JP3790369B2 - 排煙脱硫装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種燃料を燃焼させるボイラ、ガスタービン、エンジン、燃焼炉等から排出される排ガス中の硫黄酸化物(SOX )を除去するための排煙脱硫装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、排ガス中の硫黄酸化物の除去方法として、石灰石または消石灰スラリーを吸収剤として用いて、硫黄分を石膏として回収する石灰−石膏法が採用されている。
他の方法として、活性炭による吸着法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の石灰−石膏法では、多量の水および硫黄酸化物の吸収剤が必要である。そのため、脱硫設備の大型化や複雑化が避けられない。
また、活性炭による吸着法の場合、活性炭に吸着した硫黄分を水洗によって脱離させるため、大量の水を必要とする。しかも、この方法の場合、生成した希硫酸の廃棄や、吸着材の乾燥処理等が必要になる。
本発明の目的は、硫黄酸化物の吸収剤や大型の脱硫設備を必要とせず、かつ、脱硫に用いる水の量が少なくてすむ排煙脱硫装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の排煙脱硫装置は、硫黄酸化物を含有する排ガスの導入口を下部に、該排ガスの排出口を上部に有する吸収塔と、該吸収塔内に設けられた脱硫反応用活性炭素繊維層と、該脱硫反応用活性炭素繊維層の前流側に設けられた排ガスの増湿冷却用水の散布器と、該脱硫反応用活性炭素繊維層への脱硫用水の供給器とを備え、かつ、該吸収塔内に散布された上記増湿冷却用水及び/または上記脱硫用水が、上記吸収塔の底部から回収されて、循環して繰り返し使用されるように構成されたことを特徴とする(請求項1)。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の排煙脱硫装置は、排ガスの導入口及び排出口を有する吸収塔を含み、吸収塔の内部には、排ガスが通過して脱硫される脱硫反応用活性炭素繊維層が設けられている。
本発明において、脱硫の対象となるガスは、硫黄酸化物、特に二酸化硫黄(SO2 )を含むガスである。SO2 濃度は、任意であるが、特に200〜1,000ppm程度であると、より効率的に脱硫することができる。
【0006】
また、脱硫の際、SO2 をSO3 に酸化するのに酸素(O2 )が用いられるため、排ガス中に酸素を含むか、または、別途、酸素を排ガス中に供給する必要がある。排ガス中の酸素の含有量は、下限が2容量%以上、好ましくは3〜21容量%であることが、目的とする脱硫反応を生じさせるために好ましい。すなわち、SO2 の酸化には酸素が必要であり、酸素濃度が高い程、好ましい。
SO2 およびO2 以外のガス成分としては、通常、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等の成分を含み得る。
ガスの流量は、通常、脱硫反応用活性炭素繊維の単位重量当たり、1×10-3〜5×10-5g・min/ml程度である。
【0007】
本発明で用いる脱硫反応用活性炭素繊維は、排ガス中のSO2 がSO3 に酸化する際に触媒として働く。
脱硫反応用活性炭素繊維の製造方法を以下、説明する。
原料となる活性炭素繊維の種類としては、特に制限はなく、ピッチ系、ポリアクリロニトリル系、フェノール系、セルロース系等の活性炭素繊維を用いることができる。これらの中でも、特に活性炭素繊維の表面の疎水性のより高いものが望ましく、具体的にはピッチ系活性炭素繊維等を挙げることができる。
【0008】
活性炭素繊維は、窒素ガス等の非酸化雰囲気下で、通常600〜1,200℃程度の温度で熱処理される。処理時間は、処理温度等に応じて適宜定めればよい。この熱処理により、本発明で用いる脱硫反応用炭素繊維を得ることができる。脱硫反応用活性炭素繊維は、熱処理により親水性である酸素官能基の一部または全部がCO、CO2 等として除去されているので、処理前に比べて疎水性の大きな表面となっている。このため、SO2 の酸化活性点へのSO2 の吸着が容易に起こり、しかも生成する硫酸の排出も速やかに進行する結果、触媒の機能が阻害されることなく、脱硫反応が促進される。
【0009】
脱硫反応用活性炭素繊維の製造例の具体例は、例えば、次の通りである。
具体例1
ピッチ系活性炭素繊維(「OG−20A」、アドール(株)製)を用い、これを窒素雰囲気中で900〜1,200℃の温度範囲内で1時間焼成する。
具体例2
ポリアクリロニトリル系活性炭素繊維(「FE−300」、東邦レーヨン(株)製)を用い、これを窒素雰囲気中で800〜1,200℃の温度範囲内で1時間焼成する。
【0010】
本発明で用いられる脱硫反応用活性炭素繊維の性状は、通常、太さが7〜20μm、比表面積が500〜2,500m2 /g、外表面積が0.2〜2.0m2 /g、細孔直径が45オングストローム以下である。
ピッチ系、ポリアクリロニトリル系、フェノール系、セルロース系の各脱硫反応用活性炭素繊維の組成式等を表1に示す。なお、表1中の数値は、通常の値を示すにすぎず、これらの数値範囲外のものも存在し得る。
【0011】
【表1】
【0012】
以下、本発明を用いた実施の形態の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1において、ボイラから排出された硫黄酸化物を含有する排ガスは、吸収塔1の下部の導入口2から吸収塔1内に導入される。吸収塔1内に導入された排ガスは、排ガスの増湿冷却用水の散布器3から散布される水によって、70℃以下に冷却されると共に、相対湿度が増加し、通常、飽和状態(相対湿度=100%)となる。なお、相対湿度が60%程度以上であれば、脱硫反応用活性炭素繊維層で脱硫反応が起こるが、良好な脱硫率を得るためには、相対湿度が100%(飽和状態)であることが好ましい。
【0013】
増湿冷却された排ガスは、吸収塔1内の中央部に充填されている脱硫反応用活性炭素繊維層4内を上方に向かって通過する。なお、脱硫反応用活性炭素繊維層4には、予め、脱硫反応用活性炭素繊維層4の上方または近傍に設けられる脱硫用水の供給器5によって水を供給し、活性炭素繊維の表面に水が付着した状態としておく。
【0014】
排ガスが脱硫反応用活性炭素繊維層4内を上方に向かって通過する際、排ガス中のSO2 が、活性炭素繊維の表面でSO3 に酸化される。生成したSO3 は、活性炭素繊維に付着している水と反応して、硫酸(H2 SO4 )となる。生成した硫酸6は、脱硫反応用活性炭素繊維層4から落下して、吸収塔1の底部からポンプ7によって排出され、硫酸貯留槽(図示省略)に貯留され、工業用に用いられる。
得られる硫酸の濃度は、工業用として用いるために20%以上、好ましくは流通上の便宜のために50%以上とする。
【0015】
吸収塔1の底部に貯留された硫酸6の全部または一部は、循環ライン(循環用パイプ)8によって、排ガスの増湿冷却用水の散布器3と脱硫用水の供給器5の両方またはそれらの一方に導かれ、繰り返し使用される。
【0016】
図1に示す例では、吸収塔の排ガス導入口2と脱硫反応用活性炭素繊維層4との間に、増湿冷却用の水の散布器3を設けている。しかし、該増湿冷却用の水の散布器3の設置位置は、脱硫反応用活性炭素繊維層4の前流側、すなわち、脱硫反応用活性炭素繊維層4を通過する前の排ガスに水を散布することのできる位置であればよく、例えば、図2に示す位置に設置することもできる。
図2は、吸収塔21の排ガス導入口22の前流側に、増湿冷却用の水の散布器23を設置した状態を示す。吸収塔21内には、脱硫反応用活性炭素繊維層24、及び脱硫用水の供給器25が設けられる。吸収塔21内の底部に溜まった希硫酸26が、ポンプ27によって循環ライン28を通り、増湿冷却用水の散布器23及び脱硫用水の供給器25に導かれること、増湿冷却用水の散布器23及び脱硫用水の供給器25には、外部から希釈用の水を供給することができること、脱硫された排ガスが排出口29から排出されることは、図1の場合と同様である。
【0017】
また、図1では、増湿冷却用水の散布器3が1つである場合を示したが、他の態様も採り得る。例えば、増湿冷却用水の散布器を複数設置してもよい。また、上記循環ライン8を通じて供給される循環水を散布するための増湿冷却用水の散布器の他に、外部から導入した水(希釈用水)を散布するための増湿冷却用水の散布器を別個に設置してもよい。
脱硫用水の供給器5についても、同様に、複数としたり、外部から導入した水(希釈用水)を供給するための脱硫用水の供給器を別個に設けたりしてもよい。
循環水と外部からの希釈用水との比率を調整することによって、生成する希硫酸の濃度を調整することができる。
【0018】
図3は、本発明の排煙脱硫装置を含む脱硫システムの一例である。以下の図3の説明中の温度条件等の数値は、典型的な例として示す。
図3において、ボイラ31から排出されたSO2 を含有する排ガス(温度:360℃、SO2 濃度:1000ppm、水分:8.4容量%)は、ガス−ガスヒータ(GGH)33によって冷却された後、集塵器(ESP)34内で除塵され、ファン32を経由して、吸収塔35内に導入される。導入された排ガスは、増湿冷却されて温度が30℃、相対湿度100%となった後、吸収塔35内に設けられた脱硫反応用活性炭素繊維層で脱硫されて、SO2 濃度が50ppm未満となり、吸収塔35から排出される。脱硫された排ガスは、ガス−ガスヒータ33で加熱された後、煙突36から排出される。排煙脱硫装置の稼動を止めて、生成した硫酸を回収するときは、吸収塔の底部から硫酸をポンプで硫酸貯留槽37に導けばよい。
【0019】
【実施例】
活性炭素繊維(OG15A、アドール(株)社製)を1,100℃で1時間処理して、脱硫反応用活性炭素繊維を得た。
下部に試料ガスの導入口を有し、上部に試料ガスの排出口を有する反応器(長さ:3m、断面積:0.01m2 )内の中央付近に、脱硫反応用活性炭素繊維層(長さ:90cm)を設け、該活性炭素繊維層には、予め、水を充分供給し、水で満たすようにした。
試料ガスは、ガス調整器で組成を調整し、1,000ppmのSO2 、5%のO2 、8%の水分、残部のN2 の組成とした。試料ガスは、温度が90℃、ガス量が0.84m3 /hとなるようにし、触媒の量は、900gとした。
【0020】
反応器内に導入した試料ガスは、活性炭素繊維層のやや下方に設けた増湿冷却用水の散布器から散布される水によって増湿冷却され、活性炭素繊維層内への進入時のガス温度が48℃、ガス中の水分が11%(相対湿度で100%)となった。脱硫反応用活性炭素繊維層内において、試料ガス中のSO2 は、O2 及び水と反応して、硫酸となり、反応器内の底部に落下した。
生成した硫酸を増湿冷却用水として、繰り返し使用することによって、最終的に高濃度(50%)の硫酸を得た。
【0021】
【発明の効果】
本発明の排煙脱硫装置によれば、脱硫反応用活性炭素繊維上で生成した希硫酸を回収して、排ガスの増湿冷却用水または脱硫用水として用いるので、外部からの水の供給量が少なくても、排ガスを増湿冷却したり、脱硫反応用活性炭素繊維層に充分に水を供給することができる。脱硫反応用活性炭素繊維層への充分な水の供給は、脱硫率を高めることに寄与する。
また、増湿冷却用水として散布される希硫酸は、高温の排ガスとの接触によって、水分が蒸発し、濃度が大きくなり、商品価値が高まる。
さらに、本発明の排煙脱硫装置内の脱硫反応用活性炭素繊維層は、その上方から水が供給されると共に、下方から増湿された排ガスが流入するため、層全体に水が充分行き渡り、脱硫反応が促進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排煙脱硫装置の一態様の縦断面を示す概略図である。
【図2】本発明の排煙脱硫装置の他の態様の縦断面を示す概略図である。
【図3】本発明の排煙脱硫装置を含む脱硫システムの一例である。
【符号の説明】
1,21 吸収塔
2,22 排ガス導入口
3,23 増湿冷却用水の散布器
4,24 脱硫反応用活性炭素繊維層
5,25 脱硫用水の供給器
6,26 希硫酸
7,27 ポンプ
8,28 循環ライン
9,29 排出口
31 ボイラ
32 ファン
33 ガス−ガスヒータ
34 集塵器
35 吸収塔
36 煙突
37 硫酸貯留槽
Claims (2)
- 硫黄酸化物を含有する排ガスの導入口を下部に、該排ガスの排出口を上部に有する吸収塔と、該吸収塔内に設けられた脱硫反応用活性炭素繊維層と、該脱硫反応用活性炭素繊維層の前流側に設けられた排ガスの増湿冷却用水の散布器と、該脱硫反応用活性炭素繊維層への脱硫用水の供給器とを備え、かつ、該吸収塔内に散布された上記増湿冷却用水及び/または上記脱硫用水が、上記吸収塔の底部から回収されて、循環して繰り返し使用されるように構成されたことを特徴とする排煙脱硫装置。
- 上記脱硫反応用活性炭素繊維は、太さが7〜20μm、比表面積が500〜2,500m 2 /g、外表面積が0.2〜2.0m 2 /g、細孔直径が45オングストローム以下であることを特徴とする請求項1の排煙脱硫装置。
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