JP3791888B2 - 顕微鏡用ステージ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、線状部材により駆動する顕微鏡用ステージに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の顕微鏡におけるステージの概略構成は、顕微鏡本体に固定された下ステージと、この下ステージに対してボールガイド、コロガイド、シャフトガイド等の機構により直動案内される上ステージと、この上ステージに対して前記直動案内の方向に垂直な方向へ同機構で直動案内されるクレンメル保持部材からなる。そして、このクレンメル保持部材に固定された標本保持具(クレンメル)が二方向へ案内されることにより、前記標本保持具に保持された標本が下ステージに対して相対的に平面上を移動可能になり、所望の位置に位置される。
【0003】
また駆動系については、上ステージに回動可能に設けられた同軸上の二つの軸の一端側に操作ハンドルが配設され、他端側にはラック・アンド・ピニオンやワイヤーとプーリー、またはベルトとプーリーといった伝達機構が設けられている。そして、操作ハンドルが回転操作されると、前記伝達機構により上ステージ及びクレンメル保持部材が直動案内され、下ステージに対する標本保持具の平面内での相対移動が可能になる。
【0004】
上ステージ及びクレンメル保持部材を移動させる手段としてラック・アンド・ピニオン機構を用いる場合、標本を微小量だけ移動させるときに、ラックとピニオンとの間にガタがあると、そのガタの分だけハンドルの微小な回転に標本が追従せず、所望通りの微小量の移動ができないことがある。このため、従来の顕微鏡のステージにおいては、このガタをなくすため、ラックをピニオンに押し付けることで、微小量の動きに追従させようとしていた。上記の問題の解決方法の一つとして、以下に示すようなワイヤーを駆動系に用いた提案がされている。
【0005】
特開平8−304708号公報には、上ステージの移動をワイヤーで駆動することを特徴とした顕微鏡用ステージが開示されている。この構成では、ワイヤーの一端が下ステージに植設されたピンに取り付けられ、その他端が引張バネの一端に取り付けられている。引張バネの他端は下ステージに植設された前記とは別のピンに取り付けられている。上ステージに回転可能に取り付けられているプーリーには、ワイヤーが一巻き分だけ巻き付けられている。ハンドルによりプーリーを回転させると、引張バネの引張力によってワイヤーとの間でスリップを生じることなく回転するとともに、プーリーはワイヤーに巻き付けられた状態でY方向に移動する。プーリーは上ステージに取り付けられているので、プーリーの移動に伴い、上ステージもY方向に移動する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、顕微鏡の操作性が重要視されるのにしたがい、ステージ周辺に配置されている顕微鏡の操作部位(例えば焦準ハンドル等)と、検鏡時に使用頻度が高い標本移動操作ハンドル(ステージ操作ハンドル)の位置に対する重要度が増している。
【0007】
しかし、上述した従来のワイヤー駆動式ステージにおいては、ステージ操作ハンドルと同軸に設けられるプーリーを、ステージ移動方向に沿って張り渡されたワイヤーロープに接するように配置しなければならないため、ステージ操作ハンドルの配置の自由度が限られる。よって、ステージの操作性の向上のために、操作ハンドル位置の改善が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、操作ハンドルを操作しやすい位置で軽快且つ回転ムラなく操作することができる顕微鏡用ステージを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の顕微鏡用ステージは以下の如く構成されている。
【0010】
(1)本発明の顕微鏡用ステージは、固定ステージと、この固定ステージに対して直線移動可能に支持された可動ステージと、この可動ステージを前記固定ステージに対して相対的に移動させるために前記可動ステージに設けられた操作ハンドルと、前記可動ステージに回動可能に支持された第1のプーリー及び第2のプーリーと、前記固定ステージ上で前記可動ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、を備え、前記第1のプーリーは、前記駆動力伝達部材における前記可動ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、前記第2プーリーは、前記第1プーリーから離れる方向に配置され、前記第1プーリーと前記第2プーリーの間で且つ前記第1プーリーと前記第2プーリーとを結ぶ一つの外接線にのみ外接する位置に前記操作ハンドルと同軸な巻取り部を設け、前記駆動力伝達部材は、前記第1プーリー、前記巻取り部、及び前記第2プーリーに順に掛けられ、且つ前記巻取り部には前記駆動力伝達部材を少なくとも1回巻き付けている。
【0011】
(2)本発明の顕微鏡用ステージは、固定ステージと、この固定ステージに対して直線移動可能に支持された可動ステージと、この可動ステージを前記固定ステージに対して相対的に移動させるために前記可動ステージに設けられた操作ハンドルと、前記可動ステージに回動可能に支持された第1のプーリー及び第2のプーリーと、前記固定ステージ上で前記可動ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、を備え、前記第1のプーリーは、前記駆動力伝達部材における前記可動ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、前記第2プーリーは、前記第1プーリーから離れる方向に配置され、前記第1プーリーと前記第2プーリーの間の位置に前記操作ハンドルと同軸な巻取り部を設け、前記駆動力伝達部材は、前記第1プーリー、前記巻取り部、及び前記第2プーリーに順に掛けられるとともに、前記巻取り部には前記駆動力伝達部材が少なくとも1回巻き付き、且つ前記巻取り部は前記駆動力伝達部材にその往路と復路で接する。
【0012】
上記手段を講じた結果、それぞれ以下のような作用を奏する。
【0013】
(1)本発明の顕微鏡用ステージによれば、固定ステージに固定された駆動力伝達部材をプーリーにより外側に引き出すことで、操作ハンドルの位置は前記駆動力伝達部材の固定位置により決定されず、任意に設定できる。また、2個のプーリーと操作ハンドルの位置を適正な位置に設定することで、前記駆動力伝達部材の張力により前記操作ハンドルの軸に加わる不均一なラジアル方向の負荷を均一にし、操作ハンドルを操作した際に軽快で且つ回転ムラのない操作が可能となる。
【0014】
(2)本発明の顕微鏡用ステージによれば、駆動力伝達部材に張力を加えた場合、操作ハンドルの巻取り部に接する駆動力伝達部材による張力は、釣り合いがとれた状態となる。そのため、操作ハンドルのラジアル方向への不均一な負荷をなくすことができ、操作ハンドルを操作した際に、軽快且つ回転ムラの無い操作が可能になる。さらに、巻取り部の直径を、各プーリーの直径に影響されずに設定できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す図であり、図1は斜視図、図2は一部断面図である。図1及び図2に示す下ステージ1は図示しない顕微鏡本体に取り付けられている。下ステージ1には、その左右の側面部にボールガイドを構成するためにガイド溝部1a,1bが設けられている。また、下ステージ1上には上ステージ2が配置されている。上ステージ2にはガイド溝部2aが設けられており、このガイド溝部2aは下ステージ1に設けられた一方のガイド溝部1aと対向している。この対向するガイド溝部1aと2aの間には、ボール間隔が常に一定に保たれる多数の図示しないボール(後述するボール4と同様のもの)が、図示しないケーシング(後述するケーシング3と同様のもの)を介して対向するガイド溝部1aと2aの間を転がるように挟み込まれている。
【0016】
また、上ステージ2にはガイド部材5が配設されており、このガイド部材5にはガイド溝部5aが設けられている。このガイド溝部5aは下ステージ1に設けられた他方のガイド溝部1bと対向している。この対向するガイド溝部1bと5aの間には、前述と同様にボール間隔が常に一定に保たれる多数のボール4が、ケーシング3を介して対向するガイド溝部1bと5aの間を転がるように挟み込まれている。これにより、顕微鏡本体に固定された下ステージ1に対してガイド溝方向(Y方向)へ相対的に移動可能に上ステージ2が支持されている。
【0017】
一方、上ステージ2には、Y方向に対して直交する方向(X方向)に、ガイド溝部2b及び2cが設けられている。この上ステージ2の溝部には、一体に固定されたガイド部材6とクレンメル保持部材8が配設されている。ガイド部材6にはガイド溝部6aが設けられている。このガイド溝部6aはガイド溝部2bと対向している。この対向するガイド溝部2bと6aの間には、前述と同様にボール間隔が常に一定に保たれる多数の図示しないボール(上記ボール4と同様のもの)が、図示しないケーシング(上記ケーシング3と同様のもの)を介して対向するガイド溝部2bと6aの間を転がるように挟み込まれている。
【0018】
また、クレンメル保持部材8にはガイド溝部8aが設けられている。このガイド溝部8aは、上ステージ2のガイド溝部2cと対向している。この対向するガイド溝部2cと8aの間には、前述と同様にボール間隔が常に一定に保たれる多数の図示しないボール(上記ボール4と同様のもの)が、図示しないケーシング(上記ケーシング3と同様のもの)を介して対向するガイド溝部2cと8aの間を転がるように挟み込まれている。これにより、ガイド部材6とクレンメル保持部材8が一体となって上ステージ2に対してX方向に相対的に移動可能に支持されている。また、このクレンメル保持部材8には、標本を挟み込む構造をなすクレンメル9が固定されている。
【0019】
図3は、上記顕微鏡用ステージの構成を示す底面図であり、図4は図3のA−A断面図、図5は図3のB−B断面図である。図8は、図4,図5に示されるハンドル機構部の拡大図である。図4,図5,図8に示すように、上ステージ2には後述する二つのハンドル軸を支持するための中空円筒状の固定軸10が垂直に固定されており、固定軸10の外側の同軸上に中空円筒状をなしその内径が固定軸10の外径より大きいYハンドル軸11が配設されている。このYハンドル軸11の一端(上ステージ2側)には、後述する駆動力伝達部材としての線状部材(例えば、ワイヤーロープ)を巻き付けるプーリー部11aが設けられており、他端にはこのハンドル軸11を回転操作するためのYハンドル12が取り付けられている。Yハンドル軸11は、軸受けを介して固定軸10に対して回転可能に支持されている。この軸受けには、プーリー部11a側に転がり軸受けとしてベアリング13を配設している。Yハンドル12側では、ハンドル軸11の内径部と固定軸10の外径部にそれぞれ段付き部を形成してYハンドル軸11と固定軸10とが嵌合するY嵌合部51を設け、この部分にグリスなどの潤滑剤を使用して、滑り軸受けを構成している。
【0020】
また、固定軸10外径部の前記段付き部の下側にはネジ部10aが形成されており、このネジ部10aに中空円筒状の固定ガイド14がねじ込まれている。なお、図8におけるプーリー部11a側を上、Yハンドル12側を下としている。この固定ガイド14の上側端面は、Yハンドル軸11内側のY嵌合部51の下側にあるスラスト支持部15と対向しており、そこに摺動性に優れたワッシャー16が挿入されている。スラスト支持部15をワッシャー16を介して固定ガイド14で支持することにより、スラスト方向の軸受けが構成される。固定ガイド14は、回転させることにより軸方向の位置を調整可能であり、スラスト方向のガタがないように位置調整した後、セットビス14cによって固定する。
【0021】
一方、固定ガイド14の外径部の外径が一段大きくなった部分二個所にネジ部14a、14bが設けられ、このうちネジ部14aにYトルク調整ハンドル17がねじ込まれている。Yトルク調整ハンドル17の上側端面はYハンドル軸11の下側端面と対向しており、その部分に波ばね等の弾性部材18と摺動性に優れたワッシャー19が挿入されている。Yトルク調整ハンドル17を回転させると、弾性部材18によってYハンドル軸11とワッシャー19との接触面に作用する押圧力が変化するので、Yハンドル12の回転力量を調整することができる。
【0022】
Yトルク調整ハンドル17を最下位置にすると、Yハンドル軸11とワッシャー19とが離れて弾性部材18による押圧力が作用しなくなるので、Yハンドル12の回転力量は前述したベアリング13、Y嵌合部51及びスラスト支持部15での抵抗力のみとなる。なお、力量調整後は、固定環53を下側からYトルク調整ハンドル17に押し当てて固定環用セットビス54で固定し、Yトルク調整ハンドル17の回転を防止する。
【0023】
一方、固定軸10の内側の同軸上に、Xハンドル軸20が配設されている。このXハンドル軸20の一端(上ステージ2側)には、後述する駆動力伝達部材 (例えば、ワイヤーロープ等の線状部材)を巻き付けるプーリー部20aが設けられ、他端にはこのハンドル軸を回転操作するXハンドル21が取り付けられている。Xハンドル軸20は、軸受けを介して固定軸10に対して回転可能に支持されている。
【0024】
X方向の操作ハンドルも、上述したYハンドルと基本的に同様の構成となっており、軸受けには、プーリー部20a側には転がり軸受けとしてベアリング22を配設し、Xハンドル21側は、Xハンドル軸20の外径部と固定軸10の内径部にそれぞれ形成された段付き部によって嵌合するX嵌合部52を設け、この部分にグリスなどの潤滑剤を使用して、滑り軸受けを構成している。
【0025】
スラスト方向の軸受けも上述したYハンドルと同様であり、Xハンドル軸20にねじ込まれたスラストリング23と固定軸10とのスラスト支持部24に、摺動性に優れたワッシャー25を挟み込んで支持する構造になっている。Xハンドルの回転力量調整機構も同様に、固定ガイド14にねじ込まれたXトルク調整ハンドル26とXハンドル21との間に、波ばね等の弾性部材27と摺動性に優れたワッシャー28が挿入されており、Xトルク調整ハンドル26を回転させるとXハンドル21の回転力量を調整できる。Xトルク調整ハンドル26を最上位置にすれば、Xハンドル軸20とワッシャー28とが離れて弾性部材27による押圧力が作用しなくなるので、Xハンドル21の回転力量は前述のベアリング22、X嵌合部52及びスラスト支持部24での抵抗力のみとなる。
【0026】
次に、2本のハンドル軸11、20と下ステージ1及びクレンメル保持部材8との伝達について述べる。図2、図3に示すように、X方向については、ステージ中央に対して操作ハンドル軸とほぼ反対側の位置に、Xプーリー33を有するX張力調整部材36が配設されている。X張力調整部材36は、固定用の長穴が形成された平板部36aと、この平板部36a上に回転可能に軸支されたXプーリー33とからなっており、固定ビス36bで上ステージ2に固定されている。その固定位置は、長穴の範囲内でX方向に調節可能である。また、X方向に直線移動可能にガイドされているガイド部材6の側面2個所に、ワイヤーロープなどの線状部材32の端部を固定する引っ掛かり部6b,6cが設けられている。
【0027】
線状部材32の両端部は、引っ掛かり部6b,6cに引っ掛けて固定できるようにループが形成されている。引っ掛かり部6bを出た線状部材32は、Xハンドル軸20のプーリー部20a一巻きされてX張力調整部材36のXプーリー33に掛けられて、他端が再びガイド部材6に設けられた引っ掛かり部6cに掛けられている。X張力調整部材36をXハンドル軸20に対しX方向に沿って反対側に引っ張って固定することで線状部材32に所定の張力が与えられ、Xプーリー20aは線状部材32によって締め上げられた状態となっている。
【0028】
一方、Y方向については、下ステージ1のY方向に沿った側面部の一端側に引っ掛かり部1c、1dが設けられており、他端側にY張力調整部材38が取り付けられている。Y張力調整部材38は、固定用の長穴が形成された平板部38aと、この平板部38a上に植設されたピン38bとからなっており、固定ビス38cで下ステージ1に固定されている。その固定位置は長穴の範囲内でY方向に調節可能である。
【0029】
また上ステージ2には、前述した3本の同軸のハンドル軸10、11及び20と異なる位置、詳しくは、引っ掛かり部1c、1dとピン38bとの間に線状部材を張り渡した時にその線状部材と外径がほぼ接する位置に、プーリー29が配設されている。プーリー29のY方向の位置は、操作ハンドルとXプーリー33の軸心を結ぶ線上にある。このプーリー29は、上ステージ2下面に植設された軸31に対して、ベアリング等の転がり軸受け30で回転可能に支持されている。Y軸駆動用の線状部材37も、両端にループが形成され、一端が引っ掛かり部1cに掛けられている。
【0030】
この線状部材37は、プーリー29によりYハンドル軸11の方向に折り曲げられ、Yハンドル軸11のプーリー部11aに一巻きされ、再びプーリー29によりY方向に折り曲げられる。さらに線状部材37は、下ステージ1に対してY方向に位置調整可能な張力調整部材38のピン38bに引っ掛けられて折り返し、プーリー29にて一巻きし、下ステージ1に設けられた引っ掛かり部1dにその他端が掛けらている。張力調整部材38を、Y方向に沿ってプーリー29に対して反対側に引っ張り、下ステージ1にビス38cで固定することにより、Yハンドル軸11のプーリー部11aは線状部材37により常に締め上げられる。
【0031】
上記では、線状部材32,37の掛け方の一例を示したが、プーリー29及びプーリー部11a,20aにおける巻き数を複数にしたり(多重巻き)、プーリー29とプーリー部11aの間、引っ掛かり部1c,1dとプーリー部29の間、プーリー部29と突起部38a間を多段掛け(複数回掛ける)にしても良い。また、線状部材32及び37の両端部を無くしたエンドレスの線状部材を用いても良い。
【0032】
以下、線状部材の伝達機構について具体的に説明する。
【0033】
図6は、線状部材の伝達機構を示す模式図である。図6において図1〜図5と同一な部分には同一符号を付してある。本顕微鏡用ステージは、上下方向に重ねられた上ステージ2と下ステージ1とからなり、上ステージ2は下ステージ1に対して直動案内され移動可能である。
【0034】
上ステージ2には、プーリー29が回動可能に取り付けられ、プーリー29とは別の位置にYハンドル軸11が回動可能に取り付けられている。下ステージ1の側面には、細長い線状部材37の両端部が引っ掛けられて固定されている。線状部材37は、一端部からプーリー29にて折り曲げられ、Yハンドル軸11のプーリー部に一巻き巻き付けられている。そして線状部材37は、再びプーリー29にて折り曲げられ、下ステージ1の両端を引っ掛けた位置とは別の移動方向の位置に設けられた引っ張り調整可能な張力調整部材38で折り返され、プーリー29にて一巻きされ、他端部に固定されている。プーリー29とYハンドル軸11は、線状部材37により常に締め付けられており、Yハンドル軸11を回転させることによって、上ステージ2を下ステージ1に対して移動させることができる。
【0035】
一方、上ステージ2の上側には上記クレンメル9が配置され、このクレンメル9はクレンメル保持部材8に固定されている。クレンメル保持部材8は、上ステージ2に対してガイド機構を介して直動案内されている。細長い線状部材32は、その両端がクレンメル保持部材8に固定され、プーリー33とXハンドル軸20により直動案内方向に張られて配設されている。線状部材32は、上ステージ2に回動可能に取り付けられたYハンドル軸11と同軸に配設されたXハンドル軸X20のプーリー部に一巻き巻き付けられている。またプーリー33を、Xハンドル軸20から離れる方向に線状部材32を引っ張るよう固定することにより、線状部材32が常に張られ、Xハンドル軸20が締め付けられる。よって、Xハンドル軸20を回転させることにより、クレンメル保持部材8及びクレンメル9を上ステージ2に対して移動させることができる。
【0036】
次に、以上のように構成された顕微鏡用ステージの動作を説明する。顕微鏡本体に固定された下ステージ1に対して上ステージ2をY方向に移動させたい場合には、ステージ操作用のYハンドル12を回転させる。Yハンドル12を回転させると、Yハンドル12に固定されているYハンドル軸11及びそのプーリー部11aも共に回転する。Yハンドル軸11のプーリー部11aにはワイヤーロープ等の線状部材37が巻き付けられているので、プーリー部11aの回転によりワイヤーロープ37が連続的に送られる。
【0037】
連続的に送り出されたワイヤーロープ37は、プーリー29により折り曲げられ、Y方向に方向転換されて移動する。Yハンドル軸11のプーリー部11aは固定軸10と軸受けを介して上ステージ2に固定されているので、プーリー部11aの移動に伴い、上ステージ2に固定されているガイド部材5、及び上ステージ2に設けられたガイド溝部2aが下ステージ1とボール4の直動案内されて移動し、これにより上ステージ2がY方向に移動する。
【0038】
ワイヤーロープ37は張力調整部材38により張られており、Yハンドル軸11のプーリー部11aを締め付けているので、プーリー部11aとワイヤーロープ37との間に十分な摩擦力が生じる。よって、回転時にプーリー部11aとワイヤーロープ37との間にスリップが生じることはなく、上ステージ2をプーリー部11aの回転量に追従させて正確に移動させることができる。上ステージ2の移動は、Yハンドル軸11のプーリー部11aの回転方向及び回転量に応じて決定される。
【0039】
プーリー部11aの回転力の大きさは、プーリー部11aとワイヤーロープ37との間に働く摩擦力によって決定される。高い回転力を維持するには、プーリー部11aにブラスト処理やゴム塗装等、摩擦係数を高める抵抗処理を施したり、張力調整部材38によりワイヤーロープ37の張力を高める等の高張力化が有効である。摩擦係数を高める抵抗処理が望ましく、高張力化の場合は張力を高くするとYハンドル軸11が倒れ、軸受けにラジアル方向の偏荷重が掛かるので、回転のスムーズさに悪影響を及ぼす。しかし、Yハンドル軸11を回すことでステージを移動させるためには、ある程度の張力は必要である。
【0040】
上ステージ2に固定された固定軸10に対して、Yハンドル軸は上ステージ2側にベアリング13を介する一方、Yハンドル12側は嵌合にして且つこのY嵌合部51に潤滑剤を入れている。これによって、ワイヤーロープ37の張力によってYハンドル軸11の回転軸に対して垂直な方向に力が作用する付近をベアリング13で支持しているので、回転の円滑なYハンドル12が得られる。それ故、円滑にハンドルを操作できる。Yハンドル12で説明したが、Xハンドルも同様である。
【0041】
一方、上ステージ2に対してクレンメル保持部材8をX方向に移動させたい場合には、ステージ操作用のXハンドル21を回転させる。Xハンドル21を回転させると、Xハンドル21に固定されているXハンドル軸20及びそのプーリー部20aも共に回転する。プーリー部20aが回転すると、このプーリー部20aに巻き付けられているワイヤーロープ等の線状部材32がプーリー部20aの回転方向に応じて送られ、その結果として、ガイド部材6が線状部材32に引張されて移動する。クレンメル保持部材8はガイド部材6に固定的に取り付けられているので、ガイド部材6、クレンメル保持部材8及びクレンメル保持部材8に固定されたクレンメル9が、上ステージ2に対してX方向に移動する。
【0042】
ワイヤーロープ等の線状部材32は、張力調整部材36を介してXプーリー33により張られ、Xハンドル軸21のプーリー部20aを締め付けているので、プーリー部20aと線状部材32との間に十分な摩擦力が生じ、回転時にプーリー部20aと線状部材32との間にスリップが生じることはなく、ガイド部材6をプーリー部20aの回転量に追従させて正確に移動させることができる。ガイド部材6の移動はプーリー部20aの回転方向及び回転量に応じて決定される。また、プーリー部20aの回転力の大きさや伝達機構の剛性は前述したY方向の場合と同様である。
【0043】
上ステージ2に取り付けられたハンドルを操作するときには、無意識のうちに上ステージ2をY方向に押したり、引いたりしている。このハンドル操作によって、上ステージの挙動に連動して加わった荷重分だけ伝達機構の線状部材37に伸びを生じている。ハンドルの操作が終了してハンドルから手を離すと、線状部材37への荷重が解放され、線状部材37は元の長さに戻る。そのときに上ステージ2が連動して移動してしまい、標本が狙った位置からズレて停止する。このように、ステージの停止精度に関わる要因として、伝達機構、すなわち上ステージ2と下ステージ1を連結している線状部材37の伸び(剛性)がある。
【0044】
線状部材37(ワイヤーロープ)は、両端を下ステージ1の引っ掛け部1c,1dに引っ掛けて段差を付け、且つ張力調整部材38で線状部材37(ワイヤーロープ)のほぼ中間で折り返す。この折り返した線状部材37(ワイヤーロープ)は、プーリー29で2回巻き付けや折り返しがなされている。これによって、上ステージ2と下ステージ1が実質的に2本の線状部材(ワイヤーロープ)で連結されることになり、ハンドル操作時に付加された荷重が2つのワイヤーロープに分散されて、1本当たりの荷重が小さくなる。したがって、ワイヤーロープの伸びが小さくでき、伸びによる位置ずれが半減できて、停止精度が向上する。
【0045】
さらに、線状部材37(ワイヤーロープ)に張力を付与する張力調整部材38は、ピン38bで線状部材37(ワイヤーロープ)を折り返すようにしているので、折り返したそれぞれの線状部材37(ワイヤーロープ)に対してほぼ均一に荷重がかかる。この例を2段とすると、ワイヤーロープの折り返しを増やし、1本のワイヤーロープで3段、4段とすれば、さらに1本あたりの荷重を減少できる。2段以上にワイヤーロープを折り返して掛けることを、多段掛けと呼ぶことにする。
【0046】
この例では、クレンメル9と上ステージ2がY方向の駆動機構に対する負荷になっているが、X方向の移動部材がクレンメル9ではなくて上ステージ2と同様のステージ板として構成された3枚重ねステージにおいては、駆動機構の負荷が増えるので、、3段、4段といった多段掛けが有効となる。
【0047】
ワイヤーロープの伸びを減少させるには、太いワイヤーロープを使ったり、複数のワイヤーロープの両端を固定し、各々にプーリーを介する方法もある。複数のワイヤーロープを使うときには、それぞれのワイヤーロープの荷重又は張力を合わせる調整機構を用いるとよい。なお、顕微鏡では、対物レンズの倍率が100倍の時には、位置合わせ精度は数μm(ミクロンメータ)程度が必要であるので、上述したワイヤーロープの伸びが観察に影響する。対物レンズの倍率が約20倍以下となれば、ワイヤーロープの伸びの影響が少なく、折り返しなしで1本のワイヤーロープでも実用上使用可能なレベルである。
【0048】
図7は、多段掛けにせずワイヤーロープ1本で駆動力を伝達するようにした伝達機構の変形例を示す模式図である。図7において図6と同一な部分には同一符号を付してある。本顕微鏡用ステージは、上下方向に重ねられた上ステージ2と下ステージ1とからなり、上ステージ2は下ステージ1に対して直動案内され移動可能である。
【0049】
上ステージ2には、プーリー29が回動可能に取り付けられ、さらに下ステージ1の側辺に対してほぼ直交する方向に、Yハンドル軸11が回動可能に取り付けられている。下ステージ1には、細長い線状部材371の両端部が引っ掛けられて固定されている。線状部材37は、一方の端部からプーリー29にて折り曲げられ、Yハンドル軸11のプーリー部に一巻き巻き付けられた後、再びプーリー29にて折り曲げられ、他方の端部に至っている。
【0050】
前述した特開平8−304708号のような従来の技術において、ステージ操作ハンドルの位置をステージの外側に配置する場合などに、下ステージや上ステージが大きなものとなり、ステージ周辺の操作性に悪影響を与える問題については、図7に示したようにワイヤーロープ等の線状部材をプーリーを介して折り曲げることで解決できる。また、標本を所望の位置で確実に停止させるための停止精度の問題については、ワイヤーロープの張力を高めたり、伸びの小さい(バネ定数の低い)ワイヤーロープを使用することで解決できる。
【0051】
しかし、ワイヤーの張力を高くし、かつプーリーを介してワイヤーロープを折り曲げる構造にすると、ワイヤーロープの張力によりハンドル軸がプーリー側に引っ張られて倒れ、ハンドル軸の軸受けにラジアル方向の力が掛り、スムーズな回転ができにくくなる。この結果、標本を位置合わせしようと操作した場合に、軋みやスティックスリップ等が発生し、標本位置合わせが困難になる場合がある。このような問題への対処を要する場合は、図1〜図6に示した構成にすることで解決できる。
【0052】
図8は、ステージ操作ハンドルの構成を示す断面図である。Yハンドル軸11及びXハンドル軸20は、上ステージ2に固定された固定軸10の外側と内側の同軸上にそれぞれ軸受けを介して回動可能に配置されている。そして、Xハンドル軸20及びYハンドル軸11のプーリー部側をベアリング13等の転がり軸受けとし、線状部材32及び37の張力による影響を抑える。また、Xハンドル21側の軸受けを滑り軸受けとして、Yハンドル12及びXハンドル21の嵌合部における固定軸10の周囲にグリス等の潤滑剤を介している。これにより、Yハンドル12とXハンドル21の回転に粘性を与え、それらの動き出しと回転を滑らかにしているとともに、Yハンドル12の上下方向への動き出しとスライドを滑らかにしている。
【0053】
このように顕微鏡用ステージを構成することにより、下ステージ1と上ステージ2の伝達部材である線状部材としてのワイヤーロープを、1本の線状部材37を折り返し2本として支持することにより、ワイヤーロープ1本あたりの荷重を小さくできるので、張力をスムーズな回転ができなくなるほど高くかけなくてもハンドルの剛性をあげることができるとともに、操作ハンドル軸に潤滑剤を介した滑り軸受けを使用することにより、粘性を持った良好な回転フィーリングが得られる。
【0054】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るステージ操作ハンドルの構成を示す断面図である。図9において図8と同一な部分には同一符号を付してある。上記第1の実施の形態との構成上の違いは、Yハンドル軸11及びXハンドル軸20の両端をベアリング等の転がり軸受け40,40で保持し、さらに、その間のYハンドル12及びXハンドル21の嵌合部における固定軸10の周囲にグリス等の潤滑剤を介在させた点にあり、その粘性により両ハンドル軸11,20の回転フィーリングを良好にしている。その他の構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0055】
(第3の実施の形態)
図10,図11は、本発明の第3の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す断面図である。図10,図11は、それぞれ図4,図5に対応しており、図10,図11において図4,図5と同一な部分には同一符号を付してある。
【0056】
図10,図11では、下ステージ1の張力調整部材38上に、ネジ42によりブレーキ部材41が取り付けられている。このブレーキ部材41は長方状の平板411からなり、その一端部が突起部412をなし、その他端部がネジ42により張力調整部材38上に固定されている。突起部412は、上ステージ2の裏面に設けられた図示しない長方状の保護部材に接触している。よって、上ステージ2がY方向へ移動、停止の際、ブレーキ部材41の突起部412が上ステージ2の裏面に接触している。
【0057】
このような構成によれば、上ステージ2が移動し停止したときに、線状部材37に移動方向とは逆の方向へ戻る力(復元力)が生じた場合でも、突起部412と上ステージ2の裏面における保護部材との間で生じる摩擦力により、上ステージ2が逆方向へ戻されることはない。これにより、上ステージ2をY方向の所望の位置で、より精確に停止させることができる。また、同様にブレーキ部材41を張力調整部材36に設けることにより、上ステージ2をX方向の所望の位置で、より精確に停止させることができる。
【0058】
(第4の実施の形態)
図12は、本発明の第4の実施の形態に係る線状部材を用いた伝達機構を示す模式図である。上記したように、ワイヤーロープ等の線状部材37は、プーリー29とYハンドル軸11のプーリー部11aにて、1回もしくは複数回巻き付けられていて、ハンドルを回転させると、線状部材37はプーリー29とプーリー部11aに対して相対的に上下方向(軸方向)に移動する。よって、線状部材37をプーリーに複数回巻き付ける場合、単に線状部材の巻き幅分だけでなく、それに加えてプーリー上での線状部材の移動量を考慮して、図12に示すように線状部材37に段差量ΔTを設けないと、プーリー上で線状部材37同士が擦れ合い、スムーズな上下移動ができなくなり、ステージの移動に悪影響を与えることになる。このときの段差量ΔT(線状部材の巻き幅とプーリー上での移動量を加えた量)は下式で表される。
【0059】
ΔT=t[n+L/{π(d+t)}]
ここで、tはワイヤーロープ等の線状部材37の線径、nは線状部材37の巻き付け回数、Lはステージの移動ストローク、dはプーリー径である。これにより求められた段差量ΔT以上の段差を設けて線状部材37を巻き付けることで、線状部材37同士の擦れを無くすことができる。
【0060】
なお、他の各実施の形態において、プーリーに線状部材を巻き付ける部位に本第4の実施の形態の内容を適用することで、線状部材の擦れをなくして移動精度、停止精度の高いステージを構成できる。
【0061】
(第5の実施の形態)
図13は、本発明の第5の実施の形態に係るワイヤ駆動の顕微鏡用ステージを下方から見た略式平面図である。図13では、上ステージ101の移動をワイヤーで駆動することを特徴とし、ステージの位置を他の操作部位から離し操作性の向上を図るために、操作ハンドル102の位置をステージの左右端近傍から遠ざけるよう構成してる。すなわち、第一プーリー103を有する操作ハンドル102を、第二プーリー104の位置から離れた適切な位置に設け、ワイヤー105の一端を下ステージ106に植設されたピン107に固定する。そして、ワイヤー105を第二プーリー104により操作ハンドル102の方向へ折り曲げ、第一プーリー103で折り返し、再び第二プーリー104により折り曲げ、その他端を下ステージ105に植設されたピン108に固定するよう構成されている。なお、図13のワイヤーの掛け方は、図7の略式斜視図と同じである。
【0062】
この構成の場合、ワイヤーの張力に配慮が必要である。張力が弱い場合、上ステージ101が停止するときに、ワイヤーによる上ステージ101の保持力が弱くなる。このため、微妙な振動や操作ハンドルを操作しようとしたときの僅かな手の動きなどにより上ステージ101にブレが生じ、標本の観察位置がずれたり、観察したい位置への調整ができないといった不具合が発生する。また、操作ハンドル102を操作したときにワイヤーに伸縮が生じ、上ステージ101の追従性が悪くなるという不具合も発生する。
【0063】
一方張力が強い場合、図13に矢印イで示す方向に操作ハンドル102が引っ張られることになり、軸受け部に偏荷重が掛かる。このため、操作ハンドル102を操作する際に違和感(ゴリゴリする感じや、ざらつく感じ)が生じ、操作フィーリングが悪くなるという不具合が発生する。
【0064】
図14は、上記の問題が解決するよう構成した顕微鏡用ステージの例を斜め下方から見た略式立体図である。図14において図13と同一な部分には同一符号を付してある。図14では、ワイヤーを第一ワイヤー111と第二ワイヤー112の二本に分ける構成としている。第一ワイヤー111は強い張力で張られており、その一端が下ステージ106の側面に植設されたピン107に固定されている。そして第一ワイヤー111は、第二プーリー104に一巻き巻き付けられ、下ステージ106の側面に植設されたピン108に固定されている。
【0065】
一方、第二ワイヤー112は環状をなし、第一ワイヤー111より弱い張力で張られており、第一プーリ103と第一プーリ104が連動するよう、第一プーリ103と第一プーリ104に掛け渡されているとともに、第一ワイヤー111に接触することが無いよう第一プーリ104に一巻き巻き付けられている。
【0066】
このような構成によれば、上ステージ101の停止時における保持力を確保できるとともに、操作ハンドル102に偏荷重がかからず、操作フィーリングの良好な顕微鏡用ステージを実現できる。
【0067】
(第6の実施の形態)
図15は、本発明の第6の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図である。図15において図14と同一な部分には同一符号を付してある。図15に示すように、上記第二プーリー104に対応する第二プーリー104´における第一ワイヤー111と第二ワイヤー112の掛かる部分の直径を異なるよう構成することにより、操作ハンドル102の回転量に対する上ステージ101の移動量を最適な状態に設定することができる。
【0068】
(第7の実施の形態)
図16は、本発明の第7の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを下方から見た略式平面図である。図16において図13と同一な部分には同一符号を付してある。図16では、ワイヤーを第一ワイヤー121と第二ワイヤー122に分ける構成としている。第一ワイヤ121は、操作ハンドル102に有害な偏荷重を与えない程度の張力で張られており、その一端が下ステージ106の側面に植設されたピン107に固定されている。そして第一ワイヤー121は、第二プーリー104で操作ハンドル102の方向へ折り曲げられ、第一プーリー103で折り返され、再び第二プーリー104で折り曲げられた後、その他端が下ステージ106の側面に植設されたピン108に固定されている。
【0069】
一方、第二ワイヤー122は第一ワイヤ121より強い張力で張られており、その一端が下ステージ106の側面に植設されたピン123に固定されている。そして第二ワイヤー122は、第三プーリー124で一巻きされ、その他端が下ステージ106の側面に植設されたピン125に固定されている。
【0070】
このように構成した場合でも、上ステージ101の停止時における保持力を確保できるとともに、操作ハンドル102に偏荷重がかからず、操作フィーリングの良好な顕微鏡用ステージを実現できる。
【0071】
(第8の実施の形態)
図17は、本発明の第8の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図である。図17において図14と同一な部分には同一符号を付してある。図17では、図14に示した第二ワイヤー112に代えてタイミングベルト131を採用し、第一プーリー103と第二プーリー104に掛け渡している。これにより、第二ワイヤを掛ける場合に比べて顕微鏡用ステージを容易に組立てることができる。
【0072】
(第9の実施の形態)
図18は、本発明の第9の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図である。図18において図14と同一な部分には同一符号を付してある。図8に示すように、第二ワイヤー112を第一プーリー103と第二プーリー104の間で交差するようクロス掛けすることにより、操作ハンドル102の回転方向に対する上ステージ101の移動方向を反転させることができる。これにより、正立像型の顕微鏡において、操作ハンドルの回転方向と観察像の移動方向とを一致させることができる。
【0073】
(第10の実施の形態)
図19の(a)は、潤滑剤を用いた滑り軸受け部を設けた操作ハンドルの断面図である。上記第5〜9の実施の形態によって操作ハンドル102に偏荷重がかからなくなった場合、操作ハンドル102の回転力量が軽くなりすぎると、回転の粘性が無くなり、操作時に軋みやスティックスリップを生じ操作感を悪くさせることがある。しかし、図19の(a)に示すように、操作ハンドル102の軸受け部としてその周囲に潤滑剤を塗布した用いた滑り軸受け部131を設けることにより、回転の粘性を確保でき、操作時の軋みやスティックスリップを無くすことができる。
【0074】
また、図19の(b)に示すように、操作ハンドル102の滑り軸受け部131をベアリング132と併用するよう構成することで、操作ハンドル102の操作性を一層向上させることができる。
【0075】
以上のように上記第5〜10の実施の形態によれば、操作ハンドルの位置が他の操作部位から離れるため操作性が良く、かつ標本移動の追従性と操作感の良好なワイヤ駆動による顕微鏡用ステージを提供することができる。
【0076】
(第11の実施の形態)
図20は、本発明の第11の実施の形態に係る顕微鏡用ステージが適用される顕微鏡の全体図である。図20において、顕微鏡本体201には、ステージ202がその上面が観察光軸221に対して直交するよう固定される。ステージ202の上面には標本222が載置され、操作ハンドル204が操作されることで、ステージ202が観察光軸221に対して直交する平面上にて移動し、標本222の位置出しが行なわれ、標本222の観察部位が決定される。
【0077】
図21は、図20に示したステージのZ矢視図であり、図22は図21のA−A断面図である。以下、説明の便宜上、一方向へ移動するステージについて説明する。
【0078】
まず、ステージの構成を図21、図22を基に説明する。固定ステージ(下ステージ)208は図示しないメスアリ部にて、顕微鏡本体201に設けられている図示しないオスアリ部と係合される。
【0079】
固定ステージ208には、顕微鏡本体201へのメスアリ部を底辺とした場合の側面に、断面が四角形をなす二箇所の溝部が平行に設けられている。可動ステージ209と与圧部材206にも、固定ステージ208と同様の溝部が設けられている。なお、固定ステージ208と顕微鏡本体201を組み合わせた際、各溝部の光軸方向の高さは一致している。
【0080】
固定ステージ208の一方の溝部には与圧部材206の溝部が対向し、固定ステージ208の他方の溝部には可動ステージ(上ステージ)209の溝部が対向している。対向する各二つの溝部には、三角形の断面を有する三角ワイヤー218がそれぞれ4本配置され、4本の三角ワイヤー218の中央に複数のボール219が配置された状態で、与圧部材206が可動ステージ209側に押し付けられることで、与圧部材206が可動ステージ209に固定されている。これにより、固定ステージ208に対して可動ステージ209が各溝部と平行な一方向にのみ直動可能となる。
【0081】
また、第1プーリー205及び第2プーリー203の軸方向の長さより若干長い回転軸部材217,217により、第1プーリー205と第2プーリー203が可動ステージ209に取付けられているため、第1プーリー205及び第2プーリー203は可動ステージ209上で回動可能に支持されていることになる。
【0082】
操作ハンドル204は、ワイヤーロープ207の巻き取り部212と同軸をなし、且つ一体化された部材である。この操作ハンドル204は、内部の凸部を軸方向外側から二つのベアリング214,214で挟み、これらベアリング214,214は軸部材216と固定部材215で挟み込まれている。そして、軸部材216は可動ステージ209に固定されている。これにより、可動ステージ209上で操作ハンドル204及び巻取り軸部212は同期して回転可能になる。
【0083】
また、ワイヤーロープ207の両端は、それぞれ固定ステージ208に植設されたピン210,211に取り付けられている。二つのピン210,211のワイヤーロープ取付位置を結ぶ直線は、可動ステージ209の移動方向と平行をなしている。
【0084】
図23は、図20のZ方向から見たステージの鳥瞰図である。以下、二つのプーリー203,205と操作ハンドル204の位置関係、及びワイヤーロープの掛け方を図23を基に説明する。第1プーリー205の取付位置は、その外周が固定ステージ208に取付られたワイヤーロープ207の両端を結ぶ直線に接する位置であり、第1プーリー205は可動ステージ209に取付けられている。
【0085】
第2プーリー203は、第1プーリー205から離れる方向の位置で可動ステージ209に取付られている。操作ハンドル204の巻取り部212は、第1プーリー205と第2プーリー203の間の位置で、且つ第1プーリー205と第2プーリー203の外周を結ぶ二つの外接線の一方に接する位置で、可動ステージ209に固定されている。
【0086】
固定ステージ208に植設されたピン210に取付けられたワイヤーロープ207は、第1プーリー205に巻き付いて折り曲げられ、操作ハンドル204と同軸で一体化された巻取り部212に一巻きされ、第2プーリー203に半周巻き付いて折り返され、第1プーリー205に巻き付いて折り曲げられた後、固定ステージ208に植設されたピン211により固定ステージ208に取付けられる。これによりワイヤーロープ207は、固定ステージ208に取付けられた一端と第1プーリー205の外周に接する部分と固定ステージ208に取付けられた他端とでほぼ一直線状をなす。
【0087】
以上のような構成において可動ステージ209上に設置した標本222を移動させる際、操作ハンドル204に所定の回転を与え可動ステージ209を移動することにより、標本222を目標位置まで移動させる。このときワイヤーロープ207に張力が加えられているため、操作ハンドル204の巻取り部212は、ワイヤーロープ207により常に締付けられている。そのため、操作ハンドル204に与えられた回転により巻取り部212とワイヤーロープ207とが滑ることはなく、ワイヤーロープ207は操作ハンドル204の回転量に応じた移動量分送られる。本ステージでは、ワイヤーロープ207は固定ステージ208に取付けられているため、ワイヤーロープ207が送られる代りに相対的に可動ステージ209が移動することになる。
【0088】
固定ステージ208に対して可動ステージ209が相対的に移動する際も、ワイヤーロープ207が伸びること無く可動ステージ209の移動が可能であり、操作ハンドル204の位置を可動ステージ209に固定されたワイヤーロープ207の位置に影響されること無く任意に設定できる。
【0089】
また、操作ハンドル204の巻取り部212から第1プーリー205及び第2プーリー203へ至るワイヤーロープ207は一直線状となるため、ワイヤーロープ207に張力を加えた場合、第1プーリー205側と第2プーリー203側の二つの張力が釣り合い、操作ハンドル204のラジアル方向への不均一な負荷をなくすことができるため、操作ハンドル204を操作した際に、軽快且つ回転ムラの無い操作が可能になる。
【0090】
(第11の実施の形態の変形例)
図24は、第11の実施の形態の変形例を示す図であり、図20のZ方向から見た鳥瞰図である。第11の実施の形態との相違点は、ワイヤーロープ207に対して操作ハンドル204と同軸で一体化された巻取り部212の回転中心を、プーリー205,203間のワイヤーロープ207に対して逆側に配置している。これにより、操作ハンドル204の配置を任意に選ぶことができる。さらに、操作ハンドル204のラジアル方向への不均一な負荷を無くすことができる点で、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0091】
また、第1プーリー205と第2プーリー203との間隔が、操作ハンドル204の巻取り部212の外径に影響されないため、可動ステージ209をより小型に構成できる。
【0092】
(第12の実施の形態)
図25は、本発明の第12の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを図20のZ方向から見た鳥瞰図である。本第12の実施の形態における第11の実施の形態との相違点は、第1プーリー205、第2プーリー203及び操作ハンドル204(巻取り部212)の配置と、ワイヤーロープ207の掛け方である。その相違点のみを以下に説明する。
【0093】
第1プーリー205は、その外周が固定ステージ208に取付られたワイヤーロープ207の両端を結ぶ直線に接する位置で、且つ固定ステージ208上のワイヤーロープ207両端の取付位置より外側の可動ステージ209上の位置に取付けられている。
【0094】
第2プーリー203は、第1プーリー205と同様に、その外周が固定ステージ208に取付られたワイヤーロープ207の両端を結ぶ直線に接する位置で、且つ第1プーリー205の取付位置とは逆側のワイヤーロープ207の端部側であり、ワイヤーロープ207の端部の取付位置より外側の可動ステージ209上の位置に取付けられている。
【0095】
操作ハンドル204の巻取り部212は、第1プーリー205と第2プーリー203の間で、且つ第1プーリー205と第2プーリー203の外周同士を結ぶ一本の外接線に接する位置に固定されている。
【0096】
固定ステージ208に植設されたピン211に取付けられたワイヤーロープ207は、第1プーリー205に巻き付いて折り返され、操作ハンドル204と同軸で一体化された巻取り部212に一巻きされ、第2プーリー203に巻き付いて折り返された後、固定ステージ208に植設されたピン210により固定ステージ208に取付けられる。
【0097】
これにより、可動ステージ209に取付られたワイヤーロープ207の両端から第1プーリー205と第2プーリー203に至るワイヤーロープ207は同一直線上に位置し、且つ第1プーリー205から巻取り部212(操作ハンドル204)に至るワイヤーロープ207と、巻取り部212から第2プーリー203に至るワイヤーロープ207は同一直線上に位置することになる。
【0098】
そのため、固定ステージ208に対して可動ステージ209が相対的に移動する際も、ワイヤーロープ207が伸びること無く可動ステージ209の移動が可能であり、操作ハンドル204の位置を可動ステージ209に固定されたワイヤーロープ207の位置に影響されること無く任意に設定できる。
【0099】
また、ワイヤーロープ207に張力を加えた場合、第1プーリー205側と第2プーリー203側の二つの張力が釣り合い、操作ハンドル204のラジアル方向への不均一な負荷をなくすことができるため、操作ハンドル204を操作した際に、軽快且つ回転ムラの無い操作が可能になる。
【0100】
また第12の実施の形態では、可動ステージ209の横方向の大きさは、プーリー203,205の直径とハンドル巻取り部212の直径で決まるため、第11の実施の形態に比べ、プーリーの直径を一個分以上小さくすることができる。
【0101】
(第13の実施の形態)
図26は、本発明の第13の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを図20のZ方向から見た図であり、図27は鳥瞰図である。本第13の実施の形態における第11の実施の形態との相違点は、操作ハンドル204の配置と、ワイヤーロープ207の掛け方である。その相違点のみを以下に説明する。
【0102】
操作ハンドル204の回転中心は、第1プーリー205と第2プーリー203の間で、且つ第1プーリー205と第2プーリー203の回転中心を結ぶ直線上に固定されている。
【0103】
固定ステージ208に植設されたピン211に取付けられたワイヤーロープ207は、第1プーリー205に巻き付いて折り曲げられ、操作ハンドル204と同軸で一体化された巻取り部220に一巻きされ、第2プーリー203に巻き付き付いて折り返され、先ほど巻取り部220にワイヤーロープ207を一巻きし始めた側に対して反対側の巻取り部220に接し、第2プーリー205に巻き付いて折り曲げられた後、固定ステージ208に植設されたピン210によりステージ208に取付けられる。
【0104】
これにより、可動ステージ209に取付られたワイヤーロープ207の両端から第1プーリー205に至るまでのワイヤーロープ207は一直線状となるため、固定ステージ208に対して可動ステージ209が相対的に移動する際も、ワイヤーロープ207が伸びること無く可動ステージ209の移動が可能であり、操作ハンドル204の位置を可動ステージ209に固定されたワイヤーロープ207の位置に影響されること無く任意に設定できる。
【0105】
また、ワイヤーロープ207に張力を加えた場合、操作ハンドル204の巻取り部212に接するワイヤーロープ207による張力は、釣り合いがとれた状態となる。そのため、操作ハンドル204のラジアル方向への不均一な負荷をなくすことができ、操作ハンドル204を操作した際に、軽快且つ回転ムラの無い操作が可能になる。
【0106】
また、第11の実施の形態では、操作ハンドル204の巻取り部212の直径は、プーリー203,205の直径よりも小さくする必要があるが、本第13の実施の形態では、巻取り部220の直径はプーリー203,205の直径には影響されない。
【0107】
(第11〜第13の実施の形態の変形例)
本変形例における第11〜第13の実施の形態との相違点は、固定ステージ208上に第1プーリー205、第2プーリー203及び巻取り部220(操作ハンドル204)を構成することである。これにより、可動ステージ209が移動した場合に操作ハンドル204が移動しないという特徴がある。また、顕微鏡で用いる2方向移動ステージに適応させる場合は、本変形例と第11から第13の実施の形態を組み合わせて用い、一軸の操作ハンドルにより2方向移動を実現することが可能である。
【0108】
また、本発明による顕微鏡用ステージは以下のような特徴を有している。
【0109】
(1) 本発明の顕微鏡用ステージは、ベース部材と、このベース部材に対して直線移動可能に支持された移動部材と、前記ベース部材上で前記移動部材の移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、この駆動力伝達部材の、前記移動部材の移動方向に沿った部分に対して外径がほぼ接する位置に配置され、前記移動部材に回転可能に支持されたプーリーと、このプーリーに対して前記駆動力伝達部材から離れた位置に配置され、前記移動部材に回転可能に支持されたハンドル部とを備え、前記駆動力伝達部材は、前記プーリーと前記ハンドル部に順に掛けられ、前記ハンドル部の回転操作により前記移動部材を移動させるよう構成されている。
【0110】
上記(1) に記載の顕微鏡用ステージによれば、線状の駆動力伝達部材の、前記移動部材の移動方向に沿って張り渡された部分に対して、外径がほぼ接する位置に配置されたプーリを有する。このプーリーに対して、ハンドル部は駆動力伝達部材から離れた位置に自在に配置可能である。したがって、ステージの操作性を考慮した操作しやすい位置にハンドルを配置可能である。
【0111】
(2) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(1) に記載のステージにおいて、ハンドル部を前記移動部材に対して回転可能に支持する手段は、転がり軸受けと、潤滑剤により潤滑された滑り軸受とを有する。
【0112】
上記(2) に記載の顕微鏡用ステージによれば、転がり軸受けと滑り軸受けの併用によって、駆動力伝達部材の張力による偏荷重が作用してもスムーズな回転を可能にするとともに、滑り軸受け部の潤滑剤によってハンドルに対して粘性を持った良好な操作感を与えることができる。
【0113】
(3) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(1) に記載のステージにおいて、前記駆動力伝達部材は、前記移動部材の移動方向に沿って多段掛けされている。
【0114】
上記(3) に記載の顕微鏡用ステージによれば、駆動力伝達部材を多段掛けにより複数回折り返して張り渡すことにより、駆動力伝達部材にかかる負荷が小さくなるので伸びが減少し、伝達機構の剛性が高まってステージの停止精度が向上する。
【0115】
(4) 本発明の顕微鏡用ステージは、ベース部材と、このベース部材に対して直線移動可能に支持された移動部材と、前記ベース部材上で前記移動部材の移動方向に沿って張り渡された線状の第1の駆動力伝達部材と、この第1の駆動力伝達部材の、前記移動部材の移動方向に沿った部分に対して外径がほぼ接する位置に配置され、前記移動部材に回転可能に支持されたプーリーと、このプーリーに対して前記第1の駆動力伝達部材から離れた位置に配置され、前記移動部材に回転可能に支持されたハンドル部と、このハンドル部と前記プーリとの間に掛け渡される第2の駆動力伝達部材とを備え、前記ハンドル部の回転操作により前記移動部材を移動させるよう構成されている。
【0116】
上記(4) に記載の顕微鏡用ステージによれば、駆動力伝達部材を二つ用いることにより、伝達機構の剛性を高める目的とハンドルの良好な操作感を実現する目的とに駆動力伝達部材の役割を分けることができ、伝達機構の高い剛性による良好な停止精度とハンドルの良好な操作感とが両立される。
【0117】
(5) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(4) に記載のステージにおいて、前記第1の駆動力伝達部材の張力より前記第2の駆動力伝達部材の張力を弱くした。
【0118】
上記(5) に記載の顕微鏡用ステージによれば、第1の駆動力伝達部材の張力を強くすることで伝達機構の剛性を高められる一方、第2の駆動力伝達部材の張力を弱くすることでハンドル部にかかる偏荷重を小さくなり、ハンドルのスムーズな回転が確保される。
【0119】
(6) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(4) に記載のステージにおいて、前記第2の駆動力伝達部材はベルトである。
【0120】
(7) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(4) に記載のステージにおいて、第2の駆動力伝達部材は歯車である。
【0121】
(8) 本発明の顕微鏡用ステージは、下ステージと、この下ステージに対して直線移動可能に支持された上ステージと、前記下ステージ上で前記上ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、この駆動力伝達部材の、前記上ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、前記上ステージに回転可能に支持されたプーリーと、このプーリーに対して、前記駆動力伝達部材の前記上ステージの移動方向に沿った部分から離れた位置に配置され、前記上ステージに回転可能に支持されたハンドル部と、前記下ステージに対する前記上ステージの直線移動に対して抵抗力を付与する制動手段とを備え、前記駆動力伝達部材は、前記プーリーと前記ハンドル部に順に掛けられ、前記ハンドル部の回転操作により前記上ステージを移動させる。
【0122】
上記(8) に記載の顕微鏡用ステージによれば、制動手段により上ステージの直線移動に対して抵抗力が付与されるので、ハンドルの操作を止めた時点で確実に上ステージを停止させることができ、ステージの停止精度が向上する。
【0123】
また、安価な部材を使用した簡易な構成で、顕微鏡用ステージとしての高い位置合わせ精度や良好な移動追従性・操作感の確保と、ステージ操作ハンドルの配置の自由度の向上とを両立することができる。
【0124】
(9) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(8) に記載のステージにおいて、前記制動手段は、前記下ステージと前記上ステージとの間に介在し、それらの一方に固定され他方に対して摩擦力が生じるよう接触する摩擦部材である。
【0125】
上記(9) に記載の顕微鏡用ステージによれば、摩擦部材とステージとの間で発生する摩擦力によりステージの直線移動に対して抵抗力が付与され、ハンドルの操作を止めた時点で確実にステージを停止させることができる。
【0126】
(10) 本発明の顕微鏡用ステージは上記(8) に記載のステージにおいて、前記制動手段は、前記ハンドル部に備えられ、ハンドルの回転に対して抵抗力を付与する手段である。
【0127】
上記(10) に記載の顕微鏡用ステージによれば、ハンドルの回転に対して抵抗力を付与することで、上ステージの直線移動に対して抵抗力が付与され、ハンドルの操作を止めた時点で確実に上ステージを停止させることができる。
【0128】
(11) 本発明の顕微鏡用ステージは、下ステージと、この下ステージに対して直線移動可能に支持された上ステージと、前記下ステージ上で前記上ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の第1の駆動力伝達部材と、この第1の駆動力伝達部材の、前記上ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、前記上ステージに回転可能に支持されたプーリーと、このプーリーに対して、前記第1の駆動力伝達部材の前記上ステージの移動方向に沿った部分から離れた位置に配置され、前記上ステージに回転可能に支持されたハンドル部と、このハンドル部と前記プーリとの間に掛け渡される第2の駆動力伝達部材と、を備え、前記ハンドル部の回転操作により前記上ステージを移動させる。
【0129】
上記(11) に記載の顕微鏡用ステージによれば、駆動力伝達部材を二つ用いることにより、伝達機構の剛性を高める目的とハンドルの良好な操作感を実現する目的とに駆動力伝達部材の役割を分けることができ、伝達機構の高い剛性による良好な停止精度とハンドルの良好な操作感とが両立される。
【0130】
本発明は上記各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適時変形して実施できる。
【0131】
【発明の効果】
本発明の顕微鏡用ステージによれば、操作ハンドルを操作しやすい位置で軽快且つ回転ムラなく操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す一部断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す底面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す図3のA−A断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す図3のB−B断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る線状部材の伝達機構を示す模式図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る線状部材の伝達機構の変形例を示す模式図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るステージ操作ハンドル機構部の構成を示す拡大断面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るステージ操作ハンドルの構成を示す断面図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す断面図。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す断面図。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る線状部材の伝達機構を示す模式図。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係るワイヤ駆動の顕微鏡用ステージを下方から見た略式平面図。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図。
【図16】本発明の第7の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを下方から見た略式平面図。
【図17】本発明の第8の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図。
【図18】本発明の第9の実施の形態に係る顕微鏡用ステージを斜め下方から見た略式立体図。
【図19】本発明の第10の実施の形態に係る操作ハンドルの断面図。
【図20】本発明の第11の実施の形態に係る顕微鏡用ステージが適用される顕微鏡の全体図。
【図21】本発明の第11の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す底面図。
【図22】本発明の第11の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す図21のA−A断面図。
【図23】本発明の第11の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す鳥瞰図。
【図24】本発明の第11の実施の形態の変形例を示す図。
【図25】本発明の第12の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す鳥瞰図。
【図26】本発明の第13の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す底面図。
【図27】本発明の第13の実施の形態に係る顕微鏡用ステージの構成を示す鳥瞰図。
【符号の説明】
1…下ステージ
1a,1b…ガイド溝部
2…上ステージ
2a,2b,2c…ガイド溝部
3…ケーシング
4…ボール
5…ガイド部材
5a…ガイド溝部
6…ガイド部材
6a…ガイド溝部
8…クレンメル保持部材
8a…ガイド溝部
9…クレンメル
10…固定軸
10a…ネジ部
11…Yハンドル軸
11a…プーリー部
12…Yハンドル
13…ベアリング
14…固定ガイド
14a…ネジ部
14b…ネジ部
14c…セットビス
15…スラスト支持部
16…ワッシャー
17…Yトルク調整ハンドル
18…弾性部材
19…ワッシャー
20…Xハンドル軸
20a…プーリー部
20b…ネジ部
21…Xハンドル
22…ベアリング
23…スラストリング
24…スラスト支持部
25…ワッシャー
26…Xトルク調整ハンドル
27…弾性部材
28…ワッシャー
29…プーリー
30…転がり軸受け
31…軸
32…線状部材
33…プーリー
34…軸
35…転がり軸受け
36…張力調整部材
37…線状部材
38…張力調整部材
38a…突起部
38b…ピン
38c…ビス
40…転がり軸受け
41…ブレーキ部材
411…平板
412…突起部
42…ネジ
51…Y嵌合部
52…X嵌合部
53…固定環
54…固定環用セットビス
101…上ステージ
102…操作ハンドル
103…第一プーリー
104,104´…第二プーリー
105…ワイヤー
106…下ステージ
107…ピン
108…ピン
111…第一ワイヤー
112…第二ワイヤー
121…第一ワイヤー
122…第二ワイヤー
123…ピン
124…第三プーリー
125…ピン
131…滑り軸受け部
132…ベアリング
201…顕微鏡本体
202…ステージ
203…第2プーリー
204…操作ハンドル
205…第1プーリー
206…与圧部材
207…ワイヤーロープ
208…固定ステージ
209…可動ステージ
210,211…ピン
212…巻取り部
220…巻取り部
222…標本

Claims (2)

  1. 固定ステージと、
    この固定ステージに対して直線移動可能に支持された可動ステージと、
    この可動ステージを前記固定ステージに対して相対的に移動させるために前記可動ステージに設けられた操作ハンドルと、
    前記可動ステージに回動可能に支持された第1のプーリー及び第2のプーリーと、
    前記固定ステージ上で前記可動ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、を備え、
    前記第1のプーリーは、前記駆動力伝達部材における前記可動ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、
    前記第2プーリーは、前記第1プーリーから離れる方向に配置され、
    前記第1プーリーと前記第2プーリーの間で且つ前記第1プーリーと前記第2プーリーとを結ぶ一つの外接線にのみ外接する位置に前記操作ハンドルと同軸な巻取り部を設け、
    前記駆動力伝達部材は、前記第1プーリー、前記巻取り部、及び前記第2プーリーに順に掛けられ、且つ前記巻取り部には前記駆動力伝達部材を少なくとも1回巻き付けたことを特徴とする顕微鏡用ステージ。
  2. 固定ステージと、
    この固定ステージに対して直線移動可能に支持された可動ステージと、
    この可動ステージを前記固定ステージに対して相対的に移動させるために前記可動ステージに設けられた操作ハンドルと、
    前記可動ステージに回動可能に支持された第1のプーリー及び第2のプーリーと、
    前記固定ステージ上で前記可動ステージの移動方向に沿って張り渡された線状の駆動力伝達部材と、を備え、
    前記第1のプーリーは、前記駆動力伝達部材における前記可動ステージの移動方向に沿った部分に対して外周がほぼ接する位置に配置され、
    前記第2プーリーは、前記第1プーリーから離れる方向に配置され、
    前記第1プーリーと前記第2プーリーの間の位置に前記操作ハンドルと同軸な巻取り部を設け、
    前記駆動力伝達部材は、前記第1プーリー、前記巻取り部、及び前記第2プーリーに順に掛けられるとともに、前記巻取り部には前記駆動力伝達部材が少なくとも1回巻き付き、且つ前記巻取り部は前記駆動力伝達部材にその往路と復路で接することを特徴とする顕微鏡用ステージ。
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