(光磁気記録膜)10及びSiN保護層7を積層して有する。TbFeCo記録層10とGdFeCo再生層8とは非磁性層9を介して静磁的に結合されている。GdFeCo再生層8は、室温で面内磁化膜であり、臨界温度Tcrを超えると垂直磁化膜へと変化する磁性膜である。この実施例で用いたGdFeCo再生層8の臨界温度Tcrは175℃であり、キュリ−温度Tcは340℃である。また、GdFeCo再生層8は、臨界温度Tcrとキュリ−温度Tcとの間に補償温度Tcomp=240℃を持つ。TbFeCo記録層10は、そのキュリ−温度Tcoが270℃、その補償温度Tcomp’が室温以下のものを用いた。すなわち、Troom<Tcr<Tcomp<Tco<Tcなる関係があり、それらの温度関係は図20で説明した通りである。
【0091】
上記のような光磁気ディスク90の記録層10に記録された記録信号を再生する際に、前記本発明の再生方法の原理で説明したように、再生パワーを再生クロックまたはその整数倍(記録クロックまたはその整数倍)に同期して二種類のパワーに変調する。拡大された磁区の縮小、消滅は、前述のように低パワ−と高パワ−のいずれでも起き得るが、この実施例では、磁区の転写及び拡大のために再生光を低パワーに変調し、拡大磁区の縮小または消滅のための再生光を高パワ−に変調した。このパワ−レベルは、光磁気ディスクに再生光を照射して記録トラックを走査している間に適用する。
【0092】
記録及び再生用の光源として、波長680nm、レンズ開口数0.55の光ヘッドを用いた。図18に示した光磁気ディスク90への記録は光パルス強度変調法を用いた。記録は、線速度が5m/s、記録周期320ns、記録レ−ザ−パワ−7.5mW、パルス幅53.3ns、記録磁界500Oeの条件で行った。0.8μmの記録磁区が、1と0等のデ−タに対応して0.8μm間隔で記録された。記録された磁区を記録信号とともに、図19(a)に示す。
【0093】
この記録磁区を、次の再生条件で再生した。線速度を5.0m/sとし、再生レーザーパワーは磁区拡大のための低パワーPr として1.5mW、磁区縮小(または消滅)のための高パワーPr として3.5mWの二つのパワ−レベルに変調した。再生光パワーのタイミング信号を図19(b)に示す。再生パワーの変調周期は160nsであり、低パワーPr で150ns照射し、高パワーPr で10ns照射した。再生磁界は一定の直流磁界を用い、記録方向へ約80Oe印加した。この磁界は、第1の再生方法(実施例2)のように対物レンズ・アクチュエータ−からの漏洩磁界によっても代用が可能である。
【0094】
図19(c)に得られた再生波形を示す。この再生波形より、記録磁区が存在している部分だけで信号が上昇しており、記録磁区が存在しないところでは信号は上昇していないことがわかる。これは、再生光が記録トッラクの記録磁区が存在している部分を走査しているときだけ、再生層において記録磁区が転写、拡大していることを意味する。さらに、再生信号は、磁気超解像モ−ド、すなわち、磁区転写された磁区が拡大されずに再生された場合の再生信号の約1.5倍の大きさに増幅されていた。この再生信号の増幅効果はさらに微細な記録磁区において顕著に効果を現し、0.4μm以下の微小磁区を記録した場合においても飽和振幅(再生層の全ての磁化が下向きの場合の再生信号と再生層の全ての磁化が上向きの場合の再生信号との差)に対して80%(対飽和振幅比)の再生信号出力を得ることができた。
【0095】
この実施例の再生条件は、前記原理説明で用いた図20との関係で次のように説明することができる。すなわち、パワー変調した再生光の低パワーPr で図20の磁区転写及び磁区拡大が起こる温度領域(エリア(a)及び(b))、即ち、Tcr=175℃〜Tcomp=240℃にまで再生層が加熱され、高パワーPr で図20の磁区消滅が起こる温度領域(エリア(c))即ち、Tcomp(240℃)を超える温度からTco=270℃までに加熱されている。また、記録方向へ印加した直流磁界約80Oeは、磁気温度曲線A及びBを図20のような関係に位置させている。すなわち、この実施例で用いた光磁気ディスクの磁気温度特性と印加した直流磁界との関係は、以下の要件(3) 及び(4) を満足している。以下に、この実施例で説明した再生方法に必要な要件を列挙する。なお、この実施例で用いた光磁気記録媒体の再生層と記録層自体の磁気特性は、前述のように以下の(1)及び(2)の要件を満足している。
【0096】
(1)少なくとも室温で膜面方向に磁化される再生層が、垂直方向へ磁化する臨界温度Tcrとキュリ−温度Tcoの間に補償温度Tcompを有すること。
(2)記録層のキュリ−温度Tcoが再生層の補償温度Tcompと再生層のキュリ−温度Tcoとの間の温度にあること。
(3)記録方向において外部磁界Hexが加わる条件下において、磁気温度曲線Aと磁気温度曲線Bとが、室温と再生層の補償温度Tcompとの間(T1)で交差すること。
(4)磁気温度曲線Aと磁気温度曲線Bとが、再生層の補償温度Tcompと記録層のキュリ−温度Tcoの間(T2)で交差すること。
【0097】
この実施例では図18に示した前記特定の材料を用いて光磁気ディスクを構成し、DC磁界=80Oeを記録方向に印加することにより上記要件(1)〜(4)を満足させたが、この要件(1)〜(4)を満足させることができる材料及び積層構造を有する光磁気記録媒体並びに再生時に印加する外部磁界の大きさであれば、任意のものを用いることができる。再生時に印加するDC磁界は記録方向のみならず、消去方向であってもよい。
【0098】
本発明の再生方法においては、DC磁界の下で、再生光パワー強度を変調することによって、(a)磁区転写、(b)磁区拡大及び(c)転写磁区の消滅のプロセスを実行している。これらのプロセスが行われる時間は、記録層、再生層の磁気特性のみならず、記録層、再生層、非磁性層、誘電体層、保護層、及びその他の積層可能な磁性層または非磁性層、基板等の温度上昇速度や各層間の伝熱速度にも依存する。これらの速度は、それらの層を構成する材料の熱伝導性、厚み、積層構造等を適宜変更することによって調節することができ、それによって所望の再生アクセス速度に対応させることができる。
【0099】
再生層(補助磁性層)に隣接する誘電体層及び非磁性層は適度な断熱性を持つことが好ましいが、その断熱性の程度は、記録再生のアクセス速度、或いは記録媒体における記録再生の線速度の大きさ、再生層及び記録層の熱伝導性とを組み合わせた熱特性との関係で適宜調整することができる。
【0100】
上記実施例では光磁気記録媒体の再生層(補助磁性層)が誘電体層と非磁性層によって挟まれている構造を示したが、上記再生層(補助磁性層)に接して面内方向の磁気異方性を有する磁性体を積層してもよい。この磁性体は、そのキュリー温度まで面内方向の磁気異方性が優勢で、そのキュリー温度は再生層のキュリー温度とほぼ等しいことが望ましい。かかる磁性体を再生層に接して積層することにより、再生時の転写磁区におけるブロッホラインの発生を抑制し、その抑制作用により再生時のノイズを低減することができる。かかる磁性体の材料としては、Pt−Co合金、例えば、Coを25原子%含むPt−Co合金やGdFeCo合金等を用いることができる。なお、かかる磁性体は再生層の上側あるいは下側のいずれの側に接して積層してもよい。
【0101】
実施例1ではパルス光を照射しながら記録信号に応じて印加磁界の極性を変調する光磁界変調方式を用い、実施例2及び3ではDC磁界を印加しながら記録信号に応じて光強度を変調する光変調方式を用いてそれぞれ記録を行ったが、通常のDC光を用いた磁界変調記録方式、光変調記録方式並びに光磁界変調方式のいずれの方式を用いてもかまわない。
【0102】
実施例4
〔パワー変調したパルス光による光磁気記録媒体の第3の再生方法〕
この実施例では、実施例3と同様に記録磁区の磁化方向と同方向にDC磁界を積極的に印加しながら再生を行う。なお、この実施例においても、転写磁区の拡大及び消滅を実現するためにレーザービーム強度を変調して再生を行った。
【0103】
最初に、本実施例で用いた光磁気ディスクについて説明する。図23に示すように、光磁気ディスク100は、ポリカーボネート基板1のプリフォーマットパターン2が形成された面上に、SiN誘電体層3、GdFeCo合金からなる再生層(第2補助磁性膜)24、SiN非磁性層29、GdFeCo合金からなる磁性層(第1補助磁性膜)28、TbFeCo合金からなる記録層(光磁気記録膜)10及びSiN保護層7を積層して有する。TbFeCo記録層10とGdFeCo再生層24とは非磁性層9とGdFeCo合金からなる磁性層(第1補助磁性膜)28を介して静磁的に結合されている。
【0104】
GdFeCo合金からなる再生層(第2補助磁性層)24は、室温で面内磁化を示し、室温よりも高い臨界温度Tcr12を超える温度で垂直磁化膜に転移する磁性膜である。この実施例では、再生層24としてGd28Fe56Co16が用いられており、室温で面内磁化膜であり、臨界温度Tcr12=175℃を超える温度で垂直磁化膜へと変化する。この再生層24のキュリー温度Tcは340℃である。
【0105】
GdFeCo合金からなる磁性層(第1補助磁性層)28は、室温で垂直磁化を示し、室温よりも高い臨界温度Tcr11 より上の温度で面内磁化膜に転移する磁性膜である。
この実施例では、GdFeCo合金からなる磁性層28としてGd21Fe64Co15が用いられており、室温で垂直磁化膜であり、臨界温度Tcr11=200℃を超えると面内磁化膜へと変化する。この磁性層28のキュリー温度Tcは、350℃であった。
【0106】
記録層10は、そのキュリー温度Tcoが270℃、補償温度が室温以下のTbFeCo合金を用いた。すなわち、記録層10のキュリー温度Tcoと、再生層24のキュリー温度Tc及び臨界温度Tcr12と、磁性層28(第1補助磁性膜)のキュリー温度Tc及び臨界温度Tcr11との間に、室温<Tcr12<Tcr11Tco、Tc、Tcである関係が成立する。この温度関係を図24に示す。図24は、図20と同様に、光磁気記録媒体100に一定のDC磁界Hexが記録方向に印加されている状態における、光磁気記録媒体100の記録層10、再生層24及び磁性層28(第1補助磁性膜)の磁気特性を示す。図示のように、再生層24と磁性層28(第1補助磁性膜)とが垂直磁化を示す温度範囲は、比較的狭い温度範囲(図中矢印)にて重複している。この温度範囲では、記録層10及び磁性層28と再生層24とが磁気的に結合することが可能である。
【0107】
図23に示した光磁気ディスク100の再生原理は図25を用いて先に説明した通りである。すなわち、光磁気ディスク100の再生層24に再生光が照射され、再生層24の温度が上昇して、臨界温度Tcr12を超える領域は面内磁化から垂直磁化に転移すると同時に、記録層10の磁化は再生層24に静磁結合力により転写される。ここで、臨界温度Tcr12を超える領域は記録層10の磁化情報が記録されている磁区よりも大きくなるように再生光パワー及びTcr12が調整されているために、再生層24の垂直磁化を有する部分は転写元である記録層10の磁区よりも拡大する(図25(c)参照)。一方、光磁気ディスク100の温度分布により臨界温度Tcr12を超える領域の内側に存在する臨界温度Tcr11を超える領域では磁性層28の垂直磁化が面内磁化に転移している。磁性層28の面内磁化領域は記録層10から再生層24に向かう、特に非記録方向の漏洩磁界を遮断することになる。このため、再生層24の拡大は促進されると同時に、再生層24からの再生信号のC/Nが向上する。本発明において、Tcr12<Tcr11を満足することが要求されるが、Tcr12とTcr11の温度差ΔTは、再生信号C/Nが最良となり且つ磁区拡大による再生信号強度が最大となるように選択するのが好ましい。
【0108】
上記のような光磁気ディスク100の記録層10に記録された記録信号を再生する際に、前記本発明の再生方法の原理で説明したように、再生パワーを再生クロックまたはその整数倍(記録クロックまたはその整数倍)に同期して二種類のパワーに変調する。拡大された磁区の縮小、消滅は、前述のように低パワ−と高パワ−のいずれでも起き得るが、この実施例では、磁区の転写及び拡大のために再生光を低パワーに変調し、拡大磁区の縮小または消滅のための再生光を高パワ−に変調した。このパワ−レベルは、光磁気ディスクに再生光を照射して記録トラックを走査している間に適用する。
【0109】
図23に示した光磁気ディスク100の構造において、非磁性層29と第1補助磁性層28との間に、熱拡散層を形成してもよい。この熱拡散層は非磁性層26と第1補助磁性層28との間に蓄積される熱を膜の面内方向に拡散することによって磁区の拡大を促進する働きをする。熱拡散層として、Al、AlTi、AlCrやAg、Au、Cu等の熱伝導性の高い材料を用いることができる。
【0110】
【発明の効果】
本発明では、光磁気記録媒体を室温以上で垂直磁化膜である光磁気記録膜と、室温からある臨界温度(TCR)までは面内磁化膜でありTCR以上で垂直磁化膜となる1層以上の補助磁性膜を用い、それらの磁性膜の磁気特性が所定の関係になるように調整したため、この光磁気記録媒体を用いて、記録磁区を拡大して再生することが可能となり、再生信号強度を増大して良好なC/Nを得ることができる。
【0111】
本発明の光磁気記録媒体の再生方法は、通常のマスク機能を備えた磁気超解像型の光磁気記録媒体に比べて磁気的マスクによる再生出力に寄与する光量の低下が少ないかまたは光量が低下しない超解像再生が可能となる。本発明の光磁気記録媒体及びその再生方法を用いれば、再生光スポット径に比べて極めて微小な記録マークも独立して再生することができるため、光磁気記録媒体の記録密度を著しく向上させることができる。さらに、磁区拡大再生を用いているので、再生信号を増幅することができ、再生信号のC/Nを大幅に向上することができる。
【0112】
本発明の再生方法は、再生光パワーを光変調することにより磁区転写、転写磁区の拡大及び拡大磁区の消滅のプロセスを確実に実行することができるため、磁区拡大再生法を実用化するために極めて有用な方法である。また、再生時に印加する磁界はDC磁界でよく交番磁界を用いる必要がないため、安価で簡単な構造の再生装置を用いて再生操作を行うことができる。
【0113】
本発明の光磁気記録媒体は、光磁気記録膜のキュリー温度Tcoと補助磁性膜のキュリー温度Tc及び補償温度Tcompとの間に、室温<Tcr<Tcomp<Tco<Tcなる関係が成立し、光磁気記録媒体に外部磁界Hexが加わる条件において、外部磁界Hex及び光磁気記録膜から生じる転写磁界の温度曲線Aと補助磁性膜の垂直方向保磁力の温度曲線Bとが、室温と上記補助磁性膜の補償温度Tcompとの間で交差すると共に、上記温度曲線Aと上記温度曲線Bとが、補助磁性膜の補償温度Tcompと上記光磁気記録膜のキュリ−温度Tcoとの間で交差するように構成されているので、パワー変調された再生光を用いてDC外部外部磁界の下で再生したときに、i)光磁気記録膜から補助磁性膜への磁区の転写、ii)転写磁区の拡大及びiii)拡大磁区の消滅のプロセスを確実に行うことができる。従って、この光磁気記録媒体を用いることにより、再生光スポットより小さな微小磁区を記録信号として記録した後、かかる微小磁区を他の磁区と区別して且つ増幅された再生信号で検出することができる。それゆえ、本発明の光磁気記録媒体は、高密度光磁気記録媒体として極めて有用である。
【0114】
本発明の光磁気記録媒体は、臨界温度Tcr11を超える領域で垂直磁化膜から面内磁化膜に転移する第1補助磁性層と臨界温度Tcr12を超える温度で面内磁化から垂直磁化に転移する第2補助磁性層とを同時に備えるため、第1補助磁性層で記録層から第2補助磁性層への漏洩磁界を遮断しつつ、第2補助磁性層で記録層10の磁化情報を拡大して再生することができる。それゆえ、第2補助磁性層から再生される信号強度が増大するとともに、再生信号のC/Nが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の第1のタイプに属する光磁気記録媒体の積層構造を概念的に示す断面図である。
【図2】 図2は、本発明の第1のタイプに属する光磁気記録媒体の再生前の各層の磁化状態を示す概念図(A)及び光磁気記録媒体の再生時の各層の磁化状態を示す概念図(B)である。
【図3】 図3は、本発明の光磁気記録媒体を構成する補助磁性膜の磁気特性を示す図である。
【図4】 図4は、本発明の実施例1で製造した光磁気記録媒体及び従来型の光磁気記録媒体における再生C/Nと記録マーク長の関係を示すグラフである。
【図5】 図5は従来型の光磁気記録媒体の積層構造を示す断面図(A)及び磁気超解像型の光磁気記録媒体の積層構造を示す断面図(B)である。
【図6】 図6は、本発明の第2のタイプに属する光磁気記録媒体の再生前の各層の磁化状態を示す概念図(A)及び光磁気記録媒体の再生時の各層の磁化状態を示す概念図(B)である。
【図7】 図7は、本発明の第2のタイプに属する光磁気記録媒体の積層構造を概念的に示す図である。
【図8】 図8は、本発明の第1のタイプの光磁気記録媒体に再生光を照射したときの読み出し部の温度プロファイルを示すグラフである。
【図9】 図9は、本発明の第2のタイプの光磁気記録媒体の補助磁性膜の温度及び保磁力のプロファイル並びに光磁気記録膜の磁化のプロファイルを示すグラフである。
【図10】 図10は、本発明の実施例2で製造した光磁気記録媒体の補助磁性膜のカー効果の温度特性を示すグラフである。
【図11】 図11は、本発明の光磁気記録媒体の再生方法の原理を説明するタイミングチャートである。
【図12】 図12A〜Eは、本発明の実施例2の光磁気記録媒体を種々の再生パワーの連続光で再生した場合にオシロスコープ上で観測された再生信号波形を示すグラフである。
【図13】 図13A〜Cは、図12Aに示した信号波形が得られる際の光磁気記録媒体の各層の磁化状態を説明する概念図である。
【図14】 図14A〜Cは、図12Cに示した信号波形が得られる際の光磁気記録媒体の各層の磁化状態を説明する概念図である。
【図15】 図15A〜Cは、図12Eに示した信号波形が得られる際の光磁気記録媒体の各層の磁化状態を説明する概念図である。
【図16】 図16は、実施例2の予備実験で決定した再生パワーPr 及びPr で変調された再生用パルス光の記録マークに対する照射タイミングを示す図である。
【図17】 図17は、図16に示した再生用パルス光を用いて再生することによって得られた再生信号波形を示すグラフである。
【図18】 図18は、本発明の第2の再生方法に用いられる光磁気記録媒体の積層構造を概念的に示す図である。
【図19】 図19は、本発明の光磁気記録媒体の再生方法の原理を説明するタイミングチャートである。
【図20】 図20は、本発明の光磁気記録媒体の光磁気記録層と光磁気再生層の磁気温度特性を示す図である。
【図21】 図21は、本発明の光磁気記録媒体に光変調された再生光を照射することによって光磁気記録層の記録磁区を光磁気再生層から再生するプロセスを説明する図であり、(a)は記録層及び再生層の磁区の向きを示し、(b)は光変調された再生光パワーを示す。
【図22】 図22は、磁区消滅の原理を説明する図であり、(a)は補償温度未満における記録層及び再生層の副格子磁化を示し、(b)は補償温度を超える温度における記録層及び再生層の副格子磁化を示す。
【図23】 図23は、本発明の実施例4で製造した光磁気記録媒体の積層構造を示す図である。
【図24】 図24は、本発明の実施例4で製造した光磁気記録媒体の光磁気記録層、第1補助磁性層及び第補助磁性層の磁化特性を示す図である。
【図25】 図25は、本発明の実施例4で製造した光磁気記録媒体の再生原理を説明する図であり、(a)は再生光照射前、(b)は再生光照射による温度上昇過程において記録層の磁化が第2補助磁性層に転写される状態を示し、(c)は第2補助磁性層に転写された磁区が拡大した状態を示す。
【図26】 図26は、図25(c)に示した媒体の磁化状態と温度分布との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
3 誘電体膜
4 第2補助磁性膜
5 第1補助磁性膜
6 光磁気記録媒体
8 補助磁性膜(再生層)
10 光磁気記録膜
80 再生光スポット
82 記録磁区
85b 拡大磁区
90,100 光磁気記録媒体
201a 転写磁区
201b 拡大磁区
201c 消滅磁区
210 記録磁区

Claims (4)

  1. 基板上に少なくとも光磁気記録膜を有する光磁気記録媒体において、
    垂直磁化を有する光磁気記録膜と、臨界温度Tcrを超えると面内磁化膜から垂直磁化膜に転移する補助磁性膜とを非磁性膜を介して備え、
    上記光磁気記録膜のキュリー温度Tcoと上記補助磁性膜のキュリー温度Tc及び補償温度Tcompとの間に、室温<Tcr<Tcomp<Tco<Tcである関係が成立し、
    上記光磁気記録媒体に外部磁界Hexが加わる条件において、外部磁界Hex及び光磁気記録膜から生じる転写磁界の温度曲線Aと補助磁性膜の垂直方向保磁力の温度曲線Bとが、室温と上記補助磁性膜の補償温度Tcompとの間の温度Tで交差すると共に、上記温度曲線Aと上記温度曲線Bとが、補助磁性膜の補償温度Tcompと上記光磁気記録膜のキュリ−温度Tcoとの間の温度Tで交差することを特徴とする上記光磁気記録媒体。
  2. DC磁界を印加しながら、再生クロックと同一周期または整数倍の周期で少なくとも2種類の光パワーPr及びPrにパワー変調された再生光が照射されることによって、上記光磁気記録膜の記録磁区を上記補助磁性膜に転写し、磁区拡大し、縮小または消滅させる工程を経て記録信号が再生されることを特徴とする請求項に記載の光磁気記録媒体。
  3. 上記再生光の光パワーPr が上記補助磁性膜をTcr〜Tcompの温度に加熱して光磁気記録膜の記録磁区を補助磁性膜に磁気転写及び磁気拡大するパワーであり、上記再生光の光パワーPr が上記補助磁性膜をTcomp〜Tcoの温度に加熱して上記補助磁性膜に転写及び拡大された磁区を縮小または消滅させるパワーであることを特徴とする請求項に記載の光磁気記録媒体。
  4. 上記温度曲線Aと上記温度曲線Bとが交差する温度Tが、補助磁性膜の補償温度Tcompに近接した温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光磁気記録媒体。
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